説明

衝突防止システム

【課題】報知手段より音や光を発して報知情報を伝えることによる衝突防止システムでは、歩行者が報知情報を受け逃してしまうことがある。
【解決手段】本発明は、標識12a、12bと、標識12a、12bの表示面を隠して保持するとともに通路15の壁18a、18bに設置した保持部13a、13bと、標識12a、12bを通路15の幅方向へ突出させる作動部16a、16bと、通路15と交わる通路21a、21bを検出対象とする障害物検出部17a、17bと、を備え、障害物検出部17a、17bによる障害物の検出に基づき、作動部16a、16bは、通路15及び通路21a、21bが交わるT字交差点11離れた側に、表示面を向けて標識12a、12bを突出させる構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の通路が交差する交差点などで、障害物と電動車両との衝突を防ぐ衝突防止システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院、介護施設または工場内などにおいて、十字路、T字またはL字コーナーなどでは、出会い頭に人と人とが衝突することがある。その理由は、ある通路を移動する人にとって、その通路と交差する通路が死角となるためである。そこで曲り角での衝突を防止するための衝突防止装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図12は、従来の衝突防止装置1を説明するための通路の概略図である。図13は、従来の衝突防止装置1の斜視図である。図12、図13に示すように、衝突防止装置1は、障害物を検知するセンサ2a、2bと、センサ2a、2bの検出結果に基づいて障害物が曲り角7に近づいていることを報知する報知手段3a、3bを有する。衝突防止装置1は、通路5、6が交差するL字形の曲り角7に設置される。センサ2aの検知エリア8aに歩行者9が侵入すると、衝突防止装置1は報知手段3bを動作させる。報知手段3bは、表示灯とスピーカで構成され、光と音により歩行者9が通路6から曲り角7に接近していることを、通路5を移動する歩行者10へ報知する。同様に、センサ2bの検知エリア8bに歩行者10が侵入すると、センサ2bが歩行者10を検知して、報知手段3aを動作させる。そして、報知手段3aは、通路6を移動する歩行者9へ、歩行者10が通路5から曲り角7へ近づいていることを光と音により報知する。この衝突防止装置1により、出会い頭に人と人とが衝突することを減らすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−48400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の衝突防止装置1は、周囲の居室で作業をする人や休息を取る人の妨げになることがあり、病院、介護施設または工場内などで使用する場合、光を弱くし、音を小さくする必要がある。この場合、報知手段3a、3bからの報知を、歩行者が報知情報を受け逃してしまうことがある。
【0006】
本発明は、光や音を用いずに、交差点に近づく人へ通路の障害物の情報を伝える衝突防止システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、本発明の衝突防止システムは、標識と保持部と作動部とを備えた標識装置と、障害物検出部と、制御装置とから構成され、前記保持部は、前記標識の表示面を収納して保持すると共に第1通路の壁に設置され、前記障害物検出部は、前記第1通路と交差する第2通路の障害物を検出し、前記制御装置は、前記障害物検出部による前記第2通路の障害物の検出に基づいて、前記標識の表示面が前記第2通路より離れる方向に向くように前記作動部により前記標識を突出させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、光や音を用いずに、交差点に近づく人へ通路の障害物の情報を伝える衝突防止システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1におけるT字交差点に設けた衝突防止システムの説明図
【図2】本実施の形態1におけるT字交差点の正面図
【図3】本実施の形態1における標識装置を示す図であり、(a)障害物を検出していない時の標識装置の斜視図、(b)障害物を検出した時の標識装置の斜視図
【図4】本実施の形態1における衝突防止システムの動作のフローチャート
【図5】本発明の実施の形態2における標識装置の正面図
【図6】本発明の実施の形態3におけるスライド式の標識装置の正面図
【図7】本発明の実施の形態4における標識装置を示す図であり、(a)障害物を検出していない時の標識装置の斜視図、(b)障害物をT字交差点より離れた箇所で検出した時の標識装置の斜視図、(c)障害物をT字交差点に近づいた箇所で検出した時の標識装置の斜視図
【図8】本発明の実施の形態5におけるT字交差点に設けた衝突防止システムの説明図
【図9】本実施の形態5におけるT字交差点に設けた衝突防止システムの説明図
【図10】本発明の実施の形態6における十字交差点に設けた衝突防止システムの説明図
【図11】本発明の実施の形態7における十字交差点に設けた衝突防止システムの説明図
【図12】従来の衝突防止装置を説明するための通路の概略図
【図13】従来の衝突防止装置の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ構成要素には同じ符号を付しており、説明を省略する場合もある。また、図面は理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
【0011】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1におけるT字交差点11に設けた衝突防止システムの説明図である。図2は、本実施の形態1におけるT字交差点11の正面図である。
【0012】
図1、図2に示すように、本実施の形態1の衝突防止システムは、通路15にいる人23から死角となる通路21a、21bに、人22などの障害物を検出すると、通路15の標識12a、12bを突出させる。この標識12a、12bを通路15の人23が目視で確認することで、人23に対して、通路21a、21bに障害物が存在することを伝え、T字交差点11での衝突事故を防止するものである。ここで、通路15が第1通路の一例であり、通路21a、21bが第2通路の一例である。
【0013】
図1、図2に示すように、衝突防止システムは、標識装置19a、19bと、障害物検出部17a、17bと、制御装置32と、から構成される。標識装置19a、19bは、それぞれ、標識12a、12bと、標識12a、12bを保持する保持部13a、13bと、標識12a、12bを矢印Cの方向に回動させて通路15の幅方向Aへ突出させる作動部16a、16bと、を主に備える。標識装置19a、19bおよび障害物検出部17a、17bは、制御装置32により制御される。以下、標識装置19a、19bおよび障害物検出部17a、17bの各種動作について説明するが、これらは全て制御装置32の制御により行なわれるものである。
【0014】
なお、ここで、標識12a、12bを矢印Cの方向に回動させているのは、通路15を移動する人23から逃げる方向に標識12a、12bを回動させるためである。この方向に回動させることで、通路15を移動する人23に向けて標識12a、12bが飛び出してくることを防止し、人23に対して安全な標識12a、12bの突出を実現することができる。
【0015】
標識12a、12bは、樹脂材料より形成された軽い平板である。本実施の形態1の標識12a、12bは、その形状を、図3(a)、(b)に示すように人の形状としている。これは、通路21a、21bの障害物として主に人22を想定しているためである。なお、障害物の接近を歩行者にイメージさせることが可能であれば、標識12a、12bの形状は人の形状に限ることはなく、矢印などの形状であってもよい。標識の形状の例としては、学校であれば子供の走る姿の形状、病院であれば患者さんや車いすなどをイメージさせる形状、介護施設であれば老人の姿の形状、車などの乗り物が通る場所であればその場所を通る乗り物や踏切の遮断機の形状など、が挙げられる。その他にも、標識の形状の例としては、その方向から障害物が接近していることをシンボリックに表す丸や三角や矢印、注意を喚起する「!」「×」のマークや「障害物接近中」「衝突注意」「Danger」「Attention」などの文字の形状や、これらの文字が書かれたボードでも良い。ただし、本実施の形態1のように、主に人が死角となる通路から近づいていることを示すのであれば、図3(a)、(b)に示すような人の形状とすることが望ましい。
【0016】
保持部13a、13bは、通路15の壁18a、18bに設置される。そして、保持部13a、13bは、標識12a、12bの表示面を、収納して保持する。なお、標識12a、12bには、表示面と裏面があり、理由は後述するが、表示面は視覚的に目立つ色とし、裏面は保持部13a、13bと同じ色としている。作動部16a、16bとケーブルで接続された障害物検出部17a、17bは、T字交差点11の天井に設けられ、通路15と交差する通路21a、21bを検出対象とする。また、障害物検出部17a、17bの一例としては、焦電センサなどが用いられる。なお、ここでは、ケーブルを壁と天井に埋め込んで作動部16a、16bと障害物検出部17a、17bとを接続しているが、例えば無線通信により、障害物検出部17a、17bの障害物検出情報を作動部16a、16bへ伝達してもよい。なお、本実施の形態1では、標識12a、12bの表示面が、通路15において通路21a、21bから離れる方向に向くように構成している。
【0017】
そして、作動部16a、16bは、障害物検出部17a、17bによる障害物の検出に基づき、標識12a、12bが壁18a、18bから離れるように回動させて、通路15、21a、21bが交差するT字交差点11より離れる方向である通路方向Bに標識12a、12bの表示面を向けて、標識12a、12bを突出させる。詳しくは後述するが、標識12a、12bの表示面を通路方向B(図1の下方向)に向けているのは、交差点に近づく歩行者である人23が、標識12a、12bを認識しやすくするためである。また、標識12a、12bは、障害物検出部17a、17bによって障害物が検出されていない状態(障害物がない通常の状態)では、保持部13a、13bに収納され、露出する裏面と保持部が同じ色であるため、人23からは意識されにくいような状態となっている。
【0018】
上述したように、本実施の形態1の衝突防止システムは、大きな音や強い光を用いずに、障害物の情報の見落としを減らすことを可能としている。なぜならば、T字交差点11で例えば通路21aへ曲ろうとする人23は、まず通路21aを見ようとするため、通路21aのある側の壁18aの角15aに視線を向ける。標識装置19a、19bは、通路の角15a、15b近傍の壁18a、18bに設けられている。そのため、人23は、そちらに視線を向けることで、動く物体である標識12aに気づき易い。同様に、壁18bの角15bに設けられた標識装置19bの標識12bも気づき易い。すなわち、T字交差点11で通路21a、21bへ曲る人23は、飛び出す標識12a、12bを見落とすことがなく、音や光に関係なく障害物の情報に気づくことができる。
【0019】
詳細に説明すると、図1に示すように、人23がT字交差点11に近づいている時、障害物である人22が障害物検出部17bの検出対象エリア17gに入ると、障害物検出部17bは人22を検出する。この障害物検出部17bが人22を検出したことに基づいて、作動部16bは標識12bを回動させて通路15に突出させることで、T字交差点11に接近する人23の方向にその表示面を向ける。このようにすることで、図2の右側に示すような状態となる。よって、通路15に立つ人23からは、障害物の存在しない状態では図2の左側の標識12aのように裏面が表れている状態となり、障害物の存在する状態では図2の右側の標識12bのように表示面が現れている状態となり、視覚的に気づき易い。さらに、障害物の存在する状態では、標識12bが回動して突出されるという動きをさせているため、視覚的な変化によって、さらに人23に気づき易くしている。
【0020】
T字交差点11で通路21bに曲ろうとしている人23の視点は、移動先となる通路21bの方向を向くので、T字交差点11近くの壁18bにある。そのため、人23からは視界に標識12bの表示面が動きながら入ることになり、その変化によって人23は注意が喚起されて標識12bに意識が向かう。そして、その標識12bの形状などから通路21bに障害物があることに気づく。通路21bに曲がろうとする人23の注意はT字交差点11近くの壁18bに向かうことが多く、標識12bの表示面の出現を見逃すことは少ない。よって、本実施の形態1の衝突防止システムは、光や音に関係なく、障害物の情報を人23へ伝えることができる。本実施の形態1の衝突防止システムの標識12bに気づいた人は、障害物の接近をより警戒するとともに壁18bより離れてT字交差点11のコーナーの外側へコースを変えたり、歩行速度を遅くしたりすることで、障害物との衝突を回避することができる。
【0021】
なお、標識の幅Laは、報知を目的とする場合は形状を大きくする方が好ましいが、人の通行の妨げにならない範囲の大きさであることが好ましい。一般的に壁面から30cm以内の領域を人が通ることは少なく、壁面から15cm程度が飛び出ている物体に人が気づき易いということから、標識の幅Laは、15cm以上かつ30cm以下が好ましい。
【0022】
また、T字交差点11の角15a、15bからの距離Lcは、La+αでかつ短い方が好ましい。具定例としては、例えばα=1cmとする。また、T字交差点11にどれだけ近づいた時点で人に報知するのかを設定した想定報知距離は、標識を見つけるまでの人の認知時間、人が行動を起こすまでの時間、余裕を持って人が停止できる時間に進む距離を勘案して設定する必要がある。発明者らが、種々の実験や考察を繰り返した結果、想定報知距離は、2m以上3m以下が好ましいことが分かった。また、標識を取り付ける高さは、高すぎたり低すぎたりすると人に気づかれないため、人の意識が集中する70cm以上170cm以下の高さでの設置が好ましい。ただし、通行人である人23として子供や車いすの運転者が想定される場合は、標識への衝突を極力避けるため、下限を120cm以上に設定するのが好ましい。
【0023】
次に、標識12a、12bと、保持部13a、13bと、作動部16a、16bにより構成される標識装置19a、19bの詳細について説明する。
【0024】
図3(a)、図3(b)は、本実施の形態1における標識装置を示す図である。図3(a)は、障害物を検出していない時の(通常の)標識装置19bの斜視図であり、図3(b)は、障害物を検出した時の標識装置19bの斜視図である。なお、ここでは、標識装置19bについて説明しているが、標識装置19aも同様の構成である。
【0025】
図3(a)、図3(b)に示すように、保持部13bは、標識12bを連結する回転支持部31bと、回転支持部31bを回動させるアクチュエータである作動部16bと、標識12bを収納する収納部33bを設けた固定部34bを有する。図3(a)に示すように、通常、標識装置19bは、表示面37bを収納部33bに向かい合わせて収納することで、裏面36bのみを露出させて、標識12bを保持している。そして、障害物検出部17bによる障害物の検出に基づき、図3(b)に示すように、作動部16bは、回転支持部31bを回転軸として標識12bを回動させて、標識12bを保持部13bより突出させる。その結果、標識12bの表示面37bが、T字交差点11に向う人に見えるように配置される。
【0026】
このように、標識12bを突出させる動作および保持部13b側に折りたたむ動作を、作動部16bの回動で行なうことにより、衝突防止システムを構成する標識装置19bを小型にすることができる。
【0027】
また、保持部13bは、さらに弾性部35bを有し、弾性部35bを介して標識12bと回転支持部31bを連結している。弾性部35bの一例としては、バネ部材、ゴム部材などがある。
【0028】
このように、弾性部35bを介して回転支持部31bと標識12bを連結することで、突出した標識12bに人23がぶつかった場合でも、弾性部35bで衝撃を緩和することが可能である。よって、人23に対して安全な衝突防止システムを提供することができる。
【0029】
また、標識12bは、表示面37bと裏面36bとの色が異なり、裏面36bの色を、表示面37bの色より目立たない色としている。具体的には、裏面36bの色を、保持部13bと類似色としている。例えば、壁18bが白色の場合は、保持部13bおよび裏面36bも白色とし、表示面37bを赤色にすることで、表示面37bが表に出た場合にのみ人に注意を促すことが可能である。
【0030】
また、作動部16a、16bは、標識12a、12bを、回転支持部31a、31bによりT字交差点11より離れる方向である通路方向Bに倒して、保持部13a、13bに表示面37bを収納させている。このようにすることで、目立ち易い色をした表示面を、障害物22を検出してない時に隠すことができ、障害物22が検出されていないのに障害物が検出されたとする誤認識を防ぐことができる。
【0031】
また、図1に示すように、標識12a、12bの水平方向の幅は、回転支持部31bと角15a、15bの間隔より長く設定している。これは、人23が標識12bに衝突するなどして、標識12bが回転支持部31bを中心に回転して標識12bが通路21bに突出し、通路21bを移動する人22などにぶつかることを防ぐためである。このようにすることで、衝突防止システムの安全性が向上する。
【0032】
図4は、本実施の形態1における衝突防止システムの処理ループの動作のフローチャートである。
【0033】
図4に示すように、本実施の形態1の衝突防止システムは、まず、制御装置32での制御により、障害物検出部17a、17bで通路21a、21bの障害物を検出する(ステップS01)。
【0034】
ここで、障害物を検出した場合(S01の「yes」)、制御装置32での制御により、保持部13a、13b側に収納されていた標識12a、12bを作動部16a、16bで回動させて、標識12a、12bを通路の幅方向に突出させる(ステップS02)。なお、標識12a、12bが通路15の幅方向にすでに突出していれば、ステップS02では、突出した状態を維持する。
【0035】
また、ステップS01において、障害物検出部17a、17bで通路21a、21bの障害物を検出しない場合(S01の「no」)、制御装置32での制御により、標識12a、12bを作動部16a、16bで回動させて収納する(ステップS03)。なお、標識12a、12bがすでに収納されていた場合、ステップS03では、その状態を維持する。
【0036】
衝突防止システムは、ステップS01からステップS03を繰り返すことで、通路21a、21bで障害物を検出すると、標識12a、12bを保持部13a、13bより突出させて、標識12a、12bの表示面37a、37bを露出させる。これにより、障害物が通路21a、21bに存在することを、通路15にいる人23へ報知する。また、通路21a、21bで障害物を検出しなければ、標識12a、12bを保持部13a、13bに倒して、標識12a、12bの表示面37a、37bを隠す。
【0037】
本実施の形態1の衝突防止システムは、以上の処理ループを繰り返し行うことで標識12a、12bの突出と収納を繰り返し行っている。
【0038】
よって、本発明は、大きな音や強い光を用いずに、交差点に近づく人へ直感に訴えることで効果的に報知情報を伝える衝突防止システムを提供することができる。なお、本発明での交差点とは、T字交差点、十字交差点、L字コーナーなど、通路が交差する場所を示す。
【0039】
(実施の形態2)
図5は、本発明実施の形態2における標識装置40の正面図である。以下、本実施の形態2の実施の形態1と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
【0040】
図5に示すように、標識装置40は、棒状の標識42と、保持部43と、作動部(図示せず)により構成される。保持部43を構成する回転支持部41は水平方向に配置されており、標識42は、回転支持部41を中心に回動する。通常、標識42は、下方に倒れた状態で、保持部43の収納部に収まっている。この時、標識42の表示面は保持部43に隠れている。
【0041】
そして、障害物検出部17a、17bで障害物が検出されると、作動部が回転支持部41を回動させて、図5に示すように、標識42を突出させる。標識42が保持部43より突出することで、標識42の表示面が表れる。衝突防止システムに、このような標識装置40を用いてもよい。なお、標識装置19a、19bとの構造を対比させると、標識42の全体が標識12a、12bの表示面37a、37bに該当する。本実施の形態2では障害物が存在しない状態では、標識42が保持部43の収納部に収納されるため、裏面36a、36bに該当する部分は存在しない。また、保持部43は、標識装置19a、19bの保持部13a、13bに該当する。上記に示すような標識装置40は、標識装置19a、19bに比べて構造が簡略化できるというメリットがある。
【0042】
なお、実施の形態1の標識装置19a、19bの回動方向を、本実施の形態2と同様な方向としてもよい。この場合、実施の形態1では回転支持部31bを鉛直方向に配置したが、回転支持部を水平方向にする必要がある。回動方向をこの向きにすることで、通路15を移動する人23の移動方向に合わせた回動ではなくなり、標識12a、12bを収納するのに充分な幅が標識装置19a、19bに必要となるなため、標識装置19a、19bの配置に注意が必要である。
【0043】
(実施の形態3)
図6は、本発明の実施の形態3におけるスライド式の標識装置50の正面図である。以下、本実施の形態3の実施の形態1と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
【0044】
図6に示すように、スライド式の標識装置50は、標識52と、保持部53と、作動部(図示せず)により構成される。そして、保持部53は、標識52の表示面を収納して隠す収納部54を有する。そして、障害物検出部17a、17bによる障害物の検出により、作動部は、収納部54より押し出す又は引っ張り出して標識52をスライドさせて突出させる。このようにして、スライドさせることで、標識52を保持部53より突出させてもよい。なお、標識装置19a、19bとの構造を対比させると、標識42の全体が標識12a、12bの表示面37a、37bに該当する。本実施の形態では、障害物が存在しない状態では標識52が収納部54に収納されるため、標識52には裏面36a、36bに該当する部分は存在しない。また、保持部53は標識装置19a、19bの保持部13a、13bに該当する。上記に示すような標識装置50は、標識装置19a、19bに比べて構造が簡略化できることと、表示面の突出量を変化させることができるため、障害物の位置等の更なる情報量を追加して報知することも可能である。ただし、本実施の形態3の構成では、標識52をスライドさせるのに充分な空間が必要なため、通路の壁に穴をあけるなどの加工が必要となる。
【0045】
(実施の形態4)
図7(a)、図7(b)、図7(c)は、本発明の実施の形態4における標識装置60を示す図である。図7(a)は、障害物を検出していない時の標識装置60の斜視図であり、図7(b)は、障害物をT字交差点11より離れた箇所で検出した時の標識装置60の斜視図であり、図7(c)は、障害物をT字交差点に近づいた箇所で検出した時の標識装置60の斜視図である。以下、本実施の形態4の実施の形態1と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
【0046】
図7(a)、図7(b)、図7(c)に示すように、標識装置60は、標識62と、保持部63と、作動部(図示せず)により構成される。標識62は複数の部分標識から構成される。本実施の形態3においては、部分標識62a、62bより構成される。そして、作動部は、障害物検出部17a、17bの検出状況に応じて、部分標識62a、62bを単独又は複数の組み合わせにより突出させる。
【0047】
障害物検出部17a、17bの検出状況に応じて、部分標識62a、62bを選択して突出させることで、標識装置60を用いて、通路の障害物の位置を報知することができる。
【0048】
例えば、標識62の部分標識62aのみを表示させている状態では、T字交差点11より離れた箇所で障害物が検出されたことを意味し、標識62の部分標識62a、62bがどちらも表示されると、更にT字交差点11に近い箇所で障害物が検出されたことを意味するように定義しておくことで、実施の形態3と同様に障害物の位置等の更なる情報量を追加して報知することも可能である。
【0049】
これを実現するための構成として、まず、図7(a)に示すように、障害物検出部17a、17bで通路の障害物を検出しなければ、表示面を保持部63に対面するように部分標識62a、62bを倒しておく。図7(b)に示すように、障害物検出部17a、17bでT字交差点11より離れた箇所で障害物を検出すると、作動部により部分標識62aのみを突出させる。さらに、図7(c)に示すように、障害物検出部17a、17bでT字交差点11に近づいた箇所で障害物を検出すると、作動部により部分標識62a及び部分標識62bを突出させる。
【0050】
本実施の形態では表示面を相似な形状で2つに分割しているが、分割数に幾つでもよく、その形状を変化させても良い。また、分割することなく、複数の表示面を順に突出させてもよい。
【0051】
このように、標識62を複数の部分標識より構成し、障害物検出部17a、17bの検出状態に応じて、部分標識を突出させることで、衝突防止システムは、障害物の位置などの付加情報を知らせることができる。本実施の形態の場合は、障害物の位置などの情報を付加することにより、交差点に進入する人に対して、より決め細やかな警戒度を通知することができ、過度な警戒により立ち止まってしまって交差点の交通が滞ってしまうことを防ぐことができる。なお、その他の付加情報としては障害物の種類や速度、回避の必要性の高低、回避方法の指示などが考えられる。
【0052】
(実施の形態5)
図8、図9は、本発明の実施の形態5におけるT字交差点11に設けた衝突防止システムの説明図である。以下、本実施の形態5の実施の形態1と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
【0053】
図8に示すように、衝突防止システムは、標識装置19a、19bと、障害物検出部17a、17bと、人検出部71と、制御装置32と、から構成される。標識装置19a、19bは、標識12a、12bと、標識12a、12bを保持する保持部13a、13bと、標識12a、12bを通路15の幅方向Aへ突出させる作動部16a、16bと、を備える。
【0054】
人検出部71は、保持部13a、13bよりも離れた位置において、通路15の領域71aを検出対象とする。
【0055】
障害物検出部17a、17bでの検出結果に係わらず、人検出部71による人23の検出がない状態において、作動部16a、16bは、標識12a、12bの表示面37a、37bを保持部13a、13bに隠れるように収納している。よって、図8に示すように、障害物検出部17bで人22を検出していても、人検出部71で人23を検出しなければ、標識12bを突出させない。
【0056】
そして、障害物検出部17a、17bにおける障害物の検出、及び人検出部71における人の検出の重複検出により、作動部は、表示面を通路15の通路方向に向けて、標識12a、12bを突出させる。つまり、図9に示すように、検出対象エリア17gに人22が存在し、領域71aに人23がいると標識12bが突出する。
【0057】
このようにすることで、人23が、人検出部71で検出される領域までT字交差点11に近づいた時に、標識12bが突出するので、突出する標識12bが目立ち、標識12bによる障害物の報知情報を見逃し難くする。
【0058】
なお、人23が領域71aに入っても、障害物検出部17a、17bで障害物を検出しなければ、標識12a、12bは突出することはない。
【0059】
(実施の形態6)
図10は、本発明の実施の形態6における十字交差点81に設けた衝突防止システムの説明図である。以下、本実施の形態6の実施の形態1と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
【0060】
図10に示すように、十字交差点81は、4つの通路82、83、84、85が交差する交差点である。このような十字交差点81においても、本発明の衝突防止システムを用いることができる。すべての通路82、83、84、85で、出会い頭の衝突を防止するために、通路82、83、84、85の両壁に、それぞれ標識装置19a、19bを設ける。また、通路82、83、84、85を検出対象とする障害物検出部17a、17b、87a、87bを設ける。障害物検出部17bの検出対象エリアに人22が入ると、障害物検出部17bが人22を検出し、障害物検出部17bに対応する通路82、84に設けた標識装置19bより標識12bを突出させる。このようにすることで、通路82、84より十字交差点81に向って移動する人に死角となる通路85に障害物があることを報知することができる。
【0061】
なお、通路83からは通路85の全体を見ることができるので、通路85に障害物があったとしても通路83において標識装置19a、19bより標識12a、12bを突出させることはない。
【0062】
(実施の形態7)
図11は、本発明の実施の形態7における十字交差点81に設けた衝突防止システムの説明図である。以下、本実施の形態7の実施の形態4と異なる点について、図面を参照しながら説明する。
【0063】
本実施の形態7における衝突防止システムは、通路82の人23の位置に応じて、標識装置19a、19bを動かす。人検出部91は、保持部13aが設置された壁82aに近い領域91aを検出対象とする。同様に、人検出部92は、保持部13bが設置された壁82aに近い領域92aを検出対象とする。領域91a、92aは、通路15の両脇にいる人を検出する。そして、領域91a、92aは、通路15の幅方向Aにおいて、1m以上かつ1.5m以下の幅Ldを持つ領域である。
【0064】
このように、人検出部91、92は、通路82の幅全体を検出対象とするのではなく、通路82の脇(壁面近傍)のみを検出対象とすることで、移動先と考えられる死角となる通路に障害物がある時のみ、標識装置19a、19bの標識12a、12bを突出させることができる。よって、移動先に障害物がない場合まで、報知することがないので、不必要な報知を減らすことができる。
【0065】
例えば、壁82bの近くである領域92aを歩く人は、通路85へ曲ろうとしている人である可能性が高い。人23は、領域92aを歩くと、人検出部92に検出される。そして、通路85に障害物があれば、標識装置19bが作動して標識12bが突出させる。よって、人23は、通路85に進む前に、障害物があることに気づき出会い頭の衝突を避けることができる。
【0066】
また、通路85の中央を歩く人は、通路84へ進もうとしている人である可能性が高い。よって、十字交差点81に入った後に、移動する人22に気づいても、人22との衝突を回避することができる可能性が高い。よって、本実施の形態7の衝突防止システムでは、通路85の中央を歩く人には、通路83、85の障害物の報知を行わない。
【0067】
また、壁82aの近くである領域91aを歩く人は、通路83へ曲ろうとしている人である可能性が高い。十字交差点81に入った後、曲って通路83へ進むので、人22より逃げる方向へ移動する。よって、十字交差点81に入った後に、移動する人22に気づいても、人22との衝突を回避することができる。よって、通路85の壁82a付近を歩く人には、通路85の報知を行わない。ただし、本実施の形態7では、領域91aを歩く人に対しては、通路83の障害物の情報は、標識装置19aを用いて報知することは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、複数の通路が交差して死角になる通路が存在する病院、介護施設または工場などの衝突防止システムとして有用である。
【符号の説明】
【0069】
11 T字交差点
12a,12b,42,52,62 標識
13a,13b,43,53,63 保持部
15,21a,21b,82,83,84,85 通路
15a,15b 角
16a,16b 作動部
17a,17b,87a,87b 障害物検出部
17g 検出対象エリア
18a,18b,82a,82b 壁
19a,19b,40,50,60 標識装置
22,23 人
31a,31b,41 回転支持部
33a,33b,54 収納部
34a,34b 固定部
35a,35b 弾性部
36a,36b 裏面
37a,37b 表示面
62a,62b 部分標識
71,91,92 人検出部
71a,91a,92a 領域
81 十字交差点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標識と保持部と作動部とを備えた標識装置と、障害物検出部と、制御装置とから構成され、
前記保持部は、前記標識の表示面を収納して保持すると共に第1通路の壁に設置され、
前記障害物検出部は、前記第1通路と交差する第2通路の障害物を検出し、
前記制御装置は、前記障害物検出部による前記第2通路の障害物の検出に基づいて、前記標識の表示面が前記第2通路より離れる方向に向くように前記作動部により前記標識を突出させる、
衝突防止システム。
【請求項2】
前記保持部は、前記標識と連結された回転支持部と、前記回転支持部を支持する固定部とを有し、前記表示面を前記固定部に向かい合わせることで前記標識を収納して保持し、
前記制御装置は、前記障害物検出部による障害物の検出に基づいて前記作動部により前記標識を回動させて突出させる、
請求項1に記載の衝突防止システム。
【請求項3】
弾性部を介して前記標識と前記回転支持部とが連結された、
請求項2に記載の衝突防止システム。
【請求項4】
前記回転支持部と前記第1通路及び前記第2通路の間に形成される曲がり角の端部との間隔は、前記標識の水平方向の長さより長い、
請求項2または3に記載の衝突防止システム。
【請求項5】
前記標識は、前記表示面の色と前記表示面の反対側の裏面の色とが異なり、
前記裏面の色は、前記保持部の色と類似色である、
請求項2から4いずれか1項に記載の衝突防止システム。
【請求項6】
前記作動部は、前記標識の表示面が前記第2通路より離れる方向に向くように前記作動部により前記通路方向に回動させる、
請求項2から5いずれか1項に記載の衝突防止システム。
【請求項7】
前記保持部は、前記標識を収納する収納部を有し、
前記制御装置は、前記障害物検出部による障害物の検出に基づいて、前記作動部により前記標識をスライドさせて前記収納部より前記標識を突出させる、
請求項1に記載の衝突防止システム。
【請求項8】
前記第1通路の一部の領域を検出対象とする人検出部を有し、
前記制御装置は、前記障害物検出部における障害物の検出及び前記人検出部における人の検出の重複検出によって前記作動部により前記標識を突出させると共に、前記人検出部によって人が検出されない場合は、前記作動部により前記標識を前記保持部に収納する、
請求項1から7いずれか1項に記載の衝突防止システム。
【請求項9】
前記人検出部は、前記標識装置が設置された前記第1通路の壁の壁面に近い領域を検出対象とする、
請求項8に記載の衝突防止システム。
【請求項10】
前記標識は、複数の部分標識から構成され、
前記制御装置は、前記障害物検出部における障害物の検出に基づいて、前記部分標識の一部または全体を前記作動部により突出させる、
請求項1から9いずれか1項に記載の衝突防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−65139(P2013−65139A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202636(P2011−202636)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「生活支援ロボット実用化プロジェクト」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】