説明

衣服

【課題】一般的な編み物である生地で作られ、身体に密着してねじり方向の力が身体に作用し、着用部分にねじり方向の力を意識させるとともに、着用感も良好な衣服を提供する。
【解決手段】一様な編み地の生地で作られ、生地の編成方向であるY方向が、身体の長軸方向に対して交差している。衣服はウエストラインから大腿部の中間に達するスパッツである。生地のY方向は、大腿部正面では、脇部上方から内股部下方へ向かうように左右でV字形に傾斜し、大腿部背面では内股側上方から脇部下方へ向かうように左右でハの字形に傾斜している。傾斜する角度は、生地のY方向が大腿部正面の身体垂直方向に対して、脇部上方に60°〜30°となる角度となっているものである。生地は、2ウェイトリコット生地である。生地にはY方向に沿って、通気用の開口部32が編み組織の中に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種の運動競技やそれに準じる運動等をするために着用される衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の衣服で下半身に着用する下衣には、伸縮性の生地により作られ脚部にフィットする形状に形成されたものがある。このような衣服の場合、脚部にはほぼ均等なフィット感で接するものである。また、部分的に緊締力が高い部分を設け、身体にいろいろな効果を付与する衣服もあった。例えば、特許文献1に開示されている体に密着する衣料は、柄交互に伸縮率の強弱を設けたストライプパワーネットを用いて作られている。ストライプパワーネットは、生地の伸び方向に平行で一定幅のストライプ柄を設け、編み地自体に張力の強弱に差がある模様が設けられている。そしてこの衣料は、ストライプパワーネットの伸び方向を人体垂直に対し45°の角度になるように作られている。作り方は、ストライプパワーネットの伸び方向を人体垂直方向に対し45°の角度になるように型紙を配置し、裁断し、縫い合わせるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−127179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術の、特許文献1に示す体に密着する衣料は、ストライプ柄を設け柄交互に伸縮率の強弱を設けたストライプパワーネットが必要であり、特殊な生地を使用する製品であり、締め付けが強くて着用感が悪く、体形補正等の用途に限られている。そこで、より一般的な生地を使用して製造し、着用部分をゆるやかに締め付けるとともに、その締め付け力によりねじり方向の力が作用して着用感を良好とするものが求められていた。
【0005】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、一般的な編み物である生地で作られ、身体に密着してねじり方向の力が身体に作用し、着用部分にねじり方向の力を意識させるとともに、着用感も良好な衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一様な編み地の生地で作られ、前記生地の編成方向であるY方向が、身体の長軸方向に対して交差している衣服である。
【0007】
また、前記衣服はウエストラインから大腿部の中間に達するスパッツであり、前記生地のY方向が大腿部正面では脇部上方から内股部下方へ向かうように左右でV字形に傾斜し、大腿部背面では内股側上方から脇部下方へ向かうように左右でハの字形に傾斜し、傾斜する角度は、前記生地のY方向が大腿部正面の身体垂直方向に対して脇部上方に60°〜30°となる角度となっているものである。
【0008】
また、前記生地は、例えば2ウェイトリコット生地である。前記生地にはY方向に沿って、通気用の開口部が編み組織の中に列になって設けられているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、一般的な編み物である生地で作られ、身体に密着して着用され、着用部分を締め付けるにより、身体の長軸方向に対して交差するねじり力が作用し、着用者に捻り方向の力を意識させ、体位の矯正効果がある衣服である。さらに、強く締め付けるものではなく、着用感が良好となり、運動する際も体を動かしやすく、疲労感等を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の第一実施形態の衣服の正面図である。
【図2】この発明の第一実施形態の衣服の背面図である。
【図3】この発明の第二実施形態の衣服の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1、図2はこの発明の第一実施形態を示すもので、この実施形態の衣服10は、ウエストラインから大腿部の中間付近を覆うスパッツである。
【0012】
衣服10は、ウエスト部分を左右の半周毎に形成する右ウエスト部12と左ウエスト部14が設けられ、右ウエスト部12と左ウエスト部14は、前中心16と後中心18で縫い合わされ、着用者の胴部を一周している。右ウエスト部12の下端部には右股関節部20が設けられ、左ウエスト部14の下端部には左股関節部22が設けられている。右股関節部20と左股関節部22は、股関節の部分を身体の半周毎に形成し、右股関節部20と左股関節部22は、前中心16と後中心18で縫い合わされて股関節部分を一周している。
【0013】
右股関節部20の下端部は筒状に形成され、下端部には右足部24が連続して設けられている。右足部24は、右の大腿部を覆う円筒形であり、内股部26で両側縁部が縫い合わされて筒状に形成されている。左股関節部22の下端部も同様に筒状に形成され、下端部には左足部28が連続して設けられている。左足部28は、左の大腿部を覆う円筒形であり、内股部30で両側縁部が縫い合わされて筒状に形成されている。
【0014】
右ウエスト部12、左ウエスト部14は、縦編みの編み地である2ウェイトリコット生地11で作られている。2ウェイトリコット生地11は、編み糸の往復方向であるX方向と、X方向に直角に交差し縦編み地の長手方向(編成方向)であるY方向と、X方向とY方向に交差する斜め方向に、自由に収縮する。実際には生地は、X方向とY方向の2方向に収縮している。右ウエスト部12、左ウエスト部14に使用される2ウェイトリコット生地11には、通気用の開口部32が設けられている。開口部32は、2ウェイトリコット生地11のY方向に沿って、直線状に複数本並んで設けられている。右ウエスト部12、左ウエスト部14は、2ウェイトリコット生地11のY方向が身体垂直方向に対してほぼ平行に設けられている。ただし、図1に示す正面では、わずかに上に向かうにつれて前中心16に近づくように傾斜し、図2に示す背面では、わずかに上に向かうにつれて後中心18に近づくように傾斜している。
【0015】
右股関節部20、左股関節部22は、開口部32が設けられていない2ウェイトリコット生地11で作られている。右股関節部20、左股関節部22は、2ウェイトリコット生地11のY方向が身体垂直方向に対してほぼ平行に設けられている。
【0016】
右足部24は、開口部32を有する2ウェイトリコット生地11で作られている。2ウェイトリコット生地11のY方向は、図1に示す正面では上に向かうにつれて脇部25に近づくように傾斜し、図2に示す背面では上に向かうにつれて内股部26に近づくように傾斜している。傾斜する角度は、2ウェイトリコット生地11のY方向が正面では身体垂直方向に対して脇部25上方に60°以上30°以下、好ましくは45°以下30°以上の角度となっている。つまり、2ウェイトリコット生地11のX方向は身体の水平方向に対して内股部26上方に60°以下の角度となる。正面では、開口部32の列が1本位置し、右股関節部20との境界で脇部25に近い位置から、右足部24の途中の高さで内股部26に達して設けられている。背面にも、開口部32の列が1本位置し、右股関節部20との境界で内股部26に近い位置から、右足部24の下端部24aの脇部25に近い位置に達して設けられている。
【0017】
左足部28は、開口部32を有する2ウェイトリコット生地11で作られている。2ウェイトリコット生地11のY方向は、図1に示す正面では上に向かうにつれて脇部29に近づくように傾斜し、図2に示す背面では上に向かうにつれて内股部30に近づくように傾斜している。傾斜する角度は、2ウェイトリコット生地11のY方向が正面では身体垂直方向に対して脇部29上方に60°以下30°以上、好ましくは45°以下30°以上の角度となっている。つまり、2ウェイトリコット生地11のX方向は身体の水平方向に対して内股部30上方に60°以下の角度となる。正面では、開口部32の列が1本位置し、左股関節部22との境界で脇部29に近い位置から、大腿部の途中の高さで内股部30に達して設けられている。背面にも、開口部32の列が1本位置し、左股関節部22との境界で内股部30に近い位置から、左足部28の下端部28aの脇部29に近い位置に達して設けられている。
【0018】
これにより、2ウェイトリコット生地11のY方向が大腿部正面では脇部25,29上方から内股部26,30下方へ向かうように、右足部24と左足部でV字形に傾斜し、大腿部背面では内股部26,30上方から脇部25,29下方へ向かうようにハの字形に傾斜している。
【0019】
この衣服10の作り方は、2ウェイトリコット生地11のXY方向が、所定の角度となるように、2ウェイトリコット生地11のXY方向に交差して型紙を配置し、2ウェイトリコット生地11を裁断し、縫製するものである。
【0020】
衣服10の作用について説明する。衣服10を着用すると、右足部24と左足部28の2ウェイトリコット生地11のX方向が、正面において、身体の垂直方向に交差して内股にねじる方向に力が働く。このため、肌に斜めの2ウェイトリコット生地11の収縮力が発生し、摩擦力が働き、この摩擦力が筋肉に張力を発生させ、筋肉に程よい緊張感を与える。また、2ウェイトリコット生地11が身体の各部で、伸縮し各部での最適な角度、例えば60°以下30°以上、好ましくは45°以下30°以上の角度で張力を与えるように変化する。
【0021】
この実施形態の衣服10によれば、着用しただけで右足部24と左足部28により、大腿部が内股になる方向へねじり力が働き、ねじり方向に意識が働き、足の動きを矯正したり、膝の上下運動等を真っ直ぐに行うように無意識に作用したりする等の効果がある。さらに、筋肉に程よい緊張感を与えることができ、快適な着用感となる。運動する際も体を動かしやすく、疲労感を軽減することができる。衣服10は製造方法が簡単で、2ウェイトリコット生地11のXY方向が、所定の角度となるように型紙を配置して生地を裁断し、縫製するだけであり、コストがかからず、製造効率もよい。身体の垂直方向の伸縮が大きい股関節部分には、右股関節部20、左股関節部22が、2ウェイトリコット生地11のY方向が身体の垂直方向とほぼ平行に設けられているため、身体の動きを妨げずにフィットすることができる。また、右ウエスト部12、左ウエスト部14、右足部24、左足部28の2ウェイトリコット生地11には開口部32が設けられているため、汗が乾きやすく、涼しく着用感が快適である。
【0022】
次に、この発明の第二実施形態について図3に基づいて説明する。この実施形態の衣服34は、ウエストラインからくるぶしまでを覆う長いスパッツである。衣服34は、腹部の上部を覆う上腹部36と、腹部の下部を覆う下服部38、股関節付近を覆う股関節部40が設けられている。
【0023】
股関節部40の下端部は一対の筒状に形成され、下端部には右足部42と左足部44がそれぞれ連続して設けられている。右足部42は、右の大腿部を覆う円筒形であり、内股部46で両側縁部が縫い合わされて筒状に形成されている。左足部44は、左の大腿部を覆う円筒形であり、内股部48で両側縁部が縫い合わされて筒状に形成されている。
【0024】
右足部42は、開口部32を有する2ウェイトリコット生地11で作られている。2ウェイトリコット生地11のY方向は、図3に示す正面では上に向かうにつれて脇部43に近づくように傾斜し、背面では上に向かうにつれて内股部46に近づくように傾斜している。傾斜する角度は、2ウェイトリコット生地11のY方向が正面では身体垂直方向に対して脇部43上方に60°以下30°以上、好ましくは45°以下30°以上の角度となっている。正面では、開口部32の列が4本位置している。
【0025】
左足部44も、開口部32を有する2ウェイトリコット生地11で作られている。2ウェイトリコット生地11のY方向は、上に向かうにつれて脇部45に近づくように傾斜し、背面では上に向かうにつれて内股部48に近づくように傾斜している。傾斜する角度は、2ウェイトリコット生地11のY方向が正面では身体垂直方向に対して脇部45上方に60°以下30°以上、好ましくは45°以下30°以上の角度となっている。正面では、開口部32の列が4本位置している。
【0026】
この実施形態の衣服34によれば、上記実施形態と同様の効果を有し、またくるぶしまで広い面積で身体に密着し、確実に身体の垂直方向に交差して内股にねじるような力が働き、筋肉に緊張感を与えることができる。くるぶしまで覆われるため、気温が低い時に防寒効果を有するものである。
【0027】
なお、この発明の衣服は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、2ウェイトリコット生地が身体の各部で、伸縮し各部での最適な角度、例えば60°以下30°以上の角度で適宜の張力を与えるように変化するものであればよい。また、縫製位置や開口部の位置は適宜設定可能であり、適宜着用感のよい位置や形状に設定することができる。ウエスト部や股関節部のパーツの形状や個数も自由に変更可能であり、前中心や後中心で縫い合わせるもの以外に、脇部で縫い合わせるものでもよい。左右足部の長さも、適宜変更可能である。生地は、2ウェイトリコット生地以外のものでもよく、開口部が設けられていないものを使用してもよい。また、この発明の衣服は、スパッツ以外にアンダーシャツなどでもよく、この場合は腕などにねじる力を加えて快適に着用することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 衣服
11 2ウェイトリコット生地
12 右ウエスト部
14 左ウエスト部
16 前中心
18 後中心
20 右股関節部
22 左股関節部
24 右足部
25 脇部
26 内股部
28 左足部
29 脇部
30 内股部
32 開口部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一様な編み地の生地で作られ、前記生地の編成方向であるY方向が、身体の長軸方向に対して交差していることを特徴とする衣服。
【請求項2】
前記衣服は、ウエストラインから大腿部の中間に達するスパッツであり、前記生地のY方向が大腿部正面では脇部上方から内股部下方へ向かうように左右でV字形に傾斜し、大腿部背面では内股側上方から脇部下方へ向かうように左右でハの字形に傾斜し、傾斜する角度は、前記生地のY方向が大腿部正面の身体垂直方向に対して脇部上方に60°〜30°の角度となっていることを特徴とする請求項1記載の衣服。
【請求項3】
前記生地は2ウェイトリコット生地であり、前記生地には、Y方向に沿って、通気用の開口部が編み組織の中に列になって設けられていることを特徴とする請求項1記載の衣服。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−74502(P2011−74502A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223895(P2009−223895)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(508357659)
【Fターム(参考)】