説明

衣料用液体柔軟剤組成物

【課題】 高温で長期保管された場合でも、外観の変色が抑制され、且つ衣料に対して香りを賦与し、その香りを長時間持続することができる、衣料用液体柔軟剤組成物の提供。
【解決手段】 下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を含有し、(b)成分の含有量が0.004〜0.5質量%であり、(c)成分の含有量が4〜30質量%である、衣料用液体柔軟剤組成物。
(a)成分:LogPが3.0以上のアルデヒド香料を含有する香料組成物
(b)成分:2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)・1/3クエン酸塩、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、及び4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンから選ばれる1種以上の酸化防止剤
(C)成分:分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜29の炭化水素基を少なくとも1個有するアミン化合物、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる少なくとも1種

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣料用液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、着色、変色、着香等に対する安定化剤として酸化防止剤を用いることは周知であり、香料組成物の安定化にも通常用いられている。例えば、特許文献1及び2には、香りや色調の安定化に2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを使用することが記載されている。また、特許文献1にはアルデヒド香料を含有する香料組成物が柔軟組成物に用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−211230号公報
【特許文献2】特開2004−131680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、香りへの嗜好が高まっており、衣料用液体柔軟剤に求められる特性として、衣類などの繊維製品に対して香りを賦与し、その香りを長時間持続することが望まれている。香りのバリエーションを拡げる点から、アルデヒド香料が多用される傾向にある。例えば特許文献1の段落〔0097〕〔表1〕には、柔軟剤組成物に使用される香料が記載されており、アルデヒド香料を含有している(例えば香料d−1中のアニスアルデヒド及びヘキシルシンナミックアルデヒド等)。特にLogPが高いアルデヒド香料(例えば、LogPが3.0以上のアルデヒド香料)を含有する衣料用液体柔軟剤で処理された衣料は、香りの持続性が向上することを見出した。しかしながら、LogPが3.0以上のアルデヒド香料を含有する衣料用液体柔軟剤組成物は、高温条件下、とりわけ40℃で保管されると、該組成物を用いて衣料を処理しても、香りの持続性が劣ることが明らかとなった。
【0005】
一方、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを用いて、香りの安定性を向上させることは良く行われている。例えば特許文献1の段落〔0097〕〔表1〕の香料d−1中には2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンの別称であるジブチルヒドロキシトルエンが含有されている(香料d−1中のNo.45の成分)。ところが、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンを添加した衣料用液体柔軟剤組成物は、高温(とりわけ40℃)で保管されると、外観が変化(変色)する課題が見出された。特に、LogPが3.0以上のアルデヒド系香料を特定割合で含有する香料組成物が共存すると、変色の度合いが大きくなることが判明した。
【0006】
従って、本発明の課題は、高温(とりわけ40℃)で長期保管された場合でも、外観の変色が抑制され、且つ衣料に対して香りを賦与し、その香りを長時間持続することができる、衣料用液体柔軟剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を含有し、(b)成分の含有量が0.004〜0.5質量%であり、(c)成分の含有量が4〜30質量%である、衣料用液体柔軟剤組成物を提供する。
(a)成分:LogPが3.0以上のアルデヒド香料を含有する香料組成物
(b)成分:2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)・1/3クエン酸塩、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、及び4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンから選ばれる1種以上の酸化防止剤
(C)成分:分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜29の炭化水素基を少なくとも1個有するアミン化合物、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる少なくとも1種
【0008】
(b)成分の酸化防止剤の分子式及び分子量を以下に示すが、いずれも一般的な酸化防止剤として知られている、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエンの分子量220(分子式:C1524O)よりも大きく、LogPが3.0以上の疎水性の高いアルデヒド香料の近傍に存在しやすいことから、前記課題を解決するすることができるものと考えられる。
・2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)
分子式:C3046、分子量:439
・トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)・1/3クエン酸塩
分子式:C19NO・1/3(C)、分子量:237
・ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
分子式:C2852(酸型)、分子量:481
・4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
分子式:C3031N、分子量:406
【発明の効果】
【0009】
本発明の衣料用液体柔軟剤組成物によると、高温で長期保管された場合でも、外観の変色が抑制され、且つ衣料に対して香りを賦与し、その香りを長時間持続することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いたアルデヒド香料の具体的香料成分の名称は、「香料と調香の基礎知識」中島基貴著、産業図書(株)発行 第2刷(1996年5月30日)の記載に従った。
【0011】
<(a)成分>
本発明に用いられる(a)成分は、LogPが3.0以上のアルデヒド香料を含有する香料組成物を意味する。ここでLogPとは、化合物の1−オクタノール/水分配係数で、f値法(疎水性フラグメント定数法)により計算で求められた値をいう。具体的には、化合物の化学構造を、その構成要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数(f値)を積算して求めることができ、CLOGP3 Reference Manual Daylight Software 4.34, Albert Leo, David Weininger, Version1, March 1994を参考にすることができる。
中でも、本発明の効果、すなわち高温条件下で保存(とりわけ40℃保存)しても、香りの持続性の低下を抑制する効果、また、衣料用液体柔軟剤の外観の変化を抑制する効果をより享受できる観点から、LogPが3.5以上のアルデヒド香料が好ましく、LogPが4.0以上のアルデヒド香料がより好ましい。
【0012】
アルデヒド香料成分としては、脂肪族アルデヒド香料、テルペン系アルデヒド香料、芳香族アルデヒド香料が好ましく、そのほか、マイラックアルデヒド(3.87)、ベルンアルデヒド(4.88)、ボロナール(4.72)、セトナール(4.86)、マンダリンアルデヒド(4.99)及びマセアール(3.6)も好ましい。中でも、テルペン系アルデヒド香料及び芳香族アルデヒド香料がより好ましく、芳香族アルデヒド香料が更に好ましい。
【0013】
LogPが3.0以上の脂肪族アルデヒドとしては、例えばアルデヒドC−111(4.05)、トリメチルウンデセナール(5.16)等が好ましい。
【0014】
LogPが3.0以上のテルペン系アルデヒドとしては、例えばシトラール(3.12)、シトロネラール(3.26)等が好ましい。
【0015】
LogPが3.0以上の芳香族アルデヒドとしては、例えばα−アミルシンナミックアルデヒド(4.32)、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.85)、シクラメンアルデヒド(3.5)、リリアール(3.86)等が好ましい。
【0016】
これらの中でも、α−アミルシンナミックアルデヒド(4.32)、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.85)、リリアール(3.86)、シクラメンアルデヒド(3.5)、マイラックアルデヒド(3.87)が好ましく、α−アミルシンナミックアルデヒド(4.32)、α−ヘキシルシンナミックアルデヒド(4.85)がより好ましい。
【0017】
本発明の効果をより享受できる観点から、香料組成物中のLogPが3.0以上のアルデヒド香料の含有量は10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、25質量%以上が更に好ましい。香りのバリエーションの観点から、(a)成分中のLogPが3.0以上のアルデヒド香料の含有量は90質量%以下が好ましい。
【0018】
その他の香料成分
本発明の(a)成分は、本発明の効果を妨げない程度において、LogPが3.0以上のアルデヒド香料以外の香料成分を含有しても良い。
【0019】
例えば、ヘリオトロピン(1.138)、ヘリオナール(1.387)、バニリン(1.275)、アニスアルデヒド(1.779)、エチルバニリン(1.804)、メチルバニリン(1.35)、クミンアルデヒド(2.922)、ベンズアルデヒド(1.495)、リラール(2.15)、センテナール(0.924)、ペリラアルデヒド(2.626)、ヒドロキシシトロネラール(1.64)などの、LogPが3.0未満のアルデヒド香料を挙げることができる。
【0020】
また、アルデヒド香料以外の香料成分も含有して良く、例えばサリチル酸シクロヘキシル(4.476)、イソ・イー・スーパー(ISO E SUPER)(4.65)、2−メチル−4−(2,2,3−トリメチル−3−シクロペンテン−1−イル)−2−ブテン−1−オール(3.9)、テトラヒドロリナロール(3.517)、シトロネロール(3.25)、酢酸トリシクロデセニル(2.357)、ジヒドロジャスモン酸メチル(2.419)、テルピネオール(2.6)、ゲラニオール(2.77)、リナロール(2.55)、ミルセノール(2.61)、ネロール(2.77)、シス−ジャスモン(2.64)、フェニルエチルアセテート(2.13)、アリルアミルグリコレート(2.51)、リファローム(2,2,6,6)、シス−3−ヘキシルアセテート(2.34)、スチラリルアセテート(2.27)、o−t−ブチルシクロヘキサノン(2.27)、p−t−ブチルシクロヘキサノン(2.27)、アセチルオイゲノール(2.83)、シンナミルアセテート(2.35)、オイゲノール(2.40)、イソオイゲノール(2.58)、モスシンス(2.94)、アニソール(2.06)、メチルオイゲノール(2.78)等を挙げることができる。
【0021】
本発明の(a)成分は、上記香料成分以外に、希釈剤、保留剤を含有することができる。希釈剤、保留剤の好適な例としては、ジプロピレングリコール、パルミチン酸イソプロピルエステル、ジエチルフタレート、ベンジルベンゾエート、流動パラフィン、イソパラフィン、油脂等を挙げることができる。
【0022】
本願記載の(a)成分を含有する柔軟剤組成物の外観変化を抑制する観点から、(a)成分中の香料成分と保留剤の質量比(香料成分/保留剤)は10/0〜2/8が好ましい。
【0023】
<(b)成分>
本発明で用いられる(b)成分は、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)・1/3クエン酸塩、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、及び4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンから選ばれる1種以上の酸化防止剤である。
【0024】
中でも、従来から知られている2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)よりも、1分子内に有する芳香族炭化水素基の数が多いことから、疎水性が高くLogPが3.0以上の疎水性の高いアルデヒド香料の近傍に存在しやすい点、また1分子内に有する芳香族炭化水素基の数がBHTよりも多いために、同じ芳香族基を有する芳香族アルデヒド香料の近傍に存在しやすい点から、(b)成分としては、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが香りの持続性向上及び外観変化抑制の点で好ましい。
【0025】
<(c)成分>
本発明の(c)成分は、分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜29の炭化水素基を少なくとも1個有するアミン化合物、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる少なくとも1種であり、好ましくは分子内にエステル基又はアミド基で分断された総炭素数12〜29の炭化水素基を少なくとも1個有するアミン化合物、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる少なくとも1種である。
【0026】
LogPが3.0以上のアルデヒド香料に由来する香りの持続性の点で好ましい(c)成分は、下記一般式(1)で表される第3級アミン、その酸塩又はその4級化物から選ばれる少なくとも1種である。
【化1】


〔式中、Ra1基は、エステル基又はアミド基で分断された総炭素数12〜29の炭化水素基であり、Ra2基及びRa3基はそれぞれ独立に、Ra1基、炭素数1〜3のアルキル基、又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である。〕
【0027】
一般式(1)で表されるアミン化合物は、下記一般式(2)で表されるアミン(c1)と、炭素数8〜26の脂肪酸又は脂肪酸低級アルキル(アルキル基の炭素数1〜3)エステル(c2)とを、エステル化反応、アミド化反応、又はエステル交換反応させて得ることができる。また、その酸中和物は、無機酸若しくは有機酸を用いてさらに中和反応させることにより、また、その4級化物は、アルキル化剤を用いてさらに4級化反応させることにより得ることができる。
【0028】
【化2】


〔式中、X、Y、Zはそれぞれ独立に水素、ヒドロキシ基、1級アミノ基及び2級アミノ基から選ばれる基であり、X、Y、Zの少なくとも一つはヒドロキシ基である。R21、R22、R23はそれぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキレン基である。]
【0029】
一般式(2)で表される化合物の好ましい具体例としては、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(3−アミノプロピル)アミン、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミン、N,N−ジメチル−N−(3−アミノプロピル)アミンが挙げられる。
【0030】
(c)成分の製造に用いられる上記(c2)成分に関しては、種々の炭素数範囲及び飽和脂肪酸/不飽和脂肪酸のモル比率を有する脂肪酸又は脂肪酸低級アルキルエステルを得るために、通常油脂便覧等で知られているような脂肪酸を用いるだけでは達成できない場合は、不飽和結合への水素添加反応、不飽和結合の異性化反応、または蒸留操作、ボトムカット、トップカットによるアルキル鎖長の調整、あるいは複数の脂肪酸の混合により得ることができる。
【0031】
(c2)成分の具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の飽和もしくは不飽和脂肪酸又はその低級アルキルエステル;牛脂、豚脂、パーム油、大豆油、ナタネ油、サフラワー油、ヒマワリ油、オリーブ油等の天然油脂を分解・精製して得られる脂肪酸又はその低級アルキルエステル(好ましくはメチルエステル又はエチルエステル);並びにこれらの硬化脂肪酸、部分硬化脂肪酸又はそれらの低級アルキルエステル(好ましくはメチルエステル又はエチルエステル)等を挙げることができる。
【0032】
(c2)成分としては、炭素数8〜26、好ましくは炭素数14〜20の脂肪酸又はその低級アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜3)が好適であり、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。本発明において、(c2)成分は、不飽和基を有する脂肪酸又はそれらの低級アルキルエステルを10〜60質量%含有する、炭素数14〜20の脂肪酸又はその低級アルキルエステルが好ましい。
【0033】
一般式(1)で表される化合物の中和に用いられる酸としては、無機酸及び有機酸が挙げられる。好ましい無機酸は、塩酸、硫酸であり、好ましい有機酸は炭素数1〜10の1価又は多価のカルボン酸(例えば、グルコール酸、クエン酸など)、メチル硫酸、エチル硫酸、p−トルエンスルホン酸、(o−、m−、p−)キシレンスルホン酸である。
【0034】
一般式(1)で表される化合物の4級化に用いられるアルキル化剤としては、メチルクロリド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等が挙げられる。
【0035】
<衣料用液体柔軟剤組成物>
本発明の衣料用液体柔軟剤組成物中の(a)成分の含有量は、香りのバリエーションを拡げ、香りの持続性を高める観点から、0.1〜2質量%が好ましい。(b)成分の含有量は、該組成物を高温保存条件下(とりわけ40℃保存)における、香り持続性の低下抑制効果や外観変化抑制効果を奏する観点から、0.004〜0.5質量%であり、より好ましくは0.005〜0.4質量%であり、更に好ましくは0.01〜0.35質量%である。0.004質量%未満では効果が不充分であり、(b)成分の含有量が0.35質量%を超えてくると、高温保存条件下(とりわけ40℃保存)における、香りの持続性の低下抑制効果や外観変化抑制効果が顕著な効果を示しにくくなる。また、0.5質量%を超えると高温保存条件下(とりわけ40℃保存)における、外観変化抑制効果が劣ってくる。また、衣料用液体柔軟剤組成物の白濁を防止すると共に、高温で長期保存した場合にも外観の変色を抑制し且つ衣料に香りを賦与し、(a)成分由来の香りを長時間持続させ得る観点から、(a)成分中のLogPが3.0以上のアルデヒド香料は、(b)成分との質量比〔即ち、[(a)成分中のLogPが3.0以上のアルデヒド香料/(b)成分](質量比)〕で、好ましくは1/20〜30/1、より好ましくは1/10〜15/1、更に好ましくは1/5〜10/1にて衣料用液体柔軟剤組成物中に存在する。
【0036】
本発明の衣料用液体柔軟剤組成物中の(c)成分の含有量は4〜30質量%であり、より好ましくは10〜25質量%である。LogPが3.0以上のアルデヒド香料に由来する香りの持続性の観点から、前記(a)成分中のLogPが3.0以上のアルデヒド香料と(b)成分の合計と、(c)成分との質量比は、[(a)成分中のLogPが3.0以上のアルデヒド香料+(b)成分]/(c)成分=1/5〜1/100が好ましく、より好ましくは1/20〜1/70である。
【0037】
本発明の衣料用液体柔軟剤組成物において、上記(a)成分、(b)成分、(c)成分並びに後述するその他成分を除く成分は水である。水としては、水道水以外に、微量に混入する金属成分を除去したイオン交換水、蒸留水、又は次亜塩素酸塩を0.1〜5ppm含有させた塩素滅菌水などを用いることができる。
【0038】
<その他成分>
本発明の衣料用液体柔軟剤組成物は、保管時の保存安定性を向上させる目的から、非イオン界面活性剤〔以下、(d)成分という〕を含有することが好適である。
【0039】
(d)成分としては、炭素数8〜20の炭化水素基とポリオキシアルキレン基とを有する非イオン界面活性剤が好ましく、下記一般式(3)で表される非イオン界面活性剤から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0040】
4a−A−〔(R4bO)−R4c (3)
〔式中、R4aは、炭素数8〜18、好ましくは炭素数10〜16の炭化水素基であり、R4bは、炭素数2又は3のアルキレン基、好ましくはエチレン基であり、R4cは、炭素数1〜3のアルキル基又は水素原子であり、pは2〜100、好ましくは5〜80、より好ましくは5〜60、更に好ましくは10〜60の数であり、付加形態はランダム付加でもブロック付加でもよい。Aは−O−、−COO−、−CONH−、−NH−、−CON<又は−N<であり、Aが−O−、−COO−、−CONH−又は−NH−の場合qは1であり、Aが−CON<又は−N<の場合qは2である。〕
【0041】
本発明の衣料用液体柔軟剤組成物中の(d)成分の含有量は、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは0.1〜8質量%である。
【0042】
本発明の衣料用液体柔軟剤組成物は、該組成物が高温保存(とりわけ40℃保存)されても、LogPが3.0以上のアルデヒド香料由来に香り持続性の低下をさらに抑制する目的から、金属封鎖剤〔以下、(e)成分という〕を含有することができる。(e)成分としては、下記i)〜ii)から選ばれる1種以上が好適である。
i)ポリカルボン酸、好ましくはクエン酸、りんご酸、コハク酸等。アミノポリカルボン酸、好ましくはエチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、ヒドロキシエチルイミジ酢酸等。
ii)ホスホン酸、好ましくは1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチルホスホン酸等。
【0043】
本発明の衣料用液体柔軟剤組成物中の(e)成分の含有量は、好ましくは0.0005〜0.1質量%、より好ましくは0.01〜0.03質量%である。
【0044】
その他、衣料用液体柔軟剤組成物に一般的に用いられる成分を含有することができる。例えば、衣料に良好な風合いを付与する目的から、シリコーン化合物、例えばジメチルポリシロキサン、4級アンモニウム変性ジメチルポリシロキサン、アミノ変性ジメチルポリシロキサン、アミド変性ジメチルポリシロキサン、エポキシ変性ジメチルポリシロキサン、カルボキシ変性ジメチルポリシロキサン、ポリオキシアルキレン変性ジメチルポリシロキサン、フッ素変性ジメチルポリシロキサン等を含有することができる。また、染料、防腐剤、電解質(例えば、塩化カルシウム等)、消泡効果のある化合物(例えば、消泡シリコーン等)、有機溶剤(例えば、エチレングリコール、グリセリン、エタノール等)を含有することができる。本発明の衣料用液体柔軟剤組成物はまた、炭素数12〜18の脂肪酸を含有することができ、特にラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸が好適である。更に、組成物の貯蔵安定性を向上させる目的から、炭素数2〜6の多価アルコールの脂肪酸(炭素数8〜22)エステル、好ましくはグリセリン又はソルビトールの脂肪酸(炭素数12〜18)エステルを含有することができる。
【0045】
本発明の衣料用液体柔軟剤組成物のpHは好ましくは2〜8、より好ましくは2〜6である。ここで、衣料用液体柔軟剤組成物のpHは、JIS Z8802に準拠した測定方法で衣料用液体柔軟剤組成物の原液のpHを30℃で測定した値である。
【実施例】
【0046】
実施例及び比較例で用いた各成分をまとめて以下に示す。
<(a)成分>
(a−1):α−ヘキシルシンナミックアルデヒド(LogP=4.9)
(a−2):α−アミルシンナミックアルデヒド(LogP=4.3)
(a−3):シクラメンアルデヒド(LogP=3.5)
(a−4):リリアール(LogP=3.9)
(a−5):下記表1に示す香料組成物(a−5)
(a−6):下記表1に示す香料組成物(a−6)
(a−7):下記表1に示す香料組成物(a−7)
<(a’)成分>((a)成分の比較品)
(a’−1):ヘリオナール(LogP=1.4)
(a’−2):下記表1に示す香料組成物(a’−2)
<(b)成分>
(b−1):2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)
(b−2):トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)・1/3クエン酸塩
(b−3):ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート
(b−4):4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
<(b’)成分>((b)成分の比較品)
(b’−1):2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン
<(c)成分>
(c−1):下記合成例1で得られた化合物
(c−2):下記合成例2で得られた化合物
<その他成分>
(d−1):ポリオキシエチレン(平均20モル)ラウリルエーテル
(e−1):エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩
(f−1):塩化カルシウム
【0047】
【表1】

【0048】
合成例1:化合物(c−1)の合成
N−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−N−(3−アミノプロピル)アミン(分子量132)66g(0.5モル)と、ステアリン酸及びパルミチン酸の混合脂肪酸(ステアリン酸/パルミチン酸質量比=6/4、平均分子量273)259g(0.95モル)を、定法に従って脱水縮合させた(反応温度範囲:180〜190℃、圧力範囲:150〜200Torr)。反応の進行は反応物中の未反応の脂肪酸含量を、JIS K 0070記載の試験法に従い、酸価を測定することで追跡し、酸価が5になった時点で反応を終了させた。反応終了後、反応物を70℃まで空冷し、窒素で常圧(760Torr)に戻した。得られた反応生成物中の未反応脂肪酸含量を、前記JISの試験法に従い酸価を測定することで求めた。その結果、未反応脂肪酸含有量は5質量%であった。得られた反応生成物中の残分(即ち、95質量%)が、下記式(1−1)の化合物と下記式(1−2)の化合物を(1−1)/(1−2)質量比=86/14にて含む(c−1)成分であった。
【0049】
【化3】


〔式中、Rは混合脂肪酸からカルボキシル基を除いた残基を示す。〕
【0050】
【化4】


〔式中、Rは前記と同じ意味を示す。〕
【0051】
合成例2:化合物(c−2)の合成
混合脂肪酸(パルミチン酸/ステアリン酸/オレイン酸/リノール酸質量比=30/30/35/5、平均分子量275)195g(0.71モル)と、トリエタノールアミン54.4g(0.37モル)を混合し、180〜185℃(常圧下)で3時間反応させ、次に200mmHgまで減圧し、更に3時間熟成した。その後、窒素で常圧に戻し、100℃まで冷却し脱水縮合物392gを得た。得られた縮合物の酸価(JIS K0070準拠)は0.7mgKOH/g、全アミン価(JIS K2501準拠)は196mgKOH/gであった。次に、この脱水縮合物392gの温度を70〜75℃に調温し、前記脱水縮合物のアミン価を基に、脱水縮合物のアミン当量に対して0.98当量に相当するジメチル硫酸を2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、50〜55℃で更に3時間熟成し、目的の化合物(c−2)を含有する反応生成物を得た。得られた反応生成物の揮発分をJIS K0067の方法に従って測定し、エタノール含有量とした。
【0052】
実施例1〜17及び比較例1〜8
最終の衣料用液体柔軟剤組成物が200gになるように、表2及び表3に示す配合成分を表2及び表3に示す割合で用い、下記方法により表2及び表3に示す組成の衣料用液体柔軟剤組成物を調製した。得られた各組成物について、40℃20日保管後の外観変化(変色)及び香りの持続性を下記方法で評価した。結果を表2及び表3に示す。
【0053】
<衣料用液体柔軟剤組成物の調製>
300mLビーカーに、衣料用液体柔軟剤組成物の出来あがり質量が200gになるのに必要な量の95%相当量のイオン交換水と、(d−1)成分及び場合によっては(e−1)成分の10質量%水溶液を入れ、ウォーターバスで70℃に昇温した。一つの羽根の長さが2cmの攪拌羽根が3枚ついたタービン型の攪拌羽根で攪拌しながら(300r/min)、(c)成分を添加した。そのまま5分攪拌後、(f−1)成分の10質量%水溶液を添加し、10分間攪拌した。pH調整剤として塩酸と48%水酸化ナトリウム水溶液を用いて目標のpHに調整し、所要量の(a)成分と(b)成分を予め混合したプレミックスを添加した。その後10分間攪拌し、5℃の水を入れたウォーターバスにビーカーを移し、攪拌しながら混合物を30℃に冷却し、最後に再度pHを確認し、必要に応じて0.1N塩酸水溶液又は0.1N水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを調整した。表2及び表3の衣料用液体柔軟剤組成物では、(c−1)成分は、ほぼすべて酸塩の状態で組成物中に存在する。なお、表2及び表3中、(c)成分の数値はそれ自体(有効分)の含有量である。
【0054】
<外観変化(変色)の評価法>
上記調製法により各成分を配合した衣料用液体柔軟剤組成物を40℃にて20日保管後、5人のパネラーにより目視観察し、下記基準で外観変化(変色)を判定した。表2及び表3には、5人のパネラーの平均値を示し、2.0以上が合格値である。
【0055】
評価基準:
3:配合直後から外観変化(変色)がない
2:外観がわずかに変化(わずかに変色)(許容範囲内)
1:外観が変化(変色)(許容範囲外)
0:外観が著しく変化(著しく変色)(許容範囲外)
【0056】
<香りの持続性の評価法>
(1)試験サンプルの調製
上記調製法により各成分を配合した衣料用液体柔軟剤組成物をガラス製規格瓶(No.6)に入れ、恒温槽内で40℃にて20日間保管し、試験サンプルを調製した。また、40℃にて20日間保管する代わりに、5℃にて24時間保管することで、基準サンプルを調製した。
(2)残香性の評価
市販木綿タオル(綿100%)2kgを全自動洗濯機(ナショナルNA-F70E)に
入れ、市販の弱アルカリ性洗剤(花王(株)製アタック)で洗濯後、2回目の濯ぎ時に、上記試験サンプル又は基準サンプルを用いて柔軟処理を行った(標準コース、洗剤濃度0.00667質量%、柔軟剤量10ml、水道水40L使用、水温20℃)。その後、タオルを25℃、40%RH条件下で自然乾燥させ、そのまま3日間放置した。3日放置後のタオルの残香性を、10人のパネラー(30代男性10人)により下記の基準で判定した(下記基準では、試験サンプルで処理した木綿タオルを試験タオル、基準サンプルで処理した木綿タオルを基準タオルとする)。表2及び表3には、10人のパネラーの平均値を示し、2.0以上が合格値である。
【0057】
評価基準:
3:試験タオルの香りは、基準タオルの香りと同程度である
2:試験タオルの香りは、基準タオルの香りよりもやや弱い(許容範囲内)
1:試験タオルの香りは、基準タオルの香りよりも弱い(許容範囲外)
0:試験タオルからは香りが殆どしない(許容範囲外)
【0058】
【表2】

【0059】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分、(b)成分、(c)成分及び水を含有し、(b)成分の含有量が0.004〜0.5質量%であり、(c)成分の含有量が4〜30質量%である、衣料用液体柔軟剤組成物。
(a)成分:LogPが3.0以上のアルデヒド香料を含有する香料組成物
(b)成分:2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェノール)、トリス(テトラメチルヒドロキシピペリジノール)・1/3クエン酸塩、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、及び4,4’−ビス(α,α−ジメチルベンジル)ジフェニルアミンから選ばれる1種以上の酸化防止剤
(C)成分:分子内にエステル基又はアミド基で分断されていても良い総炭素数12〜29の炭化水素基を少なくとも1個有するアミン化合物、その酸塩、及びその4級化物から選ばれる少なくとも1種
【請求項2】
前記(a)成分中のアルデヒド香料のLogPが3.5以上である、請求項1記載の衣料用液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
前記(a)成分中のアルデヒド香料が芳香族アルデヒド香料である、請求項1記載の衣料用液体柔軟剤組成物。
【請求項4】
前記(a)成分中のアルデヒド香料の含有量が10質量%以上である、請求項1〜3の何れか1項記載の衣料用液体柔軟剤組成物。

【公開番号】特開2011−137252(P2011−137252A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−296818(P2009−296818)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】