説明

衣料用布帛

【課題】本発明は、曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性、および吸放湿性に優れた衣料用布帛及びそれを用いた衣料製品に関する。
【解決手段】上下に織物、中間に中わた材を配し、縫合された布帛であって、該中わたが、断面形状がW型であるポリエステル系短繊維(A)、再生セルロース系短繊維(B)及び合繊系短繊維(C)を含むものであり、該織物の片方が、セルロース系長繊維を含有していることを特徴とする衣料用布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性、および吸放湿性に優れた衣料用布帛及びそれを用いた衣料製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、衣料用布帛は、快適性嗜好のニーズが高まり、耐久性や取り扱い性等の機能性だけでなく、着用或いは使用時の快適性、所謂、人の感性に訴える機能が要求されている。
従来、衣料用布帛の保温性を確保するために、合繊の中わた材が用いられ、ポリエステルやポリアミドといった合繊短繊維からなる中わたは、機械的性能をバランス良く具備することから、キルティングジャケット、ダウンジャケットなどの衣料用として広く用いられている。
中わたに要求される特性として、曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性、吸放湿性が挙げられるが、従来の中わたに用いられている合繊短繊維は、その断面形状が丸断面である場合が一般的であり、単糸自身の柔軟性に乏しく、繊維間空隙が大きいこと等が原因で、長時間着用すると、身体の動作に衣服素材が追従せず、十分な保温感が得られないばかりか、蒸れ感を感じたり、内衣との摩擦により静電気が発生する等、着心地が悪いものであった。
【0003】
上記の様な、中わたの欠点を改善すべく、非相溶である2成分がブレンドされてなる繊維であり、且つ繊維内部に空隙を300個以上有し、さらに空隙の平均直径が0.01μm以上,1μm以下であり、空隙数が繊維の外層部に対し内層部に1.3倍以上分布する傾斜構造をもつ、断面形状が異形断面を含むボイド繊維を用いてなることを特徴とする中わたが提案されている(特許文献1参照)。確かに、微細空隙を多数有するポリエステル繊維を用いているため、保温性等は若干改善されるものの、やはり満足のいく保温性を有するものではなく、それと合わせて衣料用途に必須とされている、曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、制電性及び吸放湿性等の人体生理や感性に係る高度な機能性は極めて劣るものであり、この中わたを使用した衣料は着心地の悪い、ウレタンライクの低品位な衣料製品となってしまうものであった。
上記の様な、中わたの欠点を改善し、表地との相性を改善することで、曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性、吸放湿性が改善されうる衣料用布帛の提供が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−345920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性及び吸放湿性に優れた衣料用布帛を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に鑑み、側地織物と中わた材から構成される衣料用布帛において、中わた材として、断面形状がW型断面であるポリエステル系短繊維、再生セルロース系短繊維及び合繊系短繊維を含む中わたを用い、上下の織物の少なくとも片方に、セルロース系繊維を含有する織物を用いる事で、曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性及び吸放湿性に優れた衣料用布帛を得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
即ち、本発明は下記の通りである。
(1)上下に織物、中間に中わた材を配し、縫合された布帛であって、該中わたが、断
面形状がW型であるポリエステル系短繊維(A)、再生セルロース系短繊維(B)及び合繊系短繊維(C)を含むものであり、該織物の少なくとも片方が、セルロース系長繊維を含有していることを特徴とする衣料用布帛。
(2)A、B及びCの混合重量比率が、A:B:C=(10%〜40%):(10%〜40%):(20%〜80%)であることを特徴とする上記(1)記載の衣料用布帛。
(3)前記中わたが、さらに、熱接着性繊維(D)を(A)〜(D)の繊維全体に対し1〜20重量%の混合重量比率で有することを特徴とする上記(1)に記載の衣料用布帛。
(4)前記中わたの繊維充填率が0.6%〜5%であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の衣料用布帛。
(5)Aの異型度が2〜4であることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の衣料用布帛。
(6)Bが銅アンモニアレーヨン繊維であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の衣料用布帛。
(7)前記上下の少なくとも片方の織物において、経糸及び/又は緯糸がセルロース系長繊維であることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の衣料用布帛。
(8)前記上下の少なくとも片方の織物において、通気性が10〜100cc/cm/secの範囲であることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の衣料用布帛。
(9)前記上下の少なくとも片方の織物において、カバーファクターが800〜2000の範囲であることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載の衣料用布帛。
(10)前記セルロース系長繊維が銅アンモニアレーヨン繊維であることを特徴とする上記(7)〜(9)のいずれかに記載の衣料用布帛。
(11)前記布帛の湿度移行性が400g/m・HR以上であることを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載の衣料用布帛。
(12)上記(1)〜(11)に記載の衣料用布帛を1部又は全部に用いることを特徴とする衣料製品。
【発明の効果】
【0008】
本発明の衣料用布帛は、上下の織物と、中間の中わたから構成される衣料用布帛であって、中わた材として、断面形状がW型断面であるポリエステル系短繊維、再生セルロース系短繊維及び合成系短繊維を含む中わたを用い、上下の織物の少なくとも片方に、セルロース系繊維を含有する織物を用いることで、中わた材の消費特性と、上下の織物の特性が相互に相まって、曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性及び吸放湿性に優れた衣料用布帛を提供することができる。
特に、中わたは、断面形状がW型断面であるポリエステル系短繊維(以下、Aとする)、再生セルロース系短繊維(以下、Bとする)及び合成系短繊維(以下、Cとする)を含むことにより、曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性及び吸放湿性に優れている。
本発明の第一の特徴は、A及びBは、いずれも繊維自身が屈曲に対して優れた柔軟性を有しているため、A、B及びCで構成された該中わたの曲げ柔軟性も優れたものとなる。
本発明の第二の特徴は、Aは、その繊維断面形状がW型であるがゆえに、繊維表面積が大きくなるので、本発明の中わたの繊維充填率が大きくなる。そして短繊維間の空隙に、より多量の動かない空気(デッドエアー)を保持でき、保温性が大幅に向上する。更に、Aは断面の細かい溝によって水分をしっかり吸水するため、該中わたが吸水した際に、短繊維間の空隙部に水や汗が浸透し優れた吸水性が得られ、且つ保水された水が外に出難いため、汗のべとつき感と肌に触れた時のひんやり感がなく、優れた濡れ戻り性が同時に得られるという効果を有する。又、乾燥時は、Aの表面積が大きいことによるラジエタ−効果からも速乾性も得ることができる。
本発明の第三の特徴は、Bは公定水分率が約11%程度と高い吸湿性を有するため、優れた吸放湿性を有しており、身体から発散する湿気を素早く吸収し、外へ放出するため、
湿度の高い環境下で着用した場合でも、蒸れ感やべたつき感を抑え快適性が得られる。更に、静電気を素早く空気中に逃がす性質があるので、不快なまとわりつきや着用時のパチパチ、埃の付着といったトラブルを軽減する。
本発明の第四の特徴は、Cはその繊維断面形状がW型以外の合繊系短繊維であるため、中わたの圧縮回復性および耐へたり性を低下することなく、圧縮耐久性が保持できる。
また、本発明者らは、A、B及びCの各繊維成分の選択、さらに、それらの混合重量比率を鋭意検討し、曲げ柔軟性及び圧縮柔軟性に優れているのみならず、相反する圧縮回復性や耐へたり性等の圧縮耐久性をも兼ね備えた、保温効果の高い中わたを発明するに至った。
本発明の第五の特徴は、前述の中わたを中間に用いて、上下の織物の少なくとも片方に、経糸及び/又は緯糸にセルロース系長繊維を配することで、中わたと表地との相性が改善され、曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性が改善され、湿度移行性が400〜1000g/m・HRであるという優れた吸放湿性を有することができる。
具体的には、経糸にポリエステル系長繊維且つ緯糸にセルロース系長繊維を用いて製織された裏地織物、又は経糸にセルロース系長繊維且つ緯糸にポリエステル系長繊維を用いて製織された裏地織物、又は経糸と緯糸いずれもセルロース系長繊維を用いて製織された裏地織物を、表裏どちらか片面又は表裏両面に縫合してなる布帛を提供することで、中わたの特性を十分に発揮できる衣料用布帛となる。以上のことから、本発明の布帛はキルティングジャケット、ダウンジャケット、防寒服などの衣料用途に好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる中わたは、断面形状がW型断面であるポリエステル系短繊維(以下、Aとする)、再生セルロース系短繊維(以下、Bとする)及び合成系短繊維(以下、Cとする)を含むものである。
中わた材の構成繊維であるAとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのホモポリマー、これらポリマーとのポリエステル共重合体等の繊維形成性を有するポリエステル重合体からなる短繊維が用いられる。短繊維中に、制電剤、難燃剤、耐熱剤、耐光剤、酸化チタン等の添加剤を添加されていても何ら差し支えはない。強度、剛性および耐久性の観点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0010】
中わた材の構成繊維Bとしては、セルロース系再生繊維であり、銅アンモニアレーヨン、ビスコースレーヨン(強力レーヨン、ポリノジックレーヨン、ハイウェットモジュラスレーヨンを含む)、精製セルロース(リヨセル)等の短繊維が用いられる。 特に制限されるものではないが、本発明の中わたの曲げ柔軟性や圧縮柔軟性を格段に向上させるには、銅アンモニアレーヨン繊維であることがより好ましく、具体的には、旭化成せんい(株)製キュプラ(ベンベルグR)が挙げられる。セルロース系再生繊維の短繊維が、銅アンモニアレーヨン以外の場合は、再生セルロース系短繊維自身の曲げ応力がやや大きくなり、中わたの曲げ柔軟性や圧縮柔軟性が低下する傾向にある。
【0011】
中わた材の構成繊維Cとは、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリアクリルニトリル系繊維、ポリビニル系繊維、ポリプロピレン系繊維、ポリウレタン系繊維等の合成短繊維であれば特に制限されるものではなく、単糸断面形状には特に限定されず、丸形、W型でもよく、また三角型、五角型、星型、L型、T型、Y型、H型、π型、+型、#型、*型、八葉型、ドッグボーン型等の異型断面形状や、これらの中空断面形状であってもよい。
【0012】
本発明における、中わた構成繊維の混合重量比率は、A:B:C=(10%〜40%):(10%〜40%):(20%〜80%)がであり、より好ましくは、A:B:C=(
15%〜35%):(15%〜35%):(30%〜70%)、更に好ましくは、A:B:C=(20%〜30%):(20%〜30%):(40%〜60%)である。
A及びBの混合重量比率がそれぞれ10%未満であると、曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、又は制電性が低下する傾向にある。更に、保温性または吸放湿性がやや低下する。A又はBの混合重量比率がそれぞれ40%を超えると、制電性及び吸放湿性は問題ないが、曲げ柔軟性及び圧縮柔軟性が低下する傾向にあり、保温性も低下する傾向にある。
【0013】
中わた材の繊維充填率とは、単位体積中に占める繊維の割合を言う。繊維充填率は0.6%〜5%であることが好ましい。より好ましくは0.7%〜4%、更に好ましくは0.8%〜3%である。繊維充填率が0.6%未満であると、保温性がやや低下する。又、そのような中わたを用いたキルティングジャケット、ダウンジャケット、防寒服等の衣料では、中わたの圧縮回復性が低下する傾向であり、適度な膨らみのあるシルエットが得られず、長期に着用していると外観品位が低下し、繰返しの家庭洗濯やドライクリーニング等の洗濯耐久性がなく、形態安定性に劣る。中わたを繊維充填率が5%を超えると、空気の流れが不良となり、身体から発生する熱や湿気がこもり不快感を伴う。中わた材の繊維充填率が0.6%〜5%であることは、空気層の空隙率が、95〜99.4%であることを意味し、本発明において、中わた材の空隙率が高いことが重要な特性である。
【0014】
A繊維における異型度とは、W型断面に外接する長方形を描き、この長辺Lを短辺Hで割った値を言う。Aの異型度が2〜4であることが好ましく、より好ましくは2.5〜3.5、更に好ましくは2.8〜3.3である。
異型度が2より小さいと、Aの曲げ応力が大きくなり、中わたの曲げ柔軟性や圧縮柔軟性が低下し、しなやかさやソフト感が得られないものとなり、更に、繊維充填率が0.6%未満となり、十分な保温性が得られにくくなる。
【0015】
異型度が4を超えると単糸間の空隙が極めて小さくなり、中わたとしたときの膨らみ感及び保温性が得られにくい。更に繊維充填率が5%を超えると、中わた内の空隙率が低下し、空気の流れが不良となりやすく、身体から発生する熱や湿気がこもり不快感を伴うことも生じやすい。又、W型断面の開口角度は、W型断面糸の下部凹部の両端より引き出した線を引いたときの角度で表され、W型断面形状の鋭利差を意味し、角度が大きいほど偏平となる。本発明において、W型断面の開口角度は110〜150度の範囲が好ましく、120〜140度がより好ましい。
【0016】
本発明における中わたの剛軟度とは、剛さ(しなやかさ)の程度を言う。中わたの剛軟度が65mm以下であることが好ましく、より好ましくは63mm以下、更に好ましくは60mm以下である。剛軟度が65mmを超えると、着用中の動作時の拘束感が大きいので動きにくく、身体へのフィット感が劣るものとなり着心地が悪い。中わたの剛軟度がこの範囲であると、衣料用布帛としても、充分な柔軟性、しなやか性を有し、局面追従性が向上し、身体へのフィット感にすぐれる。
【0017】
中わた材の圧縮剛性とは、中わたを厚み方向に圧縮する際の圧縮のし易さの程度を言いう。圧縮剛性が0.7以下であることが好ましく、より好ましくは0.6以下である。圧縮剛性が0.7以下であると、中わたを用いた衣料を着用する際に、良好な圧縮柔らかさが得られると共に、適度な変形量で中わたが圧縮されるため、快適な着用感や寝心地が体感できる。圧縮剛性が0.7を超えると着用時に中わたが圧縮されず、着用中にごわつきを感じたり身体の動きが拘束される等の不快感が顕著であり、圧縮柔軟性が不十分となる。中わたの圧縮剛性がこの範囲であると、衣料用布帛としても、充分な圧縮剛性を有し、快適な着用感や寝心地が体感できる。
【0018】
中わた材の半減期とは、10kVの電圧を30秒間印加した後、帯電圧が初期帯電圧の
二分の一に減衰するまでの時間である。本発明の中わたは、帯電圧の半減期が30秒以下であることが好ましく、より好ましくは20秒以下、更に好ましくは17秒以下である。半減期が30秒を超えると、例えば衣料の場合は、内衣との摩擦により静電気が発生して着心地が悪いのみならず、埃や花粉等が付着しやすく、衣服の汚れが顕著で、又花粉症を引き起こす原因ともなる。中わたの半減期がこの範囲であると、衣料用布帛としても、充分な制電性を有し、快適な着用感や粉塵付着防止効果が体感できる。
【0019】
本発明における織物は、通気性が10〜100cc/cm/secであることが好ましく、より好ましくは20〜90cc/cm/sec、更に好ましくは30〜80cc/cm/secである。通気性が10cc/cm/secより低いと、十分な換気効果が得られず、故に身体から発散する熱や水蒸気がこもり、蒸れ感を防止して清涼性を高めることが困難である。通気性が100cc/cm/secを超えると、衣服内の保温性を維持することができず、しかも外気からの風が布帛を通過して衣服内に入り込み、体温が低下し防寒服の機能を発揮しないものとなる。
【0020】
本発明における織物は、カバーファクターが800〜2000であることが好ましく、より好ましくは900〜1900、更に好ましくは1000〜1800である。カバーファクターが800よりも小さいと、経糸と緯糸とで形成される空隙が大きくなるため、保温性が低下したり、中わた材の短繊維が吹き出す等のクレームが生じる。カバーファクターが2000よりも大きいと経糸と緯糸とで形成される空隙が小さくなるため、通気性が低くなり、十分な換気効果が得られず、故に身体から発散する熱や水蒸気がこもり、蒸れ感を防止して清涼性を高めることが困難となる。
【0021】
本発明における衣料用布帛の吸放湿性能を定量化する尺度として湿度移行性が挙げられる。湿度移行性とは衣服内の湿気を外部へ放出する能力を言い、高湿環境から低湿環境への布帛を通過する湿度移行量を測定する。湿度移行量は400g/m・HR以上が好ましく、より好ましくは450〜2000g/m・HRである。湿度移行量が400g/m・HR未満であると、身体から発散する湿気を吸収して外へ放出することができず、特に湿度の高い環境下で着用した場合は、蒸れ感やべたつき感が増大し不快感を感じる。湿度移行量が2000g/m・HRを超えると、身体からの水分蒸散量が増大し、その結果、皮膚の保湿作用が著しく低下するので、皮膚がかさついたり、痒くなったりする等の皮膚障害が生じる。尚、上記の各測定方法の詳細については後述する。
【0022】
上下の少なくとも片方の織物に使用されるセルロース系長繊維は、銅アンモニアレーヨン、ビスコースレーヨン(強力レーヨン、ポリノジックレーヨン、ハイウェットモジュラスレーヨンを含む)、精製セルロース(リヨセル)、アセテート繊維等が挙げられる。糸繊度は、33〜133dtex、好ましくは56〜111dtexであり、単糸繊度は特に限定されるものではないが0.5〜10d、好ましくは0.6〜6dtexである。この糸は、無撚糸で原糸(フラットヤーン)で用いられることが最も好ましい。しかし、糸の収束性を向上させるために、長繊維糸は軽度の撚り(10〜200T/M程度)やインターレース加工が施されていたり、仮撚りや空気噴射加工等の捲縮嵩高加工処理が施されていてもかまわない。特別な表面効果、触感効果を得る目的で、経糸に強撚した糸を用いることもできる。
【0023】
本発明における織物には、ポリエステル系長繊維も使用することができ、該ポリエステル系長繊維とはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなどのホモポリマー、これらポリマーとのポリエステル共重合体などの繊維形成性有するポリエステル重合体からなる繊維が用いられる。繊維中に、制電剤、難燃剤、耐熱剤、耐光剤、酸化チタン等の添加剤を添加されていても何ら差し支えはない。繊維の断面形状は、特に制限されるものはなく、丸型の他に三角型、L型、Y型、T
型、の多角形型でも良いし、多葉型、中空型や扁平型、不定形型など任意である。糸繊度は、33〜133dtex、好ましくは56〜111dtexであり、単糸繊度は特に限定されるものではないが0.5〜10d、好ましくは0.6〜6dtexである。この糸は、無撚糸で原糸(フラットヤーン)で用いられることが最も好ましい。しかし、糸の収束性を向上させるために、長繊維糸は軽度の撚り(10〜200T/M程度)やインターレース加工が施されていたり、仮撚りや空気噴射加工等の捲縮嵩高加工処理が施されていてもかまわない。特別な表面効果、触感効果を得る目的で、経糸に強撚した糸を用いることもできる。
【0024】
本発明における織物は、経糸及び/又は緯糸がセルロース系長繊維であることが好ましい。したがって、経糸にポリエステル系長繊維且つ緯糸にセルロース系長繊維を用いても、経糸にセルロース系長繊維且つ緯糸にポリエステル系長繊維を用いても、経糸と緯糸いずれもセルロース系長繊維経を用いても、いずれの場合でもよく特に限定されるものではないが、実着用時の快適性(吸放湿性能や湿度移行性及び制電性)やドレープ性が要求される高価な衣服の場合は、経/緯糸ともセルロース系長繊維の組み合わせよりなるセルロース系繊維100%の裏地であることが好ましい。又、上記の裏地織物を、表裏どちらか片面に使用しても、表裏両面に使用してもいずれの場合でもよく特に限定されるものではないが、表裏両面に使用した方が好ましく、着用時の快適性が向上する。
【0025】
織物組織としては、平織、綾織、朱子織などが挙げられるが、何れの織組織を採用するかは裏地の用途領域、要求特性などによって適宜決定することができる。例えば婦人服に関しては、薄くてソフトな風合が好まれることから、特に平織組織の裏地とすることが好ましい。又、本発明の効果を妨げない範囲で、常法の精練、染色、熱セット等の加工を受けてもよく、艶付けプレス、エンボスプレス、コンパクト加工、柔軟加工、ヒートセッティング等の物理的処理加工や、ボンディング加工、ラミネート加工、コーティング加工、蒸着加工、防汚加工、撥水加工、帯電防止加工、防炎加工、防虫加工、衛生加工、泡樹脂加工等の化学的処理加工や、その他にマイクロ波応用や、超音波応用、遠赤外線応用、紫外線応用、低温プラズマ応用等の応用処理がなされていても良い。
【0026】
本発明における中わたとは、3次元的に絡合して繊維集合体を形成したものであり、例えば側地と側地との間に繊維を充填した形態のものであっても良く、A、B及びCの3種を混綿した後、得られた混綿塊をシート状の繊維集積層にする。繊維集積層を形成する主な方法としては、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブロー法等があるが、短繊維を用いる場合は乾式法或いは湿式法が好ましい。乾式法は、短繊維を紡績用カード、又は空気流によるランダム・ウェッバーで繊維集積層を作る方法である。一方、湿式法は、短繊維を水中に分散し、抄紙工程によってシート化する方法である。いずれの方法も繊維集積層をそのまま、或いは交差積層して結合する。繊維集積層を結合する方法としては、サーマルボンド法、ケミカルボンド法(含浸法及びスプレー法)、ニードルパンチ法、水流絡合法等があり、特に限定されるものではないが、本発明の中わたは、断面形状がW型断面であるポリエステル短繊維、再生セルロース系短繊維及び合成短繊維を用いて構成されているため、サーマルボンド法及びスプレー法によるケミカルボンド法を、どちらか単独で行うか、或いは両方法を組み合わせるのが好ましい。サーマルボンド法を採用する場合は、A、B及びC以外に、熱接着性繊維を含めた4種を混綿して、熱処理することによって生じた融着点を繊維間に保持すれば良い。特に家庭洗濯や工業洗濯により機械的外力が加わる場合は、耐へたり性に優れ、綿切れなどが生じないことが要求されることから、A、B、C及び熱接着性繊維(以下、Dとする)の4種を混綿し、繊維間に融着点を有することが好ましい。
【0027】
本発明の中わた材に用いる熱接着性繊維としては、繊維全体が熱接着性成分からなるものであっても、繊維表面の一部又は全部に熱接着性成分が存在するものであっても良い。
Dの形態安定性が高くでき、結果として耐熱性の高い中わたとなる点で、熱接着性成分と熱接着性成分以上の軟化点或いは融点を有する成分からなり、繊維表面の一部或いは全部に熱接着性成分が存在する熱接着性複合繊維を用いることが好ましい。その場合の中わた材中での熱接着性繊維Dの混合重量比率は、A〜Dの繊維成分全体に対して1〜20重量%が好ましく、より好ましくは5〜15重量%である。
該熱接着性繊維Dが1重量%以上であれば、繊維集積層を結合するには十分であり、20重量%以内であれば、柔軟性等にも支障はない。
【0028】
熱接着性成分は特に制限されるものではなく、非晶性ポリマであっても、結晶性ポリマであっても良い。例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタンや、ポリエステル系エラストマー、ポリオフィン系エラストマー等の熱可塑性エラストマーが挙げられ、得られる中わたが適度な形態安定性柔軟性を有する点で、イソフタル酸共重合PET、イソフタル酸共重合PBT、或いは熱可塑性エラストマーであることが好ましい。単糸断面形状には特に限定されず、丸形、W型でもよく、また三角型、五角型、星型、L型、T型、Y型、H型、π型、+型、#型、*型、八葉型、ドッグボーン型等の異型断面形状や、これらの中空断面形状であってもよい。
【0029】
一方、スプレー法によるケミカルボンド法は、バインダの溶液を表裏のどちらか片面或いは表裏両面に均一にスプレーし、乾燥させる方法であり、バインダの溶液としては一般的なアクリル樹脂を用いれば特に限定されるものではない。
本発明の中わたは、A、B、C及びDを混綿したウェブ状の繊維集合体を積層して熱処理を施した不織布状の形態のものが好ましい。もちろん不織布でも側地の間に内在された形態であっても良く、目的用途に応じて便宜選択すれば良い。
【0030】
本発明の中わたに用いる、A、B、C及びDの単糸繊度は目的用途に応じて便宜選択すればよいが、0.6dtex〜6dtexが好ましく、より好ましくは1.0dtex〜5dtexである。0.6dtexより細いと、単糸切れが発生し、中わた製造工程での生産性が悪く、消費性能面では繰返し着用したり、家庭洗濯や工業洗濯の機械的外力により外観品位が低下し、圧縮回復性及び耐へたり性に劣る。6dtexを超えると曲げ柔軟性、圧縮柔軟性に劣り、快適な着心地が得られない。
本発明の中わたに用いる、A、B、C及びDの繊維長は目的用途に応じて便宜選択すればよいが、過度に短いと繊維の絡合性が低下して、カード通過性が悪化することがあるため、繊維長は10mm以上であることが好ましく、20mm以上であることがより好ましい。また過度に長いと開繊性が低下して嵩高性が悪化することがあるため、200mm以下であることが好ましく、100mm以下であることがより好ましい。
【0031】
本発明の中わたは、優れた曲げ柔軟性を有するA、B及びCを混綿して成型されているため、用いる繊維の重量が少なくても、圧縮された時の底打ち感が無く、且つ優れた圧縮柔軟性を示す。このため、中わたの目付けについては制限されず目的用途に応じて選択できる。例えば、極寒環境で着用する保温性の高い防寒着等を得るには、目付けは高いことが好ましく、1000g/m以上であることが好ましく、1500g/m以上であることがより好ましい。又、例えば、アウトドア用のカジュアルな衣料や婦人用衣料用途等の、ファッション性や着用快適性や或いは軽量性が要求される用途に用いる場合は、低目付であることが好ましく、500g/m以下であることが好ましく、より好ましくは300g/m以下であり、更に好ましくは100g/m以下である。又、中わたの厚さについても同様に適宜選択すれば良い。
【実施例】
【0032】
本発明を実施例に基づいて説明する。
本発明における測定方法及び評価方法は以下の通りである。
(1)中わたの糸物性の測定
1)繊度
JIS−L−1015の8−5−1に記載の繊度試験方法(短繊維−重量法)に準拠して行う。
2)繊維長
JIS−L−1015に記載の繊維長試験方法(ステープルダイヤグラム法)に準拠して行う。
【0033】
(2)織物の糸物性及び密度の測定
1)繊度
JIS−L−1013に記載の繊度試験方法(長繊維−重量法)に準拠して行う。
2)密度
JIS−L−1096に記載の密度試験方法に準拠して行う。
(3)繊維充填率
中わた繊維充填率は次式より算出した。
繊維充填率(%)
=目付け/{(厚み×(比重a×混率a+比重b×混率b+‥‥))}×100 (1)
【0034】
(4)異型度の算出
W型断面に外接する長方形を描き、この長辺Lを短辺Hで割った値を異型度とした。
(5)剛軟度
JIS L−1096 剛軟度試験方法A法(45°カンチレバー法)に準拠して行う。
(6)圧縮剛性の測定
カトーテック(株)製KES−G5圧縮試験機を使用し、中わた試料を面積10cmの円形表面を持つ銅板間(圧縮速度0.05cm/sec)で圧縮し、圧縮力P=10gf/cmにおける 試料の圧縮剛さを測定した。
【0035】
(7)制電性
JIS L−1094 半減期試験方法A法に準拠して行う。
(8)保温性
JIS L−1096 保温性試験方法(冷却法)に準拠して行う。
(9)通気性
JIS−L−1096 通気性試験方法(A法空気量)に準拠して行う。
(10)カバーファクター
織物のカバーファクターは次式より算出した。
カバーファクター=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
但し、DWpは経糸繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/インチ)、DWfは緯糸繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/インチ)である。
【0036】
(11)吸放湿性
所定量の衣料用布帛をサンプリングし、絶乾状態での重量を測定する(絶乾条件は105℃×2時間である)。雰囲気X(20℃×65%RH)及び雰囲気Y(30℃×90%RH)で24時間放置した後の重量を測定する。これらの測定値から、雰囲気Xでの吸湿率は(2)式で求め、雰囲気Yでの吸湿率は(3)式で求めた。又、吸放湿能力(%)は(4)式で求めた。
雰囲気Xの吸湿率(重量%)=(雰囲気Xでの重量―絶乾重量)/絶乾重量×100 (2)
雰囲気Yの吸湿率(重量%)=(雰囲気Yでの重量―絶乾重量)/絶乾重量×100 (3)
吸湿能力(重量%)=(雰囲気Yでの吸湿率)−(雰囲気Xでの吸湿率) (4)
吸湿率は大きい方が吸湿量が多い。又、吸放湿能力は快適性を得るためのドライビングフォースであり、大きい方が良い。
【0037】
(12)湿度移行性
カトーテック(株)製、サーモラボIIを使用し、20℃、65%RH環境下で、30℃の熱板(熱板全体が12cm角、その内、計測用熱板が10cm角、周囲に幅1cmのガード熱板あり)に、アクリル樹脂枠(15cm角、中央に10cm角の穴が有り、厚み5mm、中央の穴にポリエステルモノフィラメント糸を15mm間隔に縦横格子状に張ったもの)をのせ、その上に試料15cm角の裏面(身体側になる面)を熱板側に向けて設置し、更に上から発泡スチロール枠(15cm角、中央に10cm角の穴)を乗せる。発泡スチロール枠の周囲をドラフティングテープ(ニチバン(株)製)で固定し、風速0.3m/secにおいて20分間静置の後、熱板を30℃に保つのに必要な熱量WI(W)を計測した。次に、30℃の熱板(熱板全体が12cm角、その内、計測用熱板が10cm角、周囲に幅1cmのガード熱板あり)の上から9cm角の濾紙を熱板の中央に乗せ、水0.25mlを濾紙全体に含浸させ、アクリル樹脂枠(15cm角、中央に10cm角の穴が有り、厚み5mm、中央の穴にポリエステルモノフィラメント糸を15mm間隔に縦横格子状に張ったもの)を乗せる。その上から15cm角の試料の裏面(身体側になる面)を熱板側に向けて設置し、更に上から発泡スチロール枠(15cm角、中央に10cm角の穴)を乗せる。発泡スチロール枠の周囲をドラフティングテープ(ニチバン(株)製)で固定し、風速0.3m/secにおいて20分間静置の後、熱板を30℃に保つのに必要な熱量WII(W)を計測する。請求項9に記載の布帛の湿度移行量は次式より算出した。
湿度移行量(g/m・HR)
=(WII−WI)/6.08/1.30×1.36×3600 (5)
【0038】
[実施例1]
Aは繊度1.4dtex、繊維長38mm、Bは繊度1.4dtex、繊維長51mm、Cは繊度1.1dtex、繊維長38mm、Dは繊度1.4dtex、繊維長38mmを、A:B:C:D=30:20:40:10の重量比率で混綿し、サーマルボンド法とケミカルボンド法(スプレー法)を併用した成形方法によって中わたを製造した。
次に経糸に56dtex/30fの銅アンモニアレーヨン長繊維、緯糸に84dtex/45fの銅アンモニアレーヨン長繊維を用いて、経糸密度130本/インチ、緯糸密度82本/インチ、目付65g/m、製織後の織物幅145cmの平組織の生機を製織した。その後、表1記載の条件でオープンソーパー型連続精練機を用いて精練を行った。引き続き表2記載の条件で染色した後、表3記載の仕上げ加工条件で樹脂加工を行って裏地織物を得た。
上記の裏地織物を中わたの表裏両面に用いて縫合し、キルティング状布帛を作製した。中わたの曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性、及びキルティング状布帛の吸放湿性、湿度移行性を評価した。その結果を表7に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
[実施例2]
実施例1と同様の方法で、A:B:C:D=10:40:40:10の重量比率で混綿し、中わたを得た。
次に経糸に56dtex/30fの銅アンモニアレーヨン長繊維と緯糸に84dtex/36fのポリエチレンテレフタレート長繊維を用いて、経糸密度131本/インチ、緯糸密度82本/インチ、目付63g/m、生機幅132.0cmの平組織の生機を製織した。その後、表1記載の条件でオープンソーパー型連続精練機を用いて精練を行った。引き続き表4記載の条件で染色した後、表3記載の仕上げ加工条件で樹脂加工を行い裏地織物を得た。
上記の裏地織物を中わたの表裏両面に用いて縫合し、キルティング状布帛を作製した。中わたの曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性、及びキルティング状布帛の吸放湿性、湿度移行性を評価した。その結果を表7に示す。
【0043】
【表4】

【0044】
[実施例3]
実施例1と同様の方法で、A:B:C:D=40:10:40:10の重量比率で混綿し、中わたを製造した。次に実施例2と同様の方法で裏地織物を得た。
上記の裏地織物を中わたの表裏両面に用いて縫合し、キルティング状布帛を作製した。中わたの曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性、及びキルティング状布帛の吸放湿性、湿度移行性を評価した。その結果を表7に示す。
【0045】
[比較例1]
実施例1と同様の方法で、Bとしてビスコースレーヨンの繊度1.4dtex、繊維長51mmを用い、A:B:C:D=0:45:50:5の重量比率で混綿し中わたを製造した。次に実施例2と同様の方法で裏地織物を得た。
上記の裏地織物を中わたの表裏両面に用いて縫合し、キルティング状布帛を作製した。中わたの曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性、及びキルティング状布帛の吸放湿性、湿度移行性を評価した。その結果を表7に示す。
【0046】
[比較例2]
実施例1と同様の方法で、A:B:C:D=45:0:50:5の重量比率で混綿し中わたを製造した。次に実施例2と同様の方法で裏地織物を得た。
上記の裏地織物を中わたの表裏両面に用いて縫合し、キルティング状布帛を作製した。中わたの曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性、及びキルティング状布帛の吸放湿性、湿度移行性を評価した。その結果を表7に示す。
【0047】
[比較例3]
繊度3.3dtex、繊維長51mmのCを100%用いてニードルパンチ法による成形方法によって中わたを製造した。
次に経糸に56dtex/24fのポリエチレンテレフタレート長繊維、緯糸に84dtex/36fのポリエチレンテレフタレート長繊維を用いて、経糸の密度144本/インチ、緯糸の密度124本/インチ、目付67g/m、製織後の織物幅131.5cmの平組織の生機を製織した。次に2g/Lの炭酸ソーダと2g/Lのスコアロール(花王(株)社製)を含む水溶液を用いて、液流染色機で130℃×10分の精練を行った。その後、液流染色機により表5記載の条件で染色を行い、還元洗浄を経て染色織物を得た。この染色織物を表6記載の条件で仕上加工を行って裏地織物を得た。
上記の裏地織物を中わたの表裏両面に用いて縫合し、キルティング状布帛を作製した。中わたの曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性、及びキルティング状布帛の吸放湿性、湿度移行性を評価した。その結果を表7に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
【表8】

【0052】
【表9】

【0053】
表7から明らかなように、実施例1〜3は曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性、吸放湿性及び湿度移行性の全てにおいて優れたものとなった。特に実施例2はBの重量比率を大きくしているので、実施例1及び実施例3に比べて吸放湿性に優れ、蒸れ感やべたつき感が殆ど感じられない。一方、実施例3はAの重量比率を大きくしているので、実施例1及び実施例2に比べて保温性が格段に向上する。
しかし、比較例1は曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、及び保温性に劣るものであり、比較例2及び比較例3は曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性、吸放湿性、湿度移行性の全てにおいて劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、曲げ柔軟性、圧縮柔軟性、保温性、制電性、および吸放湿性に優れた衣料用布帛及びそれを用いた衣料製品を提供するものであり、キルティングジャケット、ダウンジャケット、防寒服等の衣料用途に好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に織物、中間に中わた材を配し、縫合された布帛であって、該中わたが、断面形状がW型であるポリエステル系短繊維(A)、再生セルロース系短繊維(B)及び合繊系短繊維(C)を含むものであり、該織物の少なくとも片方が、セルロース系長繊維を含有していることを特徴とする衣料用布帛。
【請求項2】
A、B及びCの混合重量比率が、A:B:C=(10%〜40%):(10%〜40%):(20%〜80%)であることを特徴とする請求項1記載の衣料用布帛。
【請求項3】
前記中わたが、さらに、熱接着性繊維(D)を(A)〜(D)の繊維全体に対し1〜20重量%の混合重量比率で有することを特徴とする請求項1に記載の衣料用布帛。
【請求項4】
前記中わたの繊維充填率が0.6%〜5%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の衣料用布帛。
【請求項5】
Aの異型度が2〜4であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の衣料用布帛。
【請求項6】
Bが銅アンモニアレーヨン繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の衣料用布帛。
【請求項7】
前記上下の少なくとも片方の織物において、経糸及び/又は緯糸がセルロース系長繊維であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の衣料用布帛。
【請求項8】
前記上下の少なくとも片方の織物において、通気性が10〜100cc/cm/secの範囲であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の衣料用布帛。
【請求項9】
前記上下の少なくとも片方の織物において、カバーファクターが800〜2000の範囲であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の衣料用布帛。
【請求項10】
前記セルロース系長繊維が銅アンモニアレーヨン繊維であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の衣料用布帛。
【請求項11】
前記布帛の湿度移行性が400g/m・HR以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の衣料用布帛。
【請求項12】
請求項1〜11に記載の衣料用布帛を1部又は全部に用いることを特徴とする衣料製品。

【公開番号】特開2009−249776(P2009−249776A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−100230(P2008−100230)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【出願人】(303046303)旭化成せんい株式会社 (548)
【Fターム(参考)】