説明

衣料装着用冷却シート

【課題】人体の皮膚等の冷却対象部位に触れても、べたつかず、冷却及び保冷効果に優れた衣料に装着するための冷却シートの提供。
【解決手段】少なくともゲル基体層、支持体層、及び粘着層を有し、かつこの順で積層された層構造を有する、ゲル基体層の他の層が接していない側の表面の一部又は全部と冷却対象部位が、直接触れるように装着して使用する衣料装着用冷却シートであって、ゲル基体層がポリビニルアルコールを含む冷却用組成物から形成され、ポリビニルアルコールを、冷却用組成物中、0.5〜5重量%含む衣料装着用冷却シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水の潜熱を利用して対象部位を冷却することのできる、衣料に装着して使用する冷却シートに関する。
【背景技術】
【0002】
夏場のような気温の高い環境下において、冷感により暑さを和らげる方法が古くから求められている。また、そのような暑さを感じる感覚をコントロールする上で、さまざまな製品の開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1〜4では、人体の皮膚等に直接的に貼り付け、水の潜熱を利用して、対象部位を冷却する冷却シートが知られている。このような冷却シートの人体の皮膚等と直接触れるゲル基体には、剥がれ落ちないようにするために、適度な粘着性が必要となる。このゲル基体の粘着性により、べたつき感が発生してしまい、使用時に不快感を与えてしまう傾向にある。
【0004】
また、当該冷却シートを長時間使用した場合、人体の皮膚の感覚が冷却シートによる冷却効果に慣れてしまい、水分蒸発の際の蒸発潜熱が十分得られているにも関わらず、実際には、冷却効果が満足に得られていないと感じることがある。
【0005】
さらに、特許文献5では、肌側支持体、ゲル基体である中間基材、及び衣類側支持体を含む冷却シートが開示されており、当該衣類側支持体には粘着層を設け、衣類等に装着し使用する形態をとる冷却シートが開示されている。当該冷却シートは、衣類の内側に貼り付け、肌に直接冷却シートを貼り付けなくとも清涼感や冷却効果が得られるというものである。さらに、ゲル基体である中間基体が直接肌に触れないような構成をとるため、べたつき感を抑制し、中間基体に含まれる揮発性物質による清涼感由来の痛みが生じることを抑制できる。しかしながら、ゲル基体である中間基体の表面上には、肌側支持体によって被覆されているために、冷却効果は十分に得ることができない、という問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−290051号公報
【特許文献2】特開平10−258078号公報
【特許文献3】特開2002−241747号公報
【特許文献4】特開2005−211528号公報
【特許文献5】特開2010−284519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、人体の皮膚等の冷却対象部位に触れても、べたつかず、冷却及び保冷効果に優れた、衣料に装着するための冷却シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねていたところ、少なくともゲル基体層、支持体層、及び粘着層を有し、かつこの順で積層された層構造において、ゲル基体層を形成する冷却用組成物中に、ポリビニルアルコールを特定割合で含有させることにより、人体の皮膚等の冷却対象部位に触れても、べたつかず、十分に冷却効果が得られることを知見した。本発明は、このような知見に基づき完成されたものである。
【0009】
項1.少なくともゲル基体層、支持体層、及び粘着層を有し、かつこの順で積層された層構造を有する、ゲル基体層の他の層が接していない側の表面の一部又は全部と冷却対象部位が、直接触れるように装着して使用する衣料装着用冷却シートであって、
ゲル基体層がポリビニルアルコールを含む冷却用組成物から形成され、ポリビニルアルコールを、冷却用組成物中、0.5〜5重量%含む衣料装着用冷却シート。
【0010】
項2.冷却用組成物中に、さらに無機化合物を含む項1に記載の衣料装着用冷却シート。
【0011】
項3.無機化合物が無水ケイ酸である項2に記載の衣料装着用冷却シート。
【0012】
項4.無機化合物の平均粒子径が0.5〜50μmである項2又は3に記載の衣料装着用冷却シート。
【0013】
項5.ゲル基体層を形成する冷却用組成物中に、さらに、ポリビニルアルコール以外の高分子化合物を含有する項1〜4のいずれかに記載の衣料装着用冷却シート。
【0014】
項6.ポリビニルアルコール以外の高分子化合物が、天然高分子化合物、セルロース誘導体、デンプン誘導体、アルギン酸誘導体、及びビニル系重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である項5に記載の衣料装着用冷却シート。
【0015】
項7.天然高分子化合物が、デンプン、ゼラチン、寒天、カラギーナン、グァーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、アラビアゴム、トラガントガム、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、カードラン、デキストラン、ジュランガム、アルギン酸、及びセルロース等よりなる群から選ばれる少なくとも1種である項6に記載の衣料装着用冷却シート。
【0016】
項8.ビニル系重合体が、ポリ(メタ)アクリル酸類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルキルエーテル、ポリ酢酸ビニル、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ビニルピロリドン/酢酸ビニルアルキルアミノアクリル酸共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−ポリビニルアルコール共重合体、及びN−ビニルアセトアミド重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である項6に記載の衣料装着用冷却シート。
【0017】
項9.ビニル系重合体が、ポリ(メタ)アクリル酸類である項6又は8に記載の衣料装着用冷却シート。
【0018】
項10.ポリ(メタ)アクリル酸類が、部分中和型ポリ(メタ)アクリル酸及びカルボキシビニルポリマーである項9に記載の衣料装着用冷却シート。
【0019】
項11.支持体層と粘着層との間に、水分透過防止層をさらに有する項1〜10のいずれかに記載の衣料装着用冷却シート。
【0020】
項12.ポリビニルアルコールを含む冷却用組成物を調製し、ゲル基体層を形成させ、前記ゲル基体層、支持体層、及び粘着層をこの順で設けることによる、ゲル基体層の他の層が接していない側の表面の一部又は全部と冷却対象部位が直接触れるように装着して使用する衣料装着用冷却シートの製造方法であって、ポリビニルアルコールが、冷却用組成物中、0.5〜5重量%含む衣料装着用冷却シートの製造方法。
【0021】
項13.少なくともゲル基体層、支持体層、及び粘着層を有し、かつこの順で積層された層構造を有し、ゲル基体層がポリビニルアルコールを含む冷却用組成物から形成され、ポリビニルアルコールが、冷却用組成物中、0.5〜5重量%含む衣料装着用冷却シートの使用方法であって、粘着層と衣料とを貼り付け、ゲル基体層の他の層が接していない側の表面の一部又は全部と冷却対象部位を直接触れるように装着して使用する衣料装着用冷却シートの使用方法。
【0022】
項14.衣料の襟部分に適用される項1〜11のいずれかに記載の衣料装着用冷却シート。
【発明の効果】
【0023】
本発明の衣料装着用冷却シートによれば、少なくともゲル基体層、支持体層、及び粘着層を有し、ゲル基体層を形成する冷却用組成物中に、ポリビニルアルコールを特定割合で含有させることにより、従来のゲル基体よりも粘着力が低く、人体の皮膚等の冷却対象部位に触れても、べたつかず、不用意に人体の皮膚等にまとわりつかない。そのため、使用感において良好となる。また、本発明の衣料装着用冷却シートの使用時に、人体の皮膚等にゲル基体が直接触れるが、粘着力が低いために、常に皮膚等に貼り付けて使用する形態をとらず、付いたり剥がれたりする工程を繰り返す。そのため、皮膚等の冷却対象部位がゲル基体層と触れた際に感じる冷却感が長期にわたって得られる。
【0024】
さらに、ゲル基体層がべたつかず、さらに冷却対象部位に直接触れるような層構成をとるため、ゲル基体層の上に余分な層を設ける必要がなく、製造コストが抑えられ製造の観点からも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】衣料装着用冷却シートの断面図である。
【図2】衣料装着用冷却シートの一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の衣料装着用冷却シートは、少なくともゲル基体層、支持体層、及び粘着層を有し、かつこの順で積層された層構造を有する。以下、本発明の衣料装着用冷却シートの構成について図を用いて説明する。
【0027】
図1は、衣料装着用冷却シートの断面図を示す図である。衣料装着用冷却シート1は、ゲル基体層2、支持体層3、粘着層4の順で積層された構造を有している。即ち、ゲル基体層2と粘着層4との間に、支持体層3を有する構造をとる。
【0028】
本発明の衣料装着用冷却シートは、衣料と粘着層4とを貼り付け、ゲル基体層2と皮膚等の冷却対象部位とが直接触れるようにして使用する。なお、本発明の衣料装着用冷却シートを使用する際、ゲル基体層2の最外表面には、ゲル基体層2が冷却対象部位と直接触れないように被覆するような層を設けない。即ち、ゲル基体層2の他の層が接していない側の表面(ゲル基体層の最外表面)の一部又は全部と、皮膚等の冷却対象部位が直接触れるように衣料に装着して使用する。このような使用形態をとることで、十分な冷却感を確保することができる。ゲル基体層2の表面から含有水分を徐々に蒸発させる放湿性により、該冷却対象部位に触れた際に気化潜熱の形で熱を奪って該冷却対象部位を冷却することができる。
【0029】
さらに、ゲル基体層が冷却対象部位から剥がれたときに、人体の皮膚等の冷却対象部位への感覚が元に戻り、ゲル基体層が再度触れる際に、初期の冷却感を感じることができる。即ち、ゲル基体層2と人体の皮膚等の冷却対象部位が触れたり、離れたりする工程を繰り返すことによって、冷却対象部位がゲル基体層と触れた際に感じる初期の冷却感を繰り返し得ることができるという効果が得られる。
【0030】
また、本発明の衣料装着用冷却シート1は、前記ゲル基体層2、支持体層3、及び粘着層4を少なくとも有するが、図2に示すように、支持体層3と粘着層4との間に、水分透過防止層5を設けておいてもよい。さらに、ゲル基体層2の最外表面には、剥離フィルム6を設けておいてもよい。さらにまた、粘着層4の最外表面には、ライナー7を設けておいてもよい。
【0031】
なお、本発明の衣料装着用冷却シートを使用する際には、剥離フィルム6、及びライナー7は剥離し、粘着層4を衣料に貼り付け、ゲル基体層2の最外表面の一部又は全部が皮膚等の冷却対象部位に直接触れるようにして使用される。
【0032】
以下、各層についてさらに詳細に説明する。
【0033】
1.ゲル基体層
ゲル基体層は、少なくともポリビニルアルコールを含む冷却用組成物から形成される。
【0034】
ポリビニルアルコールのケン化度としては、例えば、通常30モル%程度以上のものが用いられ、好ましくは70モル%程度以上のものが用いられ、最も好ましくは85モル%程度以上のものが用いられる。ポリビニルアルコールのケン化度を70モル%以上に設定することで、ゲル基体を形成しつつ、ゲル基体の粘着力からくるべたつきを使用者が感じない程度に調整するという効果が得られる。なお、ポリビニルアルコールのケン化度の上限については、100モル%以下であれば、特に制限されない。
【0035】
ポリビニルアルコールの含有割合としては、冷却用組成物中、0.5〜5重量%であり、0.55〜4重量%程度が好ましく、0.6〜3重量%程度がより好ましい。ポリビニルアルコールの含有割合が0.5重量%未満である場合、冷却組成物がゲル化され難い傾向にあり、冷却シートを形成させた際に、ゲル基体層から水分等の成分が染み出してしまう等の傾向がある。一方、ポリビニルアルコールの含有割合が5重量%を超える場合、得られるゲル基体の粘着力が大きくなってしまい、冷却シートの使用時に、べたつき感が発生する等の傾向がある。
【0036】
ゲル基体層を形成する冷却用組成物としては、さらに上記のポリビニルアルコール以外の高分子化合物を含有していてもよい。当該高分子物質の配合は、非ニュートン流体を示す冷却用組成物の加工性を良好にし、ゲル基体の安定化を向上させ、また粘度の調整を簡便にする点で有用である。
【0037】
前記ポリビニルアルコール以外の高分子化合物としては、水を取り込むことによってゲル化することができるものであれば、特に限定されず、1種であっても2種以上の高分子化合物を混合して用いてもよい。
【0038】
ポリビニルアルコール以外の高分子化合物としては、本発明の効果を損なわず、ゲル基体を形成し得る高分子化合物であれば、特に限定されず、その重量平均分子量については特に制限されない。前記、高分子化合物としては、例えば、天然高分子化合物、半合成高分子化合物、合成高分子化合物が挙げられる。
【0039】
天然高分子化合物としては、デンプン、ゼラチン、寒天、カラギーナン、グァーガム、ローカストビーンガム、タマリンドシードガム、アラビアゴム、トラガントガム、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、カードラン、デキストラン、ジュランガム、アルギン酸、セルロース等が挙げられる。
【0040】
半合成高分子化合物としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースフタレートメチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸セルロースヒドロキシメチルエチルセルロース、及びこれらの塩等のセルロース誘導体;カルボキシメチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン及びこれらの塩等のデンプン誘導体;アルギン酸プロピレングリコール、及びこれらの塩等のアルギン酸誘導体等が挙げられる。
【0041】
合成高分子化合物としては、ポリ(メタ)アクリル酸類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルキルエーテル、ポリ酢酸ビニル、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ビニルピロリドン/酢酸ビニルアルキルアミノアクリル酸共重合体、スチレン/マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル−ポリビニルアルコール共重合体、N−ビニルアセトアミド重合体等のビニル系重合体等が挙げられる。ここで、「ポリ(メタ)アクリル酸類」における「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」を意味する。
【0042】
前記高分子化合物で挙げられる「塩」としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。これらの高分子化合物は、1種のみを単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
ポリビニルアルコール以外の高分子化合物の含有割合としては、ゲル基体を形成させることができ、冷却用組成物中の水分量を十分に確保できる量に設定すればよく、例えば、冷却用組成物中、0.01〜50重量%程度が好ましく、0.1〜30重量%程度がより好ましく、0.1〜15重量%程度が最も好ましい。
【0044】
前記高分子化合物において、ポリ(メタ)アクリル酸類を用いる場合、ポリ(メタ)アクリル酸類の具体例としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸の塩、及び(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸の塩との共重合体(部分中和型ポリ(メタ)アクリル酸)等が挙げられる。
【0045】
ポリ(メタ)アクリル酸類としては、直鎖状又は分枝状の別を問わず、またその分子量も特に制限されないが、通常、平均分子量が1万〜1000万程度のものが用いられる。ゲル強度を高めてより多くの水分を安定的に保持させるという観点からは、特に100万〜700万程度の平均分子量のものが望ましい。
【0046】
また、ポリ(メタ)アクリル酸として、通常の(メタ)アクリル酸を重合して得られる重合体のほか、カルボキシビニルポリマー(例えば、カーボポール(登録商標))等の(メタ)アクリル酸重合体を一部架橋したものも好適に使用することができる。
【0047】
ポリ(メタ)アクリル酸の塩としては、特に制限はないが、好適にはポリ(メタ)アクリル酸ナトリウムやポリ(メタ)アクリル酸カリウム等のポリ(メタ)アクリル酸の一価金属塩;ポリ(メタ)アクリル酸モノエタノールアミン、ポリ(メタ)アクリル酸ジエタノールアミン、ポリ(メタ)アクリル酸トリエタノールアミン、ポリ(メタ)アクリル酸メチルジエタニールアミン等のポリ(メタ)アクリル酸のアルカノールアミン塩;ポリ(メタ)アクリル酸のアンモニウム塩等が例示される。好ましくはナトリウム塩等のポリ(メタ)アクリル酸の一価金属塩である。
【0048】
高分子化合物として、ポリ(メタ)アクリル酸類を含有する場合のポリ(メタ)アクリル酸類の含有割合としては、冷却用組成物中、通常0.01〜50重量%程度、好ましくは0.1〜30重量%程度、より好ましくは0.1〜15重量%程度である。
【0049】
これらのポリ(メタ)アクリル酸類は、単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。ポリ(メタ)アクリル酸類を2種以上組み合わせて用いる場合のポリ(メタ)アクリル酸類の具体的な組み合わせとしては、例えば、部分中和型ポリ(メタ)アクリル酸とカルボキシビニルポリマーとの組み合わせが例示される。
【0050】
部分中和型ポリ(メタ)アクリル酸とカルボキシビニルポリマーとの組み合わせを用いた場合、当該組み合わせの含有比率としては、部分中和型ポリ(メタ)アクリル酸100重量部に対し、カルボキシビニルポリマーが0.1〜200重量部程度が好ましく、1〜100重量部程度がさらに好ましく、1〜60重量部程度が最も好ましい。
【0051】
部分中和型ポリ(メタ)アクリル酸とカルボキシビニルポリマーとの組み合わせを用いた場合、(メタ)アクリル酸とカルボキシビニルポリマーの合計の含有割合としては、冷却用組成物中、通常0.01〜50重量%程度、好ましくは0.1〜30重量%程度、より好ましくは0.1〜15重量%程度である。
【0052】
また、冷却用組成物中には、前述する以外の他の重合体を添加配合することができ、これらは前述する各成分と充分に相溶し得るか、或いは白濁し得る程度に相溶し得るものであることが好ましい。例えば、これら重合体としてはシリコーンゴム、アクリルゴム、天然ゴム等のゴム系増粘性物質;(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主成分とした(メタ)アクリレート系の粘着性物質;ポリエチレンオキシド等のポリエーテル系の各増粘性物質等が挙げられる。なお、これらはゲル基体層におけるゲル基体としての物性に影響を及ぼさない程度に添加されることが好ましい。
【0053】
冷却シートの使用時に、人体に触れたときのべたつきの抑制、冷却持続性の向上等の観点から、ゲル基体層を形成する冷却用組成物には、さらに、無機化合物を含有することが好ましい。無機化合物の具体例としては、無水ケイ酸(シリカ)、タルク等が挙げられ、無水ケイ酸(シリカ)は、冷却持続性向上の観点から特に好ましく用いられる。
【0054】
無機化合物を含む場合の含有割合は、冷却用組成物中、20重量%程度以下が好ましく、10重量%程度以下がより好ましく、3重量%程度以下がさらに好ましい。なお、無機化合物の含有割合の下限としては、特に限定されないが、無機化合物を含むことによる効果が発揮するために、例えば、0.1重量%程度以上含むことが好ましく、0.25重量%程度以上含むことがより好ましく、1重量%以上がさらに好ましい。
【0055】
ゲル基体層の製剤性とゲル基体層の表面に適度なさらさら感を付与できるという観点から、無機化合物の平均粒子径は、0.5〜50μm程度とするのが好ましく、0.1〜10μm程度とするのがより好ましい。
【0056】
ゲル基体層を形成する冷却用組成物としては、上記の高分子化合物を硬化(ゲル化)させるために、さらに硬化剤を含有することが好ましい。かかる硬化剤は、ゲルの保形性維持に寄与する。
【0057】
前記硬化剤としては、多価金属類、が挙げられる。多価金属類としては、多価金属、及びその塩、並びに多価金属化合物を広く包含する趣旨で用いられる。これらの多価金属類としては、二価以上であって上記高分子化合物を架橋させるものであれば特に制限されず、また1種のみならず2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0058】
多価金属類の含有割合としては、冷却用組成物中、通常0.05〜1重量%程度、好ましくは0.05〜0.5重量%程度、より好ましくは0.08〜0.3重量%程度である。含有割合を0.05重量%程度以上に設定することで、上記高分子化合物を十分に架橋することができ、冷却材としてのゲル強度が得られ、さらに得られるゲル基体の保形性が低下しない、という効果が得られる。また、含有割合を1重量%以下に設定することで、必要以上に硬化させることなく、柔軟性が保持されたゲル基体が得られる等の効果が得られる。
【0059】
多価金属類としては、好適にはマグネシウム、カルシウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、チタン、マンガン、コバルト、ニッケル等の多価金属、それらの塩又はそれらの化合物が例示される。皮膚等の冷却対象部位に対する安全性、生産性、ゲル特性の観点から、より好ましくはアルミニウム、マグネシウム、カルシウム又はそれらの化合物であり、とりわけアルミニウム化合物が望ましい。
【0060】
ここでアルミニウム化合物には、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウムマグネシウム等の水酸化物;塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、カオリン、ステアリン酸アルミニウム等の無機又は有機酸の正塩若しくはそれらの塩基性塩;アルミニウムミョウバンのような複塩;アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸塩、無機性アルミニウム錯塩及び有機性アルミニウムキレート化合物;合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、EDTA−アルミニウム、アルミニウムアラントイネート、酢酸アルミニウム、アルミニウムグリシナール等が挙げられる。なお、これらのアルミニウム化合物は1種単独で使用されても、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0061】
またこれらのアルミニウム化合物は、水溶性のものであっても、水に難溶性のものであっても構わない。
【0062】
さらに、冷却用組成物は、pH調整剤を含有していることが好ましい。pH調整剤を含有することにより、上記の硬化剤による架橋反応を促進することができる。pH調整剤としては、有機酸、特に水酸基を含む有機酸又はその塩類を好適に例示することができる。より具体的には、クエン酸、乳酸、酒石酸、グルコン酸、グリコール酸、リンゴ酸、フマール酸、メタスルホン酸、マレイン酸、酢酸等の有機酸を挙げることができる。これらのpH調整剤以外にも、EDTA2ナトリウム、尿素、トリエチルアミン、アンモニア等の金属イオンに対してキレート若しくは配位能を持った有機酸塩や有機塩基、並びに塩酸、りん酸、硫酸、硝酸及び臭化水素酸等の無機酸が利用できる。
【0063】
前記冷却用組成物は、上記成分のほかに、さらに多価アルコールを含んでいてもよい。かかる多価アルコールは、ポリ(メタ)アクリル酸類の分散媒として有用である他、任意成分で含まれるl−メントール等の油性成分を水に分散・乳化させるときのバインダーにもなり、さらに保湿性や湿潤性の付与、使用感向上に寄与する。
【0064】
多価アルコールとしては、直鎖状や分枝状等の形状及び分子量等によって特に制限されず、冷却対象部位に対して安全なものであれば通常使用されるもののいずれをも使用することができる。具体的にはグリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール等が例示され、中でもグリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコールが好適に挙げられる。これらは単独で使用してもよく、或いは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
冷却用組成物に配合する多価アルコールの含有割合は、冷却用組成物中、通常0〜40重量%程度の範囲から適宜選択して用いられる。好ましくは2〜30重量%程度、5〜25重量%程度の範囲である。
【0066】
さらにゲル基体層を形成する冷却用組成物には、その物性に影響を及ぼさない範囲で、上記各成分に加えて必要に応じて、更に防腐剤、保存剤、安定剤、香料、着色料、pH調整剤、リモネン、カンフル、ハッカ油又はl−メントール等の清涼化剤、保湿剤、刺激剤、除菌剤、抗菌剤、粘着付与剤、保型剤、増粘剤等を配合することができる。
【0067】
前記冷却用組成物は、保形性及び冷却作用から、通常酸性〜弱酸性を有することが好ましい。好ましくはpH4〜6.5程度、より好ましくはpH4.5〜6程度のpHを有することが望ましい。組成物をかかるpH範囲に調整するために使用されるpH調整剤としては、酒石酸、クエン酸、リン酸、乳酸、グルコン酸、グリコール酸、リンゴ酸、フマール酸、メタスルホン酸、マレイン酸、酢酸、エチレンジアミン四酢酸等の有機酸、並びに塩酸、りん酸、硫酸、硝酸及び臭化水素酸等の無機酸を例示することができる。
【0068】
前記冷却用組成物は、組成物の各成分を混合して水に溶解することによって製造される。具体的には、ポリビニルアルコールを含有する高分子化合物及び硬化剤、任意成分として必要に応じて、多価アルコールを混合し、分散又は溶解させ、その組成物を水に徐々に添加し練合してゲル状に調製する方法を例示することができる。また、製造工程に、脱気処理工程が含まれても良い。脱気処理方法は特に制限されないが、溶媒系の分散密度を上げないという点から、好ましくはメッシュ濾過脱気又は真空脱気等の物理的処理による脱気であり、中でも効率の良さから真空脱気が好ましい。
【0069】
前記冷却用組成物は、上記成分に加えて水分を含有するものであり、その含水率は標準状態で、冷却用組成物中、50〜99重量%程度が好ましく、60〜95重量%程度がより好ましく、70〜90重量%程度がさらに好ましい。冷却用組成物中の水分は、50重量%以上と多く含有しており、それにより、吸熱効果に優れ、またその優れた冷却効果を持続的に発揮することができる。
【0070】
ゲル基体層の厚さについては、特に制限はないが、使用感、吸熱量等の観点から、通常10〜10,000μm程度、好ましくは500〜5,000μm程度である。
【0071】
本発明の衣料装着用冷却シートにおいて構成されるゲル基体層は、経時的に表面から含有水分を徐々に蒸発させる放湿性を有している。このため、水分蒸発の際の蒸発潜熱が奪われることに基づいて、該組成物は常に室温より低い温度を保ち、皮膚等の冷却対象部位に触れた場合は、該冷却対象部位から気化潜熱の形で熱を奪って該冷却対象部位を冷却することができる。
【0072】
また、ゲル基体層は、粘着力が比較的低いという特徴を有する。そのため、前記ゲル基体層を含む冷却シートは、実際の使用形態で皮膚等の冷却対象部位に触れてもべたつかない。さらに、常に皮膚等に貼り付けて使用する形態をとらず、衣料用に装着させ、皮膚等の冷却対象部位に対して、引っ付いたり剥がれたりする工程を繰り返すため、皮膚の冷却対象部位がゲル基体層と触れた際に感じる冷却感を長期にわたって得ることができる。
【0073】
2.支持体層
本発明の衣料装着用冷却シートを形成する支持体層としては、上記の冷却用組成物から形成されるゲル基体層を担持できるものであれば特に制限はなく、種々の織布、不織布及びフィルム等を使用することができる。
【0074】
支持体層を形成する基材として織布又は不織布を使用する場合、その素材は特に制限されないが、具体的には綿、麻、羊毛等の天然繊維;レーヨン、アセテート等のセルロース系繊維;ナイロン、ビニロン、スチロール、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、アクリル等の合成繊維;綿、麻、毛等の天然繊維等が挙げられる。基材としてフィルムを使用する場合も、その素材は特に制限されないが、具体的にはポリスチレン(スチロール)、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン等が挙げられる。
【0075】
上記支持体層の厚さについても、特に制限はないが、使用感、貼付部位への馴染み易さ等の観点から、通常1〜1000μm程度、好ましくは10〜500μm程度である。
【0076】
また、当該支持体層は、貼着部位の外形状になじむように、適度な伸縮性を有することが好ましい。
【0077】
3.粘着層
粘着層は、衣料に冷却シートを貼り付けるために形成される層であり、ゲル支持体層側、即ち、ゲル基体層に接しない側に設けられる層である。
【0078】
粘着剤層としては、衣料等に貼ることができるものであれば、特に限定されないが、例えば、水溶性の接着剤(例えば、アクリル系水溶性接着剤)や非水溶性接着剤(例えば、ゴム系ホットメルト、オレフィン系ホットメルト)等の接着剤から形成されるものが挙げられる。なかでも、衣料に対する接着力に優れる点から非水溶性接着剤が好ましく、ゴム系ホットメルトがより好ましい。ゴム系ホットメルトを使用することにより、接着部位になじみやすいので、衣服の伸びを拘束することがない(突っ張り感を軽減できる)。そのため、各粘着部間に遊びを設けた形態をとり、ゴム系ホットメルトの性質との相乗効果によって、衣服からの脱落やヨレ・ズレを効果的に減らすことができ、好ましい。
【0079】
粘着層の厚さについては、特に制限がなく、冷却シートと衣料とを十分に貼り付けることができる程度であれば特に限定されない。
【0080】
4.水分透過防止層
本発明の衣料装着用冷却シートは、支持体層と粘着層との間に、さらに、水分透過防止層を設けてもよい。当該水分透過防止層を設けることにより、皮膚等の冷却対象部位と触れていない層(粘着剤)層側からの不必要な放湿を抑制でき、冷却対象部位の冷却を長期にわたって維持することができる。また、不必要な放湿による粘着層の粘着性の低下を防止することもできる。
【0081】
水分透過防止層を形成するための材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フィルムが挙げられる。
【0082】
前記フィルムとしては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン(以下、PE)、ポリプロピレン(以下、PP)等のオレフィン系フィルム;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のエステル系フィルム;ポリスチレン等のスチレン系フィルム;ポリ塩化ビニル系フィルム;エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム;ポリフルオロカーボン系フィルム等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上をブレンド、或いは積層させて使用してもよい。なお、前記樹脂の重合度としては、特に制限はなく、通常貼付剤の支持体フィルムとして使用されているものを適宜選択することができる。
【0083】
前記水分透過防止層の厚み、大きさ、形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0084】
5.剥離フィルム層
本発明の衣料装着用冷却シートは、ゲル基体層の最外表面に、さらに、剥離フィルム層を設けておいてもよい。前記剥離フィルム層を設けることにより、取り扱い性や衛生上において優れた冷却シートが構成される。なお、剥離フィルム層は、使用時に剥離除去される。
【0085】
剥離フィルム層を構成するフィルムとしては、特に制限されないが、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等を使用することができる。
【0086】
6.ライナー
また、本発明の衣料装着用冷却シートは、粘着層の最外表面において、ライナーを設けておいてもよい。ライナーを設けることにより、粘着層による不必要な接着を防ぐことができ、取り扱い性や衛生上において優れた冷却シートが得られる。なお、ライナーは、使用時に剥離除去される。 前記ライナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、薬添規ポリエチレンテレフタレートセパレータ、剥離紙(離型紙)等が挙げられる。
【0087】
前記ライナーの厚み、大きさ、形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0088】
本発明の衣料装着用冷却シートは、外形状についても特に制限されず、衣料の適用対象、貼着場所等に応じて適宜選択・調製することができる。例えば、衣料の具体例としては、シャツ、ブラウス、ジャケット、セーター、制服、肌着、スラックス、スカート等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、衣料の適用対象、貼着場所の具体例としては、襟部分、脇部分、背中部分、肌着そけい部分、スラックスのもも部分、ふくらはぎ部分等が挙げられる。これらの中で、襟部分に適用することが、冷却対象部位として、後頚部(首もと)を冷却することができ、ゲル基体層が後頚部から離れたときに、後頚部の冷却された際の感覚が元に戻り、ゲル基体層が後頚部に再度触れる際に、初期の冷却感を感じることができる点で最も好ましい。即ち、本発明の冷却シートが装着された衣料の襟部分が動くことで、冷却シートのゲル基体層と後頚部が触れたり、離れたりする工程を繰り返すこととなり、後頚部がゲル基体層と触れた際に感じる初期の冷却感を繰り返し得ることができる。
【0089】
前記衣料装着用冷却シートは、ポリビニルアルコールを含有する高分子化合物を含む冷却用組成物を調製し、ゲル基体層を形成させ、前記ゲル基体層、支持体層、及び粘着層をこの順で設けることにより製造することができ、例えば前記冷却用組成物を剥離フィルムの上に均一に展延塗布し、その上に支持体を重ね、さらに粘着剤を展延塗布し、ライナーを重ねる方法が挙げられる。この場合、より一層強度に定着させるために該積層物をローラーによって加圧することもできる。
【0090】
本発明の衣料装着用冷却シートの使用方法としては、前記の衣料装着用冷却シートを必要に応じて設けられた剥離フィルム及びライナーを剥離し、粘着層と衣料とを貼り付け、冷却対象部位とゲル基体層を直接触れるように装着して使用する。
【0091】
[実施例]
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらに限定されるものではない。
【0092】
実施例及び比較例で用いた成分について、以下のものを用いた。
・部分中和型ポリアクリル酸ナトリウム:日本化薬(株)製のパナカヤクN
・ポリビニルアルコール1:日本合成化学工業(株)製のゴーセノールEG−05(ケン化度:86.5〜89.0モル%、4%水溶液における粘度:4.8〜5.8mPa・s)
・ポリビニルアルコール2:日本合成化学工業(株)製のゴーセノールEG−40(ケン化度:86.5〜89.0モル%、4%水溶液における粘度:40.0〜46.0mPa・s)
・カルボキシビニルポリマー:BFグッドリッチ社製のカーボポール980
・乾燥水酸化アルミニウムゲル:協和化学工業(株)製の乾燥水酸化アルミニウムゲル
・L−酒石酸:昭和化工(株)製のL−酒石酸・二酸化珪素(シリカ):AGCエスアイテック(株)製のサンスフェアH−31(平均粒子径:3.0μm)
・l−メントール:長岡実業(株)製のl−メントール
・濃グリセリン:花王(株)製の濃グリセリン
【0093】
<実施例1〜15及び比較例1>
表1に記載される処方に従って各冷却用組成物を調製した。具体的には、濃グリセリン中に部分中和型ポリアクリル酸ナトリウム、乾燥水酸化アルミニウムゲル、ポリビニルアルコール及びカルボキシビニルポリマーの各成分を分散混合し、これを精製水中に徐々に添加して練合した。次いで、L−メントール(清涼化剤)をさらに添加し、L−酒石酸(pH調整剤)でpHを調整して、各冷却用組成物を得た。
【0094】
また、比較例1については、濃グリセリン中に、部分中和型ポリアクリル酸ナトリウム、及びカルボキシビニルポリマーの各成分を分散混合し、これを精製水中に徐々に添加して練合した。次いで、これにL−メントール(清涼化剤)を添加し、L−酒石酸(pH調整剤)でpHを調整して、冷却用組成物を得た。 このようにして得られた各冷却用組成物を、ポリプロピレン製の剥離フィルム(15cm×4cm)の上に、ナイフコーターで約4mmの厚さに塗工し、その上に不織布を圧着し、さらにその上に接着剤シートを貼り付け、冷却シートサンプル(実施例1〜15、及び比較例1)を作製した。
【0095】
得られた各冷却シートサンプルについて、以下の評価を行った。
【0096】
<冷却力>
温熱板試験機(カトーテック(株)製のKES−F7サーモラボ II)を用いて、以下の条件、測定方法により得られたゲルの冷却時間を、温度センサー(株式会社ティアンドデイ(T&D Corporation)製のTR−71Ui)により測定し、各冷却シートサンプルの冷却力(冷却時間)を以下の基準にて評価した。
【0097】
1.測定方法
・試験条件:室温(温度:25℃、湿度:60%)
・冷却シートサンプルは、アルミ製の密封袋に入れた状態で、予め上記室温条件下で24時間放置し馴化ておく。
【0098】
・測定方法
(1)試験機の出力を0.7Wに設定し、試験機の温熱板の温度が一定になるまで放置する。
【0099】
(2)温度センサーを温熱板に貼付し、その上から5x5cm角に切った各冷却シートサンプルを温熱板と温度センサーとがすべて被覆されるように貼付する。
【0100】
(3)温度センサーで30秒おきに、温度が一定になるまで温度を測定する。
【0101】
2.評価方法
前記「1.測定方法」に従って、温度測定を行い、サンプルの冷却効果がなくなり、測定温度が一定になるまで測定を継続する。
【0102】
そして、冷却力(冷却時間)は、上記の一定になった温度よりも2℃低いところに到達するまでの時間(冷却時間)として評価することとした。
【0103】
当該数値は、時間が長い程冷却力が高いことを示している。
【0104】
上記測定によって得られた冷却力(冷却時間)について、以下の基準に基づいて評価した。
【0105】
◎:冷却時間が、8時間以上。
○:冷却時間が、6時間以上、8時間未満。
△:冷却時間が、4時間以上、6時間未満。
×:冷却時間が、4時間未満。
【0106】
<粘着力>
タック力試験機(カトーテック(株)製のKES−G5ハンディ圧縮試験機)を用いて、以下の条件、測定方法により得られたタック力曲線の最大タック力値を測定し、ゲルシートの粘着力を以下の基準にて評価した。
【0107】
1.測定方法
・試験条件:室温(温度:25℃、湿度:60%)
・冷却シートは、あらかじめ上記室温条件下で24時間放置しておく。
【0108】
・測定方法
(1)冷却シートの裏面(粘着層側)に両面テープを付け、台に固定する。
【0109】
(2)10mmφの加圧板を100g/cmでゲル基体に圧縮させ、垂直方向に剥離するときの強度を測定する。
【0110】
(3)測定箇所はゲル基体中央線上(シートを縦に二つ織りした場合の中央線)のゲル中央と両端の3箇所を測定する。
【0111】
・測定機条件設定(出力:20mm/V、SENS1、RANGE0.1cm/S、SPEED SET 10−0、STROKE SET 10−0 CONTROL FORCE)
【0112】
2.評価方法
前記「1.測定方法」に従って、測定を行い、得られた数値からタック力曲線を作成する。
【0113】
得られたタック力曲線からの積分値を読み取り、3点(ゲル中央と両端)の平均値をそのゲルシートの粘着力「WC−(gf・cm/cm)」とした。当該数値は、値が大きいほど粘着力が低く、本発明の特性において良好であることを示す。
【0114】
前記測定によって得られた粘着力「WC−(gf・cm/cm)」について、以下の基準で評価した。
【0115】
◎:平均値が−2.0以上である。
○:平均値が−5.0以上、−2.0未満である。
△:平均値が−20.0以上、−5.0未満である。
×:平均値が−20.0未満である。
【0116】
<官能評価>
15×4cmに加工した冷却シートサンプルを、男性用Yシャツの襟内側部分に専用の粘着剤を用いて貼り付け、「べたつきの程度」、「冷感満足度」、「冷却持続性満足度」の衣料用冷却シートとしての基本性能の評価を10名の男性専門パネラーにより、実際のモニター評価を行った。
【0117】
試験条件は、夏場を想定した環境(温度:35%、湿度:60%)で行い、6時間着用した。
【0118】
[べたつきの程度]
・定義
本発明品である衣料装着用冷却シートは、夏場に使用されるシートであるため、汗や皮脂等によりべたつきが感じるとその使用感が悪くなる。
【0119】
そこで、実際に各冷却シートサンプルを、Yシャツの襟内側部分に装着し、上記夏場を想定した環境下で6時間パネラーに使用させ、6時間を通してのべたつきの気になり度を「べたつきの程度」として評価した。
・評価
以下の評価基準で0点〜3点の4段階で評価し、10名の平均点を算出して、平均点が、「2.2以上:◎」、「1.5以上2.2未満:○」、「0.8以上1.5未満:△」、「0.8未満:×」として評価した。
【0120】
(評価基準)
3.気にならない
2.どちらともいえない
1.やや気になる
0.気になる
【0121】
[冷感満足度]
・定義
各冷却シートサンプルを、Yシャツの襟内側部分に装着し、上記夏場を想定した環境下で6時間パネラーに使用させた際の、6時間を通しての冷感(冷却による気持ちよさ)の満足度を「冷感満足度」として評価した。
【0122】
・評価
以下の評価基準で0点〜3点の4段階で評価し、10名の平均点を算出して、平均点が「2.2以上:◎」、「1.5以上2.2未満:○」、「0.8以上1.5未満:△」、「0.8未満:×」として評価した。
【0123】
(評価基準)
3.非常に満足
2.満足
1.やや満足
0.不満
【0124】
[冷却持続性満足度]
・定義
各冷却シートサンプルを、Yシャツの襟内側部分に装着し、上記夏場を想定した環境下で6時間パネラーに使用させた際の、6時間を通しての冷却効果の持続性の満足度を「冷却持続性満足度」として評価した。
【0125】
・評価
以下の評価基準で0点〜3点の4段階で評価し、10名の平均点を算出して、平均点が「2.2以上:◎」、「1.5以上2.2未満:○」、「0.8以上1.5未満:△」、「0.8未満:×」として評価した。
【0126】
(評価基準)
3.非常に満足
2.満足
1.やや満足
0.不満
【0127】
【表1】

【符号の説明】
【0128】
1 衣料装着用冷却シート
2 ゲル基体層
3 支持体層
4 粘着層
5 水分透過防止層
6 剥離フィルム層
7 ライナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともゲル基体層、支持体層、及び粘着層を有し、かつこの順で積層された層構造を有する、ゲル基体層の他の層が接していない側の表面の一部又は全部と冷却対象部位が、直接触れるように装着して使用する衣料装着用冷却シートであって、
ゲル基体層がポリビニルアルコールを含む冷却用組成物から形成され、ポリビニルアルコールを、冷却用組成物中、0.5〜5重量%含む衣料装着用冷却シート。
【請求項2】
冷却用組成物中に、さらに無機化合物を含む請求項1に記載の衣料装着用冷却シート。
【請求項3】
無機化合物が無水ケイ酸である請求項2に記載の衣料装着用冷却シート。
【請求項4】
無機化合物の平均粒子径が0.5〜50μmである請求項2又は3に記載の衣料装着用冷却シート。
【請求項5】
ゲル基体層を形成する冷却用組成物中に、さらに、ポリビニルアルコール以外の高分子化合物を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の衣料装着用冷却シート。
【請求項6】
ポリビニルアルコール以外の高分子化合物が、天然高分子化合物、セルロース誘導体、デンプン誘導体、アルギン酸誘導体、及びビニル系重合体よりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の衣料装着用冷却シート。
【請求項7】
ビニル系重合体が、ポリ(メタ)アクリル酸類である請求項6に記載の衣料装着用冷却シート。
【請求項8】
ポリ(メタ)アクリル酸類が、部分中和型ポリ(メタ)アクリル酸及びカルボキシビニルポリマーである請求項7に記載の衣料装着用冷却シート。
【請求項9】
支持体層と粘着層との間に、水分透過防止層をさらに有する請求項1〜8のいずれかに記載の衣料装着用冷却シート。
【請求項10】
ポリビニルアルコールを含む冷却用組成物を調製し、ゲル基体層を形成させ、前記ゲル基体層、支持体層、及び粘着層をこの順で設けることによる、ゲル基体層の他の層が接していない側の表面の一部又は全部と冷却対象部位が直接触れるように装着して使用する衣料装着用冷却シートの製造方法であって、ポリビニルアルコールが、冷却用組成物中、0.5〜5重量%含む衣料装着用冷却シートの製造方法。
【請求項11】
少なくともゲル基体層、支持体層、及び粘着層を有し、かつこの順で積層された層構造を有し、ゲル基体層がポリビニルアルコールを含む冷却用組成物から形成され、ポリビニルアルコールが、冷却用組成物中、0.5〜5重量%含む衣料装着用冷却シートの使用方法であって、粘着層と衣料とを貼り付け、ゲル基体層の他の層が接していない側の表面の一部又は全部と冷却対象部位を直接触れるように装着して使用する衣料装着用冷却シートの使用方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−79198(P2013−79198A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218489(P2011−218489)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】