説明

衣料用洗剤組成物

【課題】ワイシャツやブラウス等の襟や袖の部分などに付着する皮脂汚れに対する洗浄力に優れ、特に低温水での洗浄力、水溶解性に優れた衣料用洗剤組成物を提供する。
【解決手段】衣料用洗剤組成物は、成分(A)の界面活性剤を10〜50wt%、成分(B)のアミノ酸から誘導されたキレート能を持つ化合物を1〜50wt%、成分(C)の有機酸を2〜10wt%、及び、成分(D)のアルカリ剤を10〜70wt%含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用洗剤組成物に関し、ワイシャツ・ブラウス等の襟・袖等に付着する皮脂汚れに対する洗浄力に優れ、特に低温水での洗浄力、水溶解性に優れた衣料用洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の衣料用洗剤は、一般的に、汚れを可溶化・分散させる界面活性剤、洗浄力の低下の原因となる水中のマグネシウムやカルシウム等を取り除く金属イオン封鎖剤(キレート剤、水軟化剤)、汚れの溶解・分散性を向上させるアルカリ剤、及び、汚れの分散・再付着を抑える高分子化合物等の成分により構成されている。
衣料用洗剤には、主要な界面活性剤として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムが配合されているものが多いが、皮脂汚れ等の油性汚れに対してノニオン界面活性剤が比較的低濃度で臨界ミセルを形成しやすいことや浸透性が優れていること等の理由で、その使用割合が増えてきている。また、天然系アルコールを主原料として使用したノニオン界面活性剤は生分解度が高いので環境負荷が低く、また、水中のカルシウム等の硬度成分による影響も受けにくいという特長を有している。
また、水軟化剤としてはトリポリリン酸ナトリウム等のリン化合物が配合されていたが、河川や湖水での富栄養化の原因の一つとして懸念されており、洗剤の無リン化への改良に伴い、結晶性のゼオライト(結晶性アルミノ珪酸塩)が、価格面でのメリットもあって一般的に使用されるに至っている。
このゼオライトは、層状の結晶性珪酸塩と同じく最も汎用されている無リン系水軟化剤であるが、金属封鎖の機構がイオン交換によるものであることから、低水温等の条件下における洗浄力の不足が問題になっている。
また、ゼオライトは洗剤の粉末物性(固結性)を改善し、表面改質剤としての機能を有するが、水不溶性で他のアルカリビルダーと経日変化(吸湿固化)により結合し、水への分散性を低下せしめ、洗濯後の衣類に洗剤未溶解物が付着する大きな原因となり得るといった問題もある。
このようなゼオライトの性能又は品質上の問題点から、最近では高生分解性で水溶性の有機系キレート剤の開発が進められている。例えば、特許文献1では、N,N−ビス(カルボキシルメチル)セリン塩、特許文献2及び特許文献3では、N,N−ビス(カルボキシルメチル)グルタミン酸塩を特定量配合する洗剤組成物がそれぞれ開示されている。
【特許文献1】特開平11−35982号公報
【特許文献2】特開平11−35983号公報
【特許文献3】特開平11−50094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような従来から使用されている有機系ビルダーは、生分解性が高く硬度成分の捕捉能に優れ、界面活性剤やアルカリ剤との併用により皮脂洗浄力が向上することが示されているが、ワイシャツやブラウス等の襟・袖部分等の黄ばみの元になる皮脂汚れに対する洗浄性能は未だ不十分であるという問題があり、更なる洗浄力の向上が求められている。
また、洗濯への消費者ニーズに呼応して洗濯機も変化しており、大容量化に伴う低浴比化や洗濯時間の短縮等の洗濯条件の変化等が生じており、さらには冬場の低温水という条件下での使用ということも相俟って、洗剤の溶け残りや洗濯衣類への付着の問題が発生しやすいという厳しい状況にさらされている。衣料用洗剤組成物としては、このような洗濯機の変化に対応し、冬場の低温水という使用条件下においても洗浄力及び水溶解性を改善することが強く求められている。
そこで、本発明は、上記事情及び問題点に鑑みなされたものであり、ワイシャツ・ブラウス等の襟・袖に付着する皮脂汚れに対する洗浄力に優れ、特に低温水での洗浄力及び水溶解性に優れた衣料用洗剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、衣料用洗剤組成物について鋭意研究し、界面活性剤、アミノ酸から誘導されたキレート能を持つ化合物(より具体的には、グリシン−N,N’−ジ酢酸誘導体)、有機酸及びアルカリ剤を特定の比率で含有する衣料用洗剤組成物が上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上記目的を達成するために、本発明に係る衣料用洗剤組成物は、次の成分(A)〜(D):(A)界面活性剤10〜50wt%、(B)アミノ酸から誘導されたキレート能を持つ化合物1〜50wt%、(C)有機酸2〜10wt%、及び、(D)アルカリ剤10〜70wt%を含有することを特徴とする。これによって、ワイシャツ・ブラウス等の襟・袖に付着する皮脂汚れに対する洗浄力に優れ、特に低温水での洗浄力及び水溶解性に優れた衣料用洗剤組成物を実現することができる。
ここで、本発明は、成分(B)のアミノ酸から誘導されたキレート能を持つ化合物が、下記一般式(1)で表されるグリシン−N,N'−ジ酢酸誘導体であるとするのが好ましい。
【0005】
【化2】

(式中、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は塩基性アミノ基を示し、Rは炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基である。)
これによって、皮脂汚れに対する洗浄力と、低温水での洗浄力及び水溶解性とが、より優れたものとなる。
また、成分(B)/成分(C)の配合比率が1.6〜6であるとするのがより好ましい。これによって、衣料用洗剤組成物の洗浄性能が著しく向上するという効果が奏される。
【発明の効果】
【0006】
以上説明したように、本発明に係る衣料用洗剤組成物によれば、ワイシャツ・ブラウス等の襟・袖に付着する皮脂汚れに対する洗浄力に優れ、特に低温水での洗浄力及び水溶解性に優れた衣料用洗剤組成物を実現することができる。
また、成分(B)をグリシン−N,N'−ジ酢酸誘導体とすることによって、衣料用洗剤組成物の皮脂汚れに対する洗浄力と、低温水での洗浄力及び水溶解性とを、より優れたものとすることができる。
さらに、成分(B)と成分(C)とを、特定の配合比率で配合することによって、洗浄性能を著しく向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
本実施の形態に係る衣料用洗剤組成物は、界面活性剤10〜50wt%(A成分)、アミノ酸から誘導されたキレート能を持つ化合物(B成分)、有機酸(C成分)、及び、アルカリ剤(D成分)を含有することを特徴とするものである。
本発明において、A成分の界面活性剤としては、アニオン型又は非イオン型の界面活性剤が配合される。アニオン型界面活性剤としては、炭素数8〜20の直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、1級ないし2級の高級アルコールの硫酸エステル塩、炭素数8〜20の脂肪酸塩、α−オレフィンスルホン塩及びα−スルホ脂肪酸エステル塩が配合される。また、ノニオン型界面活性剤としては、炭素数8〜22のポリオキシアルキレンアルキルエーテル及びポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルアミンアキサイド等が配合される。A成分の界面活性剤は10〜50wt%配合されるのが好ましく、20〜40wt%が洗浄性能的には十分であり、より好ましい。
【0008】
B成分のアミノ酸から誘導されたキレート能を持つ化合物としては、例えば、グリシン−N,N'−ジ酢酸誘導体等が配合される。このとき、グリシン−N,N'−ジ酢酸誘導体は、下記の(1)式で表される。
【0009】
【化3】

(式中、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は塩基性アミノ基を示し、Rは炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基である。)
B成分は組成物中に1〜50wt%配合されるのが好ましい。1wt%未満では十分な洗浄効果が得られず、50wt%を超えると粉末物性の点で製造が困難になるからである。この種のキレート剤は、他のキレート剤であるEDTAや上記特許文献1(特開平11−35982号公報)のN,N−ビス(カルボキシルメチル)セリン塩、上記特許文献2(特開平11−35983号公報)及び上記特許文献3(特開平11−50094号公報)のN,N−ビス(カルボキシルメチル)グルタミン酸塩と比較して、キレート能力が高い為、洗濯中に生成される脂肪酸金属塩(スカム)の抑制効果に優れ、特にpH10〜11の洗濯液中での洗浄性能が向上される。
【0010】
C成分の有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸等が配合される。有機酸は、B成分との併用系において2〜10wt%配合されるのが好ましい。2wt%未満では十分な洗浄効果が得られず、10wt%を超えると洗剤使用濃度における洗濯液のpH値が極端に低くなり、洗浄力が低下するからである。なお、7wt%を超えても洗剤使用濃度における洗濯液のpH値が低くなることがあるので、2〜7wt%配合されるのがより好ましい。
また、B成分との配合比率においては、B成分/C成分の配合比率が1.6〜6となる組成において洗浄性能が最も向上し、望ましい。B成分と有機酸との併用については、有機酸のみ使用した場合においては洗浄力の低下が見られるものの、B成分と特定の配合比率で併用した場合、pH10〜11の洗濯液中での洗浄性能が著しく向上する。しかし、上記B成分/C成分の配合比率が1.6未満においては、キレート能が低下したり、有機酸の配合比率が向上しpH値が低くなる状況が起きて洗浄効果が低減したりする。また、上記B成分/C成分の配合比率が6を超えると、B成分のキレート能向上による洗浄性能の向上が顕著に見られない上、有機酸の配合比率の低下により相乗効果が低くなり、洗浄効果が低減することになる。
【0011】
D成分のアルカリ剤としては、重灰や軽灰等の炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属炭酸塩が配合される。アルカリ剤は10〜70wt%配合されるのが好ましく、10wt%未満では皮脂汚れに対する洗浄力が十分に得られず、70wt%を超えると吸湿性が高くなり、品質上(例えば、固結性等)の問題が生じる。
【0012】
本発明の衣料用洗剤組成物は、上記のA成分、B成分、C成分及びD成分の必須成分以外に下記のような他の任意成分を配合することができる。
A成分以外の界面活性剤として、第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤も配合することができる。
B成分として例示したグリシン−N,N'−ジ酢酸誘導体以外の有機系キレート剤として、グルタミン酸ニ酢酸塩、アスパラギン酸ニ酢酸塩、セリンニ酢酸塩等のアミノ酸系誘導化合物も配合することができる。
その他のビルダーとしては、ポリアクリル酸、マレイン酸またはそれらのコポリマーの塩等のポリカルボン酸塩、硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等の有機系金属イオン封鎖剤、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドン(PVP)等の分散剤、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系繊維改質剤(保護剤)、過炭酸ナトリウム等の漂白剤、プロテアーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、アミラーゼ等の酵素、ホウ素化合物等の酵素安定剤、スチルベン型及びビフェニル型の蛍光増白剤、香料等の公知の成分を配合することができる。
製造方法としては、従来公知の製造方法を使用することができ、その製造条件は組成に応じて最適な条件を当業者によって選択される。
【実施例】
【0013】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
表2に示す配合組成物を調製し、皮脂洗浄力の評価を下記の方法により実施した。それぞれの結果については同表2に示す。
(1)モデル皮脂/カーボン汚れ汚染布
下記の表1で示す汚垢成分で汚染(浸漬方式:水溶媒)した人工汚染布(湿式人工汚染布:洗濯科学協会製、大きさ5×5cm綿100%)を用いた。
【0014】
【表1】

(2)洗浄条件及び評価方法
洗濯機(パルセータ式、6L容量)に上記の人工汚染布3枚を固定した綿布下地(大きさ30×70cm)を投入し、洗浄した。
洗浄条件は下記の通りである。
洗浄液濃度:0.043%、洗浄温度:25℃、使用水硬度:38ppm(全硬度)、洗浄時間:10分、すすぎ:水道水(常温)で3分間
洗浄力の評価方法は下記の通りである。
汚垢汚染前の原布及び洗浄前後における汚染布550nm波長光の反射率を色差計により測定し、下記の式により洗浄効率(%)を求め、3枚の人工汚染布の平均値を洗浄力として示した。
(式1)
洗浄効率(%)=(洗浄後の反射率−洗浄前の反射率)/(原布(汚染前の布)の反射率−洗浄前の反射率)
【0015】
【表2】

なお、表2中の記号は以下の意味である。
AE−1:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル。AE−2:ポリオキシエチレンアルキルエーテル。脂肪酸塩:ヤシ油脂肪酸ナトリウム。MGDA:メチルグリシン二酢酸三ナトリウム。酵素:蛋白質分解酵素、脂質分解酵素、繊維素分解酵素。
表2から、本発明品1〜6は、皮脂汚れに対する洗浄力に極めて優れており、低水温下でもその洗浄力は優れていることが判る。
これに対して、本発明の必須成分が配合されていない比較品1〜4は、皮脂汚れに対する洗浄力に劣ること、及び、低水温下におけるその洗浄力は極めて低下することが判る。
また、本発明の必須成分が配合されていても、本発明の組成(重量%)を満たさず(C成分)、本発明の配合比率(B成分/C成分)を満たさない比較品5及び6も、皮脂汚れに対する洗浄力に劣り、低水温下における洗浄力が極めて低下することが判る。
【0016】
(実施例2)
表2の本発明品1〜6、比較品1に示す配合組成物を調製し、洗剤衣類付着性評価を下記の条件で実施した。評価結果については、表2に示した。
(1)洗浄条件
洗浄液濃度:0.05%、洗浄温度:25℃、使用水硬度:38ppm(全硬度)、洗濯浴比:8(3.8kg/30L−水、衣類は綿及びポリエステル製を使用)、全自動洗濯機(松下電器産業株式会社製)で洗浄(洗浄時間11分)した。
(2)洗剤衣類付着評価
洗濯後の衣類上の洗剤(未溶解物)付着物の有無を目視で判定した。判定結果をそれぞれ表2中に○(衣類付着物なし)、×(衣類付着物あり)で示した。
表2から、本発明品1〜6は、衣類付着物が見られず、水溶解性に優れていることが判る。
これに対して、本発明の必須成分が配合されていない比較品1は、衣類付着物が見られ、本発明品と比して水溶解性に劣ることが判る。
ここまで本発明に係る衣料用洗剤組成物について、実施の形態及び実施例に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態や実施例に限定されるものではなく、その範囲を逸脱することなく本発明の趣旨に沿って種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明に係る衣料用洗剤組成物は、ワイシャツやブラウス等の襟・袖部分等に付着する皮脂汚れを洗浄する衣料用洗剤等に適用することができ、特に、冬場のような低水温下での洗濯での使用等に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)〜(D):
(A)界面活性剤10〜50wt%
(B)アミノ酸から誘導されたキレート能を持つ化合物1〜50wt%
(C)有機酸2〜10wt%
(D)アルカリ剤10〜70wt%
を含有することを特徴とする衣料用洗剤組成物。
【請求項2】
成分(B)のアミノ酸から誘導されたキレート能を持つ化合物が、下記一般式(1)で表されるグリシン‐N,N'‐ジ酢酸誘導体である
ことを特徴とする請求項1記載の衣料用洗剤組成物。
【化1】

(式中、Mは水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は塩基性アミノ基を示し、Rは炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基である。)
【請求項3】
成分(B)/成分(C)の配合比率が1.6〜6である
ことを特徴とする請求項1又は2記載の衣料用洗剤組成物。


【公開番号】特開2007−137929(P2007−137929A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−329776(P2005−329776)
【出願日】平成17年11月15日(2005.11.15)
【出願人】(397056042)攝津製油株式会社 (4)
【Fターム(参考)】