説明

衝突防止機能付きヘルメット

【課題】 頭部に物が衝突することを防ぐ、あるいは衝突による衝撃を軽減する。
【解決手段】 人が装着するヘルメット本体2と、ヘルメット本体2に配設され、物体に対する接近速度を検知する検知器3と、検知器3によって検知された接近速度が所定値以上の場合に、警報を出力する警報器4と、を備える。また、検知器3と警報器4とは、ひとつの筐体に収納され、衝突防止ユニット5となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、頭部に物が衝突することを防ぐ、あるいは軽減する衝突防止機能付きヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
発電所や工場などの施設には、機械設備から管などの敷設物が延設され、施設の点検を行う作業員が、頭部を誤って敷設物に衝突させて怪我をするおそれがある。さらに、作業員が身をかがめたり、しゃがんだりしなければ作業できない狭いスペースにおいて、急に作業員が立ち上がると頭部を頭上にある敷設物に衝突させるおそれがある。このため、敷設物に頭部を衝突させることによって生じる衝撃を緩和するよう、作業員はヘルメットを装着している。
【0003】
しかし、ヘルメットを装着していても、作業に集中すると周囲への注意力が低下する場合があり、そのような状態で頭部を敷設物に衝突させると、その衝撃は非常に大きい。また、頭部を保護するための技術として、緊急自動車から発信される電波を受信する受信部と、この電波を光に変換して視覚に訴える変換部および表示部を備える交通安全ヘルメットが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−13019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のヘルメットは、作業員の頭部に敷設物などが衝突する際の衝撃を緩和することは可能であるが、衝突すること自体を防ぐことはできない。そして、予期せずに頭部を敷設物などに衝突させた場合(意識外の衝突時に)、大きな災害につながるおそれがある。また、特許文献1の技術では、緊急自動車が接近することを視覚的に表示することはできるが、頭部に物が衝突することを防止することはできない。
【0006】
そこで本発明は、頭部に物が衝突することを防ぐ、あるいは衝突による衝撃を軽減することが可能な衝突防止機能付きヘルメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、人が装着するヘルメット本体と、前記ヘルメット本体に配設され、物体に対する接近速度を検知する検知手段と、前記検知手段によって検知された接近速度が所定値以上の場合に、警報を出力する警報手段と、を備えることを特徴とする衝突防止機能付きヘルメットである。
【0008】
この発明によれば、人が本ヘルメットを装着した状態で、人の頭部に物体が接近すると、その接近速度が検知手段で検知され、検知された接近速度が所定値以上の場合に、警報手段から警報が出力される。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の衝突防止機能付きヘルメットにおいて、前記警報手段は、前記警報として振動を出力することを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の衝突防止機能付きヘルメットにおいて、前記検知手段は、前記ヘルメット本体を装着した人の後頭部側に位置するように、前記ヘルメット本体に配設されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、物体に対する接近速度が所定値以上であると、警報手段から警報が出力されるため、ヘルメットを装着している人に、物体が接近していることに対する注意を喚起し、頭部と物体との衝突を防止することが可能となる。あるいは、ヘルメットを装着している人が、急な動作などをすることで、頭部と物体との衝突を回避できない場合でも、注意を喚起することで、無意識での衝突が防止され、衝突による衝撃を軽減することが可能となる。一方、物体に対する接近速度が所定値未満の場合、つまり、ゆっくりと物体に接近する場合には、警報は出力されないが、たとえ物体に接触したとしても頭部に衝撃を与えることがない。このように、ゆっくりと物体に接近する場合には、警報が出力されないため、ヘルメットを装着している人に、無用な注意を喚起することがない。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、警報として振動が出力されるため、騒然とした場所などでヘルメットを装着していても、確実に注意を喚起することが可能となる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、検知手段がヘルメットを装着した人の後頭部側に位置するよう配設されているため、ヘルメットを装着している人の視界に入りにくい後頭部側に物体が接近する場合でも、適正に注意を喚起することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係わる衝突防止機能付きヘルメットを装着した状態を示す側面図である。
【図2】図1の衝突防止機能付きヘルメットに備わる検知器と警報器の概略構成図である。
【図3】図1の衝突防止機能付きヘルメットが物体に接近するケースを示す図である。
【図4】図1の衝突防止機能付きヘルメットに物体が接近するケースを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、この発明の実施の形態について、図面を用いて詳しく説明する。
【0016】
図1ないし図4は、本発明の実施の形態を示している。図1は、本発明の実施の形態に係る衝突防止機能付きヘルメット1の外観を示し、図2は、衝突防止機能付きヘルメット1の外面に備わる検知器(検知手段)3および警報器(警報手段)4の概略構成図を示している。衝突防止機能付きヘルメット1は、ヘルメットを装着した人の頭部と、工場内に設けられた敷設物などの物体とが急接近した場合に、警報を出力するヘルメットであり、主として、ヘルメット本体2と、ヘルメット本体2の外面に配設された検知器3および警報器4とから構成されている。また、検知器3および警報器4は、ひとつの筐体に収納され、衝突防止ユニット5となっている。
【0017】
ヘルメット本体2は、例えばポリカーボネートやポリエチレンなどから構成され、装着している人の頭部へ物体が衝突した場合に、その衝撃を緩和することが可能となっている。このようなヘルメット本体2の外面のうち、装着した人の後頭部側および両側頭部側の位置に、それぞれ衝突防止ユニット5が取り付けられている。
【0018】
検知器3は、検知器3と物体との接近を検知するとともに、その接近速度を算出する装置であり、超音波検出部31と、速度算出部32とを備えている。
【0019】
超音波検出部31は、外部に対して超音波を出力・照射し、物体が存在する場合に物体から反射された超音波を受信することで、物体の存在を検知・検出するものである。速度算出部32は、超音波検出部31が受信した物体からの超音波(反射波)に基づいて、検知器3と物体とが接近する速度を算出するものである。すなわち、超音波を照射してから反射波を受信するまでの時間によって、検知器3と物体との距離を算出し、その距離が短くなっている場合に、その時間的割合によって接近速度を算出する。ここで、物体の存在を検知するまでは、定期的に超音波検出部31から超音波を照射し、物体の存在を検知すると、連続的に超音波を照射することで、照射エネルギの軽減が図られている。そして、このようにして算出された接近速度・算出結果は、警報器4へ伝送されるようになっている。
【0020】
警報器4は、検知器3から接近速度を受信し、その接近速度が所定値以上の場合に、警報を出力する装置であり、判定部41とバイブレータ42とを備えている。
【0021】
判定部41は、検知器3(衝突防止ユニット5)と物体との接近速度を速度算出部32から受信し、その速度が所定値以上である場合に、バイブレータ42に駆動指令を伝送して、バイブレータ42を駆動させるものである。ここで、「所定値」は、衝突防止機能付きヘルメット1を装着している人の周囲環境・作業環境や、衝突、接触のおそれがある対象物体の材質や形状などに基づいて設定されている。例えば、本ヘルメット1を装着する人の作業環境に、鋭角なコーナを有する大きな金属柱があり、頭部を衝突させると衝撃、災害が大きい場合には、「所定値」が遅く・小さく設定されている。つまり、比較的ゆっくり接近しても、振動(警報)が出力されるようになっている。
【0022】
バイブレータ42は、モータを備えた振動発生装置で、判定部41からの駆動指令を受けてモータを駆動し、振動を発生させるものである。ここで、この実施の形態では、一定の大きさの振動を発生させているが、接近速度に応じて、大きさが異なる振動を出力するようにしてもよい。
【0023】
このような検知器3および警報器4を起動、停止するスイッチは、衝突防止ユニット5に設けられている。
【0024】
次に、このような構成の衝突防止機能付きヘルメット1の作用などについて説明する。
【0025】
まず、図3に示すように、天井や配管などの敷設物(物体)Aが低く、しゃがんだり、座ったりしければ、作業員Mが作業を行うことができない場合について説明する。この場合、作業員Mは、衝突防止機能付きヘルメット1を頭部に装着し、衝突防止ユニット5のスイッチをオンして、狭い空間で作業を行う。このとき、上記のようにして、超音波検出部31から敷設物Aに対して超音波が照射され、敷設物Aからの反射波に基づいて、敷設物Aの存在が検知される。そして、作業員Mが立ち上がったり、頭部を上げたりすることで、作業員Mの頭部が敷設物Aに接近すると、速度算出部32によって、敷設物Aへの接近速度が算出され、その接近速度が、判定部41に伝送される。続いて、判定部41によって、接近速度が所定値以上であるか否かが判定され、所定値以上である場合、つまり敷設物Aへ急接近した場合には、バイブレータ42が起動して振動が発生する。
【0026】
次に、クレーンやホイストが設置された工場などにおいて、作業員Mが作業を行う場合について説明する。この場合にも、作業員Mは、衝突防止機能付きヘルメット1を頭部に装着し、衝突防止ユニット5のスイッチをオンして、作業を行う。このとき、図4に示すように、クレーンのフック(物体)Bが作業員Mの頭部に接近すると、上記図3の場合と同様にして、接近速度が算出され、フックBが急接近した場合には、バイブレータ42が起動して振動が発生する。
【0027】
以上のように、作業員Mが物体Aに急接近する場合と、物体Bが作業員Mに急接近する場合の双方において、バイブレータ42による振動が発生する。このため、作業員Mに注意を喚起し、物体A、Bとの衝突を防止することが可能、あるいは、無意識での衝突を防止して衝突による衝撃を軽減・緩和することが可能となる。一方、頭部に衝撃を与えない程度のゆっくりとした速度で物体A、Bに接近する場合には、振動が発生しないため、作業員Mに無用な注意を喚起することがない。
【0028】
また、警報として振動が出力されるため、騒然とした場所などでヘルメット1を装着していても、作業員Mに確実に注意を喚起することが可能となる。しかも、検知器3(衝突防止ユニット5)が作業員Mの後頭部側と両側頭部側に配設されているため、作業員Mの視界に入りにくい後頭部側や側頭部側に物体A、Bが接近する場合でも、適正に注意を喚起することが可能となる。
【0029】
さらに、検知器3と警報器4とがユニット化され、衝突防止ユニット5となっているため、既存・既製のヘルメット本体2に衝突防止ユニット5を取り付けるだけで、容易に衝突防止機能付きヘルメット1を構成することが可能となる。
【0030】
以上、この発明の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、本実施の形態においては、超音波によって物体の存在、接近を検知しているが、対象物体や周囲環境などに応じて赤外線や磁気などによって、物体の存在、接近を検知して、接近速度を算出するようにしてもよい。また、警報として振動を出力しているが、ベルを鳴動させたり、閃光を発したり、あるいはこれらを複数出力してもよい。また、検知器3と警報器4とを衝突防止ユニット5とせずに、警報器4を直接作業員Mの体に取り付けるようにしてもよい。あるいは、警報器4をヘルメット本体2の内側に配設することで、警報器4を頭部に接触させ、振動をより感知しやすいようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 衝突防止機能付きヘルメット
2 ヘルメット本体
3 検知器(検知手段)
31 超音波検出部
32 速度算出部
4 警報器(警報手段)
41 判定部
42 バイブレータ
5 衝突防止ユニット
M 作業員(人)
A 敷設物(物体)
B クレーンのフック(物体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が装着するヘルメット本体と、
前記ヘルメット本体に配設され、物体に対する接近速度を検知する検知手段と、
前記検知手段によって検知された接近速度が所定値以上の場合に、警報を出力する警報手段と、
を備えることを特徴とする衝突防止機能付きヘルメット。
【請求項2】
前記警報手段は、前記警報として振動を出力する、ことを特徴とする請求項1に記載の衝突防止機能付きヘルメット。
【請求項3】
前記検知手段は、前記ヘルメット本体を装着した人の後頭部側に位置するように、前記ヘルメット本体に配設されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の衝突防止機能付きヘルメット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−207333(P2012−207333A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73071(P2011−73071)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】