説明

衣服

【課題】着用者の体形にフィットして着用感が良好であり、外観も良好な衣服を提供する。
【解決手段】上半身にフィットする伸縮性の生地で作られた前身頃11と、前身頃11の胸部分の裏面に重ねて取り付けられた袋部材24と、袋部材24に入れられバストを覆う形状に成形されたカップ部材36を有する。前身頃11の胸部分の裏面の、袋部材24以外の部分に取り付けられ、袋部材24の上端部24aに縫い合わされて前身頃11より緊締力の強い裏地18,22を備える。袋部材24の下端部に縫い合わされ略水平に延出し、両端部が裏地18に縫い付けられているゴムベルト34を備える。袋部材24に形成されカップ部材36を出し入れする開口部30を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、女性用の水着やフィットネスウエア等身体に密着する衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、女性用の水着やフィットネスウエアには、胸部分の裏面にカップ部材を取り付ける袋部材が、前身頃に重ねられて設けられているものがある。袋部材は、伸縮性を有する柔軟な生地が2枚貼り合わされて作られ、胸の部分を水平方向に覆い、衣服の両脇に達する形状に形成されている。袋部材の上端縁部は、襟部分や肩部分に縫い合わされて閉鎖され下端縁部はゴムベルトが水平方向に縫い付けられて閉鎖されている。袋部材の脇部は、ゴムベルトと共に衣服の脇部に縫い合わされている。袋部材の2枚の生地のうち、身体側の生地は縫い残されて開口部となっている。そして、袋部材には、その袋部材の開口部からバストを覆う形状に成形され保形性を有する柔らかいカップ部材を入れて衣服にセットし、バストに合わせて着用するものである。
【0003】
また、衣服にカップ部材と袋部材が取り付けられていない場合は、衣服の下にストラップレスブラジャーを着用することがあった。特許文献1に開示されているブラジャーの取付ができるキャミソールは、ストラップレスブラジャーの位置ずれを防ぐ工夫がされたものである。
【特許文献1】特開2003−171803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の技術の場合、袋部材は胸部分を広く覆う形状であり、カップ部材に対して余裕が多すぎ、中に入れたカップ部材が移動し、着用の際に位置をあわせるのが困難であった。また、バストのトップが高い場合、ゴムベルトの身体中心付近が身体から浮いて袋部材の位置が不安定となる問題もあった。さらに、着用時にゴムベルトに力が加えられると、ゴムベルトを縫い付けた脇の部分が身体前側に引かれてつるため、シワができ外観が不自然になることがあった。
【0005】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、着用者の体形にフィットして着用感が良好であり、外観も良好な衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上半身にフィットする伸縮性の生地で作られた前身頃と、前記前身頃の胸部分の裏面に重ねて取り付けられた袋部材と、前記袋部材に入れられバストを覆う形状に成形されたカップ部材と、前記前身頃の胸部分の裏面の前記袋部材以外の部分に取り付けられ前記袋部材の上端部に縫い合わされて前記前身頃より緊締力の強い裏地と、前記袋部材の下端部に縫い合わされ略水平に延出し両端部は前記裏地に縫い付けられているゴムベルトと、前記袋部材に形成され前記カップ部材を出し入れする開口部が設けられている衣服である。
【0007】
また、前記袋部材の形状は、前記カップ部材の形状の周囲に僅かなゆとりを有して囲む形状であり、上方に突出する一対の山形の上端部と、下方に緩やかに膨出する一対の彎曲線状の下端部により形成され、前記山形の上端部の両側方には前記前身頃より緊締力の強い裏地が縫い合わされ、前記袋部材の中心には左右の袋を区別する縫目が形成されている。前記ゴムベルトは前記下端部の一つの湾曲線に一本ずつ縫い付けられ一対のゴムベルトは身体中心で互いに連結され、連結された部分は上方に突出する山形に互いに重ねられて縫い付けられている。
【0008】
また、前記袋部材は伸縮性を有する柔軟な2枚の生地が貼り合わされて設けられ、前記袋部材の2枚の生地のうち身体側の生地の両脇付近が、前記裏地または前記ゴムベルトから離れて開口されて前記開口部が形成され、前記開口部は、着用時にほぼ垂直方向に長く開口されている。
【0009】
前記袋部材の前記開口部は、前記袋部材の一対の山形の上端部の前中心側に各々形成されているものでも良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明の衣服は、着用者の体形にフィットして着用感が良好であり、外観も良好である。カップ部材がバストからずれることがなく、適した位置に密着させることができ、着用感も良好なものである。また、脇がつることが無く、垂直方向に綺麗なラインとなり外観が良好となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1、図2はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態の衣服10は、スポーツクラブ等で使用するフィットネスウエアであり、襟刳り12と袖ぐり14が広く開けられたタンクトップ形である。衣服10は柔軟で伸縮性が高い編み地等の生地で作られている。図1は、衣服10の前身頃11の裏面を示したものであり、前身頃11の胸部分には、肩部16から袖ぐり14に沿ってバストの両脇に至る第一裏地18が設けられている。第一裏地18は、伸縮性を有し表地や後述する袋部材24よりも強い緊締力を有する生地で作られている。第一裏地18は、襟刳り12の途中から衣服10の脇20の近傍に達する斜めの側縁部18aと、側縁部18aの端部から脇20へ向かって水平な側縁部18bと、袖ぐり14と16で囲まれた長細い形状である。第一裏地18は、左右に一対が設けられている。
【0012】
一対の第一裏地18の間には、襟刳り12の中心に連続する第二裏地22が縫い合わされて設けられている。第二裏地22は、第一裏地18と同様に伸縮性を有し表地や後述する袋部材24よりも強い緊締力を有する生地で作られている。第二裏地22は、左右の第一裏地18の側縁部18aに連続する側縁部22aと、第一裏地18の側縁部18aの途中から離れて胸部分の中心に向かう一対の側縁部22bで囲まれた、左右対称の略五角形状である。
【0013】
袋部材24は柔軟で伸縮性を有する薄い生地が2枚貼り合わされて設けられ、身体側の生地26と前身頃11側の生地28で形成されている。袋部材24の形状は、後述するカップ部材36の形状よりもわずかに周囲にゆとりが設けられた形状であって、上方に突出する一対の山形の上端部24aと、下方に緩やかに膨出する一対の湾曲線である下端部24bで形成されている。前身頃11側の生地28は、上端部24aの両側の山裾の箇所と下端部24bがほぼ90度の角部で交わり、身体側の生地26は上端部24aの山裾側と下端部24bの間の角部が面取りされ、この部分が開口部30となっている。袋部材24の身体中心には、ミシンの縫目32がほぼ垂直方向に形成され、生地26,28が互いに縫い合わされている。
【0014】
袋部材24の上端部24aは、第一裏地18の側縁部18aとの間が、ロックミシン等で強い取り付け強度で縫い合わされ、第二裏地22の側縁部22bとの間は、第二裏地22を中に挟んで生地26,28を中表にして直線縫いした後、生地26,28の表面を外側に返し、肌にも前身頃11にも当たりの無い縫い方が用いられている。
【0015】
袋部材24の下端部24bには、ゴムベルト34が取り付けられている。ゴムベルト34は、図1において右側半分を覆う第一ゴムベルト34aが設けられ、第一ゴムベルト34aの一方の端部は右側の第一裏地18の、側縁部18aと側縁部18bの角部付近に、側縁部18bの延長上となるように取り付けられている。第一ゴムベルト34aの他方の端部は、下端部24bに沿って身体中心に達している。さらに、ゴムベルト34は、図1において左側半分を覆う第二ゴムベルト34bが設けられ、第二ゴムベルト34bの一方の端部は左側の第一裏地18の、側縁部18aと側縁部18bの角部付近に、側縁部18bの延長上となるように取り付けられている。第二ゴムベルト34bの他方の端部は、下端部24bに沿って身体中心に達し、第一ゴムベルト34aの端部に重ねられて縫い付けられ、着用時にバストが離れないように補強している。第一ゴムベルト34aと第二ゴムベルト34bは、バストトップから身体前中心にかけて、引き伸ばし気味に縫い付けられて身体からの浮きを押えるようにされ、バストのラインに沿って身体前中心から側方にかけて下方に膨らむラインで形成されている。反対に、バストトップから脇にかけては、やや緩めに縫い付けられて、第一裏地18の側縁部18b付近に強い力がかかることを防いでいる。また、第一裏地18の、第一ゴムベルト34aと第二ゴムベルト34bが各々縫い付けられる部分は、側縁部18bの延長部分を折返して補強され、ゴムベルト34から受ける力を分散している。
【0016】
袋部材24には、柔軟な樹脂製のカップ部材36が左右で一対入れられている。カップ部材36は、身体の正面から見て上方に頂点が突出する略三角形であり、バストを覆う形状に立体的に成形されている。左右一対の形状は、身体の中心を対称軸とする対称形であり、各頂点は底辺の中間よりも互いに離れる方向にわずかに移動している。そして各辺は、バストの形状に合うように外側に彎曲されている。
【0017】
次に、この実施形成の衣服10の使用方法について説明する。まず、袋部材24の開口部30からカップ部材36を入れ、着用する。カップ部材36のサイズが合わないときは、適宜開口部30から取り出して他のサイズのカップ部材36を入れる。
【0018】
この実施形態の衣服10によれば、着用者の胸部分にフィットして着用感が良好であり、外観も良好である。袋部材24の周囲は、第一裏地18、第二裏地22に縫い合わせられて、カップ部材36と同様の形状で僅かいに大きい程度に形成されているため、袋部材24とカップ部材36が身体に密着するものとなる。第一裏地18、第二裏地22は、袋部材24の生地26,28より張力が高く、適度な緊締力を有する生地で作られているため、身体から浮くことが無く、確実にバストを囲み、袋部材24を身体側に密着させることができる。袋部材24と第二裏地22の間は、袋部材24の生地26,28を中表にして第二裏地22を挟んで直線で縫い合わせた後で表面を外側に返したものであり、肌にも前身頃11にもあたりが無い縫い方であり、着用感が良好で前身頃11に影響せず外観がすっきりする。
【0019】
また、袋部材24に取り付けられたゴムベルト34の両端部は、第一裏地18に縫い付けられているため、ゴムベルト34が前身頃11に影響を与えることが無く、外観が良好となる。外観上、前身頃11がつる心配が無いため、ゴムベルト34に太くて緊締力の強いゴムを使用することができ、袋部材24の下端部24bはバストに沿った湾曲線で設けられているため、袋部材24とカップ部材36が身体に密着し、快適に着用することができる。ゴムベルト34は、袋部材24の彎曲した下端部24bに沿って取り付けられ、図1に示す矢印のように、着用時に引き伸ばされて第一ゴムベルト34a、第二ゴムベルト34bは直線になろうとするため、袋部材24の身体中心が縦方向に引っ張られて身体にフィットする。
【0020】
袋部材24は、カップ部材36の周囲に僅かなゆとりを有する形状に設けられているため、カップ部材36がバストからずれることがなく適した位置に密着させることができる。カップ部材36が正確に位置決めされ、着用の際に修正する必要が無く、短時間に着替えることができ、一対のカップ部材36が左右でバランスがよい状態を維持することができる。また、袋部材24は僅かなゆとりを有しているため、異なるサイズのカップ部材36を入れ替えることもできる。
【0021】
この発明の衣服は、上記実施の形態に限定されるものではなく、例えば図3に示すように、袋部材24の開口部30を、山形の上端部24aの前中心側の傾斜部に設けても良い。これにより、カップ部材36がずれた場合にも、簡単に位置を調節することができる。
【0022】
また、各部材の形状や素材など、適宜設定可能である。衣服の形状は、自由にデザインすることができ、キャミソール形や半袖でもよく、裾の長さが短いものでもよい。衣服の用途もフィットネスウエアに限定されず、水着や下着等いろいろな用途の衣服に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の一実施形態の衣服の前身頃の裏面を示す正面図である。
【図2】この実施形態の使用状態を示す左側面図である。
【図3】この発明の他の実施形態の衣服の前身頃の裏面を示す正面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 衣服
11 前身頃
18 第一裏地
22 第二裏地
24 袋部材
24a 上端部
24b 下端部
30 開口部
34 ゴムベルト
36 カップ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上半身にフィットする伸縮性の生地で作られた前身頃と、前記前身頃の胸部分の裏面に重ねて取り付けられた袋部材と、前記袋部材に入れられバストを覆う形状に成形されたカップ部材と、前記前身頃の胸部分の裏面の前記袋部材以外の部分に取り付けられ前記袋部材の上端部に縫い合わされて前記前身頃より緊締力の強い裏地と、前記袋部材の下端部に縫い合わされ水平に延出し両端部は前記裏地に縫い付けられているゴムベルトと、前記袋部材に形成され前記カップ部材を出し入れする開口部が設けられていることを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記袋部材の形状は、前記カップ部材の形状の周囲を囲む形状であり、上方に突出する一対の山形の上端部と、下方に緩やかに膨出する一対の彎曲線状の下端部により形成され、前記山形の上端部の両側方には前記前身頃より緊締力の強い裏地が縫い合わされ、前記袋部材の中心には左右の袋を区別する縫目が形成され、前記ゴムベルトは前記下端部の一つの湾曲線に一本ずつ縫い付けられ一対のゴムベルトは身体中心で互いに連結され、連結された部分は上方に突出する山形に互いに重ねられて縫い付けられていること特徴とする請求1記載の衣服。
【請求項3】
前記袋部材は伸縮性を有する柔軟な2枚の生地が貼り合わされて設けられ、前記袋部材の2枚の生地のうち身体側の生地の両脇付近が、前記裏地または前記ゴムベルトから離れて開口されて開口部が形成され、前記開口部は、着用時にほぼ垂直方向に開口されていることを特徴とする請求項1記載の衣服。
【請求項4】
前記袋部材の前記開口部は、前記袋部材の一対の山形の上端部の前中心側に各々形成されていることを特徴とする請求項1記載の衣服。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−191418(P2009−191418A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35435(P2008−35435)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(592019523)株式会社ゴールドウインテクニカルセンター (35)
【Fターム(参考)】