説明

衣類の乾燥仕上げ装置、並びに衣類の付着物除去方法及び付着物除去装置

【課題】衣類搬送経路の上方から吹き出す熱風だけで衣類の皺を伸ばして乾燥仕上げする従来のトンネルフィニッシャのように衣類の上部だけが速く乾燥したり、仕上げにばらつきが生じたりする等の欠点を解消でき、更に、衣類搬送経路の上方のみから吹き出す熱風の風圧を高めることにより生じる弊害をも解消でき、更に又、衣類を傷めることなく糸屑や綿埃、毛羽等の付着物を簡単かつ確実に自動的に振り落すことのできる衣類の乾燥仕上げ装置を提供する。
【解決手段】衣類搬送経路6の上方から下方に向けて風を吹出す手段を備える。衣類搬送経路6を隔てて相対向する両側面板16,17にそれぞれ、衣類搬送経路内に向けて下向きに熱風を吹出す複数個の風吹出孔を列設している。衣類搬送経路6の搬送上流側に、衣類に蒸気を吹き付けて蒸らし処理を行う蒸気室2が両側面板16,17間の衣類搬送経路6と連通状に設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縫製作業やドライクリーニング作業において、背広やズボン、コート等の衣類の皺を伸ばして乾燥仕上げする衣類の乾燥仕上げ装置、並びに衣類に付着している糸屑や綿埃、毛羽等の付着物を自動的に除去する衣類の付着物除去方法及び除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
縫製後又はクリーニング時の背広やズボン、コート等衣類の仕上げを行うに際し、衣類をトンネル状の衣類搬送経路の内部に通して皺を伸ばし易くするための蒸気蒸らしと乾燥仕上げを行うトンネルフィニッシャが公知である(例えば、特許文献1参照。)。このトンネルフィニッシャによれば、乾燥工程において熱風を乾燥室の上方から下方に向けて送風し、衣類に熱風を吹き付けるが、このとき熱風の送風により衣類に振動を付与するため、衣類に付着している糸屑や綿埃等の付着物が多少ながらも振り落とされる。しかし、乾燥室の上方からの熱風の吹き付けだけでは、衣類から付着物を完全に除去できる程度にまで十分に振り動かすことができないため、衣類に付着物が残る場合が多かった。
このようなときは、衣類を手に持って振り動かすことで衣類に付着している糸屑や綿埃、毛羽等の付着物を除去し、それでも除去できない場合は粘着テープなどを使って取り除いているが、あくまでも手作業であるため、非能率的である。
【0003】
【特許文献1】実開平4−125897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の上記トンネルフィニッシャでは衣類搬送経路の上方から下方に向けて熱風を吹き出すシステムしかなく、仕上げ処理能力に限界があった。
すなわち、従来のトンネルフィニッシャにおいて、皺を素早く伸ばし、また付着物を除去する仕上げ処理能力を高めるために、衣類搬送経路の上方から下方に向けて熱風を吹き出すブロワの能力を大きくして風圧を高める機械もあるが、風圧を高くすることにより以下のような弊害が発生する。
(a)衣類搬送経路内において、ハンガーに吊るされた背広やコート類等の衣類のポケットが上方からの強風により膨らんだり、伸びたりして型崩れを起こし、元の形に修復できなくなるという問題が生じる。
(b)ハンガーに吊るされた背広やコート類等の衣類が上方からの強風によりハンガーに押し付けられて衣類にハンガーの形が残りクレームとなる。
(c)風圧を高める為にはブロワの能力の大きいものが使用され、これに伴い風量も大きくなり、風量が大きくなる分だけ加熱ヒータの能力も比例して大きくする必要があり、蒸気ヒータの場合蒸気量の消費が増大し、ランニングコストの高騰を招くという問題が生じる。
(d)衣類搬送経路の上方のみからの熱風の風圧による叩き作用により衣類の皺取りや皺伸ばしを行っているため、衣類が擦れによりてかついたり、傷みが生じたりしやすかった。
(e)衣類搬送経路の上方から下方に向けて強風を吹き出すだけでは、衣類を振り動かし得る量は僅かであるため付着物の除去能力は極めて低く、満足し得るものではない。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、衣類搬送経路の両側面からも熱風を衣類に吹き付けることにより、衣類搬送経路の上方から吹き出す熱風だけで衣類の皺を伸ばして乾燥仕上げする従来のトンネルフィニッシャのように衣類の上部だけが速く乾燥したり、仕上げにばらつきが生じたりする等の欠点を解消でき、更に、衣類搬送経路の上方のみから吹き出す熱風の風圧を高めることにより生じる上記弊害をも解消でき、更に又、衣類を傷めることなく糸屑や綿埃、毛羽等の付着物を簡単かつ確実に自動的に振り落すことのできる衣類の乾燥仕上げ装置を提供することにある。
【0006】
また本発明は、衣類搬送経路の両側面から風を衣類に吹き付けることにより衣類を傷めることなく糸屑や綿埃、毛羽等の付着物を簡単かつ確実に自動的に振り落すことのできる衣類の付着物除去方法及び付着物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の衣類の乾燥仕上げ装置は、請求項1に記載のように、縫製後又はクリーニング後の衣類の皺を伸ばして乾燥仕上げする衣類の乾燥仕上げ装置において、ハンガーに吊り下げた衣類をハンガーごと通過させる衣類搬送経路の上方から下方に向けて風を吹出す手段を備え、前記衣類搬送経路を隔てて相対向する両側面板にそれぞれ、衣類搬送経路内に向けて下向きに熱風を吹出す複数個の風吹出孔を列設しており、前記衣類搬送経路の搬送上流側に、衣類に蒸気を吹き付けて蒸らし処理を行う蒸気室が前記両側面板間の衣類搬送経路と連通状に設置されていることに特徴を有するものである。
【0008】
このような構成の衣類の乾燥仕上げ装置によれば、衣類を蒸気室で蒸らし処理した後、引き続いて衣類搬送経路の上方と両側面板の三方向から下向きに吹出す均等な熱風を衣類に吹き付けて乾燥処理することにより衣類全体の皺伸ばし、乾燥仕上げをばらつきなく、一様に且つ迅速に仕上げることができる。また、衣類搬送経路の上方からのみならず、両側面からも熱風を衣類に吹き付けるため、上方からの風圧を特に高めなくても皺伸ばし、乾燥仕上げの処理能力を高めることができる。したがって、従来のトンネルフィニッシャのように衣類搬送経路の上方のみから吹き出す熱風の風圧を高めることにより生じる上記弊害、すなわち、衣類搬送経路内において、ハンガーに吊るされた背広やコート類等の衣類のポケットが上方からの強風により膨らんだり、伸びたりして型崩れを起こしたり、ハンガーに吊るされた背広やコート類等の衣類が上方からの強風によりハンガーに押し付けられて衣類にハンガーの形が残ったり、衣類搬送経路の上方のみからの熱風の風圧による叩き作用により衣類が擦れによりてかついたり、傷みが生じたりする等の弊害を解消することができる。
また、衣類に対して衣類搬送経路の上方と両側面板の三方向から均等な熱風を吹き付けることにより、送風用のブロワや熱風用のヒータの性能においてはそれと同等能力のブロワや熱風用ヒータを備える従来のトンネルフィニッシャに比べて、2/3程度のランニングコストで済み、極めて経済的である。
しかも、かかる乾燥仕上げと同時に、相対向する両側面板の風吹出孔から下向きに吹出す熱風で衣類が小刻みにはためく、このはためきにより衣類に付着している糸屑や綿埃など付着物が自動的に確実に振り落されるという機能をも発揮する。
【0009】
請求項1に記載の衣類の乾燥仕上げ装置は、請求項2に記載のように、前記両側面板のうち、一方の側面板の風吹出孔と、もう一方の側面板の風吹出孔とは互いに上下方向にジグザグ状になる配置関係に設定することができる。これによれば、一方の側面板の風吹出孔ともう一方の側面板の風吹出孔とを正対させた場合よりも、衣類を確実かつ十分にはためかせることができて付着物の除去効果を高めることができる。
【0010】
本発明の衣類の付着物除去方法は、請求項3に記載のように、縫製後又はクリーニング後の衣類に付着している付着物を除去する衣類の付着物除去方法において、衣類搬送経路を隔てて相対向する両側面板にそれぞれ、衣類搬送経路内に向けて下向きに風を吹出す複数個の風吹出孔を列設し、一方の側面板の風吹出孔ともう一方の側面板の風吹出孔とは互いに上下方向にジグザグ状になる配置関係に設定されており、前記衣類搬送経路にハンガーに吊り下げた衣類をハンガーごと通過させ、その通過途上で前記両側面板の風吹出孔から風を衣類搬送経路内に向けて下向きに吹出して前記衣類をはためかすことにより衣類に付着している付着物を振り落すことに特徴を有するものである。
このような構成の衣類の付着物除去方法によれば、相対向する両側面板の風吹出孔から下向きに吹出す風で衣類が小刻みにはためく、このはためきにより衣類に付着している糸屑や綿埃など付着物が自動的に確実に振り落される。とくに、一方の側面板の風吹出孔ともう一方の側面板の風吹出孔とは、互いに、正対させることなく、上下方向にジグザグ状になる配置関係に設定されているので、正対させた場合よりも衣類を確実かつ十分にはためかせることができて付着物の除去効果を高めることができる。また、衣類は風ではためかせるだけであるので、衣類を傷めることもない。
【0011】
請求項3記載の衣類の付着物除去方法は、請求項4に記載のように、衣類搬送経路の上方からも下方に向けて風を吹出すようにすることができる。これによれば、上方からの風圧によっても付着物を落とすことができ、付着物の振り落し除去効果を更に高めることができる。
【0012】
本発明の衣類の付着物除去装置は、請求項5に記載のように、縫製後又はクリーニング後の衣類に付着している付着物を除去する衣類の付着物除去装置において、ハンガーに吊り下げた衣類をハンガーごと通過させる衣類搬送経路を隔てて相対向する両側面板にそれぞれ、衣類搬送経路内に向けて下向きに風を吹出す複数個の風吹出孔を列設しており、一方の側面板の風吹出孔ともう一方の側面板の風吹出孔とは互いに上下方向にジグザグ状になる配置関係に設定されていることに特徴を有するものである。
このような構成の衣類の付着物除去装置によれば、請求項3に記載の付着物除去方法の場合と同様に、相対向する両側面板の風吹出孔から下向きに吹出す風で衣類が小刻みにはためく、このはためきにより衣類に付着している糸屑や綿埃など付着物が自動的に振り落される。とくに、一方の側面板の風吹出孔ともう一方の側面板の風吹出孔とは、互いに、正対させることなく、上下方向にジグザグ状になる配置関係に設定されているので、正対させた場合よりも衣類を確実かつ十分にはためかせることができて付着物の除去効果を高めることができる。また、衣類は風ではためかせるだけであるので、衣類を傷めることもない。
【0013】
請求項5記載の衣類の付着物除去装置は、請求項6に記載のように、前記衣類搬送経路の上方からも下方に向けて風を吹出すようにすることができる。これによれば、上方からの風圧によっても付着物を落とすことができ、付着物の振り落し除去効果を更に高めることができる。
【0014】
請求項5又は6に記載の衣類の付着物除去装置は、請求項7に記載のように、前記風吹出孔は該風吹出孔の上縁側に衣類搬送経路に向けて下り勾配をもつ羽板を設けたルーバーとすることができる。これによれば、風を風吹出孔から下向きに確実かつスムーズに吹出させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の衣類の乾燥仕上げ装置によれば、衣類搬送経路の上方から吹き出す熱風だけで衣類の皺を伸ばして乾燥仕上げする従来のトンネルフィニッシャのように衣類の上部だけが速く乾燥したり、仕上げにばらつきが生じたりする等の欠点を解消でき、また、衣類搬送経路の上方のみから吹き出す熱風の風圧を高めることにより生じる上記弊害をも解消できる。しかも、衣類の皺を伸ばして乾燥仕上げすることができると同時に、衣類に付着している糸屑や綿埃など付着物を衣類を傷めることなく簡単かつ確実に自動的に振り落すことができる。
【0016】
本発明の衣類の付着物除去方法及び衣類の付着物除去装置によれば、衣類に付着している糸屑や綿埃など付着物を衣類を傷めることなく簡単かつ確実に自動的に振り落すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の好適な実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明の一実施例を示す衣類の乾燥仕上げ装置の正面図、図2は図1の乾燥仕上げ装置の平面図、図3は図1の乾燥仕上げ装置の側面図、図4は図2におけるA−A線断面図、図5は図1の乾燥仕上げ装置の乾燥室の縦断側面図、図6は図5の乾燥室内の一側面板の一部正面図である。
【0018】
先ず、衣類の乾燥仕上げ装置の一実施例を説明する。
【0019】
図1〜図3において、衣類の乾燥仕上げ装置1は、蒸気を吹出す蒸気室2と熱風を吹出す乾燥室3が直列に連通状に設けられており、両室2,3内の上方には、縫製後又はクリーニング後の衣類4をハンガー5に吊るして両室2,3内の中央の衣類搬送経路6に沿って移動させるチェーンコンベア7が張架されている。
【0020】
チェーンコンベア7は、図2に示すように、両室2,3の中央の衣類搬送経路6の上方を走行し、室外においてエンドレス状につながる矩形環状に成している。その矩形環状のチェーンコベア7の四隅はスプロケット8に掛け渡されており、そのうちの一隅のスプロケット8が図外の減速機付き駆動モータで駆動されて搬送方向Bに循環回走して衣類4を搬送するようになっている。
【0021】
蒸気室2は、図4に示すように、衣類搬送経路6を隔てて前後に相対向する両側面板9,10を配備し、両側面板9,10には多数の蒸気吹出孔11,12を縦横に列設するとともに、多数の蒸気噴射ノズル13を有する蒸気供給管14を配管している。蒸気供給管14の蒸気噴射ノズル13から噴出する蒸気は蒸気吹出孔11,12から衣類搬送経路6内に向けて吹出すようにしている。なお、衣類搬送経路6の底部にスクリーン15を敷設し、そのスクリーン15からも蒸気が上向きに吹出すようにしている。
【0022】
一方、乾燥室3は、衣類搬送経路6の上方から下方に向けて熱風を吹出す手段を備えている。その手段としては、図3に示すように、乾燥室3の床下には床下空間室21が形成され、この床下空間室21と衣類搬送経路6の底部との間にはスクリーン22を介して連通させている。図1〜図3に示すように、乾燥室3の外部に循環用ブロワ33を設置し、この循環用ブロワ33の吸込口33aと床下空間室21とを連通接続するとともに、循環用ブロワ33の吐出口33bと衣類搬送経路6の上部に設けた吹出口34とを循環用ダクト35で連通接続している。循環用ダクト35内には加熱ヒータ36を配設する。循環用ブロワ33が駆動すると、加熱ヒータ36で加熱された熱風は乾燥室3の上方から衣類搬送経路6内に吹出し、衣類搬送経路6内の熱風をスクリーン22、床下空間室21を介して吸引してこの衣類搬送経路6内の風をスクリーン22、床下空間室21を介して吸引して循環用ダクト35内に戻し、また乾燥室3の上方から衣類搬送経路6内に吹出し、それを繰り返す。
【0023】
また、乾燥室3は、図3、図5、図6に示すように、衣類搬送経路6を隔てて前後に相対向する両側面板16,17を配備し、両側面板16,17にそれぞれ、衣類搬送経路6内に向けて下向きに熱風を吹出す複数個の風吹出孔18,19を列設しており、一方の側面板16の風吹出孔18ともう一方の側面板17の風吹出孔19とは互いに上下方向にジグザグ状になる配置関係に設定されている。図5、図6に示すように、各風吹出孔18,19は各孔18,19の上縁側に衣類搬送経路6に向けて下り勾配をもつ羽板20を設けたルーバーとしている。
【0024】
前後の側面板16,17の各背面側には、図3、図5に示すように、熱風を各風吹出孔18,19に導く風道23,24を溶接等で取り付けている。風道23,24の各上端側には循環用ブロワ25,26をそれぞれ設置し、一方の循環用ブロワ25の吐出口25aを一方の風道23の上端に、他方の循環用ブロワ26の吐出口26aを他方の風道24の上端にそれぞれ臨ませ、循環用ブロワ25,26の各吸込口25b,26bは床下空間室21と循環用ホース27,28で連通接続している。
図3、図5のように、各風道23,24には下り勾配をもつ導風板29・・・,30・・・を上下方向に多段に備え、最上段の導風板29,30を最も短く形成し、これより最下段の導風板29,30に行くに従って順次長く形成している。図1、図3に示すように、各循環用ホース27,28内には、必要に応じて、加熱ヒータ31,32を配設する。
しかるときは、循環用ブロワ25,26が駆動すると、加熱ヒータ31,32で加熱された熱風は風道23,24の上方へ吹出し、導風板29・・・,30・・・を介して各風吹出孔18,19から衣類搬送経路6内に吹出し、この衣類搬送経路6内の熱風をスクリーン22、床下空間室21を介して吸引して循環用ホース27,28内に戻し、また風道23,24の上方へ吹出し、それを繰り返す。
なお、上記乾燥室3の温度や風量、チェーンコンベア7の速度、蒸気室2の蒸気吹出し時間などは、衣類4の種類や素材、大きさなどに応じて適宜調節される。
【0025】
次に、上記構成の衣類の乾燥仕上げ装置1の作用を説明する。
【0026】
先ず、蒸気室2、乾燥室3の外でチェーンコンベア7のハンガー5に衣類4を吊り下げ、チェーンコンベア7を循環回走させる。衣類4が蒸気室2内を通過する時に蒸気を吹き付け、引き続いて乾燥室3に運ばれて熱風が吹き付けられる。
【0027】
蒸気室2内では、図4のように、蒸気供給管14の各噴射ノズル13から蒸気37を噴出して、蒸気吹出孔11,12を介して衣類4全体に蒸気37を均一に吹き付けて加湿し、衣類4の皺を伸ばし易くするための蒸らし処理が行われる。
【0028】
引き続いて、乾燥室3内では、図3、図5のように、循環用ブロワ25,26が駆動して、加熱ヒータ31,32で加熱された熱風は風道23,24の上方へ吹出し、導風板29・・・,30・・・を介して相対向する両側面板16,17の各風吹出孔18,19から衣類搬送経路6内に下向きに吹出し、衣類4全体に熱風が均一に吹き付けられて除湿乾燥するとともに、熱風の吹付けにより衣類4に振動を付与することにより衣類4の皺を伸ばす乾燥処理が行われる。また、循環用ブロワ33が駆動して、加熱ヒータ36で加熱された熱風を乾燥室3の上方からも衣類搬送経路6内に吹出し、この熱風によっても衣類4を除湿乾燥し、特にその下向きの熱風を衣類4が受けることにより下向きの張力を衣類4に付与し、皺伸ばし処理効果をより一層高めることができる。
【0029】
この皺伸ばし乾燥処理と同時に、両側面板16,17の風吹出孔18,19から下向きに吹出す熱風で衣類4が小刻みにはためくことに伴って衣類4に付着している糸屑や綿埃等の付着物が自動的に振り落される。特に、一方の側面板16の風吹出孔18ともう一方の側面板17の風吹出孔19とは、互いに、正対させることなく、上下方向にジグザグ状になる配置関係に設定している。したがって、図5のように、衣類4は、前側の側面板16の最上段の風吹出孔18から下向きに吹出す風40で後側の側面板の方向(矢印41方向)に、該風吹出孔18より低い位置にある後側の側面板17の最上段の風吹出孔19から下向きに吹出す風42で前側の側面板16の方向(矢印43方向)に、該風吹出孔19より低い位置にある前側の側面板16の風吹出孔18から下向きに吹出す風44で後側の側面板17の方向(矢印45方向)に、該風吹出孔18より更に低い位置にある後側の側面板17の風吹出孔19から下向きに吹出す風46で前側の側面板16の方向(矢印47方向)に、該風吹出孔19より更に低い位置にある前側の側面板16の風吹出孔18から下向きに吹出す風48で後側の側面板17の方向(矢印49方向)に、該風吹出孔18より更に低い位置にある後側の側面板17の風吹出孔19から下向きに吹出す風50で前側の側面板16の方向(矢印51方向)にそれぞれ押されて小刻みに前後に交互にはためくことになる。このはためきにより衣類4に付着している糸屑や綿埃などの付着物は簡単かつ確実に振り落すことができる。また、衣類4は風ではためかれるだけであるので傷められることもない。各風吹出孔18,19は羽板20を備えるルーバーとしているので、風を風吹出孔18,19から下向きに確実かつスムーズに吹出させることができる。
【0030】
他の使用例として、カシミヤやアンゴラ素材などからなる衣類の場合は、蒸気で縮みやすいため、蒸気室2で蒸らし処理は行われない。
【0031】
次に、本発明の衣類の付着物除去方法及び付着物除去装置の一実施例を説明する。
【0032】
この衣類の付着物除去装置は、図1〜図3、図5、図6に示す上記衣類の乾燥仕上げ装置1の乾燥室3の内部構造と基本的に同一であり、唯、乾燥仕上げ装置1のような蒸気室2や衣類搬送経路6の上方からの風吹き出し手段は必ずしも必要とせず、また熱風に限られず、常温の風であってもよい点で異なるだけであるため、以下、同一要素、同一部材に同一符号を付して重複して説明する。
【0033】
すなわち、衣類の付着物除去装置は、図3、図5のように、衣類搬送経路6を隔てて前後に相対向する側面板16,17を配備し、両側面板16,17にそれぞれ、衣類搬送経路6内に向けて下向きに熱風又は常温の風(以下、単に「風」という。)を吹出す複数個の風吹出孔18,19を列設しており、一方の側面板16の風吹出孔18ともう一方の側面板17の風吹出孔19とは互いに上下方向にジグザグ状になる配置関係に設定されている。図5、図6に示すように、各風吹出孔18,19は各孔18,19の上縁側に衣類搬送経路6に向けて下り勾配をもつ羽板20を設けたルーバーとしている。
【0034】
図3のように、衣類搬送経路6の床下には床下空間室21が形成され、この床下空間室21と衣類搬送経路6の底部との間にはスクリーン22を介して連通させている。図3、図5に示すように、前後の側面板16,17の各背面側には、風を各風吹出孔18,19に導く風道23,24を溶接等で取り付けている。風道23,24の各上端側には循環用ブロワ25,26をそれぞれ設置し、一方の循環用ブロワ25の吐出口25aを一方の風道23の上端に、他方の循環用ブロワ26の吐出口26aを他方の風道24の上端にそれぞれ臨ませ、循環用ブロワ25,26の各吸込口25b,26bは床下空間室21と循環用ホース27,28でそれぞれ連通接続している。各風道23,24には下り勾配をもつ導風板29・・・,30・・・を上下方向に多段に備え、最上段の導風板29,30を最も短く、最下段の導風板29,30にかけて順次長く形成している。しかるときは、循環用ブロワ25,26が駆動すると、風は風道23,24の上方へ吹出し、導風板29・・・,30・・・を介して各風吹出孔18,19から衣類搬送経路6内に吹出し、衣類搬送経路6内の風をスクリーン22、床下空間室21を介して吸引して循環用ホース27,28内に戻し、また風道23,24の上方へ吹出し、それを繰り返す。
【0035】
この付着物除去装置においても、上記乾燥仕上げ装置1の場合と同様に、衣類搬送経路6の上方からも下方に向けて風を吹出すようにしてもよい。この場合は、図1、図3のように、循環用ブロワ33を設置し、この循環用ブロワ33の吸込口33aと床下空間室21とを連通接続するとともに、循環用ブロワ33の吐出口33bと衣類搬送経路6の上部に設けた吹出口34とを循環用ダクト35で連通接続する。循環用ブロワ33が駆動すると、風は衣類搬送経路6の上方から下方に向けて吹出し、この衣類搬送経路6内の風をスクリーン22、床下空間室21を介して吸引して循環用ダクト35内に送り、また衣類搬送経路6の上方から下方に向けて吹出し、それを繰り返す。
【0036】
次に、上記構成の衣類の付着物除去装置の作用を説明する。
【0037】
先ず、チェーンコンベア7のハンガー5に衣類4を吊り下げ、チェーンコンベア7を循環回走させて衣類搬送経路6に運ぶ。
衣類搬送経路6の途中において、循環用ブロワ25,26の駆動によって、風が風道23,24の上方へ吹出し、導風板29・・・,30・・・を介して相対向する両側面板16,17の各風吹出孔18,19から下向きに吹出し、この風で衣類4が小刻みにはためくことにより衣類4に付着している糸屑や綿埃など付着物は自動的に振り落される。その際、上記乾燥仕上げ装置1の乾燥室3の作用について説明した場合と同様に、一方の側面板16の風吹出孔17ともう一方の側面板17の風吹出孔19とは、互いに、正対させることなく、上下方向にジグザグ状になる配置関係に設定されているので、衣類4を確実かつ十分にはためかせることができて付着物の除去効果を高めることができる。衣類4は風ではためくだけであるので傷めることもない。
また、循環用ブロワ33が駆動して、衣類搬送経路6の上方からも風を吹出すと、衣類4の付着物の振り落し効果を更に高めることができる。各風吹出孔18,19が衣類搬送経路6に向けて下り勾配をもつ羽板20を設けたルーバーであると、風を風吹出孔18,19から下向きに確実にスムーズに吹出させることができる。
【0038】
なお、上記衣類の付着物除去装置の入口側には、衣類4に静電気で付着している異物を取り除きやすくするための静電気除去手段(図示せず)を配備することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例を示す衣類の乾燥仕上げ装置の正面図である。
【図2】図1の乾燥仕上げ装置の平面図である。
【図3】図1の乾燥仕上げ装置の側面図である。
【図4】図2におけるA−A線断面図である。
【図5】図1の乾燥仕上げ装置の乾燥室の縦断側面図である。
【図6】図5の乾燥室内の一側面板の一部正面図である。
【符号の説明】
【0040】
2 蒸気室
3 乾燥室
4 衣類
5 ハンガー
6 衣類搬送経路
16,17 側面板
18,19 風吹出孔
20 羽板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縫製後又はクリーニング時の衣類の皺を伸ばして乾燥仕上げする衣類の乾燥仕上げ装置において、ハンガーに吊り下げた衣類をハンガーごと通過させる衣類搬送経路の上方から下方に向けて風を吹出す手段を備え、前記衣類搬送経路を隔てて相対向する両側面板にそれぞれ、衣類搬送経路内に向けて下向きに熱風を吹出す複数個の風吹出孔を列設しており、前記衣類搬送経路の搬送上流側に、衣類に蒸気を吹き付けて蒸らし処理を行う蒸気室が前記両側面板間の衣類搬送経路と連通状に設置されていることを特徴とする、衣類の乾燥仕上げ装置。
【請求項2】
前記両側面板のうち、一方の側面板の風吹出孔と、もう一方の側面板の風吹出孔とは互いに上下方向にジグザグ状になる配置関係に設定されている、請求項1に記載の衣類の乾燥仕上げ装置。
【請求項3】
縫製後又はクリーニング後の衣類に付着している付着物を除去する衣類の付着物除去方法において、衣類搬送経路を隔てて相対向する両側面板にそれぞれ、衣類搬送経路内に向けて下向きに風を吹出す複数個の風吹出孔を列設し、一方の側面板の風吹出孔ともう一方の側面板の風吹出孔とは互いに上下方向にジグザグ状になる配置関係に設定されており、前記衣類搬送経路にハンガーに吊り下げた衣類をハンガーごと通過させ、その通過途上で前記両側面板の風吹出孔から風を衣類搬送経路内に向けて下向きに吹出して前記衣類をはためかすことにより衣類に付着している付着物を振り落すことを特徴とする、衣類の付着物除去方法。
【請求項4】
前記衣類搬送経路の上方からも下方に向けて風を吹出すようにしている、請求項3記載の衣類の付着物除去方法。
【請求項5】
縫製後又はクリーニング後の衣類に付着している付着物を除去する衣類の付着物除去装置において、ハンガーに吊り下げた衣類をハンガーごと通過させる衣類搬送経路を隔てて相対向する両側面板にそれぞれ、衣類搬送経路内に向けて下向きに風を吹出す複数個の風吹出孔を列設しており、一方の側面板の風吹出孔ともう一方の側面板の風吹出孔とは互いに上下方向にジグザグ状になる配置関係に設定されていることを特徴とする、衣類の付着物除去装置。
【請求項6】
前記衣類搬送経路の上方からも下方に向けて風を吹出すようにしている、請求項5記載の衣類の付着物除去装置。
【請求項7】
前記風吹出孔が該風吹出孔の上縁側に衣類搬送経路に向けて下り勾配をもつ羽板を設けたルーバーである、請求項5又は6に記載の衣類の付着物除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−121145(P2008−121145A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−306266(P2006−306266)
【出願日】平成18年11月13日(2006.11.13)
【出願人】(599152223)株式会社宮田工機 (4)
【Fターム(参考)】