説明

衣服作成方法及びこれを用いて製造される衣服

【目的】 本発明の目的は、成形用編み機で他の網地と連続するように編まれた本パイル編地を起毛させることができる衣服製造方法及びこれを用いて製造される衣服を提供する。
【構成】 移動機構20を駆動させて針部11を移動させ、これによりタック編、天竺編又はスパイラル編の編地を所定の糸を用いて編むと共に、当該編地と連続する本パイル編の編地をパイル糸101と地糸102とが対になった糸を用いて編む。本パイル編の編地を編むに当たり、移動機構20を駆動させてシンカー12を移動させ、当該シンカー12でパイル糸101を係合して地糸102から離れる方向に引き出す。これによりパイル糸101をループ状に突出させた本パイル編地が作成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型用編み機で複数の網地を連続して編み、これにより衣服を作成する衣服作成方法及びこれを用いて作成される衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の衣服としては、成型用編み機で所要部分の編み方を他の部分の編み方と異なる編み方としたものがある。具体的には、衣服の背面側上部を本パイル編で編み、これにより当該背面側上部を本パイル編地で構成し、他の部分よりも通気性及び吸汗性を良くしたものがある( 特許文献1参照) 。このような衣服は、本パイル編地の編目を起毛機器の爪で切り、起毛させることが所望されている。
【0003】
【特許文献1】特開平10−130907号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記本パイル編地は、連続する編目を一つずつ飛ばして編むことにより構成されている( 特許文献1の図9参照) 。即ち、前記本パイル編地は連続した平坦な編目であることから、当該本パイル編地を起毛機器で起毛させようとすると、当該起毛機器の爪がループ状の編目以外の編目も切ってしまう。このため、本パイル編地自体が解けてしまうことから、当該本パイル編地を起毛させることができなかった。即ち、成型用編み機により衣服の一部を本パイル編地で構成し、当該本パイル編地を起毛させることはできなかった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、成型用編み機で他の網地と連続するように編まれた本パイル編地を起毛させることができる衣服製造方法及びこれを用いて製造される衣服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の衣服製造方法は、成型用編み機を用いてタック編、天竺編及び/又はスパイラル編等の編地に本パイル編の編地を連続して編み、これにより少なくとも一部に本パイル編地が設けられた衣服を製造する衣服製造方法であって、表糸と裏糸とが対になった糸を用いて本パイル編の編地を編みつつ、成型用編み機のシンカーで表糸を係合して裏糸から離れる方向に押圧し、これにより当該表糸をループ状に突出させた本パイル編地を作成することを特徴としている。
【0007】
その後、起毛機器を用いて、当該起毛機器の爪により本パイル編地のループ状に突出した表糸の頂部を切るようにしている。
【0008】
本発明の衣服は、前記衣服製造方法を用いて製造された衣服であって、少なくとも一部に前記本パイル編地が設けられており、この本パイル編地は、ループ状に突出した表糸の頂部が切られ、起毛している。
【0009】
より好ましくは、糸には有機ゲルマニウムが練り込まれていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1及び2に係る衣服製造方法による場合、表糸と裏糸とが対になった糸を用いて本パイル編の編地を編みつつ、成型用編み機のシンカーで表糸を係合して裏糸から離れる方向に引き出し、これにより当該表糸をループ状に突出させた本パイル編地を作成するようにしている。このため、起毛機器を用いて当該起毛機器の爪により本パイル編地のループ状に突出した表糸の頂部を切るだけで、当該本パイル編地を起毛させることができる。この本パイル編地は、裏糸の編目により維持されるので、起毛させたとしても従来例の如く解けるようなことがない。しかも、成型用編み機を用いて製造していることから、タック編、天竺編及び/又はスパイラル編等の編地と本パイル編地との接合部分がなく、本パイル編地を任意の部分に設けることができる。
【0011】
本発明の請求項3に係る衣服による場合、少なくとも一部( 例えば、背中部分) に設けられた本パイル編地が起毛している。よって、当該本パイル編地に当接する部分の保温性を高めることができる。しかも、本パイル編地が起毛していることから、アトピー肌が編目に引っ掛かるようなこともない。即ち、肌に優しい衣服とすることができる。
【0012】
本発明の請求項4に係る衣服による場合、有機ゲルマニウムが練り込まれた糸を使用している。このような糸が使用された衣服を着ると、前記糸に練り込まれた有機ゲルマニウムにより、着衣者の体内のインターフェロンを誘起して、疾病への抵抗力を高めたり、着衣者の体内の血流を良くして血圧を下げたり、着衣者の疲労・老化原因を排除して細胞を若返らせたりする効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る衣服を図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施の形態に係る衣服を裏返した状態の図であって、( a) が概略的正面図、( b) が概略的背面図、図2は同衣服のパイル部を示す図であって、( a) が起毛前の概略的拡大図、( b) が起毛後の概略的拡大図、図3は同衣服のパイル部を示す写真であって、( a) が起毛前の電子顕微鏡写真、( b) が起毛後の電子顕微鏡写真、図4は同衣服の衣服本体を示す図であって、( a) が平編の網地の概略的拡大図、( b) がメッシュ編の網地の概略的拡大図、( c) がタック編の網地の概略的拡大図、図5は同衣服を製造するための成型用編み機の構成図、図6は同衣服の設計変更例の衣服を裏返した状態の図であって、( a) が概略的正面図、( b) が概略的背面図である。
【0014】
図1に示す衣服Aは、成型用編み機10( 図5参照) を用いて所望の形に製造された婦人用の肌着であって、衣服本体100と、この衣服本体100の着衣者の背中の上端部及び腕の折曲部が接触する部分に設けられたパイル部200とを有している。以下、各部を詳しく説明する。
【0015】
衣服本体100は、タック編( 図4( a) 参照) 、天竺編( 図4( b) 参照) 又はスパイラル編( 図4( c) 参照) 等で編まれた編地となっている。
【0016】
パイル部200は、図2及び図3に示すように、パイル糸201( 表糸) と地糸202( 裏糸) とが対になった糸210によって衣服本体100の編地と連続するように編まれた本パイル編地となっている。パイル糸201は、地糸202と離れる一方向に突出しており、その頂部が切られている( 図2( b) 及び図3( b) 参照) 。これにより、パイル部200が起毛する。
【0017】
パイル部200を構成するパイル糸201、地糸202及び衣服本体100を構成する所定の糸には、有機ゲルマニウムが練り込まれた糸を使用している。
【0018】
このような衣服Aは、図5に示す成型用編み機Bを用いて製造される。この成型用編み機Bは、タック編、天竺編、スパイラル編、本パイル編の編地を連続して編むための針部11と、本パイル編の編地の糸をループ状に突出させるためのシンカー12と、この針部11及びシンカー12を各々移動させる移動機構20と、タック編、天竺編、スパイラル編、本パイル編の編地を編むためのプログラムが記録されたメモリ部30と、このメモリ部30上のプログラムを処理することにより移動機構20を駆動させる制御部40とを備えた周知の成型用編み機である。
【0019】
この成型用編み機Bは、移動機構20を駆動させて針部11を移動させ、これによりパイル糸201と地糸202とが対になった糸210を用いて本パイル編の編地を編みつつ、シンカー12でパイル糸201を係合して地糸202から離れる方向に押圧し、これにより当該パイル糸201をループ状に突出させた本パイル編地を作成する機能が付加されている。
【0020】
即ち、制御部40がメモリ部30上のプログラムを処理することにより前記機能を発揮するようになっている。以下、同プログラム及び衣服Aの衣服製造方法について詳しく説明する。
【0021】
まず、移動機構20を駆動させて針部11を移動させ、これにより衣服本体100となるべき部分に所定の糸を用いてタック編、天竺編又はスパイラル編の編地を編むと共に、当該編地と連続するパイル部200となるべき部分にパイル糸201と地糸202とが対になった糸210を用いて本パイル編の編地を編む。
【0022】
本パイル編の編地を編むに当たり、移動機構20を駆動させてシンカー12を図示矢印方向(即ち、図示左方向) に移動させ、当該シンカー12でパイル糸201を係合して地糸202から離れる方向に押圧して引き出す。これによりパイル糸201をループ状に突出させた本パイル編地が作成される。
【0023】
その後、衣服Aのパイル部200を図示しない起毛機器を用いて起毛させる。即ち、前記起毛機器の爪によりパイル部200のループ状に突出したパイル糸201の頂部を切らせ、これによりパイル部200を起毛させる。このようにして衣服Aが製造される。
【0024】
このような衣服Aによる場合、パイル部200がパイル糸201及び地糸202が対になった糸210で編まれた本パイル編地となっており、前記パイル糸201が地糸101から離れる方向にループ状に突出している。よって、パイル糸201の頂部を切り、これによりパイル部200を起毛させることができる。しかも、パイル部200の編地が地糸202の編目により維持されるので、起毛させたとしても従来例の如く解けるようなことがない。起毛したパイル部200は、着衣者の当接する部分の保温性を高めることができる。人体は背中部の温度が身体の表部の温度よりも2〜3℃低いので、パイル部200を起毛することにより着衣者の背中を温め、背中部の温度と表部の温度とを略同じとすることができる。また、起毛することによりアトピー肌が編目に引っ掛かるようなこともない。よって、肌に優しい衣服とすることができる。しかも、成型用編み機Bを用いて製造していることから、パイル部200と衣服本体100との接合部分がないので、着心地が良い。
【0025】
更に、パイル部200を構成するパイル糸201、地糸202及び衣服本体100を構成する所定の糸には、有機ゲルマニウムが練り込まれた糸を使用している。よって、糸の有機ゲルマニウムにより、着衣者の体内のインターフェロンを誘起して、疾病への抵抗力を高めたり、着衣者の体内の血流を良くして血圧を下げたり、着衣者の疲労・老化原因を排除して細胞を若返らせたりする効果を得ることができる。
【0026】
このような衣服Aは、成型用編み機を用いてタック編、天竺編及び/又はスパイラル編等の編地に本パイル編の編地を連続して編み、これにより少なくとも一部に本パイル編地が設けられた衣服を製造する衣服製造方法であって、表糸と裏糸とが対になった糸を用いて本パイル編の編地を編みつつ、成型用編み機のシンカーで表糸を係合して裏糸から離れる方向に押圧し、これにより当該表糸をループ状に突出させた本パイル編地を作成する限りどのような方法で製造しても良い。
【0027】
衣服本体100については、タック編、天竺編又はスパイラル編の編地となっているとしたが、その他の編地とすることも勿論可能であるし、タック編、天竺編、スパイラル編、その他の編地を連続させて構成することも勿論可能である。
【0028】
パイル部200については、衣服本体100の着衣者の背中の上端部及び腕の折曲部が接触する部分に設けられるとしたが、その他の部分に設けることも当然可能である。即ち、衣服本体100の少なくとも一部にパイル部200が設けられていれば良い。
【0029】
パイル部200にはパイル糸201及び地糸202が対となった糸210を用いるとしたが、表糸と裏糸とが対になった糸である限りどのようなものを用いても良い。同様に衣服本体100には、所定の糸を用いるとしたが、タック編、天竺編又はスパイラル編の編地が編める限りどのようなものを用いても良い。なお、これらの糸には有機ゲルマニウムが練り込まれていないものを用いることが当然可能であることはいうまでもない。
【0030】
衣服Aについては、婦人用の肌着であるとしたが、その他の上着とすることも当然可能である。また、ここでの衣服とは、上着だけでなく下着にも用いることが当然可能である。例えば、図6に示すように、下着である衣服本体100をタック編、天竺編、スパイラル編、その他の編地とし、斜線部分をパイル部200とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る衣服を裏返した状態の図であって、( a) が概略的正面図、( b) が概略的背面図である。
【図2】同衣服のパイル部を示す図であって、( a) が起毛前の概略的拡大図、( b) が起毛後の概略的拡大図である。
【図3】同衣服のパイル部を示す写真であって、( a) が起毛前の電子顕微鏡写真、( b) が起毛後の電子顕微鏡写真である。
【図4】同衣服の衣服本体を示す図であって、( a) が平編の網地の概略的拡大図、( b) がメッシュ編の網地の概略的拡大図、( c) がタック編の網地の概略的拡大図である。
【図5】同衣服を製造するための成型用編み機の構成図である。
【図6】同衣服の設計変更例の衣服を裏返した状態の図であって、( a) が概略的正面図、( b) が概略的背面図である。
【符号の説明】
【0032】
A 衣服
100 衣服本体
200 パイル部
B 成型用編み機
12 シンカー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成型用編み機を用いてタック編、天竺編及び/又はスパイラル編等の編地に本パイル編の編地を連続して編み、これにより少なくとも一部に本パイル編地が設けられた衣服を製造する衣服製造方法において、表糸と裏糸とが対になった糸を用いて本パイル編の編地を編みつつ、成型用編み機のシンカーで表糸を係合して裏糸から離れる方向に押圧し、これにより当該表糸をループ状に突出させた本パイル編地を作成するようにしたことを特徴とする衣服製造方法。
【請求項2】
請求項1の衣服製造方法において、起毛機器を用いて、当該起毛機器の爪により本パイル編地のループ状に突出した表糸の頂部を切るようにしたことを特徴とする衣服製造方法。
【請求項3】
請求項2の衣服製造方法を用いて製造された衣服であって、少なくとも一部に前記本パイル編地が設けられており、この本パイル編地は、ループ状に突出した表糸の頂部が切られ、起毛していることを特徴とする衣服。
【請求項4】
請求項3記載の衣服において、糸には、有機ゲルマニウムが練り込まれていることを特徴とする衣服。

【図1】
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【図6】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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