説明

衣料用柔軟仕上げ剤

【目的】 洗濯時に洗剤と一緒に使用しても洗浄効果を低下させることなく、しかも充分な柔軟効果を発揮できる衣料用柔軟仕上げ剤を提供する。
【構成】 長鎖親油基を1〜2個有するアミン又はその中和塩若しくは第4級化物から選ばれる1種又は2種以上の水溶性の含窒素化合物(A) と、(B) 長鎖親油基を1個有するカルボン酸塩、長鎖親油基を1個有するスルホン酸塩、長鎖親油基を1個有する硫酸エステル塩及び長鎖親油基を1個有するリン酸エステル塩から選ばれる1種又は2種以上の水溶性のアニオン性界面活性剤を混和しない状態で担持する基体(C) を、pH10〜11の水溶液中で溶解し得るポリマー(D) で被覆してなる衣料用柔軟仕上げ剤。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は衣料用の柔軟仕上げ剤、更に詳細には衣料等の洗濯時に、洗剤と一緒に使用できる衣料用柔軟仕上げ剤に関する。
【0002】
【従来の技術及びその課題】衣料は、着用及び洗濯を繰り返し行う間に繊維処理剤が洗い落とされたり、あるいは繊維自体の劣化により硬くなったりして好ましからざる風合を生ずる。そのため、近年、多くの家庭において、繊維に柔軟性、帯電防止性を付与することができる柔軟仕上剤が多用されている。
【0003】現在、家庭用柔軟仕上剤として市販されているものは、その殆どが、一分子中に2個の長鎖アルキル基を有するカチオン性活性剤、なかんずくジ(硬化牛脂アルキル)ジメチルアンモニウム塩を主成分とするものであり、通常3〜15重量%の水分散液又は乳濁液であり、洗濯すすぎ時に使用される。ところがすすぎ時に柔軟仕上げ剤を入れ忘れたり、あるいは投入の手間がかかるため入れないで済ますことがあり、衣料の柔軟仕上げが上手にできないことがある。このため、すすぎ時でなく洗濯の前又は初期に投入して洗剤と一緒に使用しても充分な柔軟効果のある衣料用柔軟剤が要望されている。これらの要望に対して、従来の柔軟剤を造粒物にして洗剤に配合したり、さらに高融点の皮膜により柔軟基剤をカプセル化し、洗濯終了時や乾燥時に柔軟成分を徐放させる手段が考えられている。ところが、前者は洗剤成分と結合して洗浄効果も柔軟効果も低下させ、後者は高温洗浄方式の洗濯機や乾燥機では有効であるが、一般の洗濯機の場合には充分な効果を発揮しないという問題があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】かかる実情において、本発明者らは上記の問題を解決せんと鋭意研究を行った結果、洗濯時、洗剤と一緒に使用できる衣料用柔軟仕上げ剤に関する本発明を完成するに到った。
【0005】即ち本発明は、下記の(A) 成分と(B) 成分を実質的に混和しない状態で担持する基体(C) を、pH10〜11の水溶液中で実質上溶解し得るポリマー(D) で被覆してなる衣料用柔軟仕上げ剤を提供するものである。
(A) :長鎖親油基を1〜2個有するアミン又はその中和塩若しくは第4級化物から選ばれる1種又は2種以上の水溶性の含窒素化合物。
(B) :長鎖親油基を1個有するカルボン酸塩、長鎖親油基を1個有するスルホン酸塩、長鎖親油基を1個有する硫酸エステル塩及び長鎖親油基を1個有するリン酸エステル塩から選ばれる1種又は2種以上の水溶液のアニオン性界面活性剤。
【0006】本発明に用いられる(A) 成分としては、次の (1)〜(7) で示されるアミン化合物又はこれらの中和塩若しくは第4級化物が好ましく、特に窒素原子を2〜6個有するものが好ましい。
【0007】
【化4】


【0008】〔式中、R1:炭素数12〜22、好ましくは炭素数16〜22、特に好ましくは炭素数16〜18のアルキル基又はアニケニル基R2,R3,R4,R6:水素、炭素数1〜4のアルキル基又は
【0009】
【化5】


【0010】Y, Z:水素又はメチル基で何れか一方は必ず水素p :1〜3R5:炭素数11〜21、好ましくは炭素数15〜21、特に好ましくは炭素数15〜17のアルキル基又はアニケニル基m :2〜3n :1〜5を意味する。〕。
【0011】また、本発明に用いられる(B) 成分としては、次の一般式 (8)〜(15)で示される化合物が好ましい。
【0012】
【化6】


【0013】〔式中、R7 :炭素数7〜19の炭化水素基R8 :水酸基を有していてもよい炭素数8〜20の炭化水素R9 :水酸基を有していてもよい炭素数6〜18の炭化水素R10:メチル基又はエチル基R11:炭素数6〜16の炭化水素基R12:炭素数6〜10の炭化水素基M,Q:水素又はアルカリ金属Y,Z:水素又はメチル基、但し一方は必ず水素q :1〜10n :1〜8を意味する。〕本発明においては、これらの(A) 成分や(B) 成分以外に、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プルロニック型非イオン界面活性剤、脂肪酸エステル高級脂肪酸のエステルやポリオキシエチレン付加物及びモノ/ジグリセライド等の非イオン活性剤を併用することもできる。また、殺菌剤、抗菌剤、酸化防止剤、香料、蛍光増白剤やアイロンがけを容易にするシリコーン等やエタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの溶剤や、食塩、塩化アンモニウム、塩化カルシウムなどの水溶性塩を添加しても良い。
【0014】本発明に用いられる基体(C) としては(A) 成分及び(B) 成分を担持出来るものであれば、材質、形状等は特に限定されず、例えば、シート状や球状のもの等が挙げられる。シート状のものは、布、不織布、紙、スポンジ等で作られた変形しやすいものが好ましい。不織布の繊維としては、ポリエステル、ポリエチレン−ポリプロピレンコンジュゲート繊維、ポリプロピレン繊維、パルプ、レーヨン、及びナイロン繊維等が挙げられる。また、球状のものは、スポンジ、発泡スチロール等の多孔質で形成されたもの及びこれらの球状に形成されたものの上を布や不織布で覆ったもの等が考えられる。本発明に用いられる基体(C) としては布、不織布、紙又はスポンジからなり、シート状のものが好ましく、特に坪量10〜30g/m2の不織布が好ましい。基体(C) に(A) 成分と(B) 成分を担持させる場合は、(A)成分と(B)成分が実質的に混和しない状態にあることが重要で、(A)成分と(B)成分を別々に基体(C)に担持させる必要がある。このため、(A) 成分と(B) 成分を基体(C) に担持させる場合の例としては、一枚のシートに(A) 成分と(B) 成分を交互に帯状に担持させたり、(A) 成分と(B) 成分を別々のシートに担持させる方法がある。好ましい担持方法の例としては、浴中での浸漬法、プリント法、スプレー法等が挙げられる。また、基体の材質によっては、基体形成時に(A) 成分と(B) 成分をそれぞれ混入し形成したり、(A) 成分と(B) 成分をそれぞれ揮発性溶剤、例えばエタノール等で希釈し、それぞれ基体に担持した後溶剤を除去する方法を用いることもできる。(A) 成分と(B) 成分は、その合計量が洗濯衣料1kgに対し、0.2 〜20g、好ましくは0.5〜5gになるように基体(C) に担持される。
【0015】本発明の衣料用柔軟仕上げ剤は上記の(A) 成分と(B)成分を担持する基体(C)を、pH10〜11の水溶液中で実質上溶解し得るポリマー(D) で被覆して得られる。ポリマー(D) の好適な例としては次のようなものが挙げられる。即ち、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸等のアクリル酸系高分子、ポリビニルピロリドン系重合物、ポリスチレンスルホン酸系重合物又はこれらの塩である。通常の洗剤を用いた場合、洗濯水のpHは10〜11であり、(D) 成分のポリマーはこのpH領域で実質的に溶解する化合物を用いる必要があり、好ましくは当該pH領域において、通常の洗濯時間である10〜30分間に溶解するポリマーである。又、洗濯液に溶解した(D) 成分は洗濯工程の中で汚れが洗濯物に付着するのを防ぐ効果も有するため、洗浄効果も向上させる。
【0016】本発明の衣料用柔軟仕上げ剤において、(A) 成分と(B) 成分の重量比は、(A)/(B) =95/5〜50/50、好ましくは80/20〜50/50、特に好ましくは75/25〜60/40である。また、(D) 成分は洗濯時に溶解する量を被覆するのが好ましく、通常は(A) 成分と(B) 成分の総量とpH10〜11で実質上溶解し得るポリマー(D) の重量比が〔 (A)+(B) 〕/ (D)=98/2〜50/50である。
【0017】
【発明の効果】本発明の衣料用柔軟仕上げ剤は、洗剤と一緒に使用しても充分な柔軟効果が得られる。特に、近年急速に普及してきている全自動洗濯機を用いる場合に、最初に洗剤と共に本発明の柔軟仕上げ剤を投入するだけで、洗浄効果と柔軟効果が発現し、従来のすすぎ時に使用する柔軟仕上げ剤に比べ、入れ忘れによるミスを防止でき、また、すすぎ時に柔軟仕上げ剤を投入しなければならないという手間を省くことができ、洗濯及び仕上げのトラブルがなくなる。
【0018】
【実施例】以下に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】実施例1〜20及び比較例1〜4〔試験用サンプル〕表1に示した(A) 成分と、表2に示した(B) 成分を表3に示す重量比で用い、これらが混ざらないように、1m2当たり50gの担持量になるよう重量20g/m2のポリエステル繊維製不織布に塗布し、乾燥後、表3に示すアルカリ可溶性ポリマー(D) が2g /m2となるようにプリントコートさせる。これを20cm×20cmに切断し、種々の試験用サンプルを得た。
【0020】
【表1】


【0021】
【表2】


【0022】〔洗浄/柔軟処理〕全自動洗濯機(日立(株)製「静御前」4.5kg 用)を用いて、市販の木綿タオル1kg、アクリルジャージー1kg、泥汚染布5枚、カーボン/油汚染布5枚、上述の柔軟仕上げ剤の試験用サンプル1枚、及び市販洗剤「アタック」(花王(株)製)30gを入れ 3.5°DH硬水中にて、標準サイクルで洗浄した。尚、洗濯水のpHは10.2であった。洗浄力はいずれの場合も、柔軟仕上げ剤の試験用サンプルを使用しない場合と同等又は上回るものであった。
〔柔軟性の評価方法〕上記方法で処理した布を室内で風乾後、25℃、65%RHの恒温恒湿室にて24時間放置した。これらの布について柔軟性の評価を行った。柔軟性の評価は、ジ水素添加牛脂アルキルジメチルアンモニウムクロライド15重量%からなる柔軟剤10ccですすぎ時に柔軟処理した布を対照にして一対比較を行った。評価基準は次のように表す。
+2;対照より柔らかい+1;対照よりやや柔らかい0;対照と同じ−1;対照の方がやや柔らかい−2;対照の方が柔らかい
【0023】
【表3】


【0024】結果は表3に示した通り、すすぎ時に従来の柔軟剤を添加した対照と同等又はそれ以上の柔軟性を示し、洗濯工程の後半のすすぎ時に柔軟仕上剤を別個に投入するという手間を省くことが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記の(A) 成分と(B) 成分を実質的に混和しない状態で担持する基体(C) を、pH10〜11の水溶液中で実質上溶解し得るポリマー(D) で被覆してなる衣料用柔軟仕上げ剤。
(A) :長鎖親油基を1〜2個有するアミン又はその中和塩若しくは第4級化物から選ばれる1種又は2種以上の水溶性の含窒素化合物。
(B) :長鎖親油基を1個有するカルボン酸塩、長鎖親油基を1個有するスルホン酸塩、長鎖親油基を1個有する硫酸エステル塩及び長鎖親油基を1個有するリン酸エステル塩から選ばれる1種又は2種以上の水溶液のアニオン性界面活性剤。
【請求項2】 (A) 成分が次の (1)〜(7) で示されるアミン化合物又はこれらの中和塩若しくは第4級化物である請求項1記載の衣料用柔軟仕上げ剤。
【化1】


〔式中、R1:炭素数12〜22のアルキル基又はアニケニル基R2,R3,R4,R6:水素、炭素数1〜4のアルキル基又は
【化2】


Y, Z:水素又はメチル基で何れか一方は必ず水素p :1〜3R5:炭素数11〜21のアルキル基又はアニケニル基m :2〜3n :1〜5を意味する。〕
【請求項3】 (B) 成分が次の一般式 (8)〜(15)で示される化合物である請求項1又は2記載の衣料用柔軟仕上げ剤。
【化3】


〔式中、R7 :炭素数7〜19の炭化水素基R8 :水酸基を有していてもよい炭素数8〜20の炭化水素R9 :水酸基を有していてもよい炭素数6〜18の炭化水素R10:メチル基又はエチル基R11:炭素数6〜16の炭化水素基R12:炭素数6〜10の炭化水素基M,Q:水素又はアルカリ金属Y,Z:水素又はメチル基、但し一方は必ず水素q :1〜10n :1〜8を意味する。〕
【請求項4】 基体(C) の材質が布、不織布、紙又はスポンジである請求項1〜3の何れか1項記載の衣料用柔軟仕上げ剤。
【請求項5】 pH10〜11の水溶液中で実質上溶解し得るポリマー(D) がカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン系重合物及びポリスチレンスルホン酸系重合物、又はこれらの塩からなる群から選ばれた一種又は二種以上である請求項1〜4の何れか1項記載の衣料用柔軟仕上げ剤。
【請求項6】 (A) 成分が窒素原子を2〜6個有する化合物である請求項1〜5の何れか1項記載の衣料用柔軟仕上げ剤。
【請求項7】 (A) 成分と(B) 成分の重量比が、(A) /(B) =95/5〜50/50、且つ(A) 成分と(B) 成分の総量とpH10〜11の水溶液中で実質上溶解し得るポリマー(D) の重量比が〔 (A)+(B) 〕/ (D)=98/2〜50/50である請求項1〜6の何れか1項記載の衣料用柔軟仕上げ剤。