説明

衛生陶器表面の水垢汚れ除去性の評価方法

【課題】 衛生陶器表面の水垢汚れの除去性を、同一条件において評価可能な方法を提供すること。
【解決手段】 本発明では、水溶性の色素および溶性ケイ酸を含有する水溶液を調製する工程、前記水溶液のpHを7.0に調節する工程、前記pHを7.0に調節した水溶液を衛生陶器表面に滴用後乾燥させることにより着色性固形物を付着形成させる工程、前記着色性固形物が付着形成された衛生陶器表面を含水不織布により摺動する工程、摺動前後の衛生陶器表面の色差を測定する工程、を含むことを特徴とする衛生陶器表面の水垢汚れ除去性の評価方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大便器、小便器、洗面器、手洗い器、便器タンク、便器のサナなどの衛生陶器表面の評価方法に係り、特に水垢汚れに対する清掃除去性の良し悪しを判断するのに好適な衛生陶器表面の水垢汚れ除去性の評価方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
衛生陶器の表面が美観を有し、かつ清浄であることは衛生上および美観上重要である。更に、そのような状態が長期にわたり保たれること、または適当な頻度の清掃によりそのような状態に回復することは好ましいことである。
実状として、水廻りで使用される衛生陶器の流水部には水垢が付着しやすい。前記水垢を含め、衛生陶器表面の汚れを除去するために、界面活性剤、酸・アルカリ等の洗剤を束子やブラシに付けて強く衛生陶器表面を擦ることが行われているが、特に、一旦付着した水垢を前記清掃作業のみで十分に除去するのは容易なことではない。
このような状況に鑑み、衛生陶器表面において水垢付着を防止する技術、および付着した水垢を落とし易くした衛生陶器表面に関する技術が望まれているが、これと同時に、同一条件で衛生陶器表面に水垢汚れを付着させ、前記付着した水垢汚れを同一条件で清掃除去した際、水垢汚れの除去性の良し悪しを評価するための方法も必要である。
【0003】
従来、物体の表面に水垢を形成あるいは付着させる方法としては、市販されている硬度の高いミネラルウォーターを物体の表面に噴霧し、乾燥する操作を何回か繰り返すことによって行っていた(例えば、特許文献1参照。)。
このような場合、市販のミネラルウォーターはその硬度が常に一定なわけではないから、同じ操作を行ったとしても、物体表面への水垢付着量が一定にはならず、ばらつきが生じてしまうという問題があった。
【0004】
また、衛生陶器表面に付着した水垢を観察する方法としては、大便器や小便器を通常の使用条件下で30日間放置した後、歯垢染色ジェルの希釈液またはメチレンブルー水溶液を前記大便器や小便器の吐水口とその周辺にスプレーし、赤色または青色の強弱で水垢付着量を目視により評価することが行われていた(例えば、特許文献2参照。)。
しかし、この場合も目視の評価では、その着色度の差が小さい場合、優劣がつけられないことがあるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−050586号公報(第18頁)
【特許文献2】WO01/044592号公報(第25−36頁、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、衛生陶器表面の水垢汚れの除去性を、同一条件において評価可能な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記課題を解決すべく、水溶性の色素および溶性ケイ酸を含有する水溶液を調製する工程、前記水溶液のpHを7.0に調節する工程、前記pHを7.0に調節した水溶液を衛生陶器表面に滴用後乾燥させることにより着色性固形物を付着形成させる工程、前記着色性固形物が付着形成された衛生陶器表面を含水不織布により摺動する工程、摺動前後の衛生陶器表面の色差を測定する工程、を含むことを特徴とする衛生陶器表面の水垢汚れ除去性の評価方法を提供する。
【0008】
適切な濃度の溶性ケイ酸を含有する水溶液を衛生陶器表面に適用後乾燥させることにより、同一条件下で迅速かつ簡便に衛生陶器表面に水垢を形成することが可能となる。また、適切な濃度の水溶性色素を含有させておくことで、前記衛生陶器表面に付着形成した水垢が染色され、色により評価および観察が可能となる。更には、衛生陶器の実使用時における清掃を想定した一定条件下での含水不織布による摺動試験を行うことにより、水垢汚れの除去し易さを同一条件で評価することが可能になると共に、摺動試験の前後において側色計によりL、a、bを測定し色差ΔEabを計算することで、水垢汚れ除去性の定量的評価が可能となる。
なお、摺動試験前後の衛生陶器表面の色差ΔEabについては、JIS−Z8722に基づき、摺動試験前のL、a、bの各値を測定した後に摺動試験を行い、摺動試験後のL、a、bの各値を測定し、以下に示す計算式により求められる。
【0009】
【数1】

【0010】
本発明の好ましい態様においては、前記水溶性の色素および溶性ケイ酸を含有する水溶液中の色素の濃度が、0.010〜0.015重量%であるようにする。
色素の濃度が0.010重量%未満であると、含水不織布により摺動された後の衛生陶器表面において、側色計によって測定可能な染色程度が得られず、不適である。また、色素は水垢形成成分とは基本的に無関係なので、あまり量が多いのは好ましくない。その理由から、色素の濃度はが0.015重量%以下とする。
よって、色素の濃度を0.010〜0.015重量%とすることによって、含水不織布により摺動された後の衛生陶器表面においても、目視にて観察することが可能であると共に、測色計によって測定可能な程度の適度な染色程度が得られるので好適である。
【0011】
本発明の好ましい態様においては、前記水溶性の色素は、メチレンブルーであるようにする。
メチレンブルーを含有する水溶液で大便器のボール面等の衛生陶器表面を染色することで、水垢汚れおよび水垢に付随する汚れが青色に染色される。一方、水洗後の衛生陶器の釉薬、もしくは汚れ付着の無い表面はほとんど染色されないため、その染色度合いによって水垢系汚れの付着度合いが目視にて観察することが可能になると共に、含水不織布により摺動された後においても、測色計によって測定可能な程度の染色程度が得られるので好適である。
【0012】
本発明の好ましい態様においては、前記水溶性の色素および溶性ケイ酸を含有する水溶液中の溶性ケイ酸の濃度が、80〜100ppmであるようにする。
水溶液中の溶性ケイ酸の濃度が低すぎる場合、所望の水垢付着量を得るためには、水溶液塗布と乾燥の操作を何度も繰り返し行う必要が有り、好ましくない。また、水溶液中の溶性ケイ酸濃度が高すぎる場合、多量の水垢粉末が水中に分散した状態となり、実使用時の水道水とは異なる挙動を示すことになるので、不適である。
よって、実使用時に近い水垢付着形態を迅速かつ忠実に再現するという目的において、溶性ケイ酸の濃度は80〜100ppmとすることが好ましい。
【0013】
本発明の好ましい態様においては、前記溶性ケイ酸は、ケイ酸塩の20〜30%水溶液であるようにする。
水垢の主成分はケイ酸(Si(OH)4)である。ケイ酸塩に塩酸を添加し、pHを略7とすることにより、白色無定形の膠状物質が生成するが、これが物体表面に付着乾燥すると水垢と同一のものが形成される。よって、溶性ケイ酸としてケイ酸塩の20〜30%水溶液を使用することによって、評価の実用性および信頼性を向上させることができる。実際の調整に当たっては、ケイ酸塩として、試薬の水ガラス(ケイ酸ナトリウムの30%水溶液)を好適に使用することができる。
【0014】
本発明の好ましい態様においては、前記水溶液を滴用後乾燥する操作を繰り返し行うようにする。
水溶性の色素および溶性ケイ酸を含有する水溶液を、衛生陶器表面に適用後乾燥する操作を繰り返し行うことにより、目的とする衛生陶器表面に迅速に水垢を付着形成させることができ、繰り返し回数を調節することにより、水垢付着量の調節も可能となるので好適である。
【0015】
本発明の好ましい態様においては、前記水溶液を適用する工程は、スプレーにより適量噴霧する方法、もしくは、スポイトなどにより数滴滴下する方法を用いるようにする。
ここで適用方法は、スプレー、刷毛塗り等の方法が利用できるが、とりわけ、非接触の状態で適用可能なスプレー噴霧法が好ましい。
【0016】
本発明の好ましい態様においては、前記摺動する工程は、前記含水不織布に0.98N(100gf/cm)の荷重を掛けて行われるようにする。
衛生陶器表面の清掃方法は、例えば、大便器のボール面であれば、界面活性剤等を付着させたブラシや束子を用いて便器表面をある程度の力で往復摺動することによることが多く行われ、また、洗面器のボール面であれば、界面活性剤等を付着させたスポンジを用いて洗面器表面をある程度の力で往復摺動することによることが多く行われている。
よって、衛生陶器の実使用における清掃時になるべく近い条件を再現するという目的において、含水不織布に掛ける荷重は0.98N(100gf/cm)とすることが好ましい。
【0017】
本発明の好ましい態様においては、前記摺動する回数は、5〜100回であるようにする。
衛生陶器表面の清掃方法は、例えば、大便器のボール面であれば、界面活性剤等を付着させたブラシや束子を用いて便器表面をある程度の力で往復摺動することによることが多く行われ、また、洗面器のボール面であれば、界面活性剤等を付着させたスポンジを用いて洗面器表面をある程度の力で往復摺動することによることが多く行われている。
衛生陶器の実使用における清掃時になるべく近い条件を再現するという目的において、含水不織布を往復摺動する回数は5〜100回とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、衛生陶器表面の水垢着汚れの除去性を、同一条件において評価可能な方法を提供することできる、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例における水垢汚れ除去性を示す図である。
【図2】本発明の比較例における水垢汚れ除去性を示す図である。
【図3】本発明の実施例における摺動回数と色差の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の衛生陶器表面の水垢汚れ除去性の評価方法は、例えば、大便器、小便器、洗面器、手洗い器、便器タンク、便器のサナ等の水垢汚れ除去性の評価に利用できるが、特に大便器のボール面、手洗い付きロータンク蓋のボール面、小便器のボール面、洗面器または手洗い器のボール面に好適である。更には、平面形状のテストピースの水垢汚れ除去性の評価にも適用できる。
【0021】
水溶性の色素としては、ビスマルクブラウン、カーミン、クマシーブルー、クリスタルバイオレット、エオシン(エオシンY、エオシンB)、エチジウムブロマイド、フクシン、ヘマトキシリン(ヘマトキシリン・エオシン)、ヨウ素、マラカイトグリーン、メチルグリーン、メチレンブルー、ニュートラルレッド、ナイルブルー、ナイルレッド、ローダミン、サフラニン、アリザリンレッドS、アルシアンブルー等が利用可能である。中でも、とりわけ、メチレンブルーが衛生陶器表面に付着形成された水垢に対する発色が明瞭であり、摺動試験前後における測色および色差を計算する上で好ましい。
【0022】
本発明の水垢汚れ除去性の評価方法は、実使用下における大便器のボール面、小便器のボール面であれば、例えば、以下の態様で使用する。大便器のボール内の溜水または小便器のボール(トラップ)内の溜水を抜き、風乾した後に、pHを7.0に調節した水溶性の色素および溶性ケイ酸を含有する水溶液を前記大便器のボール面または小便器のボール面の少なくとも一部、半面あるいは全面にスプレー等で適量噴霧し、室温で乾燥させて着色された水垢を形成させる。その後、前記大便器のボール面または小便器のボール面の評価対象部分を硬質セラミックス用ダイヤモンドソー等で切り出し、測色計により切り出した陶器片のL値、a値、b値を測定後摺動試験機にセットし、荷重0.98Nを掛けた含水不織布で5〜100回摺動する。摺動後の陶器片表面を再度測色計を用いてL値、a値、b値を測定し、摺動前に対する色差ΔEabを計算する。
【0023】
本発明の水垢汚れ除去性の評価方法は、実使用下における手洗い付きロータンク蓋のボール面、洗面器または手洗い器のボール面であれば、例えば、以下の態様で使用する。手洗い付きロータンク蓋のボール面、洗面器または手洗い器のボール面を風乾した後に、pHを7.0に調節した水溶性の色素および溶性ケイ酸を含有する水溶液を前記ロータンク蓋のボール面、洗面器または手洗い器のボール面の少なくとも一部、半面あるいは全面にスプレー等で適量噴霧し、室温で乾燥させて着色された水垢を形成させる。その後、前記大ロータンク蓋のボール面、洗面器または手洗い器のボール面の評価対象部分を硬質セラミックス用ダイヤモンドソー等で切り出し、測色計により切り出した陶器片のL値、a値、b値を測定後摺動試験機にセットし、荷重0.98Nを掛けた含水不織布で5〜100回摺動する。摺動後の陶器片表面を再度測色計を用いてL値、a値、b値を測定し、摺動前に対する色差ΔEabを計算する。
【0024】
本発明の水垢汚れ除去性の評価方法は、製造後且つ実使用前の大便器、小便器、洗面器、手洗い器、便器タンク、便器のサナ等であれば、例えば、以下の態様で使用する。大便器、小便器、洗面器、手洗い器、便器タンク、便器のサナ等の衛生陶器表面の水滴、埃、汚れを取り除いた後に、pHを7.0に調節した水溶性の色素および溶性ケイ酸を含有する水溶液を前記衛生陶器表面の少なくとも一部、半面あるいは全面にスプレー等で適量噴霧し、室温で乾燥させて着色された水垢を形成させる。その後、前記衛生陶器表面の評価対象部分を硬質セラミックス用ダイヤモンドソー等で切り出し、測色計により切り出した陶器片のL値、a値、b値を測定後摺動試験機にセットし、荷重0.98Nを掛けた含水不織布で5〜100回摺動する。摺動後の陶器片表面を再度測色計を用いてL値、a値、b値を測定し、摺動前に対する色差ΔEabを計算する。
【0025】
なお、評価対象とするべき衛生陶器表面と同一の表面を持つミニチュアサンプルまたはテストピースを用意し、同様の操作を行って水垢汚れ除去性を評価することも可能である。
【実施例】
【0026】
(実施例1)
板状の衛生陶器試験片の釉薬表面上に、住友大阪セメント製ジルコニアゾル(固形分濃度1.25重量%)を塗布した。前記塗布の工程は、前記板状のフローコートを用い、乾燥後のサンプルを300℃×1時間焼成することで、強固なジルコニア被膜を得た。フローコート試験片のコーティング被覆率は顕微鏡で確認したところにより算出したところ、100%であった。
【0027】
次に、蒸留水1Lに、30重量%の水ガラスを0.5mL(溶性ケイ酸として100ppm相当)入れ、攪拌後、塩酸を加えてpHを7.0に調節した。その後、固着後の水垢を可視化するために、色素としてメチレンブルーを0.010重量%となるように混合し、擬似水垢溶液を調製した。
上記ジルコニア被覆率100%の板状試験片表面に前記擬似水垢溶液を20μLずつ2滴、直径25.4mmの範囲内に滴下した。室温で約2日乾燥した後、固着した固形物を市販の不織布を用いて、水をたらしながら、手でこすり、目視で色が消えるまで摺動を加えた。その後、水垢が除去できたと思われる部分をデジタルマイクロスコープ(キーエンス:VHX‐900)で詳細確認を行った(図1参照)。その結果、目視で水垢が除去出来た部分の水垢残りは確認できなかった。
【0028】
(比較例1)
蒸留水1Lに、30重量%の水ガラスを0.5mL(溶性ケイ酸として100ppm相当)入れ、攪拌後、塩酸を加えてpHを7.0に調節した。実施例1と同じ板状試験片表面に前記擬似水垢溶液を20μLずつ2滴、直径25.4mmの範囲内に滴下した。室温で約2日乾燥した後、固着後の水垢を可視化するために、0.010重量%のメチレンブルー水溶液を固着水垢に噴霧し、水垢を着色した。その後、着色した固形物を市販の不織布を用いて、水をたらしながら、手でこすり、目視で色が消えるまで摺動を加えた。水垢が除去できたと思われる部分をデジタルマイクロスコープ(キーエンス:VHX‐900)で詳細確認を行った。(図2参照)その結果、目視で水垢が除去出来た部分について着色剤が抜けた水垢が確認できた。
【0029】
(実施例2)
板状の衛生陶器試験片の釉薬表面上に、住友大阪セメント製ジルコニアゾル(固形分濃度1.25重量%)を塗布した。前記塗布の工程は、前記板状の試験片全体を60℃に加熱した状態でスプレーコーティングを用い、乾燥後のサンプルを300℃×1時間焼成することで、強固なジルコニア被膜を得た。この試験片のコーティング被覆率を顕微鏡写真の画像解析により算出したところ、約93%であった。
なお、被覆率は、基材表面を顕微鏡等により拡大して観察し、視野内の「被膜部分の面積」と「基材が露出している部分の面積」を画像解析等の手段を用いて算出し、以下の式で定義して求めた。
【0030】
【数2】

【0031】
次に、蒸留水1Lに、30重量%の水ガラスを0.4mL(溶性ケイ酸として80ppm相当)入れ、攪拌後、塩酸を加えてpHを7.0に調節した。その後、固着後の水垢を可視化するために、色素としてメチレンブルーを0.010重量%となるように混合し、擬似水垢溶液を調製した。
上記ジルコニア被覆率約93%の板状試験片表面に前記擬似水垢溶液を20μLずつ2滴、直径25.4mmの範囲内に滴下した。室温で約2日乾燥した後、固着した固形物を市販の不織布を用いて、荷重100g/cm、水和条件下で、摺動試験を行った。摺動試験には、市販の摺動試験機(太平理化工業製ラビングテスタこすり試験機)を用いた。摺動試験開始前(摺動回数0回)と摺動試験10回実施後において、分光測色計(ミノルタ製CM−3700d)を用い、JIS−Z8722条件cに基づき測定径Φ25.4mm,d/8 SCI方式により、明度L値、a値、b値を測定し、摺動試験前後の色差ΔEabを計算した。
その結果、色差ΔEabは0.5以上であり、水垢の落ち具合を比較することが可能であった。
【0032】
(比較例2)
蒸留水1Lに、30重量%の水ガラスを0.2mL(溶性ケイ酸として40ppm相当)入れ、攪拌後、塩酸を加えpHを7に調節した。その後、固着後の水垢を可視化するために、色素としてメチレンブルーを0.005重量%となるように混合し、擬似水垢溶液を調製した。
上記擬似水垢溶液以外は、実施例1と同一のサンプルを使用し、同様の評価を行った。その結果、色差ΔEabは0.5以下であり、水垢の落ち具合を比較することができなかった。
【0033】
(比較例3)
蒸留水1Lに、30重量%の水ガラスを0.4mL(溶性ケイ酸として80ppm相当)入れ、攪拌後、塩酸を加えpHを7に調節した。その後、固着後の水垢を可視化するために、色素としてメチレンブルーを0.005重量%となるように混合し、擬似水垢溶液を調製した。
上記擬似水垢溶液以外は、実施例1と同一のサンプルを使用し、同様の評価を行った。その結果、色差ΔEabは0.5以下であり、水垢の落ち具合を比較することができなかった。
【0034】
(比較例4)
蒸留水1Lに、30重量%の水ガラスを0.2mL(溶性ケイ酸として40ppm相当)入れ、攪拌後、塩酸を加えpHを7に調節した。その後、固着後の水垢を可視化するために、色素としてメチレンブルーを0.010重量%となるように混合し、擬似水垢溶液を調製した。
上記擬似水垢溶液以外は、実施例1と同一のサンプルを使用し、同様の評価を行った。その結果、色差ΔEabは0.5以下であり、水垢の落ち具合を比較することができなかった。
【0035】
【表1】

【0036】
(実施例3〜9)
衛生陶器釉薬を施釉した板状のサンプル上に住友大阪セメント製ジルコニアゾル(固形分濃度1.25重量%)を塗布した。前記塗布の工程は、前記板状のサンプルを約65℃に加熱した状態でスプレーを用い、スプレー時間を調節することで、コーティング被覆率を変化させた。得られた被覆率の違うサンプルを300℃×1.5時間焼成することで、強固な被膜を得た。各被覆率におけるサンプル表面の60度光沢度の測定値及びレーザー顕微鏡(キーエンス製VK9700)で観察した液滴の表面形態をまとめて表2に示す。
実施例1で調製した擬似水垢溶液を20μLずつ2滴、直径25.4mmの範囲内に滴下した。室温で約2日乾燥した後、固着した固形物を市販の不織布を用いて、荷重100g/cm、水和条件下で、摺動試験を行った。摺動試験には、市販の摺動試験機(太平理化工業製ラビングテスタこすり試験機)を用いた。摺動試験開始前(摺動回数0回)と摺動試験10回実施後において、分光測色計(ミノルタ製CM−3700d)を用い、JIS−Z8722条件cに基づき測定径Φ25.4mm,d/8 SCI方式により、明度L値、a値、b値を測定し、摺動試験前後の色差ΔEabを計算した。
各摺動回数における色差ΔEabの計算結果を、表2および図3に示す。
【0037】
【表2】

【0038】
板状衛生陶器試験片は、番号1が表面処理無し、次いで番号2〜7は、番号が増えるに従って水垢が落ち易いように表面処理を施してある。図3によれば、色差ΔEabは、各試験片の表面処理による水垢の落ち易さを反映した挙動を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性の色素および溶性ケイ酸を含有する水溶液を調製する工程、前記水溶液のpHを7.0に調節する工程、前記pHを7.0に調節した水溶液を衛生陶器表面に滴用後乾燥させることにより着色性固形物を付着形成させる工程、前記着色性固形物が付着形成された衛生陶器表面を含水不織布により摺動する工程、摺動前後の衛生陶器表面の色差を測定する工程、を含むことを特徴とする衛生陶器表面の水垢汚れ除去性の評価方法。
【請求項2】
前記水溶性の色素および溶性ケイ酸を含有する水溶液中の色素の濃度が、0.010〜0.015重量%であることを特徴とする請求項1に記載の衛生陶器表面の水垢汚れ除去性の評価方法。
【請求項3】
前記水溶性の色素は、メチレンブルーであることを特徴とする請求項1または2に記載の衛生陶器表面の水垢汚れ除去性の評価方法。
【請求項4】
前記水溶性の色素および溶性ケイ酸を含有する水溶液中の溶性ケイ酸の濃度が、80〜100ppmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の衛生陶器表面の水垢汚れ除去性の評価方法。
【請求項5】
前記溶性ケイ酸は、ケイ酸塩の20〜30%水溶液であることを特徴とする請求項1〜4のいすれか一項に記載の衛生陶器表面の水垢汚れ除去性の評価方法。
【請求項6】
前記水溶液を滴用後乾燥する操作を繰り返し行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の衛生陶器表面の水垢汚れ除去性の評価方法。
【請求項7】
前記水溶液を適用する工程は、スプレーにより適量噴霧する方法、もしくは、スポイトなどにより数滴滴下する方法を用いることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の衛生陶器表面の水垢汚れ除去性の評価方法。
【請求項8】
前記摺動する工程は、前記含水不織布に0.98N(100gf/cm)の荷重を掛けて行われることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の衛生陶器の水垢汚れ除去性の評価方法。
【請求項9】
前記摺動する回数は、5〜100回であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の衛生陶器表面の水垢汚れ除去性の評価方法。
【請求項10】
前記衛生陶器表面は、大便器のボール面であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の衛生陶器の水垢汚れ除去性の評価方法。
【請求項11】
前記衛生陶器表面は、手洗い付きロータンク蓋のボール面であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の衛生陶器の水垢汚れ除去性の評価方法。
【請求項12】
前記衛生陶器表面は、小便器のボール面であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の衛生陶器の水垢汚れ除去性の評価方法。
【請求項13】
前記衛生陶器表面は、洗面器または手洗い器のボール面であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の衛生陶器の水垢汚れ除去性の評価方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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