衝突防止装置
【課題】誤動作のおそれが小さく、移動体同士の衝突を防止する効果をより大きくすることができる衝突防止装置を提供する。
【解決手段】衝突防止装置34は、それぞれ異なる方向から近づいてくる移動体を光により検出するための車両検知・警告レーザユニット60,62と、車両検知・警告レーザユニット60,62の各々により移動体が検出されたことに応答して、当該移動体のうち少なくとも一方に対し、レーザ描画装置54などを用いて他方の移動体の存在を告知することにより移動体同士の衝突を防止するための制御装置68とを含む。
【解決手段】衝突防止装置34は、それぞれ異なる方向から近づいてくる移動体を光により検出するための車両検知・警告レーザユニット60,62と、車両検知・警告レーザユニット60,62の各々により移動体が検出されたことに応答して、当該移動体のうち少なくとも一方に対し、レーザ描画装置54などを用いて他方の移動体の存在を告知することにより移動体同士の衝突を防止するための制御装置68とを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は交通制御システムに関し、特に、見通しの悪い交差点における出会い頭の車両の衝突を予防する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点における交通事故が後を絶たない。特に、出会い頭の衝突が、発生件数において非常に大きな割合を占めている。財団法人交通事故総合分析センターの統計によれば、平成19年度における車両相互の交通事故の総数は716,091件、そのうち交差点で発生したものは325,294件(車両相互の交通事故のうち45.4%)、さらにその中で出会い頭の衝突に分類されているものが192,873件(車両相互の交通事故のうち26.9%、交差点における事故のうち59.3%)を占めている。
【0003】
こうした問題を解決するための一つの提案が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された装置は、路側機と路車間通信を、他車両と車車間通信を行なうことにより、受信した情報に基づき、支援エリアを通過する際に、自車両に発生する交通事故を回避するための情報である運転支援情報を生成し、運転者に対して提示する。路車間通信及び車車間通信は電波を使用した無線通信により実現されている。運転支援情報は、ヘッドアップディスプレイを用いて例えば車両のフロントガラスの内側に投射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009‐093343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置のように電波を使用する場合、必ずどの周波数帯を使用するかという問題と、混信の問題とが生ずる。道路上のように複数の車両が複数の方向から交差点に進入しようとしているときに混信が生じたりすれば、装置の動作に致命的な影響を及ぼすおそれがある。その結果、交差点における出会い頭の衝突を防止することはかなりむずかしくなる。電話にのるノイズのために装置の動作が悪影響を受ける危険性も存在する。またこうした装置の効果は装置を搭載した車両のみについて得られるものであり、装置を搭載しない車両については何の効果も得られないという問題もある。一部の車両のみがこうした装置を搭載していても、大きな効果は望めない。
【0006】
こうした問題は、車両同士についてのみ発生するわけではなく、走行軌道以外を走行することが可能な移動体に一般的に生ずる問題である。
【0007】
それゆえに本発明の目的の一つは、誤動作のおそれが小さく、移動体同士の衝突を防止する効果をより大きくすることができる衝突防止装置を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、誤動作のおそれが小さく、個々の移動体に新たに多額の投資をしなくとも、移動体同士の衝突を防止する効果をより大きくすることができる衝突防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る衝突防止装置は、それぞれ異なる方向から近づいてくる移動体を光により検出するための第1及び第2の移動体検出手段と、第1及び第2の移動体検出手段の各々により移動体が検出されたことに応答して、当該移動体のうち少なくとも一方に対し、他方の移動体の存在を告知することにより移動体同士の衝突を防止するための告知手段とを含む。
【0010】
第1及び第2の移動体検出手段は、異なる方向から近づいてくる移動体を光により検出する。第1及び第2の移動体検出手段の各々によりこうした移動体が検出されると、告知手段がこれら移動体の少なくとも一方に対し、他方の移動体の存在を告知する。
【0011】
移動体の検出に光を用い、電波を用いないため、電波の割当などの問題が生じることはない。また光を用いるため電波の場合と異なり混信が生ずる危険性ははるかに低く、誤動作の発生する危険性を低くすることができる。移動体には、移動体検出手段から出射される光を反射するための手段を設ければよく、複雑な装置を設ける必要がない。そのため、衝突を防止するための社会的コストを低く抑えることが可能になる。
【0012】
その結果、誤動作のおそれが小さく、個々の移動体に新たに多額の投資をしなくとも、移動体同士の衝突を防止する効果をより大きくすることができる衝突防止装置を提供できる。
【0013】
好ましくは、第1及び第2の移動体検出手段の各々は、予め定められた方向の予め定められた範囲に光ビームを出射し、移動体からの反射光により移動体を検知し、当該移動体から衝突防止装置の位置に関連して予め定義された位置までの距離を測定し、当該距離を表す距離信号を告知手段に与えるための距離測定手段と、距離測定手段により検知された移動体の、予め定義された位置に向かう速度を測定し、当該速度を表す速度信号を告知手段に与えるための速度測定手段とを含み、告知手段は、第1及び第2の移動体検出手段の各々から距離信号及び速度信号とを受けたことに応答して、当該距離信号により表される距離及び当該速度信号により表される速度信号によって予め定める条件が充足されるか否かを判定するための判定手段と、判定手段により、予め定める条件が充足されていると判定されたことに応答して、第1及び第2の移動体検出手段により検出された移動体のうち少なくとも一方に対し、衝突回避のための告知を光により行なうための光告知手段とを含む。
【0014】
移動体までの距離及び速度を検出することで、それらがある条件を充足するか否かを判定することによって簡単に移動体同士の衝突の可能性を判定できる。電波を用いた場合、こうした値を簡単にかつ高速に算出することは難しい。その結果、電波を用いたものよりも、移動体の衝突の危険性を小さくすることが可能になる。
【0015】
より好ましくは、光告知手段は、判定手段により、予め定める条件が充足されていると判定されたことに応答して、第1及び第2の移動体検出手段により検出された移動体の双方に対し、衝突回避のための告知を光により行なう。
【0016】
一方でなく、双方の移動体に他方の移動体の存在を告知することにより、少なくとも一方が衝突回避のための操作を行なう確率を高くすることができる。その結果、移動体同士の衝突の危険性をより小さくすることができる。
【0017】
光告知手段は、予め定められた文字列の鏡像をなす図形を、予め定められた方向に向けて可視光により投射するための投射手段を含んでもよい。
【0018】
ある文字列の鏡像をなす図形を投射した場合、例えば車両のフロントグラスに形成される図形を車両内から見ると、正しい文字列の像となる。一般に、図形よりも文字による方が意味を明確に伝達することができる。したがってこの構成により、移動体の運転者に対して行なう告知を分かりやすいものにすることができる。
【0019】
好ましくは、光告知手段は、判定手段により予め定める条件が充足されたと判定されたのち、当該予め定める条件が充足されないと判定されるようになった後も、所定時間だけ告知を継続した後に告知を終了する。
【0020】
予め定める条件が一旦充足された場合には、充足されなくなったときにも告知はすぐには解除されない。ある時間だけ告知が継続した後に始めて解除される。そのため、移動体の運転者が十分に速度を落としたりして、衝突の危険性が非常に小さくなって初めて告知の表示が消去されることになる。条件が成立しなくなったときに直ちに告知を消去する場合と比較して、移動体の運転がより慎重にされることになり、衝突の危険性をより小さくすることができる。
【0021】
別の実施の形態では、第1及び第2の移動体検出手段の少なくとも一方は、予め定められた方向に光ビームを出射し、移動体からの反射光に重畳された情報を読取って出力するための光重畳情報の読取手段と、移動体からの反射光と、前記読取手段の出力とにより、衝突防止装置に近づいてくる移動体の検知と、衝突防止装置の位置に関連して予め定義された位置までの、当該移動体からの距離の測定と、当該移動体の、衝突防止装置の位置に関連して予め定義された位置に向かう移動速度の測定とを行なうための移動体検出手段とを含む。
【0022】
車両からの反射光に重畳された情報を用いることにより、移動体の位置及び速度の検出がより高精度でできるようになる。場合によっては、この情報を他の制御又は利用者への情報提供に用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る交通制御システムの設置環境を模式的に示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る交通制御システムの設置環境である交差点の平面図を模式的に示す図である。
【図3】第1の実施の形態に係る交通制御システムで使用される衝突警告装置34のブロック図である。
【図4】第1の実施の形態に係る交通制御システムで車両に装着される再帰反射装置(コーナキューブ)を示す図である。
【図5】図3に示す衝突警告装置34を構成するプロセッサにより実行される衝突警告プログラムのメインルーチンの制御構造を示すフローチャートである。
【図6】第1の測定処理を実現するプログラムルーチンの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】第1の警告処理を実現するプログラムルーチンの制御構造を示すフローチャートである。
【図8】警告の表示形態を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る衝突警告装置200の距離計測の原理を示す図である。
【図10】第2の実施の形態で車両のフロント部分に貼付される再帰反射性のバーコードを示す図である。
【図11】第2の実施の形態に係る衝突警告装置200における車両検出のためのプログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係る交通制御システムとして、交差点における出会い頭の衝突を防止するための衝突警告装置について説明する。以下の説明では同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0025】
[第1の実施の形態]
<構成>
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る衝突警告装置34は、例えば建築物40により見通しの悪くなっている交差点などに設置される。衝突警告装置34は、レーザファンビーム36及び38を用いることにより、交差点に向かって同時に進入しつつある車両30及び32を検出し、可視光レーザによりこれら車両に警告を表示する。衝突警告装置34が車両を検出できるようにするため、本実施の形態では、車両30及び32の一部(例えばルーフなど)に、コーナキューブ44及び46などの再帰型反射装置が設けられる。
【0026】
図2に示すように、衝突警告装置34を交差点の例えば一つのコーナに設けることにより、この交差点に向かう4つの道路70,72,74及び76のいずれか上を進入してくる車両全てを検出することができる。もちろん、交差点の各コーナに一つずつ衝突警告装置34を設けてもよいし、例えば向かい合うコーナ部分にのみ衝突警告装置34を設けるようにしてもよい。ただし、衝突警告装置34は車両のルーフにコーナキューブ44及び46が設けられることを考慮して、例えば道路面から4mなど、ある程度高い部分に設けることが望ましい。
【0027】
図3を参照して、この実施の形態に係る衝突警告装置34は、4組の車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66と、これら車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66に接続され、車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66を制御し、交差点に同時に進入しつつある車両を検知して、そうした車両に可視光による警告表示を行なわせるための制御装置68とを含む。図示はしていないが、制御装置68は、実質的にはCPU(Central Processing Unit)及び記憶装置を含むコンピュータと、当該コンピュータ上で実行されるプログラムとにより実現される。
【0028】
車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66は互いに同じ構成を有する。例えば車両検知・警告レーザユニット60は、所定方向から近づいてくる車両の存在と、その車両までの距離とを光により検知して、交差点から所定距離内に車両が検知されたときにその距離を示す距離信号を制御装置68に与えるための光距離センサ50と、同じく所定方向から近づいてくる車両の速度を光により検知して、速度信号を制御装置68に与えるための光速度センサ52と、制御装置68から警告を表示することを示す制御信号を受けると、車両に対して衝突の危険があることを示す警告を、後述する図形を描画するように可視光レーザビームを出射するためのレーザ描画装置54とを含む。この構成によって、少なくとも一方の移動体の運転者に対し、他方の移動体の存在が告知されるため、運転者が適切な対応をとることが可能となり、衝突の危険性が小さくなる。双方の運転者がこの告知に気づけば、衝突の危険性はさらに小さくなる。
【0029】
レーザ描画装置54による所定画像の描画には、例えばレーザプリンタと同様の技術を用いることができる。ただし、ここでは光としては可視光線を用いる必要がある。
【0030】
光距離センサ50としては、特定波長の光ビームで限定された方向をスキャンして、車両のコーナキューブから反射してきたその特定波長の光を検知し、あわせて出射光と反射光との位相のずれなどにより対象までの距離を検出できるものであれば、市販のどのようなものでもよい。ただし、コスト及び交差点の高い位置に衝突警告装置34を設置することから考えて、重量、大きさ、及び消費電力が小さいものが望ましい。道路上を交差点に向けて進行してくる車両を検出するという目的から考えて、光ビームを出射する方向及び範囲には一定の制限を設けておくべきである。光速度センサ52についても同様である。すなわち、光速度センサ52としては、特定波長の光ビームで限定された方向をスキャンして、車両のコーナキューブから反射してきたその特定波長の光を検知し、出射光と反射光との周波数の相違から車両の速度を検出できるものであれば、市販のどのようなものでもよい。
【0031】
なお、光速度センサ52が検出する移動体までの距離は、移動体から光速度センサ52までの距離である。しかし、衝突警告装置34が設置されている位置と、基準となる交差点の入り口の位置との間の関係が予め分かっていれば、衝突警告装置34に対する距離を交差点の入り口までの距離に換算することは容易である。速度についても同様である。
【0032】
図4を参照して、本実施の形態で使用するコーナキューブ44は、3枚の反射鏡80,82及び84を、互いに90度をなすように組合せたものである。このように反射鏡80,82及び84を組合せたコーナキューブ44は、コーナキューブ44に入射する光を、その入射方向と平行な方向に反射することが知られている。したがって、衝突警告装置34の光距離センサ50及び光速度センサ52から出射された光は、もしも道路上に車両があればその車両のコーナキューブ44により反射され、光距離センサ50及び光速度センサ52に入射する。したがって光距離センサ50は、反射光内に特定波長の光パルスが検出されるか否かにより車両の存在を検知し、出射光と入射光との位相差から車両までの距離を検知できる。この結果から、交差点から所定距離内に車両が存在するか否かを判定できる。本実施の形態では、光速度センサ52は、同様に出射光と入射光とのドップラー効果に基づく周波数の相違から、車両の速度を検出するものである。この場合、車両が交差点に近づいてくるのか、交差点から遠ざかっているのかについても、速度の符号により判定することができる。
【0033】
図5を参照して、衝突警告装置34の制御装置68が実行するプログラムは以下のような制御構造を有する。このプログラムは、電源が投入されるか、又はリセット信号を受けると、図示しないランダムアクセスメモリなどの記憶領域を初期化し、必要な定数を図示しない読出専用メモリから読出し、ランダムアクセスメモリ又はCPU内のレジスタに格納したり、車両検知・警告レーザユニット60、62,64及び66を起動したりする初期化処理を行なう初期化ステップ100と、初期化ステップ100に続き、車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66について順番に、監視対象となっている道路における車両の存在、並びにその交差点から車両までの距離及び車両の速度をそれぞれ検出する第1〜第4の測定ステップ102,104,106及び108と、第1〜第4の測定ステップ102,104,106及び108により測定された結果に基づいて、交差点で交差する道路のうち、出会い頭の衝突が発生する可能性のある車両の進入方向に対応する4つの組合せ(図2の例では、道路70及び72、道路72及び74、道路74及び76、並びに道路76及び70)の各々に対して、それぞれ所定の条件が充足されているか否かを判定し、判定結果に応じて必要な警告表示処理を順番に行なった後、制御をステップ102に戻すステップ110,112,114及び116とを含む。図5には図示していないが、ステップ102〜ステップ116が一定の周期で繰返されるよう、ルーチンの最後にはサイクル時間を調整するステップが設けられている。
【0034】
図6を参照して、図5の第1の測定ステップ102を実現するプログラムルーチンは、以下のような制御構造を有する。なお、車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66それぞれに対し、図示しないRAM内に第1〜第4のフラグを記憶する領域が設けられている。また、制御装置68では、予め所定時間が設定されたタイマが車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66に対してそれぞれ別々に確保されている。タイマは起動されると(オン状態となると)所定時間からカウントダウンを開始し、残り時間が0となるとオフとなるものとする。
【0035】
図6を参照して、第1の測定ルーチンは、第1のフラグの値を0に設定するステップ130を含む。第1のフラグは、第1の方向から交差点に所定速度以上で進入しようとしている車両であって、交差点の入り口から所定の距離以内に存在しているものが検出された場合には値「1」に、それ以外の場合には値「0」に設定されるものとする。
【0036】
このプログラムはさらに、ステップ130の後、光距離センサ50の出力(車両検出信号)を読み、その値により制御を分岐するステップ132を含む。光距離センサ50の車両検出信号は、監視対象の道路の方向で、交差点から所定距離内に車両が検出されると1、それ以外の場合には0をとる。車両検出信号の値が0と判定されたときにはこのルーチンの実行は終了する。
【0037】
このプログラムはさらに、ステップ132において車両検出信号の値が1と判定されたときに実行され、光距離センサ50の出力する車両の速度信号の値(符号も含む。)が、予め定めるしきい値V0より大きいか否かを判定し、速度信号の値がしきい値V0以下の場合にはこのルーチンの実行を終了するステップ134と、ステップ134において、速度信号の値がしきい値V0より大きいと判定されたときに実行され、第1のフラグに「1」を代入してこのルーチンの実行を終了するステップ136とを含む。
【0038】
すなわちこの第1の測定ステップの実行により、車両検知・警告レーザユニット60が担当する方向から交差点に進入してくる車両であって、その速度がしきい値V0より大きく、かつ交差点から所定の距離内にある車両が検出されたときには第1のフラグに「1」が、それ以外の場合には「0」が、それぞれ設定される。
【0039】
図5に示すステップ104,106及び108において、車両検知・警告レーザユニット62,64及び66の出力に対して行なわれる第2〜第4の測定ステップについても同様である。それぞれが担当する方向から交差点に進入してくる車両であって、その速度がしきい値V0より大きく、かつ交差点から所定の距離内にある車両が検出されたときには、その方向に応じて第2〜第4のフラグのうちその方向に対応するものに「1」が、それ以外の場合には「0」が、それぞれ設定される。互いに交差する2方向について、対応するフラグの値が共に1か否かを判定することで、この2方向から、出会い頭を起こす危険性のある車両が進入しつつあるか否かを判定することができる。
【0040】
図7を参照して、図6のステップ110で実行される第1の警告処理を実現するためのプログラムルーチンは以下の制御構造を有する。この第1の警告処理は、図2に示される例では、道路70及び72の組合せにおける衝突の危険性を警告するためのものである。
【0041】
このルーチンは、第1のフラグが1か否かを判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップ150と、ステップ150で第1のフラグが1と判定されたときに、さらに第2のフラグが1か否かを判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップ152と、ステップ152で第2のフラグが1と判定されたときに実行され、第1及び第2のタイマを再起動するステップ154とを含む。これらタイマが再起動されることにより、ステップ154が実行されるたびに第1及び第2のタイマは、新たに所定時間のカウントダウンを開始する。
【0042】
このプログラムはさらに、ステップ150で第1のフラグが0と判定されたとき、ステップ152で第2のフラグが0と判定されたとき、及びステップ154が実行された後に実行され、第1のタイマがオンか否か(すなわち第1のタイマのカウントダウンが実行中か否か)を判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップ156と、ステップ156で第1のタイマがオンと判定されたときに実行され、第1のタイマに対応する道路、すなわち図2に示す道路70の方向を向いて設けられているレーザ描画装置(図3に示すレーザ描画装置54)に対して、所定の警告図形を車両の進入方向に向けて照射させるステップ158と、ステップ156において第1のタイマがオフと判定されたとき、及び第1のタイマがオンと判定されステップ158の処理が完了したときに実行され、第2のタイマがオンか否かを判定し、第2のタイマがオフであればこのルーチンの実行を終了させるステップ160と、ステップ160において第2のタイマがオンであると判定されたときに実行され、車両検知・警告レーザユニット62内のレーザ描画装置に対して、所定の警告図形を道路72上の車両の進入方向に向けて照射させてこのルーチンの実行を終了させるステップ162とを含む。
【0043】
図8を参照して、本実施の形態では、レーザ描画装置54などにより車両32等に向けて可視光レーザ182で照射される図形として、英語で「停止せよ」を示す「STOP」というアルファベットの鏡像図形180を使用する。このように鏡像図形が車両32のフロントガラスに照射されることにより、車両32の内部にいる運転者には「STOP」という文字がフロントガラスに表示されることになり、交差点手前で車両を停止させる操作を行なう可能性が高くなる。その結果、出会い頭の事故の危険性を小さくすることができる。
【0044】
なお、鏡像図形180を投射するレーザ描画装置54は、図7に示すステップ158が実行されるたびに駆動される。ステップ158が実行されていないときにはレーザ描画装置54の駆動は停止される。レーザ発振装置の出力としてはあまり高くないものを使用するようにし、かつこのように間歇的にレーザ描画装置54を駆動することで、鏡像図形180の投射光が運転者の視力に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0045】
鏡像図形180はどのような色で投射してもよいが、一般的に赤外線近くの赤色を使用することが望ましい。また、警告を表示するときの、車両から交差点までの距離のしきい値の大きさにもよるが、車両のフロントガラスを追尾するようにしてレーザ光を照射することは難しく、コストも高くなるので、鏡像図形180の投射方向は本実施の形態ではフロントガラスに鏡像図形180が形成される時間ができるだけ長くなるような一定方向に固定している。このような場合には、レーザ描画装置54をそれほど高くない位置に設けるようにすることで、車両のフロントガラスに鏡像図形180が投射される時間を長くすることができる。
【0046】
図5のステップ112,114及び116の処理は、それぞれ道路72及び74、道路74及び76、並びに道路76及び70の組合せに対して図7と同様の処理を行なうためのものである。処理の対象となるフラグ、タイマ、レーザ描画装置などをどのように選択するかは当業者には明らかである。したがってここではこれらステップの処理を実現するためのプログラムルーチンの詳細については繰返さない。
【0047】
<動作>
以上、構成について説明した衝突警告装置34は以下のように動作する。衝突警告装置34の電源が投入されると、制御装置68は記憶領域のクリア及びフラグの記憶領域のクリアなどの初期化処理を行な(図5のステップ100)い、以下に述べる繰返し処理の実行を開始する。なお、初期化処理では、車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66が全て起動される。例えば車両検知・警告レーザユニット60の光距離センサ50は、道路70上を所定波長の光ビームでスキャンし、車両のコーナキューブから反射してくる反射光を検出することで道路上に車両が存在するか否かを検出する。光距離センサ50はまた、反射光と出射光との位相のずれに基づいて、交差点入り口から車両までの距離を算出する。光距離センサ50は、両者の測定結果のANDを演算し、結果を車両検出信号として出力する。光速度センサ52は、光距離センサ50と同様、監視対象となる道路70上を光ビームでスキャンし、反射光があるときにはその周波数と出射光の周波数とのずれから車両の速度を検出し、速度信号を出力する。他の車両検知・警告レーザユニット62,64及び66についても同様である。これら信号はいずれも制御装置68に与えられる。
【0048】
繰返し処理の最初、ステップ102では、第1のフラグの値に0が代入される(図6、ステップ130)。ステップ132では、光距離センサ50の出力のうち、車両検出信号が読み取られ、その値に基づき、車両検知・警告レーザユニット60が監視している道路70(図2)上で、交差点から所定距離内に車両が存在するか否かが判定される。そのような車両が存在していなければ、このルーチンではこれ以後何も実行されず、処理は終了する。したがって第1のフラグの値は0となる。一方、交差点から所定距離内に車両が存在する場合には、制御はステップ134に進む。
【0049】
ステップ134では、光速度センサ52の出力に基づき、ステップ132で検出された車両の速度がしきい値V0より大きいか否かが判定される。車両の速度がしきい値V0より大きければ第1のフラグの値は1に設定される。そうでない場合には第1のフラグの値は0のままである。いずれにせよ第1の測定処理は終了する。
【0050】
以上の処理により、図2に示す道路70の方向から交差点に向けて進入してくる車両であって、交差点からの距離が所定距離以下で、かつ交差点に向かっているその車両の速度がしきい値V0より大きいときには第1のフラグの値は1に設定され、それ以外の場合には0に設定される。
【0051】
図5のステップ104,106及び108の処理により、ステップ102と同様に、道路72,74及び76の方向から交差点に向かってくる車両であって、交差点からの距離がしきい値VDより大きいときにはそれぞれ第2、第3及び第4のフラグの値が1に設定され、それ以外の場合には第2、第3及び第4のフラグの値がそれぞれ0に設定される。
【0052】
図7を参照して、ステップ150及びステップ152の処理により、第1のフラグ及び第2のフラグの値が共に1であれば、道路70及び72の双方において、所定の速度で交差点に進入しようとする車両が検出されたということである。この場合、ステップ154で第1及び第2のタイマが再起動される。衝突警告装置34の起動直後はこれらタイマはオフであり、初めてステップ154(及び図5のステップ112,114,116内において、ステップ154に対応するステップ)が実行されることでタイマがオン状態となり、カウントダウンが開始される。その後、ステップ150及び152での判定結果がともにYESとなるたびに第1及び第2のタイマ(図5のステップ112,114,116においてはそれぞれ第2及び第3のタイマ、第3及び第4のタイマ、並びに第4及び第1のタイマ、という組合せ)はリセットされ、カウントダウンを所定値から再開する。
【0053】
続いて第1のタイマがオン状態であれば(ステップ156でYES),ステップ158で道路70上の車両に向けてレーザ描画装置54による警告表示のレーザ発振が短時間のみ行なわれる。同様に第2のタイマがオン状態であれば(ステップ160でYES),ステップ162で道路72上の車両に向けて車両検知・警告レーザユニット62のレーザ描画装置による警告表示のレーザ発振が短時間のみ行なわれ、第1の警告処理が終了する。
【0054】
以上の結果、例えば第1のタイマが一旦起動されると、道路70上の車両が関連する出会い頭の衝突の危険性がなくなったときでも、所定時間が経過し第1のタイマが満了するまではステップ156での判定結果はYESとなり、ステップ158の処理が繰返し実行される。その結果、所定時間の間は道路70上の車両への警告表示が繰返し実行される。このように警告表示は、出会い頭の衝突の危険性がなくなった後、一定時間だけ継続された後に消去される。そのため、運転者が十分に速度を落とした後でないと警告表示は消去されず、出会い頭の衝突の危険性をより小さくできる。
【0055】
以上の処理を、図5のステップ112,114及び116で、それぞれ道路72及び74、道路74及び76、並びに道路76及び70の組合せに対して実行し、いずれの組合せでも出会い頭の衝突の危険性が発生すれば関連する道路上の車両に対して警告表示を行なうことができる。その結果、この交差点における出会い頭の事故の危険性を小さくすることができる。
【0056】
上記実施の形態によれば、出会い頭の事故が発生する危険性のある交差点のみに衝突警告装置34を設けることで、事故の発生の危険性を小さくすることができる。車両にはコーナキューブを設けるだけでよく、車両に高価な専用の装置を設ける必要はない。さらに、一つの交差点であっても、出会い頭の事故が発生する危険性のある道路の組合せに対してのみ動作するような衝突警告装置34を設けることによっても、その交差点において発生する出会い頭の事故の危険性を小さくすることができる。そのため、あまり大きなコストをかけなくとも出会い頭の事故の危険性を小さくすることができる。
【0057】
さらに上記実施の形態では、事故の予防のために電波を使用しない。したがって周波数の割当て、他の装置との電波の混信の可能性などを考慮する必要は無い。衝突警告装置34の構成を単純にすることができ、そのコストを低く抑えることができる。また、光を使用しているため、特定の方向のみを監視の対象とすることができる。例えば必ずしも交差点で無い箇所、例えば道路が大きく湾曲している箇所など、道路が立体的に交差している箇所などにおいても、他のシステムとの干渉を気にすることなく、所望の方向のみを監視の対象とすることができるという効果がある。
【0058】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、光ビームで所定方向をスキャンしている。しかし、本発明はそのような実施の形態に限定されるわけではない。照射方向を固定した光ビームを用いて実現することもできる。第2の実施の形態は、そのように照射方向を固定した光ビームを2本、交差点への進入路ごとに使用するものである。
【0059】
図9に、この第2の実施の形態に係る衝突警告装置200による速度の測定原理を模式的に示す。図9を参照して、第2の実施の形態に係る衝突警告装置200は、2本のビーム出射・検知器202及び204を含む。ビーム出射・検知器202及び204はいずれも、鉛直線に対して所定の俯角θで、車両が進入してくる方向に光ビームを出射する。ビーム出射・検知器202は基準となる水平面からの高さがH1、ビーム出射・検知器204は高さがH2(<H1)の位置に設けられている。本実施の形態では、車両のフロントガラスの、高さH0の位置に光再帰反射性のマーカが貼付されており、衝突警告装置200によりこのマークからの反射光が検出されるものとする。光再帰反射性のマーカとしては、例えばデリニエータのようなものを採用することができる。
【0060】
衝突警告装置200が交差点の角に設けられているものとすると、図9(A)及び(B)に示されるように、交差点に進入してくる車両210は、最初はビーム出射・検知器202により、次にビーム出射・検知器204により検出される。この検出時間の差Δtから、車両210の速度Vが以下のようにして計算できる。
【0061】
【数1】
ビーム出射・検知器202及び204の高さH1及びH2及び俯角θは分かっているが、マーカの高さH0は車両により異なり、予め分かるものではない。このままでは速度Vを正しく計算できない。そこで本実施の形態では、光再帰反射性のマーカとして、バーコードを採用し、このバーコードによりマーカの貼付位置を表すものとする。
【0062】
図10を参照して、車両210のフロントガラス220の中央上部に、ETC(Electronic Toll Collection System)の車載アンテナ222が設けられている場合を考える。車載アンテナ222の背面(車両の前方を向いている面)に、光再帰反射性のバーコード224を貼付する。バーコード224は、そのバーが水平方向を向くようにしておく。ビーム出射・検知器202又は204からの光ビームがバーコード224に当たった場合、車両が前方に移動しているため、ちょうどこのバーコード224がビーム出射・検知器202又は204からの光ビームによりスキャンされたのと同様の効果を得ることができる。
【0063】
すなわちこの実施の形態に係る衝突警告装置200では、光距離センサ50(図3参照)に代えて単なる光センサを準備すれば、車両210の位置及び速度を光距離センサ50からの情報に基づき算出し、制御装置68に与えることができる。さらに、図3に示す光速度センサ52に代えて、バーコードを読取る装置を設けることで、バーコード224からの反射光に重畳された情報を得て制御装置68にその情報を与えることができる。
【0064】
このビーム出射・検知器204として例えば20ビットの情報を伝達できるようにすると、例えば末尾の2ビットで4種類の車高を表現できる。例えば00,01,10及び11によりそれぞれ0.5,1,1.5、2メートルのマーカの貼付位置の高さを表現できる。角度θが適切な範囲の大きさであれば、マーカの貼付位置の誤差は速度Vの測定誤差にはそれほど大きく影響しない。したがって、この程度の粒度でマーカの貼付位置を知ることができれば十分である。
【0065】
なお、図9及び図10に示すように、車両のフロントガラス部分にバーコード224を設けた場合、上記した距離L1,L2はいずれもバーコード224から交差点までの距離となり、車両の先頭から交差点までの位置よりも若干長くなる。したがって、距離L1,L2には、バーコード224から車両の先頭までの長さに相当する値を加算する必要がある。この値をバーコード224によりさらに表すようにしてもよいが、安全を見て所定の大きさの定数(例えば2m)などの値を距離L1,L2から減算するだけでも十分である。
【0066】
このようにバーコードを使用する場合には、バーコードより、他の情報を表すことができる。たとえば、情報量に余裕があれば、車両を特定する情報をバーコードに記録させることもできる。そのようにすることで、道路上を通行している車両の移動経路及び通過位置と通過時刻、車線変更の履歴、平均時速などを把握することも可能になるという効果がある。そうした機能も、衝突警告装置200によりバーコードを読み取ることで容易に実現できる。
【0067】
図11に、衝突警告装置200における車両210の速度検出を実現するためのプログラムのフローチャートを示す。この処理は、例えば図5及び図6に示すような処理と平行して、ただしメモリ空間を共有して実行される。図6のステップ132の処理では、図11に示す「移動体検出フラグ」の値を調べることで移動体の有無を判定できる。また、ステップ134の処理では、図11に示す速度計算の結果を参照することで速度を知ることができる。
【0068】
図11を参照して、このプログラムは、起動後、ビーム出射・検知器202の出力がハイ(車両あり)か否かを調べ、ビーム出射・検知器202の出力がハイとなるまで待機するステップ240と、ステップ240でビーム出射・検知器202の出力がハイとなったときに、移動体検出フラグと呼ばれるフラグをセットするステップ242と、車両の検知速度を示す変数に、しきい値速度V0の2倍にあたる2V0を代入するステップ244と、ビーム出射・検知器202による車両検知後、ビーム出射・検知器204による車両の検知までの時間を測定するためのタイマをスタートさせるステップ246とを含む。
【0069】
ステップ244で、検出速度として2V0を代入するのは、万が一ビーム出射・検知器204による車両の検出までに図6のステップ134の処理が実行されてしまったときには、優先して警告を表示させるためである。
【0070】
図11をさらに参照して、このプログラムはさらに、ステップ246につつき、ビーム出射・検知器204の出力がハイか(車両を検出)否かを判定し、判定結果にしたがって制御の流れを分岐させるステップ248と、ステップ248でビーム出射・検知器204の出力がハイではなかったと判定されたときに、ステップ246でスタートされたタイマの値により、所定時間が経過したか否かを判定し、判定結果により制御の流れを分岐させるステップ250とを含む。ステップ250で所定時間が経過していないと判定されたときには、制御はステップ248に戻る。ステップ250で所定時間が経過したと判定されたときには、このプログラムを実行している中央演算処理装置をリセットし、このプログラムの実行を最初から開始させるステップ252とを含む。
【0071】
一方、ステップ248でビーム出射・検知器204の出力がハイと判定されたときには、制御はステップ254に進み、ステップ246でスタートされたタイマをストップする。移動体検出フラグをセットし(ステップ256)、この間にタイマにより計時された時間と、図示しないバーコード読取プロセスにより読取られたマーカの貼付高さH0と、ビーム出射・検知器202及びビーム出射・検知器204の設けられた高さH1及びH2と、ビーム出射・検知器202及び204のビーム出射の俯角θとにより、前述した式にしたがって車両210の速度Vを算出して図示しない記憶領域に格納するステップ258とを含む。ここで記憶領域に格納された速度Vの値が、図6に示すプロセスのステップ134で読出される。
【0072】
このプログラムはさらに、ステップ258の後、ビーム出射・検知器204の出力がローか否かを判定し、判定結果にしたがって制御の流れを分岐させるステップ260と、ステップ260でビーム出射・検知器204の出力がρでない、すなわちハイであると判定されたときに、ビーム出射・検知器204の出力がハイとなってから所定時間経過したか否かを判定し、所定時間が経過していないときにはステップ260に制御を戻すステップ262とを含む。ステップ262で所定時間が経過したと判定されたときには、ビーム出射・検知器204に何らかの異常が生じたか、車両の挙動に異常が生じたと考えられるので、ステップ264でこのプログラムを実行しているCPUをリセットし、このプログラムの実行を最初から再開させる。
【0073】
このプログラムはさらに、ステップ260でビーム出射・検知器204の出力がローに戻った後、ステップ256でセットされた移動体検出フラグの値が、図6に示すプロセスにより間違いなく読取られるよう予め設定された所定時間だけ待機するステップ266と、ステップ266で所定時間が経過した後、移動体検出フラグをリセットし、制御をステップ240に戻すステップ268とを含む。
【0074】
この図11に示す処理を実行することにより、ある進入方向について、図9に示す原理に従って車両210の検出と、その速度の検出とを行なうことができる。交差点への進入方向の各々についてこの処理を実行することで、進入方向ごとに、必要な情報を得ることができる。
【0075】
なお、上記第1の実施の形態では、車両に装着する再帰反射装置として3つの反射鏡を組合せたコーナキューブを用いている。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されず、互いに直交する3つの全反射面を有するプリズムを再帰反射装置として用いることができる。コーナーキューブ又はプリズムは比較的効果であるため、これらに代えてデリニエータのようなより簡略なものを用いてもよい。特に第2の実施の形態ではデリニエータのようなものを用いてバーコードを実現するとよい。要は、光再帰反射性を持つものを車両などの移動体に設ければよいということである。
【0076】
また、上記実施の形態の衝突警告装置34及び200では、2つの方向から同時に交差点に近づいてくる車両の双方に警告を表示する。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば一方のみに衝突の危険性を告知するような表示を行なうだけでも事故発生の危険性を低くすることができることはいうまでもない。
【0077】
また、移動体の速度及び距離については、上記実施の形態では交差点の入り口に対する値に換算している。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば交差点の中央までの値に換算してもよいし、衝突警告装置34及び200の設置されている位置までの値をそのまま用いてもよい。いずれにせよ、衝突警告装置34及び200の位置が予め定められており、移動体との間の距離及び速度として基準となる位置が予め定められれば、衝突警告装置34及び200が算出した距離及び速度を、基準となる位置に対する値に換算することができる。
【0078】
さらに、上記実施の形態に係る衝突警告装置34及び200は無線を使用していないが、無線を併用する可能性が排除されるわけではない。例えば、第2の実施の形態に係る衝突警告装置200では、バーコードを用いて反射光から車両を特定することが可能になる。車両を特定できれば、例えば無線によりその特定の車両に向けて衝突回避のための操作をするような信号を送信することができる。相手車両にそうした信号に応じて事故を回避するために適切な動作をする装置が搭載されていれば、運転者による対応が遅れた場合でも事故が発生する危険性を小さくすることができる。もちろんこの場合、電波による通信ではなく、光による通信を使用してもよい。
【0079】
上記実施の形態では、車両のフロントガラスに警告表示をレーザにより行なっている。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば交差点上部で進入道路の各々に向けて赤信号又は黄信号を設け、事故発生の危険性が検知されたらこれら信号を点滅させたりするようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態では、英語の「STOP」という文字列の鏡像図形180を警告表示として使用している。しかし警告表示はこのような文字列に限定されるわけではなく、所望の効果が得られると考えられる文字列又は図形ならどのようなものを用いてもよい。上記実施の形態では、この警告表示はレーザによりごく短時間の間に間歇的に照射される。したがって、肉眼には連続して警告表示が行なわれているように見える。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されず、さらに、照射の間隔を制御するための別のタイマを組合せ、図7のステップ158及び162などではこのタイマのオンオフと、制御のために設けられているタイマとのANDを取ってレーザを照射することで、警告表示が明確に点滅するような警告表示を行なうこともできる。
【0081】
なお、車両検出のために使用する光は可視光に限定されるわけではなく、紫外線領域及び赤外線領域のいずれを使用することもできる。霧などの発生が予測される地域では、そうした障害物に対して透過性の高い、赤外領域から遠赤外領域など、長波長領域の光を用いることが有利であることはいうまでもない。
【0082】
上記実施の形態は、車両の出会い頭の衝突を防止するためのものであった。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されず、車両をはじめとする移動体全般の衝突一般を防止するために使用することができる。例えば、高速道路などでの逆走車両と、一般車両との正面衝突を予防することにも使用できる。飛行場などで、小さな乗用車と大きな航空機のように、一方から他方の存在が確認しにくいような場合にも、両者の接触又は衝突を防止するために使用することができる。
【0083】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0084】
30,32 車両
34 衝突警告装置
36,38 レーザファンビーム
44,46 コーナキューブ
70,72,74,76 道路
50 光距離センサ
52 光速度センサ
54 レーザ描画装置
60,62,64,66 車両検知・警告レーザユニット
68 制御装置
80,82,84 反射鏡
180 鏡像図形
【技術分野】
【0001】
この発明は交通制御システムに関し、特に、見通しの悪い交差点における出会い頭の車両の衝突を予防する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点における交通事故が後を絶たない。特に、出会い頭の衝突が、発生件数において非常に大きな割合を占めている。財団法人交通事故総合分析センターの統計によれば、平成19年度における車両相互の交通事故の総数は716,091件、そのうち交差点で発生したものは325,294件(車両相互の交通事故のうち45.4%)、さらにその中で出会い頭の衝突に分類されているものが192,873件(車両相互の交通事故のうち26.9%、交差点における事故のうち59.3%)を占めている。
【0003】
こうした問題を解決するための一つの提案が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された装置は、路側機と路車間通信を、他車両と車車間通信を行なうことにより、受信した情報に基づき、支援エリアを通過する際に、自車両に発生する交通事故を回避するための情報である運転支援情報を生成し、運転者に対して提示する。路車間通信及び車車間通信は電波を使用した無線通信により実現されている。運転支援情報は、ヘッドアップディスプレイを用いて例えば車両のフロントガラスの内側に投射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009‐093343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の装置のように電波を使用する場合、必ずどの周波数帯を使用するかという問題と、混信の問題とが生ずる。道路上のように複数の車両が複数の方向から交差点に進入しようとしているときに混信が生じたりすれば、装置の動作に致命的な影響を及ぼすおそれがある。その結果、交差点における出会い頭の衝突を防止することはかなりむずかしくなる。電話にのるノイズのために装置の動作が悪影響を受ける危険性も存在する。またこうした装置の効果は装置を搭載した車両のみについて得られるものであり、装置を搭載しない車両については何の効果も得られないという問題もある。一部の車両のみがこうした装置を搭載していても、大きな効果は望めない。
【0006】
こうした問題は、車両同士についてのみ発生するわけではなく、走行軌道以外を走行することが可能な移動体に一般的に生ずる問題である。
【0007】
それゆえに本発明の目的の一つは、誤動作のおそれが小さく、移動体同士の衝突を防止する効果をより大きくすることができる衝突防止装置を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、誤動作のおそれが小さく、個々の移動体に新たに多額の投資をしなくとも、移動体同士の衝突を防止する効果をより大きくすることができる衝突防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る衝突防止装置は、それぞれ異なる方向から近づいてくる移動体を光により検出するための第1及び第2の移動体検出手段と、第1及び第2の移動体検出手段の各々により移動体が検出されたことに応答して、当該移動体のうち少なくとも一方に対し、他方の移動体の存在を告知することにより移動体同士の衝突を防止するための告知手段とを含む。
【0010】
第1及び第2の移動体検出手段は、異なる方向から近づいてくる移動体を光により検出する。第1及び第2の移動体検出手段の各々によりこうした移動体が検出されると、告知手段がこれら移動体の少なくとも一方に対し、他方の移動体の存在を告知する。
【0011】
移動体の検出に光を用い、電波を用いないため、電波の割当などの問題が生じることはない。また光を用いるため電波の場合と異なり混信が生ずる危険性ははるかに低く、誤動作の発生する危険性を低くすることができる。移動体には、移動体検出手段から出射される光を反射するための手段を設ければよく、複雑な装置を設ける必要がない。そのため、衝突を防止するための社会的コストを低く抑えることが可能になる。
【0012】
その結果、誤動作のおそれが小さく、個々の移動体に新たに多額の投資をしなくとも、移動体同士の衝突を防止する効果をより大きくすることができる衝突防止装置を提供できる。
【0013】
好ましくは、第1及び第2の移動体検出手段の各々は、予め定められた方向の予め定められた範囲に光ビームを出射し、移動体からの反射光により移動体を検知し、当該移動体から衝突防止装置の位置に関連して予め定義された位置までの距離を測定し、当該距離を表す距離信号を告知手段に与えるための距離測定手段と、距離測定手段により検知された移動体の、予め定義された位置に向かう速度を測定し、当該速度を表す速度信号を告知手段に与えるための速度測定手段とを含み、告知手段は、第1及び第2の移動体検出手段の各々から距離信号及び速度信号とを受けたことに応答して、当該距離信号により表される距離及び当該速度信号により表される速度信号によって予め定める条件が充足されるか否かを判定するための判定手段と、判定手段により、予め定める条件が充足されていると判定されたことに応答して、第1及び第2の移動体検出手段により検出された移動体のうち少なくとも一方に対し、衝突回避のための告知を光により行なうための光告知手段とを含む。
【0014】
移動体までの距離及び速度を検出することで、それらがある条件を充足するか否かを判定することによって簡単に移動体同士の衝突の可能性を判定できる。電波を用いた場合、こうした値を簡単にかつ高速に算出することは難しい。その結果、電波を用いたものよりも、移動体の衝突の危険性を小さくすることが可能になる。
【0015】
より好ましくは、光告知手段は、判定手段により、予め定める条件が充足されていると判定されたことに応答して、第1及び第2の移動体検出手段により検出された移動体の双方に対し、衝突回避のための告知を光により行なう。
【0016】
一方でなく、双方の移動体に他方の移動体の存在を告知することにより、少なくとも一方が衝突回避のための操作を行なう確率を高くすることができる。その結果、移動体同士の衝突の危険性をより小さくすることができる。
【0017】
光告知手段は、予め定められた文字列の鏡像をなす図形を、予め定められた方向に向けて可視光により投射するための投射手段を含んでもよい。
【0018】
ある文字列の鏡像をなす図形を投射した場合、例えば車両のフロントグラスに形成される図形を車両内から見ると、正しい文字列の像となる。一般に、図形よりも文字による方が意味を明確に伝達することができる。したがってこの構成により、移動体の運転者に対して行なう告知を分かりやすいものにすることができる。
【0019】
好ましくは、光告知手段は、判定手段により予め定める条件が充足されたと判定されたのち、当該予め定める条件が充足されないと判定されるようになった後も、所定時間だけ告知を継続した後に告知を終了する。
【0020】
予め定める条件が一旦充足された場合には、充足されなくなったときにも告知はすぐには解除されない。ある時間だけ告知が継続した後に始めて解除される。そのため、移動体の運転者が十分に速度を落としたりして、衝突の危険性が非常に小さくなって初めて告知の表示が消去されることになる。条件が成立しなくなったときに直ちに告知を消去する場合と比較して、移動体の運転がより慎重にされることになり、衝突の危険性をより小さくすることができる。
【0021】
別の実施の形態では、第1及び第2の移動体検出手段の少なくとも一方は、予め定められた方向に光ビームを出射し、移動体からの反射光に重畳された情報を読取って出力するための光重畳情報の読取手段と、移動体からの反射光と、前記読取手段の出力とにより、衝突防止装置に近づいてくる移動体の検知と、衝突防止装置の位置に関連して予め定義された位置までの、当該移動体からの距離の測定と、当該移動体の、衝突防止装置の位置に関連して予め定義された位置に向かう移動速度の測定とを行なうための移動体検出手段とを含む。
【0022】
車両からの反射光に重畳された情報を用いることにより、移動体の位置及び速度の検出がより高精度でできるようになる。場合によっては、この情報を他の制御又は利用者への情報提供に用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る交通制御システムの設置環境を模式的に示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る交通制御システムの設置環境である交差点の平面図を模式的に示す図である。
【図3】第1の実施の形態に係る交通制御システムで使用される衝突警告装置34のブロック図である。
【図4】第1の実施の形態に係る交通制御システムで車両に装着される再帰反射装置(コーナキューブ)を示す図である。
【図5】図3に示す衝突警告装置34を構成するプロセッサにより実行される衝突警告プログラムのメインルーチンの制御構造を示すフローチャートである。
【図6】第1の測定処理を実現するプログラムルーチンの制御構造を示すフローチャートである。
【図7】第1の警告処理を実現するプログラムルーチンの制御構造を示すフローチャートである。
【図8】警告の表示形態を示す図である。
【図9】本発明の第2の実施の形態に係る衝突警告装置200の距離計測の原理を示す図である。
【図10】第2の実施の形態で車両のフロント部分に貼付される再帰反射性のバーコードを示す図である。
【図11】第2の実施の形態に係る衝突警告装置200における車両検出のためのプログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態に係る交通制御システムとして、交差点における出会い頭の衝突を防止するための衝突警告装置について説明する。以下の説明では同一の部品には同一の参照番号を付してある。それらの名称及び機能も同一である。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0025】
[第1の実施の形態]
<構成>
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る衝突警告装置34は、例えば建築物40により見通しの悪くなっている交差点などに設置される。衝突警告装置34は、レーザファンビーム36及び38を用いることにより、交差点に向かって同時に進入しつつある車両30及び32を検出し、可視光レーザによりこれら車両に警告を表示する。衝突警告装置34が車両を検出できるようにするため、本実施の形態では、車両30及び32の一部(例えばルーフなど)に、コーナキューブ44及び46などの再帰型反射装置が設けられる。
【0026】
図2に示すように、衝突警告装置34を交差点の例えば一つのコーナに設けることにより、この交差点に向かう4つの道路70,72,74及び76のいずれか上を進入してくる車両全てを検出することができる。もちろん、交差点の各コーナに一つずつ衝突警告装置34を設けてもよいし、例えば向かい合うコーナ部分にのみ衝突警告装置34を設けるようにしてもよい。ただし、衝突警告装置34は車両のルーフにコーナキューブ44及び46が設けられることを考慮して、例えば道路面から4mなど、ある程度高い部分に設けることが望ましい。
【0027】
図3を参照して、この実施の形態に係る衝突警告装置34は、4組の車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66と、これら車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66に接続され、車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66を制御し、交差点に同時に進入しつつある車両を検知して、そうした車両に可視光による警告表示を行なわせるための制御装置68とを含む。図示はしていないが、制御装置68は、実質的にはCPU(Central Processing Unit)及び記憶装置を含むコンピュータと、当該コンピュータ上で実行されるプログラムとにより実現される。
【0028】
車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66は互いに同じ構成を有する。例えば車両検知・警告レーザユニット60は、所定方向から近づいてくる車両の存在と、その車両までの距離とを光により検知して、交差点から所定距離内に車両が検知されたときにその距離を示す距離信号を制御装置68に与えるための光距離センサ50と、同じく所定方向から近づいてくる車両の速度を光により検知して、速度信号を制御装置68に与えるための光速度センサ52と、制御装置68から警告を表示することを示す制御信号を受けると、車両に対して衝突の危険があることを示す警告を、後述する図形を描画するように可視光レーザビームを出射するためのレーザ描画装置54とを含む。この構成によって、少なくとも一方の移動体の運転者に対し、他方の移動体の存在が告知されるため、運転者が適切な対応をとることが可能となり、衝突の危険性が小さくなる。双方の運転者がこの告知に気づけば、衝突の危険性はさらに小さくなる。
【0029】
レーザ描画装置54による所定画像の描画には、例えばレーザプリンタと同様の技術を用いることができる。ただし、ここでは光としては可視光線を用いる必要がある。
【0030】
光距離センサ50としては、特定波長の光ビームで限定された方向をスキャンして、車両のコーナキューブから反射してきたその特定波長の光を検知し、あわせて出射光と反射光との位相のずれなどにより対象までの距離を検出できるものであれば、市販のどのようなものでもよい。ただし、コスト及び交差点の高い位置に衝突警告装置34を設置することから考えて、重量、大きさ、及び消費電力が小さいものが望ましい。道路上を交差点に向けて進行してくる車両を検出するという目的から考えて、光ビームを出射する方向及び範囲には一定の制限を設けておくべきである。光速度センサ52についても同様である。すなわち、光速度センサ52としては、特定波長の光ビームで限定された方向をスキャンして、車両のコーナキューブから反射してきたその特定波長の光を検知し、出射光と反射光との周波数の相違から車両の速度を検出できるものであれば、市販のどのようなものでもよい。
【0031】
なお、光速度センサ52が検出する移動体までの距離は、移動体から光速度センサ52までの距離である。しかし、衝突警告装置34が設置されている位置と、基準となる交差点の入り口の位置との間の関係が予め分かっていれば、衝突警告装置34に対する距離を交差点の入り口までの距離に換算することは容易である。速度についても同様である。
【0032】
図4を参照して、本実施の形態で使用するコーナキューブ44は、3枚の反射鏡80,82及び84を、互いに90度をなすように組合せたものである。このように反射鏡80,82及び84を組合せたコーナキューブ44は、コーナキューブ44に入射する光を、その入射方向と平行な方向に反射することが知られている。したがって、衝突警告装置34の光距離センサ50及び光速度センサ52から出射された光は、もしも道路上に車両があればその車両のコーナキューブ44により反射され、光距離センサ50及び光速度センサ52に入射する。したがって光距離センサ50は、反射光内に特定波長の光パルスが検出されるか否かにより車両の存在を検知し、出射光と入射光との位相差から車両までの距離を検知できる。この結果から、交差点から所定距離内に車両が存在するか否かを判定できる。本実施の形態では、光速度センサ52は、同様に出射光と入射光とのドップラー効果に基づく周波数の相違から、車両の速度を検出するものである。この場合、車両が交差点に近づいてくるのか、交差点から遠ざかっているのかについても、速度の符号により判定することができる。
【0033】
図5を参照して、衝突警告装置34の制御装置68が実行するプログラムは以下のような制御構造を有する。このプログラムは、電源が投入されるか、又はリセット信号を受けると、図示しないランダムアクセスメモリなどの記憶領域を初期化し、必要な定数を図示しない読出専用メモリから読出し、ランダムアクセスメモリ又はCPU内のレジスタに格納したり、車両検知・警告レーザユニット60、62,64及び66を起動したりする初期化処理を行なう初期化ステップ100と、初期化ステップ100に続き、車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66について順番に、監視対象となっている道路における車両の存在、並びにその交差点から車両までの距離及び車両の速度をそれぞれ検出する第1〜第4の測定ステップ102,104,106及び108と、第1〜第4の測定ステップ102,104,106及び108により測定された結果に基づいて、交差点で交差する道路のうち、出会い頭の衝突が発生する可能性のある車両の進入方向に対応する4つの組合せ(図2の例では、道路70及び72、道路72及び74、道路74及び76、並びに道路76及び70)の各々に対して、それぞれ所定の条件が充足されているか否かを判定し、判定結果に応じて必要な警告表示処理を順番に行なった後、制御をステップ102に戻すステップ110,112,114及び116とを含む。図5には図示していないが、ステップ102〜ステップ116が一定の周期で繰返されるよう、ルーチンの最後にはサイクル時間を調整するステップが設けられている。
【0034】
図6を参照して、図5の第1の測定ステップ102を実現するプログラムルーチンは、以下のような制御構造を有する。なお、車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66それぞれに対し、図示しないRAM内に第1〜第4のフラグを記憶する領域が設けられている。また、制御装置68では、予め所定時間が設定されたタイマが車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66に対してそれぞれ別々に確保されている。タイマは起動されると(オン状態となると)所定時間からカウントダウンを開始し、残り時間が0となるとオフとなるものとする。
【0035】
図6を参照して、第1の測定ルーチンは、第1のフラグの値を0に設定するステップ130を含む。第1のフラグは、第1の方向から交差点に所定速度以上で進入しようとしている車両であって、交差点の入り口から所定の距離以内に存在しているものが検出された場合には値「1」に、それ以外の場合には値「0」に設定されるものとする。
【0036】
このプログラムはさらに、ステップ130の後、光距離センサ50の出力(車両検出信号)を読み、その値により制御を分岐するステップ132を含む。光距離センサ50の車両検出信号は、監視対象の道路の方向で、交差点から所定距離内に車両が検出されると1、それ以外の場合には0をとる。車両検出信号の値が0と判定されたときにはこのルーチンの実行は終了する。
【0037】
このプログラムはさらに、ステップ132において車両検出信号の値が1と判定されたときに実行され、光距離センサ50の出力する車両の速度信号の値(符号も含む。)が、予め定めるしきい値V0より大きいか否かを判定し、速度信号の値がしきい値V0以下の場合にはこのルーチンの実行を終了するステップ134と、ステップ134において、速度信号の値がしきい値V0より大きいと判定されたときに実行され、第1のフラグに「1」を代入してこのルーチンの実行を終了するステップ136とを含む。
【0038】
すなわちこの第1の測定ステップの実行により、車両検知・警告レーザユニット60が担当する方向から交差点に進入してくる車両であって、その速度がしきい値V0より大きく、かつ交差点から所定の距離内にある車両が検出されたときには第1のフラグに「1」が、それ以外の場合には「0」が、それぞれ設定される。
【0039】
図5に示すステップ104,106及び108において、車両検知・警告レーザユニット62,64及び66の出力に対して行なわれる第2〜第4の測定ステップについても同様である。それぞれが担当する方向から交差点に進入してくる車両であって、その速度がしきい値V0より大きく、かつ交差点から所定の距離内にある車両が検出されたときには、その方向に応じて第2〜第4のフラグのうちその方向に対応するものに「1」が、それ以外の場合には「0」が、それぞれ設定される。互いに交差する2方向について、対応するフラグの値が共に1か否かを判定することで、この2方向から、出会い頭を起こす危険性のある車両が進入しつつあるか否かを判定することができる。
【0040】
図7を参照して、図6のステップ110で実行される第1の警告処理を実現するためのプログラムルーチンは以下の制御構造を有する。この第1の警告処理は、図2に示される例では、道路70及び72の組合せにおける衝突の危険性を警告するためのものである。
【0041】
このルーチンは、第1のフラグが1か否かを判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップ150と、ステップ150で第1のフラグが1と判定されたときに、さらに第2のフラグが1か否かを判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップ152と、ステップ152で第2のフラグが1と判定されたときに実行され、第1及び第2のタイマを再起動するステップ154とを含む。これらタイマが再起動されることにより、ステップ154が実行されるたびに第1及び第2のタイマは、新たに所定時間のカウントダウンを開始する。
【0042】
このプログラムはさらに、ステップ150で第1のフラグが0と判定されたとき、ステップ152で第2のフラグが0と判定されたとき、及びステップ154が実行された後に実行され、第1のタイマがオンか否か(すなわち第1のタイマのカウントダウンが実行中か否か)を判定し、判定結果に応じて制御の流れを分岐させるステップ156と、ステップ156で第1のタイマがオンと判定されたときに実行され、第1のタイマに対応する道路、すなわち図2に示す道路70の方向を向いて設けられているレーザ描画装置(図3に示すレーザ描画装置54)に対して、所定の警告図形を車両の進入方向に向けて照射させるステップ158と、ステップ156において第1のタイマがオフと判定されたとき、及び第1のタイマがオンと判定されステップ158の処理が完了したときに実行され、第2のタイマがオンか否かを判定し、第2のタイマがオフであればこのルーチンの実行を終了させるステップ160と、ステップ160において第2のタイマがオンであると判定されたときに実行され、車両検知・警告レーザユニット62内のレーザ描画装置に対して、所定の警告図形を道路72上の車両の進入方向に向けて照射させてこのルーチンの実行を終了させるステップ162とを含む。
【0043】
図8を参照して、本実施の形態では、レーザ描画装置54などにより車両32等に向けて可視光レーザ182で照射される図形として、英語で「停止せよ」を示す「STOP」というアルファベットの鏡像図形180を使用する。このように鏡像図形が車両32のフロントガラスに照射されることにより、車両32の内部にいる運転者には「STOP」という文字がフロントガラスに表示されることになり、交差点手前で車両を停止させる操作を行なう可能性が高くなる。その結果、出会い頭の事故の危険性を小さくすることができる。
【0044】
なお、鏡像図形180を投射するレーザ描画装置54は、図7に示すステップ158が実行されるたびに駆動される。ステップ158が実行されていないときにはレーザ描画装置54の駆動は停止される。レーザ発振装置の出力としてはあまり高くないものを使用するようにし、かつこのように間歇的にレーザ描画装置54を駆動することで、鏡像図形180の投射光が運転者の視力に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0045】
鏡像図形180はどのような色で投射してもよいが、一般的に赤外線近くの赤色を使用することが望ましい。また、警告を表示するときの、車両から交差点までの距離のしきい値の大きさにもよるが、車両のフロントガラスを追尾するようにしてレーザ光を照射することは難しく、コストも高くなるので、鏡像図形180の投射方向は本実施の形態ではフロントガラスに鏡像図形180が形成される時間ができるだけ長くなるような一定方向に固定している。このような場合には、レーザ描画装置54をそれほど高くない位置に設けるようにすることで、車両のフロントガラスに鏡像図形180が投射される時間を長くすることができる。
【0046】
図5のステップ112,114及び116の処理は、それぞれ道路72及び74、道路74及び76、並びに道路76及び70の組合せに対して図7と同様の処理を行なうためのものである。処理の対象となるフラグ、タイマ、レーザ描画装置などをどのように選択するかは当業者には明らかである。したがってここではこれらステップの処理を実現するためのプログラムルーチンの詳細については繰返さない。
【0047】
<動作>
以上、構成について説明した衝突警告装置34は以下のように動作する。衝突警告装置34の電源が投入されると、制御装置68は記憶領域のクリア及びフラグの記憶領域のクリアなどの初期化処理を行な(図5のステップ100)い、以下に述べる繰返し処理の実行を開始する。なお、初期化処理では、車両検知・警告レーザユニット60,62,64及び66が全て起動される。例えば車両検知・警告レーザユニット60の光距離センサ50は、道路70上を所定波長の光ビームでスキャンし、車両のコーナキューブから反射してくる反射光を検出することで道路上に車両が存在するか否かを検出する。光距離センサ50はまた、反射光と出射光との位相のずれに基づいて、交差点入り口から車両までの距離を算出する。光距離センサ50は、両者の測定結果のANDを演算し、結果を車両検出信号として出力する。光速度センサ52は、光距離センサ50と同様、監視対象となる道路70上を光ビームでスキャンし、反射光があるときにはその周波数と出射光の周波数とのずれから車両の速度を検出し、速度信号を出力する。他の車両検知・警告レーザユニット62,64及び66についても同様である。これら信号はいずれも制御装置68に与えられる。
【0048】
繰返し処理の最初、ステップ102では、第1のフラグの値に0が代入される(図6、ステップ130)。ステップ132では、光距離センサ50の出力のうち、車両検出信号が読み取られ、その値に基づき、車両検知・警告レーザユニット60が監視している道路70(図2)上で、交差点から所定距離内に車両が存在するか否かが判定される。そのような車両が存在していなければ、このルーチンではこれ以後何も実行されず、処理は終了する。したがって第1のフラグの値は0となる。一方、交差点から所定距離内に車両が存在する場合には、制御はステップ134に進む。
【0049】
ステップ134では、光速度センサ52の出力に基づき、ステップ132で検出された車両の速度がしきい値V0より大きいか否かが判定される。車両の速度がしきい値V0より大きければ第1のフラグの値は1に設定される。そうでない場合には第1のフラグの値は0のままである。いずれにせよ第1の測定処理は終了する。
【0050】
以上の処理により、図2に示す道路70の方向から交差点に向けて進入してくる車両であって、交差点からの距離が所定距離以下で、かつ交差点に向かっているその車両の速度がしきい値V0より大きいときには第1のフラグの値は1に設定され、それ以外の場合には0に設定される。
【0051】
図5のステップ104,106及び108の処理により、ステップ102と同様に、道路72,74及び76の方向から交差点に向かってくる車両であって、交差点からの距離がしきい値VDより大きいときにはそれぞれ第2、第3及び第4のフラグの値が1に設定され、それ以外の場合には第2、第3及び第4のフラグの値がそれぞれ0に設定される。
【0052】
図7を参照して、ステップ150及びステップ152の処理により、第1のフラグ及び第2のフラグの値が共に1であれば、道路70及び72の双方において、所定の速度で交差点に進入しようとする車両が検出されたということである。この場合、ステップ154で第1及び第2のタイマが再起動される。衝突警告装置34の起動直後はこれらタイマはオフであり、初めてステップ154(及び図5のステップ112,114,116内において、ステップ154に対応するステップ)が実行されることでタイマがオン状態となり、カウントダウンが開始される。その後、ステップ150及び152での判定結果がともにYESとなるたびに第1及び第2のタイマ(図5のステップ112,114,116においてはそれぞれ第2及び第3のタイマ、第3及び第4のタイマ、並びに第4及び第1のタイマ、という組合せ)はリセットされ、カウントダウンを所定値から再開する。
【0053】
続いて第1のタイマがオン状態であれば(ステップ156でYES),ステップ158で道路70上の車両に向けてレーザ描画装置54による警告表示のレーザ発振が短時間のみ行なわれる。同様に第2のタイマがオン状態であれば(ステップ160でYES),ステップ162で道路72上の車両に向けて車両検知・警告レーザユニット62のレーザ描画装置による警告表示のレーザ発振が短時間のみ行なわれ、第1の警告処理が終了する。
【0054】
以上の結果、例えば第1のタイマが一旦起動されると、道路70上の車両が関連する出会い頭の衝突の危険性がなくなったときでも、所定時間が経過し第1のタイマが満了するまではステップ156での判定結果はYESとなり、ステップ158の処理が繰返し実行される。その結果、所定時間の間は道路70上の車両への警告表示が繰返し実行される。このように警告表示は、出会い頭の衝突の危険性がなくなった後、一定時間だけ継続された後に消去される。そのため、運転者が十分に速度を落とした後でないと警告表示は消去されず、出会い頭の衝突の危険性をより小さくできる。
【0055】
以上の処理を、図5のステップ112,114及び116で、それぞれ道路72及び74、道路74及び76、並びに道路76及び70の組合せに対して実行し、いずれの組合せでも出会い頭の衝突の危険性が発生すれば関連する道路上の車両に対して警告表示を行なうことができる。その結果、この交差点における出会い頭の事故の危険性を小さくすることができる。
【0056】
上記実施の形態によれば、出会い頭の事故が発生する危険性のある交差点のみに衝突警告装置34を設けることで、事故の発生の危険性を小さくすることができる。車両にはコーナキューブを設けるだけでよく、車両に高価な専用の装置を設ける必要はない。さらに、一つの交差点であっても、出会い頭の事故が発生する危険性のある道路の組合せに対してのみ動作するような衝突警告装置34を設けることによっても、その交差点において発生する出会い頭の事故の危険性を小さくすることができる。そのため、あまり大きなコストをかけなくとも出会い頭の事故の危険性を小さくすることができる。
【0057】
さらに上記実施の形態では、事故の予防のために電波を使用しない。したがって周波数の割当て、他の装置との電波の混信の可能性などを考慮する必要は無い。衝突警告装置34の構成を単純にすることができ、そのコストを低く抑えることができる。また、光を使用しているため、特定の方向のみを監視の対象とすることができる。例えば必ずしも交差点で無い箇所、例えば道路が大きく湾曲している箇所など、道路が立体的に交差している箇所などにおいても、他のシステムとの干渉を気にすることなく、所望の方向のみを監視の対象とすることができるという効果がある。
【0058】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態では、光ビームで所定方向をスキャンしている。しかし、本発明はそのような実施の形態に限定されるわけではない。照射方向を固定した光ビームを用いて実現することもできる。第2の実施の形態は、そのように照射方向を固定した光ビームを2本、交差点への進入路ごとに使用するものである。
【0059】
図9に、この第2の実施の形態に係る衝突警告装置200による速度の測定原理を模式的に示す。図9を参照して、第2の実施の形態に係る衝突警告装置200は、2本のビーム出射・検知器202及び204を含む。ビーム出射・検知器202及び204はいずれも、鉛直線に対して所定の俯角θで、車両が進入してくる方向に光ビームを出射する。ビーム出射・検知器202は基準となる水平面からの高さがH1、ビーム出射・検知器204は高さがH2(<H1)の位置に設けられている。本実施の形態では、車両のフロントガラスの、高さH0の位置に光再帰反射性のマーカが貼付されており、衝突警告装置200によりこのマークからの反射光が検出されるものとする。光再帰反射性のマーカとしては、例えばデリニエータのようなものを採用することができる。
【0060】
衝突警告装置200が交差点の角に設けられているものとすると、図9(A)及び(B)に示されるように、交差点に進入してくる車両210は、最初はビーム出射・検知器202により、次にビーム出射・検知器204により検出される。この検出時間の差Δtから、車両210の速度Vが以下のようにして計算できる。
【0061】
【数1】
ビーム出射・検知器202及び204の高さH1及びH2及び俯角θは分かっているが、マーカの高さH0は車両により異なり、予め分かるものではない。このままでは速度Vを正しく計算できない。そこで本実施の形態では、光再帰反射性のマーカとして、バーコードを採用し、このバーコードによりマーカの貼付位置を表すものとする。
【0062】
図10を参照して、車両210のフロントガラス220の中央上部に、ETC(Electronic Toll Collection System)の車載アンテナ222が設けられている場合を考える。車載アンテナ222の背面(車両の前方を向いている面)に、光再帰反射性のバーコード224を貼付する。バーコード224は、そのバーが水平方向を向くようにしておく。ビーム出射・検知器202又は204からの光ビームがバーコード224に当たった場合、車両が前方に移動しているため、ちょうどこのバーコード224がビーム出射・検知器202又は204からの光ビームによりスキャンされたのと同様の効果を得ることができる。
【0063】
すなわちこの実施の形態に係る衝突警告装置200では、光距離センサ50(図3参照)に代えて単なる光センサを準備すれば、車両210の位置及び速度を光距離センサ50からの情報に基づき算出し、制御装置68に与えることができる。さらに、図3に示す光速度センサ52に代えて、バーコードを読取る装置を設けることで、バーコード224からの反射光に重畳された情報を得て制御装置68にその情報を与えることができる。
【0064】
このビーム出射・検知器204として例えば20ビットの情報を伝達できるようにすると、例えば末尾の2ビットで4種類の車高を表現できる。例えば00,01,10及び11によりそれぞれ0.5,1,1.5、2メートルのマーカの貼付位置の高さを表現できる。角度θが適切な範囲の大きさであれば、マーカの貼付位置の誤差は速度Vの測定誤差にはそれほど大きく影響しない。したがって、この程度の粒度でマーカの貼付位置を知ることができれば十分である。
【0065】
なお、図9及び図10に示すように、車両のフロントガラス部分にバーコード224を設けた場合、上記した距離L1,L2はいずれもバーコード224から交差点までの距離となり、車両の先頭から交差点までの位置よりも若干長くなる。したがって、距離L1,L2には、バーコード224から車両の先頭までの長さに相当する値を加算する必要がある。この値をバーコード224によりさらに表すようにしてもよいが、安全を見て所定の大きさの定数(例えば2m)などの値を距離L1,L2から減算するだけでも十分である。
【0066】
このようにバーコードを使用する場合には、バーコードより、他の情報を表すことができる。たとえば、情報量に余裕があれば、車両を特定する情報をバーコードに記録させることもできる。そのようにすることで、道路上を通行している車両の移動経路及び通過位置と通過時刻、車線変更の履歴、平均時速などを把握することも可能になるという効果がある。そうした機能も、衝突警告装置200によりバーコードを読み取ることで容易に実現できる。
【0067】
図11に、衝突警告装置200における車両210の速度検出を実現するためのプログラムのフローチャートを示す。この処理は、例えば図5及び図6に示すような処理と平行して、ただしメモリ空間を共有して実行される。図6のステップ132の処理では、図11に示す「移動体検出フラグ」の値を調べることで移動体の有無を判定できる。また、ステップ134の処理では、図11に示す速度計算の結果を参照することで速度を知ることができる。
【0068】
図11を参照して、このプログラムは、起動後、ビーム出射・検知器202の出力がハイ(車両あり)か否かを調べ、ビーム出射・検知器202の出力がハイとなるまで待機するステップ240と、ステップ240でビーム出射・検知器202の出力がハイとなったときに、移動体検出フラグと呼ばれるフラグをセットするステップ242と、車両の検知速度を示す変数に、しきい値速度V0の2倍にあたる2V0を代入するステップ244と、ビーム出射・検知器202による車両検知後、ビーム出射・検知器204による車両の検知までの時間を測定するためのタイマをスタートさせるステップ246とを含む。
【0069】
ステップ244で、検出速度として2V0を代入するのは、万が一ビーム出射・検知器204による車両の検出までに図6のステップ134の処理が実行されてしまったときには、優先して警告を表示させるためである。
【0070】
図11をさらに参照して、このプログラムはさらに、ステップ246につつき、ビーム出射・検知器204の出力がハイか(車両を検出)否かを判定し、判定結果にしたがって制御の流れを分岐させるステップ248と、ステップ248でビーム出射・検知器204の出力がハイではなかったと判定されたときに、ステップ246でスタートされたタイマの値により、所定時間が経過したか否かを判定し、判定結果により制御の流れを分岐させるステップ250とを含む。ステップ250で所定時間が経過していないと判定されたときには、制御はステップ248に戻る。ステップ250で所定時間が経過したと判定されたときには、このプログラムを実行している中央演算処理装置をリセットし、このプログラムの実行を最初から開始させるステップ252とを含む。
【0071】
一方、ステップ248でビーム出射・検知器204の出力がハイと判定されたときには、制御はステップ254に進み、ステップ246でスタートされたタイマをストップする。移動体検出フラグをセットし(ステップ256)、この間にタイマにより計時された時間と、図示しないバーコード読取プロセスにより読取られたマーカの貼付高さH0と、ビーム出射・検知器202及びビーム出射・検知器204の設けられた高さH1及びH2と、ビーム出射・検知器202及び204のビーム出射の俯角θとにより、前述した式にしたがって車両210の速度Vを算出して図示しない記憶領域に格納するステップ258とを含む。ここで記憶領域に格納された速度Vの値が、図6に示すプロセスのステップ134で読出される。
【0072】
このプログラムはさらに、ステップ258の後、ビーム出射・検知器204の出力がローか否かを判定し、判定結果にしたがって制御の流れを分岐させるステップ260と、ステップ260でビーム出射・検知器204の出力がρでない、すなわちハイであると判定されたときに、ビーム出射・検知器204の出力がハイとなってから所定時間経過したか否かを判定し、所定時間が経過していないときにはステップ260に制御を戻すステップ262とを含む。ステップ262で所定時間が経過したと判定されたときには、ビーム出射・検知器204に何らかの異常が生じたか、車両の挙動に異常が生じたと考えられるので、ステップ264でこのプログラムを実行しているCPUをリセットし、このプログラムの実行を最初から再開させる。
【0073】
このプログラムはさらに、ステップ260でビーム出射・検知器204の出力がローに戻った後、ステップ256でセットされた移動体検出フラグの値が、図6に示すプロセスにより間違いなく読取られるよう予め設定された所定時間だけ待機するステップ266と、ステップ266で所定時間が経過した後、移動体検出フラグをリセットし、制御をステップ240に戻すステップ268とを含む。
【0074】
この図11に示す処理を実行することにより、ある進入方向について、図9に示す原理に従って車両210の検出と、その速度の検出とを行なうことができる。交差点への進入方向の各々についてこの処理を実行することで、進入方向ごとに、必要な情報を得ることができる。
【0075】
なお、上記第1の実施の形態では、車両に装着する再帰反射装置として3つの反射鏡を組合せたコーナキューブを用いている。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されず、互いに直交する3つの全反射面を有するプリズムを再帰反射装置として用いることができる。コーナーキューブ又はプリズムは比較的効果であるため、これらに代えてデリニエータのようなより簡略なものを用いてもよい。特に第2の実施の形態ではデリニエータのようなものを用いてバーコードを実現するとよい。要は、光再帰反射性を持つものを車両などの移動体に設ければよいということである。
【0076】
また、上記実施の形態の衝突警告装置34及び200では、2つの方向から同時に交差点に近づいてくる車両の双方に警告を表示する。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば一方のみに衝突の危険性を告知するような表示を行なうだけでも事故発生の危険性を低くすることができることはいうまでもない。
【0077】
また、移動体の速度及び距離については、上記実施の形態では交差点の入り口に対する値に換算している。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば交差点の中央までの値に換算してもよいし、衝突警告装置34及び200の設置されている位置までの値をそのまま用いてもよい。いずれにせよ、衝突警告装置34及び200の位置が予め定められており、移動体との間の距離及び速度として基準となる位置が予め定められれば、衝突警告装置34及び200が算出した距離及び速度を、基準となる位置に対する値に換算することができる。
【0078】
さらに、上記実施の形態に係る衝突警告装置34及び200は無線を使用していないが、無線を併用する可能性が排除されるわけではない。例えば、第2の実施の形態に係る衝突警告装置200では、バーコードを用いて反射光から車両を特定することが可能になる。車両を特定できれば、例えば無線によりその特定の車両に向けて衝突回避のための操作をするような信号を送信することができる。相手車両にそうした信号に応じて事故を回避するために適切な動作をする装置が搭載されていれば、運転者による対応が遅れた場合でも事故が発生する危険性を小さくすることができる。もちろんこの場合、電波による通信ではなく、光による通信を使用してもよい。
【0079】
上記実施の形態では、車両のフロントガラスに警告表示をレーザにより行なっている。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されない。例えば交差点上部で進入道路の各々に向けて赤信号又は黄信号を設け、事故発生の危険性が検知されたらこれら信号を点滅させたりするようにしてもよい。
【0080】
また、上記実施の形態では、英語の「STOP」という文字列の鏡像図形180を警告表示として使用している。しかし警告表示はこのような文字列に限定されるわけではなく、所望の効果が得られると考えられる文字列又は図形ならどのようなものを用いてもよい。上記実施の形態では、この警告表示はレーザによりごく短時間の間に間歇的に照射される。したがって、肉眼には連続して警告表示が行なわれているように見える。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されず、さらに、照射の間隔を制御するための別のタイマを組合せ、図7のステップ158及び162などではこのタイマのオンオフと、制御のために設けられているタイマとのANDを取ってレーザを照射することで、警告表示が明確に点滅するような警告表示を行なうこともできる。
【0081】
なお、車両検出のために使用する光は可視光に限定されるわけではなく、紫外線領域及び赤外線領域のいずれを使用することもできる。霧などの発生が予測される地域では、そうした障害物に対して透過性の高い、赤外領域から遠赤外領域など、長波長領域の光を用いることが有利であることはいうまでもない。
【0082】
上記実施の形態は、車両の出会い頭の衝突を防止するためのものであった。しかし本発明はそのような実施の形態には限定されず、車両をはじめとする移動体全般の衝突一般を防止するために使用することができる。例えば、高速道路などでの逆走車両と、一般車両との正面衝突を予防することにも使用できる。飛行場などで、小さな乗用車と大きな航空機のように、一方から他方の存在が確認しにくいような場合にも、両者の接触又は衝突を防止するために使用することができる。
【0083】
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0084】
30,32 車両
34 衝突警告装置
36,38 レーザファンビーム
44,46 コーナキューブ
70,72,74,76 道路
50 光距離センサ
52 光速度センサ
54 レーザ描画装置
60,62,64,66 車両検知・警告レーザユニット
68 制御装置
80,82,84 反射鏡
180 鏡像図形
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ異なる方向から近づいてくる移動体を光により検出するための第1及び第2の移動体検出手段と、
前記第1及び第2の移動体検出手段の各々により移動体が検出されたことに応答して、当該移動体のうち少なくとも一方に対し、他方の移動体の存在を告知することにより移動体同士の衝突を防止するための告知手段とを含む、衝突防止装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の移動体検出手段の少なくとも一方は、
予め定められた方向の予め定められた範囲に光ビームを出射し、移動体からの反射光により移動体を検知し、当該移動体から前記衝突防止装置の位置に関連して予め定義された位置までの距離を測定し、当該距離を表す距離信号を前記告知手段に与えるための距離測定手段と、
前記距離測定手段により検知された移動体の、前記予め定義された位置に向かう速度を測定し、当該速度を表す速度信号を前記告知手段に与えるための速度測定手段とを含み、
前記告知手段は、
前記第1及び第2の移動体検出手段の各々から前記距離信号及び前記速度信号とを受けたことに応答して、当該距離信号により表される距離及び当該速度信号により表される速度信号によって予め定める条件が充足されるか否かを判定するための判定手段と、
前記判定手段により、前記予め定める条件が充足されていると判定されたことに応答して、前記第1及び第2の移動体検出手段により検出された移動体のうち少なくとも一方に対し、衝突回避のための告知を光により行なうための光告知手段とを含む、請求項1に記載の衝突防止装置。
【請求項3】
前記光告知手段は、前記判定手段により、前記予め定める条件が充足されていると判定されたことに応答して、前記第1及び第2の移動体検出手段により検出された移動体の双方に対し、前記衝突回避のための告知を光により行なう、請求項2に記載の衝突防止装置。
【請求項4】
前記光告知手段は、予め定められた文字列の鏡像をなす図形を、前記予め定められた方向に向けて可視光により投射するための投射手段を含む、請求項2に記載の衝突防止装置。
【請求項5】
前記光告知手段は、前記判定手段により前記予め定める条件が充足されたと判定されたのち、当該予め定める条件が充足されないと判定されるようになった後も、所定時間だけ前記告知を継続した後に告知を終了する、請求項2〜請求項4のいずれかに記載の衝突防止装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の移動体検出手段の少なくとも一方は、
予め定められた方向に光ビームを出射し、移動体からの反射光に重畳された情報を読取って出力するための光重畳情報の読取手段と、
前記移動体からの反射光と、前記読取手段の出力とにより、前記衝突防止装置に近づいてくる移動体の検知と、前記衝突防止装置の位置に関連して予め定義された位置までの、当該移動体からの距離の測定と、当該移動体の、前記衝突防止装置の位置に関連して予め定義された位置に向かう移動速度の測定とを行なうための移動体検出手段とを含む、請求項1に記載の衝突防止装置。
【請求項1】
それぞれ異なる方向から近づいてくる移動体を光により検出するための第1及び第2の移動体検出手段と、
前記第1及び第2の移動体検出手段の各々により移動体が検出されたことに応答して、当該移動体のうち少なくとも一方に対し、他方の移動体の存在を告知することにより移動体同士の衝突を防止するための告知手段とを含む、衝突防止装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の移動体検出手段の少なくとも一方は、
予め定められた方向の予め定められた範囲に光ビームを出射し、移動体からの反射光により移動体を検知し、当該移動体から前記衝突防止装置の位置に関連して予め定義された位置までの距離を測定し、当該距離を表す距離信号を前記告知手段に与えるための距離測定手段と、
前記距離測定手段により検知された移動体の、前記予め定義された位置に向かう速度を測定し、当該速度を表す速度信号を前記告知手段に与えるための速度測定手段とを含み、
前記告知手段は、
前記第1及び第2の移動体検出手段の各々から前記距離信号及び前記速度信号とを受けたことに応答して、当該距離信号により表される距離及び当該速度信号により表される速度信号によって予め定める条件が充足されるか否かを判定するための判定手段と、
前記判定手段により、前記予め定める条件が充足されていると判定されたことに応答して、前記第1及び第2の移動体検出手段により検出された移動体のうち少なくとも一方に対し、衝突回避のための告知を光により行なうための光告知手段とを含む、請求項1に記載の衝突防止装置。
【請求項3】
前記光告知手段は、前記判定手段により、前記予め定める条件が充足されていると判定されたことに応答して、前記第1及び第2の移動体検出手段により検出された移動体の双方に対し、前記衝突回避のための告知を光により行なう、請求項2に記載の衝突防止装置。
【請求項4】
前記光告知手段は、予め定められた文字列の鏡像をなす図形を、前記予め定められた方向に向けて可視光により投射するための投射手段を含む、請求項2に記載の衝突防止装置。
【請求項5】
前記光告知手段は、前記判定手段により前記予め定める条件が充足されたと判定されたのち、当該予め定める条件が充足されないと判定されるようになった後も、所定時間だけ前記告知を継続した後に告知を終了する、請求項2〜請求項4のいずれかに記載の衝突防止装置。
【請求項6】
前記第1及び第2の移動体検出手段の少なくとも一方は、
予め定められた方向に光ビームを出射し、移動体からの反射光に重畳された情報を読取って出力するための光重畳情報の読取手段と、
前記移動体からの反射光と、前記読取手段の出力とにより、前記衝突防止装置に近づいてくる移動体の検知と、前記衝突防止装置の位置に関連して予め定義された位置までの、当該移動体からの距離の測定と、当該移動体の、前記衝突防止装置の位置に関連して予め定義された位置に向かう移動速度の測定とを行なうための移動体検出手段とを含む、請求項1に記載の衝突防止装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−175560(P2011−175560A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40527(P2010−40527)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(397057809)株式会社津村総合研究所 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(397057809)株式会社津村総合研究所 (5)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]