説明

衣服

【課題】、簡単な製造工程で自由にデザインすることが可能であり、着用感が良好な衣服を提供する。
【解決手段】本体12の生地13に、微細な一定パターンが互いに直交する方向に連続する絵柄20を有する。絵柄20は合成樹脂製のバインダーに近赤外線波長を反射又は吸収する顔料が混合されたインキで印刷されている。絵柄20のパターンは、基本単位の形状が互いに接して縦横に連続しているもの、または、所定幅のラインが互いに交差して縦横に連続しているものである。近赤外線波長を反射又は吸収する顔料は、黒色顔料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、赤外線フィルタを用いた透視撮影時に身体が透けない衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線フィルタを用いた透視撮影が可能なカメラが普及し、水着等の肌に密着した衣料を透視撮影することが可能となり、社会的な問題を生じている。このような赤外線による透視撮影を防ぐために、いろいろな工夫がされている。
【0003】
特許文献1の透撮防止衣類及びその素材繊維は、金属、金属炭化物、炭化物の薄膜を生地に形成するか、素材繊維にこれらの粉末を含有せしめて生地を構成させ、赤外線を反射または吸収するものである。
【0004】
特許文献2の迷彩加工布帛は、未染色または染色布帛に、黒色顔料がプリント加工され、該黒色顔料によって前記布帛の赤外線領域の反射率が制御されるものである。
【0005】
特許文献3の赤外線による透視を防ぐ肌面当接用繊維材料及び衣料は、赤外線吸収能または赤外線反射能を有する部分を表面積に対して40〜80%偏在させて、赤外線による透視を防ぐものである。繊維材料に、赤外線吸収能または赤外線反射能を付与するには、近赤外線領域の波長を吸収、又は反射する赤外線遮断剤を繊維材料に固着させている。赤外線遮断剤は、例えばアントラキノン類等の有機化合物、酸化イッテルビウム等のイッテルビウム化合物、酸化スズ等の無機化合物、またはそれらの混合物等があるが、繊維材料に付与した後の風合いなどを考慮すると、有機化合物が好ましく用いられる。
【0006】
特許文献4の赤外線吸収衣服は、衣服を構成する布帛の少なくとも一部を、赤外線吸収特性を有する赤外線吸収布帛により縫製されている。この赤外線吸収繊維素材は、繊維中又は繊維の表面に市販の赤外線吸収材を混錬または付着した構造により実施する。
【特許文献1】特開2005−42252号公報
【特許文献2】特開2003−27383号公報
【特許文献3】特開2000−328441号公報
【特許文献4】特開2000−178809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術の場合、特許文献1に開示されている技術は、金属、金属炭化物、炭化物の薄膜を生地に形成すると、伸縮性が損なわれ、着用感が低下したり身体に密着しなくなるおそれがある。また、特許文献2〜特許文献4に開示されている技術は、赤外線を吸収する赤外線吸収剤を繊維に付着させまたはプリントしたものであるが、デザインが限られ、コストと製造工数がかかるものである。
【0008】
この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、簡単な製造工程で自由にデザインすることが可能であり、着用感が良好な衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、本体の生地に微細な一定パターンが互いに直交する方向に連続する絵柄が設けられ、前記絵柄は合成樹脂製のバインダーに近赤外線波長を反射又は吸収する顔料が混合されたインキで印刷されている衣服である。
【0010】
前記絵柄のパターンは、基本単位の形状が互いに接して縦横に連続しているものである。または、前記絵柄のパターンは、所定幅のラインが互いに交差して縦横に連続しているものである。
【0011】
近赤外線波長を反射又は吸収する前記顔料は、黒色顔料であり、前記絵柄の前記パターンは、布表面の20%〜80%に設けられている。さらに、前記絵柄印刷するインキは、アクリル系及びウレタン系等の捺染用バインダーに黒色顔料を混合させた樹脂で印刷されて設けられている。黒色顔料は、カーボンブラック又は酸化チタンである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の衣服は、簡単な製造工程で自由にデザインすることが可能であり、着用感が良好で確実に赤外線による透撮を防ぐことができる。さらに、衣服の生地の伸縮性が維持され、身体に密着して着用され、円滑に運動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1、図2はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の衣服は、女性用の水着10である。水着10は、胴体部分を覆う本体12が設けられ、本体12の下方には足が通される一対の透孔14が設けられ、上方には肩紐16が一体に設けられている。
【0014】
本体12の生地13には、例えば腰から下の全部の部分と、胸付近を通過するほぼ水平な帯形状の部分に、印刷部18が印刷されて設けられている。印刷部18のインキは、アクリル系及びウレタン系等の捺染用バインダーに近赤外線波長を反射又は、吸収する黒色顔料を混合させたものである。黒色顔料は、例えばカーボンブラック又は酸化チタンである。黒色顔料以外に紺や青等の顔料でもよい。印刷部18のインキの材料はこれ以外でもよく、例えば捺染用バインダーには、アクリル酸エステル共重合物等でもよい。その他、界面活性剤、水、ミネラルスピリット等が添加されて作られてもよい。印刷部18は、水着10の表面に設けてデザインの一部として見せてもよく、裏面に設けて見えないようにしてもよい。
【0015】
印刷部18は、生地13に図2(a)、(b)に示すような微細な一定パターンが縦横に連続する絵柄20が印刷されている。図2(a)に示す絵柄20は、黒塗り部分及びハッチングで示した部分を含む一つの正方形22が基本単位であり、正方形22は正方形22の線対称となる4本の区分線24で8個の二等辺三角形26に8等分され、8個の二等辺三角形26が正方形22の中心を回る方向に交互に塗りつぶされている。この正方形22が、上下左右に連続して絵柄20となっている。絵柄20の印刷は、布表面の20%〜80%で適宜設定し得る。
【0016】
この発明において、効果的に赤外線を吸収する印刷パターンは、図2(a)に示すように、図柄が互いに直交する縦横方向に連続しているものである。即ち、基本単位の形状が互いに接して縦横に連続しているものである。または、所定幅のラインが互いに交差して縦横に連続しているものである。従って、絵柄20は図2(b)の絵柄28に示すようなものでも良い。絵柄28は、黒塗り部分及びハッチングで示した一つの正方形30が基本単位であり、正方形30の4個の角を中心とする正方形30の辺の長さを半径とする4分の1の円32が4個設けられている。4分の1の円32は、互いに連続して円を形成するとともに交差して描かれている。この正方形30が上下左右に連続して絵柄28となっている。
【0017】
これに対して、図2(c)に示すような絵柄34の場合は、図面左上から右下へ向かう傾斜した直線36が複数本互いに平行に設けられ、絵柄が互いに直交する方向に連続しているものではない。このような構成の場合、図2(a)、(b)に示す絵柄と比較して、赤外線遮蔽効果は低いものであった。
【0018】
この実施形態の水着10によれば、一般的なインキでいろいろな種類の生地13に自由なデザインで印刷することが可能であり、良好な赤外線遮蔽効果を得ることができた。また、印刷部18は微細な一定パターンが連続する絵柄20を印刷して設けるため、赤外線の透過率を低く抑え、確実に赤外線による透撮を防ぐことができる。絵柄20は微細で均一であるため、装飾効果が高く、任意の輪郭に形成することも可能であり、デザイン性に優れている。また、編み物に適用することができ、生地の伸縮性が維持され、着用感が良好で身体に密着して着用され、円滑に運動することができる。生地の伸縮性や屈曲性、通気性等を損なうことが無く、快適に着用することができる。
【0019】
なお、この実施形態の衣服は水着に限定されず、インナーや体育着、レオタード、Tシャツ等、いろいろなものに使用することができる。印刷部は、衣服の表面と裏面のいずれに設けてもよく、両面に設けてもよい。衣服の生地の素材は自由に選択可能であり、絵柄を印刷するインキの材料や色も、生地の素材やデザインに合わせて自由に選択可能である。絵柄の形状は、上記以外にも赤外線を透過しないものであれば自由にデザインすることができる。
【実施例1】
【0020】
次に、この発明による水着10について、生地13のみの部分と、生地13に印刷部18が設けられた部分で、それぞれ透過性を測定し、透過率(T%)と反射率(R%)を算出した。水着10の印刷部18を印刷するインキの色は、濃紺、ロイヤルブルー、ターコイズ、イエロー、紺、ブルーの6種類について測定を行った。ターコイズとイエローは、水着10の裏面に別布で裏地を取り付けたものも、同様に測定した。紺とブルーは、生地に印刷部以外の柄があらかじめ設けられている。透過性を測定する機器は、分光光度計を使用し、測定する赤外線の波長は、800nm、900nm、1000nmである。測定した透過性から各波長における透過率(T%)と反射率(R%)を算出し、以下の表1に示す。
【0021】
この結果、いずれの色でも透過率が、生地13のみの部分より生地13に印刷部18が設けられた部分の方が低くなり、大部分で10%以下の低い値を示し、透過性が低く抑えられ、透撮防止に高い効果があることがわかる。色が薄いイエローでは、印刷部では12.8〜13.2%と透過率がやや高いが、裏地をつけることで5.6〜6.9%と透過率が低くなり、透撮を防止することができる。
【0022】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態の衣服である水着の正面図である。
【図2】この実施形態の水着の印刷部の絵柄(a)(b)(c)の概略図である。
【符号の説明】
【0024】
10 水着
12 本体
13 生地
18 印刷部
20 絵柄
22 正方形
24 区分線
26 二等辺三角形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体の生地に微細な一定パターンが互いに直交する方向に連続する絵柄が設けられ、前記絵柄は合成樹脂製のバインダーに近赤外線波長を反射又は吸収する顔料が混合されたインキで印刷されていることを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記絵柄のパターンは、基本単位の形状が互いに接して縦横に連続していることを特徴とする請求項1記載の衣服。
【請求項3】
前記絵柄のパターンは、所定幅のラインが互いに交差して縦横に連続していることを特徴とする請求項1記載の衣服。
【請求項4】
近赤外線波長を反射又は吸収する前記顔料は、黒色顔料であり、前記絵柄の前記パターンは、布表面の20%〜80%に設けられていることを特徴とする請求項1記載の衣服。



【図1】
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【図2】
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