説明

衣料洗剤用高分子ビルダー

【課題】良好な泥分散能を示す変性ポリアスパラギン酸系重合体からなる衣料洗剤用高分子ビルダーを提供する。
【解決手段】アスパラギン酸型の特定の繰り返し単位(I)と、アスパラギン酸にアルキレンオキシドが付加した特定の繰り返し単位(II)を有し、繰り返し単位(I)と繰り返し単位(II)の質量比が(I):(II)で51:49〜99:1であり、且つ全繰り返し単位中、繰り返し単位(I)及び繰り返し単位(II)の合計が90質量%以上である変性ポリアスパラギン酸系重合体からなる衣料洗剤用高分子ビルダー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性ポリアスパラギン酸系重合体からなる衣料洗剤用高分子ビルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
衣料洗剤には、泥分散能に優れ洗剤の泥洗浄力を向上させるためのポリカルボン酸高分子ビルダーが配合されている。近年、環境に対する問題意識の高まりの中で、廃棄後も環境負荷の少ない生分解性高分子ビルダーが求められている。
【0003】
特許文献1には、生分解性に優れるポリアスパラギン酸を特定の方法で製造することが記載されており、得られたポリアスパラギン酸が洗剤に使用できることが記載されている。
【0004】
特許文献2及び3では、洗剤及び洗浄剤への添加物として、変性ポリアスパラギン酸の使用が提案されている。しかし、これらの添加剤では、衣料洗剤として満足のいく泥分散能を発現することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−286546号公報
【特許文献2】特表2004−537627号公報
【特許文献3】特表平8−507558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、良好な泥分散能を示す変性ポリアスパラギン酸系重合体からなる衣料洗剤用高分子ビルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般式(1)で示される繰り返し単位〔以下、繰り返し単位(1)という〕及び一般式(2)で示される繰り返し単位〔以下、繰り返し単位(2)という〕から選ばれる繰り返し単位(I)、並びに一般式(3)で示される繰り返し単位〔以下、繰り返し単位(3)という〕及び一般式(4)で示される繰り返し単位〔以下、繰り返し単位(4)という〕から選ばれる繰り返し単位(II)を有し、(I)と(II)の質量比が(I):(II)で51:49〜99:1であり、且つ全繰り返し単位中、繰り返し単位(I)及び繰り返し単位(II)の合計が90質量%以上である変性ポリアスパラギン酸系重合体からなる衣料洗剤用高分子ビルダーに関する。
【0008】
【化1】

【0009】
〔式中、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキル置換アンモニウム基を表し、繰り返し単位ごとに同一であっても異なっていてもよい。〕
【0010】
【化2】

【0011】
〔式中、XはNH又はOであり、R1及びR4は独立して、フェニル基、水素原子、又は炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、R2は炭素数1〜2のアルキレン基であり、R3は炭素数3〜5の直鎖もしくは分岐鎖アルキレン基である。R2O及びR3Oはランダム又はブロック形態で存在し、aは0〜10であり、bは1〜100であり、cは0〜100である。R1、R2、R3、R4、a、b及びcは繰り返し単位ごとに同一であっても異なっていてもよい。なお、式中の「/」はR2OとR3Oとを区切るための便宜的な記号である。〕
【0012】
また、本発明は、上記本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーを含有する、衣料用洗剤に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、泥分散能に優れた衣料洗剤用高分子ビルダーが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般式(1)及び(2)中、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキル置換アンモニウム基を表し、繰り返し単位ごとに同一であっても異なっていてもよい。泥分散能が良好である観点から、Mはアルカリ金属が好ましい。
【0015】
一般式(3)及び(4)中、XはNH又はOであり、好ましくはNHであり、R1及びR4は独立して、フェニル、水素原子、又は炭素数1〜3個の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、好ましくは、炭素数1のアルキル基であり、R2は炭素数1〜2のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基であり、R3は炭素数3〜5の直鎖もしくは分岐鎖アルキレン基であり、好ましくはプロピレン基である。R2O及びR3Oはランダム又はブロック形態で存在し、aは0〜10であり、好ましくは1〜3、bは1〜100であり、好ましくは5〜50であり、cは0〜100であり、好ましくは0〜50、より好ましくは0〜30である。R1、R2、R3、R4、a、b及びcは繰り返し単位ごとに同一であっても異なっていてもよい。
【0016】
本発明に係る変性ポリアスパラギン酸系重合体は、全繰り返し単位中、繰り返し単位(I)及び繰り返し単位(II)の合計が90質量%以上であり、95質量%以上であることが好ましい。また、本発明に係る変性ポリアスパラギン酸系重合体は、繰り返し単位(I)及び繰り返し単位(II)から実質的になるものが更に好ましい。すなわち、全繰り返し単位中、繰り返し単位(I)及び繰り返し単位(II)の合計が100質量%であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る変性ポリアスパラギン酸系重合体は、繰り返し単位(I)と繰り返し単位(II)の質量比が、泥汚れに対する洗浄力を向上させる観点から、繰り返し単位(I):繰り返し単位(II)で51:49〜99:1であり、54:46〜80:20であることがより好ましい。
【0018】
本発明に係る変性ポリアスパラギン酸系重合体の重量平均分子量は、泥汚れに対する洗浄力を向上させる観点から、好ましくは1000〜100000、より好ましくは8000〜50000、更に好ましくは10000〜20000の範囲内である。重量平均分子量は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
【0019】
本発明に係る変性ポリアスパラギン酸系重合体は、例えば、下記方法1、方法2などにより得られる。
【0020】
方法1
熱縮重合によりポリコハク酸イミドとなりうる単量体と、下記の一般式(5)で示される高分子化合物とを熱縮重合して変性ポリコハク酸イミドを得た後、かかる変性ポリコハク酸イミド系重合体を加水分解する方法。
【0021】
HX-CH(R1)(CH2)aO-[(R2O)b/(R3O)c]-R4 (5)
〔式中、XはNH又はOであり、好ましくはNHであり、R1及びR4は独立して、フェニル基、水素原子、又は炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、好ましくは、炭素数1のアルキル基であり、R2は炭素数1〜2のアルキレン基であり、好ましくはエチレン基であり、R3は炭素数3〜5の直鎖もしくは分岐鎖アルキレン基であり、好ましくはプロピレン基である。R2O及びR3Oはランダム又はブロック形態で存在し、aは0〜10であり、好ましくは1〜3、bは1〜100であり、好ましくは10〜50、より好ましくは15〜35であり、cは0〜100であり、好ましくは1〜50、より好ましくは2〜30である。R1、R2、R3、R4、a、b及びcは繰り返し単位ごとに同一であっても異なっていてもよい。なお、式中の「/」はR2OとR3Oとを区切るための便宜的な記号である。〕
【0022】
方法2
ポリコハク酸イミド系重合体、例えば熱縮重合によりポリコハク酸イミドとなりうる単量体を熱縮重合して得られたポリコハク酸イミド系重合体に、上記の一般式(5)で示される高分子化合物を反応させて変性ポリコハク酸イミド系重合体を得た後、かかる変性ポリコハク酸イミド系重合体を加水分解する方法。
【0023】
上記方法のうち、方法2が好ましく、本発明の変性ポリコハク酸イミドの前駆体であるポリコハク酸イミド系重合体は、例えば、特開平11−286546号に記載の方法により合成することができる。
【0024】
上記熱縮重合によりポリコハク酸イミドとなりうる単量体は、アスパラギン酸、マレイン酸アンモニウム、フマル酸アンモニウム、マレアミック酸、マレイミド等の熱縮重合により得ることができる。ここで、アスパラギン酸としては、DL−アスパラギン酸、L−アスパラギン酸、D−アスパラギン酸のいずれも使用可能である。
【0025】
上記一般式(5)で示される高分子化合物は、重量平均分子量が、好ましくは500〜10000であり、より好ましくは1000〜2500である。一般式(5)で表される化合物の市販品の具体例としては、例えば、ジェファーミン(登録商標)Mシリーズ(ハンツマン・コーポレーション製)等が挙げられる。
【0026】
また、本発明に係る変性ポリアスパラギン酸系重合体は、泥汚れに対する洗浄力の観点から、一般式(5)で表される2種以上の異なる化合物を用いてもよい。
【0027】
本発明に係る変性ポリアスパラギン酸系重合体は、酸型の化合物、所定の中和度に中和した化合物のいずれでも衣料洗剤用のビルダーとして用いることができる。中和には、1価金属及び2価金属の水酸化物、塩化物、炭酸塩及び重炭酸塩;アンモニア;有機アミン等のアルカリ性物質を用いることができる。
【0028】
本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーは、泥分散能に優れた変性ポリアスパラギン酸系重合体からなるものであり、好ましくは、後述の実施例の方法で測定される泥分散試験の透過率が75%以下であり、より好ましくは70%以下である。この方法による透過率が75%以下であれば、衣料洗剤用高分子ビルダーとして用いた場合、特に、泥汚れに対する洗浄力を向上させる効果が大きくなるため好ましい。
【0029】
本発明に係る変性ポリアスパラギン酸系重合体からなる衣料洗剤用高分子ビルダーは、洗剤の形態に特に限定されることなく、例えば粉末洗剤、液体洗剤などに配合することができる。本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーは、界面活性剤を含有する衣料洗剤、好ましくは衣料用液体洗剤に配合される。
【0030】
本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーと共に用いられる界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでもよい。
【0031】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石ケン、アルキルエーテルカルボン酸塩、N−アシルアミノ酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が好適に用いられる。
【0032】
陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族四級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が好適に用いられる。
【0033】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキシド等が好適に用いられる。
【0034】
両性界面活性剤としては、例えばカルボキシベタイン型化合物、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が好適に用いられる。
【0035】
本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーを含有する衣料洗剤の一例として、本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーを0.1〜10質量%、非イオン性界面活性剤を20〜70質量%、陰イオン性界面活性剤を5〜20質量%、水を5〜50質量%含有する衣料用液体洗剤が挙げられる。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物を製造する際には、本発明の衣料洗剤用高分子ビルダーと界面活性剤の他に、通常の洗浄剤組成物に用いられる種々の洗剤成分を配合することができる。それら洗剤成分としては、例えば、漂白剤(過炭酸塩、過ホウ酸塩等)、漂白活性化剤、再汚染防止剤(カルボキシメチルセルロース等)、柔軟化剤、還元剤(亜硫酸塩等)、蛍光増白剤、制泡剤(シリコーン等)、セルラーゼやプロテアーゼ等の酵素、染料、香料等が挙げられる。
【実施例】
【0037】
以下の合成例及び比較合成例で得られた各種ポリマー(合成ポリマーA〜E及び比較合成ポリマーF〜H)の重量平均分子量は下記条件のGPC(ゲルパーミエションクロマトグラフィー法)により測定した。また、(I):(II)質量比は下記条件のプロトン核磁気共鳴法(1H NMR測定)により測定、算出した。
【0038】
<重量平均分子量測定(GPC分析)>
カラム:TOSO社製 TSKgel G400PWXL,G2500PWXL
検出器:RI
カラム温度:40℃
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH3CN=9/1(質量比)
標準物質:プルラン
【0039】
<プロトン核磁気共鳴法(1H NMR測定)>
装置:Variann社製 Mercury400(400MHz)
積算回数:64回
溶媒:重水
【0040】
<合成例1(ポリコハク酸イミドの合成)>
特開平11−286546の実施例1に記載の方法でポリコハク酸イミドを得た。温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器(500mL)に、L−アスパラギン酸(キシダ化学(株)製)39.9g、85%燐酸(キシダ化学(株)製)80gを仕込み、8kPa(60トール)の減圧下、反応により生成した水を留去しながら3時間155℃で攪拌を続けた。室温に戻し、水とエタノールで洗浄し、ポリコハク酸イミド28.2gを得た。
【0041】
<合成例2(合成ポリマーAの合成)>
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、合成例1により得られたポリコハク酸イミド3.0g、ジメチルホルムアミド(和光純薬(株)製)120gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、100℃まで昇温した。そこへ、ジェファーミン(登録商標)M-1000(ポリエーテルアミン、EO平均付加モル数19、PO平均付加モル数3、ハンツマン・コーポレーション製))0.6gをジメチルホルムアミド(和光純薬(株)製)10gに溶解させて滴下した。滴下終了後、4時間100℃で攪拌を続けた。室温に戻し、残渣を濃縮後、ジエチルエーテルで洗浄し、変性ポリコハク酸イミド4.6gを得た。なお、EOはエチレンオキシド、POはプロピレンオキシドの略である(以下同様)。
【0042】
攪拌機を備えたガラス製反応器に、合成した変性ポリコハク酸イミド4.2g、イオン交換水60gを入れ、1規定水酸化ナトリウム水溶液(キシダ化学(株)製)を用いて、反応溶液のpHを9に調整した。滴下後、3時間室温で攪拌を続けた。反応残渣の不溶部分を濾別し、透析と続く凍結乾燥を行い、合成ポリマーA2.6gを得た。合成ポリマーAは、全繰り返し単位中、繰り返し単位(I)と(II)の合計が100質量%であり、繰り返し単位(I)と(II)の質量比が(I):(II)=76:24(質量比)であった。得られた合成ポリマーAのGPC測定の結果、重量平均分子量は12000であった。得られた合成ポリマーAは、繰り返し単位(I)中の一般式(1)および(2)中のMがNa原子であり、繰り返し単位(II)中の一般式(3)および(4)中のXはNHであり、R1及びR4はメチル基であり、R2はエチレン基であり、R3は分岐プロピレン基である。R2O及びR3Oはランダム形態で存在し、aは1であり、bは19であり、cは2であった。
【0043】
<合成例3(合成ポリマーBの合成)>
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、合成例1により得られたポリコハク酸イミド1.1g、ジメチルホルムアミド(和光純薬(株)製)45gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、100℃まで昇温した。そこへ、ジェファーミン(登録商標)M-1000(ポリエーテルアミン、EO平均付加モル数19、PO平均付加モル数3、ハンツマン・コーポレーション製))1.5gをジメチルホルムアミド(和光純薬(株)製)30gに溶解させて滴下した。滴下終了後、8時間70℃で攪拌を続けた。室温に戻し、残渣を濃縮後、ジエチルエーテルで洗浄し、変性ポリコハク酸イミド2.1gを得た。
【0044】
攪拌機を備えたガラス製反応器に、合成した変性ポリコハク酸イミド1.5g、イオン交換水60gを入れ、1規定水酸化ナトリウム水溶液(キシダ化学(株)製)を用いて、反応溶液のpHを10に調整した。滴下後、3時間室温で攪拌を続けた。反応残渣の不溶部分を濾別し、透析と続く凍結乾燥を行い、合成ポリマーB0.7gを得た。合成ポリマーBは、全繰り返し単位中、繰り返し単位(I)と(II)の合計が100質量%であり、繰り返し単位(I)と(II)の質量比が(I):(II)=58:42(質量比)であった。得られた合成ポリマーBのGPC測定の結果、重量平均分子量は13000であった。得られた合成ポリマーBは、繰り返し単位(I)中の一般式(1)および(2)中のMがNa原子であり、繰り返し単位(II)中の一般式(3)および(4)中のXはNHであり、R1及びR4はメチル基であり、R2はエチレン基であり、R3は分岐プロピレン基である。R2O及びR3Oはランダム形態で存在し、aは1であり、bは19であり、cは2であった。
【0045】
<合成例4(合成ポリマーCの合成)>
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、合成例1により得られたポリコハク酸イミド2.0g、ジメチルホルムアミド(和光純薬(株)製)90gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、100℃まで昇温した。そこへ、ジェファーミン(登録商標)M-2070(ポリエーテルアミン、EO平均付加モル数31、PO平均付加モル数10、ハンツマン・コーポレーション製))0.8gをジメチルホルムアミド(和光純薬(株)製)20gに溶解させて滴下した。滴下終了後、4時間100℃で攪拌を続けた。室温に戻し、残渣を濃縮後、ジエチルエーテルで洗浄し、変性ポリコハク酸イミド2.8gを得た。
【0046】
攪拌機を備えたガラス製反応器に、合成した変性ポリコハク酸イミド2.2g、イオン交換水80gを入れ、1規定水酸化ナトリウム水溶液(キシダ化学(株)製)を用いて、反応溶液のpHを10に調整した。滴下後、3時間室温で攪拌を続けた。反応残渣の不溶部分を濾別し、透析と続く凍結乾燥を行い、合成ポリマーC2.1gを得た。合成ポリマーCは、全繰り返し単位中、繰り返し単位(I)と(II)の合計が100質量%であり、繰り返し単位(I)と(II)の質量比が(I):(II)=73:27(質量比)であった。得られた合成ポリマーCのGPC測定の結果、重量平均分子量は16000であった。得られた合成ポリマーCは、繰り返し単位(I)中の一般式(1)および(2)中のMがNa原子であり、繰り返し単位(II)中の一般式(3)および(4)中のXはNHであり、R1及びR4はメチル基であり、R2はエチレン基であり、R3は分岐プロピレン基である。R2O及びR3Oはランダム形態で存在し、aは1であり、bは31であり、cは9であった。
【0047】
<合成例5(合成ポリマーDの合成)>
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、合成例1により得られたポリコハク酸イミド1.1g、ジメチルホルムアミド(和光純薬(株)製)45gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、70℃まで昇温した。そこへ、ジェファーミン(登録商標)M-2005(ポリエーテルアミン、EO平均付加モル数6、PO平均付加モル数29、ハンツマン・コーポレーション製))3.0gをジメチルホルムアミド(和光純薬(株)製)30gに溶解させて滴下した。滴下終了後、4時間70℃で攪拌を続けた。室温に戻し、残渣を濃縮後、ジエチルエーテルで洗浄し、変性ポリコハク酸イミド1.7gを得た。
【0048】
攪拌機を備えたガラス製反応器に、合成した変性ポリコハク酸イミド1.0g、イオン交換水35gを入れ、1規定水酸化ナトリウム水溶液(キシダ化学(株)製)を用いて、反応溶液のpHを10に調整した。滴下後、3時間室温で攪拌を続けた。反応残渣の不溶部分を濾別し、透析と続く凍結乾燥を行い、合成ポリマーD0.4gを得た。合成ポリマーDは、全繰り返し単位中、繰り返し単位(I)と(II)の合計が100質量%であり、繰り返し単位(I)と(II)の質量比が(I):(II)=54:46(質量比)であった。得られた合成ポリマーDのGPC測定の結果、重量平均分子量は16000であった。得られた合成ポリマーDは、繰り返し単位(I)中の一般式(1)および(2)中のMがNa原子であり、繰り返し単位(II)中の一般式(3)および(4)中のXはNHであり、R1及びR4はメチル基であり、R2はエチレン基であり、R3は分岐プロピレン基である。R2O及びR3Oはランダム形態で存在し、aは1であり、bは6であり、cは28であった。
【0049】
<合成例6(合成ポリマーEの合成)>
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、合成例1により得られたポリコハク酸イミド2.5g、ジメチルホルムアミド(和光純薬(株)製)90gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、100℃まで昇温した。そこへ、サンブライト(登録商標)MEPA-20H〔アミノプロピル型ポリエチレングリコール、EO平均付加モル数48、日油(株)製〕1.0gをジメチルホルムアミド(和光純薬(株)製)20gに溶解させて滴下した。滴下終了後、4時間100℃で攪拌を続けた。室温に戻し、残渣を濃縮後、ジエチルエーテルで洗浄し、変性ポリコハク酸イミド3.7gを得た。
【0050】
攪拌機を備えたガラス製反応器に、合成した変性ポリコハク酸イミド2.0g、イオン交換水60gを入れ、1規定水酸化ナトリウム水溶液(キシダ化学(株)製)を用いて、反応溶液のpHを9に調整した。滴下後、3時間室温で攪拌を続けた。反応残渣の不溶部分を濾別し、透析と続く凍結乾燥を行い、合成ポリマーE1.9gを得た。合成ポリマーEは、全繰り返し単位中、繰り返し単位(I)と(II)の合計が100質量%であり、繰り返し単位(I)と(II)の質量比が(I):(II)=74:26(質量比)であった。得られた合成ポリマーEのGPC測定の結果、重量平均分子量は16000であった。得られた合成ポリマーEは、繰り返し単位(I)中の一般式(1)および(2)中のMがNa原子であり、繰り返し単位(II)中の一般式(3)および(4)中のXはNHであり、R1は水素原子であり、R4はメチル基であり、R2はエチレン基である。aは2であり、bは48であり、cは0であった。
【0051】
<比較合成例1(比較合成ポリマーFの合成)>
温度計、攪拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、合成例1により得られたポリコハク酸イミド1.0g、ジメチルホルムアミド(和光純薬(株)製)45gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、100℃まで昇温した。そこへ、ジェファーミン(登録商標)M-1000(ポリエーテルアミン、EO平均付加モル数19、PO平均付加モル数3、ハンツマン・コーポレーション製))2.1gをジメチルホルムアミド(和光純薬(株)製)に溶解させて滴下した。滴下終了後、4時間100℃で攪拌を続けた。室温に戻し、残渣を濃縮後、ジエチルエーテルで洗浄し、変性ポリコハク酸イミド2.0gを得た。
【0052】
攪拌機を備えたガラス製反応器に、合成した変性ポリコハク酸イミド1.7g、イオン交換水40gを入れ、1規定水酸化ナトリウム水溶液(キシダ化学(株)製)を用いて、反応溶液のpHを10に調整した。滴下後、3時間室温で攪拌を続けた。反応残渣の不溶部分を濾別し、透析と続く凍結乾燥を行い、比較合成ポリマーF0.7gを得た。比較合成ポリマーFは、全繰り返し単位中、繰り返し単位(I)と(II)の合計が100質量%であり、繰り返し単位(I)と(II)の質量比が(I):(II)=50:50(質量比)であった。得られた比較合成ポリマーFのGPC測定の結果、重量平均分子量は5800であった。得られた合成ポリマーFは、繰り返し単位(I)中の一般式(1)および(2)中のMがNa原子であり、繰り返し単位(II)中の一般式(3)および(4)中のXはNHであり、R1及びR4はメチル基であり、R2はエチレン基であり、R3は分岐プロピレン基である。R2O及びR3Oはランダム形態で存在し、aは1であり、bは31であり、cは9であった。
【0053】
<比較合成例2(比較合成ポリマーG:未変性ポリアスパラギン酸の合成)>
攪拌機を備えたガラス製反応器に、合成例1により得られたポリコハク酸イミド10.1g、イオン交換水300gを入れ、1規定水酸化ナトリウム水溶液(キシダ化学(株)製)を用いて、反応溶液のpHを11に調整した。滴下後、3時間室温で攪拌を続けた。残渣を濃縮後、メタノールで洗浄し、比較合成ポリマーG14.7gを得た。1H NMR測定から、加水分解が完全に進行しているのを確認した。得られた比較合成ポリマーGは未変性ポリアスパラギン酸であり、全繰り返し単位中、繰り返し単位(I)が100質量%であった。得られた比較合成ポリマーGのGPC測定の結果、重量平均分子量は5800であった。得られた比較合成ポリマーGは、繰り返し単位(I)中の一般式(1)および(2)中のMがNa原子であった。
【0054】
<比較合成例3(比較合成ポリマーHの合成)>
特表2004−537627号の段落0027「II.」の「a.」に記載の方法で変性ポリアスパラギン酸(比較合成ポリマーH)を合成した。得られた比較合成ポリマーHのGPC測定の結果、重量平均分子量は22000であった。得られた合成ポリマーHは、繰り返し単位(I)、繰り返し単位(II)及びベンジルアミド部位を有する繰り返し単位から構成されており、繰り返し単位(I)と(II)の質量比が(I):(II)=49:51(質量比)であり、繰り返し単位(I)中の一般式(1)および(2)中のMがNa原子であり、繰り返し単位(II)中の一般式(3)および(4)中のXはNHであり、R1及びR4はメチル基であり、R2はエチレン基であり、R3は分岐プロピレン基である。R2O及びR3Oはランダム形態で存在し、aは1であり、bは31であり、cは9であった。
【0055】
<泥分散能試験>
上記で得られた合成ポリマーA〜E及び比較合成ポリマーF〜Hを用い、以下のように泥分散能試験を行った。
【0056】
〔I〕泥分散試験
(I−1)
トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(和光純薬(株)製)4.845gを2Lメスフラスコに入れ、イオン交換水約1L加え、溶解させた。そこに1N−HCl(和光純薬(株)製)35mL、0.1N−HCl(和光純薬(株)製)2mL加え、塩化カルシウム(和光純薬(株)製)0.1583g加え、溶解させたのち、イオン交換水を加え2Lとした(「4°dH/pH7−バッファー溶液」とする)。
【0057】
(I−2)
100mLメスフラスコに合成ポリマーA〜E、比較合成ポリマーF〜Hをポリマー有効分として0.05g加え、4°dH/pH7−バッファー溶液を加え全量を100mLとした(「ポリマー溶液」とする)。
【0058】
(I−3)
比色管(IWAKI製 直径24mm×長さ200mm)に4°dH/pH7−バッファー溶液50mLを入れた。そこに、(I−2)で調製したポリマー溶液0.5mLを加え、混合した。その後、園芸用鹿沼赤土0.05gを比色管に入れ、栓をした。その後、比色管を振って、均一に分散させ、2時間静置した。2時間静置後、分散液の上澄みを4mLサンプリングし、UV測定機器(島津製作所製 UV−2550 1cmセル 波長575nm)にて透過率を測定した。この試験では、透過率が75%以下であることが好ましい。
【0059】
【表1】

【0060】
合成ポリマーA〜Eはいずれも良好な分散性能を示す。比較合成ポリマーFのように、(I):(II)質量比が50:50のポリマーでは、十分な泥分散能が得られない。また、合成ポリマーA〜Eは、未変性ポリアスパラギン酸である比較合成ポリマーGや既存変性ポリマーである比較合成ポリマーHと比較して、泥分散能が向上している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で示される繰り返し単位及び一般式(2)で示される繰り返し単位から選ばれる繰り返し単位(I)、並びに一般式(3)で示される繰り返し単位及び一般式(4)で示される繰り返し単位から選ばれる繰り返し単位(II)を有し、繰り返し単位(I)と繰り返し単位(II)の質量比が(I):(II)で51:49〜99:1であり、且つ全繰り返し単位中、繰り返し単位(I)及び繰り返し単位(II)の合計が90質量%以上である変性ポリアスパラギン酸系重合体からなる衣料洗剤用高分子ビルダー。
【化1】


〔式中、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属(1/2原子)、アンモニウム基、又はアルキル置換アンモニウム基を表し、繰り返し単位ごとに同一であっても異なっていてもよい。〕
【化2】


〔式中、XはNH又はOであり、R1及びR4は独立して、フェニル基、水素原子、又は炭素数1〜3の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基であり、R2は炭素数1〜2のアルキレン基であり、R3は炭素数3〜5の直鎖もしくは分岐鎖アルキレン基である。R2O及びR3Oはランダム又はブロック形態で存在し、aは0〜10であり、bは1〜100であり、cは0〜100である。R1、R2、R3、R4、a、b及びcは繰り返し単位ごとに同一であっても異なっていてもよい。なお、式中の「/」はR2OとR3Oとを区切るための便宜的な記号である。〕
【請求項2】
重量平均分子量が1000〜100000である、請求項1記載の衣料洗剤用高分子ビルダー。
【請求項3】
請求項1又は2記載の衣料洗剤用高分子ビルダーを含有する、衣料用洗剤。

【公開番号】特開2011−132272(P2011−132272A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290031(P2009−290031)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】