説明

衝撃緩衝部材および衝撃緩衝部材を備える携帯端末

【課題】重量の増加や外形寸法の増大を抑えながら耐衝撃性を向上させ、外内装部品の破損を防止する。
【解決手段】携帯端末の筐体の外面に備えられた衝撃緩衝部材は、アウターバンパ111とインナーバンパ112とで構成されている。アウターバンパ111は、塑性体で構成されており、狭い接触面積で受けた落下エネルギを塑性変形して吸収する。アウターバナバンパ111とインナーバンパ112との間に空洞113があることによって、アウターバンパ111は内側に変形可能である。落下エネルギがアウターバンパ111の塑性変形によって吸収される量を超過していた場合、アウターバンパ111の変形によって空洞113はなくなり、吸収しきれなかった落下エネルギがインナーバンパ112に広い接触面積で伝達する。インナーバンパ112は、弾性体で構成されており、アウターバンパ111から伝達した落下エネルギを弾性変形して分散する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末の内装部品を衝撃から守る衝撃緩衝部材および衝撃緩衝部材を備える携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの携帯端末の内装部品を落下の衝撃から守る衝撃緩衝方法には、弾性変形によって落下エネルギを分散する方法や、塑性変形によって落下エネルギを吸収する方法がある。
【0003】
特許文献1は、塑性変形によって落下エネルギを吸収する方法の例である。特許文献1の衝撃緩和筐体では、落下衝突によって発生した衝撃エネルギの一部を衝撃緩和筐体の亀裂破損部が破壊、すなわちノッチ先端から円筒形もしくは球状の空隙部に至るまでの亀裂を起こすことによって消費され、座屈変形を起こす過程で衝撃加速度が減衰する。その結果、筐体を伝わって内部装置へ伝播する衝撃力が緩和されて、内部装置を保護することができる。
【0004】
特許文献2は、弾性変形によって落下エネルギを分散する方法の例である。特許文献2のパック電池は、複数の電池1を収納するインナーパック3と外装ケース4との間に衝撃吸収隙間5を設けると共に、この衝撃吸収隙間5に位置して、一端をインナーパック3又は外装ケース4に連結し、かつパック電池の衝撃で弾性的に変形して衝撃のエネルギを吸収する硬質プラスチック又は金属製の弾性バネ6を配設している。この構造は、硬質プラスチック又は金属製の弾性バネを弾性変形させて衝撃を吸収するので、従来の合成樹脂発泡体のクッション材のように経時的に劣化して脆くなって耐衝撃性が低下するのを有効に防止して、長期間にわたって優れた耐衝撃性を実現できる。
【0005】
特許文献3には、落下衝撃力に対する緩衝性能が改善された携帯用電子機器が開示されている。特許文献3の携帯用電子機器が備える外力緩衝部8は、高剛性マグネシウム筐体5に設けられた凸部81と凹部82とが互いに嵌合した構造を有する。外力緩衝部8内でのかかる落下衝撃力の伝達の際に、凹部82の溝壁と凸部81との機械的強度の差によって凹部82が変形あるいは破壊し、落下衝撃力は凹部82の変形あるいは破壊に消費され、凸部81は実質的に原形を保つことなる。この結果、落下衝撃力から保護されることになる。
【0006】
特許文献4には、使用状況に応じて耐衝撃性、耐振動性、耐防水性を向上させるX線撮影装置が開示されている。特許文献4のX線撮影装置は、筐体32の側面の各辺にそれぞれ衝撃吸収部材52が取り付けられており、衝撃吸収部材52は、内側の強度部材55と外側の弾性部材56とから成っている。落下等によって筐体32の側面に外力Fを受けた場合に、外力Fが比較的小さければ、弾性部材56が変形して衝撃のエネルギを吸収し、筐体32内の各構成要素を保護することができる。この弾性部材56の変形は弾性変形のため、外力Fがなくなれば元の形状に復元する。外力Fが比較的大きいと、弾性部材56の変形のみでは衝撃のエネルギを吸収しきれず、変形が強度部材55まで伝達され外側の外壁57が変形し、衝撃のエネルギを吸収する。
【0007】
特許文献5には、外部からの衝撃に対して筐体内に収容した機器の破損を防止し得る携帯端末が開示されている。特許文献5の携帯端末は、互いに対向する一対のリブを筐体内部に有しており、機器がこの両リブ間に近接して筐体内に収容されている。そして、リブは、筐体の内壁から突出する複数の突出壁部と、これら各突出壁部の突出端を連結する連結壁部とを備えており、各突出壁部および連結壁部は、弾性変形可能に形成されている。これにより、落下等によって筐体に外部から衝撃が加えられると、その衝撃により筐体が撓み、この筐体の撓みに応じてリブの突出壁部も弾性変形する。そして、外部からの衝撃は、突出壁部が弾性変形することによって吸収されるとともに連結壁部で分散されて緩衝される。そのため、リブを介する機器への衝撃の伝搬が抑制される。
【0008】
特許文献6には、衝突事故の被害者への衝撃力を有利に小さく為し得、以て被害者の負傷状態を可及的に軽度に抑え得るようにした自動車用グリルガードが開示されている。特許文献6の技術では、自動車の前方側に向かって外部に露呈されるカバー12を軟質材にて構成すると共に、該カバー12の背後に、外部からの衝撃を吸収せしめる衝撃吸収体14を、かかる衝撃による該カバー12の変形を許容する空洞32を介して配設し、該カバー12の変形による衝撃吸収作用と該衝撃吸収体14の破壊による衝撃吸収作用とが、有利に発揮され得るように構成している。衝撃吸収構造体14は、基板20と、複数のリブ22とを有して、成っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−069135号公報
【特許文献2】特開2007−273180号公報
【特許文献3】特開2005−123469号公報
【特許文献4】特開2006−006424号公報
【特許文献5】特開2010−238224号公報
【特許文献6】特開平10−147195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1〜6に記載の衝撃緩衝構造は、重量の増加や外形寸法の増大を避けられない。このために、特に耐衝撃性を要求される携帯電話などの携帯端末に、衝撃緩衝構造を設けると携帯性が低下するという問題がある。
【0011】
本発明は、重量の増加や外形寸法の増大を抑えながら耐衝撃性を向上させ、外内装部品の破損を防止する衝撃緩衝部材および衝撃緩衝部材を備える携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る衝撃緩衝部材は、
携帯端末が備える筐体の端部の外面に密着して設置される弾性体のインナーバンパと、
前記インナーバンパとの間に空洞を形成して前記インナーバンパに接続する、前記筐体の外側に向かって凸の形状の塑性体のアウターバンパと、
で構成され、
前記アウターバンパは、前記携帯端末が落下したときに受ける落下エネルギの少なくとも一部を、前記空洞を形成する部分の塑性変形で吸収する
ことを特徴とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の第2の観点に係る携帯端末は、
内装部品を収納する筐体と、
前記筐体の端部の外面に密着して設置される弾性体のインナーバンパと、前記インナーバンパとの間に空洞を形成して前記インナーバンパに接続する、前記筐体の外側に向かって凸の形状の塑性体のアウターバンパとで構成される衝撃緩衝部材と、
を備え、
前記アウターバンパは、携帯端末が落下したときに受ける落下エネルギの少なくとも一部を、前記空洞を形成する部分の塑性変形で吸収する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、重量の増加や重量の増加や外形寸法の増大を抑えながら耐衝撃性を向上させ、外内装部品の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯端末の正面図および断面図である。
【図2】実施形態に係る携帯端末の衝撃緩衝部材を拡大した図である。
【図3】実施形態に係る携帯端末が落下する様子を示す図である。
【図4】実施形態に係る携帯端末が落下したときに地面に接触する衝撃緩衝部材の外面の様子を拡大した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る衝撃緩衝部材について図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る携帯端末の正面図および断面図である。図1(a)は正面から携帯端末1を見た状態を示し、図1(b)は、図1(a)のX平面での断面を示す。
【0018】
携帯端末1は、液晶画面12を備える筐体10で構成されている。筐体10の内側には、内装部品13が収納されている。内装部品13が破壊されると、携帯端末1の機能に支障をきたすので、落下の衝撃から守る必要がある。なお、携帯端末の内装部品は、当業者にとってよく知られており、また本発明とは直接関係しないので、その詳細な構成は省略する。筐体10の上端と下端には、衝撃緩衝部材11が備えられている。
【0019】
図2は、実施形態に係る携帯端末の衝撃緩衝部材を拡大した図である。図2では、図1(b)の破線円で囲んだ筐体10の下端の衝撃緩衝部材11を拡大している。衝撃緩衝部材11は、アウターバンパ111とインナーバンパ112とで構成されている。アウターバンパ111は、塑性体で構成されており、受けた落下エネルギを塑性変形して吸収する。アウターバナバンパ111とインナーバンパ112との間に空洞113があることによって、アウターバンパ111は内側に変形可能である。落下エネルギがアウターバンパ111の塑性変形によって吸収可能な量を超過していた場合、アウターバンパ111の変形によって空洞113はなくなり、吸収しきれなかった落下エネルギがインナーバンパ112に伝達する。インナーバンパ112は、弾性体で構成されており、落下エネルギを弾性変形して分散する。このようにして、内装部品13は、落下の衝撃から守られる。
【0020】
また、図1(a)に示すように、アウターバンパ111と筐体10とは、質感が同一であり、外観上一体に見えるように塗装されている。外側にゴムやシリコンなどの弾性体を用いる衝撃緩衝構造では、携帯端末の外装に主に使用される金属やプラスチックと一体化した外観にする塗装が困難であり、意匠性を損なう可能性がある。しかしながら、本実施の形態のように、アウターバンパ111に塑性体を用いることで、筐体10とアウターバンパ111とが一体に見える外観が実現可能である。
【0021】
図2では、便宜上、筐体10の下端の衝撃緩衝部材11を拡大して説明したが、上端の衝撃緩衝部材11も同様の構成である。
【0022】
図3は、実施形態に係る携帯端末が落下する様子を示す図である。携帯端末の落下衝撃試験における一般的な落下条件では、1500G(0.5ms)の落下衝撃が加えられる。このような大きな落下衝撃から内装部品13を保護するために、弾性体または塑性体の衝撃緩衝部材のみで落下エネルギを分散させる場合、衝撃緩衝部材の大きさが増大し、携帯端末1の外形寸法や重量は相当に大きくなる。そこで、本実施の形態の衝撃緩衝部材11は、塑性体のアウターバンパ111と弾性体のインナーバンパ112と組み合わせて構成する。まず、アウターバンパ111が塑性変形して衝撃を吸収し、インナーバンパ112が弾性変形して、残りの衝撃を分散することで、内装部品13を保護し、かつ、携帯端末1の重量の増加や外形寸法の増大を最小限に抑える衝撃緩衝部材11を実現する。
【0023】
図4は、実施形態に係る携帯端末が落下したときに地面に接触する衝撃緩衝部材の外面の様子を拡大した図である。図4(a)のように、携帯端末1が落下し地面に接触すると、まず、アウターバンパ111は、筐体10の外側に向かって凸の形状であるので、狭い接触面積で落下エネルギを受ける。次に、図4(b)のように、アウターバンパ111は、受けた落下エネルギを塑性変形して吸収する。アウターバナバンパ111の変形に伴い、空洞113も変形し、減少する。図4(c)のように、落下エネルギがアウターバンパ111が吸収できる量を超えると、空洞113がなくなり、アウターバンパ111が吸収しきれなかった落下エネルギがインナーバンパ112に広い接触面積で伝達する。図4(d)のように、インナーバンパ112は、広い接触面積で伝達された落下エネルギを弾性変形して分散する。
【0024】
本実施の形態では、インナーバンパ112は、アウターバンパ111が吸収した残りの落下エネルギを広い接触面積で受け、弾性変形して分散する。これにより、インナーバンパ112の厚みを薄くすることができ、全体として携帯端末1の重量の増加や外形寸法の増大を抑えることができる。上記のような構成によれば、衝撃緩衝部材11は、インナーバンパ112を塑性体で構成し、アウターバンパ111を弾性体で構成する場合よりも、小さくすることが可能である。また、塑性変形した部材を交換する場合に、外側に塑性体のアウターバンパ111が設置されているほうが交換しやすいという利点がある。さらに、アウターバンパ111に塑性体を用いることで、筐体10とアウターバンパ111とが一体に見える外観が実現可能である。
【0025】
本発明は、上記の実施の形態に限らず、特許請求の範囲において種々改変されてもよい。
【0026】
また、本発明の携帯端末は、スマートフォンや、携帯電話機、PHS(Personal Handy-phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)など、あらゆる携帯端末に適用できる。
【0027】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下に限らない。
【0028】
(付記1)
携帯端末が備える筐体の端部の外面に密着して設置される弾性体のインナーバンパと、
前記インナーバンパとの間に空洞を形成して前記インナーバンパに接続する、前記筐体の外側に向かって凸の形状の塑性体のアウターバンパと、
で構成され、
前記アウターバンパは、前記携帯端末が落下したときに受ける落下エネルギの少なくとも一部を、前記空洞を形成する部分の塑性変形で吸収する
ことを特徴とする衝撃緩衝部材。
【0029】
(付記2)
内装部品を収納する筐体と、
前記筐体の端部の外面に密着して設置される弾性体のインナーバンパと、前記インナーバンパとの間に空洞を形成して前記インナーバンパに接続する、前記筐体の外側に向かって凸の形状の塑性体のアウターバンパとで構成される衝撃緩衝部材と、
を備え、
前記アウターバンパは、携帯端末が落下したときに受ける落下エネルギの少なくとも一部を、前記空洞を形成する部分の塑性変形で吸収する
ことを特徴とする携帯端末。
【0030】
(付記3)
前記アウターバンパは、前記筐体と質感が同一であり、外観上一体に見えるように、塗装されることを特徴とする付記2に記載の携帯端末。
【符号の説明】
【0031】
1 携帯端末
10 筐体
11 衝撃緩衝部材
12 液晶画面
13 内装部品
111 アウターバンパ
112 インナーバンパ
113 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯端末が備える筐体の端部の外面に密着して設置される弾性体のインナーバンパと、
前記インナーバンパとの間に空洞を形成して前記インナーバンパに接続する、前記筐体の外側に向かって凸の形状の塑性体のアウターバンパと、
で構成され、
前記アウターバンパは、前記携帯端末が落下したときに受ける落下エネルギの少なくとも一部を、前記空洞を形成する部分の塑性変形で吸収する
ことを特徴とする衝撃緩衝部材。
【請求項2】
内装部品を収納する筐体と、
前記筐体の端部の外面に密着して設置される弾性体のインナーバンパと、前記インナーバンパとの間に空洞を形成して前記インナーバンパに接続する、前記筐体の外側に向かって凸の形状の塑性体のアウターバンパとで構成される衝撃緩衝部材と、
を備え、
前記アウターバンパは、携帯端末が落下したときに受ける落下エネルギの少なくとも一部を、前記空洞を形成する部分の塑性変形で吸収する
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項3】
前記アウターバンパは、前記筐体と質感が同一であり、外観上一体に見えるように、塗装されることを特徴とする請求項2に記載の携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−58883(P2013−58883A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195599(P2011−195599)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】