説明

衣料洗剤用高分子ビルダー

【課題】液体衣料洗剤に安定に配合することができ、高硬度でも優れた泥分散性を発現し、且つ耐加水分解性に優れた衣料洗剤用高分子ビルダーを提供する。
【解決手段】特定の不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位(A)及び特定の不飽和ポリアルキレンオキサイド系単量体由来の構成単位(B)を含有し、構成単位(A)と構成単位(B)の質量比が、構成単位(A):構成単位(B)で1:99〜29:71であり、全構成単位中の構成単位(A)及び構成単位(B)の割合が85質量%以上である高分子化合物又はその塩からなる、衣料洗剤用高分子ビルダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料洗剤用高分子ビルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する意識が高まってきており、洗濯においても従来よりも洗浄、すすぎにおいて水の使用量を減らした節水型洗濯機が多く普及している。そのような節水型洗濯機中の洗浄、すすぎ水は、従来と比較して、汚れの濃度が高く、Caなどのイオン濃度、硬度が高くなっている。
【0003】
また、衣料洗剤には、ポリアクリル酸などの不飽和カルボン酸系(共)重合体などの高分子ビルダーが配合されている。これらの衣料洗剤用高分子ビルダーは泥分散性に優れ、洗剤の泥洗浄力を向上させる。しかしながら、衣料洗剤用高分子ビルダーの代表例であるポリアクリル酸等は、処理に用いる水の硬度が高くなるにつれ、その泥分散性が低下する傾向にある。
【0004】
例えば、節水型洗濯機においては、使用水量が低減されることから、相対的に洗濯物等から取り込まれる硬度成分が濃縮される傾向にあり、結果として洗濯水の高硬度化を招くことがある。そのため、ポリアクリル酸の泥分散性が従来の洗濯機と比較して低下する傾向にある。そこで、高硬度でも優れた泥分散性を発現するビルダーの開発が求められる。
【0005】
特許文献1〜5にはCaなどのイオン濃度が高い水で優れた分散性を発現するアルキレンオキサイド付加エステル型不飽和単量体と不飽和カルボン酸単量体を共重合させたスケール剤が提案されている。しかし、この構造のポリマーはエステル結合を有するため、加水分解を受けやすいという欠点があった。特に製品中に水を含む液体洗剤においては、エステル結合が受けやすく、性能、配合安定性が悪いという問題があった。
【0006】
特許文献6には、アリルアルコールにアルキレンオキサイドが付加した繰り返し構造単位(A)と、不飽和カルボン酸単量体の繰り返し構造単位(B)とを、(A):(B)で0.1:99.9〜60:40であるブロック共重合体からなる洗剤用ビルダーが記載されている。しかし、不飽和カルボン酸単量体が多いため、泥洗浄力が硬度の影響を受けやすく、更に、界面活性剤と水とを含有する液体洗剤への相溶性が低下するという問題があった。
【0007】
また、特許文献7には、特定の不飽和カルボン酸系単量体と、不飽和アルコール系単量体とを共重合してなる水溶性共重合体を含有する液体洗剤用ビルダーが記載されている。この不飽和アルコール系単量体は、3−メチル−3−ブテン−1−オールのアルキレンオキサイド付加物等、該文献の一般式(2)中のR1、R2、R3及びR4の合計炭素数が3であるものに限られる。この洗剤用ビルダーは、高硬度での優れた泥分散性と、液体洗剤への相溶性を両立できるものではない。
【0008】
また、特許文献8には、(メタ)アクリル酸系単量体を30〜99質量%、不飽和ポリアルキレングリコール系単量体を1〜70質量%の割合で用いた単量体組成物を共重合した所定のS値を有する重合体組成物を洗剤用ビルダーとして用いることが開示されている。この洗剤用ビルダーもまた、高硬度での優れた泥分散性と、液体洗剤への相溶性を両立できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭51−146341号公報
【特許文献2】特開昭59−26131号公報
【特許文献3】特開昭59−29094号公報
【特許文献4】特開昭59−196799号公報
【特許文献5】特開昭59−25809号公報
【特許文献6】特開昭58−5398号公報
【特許文献7】特開2002−60785号公報
【特許文献8】特開2004−75977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、液体衣料洗剤に安定に配合することができ、高硬度でも優れた泥分散性を発現し、且つ耐加水分解性に優れた衣料洗剤用高分子ビルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位(A)及び下記一般式(2)で表わされる不飽和ポリアルキレンオキサイド系単量体由来の構成単位(B)を含有し、構成単位(A)と構成単位(B)の質量比が、構成単位(A):構成単位(B)で1:99〜29:71であり、全構成単位中の構成単位(A)及び構成単位(B)の割合が85質量%以上である高分子化合物又はその塩からなる、衣料洗剤用高分子ビルダーに関する。
【0012】
【化1】

【0013】
〔式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、一価金属、二価金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキル置換アンモニウム基を表す。〕
【0014】
【化2】

【0015】
〔式中、R4は炭素数2〜18のアルキレン基を表し、R5は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表し、nは1〜300の数である。〕
【0016】
また、本発明は、上記本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーを含有する衣料洗剤に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーは、液体衣料洗剤に安定に配合することができ、加水分解を受けにくく、更に硬度の影響を受けることなく、高硬度の水を用いた処理でも非常に高い泥分散性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例及び比較例のビルダーについて、水硬度と泥分散性の関係を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
一般式(1)で表わされる化合物の具体例として、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、あるいはそれらの酸の一価金属、やアンモニアや有機アミンによる部分中和物もしくは完全中和物等の不飽和カルボン酸系単量体が挙げられるが、特にこれらに限定されない。好ましくはアクリル酸である。これらの単量体の塩は、単量体の状態で塩であっても、共重合した後の中和により塩とされたものでもよい。塩は、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、2−アミノエタノール等の有機アミン塩が好ましい。
【0020】
また、一般式(2)で表される不飽和ポリアルキレンオキサイド系単量体は、アリルアルコールに対して、炭素数2〜18のアルキレンオキサイドを付加した化合物、及びアルキレンオキサイド鎖の末端水素原子が炭素数1〜18のアルキル基で置換された化合物である。
【0021】
炭素数2〜18のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド(以下、EOと表記する)、プロピレンオキサイド(以下、POと表記する)、スチレンオキサイド等を挙げることができるが、EO及び/又はPOを用いることが好ましい。EOとPOを併用する場合、その結合順序に特に制限はない。一般式(2)中のR4は、炭素数2〜12のアルキレン基が好ましく、炭素数2〜8のアルキレン基がより好ましく、更に炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、より更に炭素数2のアルキレン基が好ましい。
【0022】
一般式(2)中のnはR4Oの平均付加モル数であり、高硬度での泥分散性、液体洗剤への相溶性、耐加水分解性の観点から、1〜300、好ましくは2〜200、より好ましくは5〜150の数である。
【0023】
一般式(2)中のR5のうち、炭素数1〜18のアルキル基は、直鎖でも分岐鎖でも何れでもよく、その具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが例示される。R5は、水素原子又はメチル基、エチル基もしくはブチル基が好ましく、更に水素原子が好ましい。
【0024】
上記一般式(2)で表わされる単量体としては、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンモノアリルエーテルが挙げられる。これらの中でも、ポリオキシエチレンモノアリルエーテルが好ましい。
【0025】
一般式(2)で表される単量体の市販品の具体例としては、例えば、ユニオックス(登録商標)PKA−5004(日油(株)製)、ユニオックス(登録商標)PKA−5010(日油(株)製)、ユニセーフ(商標)PKA−5013(日油(株)製)、ユニセーフ(商標)PKA−5014(日油(株)製)、ユニセーフ(商標)PKA−5016(日油(株)製)等が挙げられる。
【0026】
本発明に係る高分子化合物は、構成単位(A)と構成単位(B)の質量比が、高硬度での泥汚れに対する洗浄力を向上させる観点から、構成単位(A):構成単位(B)で1:99〜29:71であり、好ましくは5:95〜28:72であり、より好ましくは10:90〜26:74である。この質量比において、構成単位(A)の割合が1以下であると、泥洗浄力が不足する。一方、構成単位(B)の割合が71以下であると、ポリエチレングリコール鎖導入の効果である泥分散性の耐硬度性が低下する。
【0027】
また、本発明に係る高分子化合物は、高硬度での泥汚れに対する洗浄力、界面活性剤との相溶性の観点から、全構成単位中の構成単位(A)及び構成単位(B)の割合が85質量%以上であり、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。構成単位(A)及び構成単位(B)の割合がこの範囲にある場合、必要に応じて、上記単量体と共重合可能な単量体由来の構成単位(C)を含有してもよい。本発明に係る高分子化合物は、構成単位(A)及び構成単位(B)から実質的になるものがより好ましい。
【0028】
構成単位(C)となる他の単量体としては、特に制限されないが、その具体例として、例えば、スチレン;スチレンスルホン酸;マレイン酸;無水マレイン酸;イタコン酸;無水イタコン酸;シトラコン酸;無水シトラコン酸;フマル酸;酢酸ビニル;(メタ)アクリロニトリル;(メタ)アクリルアミド;メチル(メタ)アクリレート;エチル(メタ)アクリレート;ブチル(メタ)アクリレート;オクチル(メタ)アクリレート;ラウリル(メタ)アクリレート;ステアリル(メタ)アクリレート; 2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート;アリルアルコール;3−メチル−3−ブテン−1−オール;3−メチル−2−ブテン−1−オール;2−メチル−3−ブテン−2−オール;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパン;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンホスフェート及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、又は、炭素数1〜18のアルキル基のモノもしくはジエステル;3−(メタ)アクリロキシ−1,2−ジヒドロキシプロパンサルフェート及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、又は、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、又は、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホン酸及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、又は、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−(メタ)アクリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホン酸及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩、又は、炭素数1〜4のアルキル基のエステル;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオール;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールホスフェート;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールスルホネート;3−アリロキシプロパン−1,2−ジオールサルフェート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパン;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンホスフェート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシエチレンエーテルプロパンスルホネート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパン;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンホスフェート;3−アリロキシ−1,2−ジ(ポリ)オキシプロピレンエーテルプロパンスルホネート;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオール;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールホスフェート;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタオールスルホネート;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタ(ポリ)オキシエチレンエーテルヘキサン;6−アリロキシヘキサン−1,2,3,4,5−ペンタ(ポリ)オキシプロピレンエーテルヘキサン;3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、もしくは、有機アミン塩、又は、これらの化合物のリン酸エステルもしくは硫酸エステル及びそれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、又は、有機アミン塩;3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシエチレンプロパンスルホン酸及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、もしくは、有機アミン塩、又は、これらの化合物のリン酸エステルもしくは硫酸エステル及びそれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、又は、有機アミン塩;3−アリロキシ−2−(ポリ)オキシプロピレンプロパンスルホン酸及びその1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、もしくは、有機アミン塩、又は、これらの化合物のリン酸エステルもしくは硫酸エステル及びそれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、又は、有機アミン塩;などを挙げることができる。
【0029】
本発明に係る高分子化合物の重量平均分子量は、高硬度での泥汚れに対する洗浄力を向上させる観点から、好ましくは5000〜100000、より好ましくは10000〜70000、更に好ましくは15000〜50000の範囲内である。重量平均分子量は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
【0030】
本発明に係る高分子化合物が酸型の化合物として得られる場合、あるいは所定の中和度の化合物として得られる場合、そのままでも衣料洗剤用のビルダーとして用いることができるが、必要により、更にアルカリ性物質で中和して用いることができる。このようなアルカリ性物質としては、1価金属及び2価金属の水酸化物、塩化物、炭酸塩及び重炭酸塩;アンモニア;有機アミン等をあげることができる。
【0031】
本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーは、泥分散性に優れた高分子化合物からなるものであり、好ましくは、後述の実施例の方法で測定される泥分散性の4°dH透過率が65%以下であり、より好ましくは60%以下である。泥分散性として4°dH透過率が65%以下であれば、衣料洗剤用高分子ビルダーとして用いた場合、特に、泥汚れに対する洗浄力を向上させる効果が大きくなるため好ましい。
【0032】
更に、本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーは、後述の実施例の方法で測定される泥分散性の耐硬度性(4°dH透過率/12°dH透過率の比)が、好ましくは0.90以上であり、より好ましくは0.92以上である。耐硬度性が0.90以上であれば、衣料洗剤用高分子ビルダーとして用いた場合、特に、高硬度での泥汚れに対する洗浄力を向上させる効果が大きくなるため好ましい。
【0033】
本発明に係る高分子化合物は、上記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸系単量体〔以下、単量体(a)という〕と、上記一般式(2)で表わされる不飽和ポリアルキレンオキサイド系単量体〔以下、単量体(b)という〕とを共重合して得られる。また、単量体(a)、単量体(b)と、構成単位(C)となるの他の単量体とを共重合して得ることもできる。
【0034】
単量体(a)と単量体(b)の質量比は、高硬度での泥汚れに対する洗浄力を向上させる観点から、(a):(b)で1:99〜29:71、好ましくは5:95〜28:72、より好ましくは10:90〜26:74である。また、単量体(a)と単量体(b)は、合計で、全単量体中85質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上の割合で使用される。
【0035】
共重合の方法としては、特に限定されず、例えば、従来公知の方法によることができる。具体的には、例えば、水、有機溶剤、あるいは、水可溶性有機溶剤と水との混合溶剤等の溶剤中での重合を挙げることができる。これら重合に用いることができる触媒系としては、特に限定されないが、例えば、過硫酸塩や過酸化水素などが挙げられ、促進剤(亜硫酸水素塩やアスコルビン酸等)を併用することもできる。その他、アゾ系開始剤や有機過酸化物等も用いることができ、アミン化合物等の促進剤も併用できる。反応を有利に進める点で、過硫酸塩や、過酸化水素とアスコルビン酸を併用した触媒系が好ましい。また、分子量の調整剤として、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、次亜リン酸ナトリウムなどの連鎖移動剤を併用してもよい。
【0036】
本発明に係る高分子化合物からなる衣料洗剤用高分子ビルダーは、洗剤の剤形態に特に限定されることなく、例えば粉末洗剤、液体洗剤などに配合することができる。特に、本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーは、界面活性剤、中でも非イオン界面活性剤との相溶性に優れ、液体洗剤用として優れたものである。界面活性剤との相溶性に優れることにより、液体洗剤に配合したとき、その組成物の透明性が良好であり、高濃縮の液体洗剤組成物とすることができる。
【0037】
液体洗剤ないし界面活性剤溶液への溶解性として、本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーは、後述の実施例の方法で測定される溶解性に関する透過率が95%以上であることが好ましい。
【0038】
本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーは、耐加水分解性に優れている。高温保存でも加水分解しにくく、性能、配合の安定性に優れている。
【0039】
本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーは、衣料洗剤、好ましくは衣料用液体洗剤に配合される。本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーを含有する衣料洗剤の一例として、本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーを0.1〜10質量%、ノニオン活性剤を20〜70質量%、アニオン活性剤を5〜20質量%、溶剤を1〜30質量%、水を5〜50質量%含有する衣料用液体洗剤が挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下の合成例及び比較合成例で得られた高分子化合物(合成ポリマー1〜3及び比較合成ポリマー1〜2)の重量平均分子量は下記条件のGPC(ゲルパーミエションクロマトグラフィー法)により測定した。
<重量平均分子量測定(GPC分析)>
カラム:TOSOH社製 TSKgel α-M 2本
検出器:RI
カラム温度:40℃
溶離液:60mmol/LH3PO4、50mmol/LLiBr/DMF
標準物質:ポリエチレングリコール
【0041】
<合成例1>
[アクリル酸/ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル(EO平均付加モル数30)=10/90(質量比)共重合体]
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、プロピレングリコール(和光純薬(株)製)111.1g、イオン交換水74.3g、ポリオキシエチレンアリルメチルエーテル(EO平均付加モル数30)135.0gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、85℃まで昇温した。そこへ、80%アクリル酸水溶液15.0g、イオン交換水10.0gを混合した液と、過硫酸ソーダ(和光純薬(株)製)2.1g、イオン交換水25.5g、30%過酸化水素溶液(シグマアルドリッチ製)2.0gを混合した液を別々に60分かけて滴下した。滴下終了後、3時間85℃で攪拌を続けた。室温に戻し、合成ポリマー1の溶液375g(ポリマー濃度:40質量%)を得た。得られた合成ポリマー1のGPC測定の結果、重量平均分子量は28000であった。
【0042】
<合成例2>
[アクリル酸/ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数25)=25/75(質量比)共重合体]
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、プロピレングリコール(和光純薬(株)製)587g、イオン交換水367g、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数25)300g、80%アクリル酸水溶液(東亞合成化学(株)製)6.3gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、85℃まで昇温した。そこへ、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数25)300g、80%アクリル酸水溶液125g、イオン交換水75gを混合した液と、過硫酸ソーダ(和光純薬(株)製)10.3g、イオン交換水41.3g、30%過酸化水素溶液(シグマアルドリッチ製)10.2gを混合した液を別々に150分かけて滴下した。滴下終了後、80%アクリル酸水溶液119gと、過硫酸ソーダ9.8g、イオン交換水39.3g、30%過酸化水素溶液9.6gを混合した液を別々に285分かけて滴下した。滴下終了後、3時間85℃で攪拌を続けた。室温に戻し、合成ポリマー2の溶液2000g(ポリマー濃度:40質量%)を得た。得られた合成ポリマー2のGPC測定の結果、重量平均分子量は22000であった。
【0043】
<合成例3>
[アクリル酸/ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数12/PO平均付加モル数4)=25/75(質量比)共重合体]
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、プロピレングリコール(和光純薬(株)製)109.4g、イオン交換水24.0g、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数12/PO平均付加モル数4、ランダム付加)112.5gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、85℃まで昇温した。そこへ、80%アクリル酸水溶液37.5g、イオン交換水25.0gを混合した液と、過硫酸ソーダ(和光純薬(株)製)4.7g、イオン交換水57.4g、30%過酸化水素溶液(シグマアルドリッチ製)4.6gを混合した液を別々に60分かけて滴下した。滴下終了後、3時間85℃で攪拌を続けた。室温に戻し、合成ポリマー3の溶液375g(ポリマー濃度:40質量%)を得た。得られた合成ポリマー3のGPC測定の結果、重量平均分子量は30000であった。
【0044】
<比較合成例1>
[アクリル酸/ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数25)=35/65(質量比)共重合体]
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、プロピレングリコール(和光純薬(株)製)72.3g、イオン交換水21.0g、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数25)60.0gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、85℃まで昇温した。そこへ、80%アクリル酸水溶液40.0g、イオン交換水26.7gを混合した液と、過硫酸ソーダ(和光純薬(株)製)4.2g、イオン交換水21.7g、30%過酸化水素溶液(シグマアルドリッチ製)4.1gを混合した液を別々に60分かけて滴下した。滴下終了後、3時間85℃で攪拌を続けた。室温に戻し、比較合成ポリマー1の溶液250g(ポリマー濃度:40質量%)を得た。得られた比較合成ポリマー1のGPC測定の結果、重量平均分子量は28000であった。
【0045】
<比較合成例2>
[アクリル酸/ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数90)=60/40(質量比)共重合体]
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、プロピレングリコール(和光純薬(株)製)7.0g、イオン交換水4.3g、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数90)7.2gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、85℃まで昇温した。そこへ、プロピレングリコール(和光純薬(株)製)63.0g、イオン交換水38.9g、ポリオキシエチレンモノアリルエーテル(EO平均付加モル数90)64.8g、2−メルカプトエタノール(和光純薬(株)製)0.5gを混合した溶液を54分かけて、過硫酸ソーダ(和光純薬(株)製)4.89g、30%過酸化水素溶液(シグマアルドリッチ製)4.66gと80%アクリル酸水溶液60.0gを混合した溶液を60分かけて別々に滴下した。滴下終了後、3時間85℃で攪拌を続けた。室温に戻し、比較合成ポリマー2の溶液255.3g(ポリマー濃度:44質量%)を得た。得られた比較合成ポリマー2のGPC測定の結果、重量平均分子量は32000であった。
【0046】
表1に、上記で得られた合成ポリマー1〜3及び比較合成ポリマー1〜2の詳細をまとめた。
【0047】
【表1】

【0048】
<実施例1〜3、比較例1〜3>
〔泥分散性試験〕
上記で得られた合成ポリマー1〜3及び比較合成ポリマー1〜2、並びに比較のためPAANa(ポリアクリル酸Na、花王(株)製、重量平均分子量10000)を用い、以下のように泥分散試験を行った。結果を表2、図1に示した。
【0049】
〔I〕4°dH泥分散試験
(I−1)
合成ポリマー1〜3及び比較合成ポリマー1〜2の溶液に、2−アミノエタノール(和光純薬(株)製)を加えて完全中和し、ポリマー濃度を20重量%となるようイオン交換水で調整する。
(I−2)
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(和光純薬(株)製)4.845gを2Lメスフラスコに入れ、イオン交換水約1L加え、溶解させた。そこに1N−HCl(和光純薬(株)製)35mL、0.1N−HCl(和光純薬(株)製)2mL加え、塩化カルシウム(和光純薬(株)製)0.1583g加え、溶解させたのち、イオン交換水を加え2Lとした(「4°dH/pH7−バッファー溶液」とする)。
(I−3)
100mLメスフラスコに(I−1)で調製した測定対象の中和型ポリマーの20重量%溶液、あるいはPAANa(ポリアクリル酸Na、花王(株)製、重量平均分子量10000)を、ポリマー有効分として0.05g加え、4°dH/pH7−バッファー溶液を加え、100mLとした(「ポリマー溶液」とする)。
(I−4)
比色管(IWAKI製 直径24mm×長さ200mm)に4°dH/pH7−バッファー溶液50mLを入れた。そこに、(I−3)で調製したポリマー溶液0.5mLを加え、混合した。その後、園芸用鹿沼赤土0.05gを比色管に入れ、栓をした。その後、比色管を振って、均一に分散させ、2時間静置した。2時間静置後、分散液の上澄みを4mLサンプリングし、UV測定機器(島津製作所製 UV−2550 1cmセル 波長575nm)にて透過率(4°dH透過率とする)を測定した。結果を表2に示すが、この試験では、4°dH透過率が65%以下であることが好ましい。
【0050】
〔II〕12°dH泥分散試験
上記(I)の4°dH泥分散試験において、(I−2)で添加する塩化カルシウムの量を0.4749gとした以外は同様にバッファー溶液(「12°dH/pH7−バッファー溶液」とする)を調製し、同様に透過率(12°dH透過率とする)を測定した。結果を表2に示すが、この試験では、12°dH透過率が65%以下であることが好ましい。
【0051】
〔III〕泥分散性の耐硬度性
上記で測定された4°dH透過率及び12°dH透過率から、下記式により泥分散性の耐硬度性を算出した。この値が1に近いほど、硬度による泥分散性の変動が少ないことを意味する。結果を表2に示す
泥分散性の耐硬度性=(4°dH透過率)/(12°dH透過率)
【0052】
【表2】

【0053】
<実施例4〜6、比較例4〜6>
上記で得られた合成ポリマー1〜3及び比較合成ポリマー1〜2、並びに比較のためPAANa(ポリアクリル酸Na、花王(株)製、重量平均分子量10000)を用い、以下のように液体洗剤組成物への溶解性の評価を行った。
【0054】
〔I〕溶解性の評価
(I−1)
合成ポリマー1〜3及び比較合成ポリマー1〜2の溶液に、2−アミノエタノール(和光純薬(株)製)を加えて完全中和し、ポリマー濃度を20重量%となるようイオン交換水で調整する。
【0055】
(I−2)
上記(I−1)で調製した中和型ポリマーの20質量%溶液、あるいはPAANaと、表3に記載の成分とを用いて液体洗剤組成物を調製した。表3の成分を混合、脱泡し、25℃下で1時間静置して液体洗剤組成物を得た後、UV測定機器(島津製作所製 UV−2550、1cmセル、波長660nm)にて、透過率を測定した。評価結果を表3に示すが、透過率95%以上は透明溶解、95%未満は濁りあり、と判定できる。なお、表中の添加量の数値は、固形分あるいは有効成分換算の質量%である。
【0056】
【表3】

【0057】
*1:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エマルゲンLS−110、花王(株)製)
*2:直鎖アルキル(炭素数12〜14)ベンゼンスルホン酸
*3:和光純薬(株)製
*4:和光純薬(株)製

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される不飽和カルボン酸系単量体由来の構成単位(A)及び下記一般式(2)で表わされる不飽和ポリアルキレンオキサイド系単量体由来の構成単位(B)を含有し、構成単位(A)と構成単位(B)の質量比が、構成単位(A):構成単位(B)で1:99〜29:71であり、全構成単位中の構成単位(A)及び構成単位(B)の割合が85質量%以上である高分子化合物又はその塩からなる、衣料洗剤用高分子ビルダー。
【化1】


〔式中、R1、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Xは水素原子、一価金属、二価金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキル置換アンモニウム基を表す。〕
【化2】


〔式中、R4は炭素数2〜18のアルキレン基を表し、R5は水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を表し、nは1〜300の数である。〕
【請求項2】
前記高分子化合物又はその塩の重量平均分子量が5000〜100000である、請求項1記載の衣料洗剤用高分子ビルダー。
【請求項3】
請求項1又は2記載の衣料洗剤用高分子ビルダーを含有する衣料洗剤。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−285556(P2010−285556A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141134(P2009−141134)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】