説明

衣類の欠陥検査装置

【課題】型枠内部に設置される照明光源への電気配線コードの捩れをなくし、漏電等の電気トラブルを防止して、安全性及び作業性を向上させ、検査ミスを減少させ得る衣類の欠陥検査装置を提供すること。
【解決手段】先端にランプ1が固定的に支持され、基端が支柱部材2に固定的に支持された中空軸3と、この中空軸3に基端側が回転自在に支持され、前記ランプ1の明かりが透過可能な中空筒状構造とされた衣類装着用の型枠4とを備え、前記ランプ1が前記中空軸3によって前記型枠4内に非回転状態に支持され、かつ、前記ランプ1への電気コード5が前記中空軸3内を通して前記型枠4の回転とは不干渉に配線されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編成工程や縫製工程等の製造工程を経た衣類製品の仕上がり状態を検査する衣類の欠陥検査装置に関するもので、シャツやパンツ等の筒状部分を有する衣類製品全般が対象である。
【背景技術】
【0002】
従来、編成工程や縫製工程等の製造工程を経た衣類製品の仕上がり状態を検査する場合、衣類製品の着用形態に近似した形状の型枠を使用し、この型枠に衣類製品を装着して検査員が製品の外側からの照明の下で目視検査していた。
この検査では、欠陥の見落とし等の検査ミスを完全になくすことができなかった。そこで、型枠内にランプを取り付けて衣類製品を内部からも照らし出して欠陥の有無を透過検査するようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−12921号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の型枠は、ランプを型枠の内面に取り付けているため、型枠を回転させて検査する都度、ランプへの電気コードが捩れることになり、漏電や断線等が発生する恐れがあり、安全面や作業性等に問題点があった。
また、特許文献1は、型枠への衣類の装着を自動的に行わせるために、型枠の両側にエアシリンダで移動するチャック部材を設け、このチャック部材で筒状衣類の一端を把持させて型枠の奥に向けて移動させて衣類を装着させており、この装着をスムーズに行わせるために、型枠を扁平にしていた。これであると、衣類を扁平に装着できるだけとなり、立体的に装着することができないため、前身頃と後身頃の縫合部や股下部の縫合状態の検査等を立体的に明瞭に映し出して行うことができず、検査ミスが発生する問題点があった。
【0004】
本発明は、従来の検査装置の上記問題点に鑑みて開発されたもので、その目的とするところは、型枠内部に設置されるランプへの電気コードの捩れをなくし、漏電等の電気トラブルを防止して、安全性及び作業性を向上させ、検査ミスを著しく減少させることができる衣類の欠陥検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明は、先端にランプが固定的に支持され、基端が支柱部材に固定的に支持された中空軸と、この中空軸に基端側が回転自在に支持され、前記ランプの明かりが透過可能な中空筒状構造とされた衣類装着用の型枠とを備え、前記ランプが前記中空軸によって前記型枠内に非回転状態に支持され、かつ、前記ランプへの電気コードが前記中空軸内を通して前記型枠の回転とは不干渉に配線されていることを特徴としている。
この構成によれば、型枠に装着された衣類を、型枠内部に配置したランプの明かりで照らし出して縫製部分の仕上がり具合や編成部の編み上がり具合等の仕上がり状態を透過検査することができ、その際、型枠を回転させて衣類の周囲を隈無く検査することができ、しかも、型枠を回転させてもランプへの電気コードが捩れることを無くすことができる。
【0006】
前記型枠は、先端から基端までが一様な中空筒状とされている。
この構成によれば、シャツ、セーター、キャミソールのような単一の胴部乃至筒状部を有する衣類を型枠に立体的に装着して検査することができる。
前記型枠は、基端が1つの中空筒状とされ、途中から先端側が二股に分岐した中空筒状とされ、前記ランプの明かりが透過可能な構成とされている。
この構成によれば、パンツ、ズボン下、ガードルのような基端が1つの中空筒状とされ、途中から先端側が二股に分岐した中空筒状とされた衣類を型枠に立体的に装着して検査することができる。
【0007】
前記型枠は、中空筒状張り子構造からなるか、又は、中空筒状骨組み構造からなる。
この構成によれば、型枠を軽量化して衣類を型枠に立体的かつ透過検査可能に装着することができる。
前記型枠は、先端側に衣類挿入用ガイド部を備え、このガイド部は、始端側から終端側に向けて広がる形状とされている。
この構成によれば、型枠への衣類の装着を容易化することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、型枠内部に設置されるランプへの電気配線コードの捩れをなくし、漏電等の電気トラブルを防止して、安全性及び作業性を向上させ、検査ミスを著しく減少させ得る衣類の欠陥検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3は、本発明装置の第1実施形態を示し、図4〜図7は本発明装置の第2実施形態を示している。
本発明装置は、図1に示すように、先端3aにランプ1が固定的に支持され、基端3bが支柱部材2に固定的に支持された中空軸3と、この中空軸3に基端4a側が回転自在に支持され、前記ランプ1の明かりが透過可能な中空筒状構造とされた衣類装着用の型枠4とを備えている。
【0010】
ランプ1は、中空軸3によって型枠4内に非回転状態に支持され、かつ、このランプ1への電気コード5が中空軸3内を通して型枠4の回転とは不干渉に配線されている。
ランプ1は、ソケット1aに交換可能に装着され、このソケット1aが中空軸3の先端3aに適宜の支持具を介して固定的に支持されている。
支柱部材2は、図7に示すように、下端が台車6に立設固定され、或いは、適宜の静止部材に固定され、上端に支持ブラケット2aが取り付けられている。
中空軸3は、両端を開放した円筒状をなし、先端3aにソケット1aを介してランプ1が固定支持され、このランプ1の電気コード5が中空内部を貫通して配線されている。
【0011】
そして、中空軸3の後端3bには、取付ブラケット3cが設けられ、この取付ブラケット3cが、支柱部材2の支持ブラケット2aに緊締具3dを介して角度調節可能に固定支持されている。
型枠4は、基端4a側が中空軸3に軸受7を介して回転自在に支持され、先端4b側を自由端として衣類8の着脱操作を可能としている。
型枠4は、第1実施形態では、図1及び図3に示すように、先端4bから基端4aまでが一様な中空筒状とされ、しかも、中空筒状張り子構造4Aとされている。即ち、第1実施形態の型枠4は、基端4a及び先端4bに同一形状の端板4c、4dを有し、この端板4c、4d間に半透明乃至透明な樹脂板4e、4fを張設し、樹脂板4e、4fの両端をビス4gで端板4c、4dに固着し、樹脂板4e、4fの合わせ目に沿って補強桟4h、4hを装着して先端4bから基端4aまでが一様な中空筒状に連結し、先端4bの端板4dに衣類挿入用ガイド部4iを設けている。このガイド部4iは、線材を折り曲げ形成して先端4b側から基端4a側に向けて広がる形状とされている。
【0012】
基端4a側の端板4cには、円筒状のスリーブ4jが設けられ、このスリーブ4jが軸受7を介して中空軸3に回転自在に支持されている。先端4b側の端板4dには、図1及び図2に示すように、軽量化のための孔4kが適宜数設けられている。
型枠4の中空筒状部の断面形状は、円形、楕円形、扁平円形、長円形、四角形、菱形、その他、衣類8の胴部乃至筒状部を緊張状態で立体的に装着できる適宜の中空筒状の断面形状とされ、図示例では、両端が対称な舟型形状とした場合を示している。
図4〜図7に示す第2実施形態においては、型枠4は、基端4aが1つの中空筒状とされ、途中から先端4b側が二股に分岐した中空筒状とされ、しかも、線材による中空筒状骨組み構造4Bとされている。具体的には、基端4a側に端板4cが設けられ、この端板4cの後面に円筒状のスリーブ4jが設けられ、このスリーブ4jが軸受7を介して中空軸3に回転自在に支持されている。中空軸3は、前記第1実施形態と同様な構造で角度調節可能に支柱部材2に支持されており、この支柱部材2は台車6に立設固定されている。そして、端板4cの前面に中空筒状骨組み構造4Bの線材の基端が固着されている。
【0013】
この中空筒状骨組み構造4Bは、胴部4mと胴部4mから二股に分岐した脚部4n、4nとからなっている。
胴部4mは、図5及び図7に示すように、左右両側がそれぞれ上下2本の平行に伸びる外側フレーム4o、4oと、これらよりも広い間隔とされた上下2本の平行に伸びる中間フレーム4p、4pとを備え、これらが、型枠4の回転中心から左右両側対称配置で、丁度、横長八角形の各頂角位置を占めるように配置されている。
これら外側フレーム4o、4oと中間フレーム4p、4pは、左右両側が基端4aから先端4bに向けて拡開するように端板4cに取り付けられている。
【0014】
左右両側の脚部4nは、胴部4mから二股に分岐されている。それぞれの脚部4nは、図6及び図7に示すように、上記胴部4mの上下2本の平行に伸びる外側フレーム4o、4oと、上下2本の平行に伸びる中間フレーム4p、4pとがそのまま延長されており、これらに加えて、上下2本の平行に伸びる内側フレーム4q、4qが配置されている。
内側フレーム4q、4qの上下間隔は、外側フレーム4o、4oと同一とされている。そして、外側フレーム4o、4oと内側フレーム4q、4qとの中間に中間フレーム4p、4pが配置されており、これらの6本のフレームが、丁度、正六角形の各頂角位置を占めるように配置されている。
【0015】
左右両側の脚部4nを構成している各フレームは、図7に示すように、先端4b側において、衣類挿入用ガイド部4iを形成するために、上下方向に互いに接近して連続した形状とされ、しかも、外側フレーム4o、4oの先端4o’と内側フレーム4q、4qの先端4q’とが1本の連結フレーム4rで連結され、この連結フレーム4rに中間フレーム4p、4pの先端4p’も接合されている。
外側フレーム4o、4oと中間フレーム4p、4pは、図7に示すように、基端4a側において、上下方向に互いに接近して連続した形状とされ、この状態で左右両側ともに端板4cに固着されている。この端板4cは、第2実施形態では、略楕円形とした場合を例示している。
【0016】
内側フレーム4q、4qは、図7に示すように、左右両側のものが前記端板4cから先端4b側に所定長さ離隔した位置で、上同士、下同士それぞれ円弧状連結フレーム4s、4sで連結された形状とされている。
この円弧状連結フレーム4s、4sは、装着される衣類8の股下部を立体的に装着するための部分とされる。
本発明装置の各実施形態の構造は以上からなるもので、図1〜図3に示す第1実施形態の型枠4には、シャツ、セーター、キャミソール等の上半身側に着用する衣類を装着して欠陥の有無などの検査を行うものであり、図4〜図7に示す第2実施形態の型枠4には、パンツ、ズボン下、ガードル等の下半身側に着用する衣類を装着して欠陥の有無などの検査を行うものである。
【0017】
型枠4への衣類8の着脱は、第1・第2実施形態ともに手作業によって行われ、検査作業についても、衣類8の検査箇所や検査項目、検査領域の広狭などに応じて、型枠4を手で止めたり正転方向に回したり、逆転方向に戻したり適宜操作しながら衣類8の隅々まで隈無く行われる。この検査は、ランプ1を点灯させて衣類8の各部を型枠4の内側から照らし出して目視で行われるため、生地の編成工程の欠陥の有無、縫製工程の欠陥の有無などの検査が精度よく実施され、検査ミスの発生を大幅に減らすことができる。なお、図3において、符号9は、型枠4の基端4a側の端板4cに取り付けられた検査目印片であって、これにより、衣類8の検査における前身頃側と後身頃側などの表裏面の検査済みの判断の目安とされるものである。この検査目印片9は、第2実施形態の型枠4に設けて同様な機能を発揮させることができる。
【0018】
上記検査作業において、ランプ1は、支柱部材2に固定的に支持された中空軸3の先端に固定して取り付けられ、このランプ1への電気コード5は、前記中空軸3内を貫通して非回転状態に保持した状態で配線されているため、型枠4の回転によって電気コード5が捩れることがなく、電気コード5の絶縁被覆の損傷などに伴う漏電や断線の恐れがなく、従って、衣類の欠陥検査を安全に実施することができる。
本発明装置は、以上の実施形態からなるが、本発明は、この実施形態にのみ制約されるものではなく、種々変形して実施することができる。例えば、型枠4の形状は、中空筒状張り子構造4Aと中空筒状骨組み構造4Bとの何れを採用しても良い。また、型枠4を回転自在に支持する構造は、実施形態に示す以外の構造を採用しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明装置の第1実施形態の概略縦断側面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1の実施形態の概略斜視図である。
【図4】本発明装置の第2実施形態の概略縦断側面図である。
【図5】図4のB−B線断面図である。
【図6】図4のC−C線断面図である。
【図7】図4の実施形態の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ランプ
2 支柱部材
3 中空軸
4 型枠
4A 中空筒状張り子構造
4B 中空筒状骨組み構造
5 電気コード
6 台車
7 軸受
8 衣類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端にランプが固定的に支持され、基端が支柱部材に固定的に支持された中空軸と、この中空軸に基端側が回転自在に支持され、前記ランプの明かりが透過可能な中空筒状構造とされた衣類装着用の型枠とを備え、
前記ランプが前記中空軸によって前記型枠内に非回転状態に支持され、かつ、前記ランプへの電気コードが前記中空軸内を通して前記型枠の回転とは不干渉に配線されていることを特徴とする衣類の欠陥検査装置。
【請求項2】
前記型枠は、先端から基端までが一様な中空筒状とされていることを特徴とする請求項1に記載の衣類の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記型枠は、基端が1つの中空筒状とされ、途中から先端側が二股に分岐した中空筒状とされていることを特徴とする請求項1に記載の衣類の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記型枠は、中空筒状張り子構造からなるか、又は、中空筒状骨組み構造からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の衣類の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記型枠は、先端側に衣類挿入用ガイド部を備え、このガイド部は、始端側から終端側に向けて広がる形状とされていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の衣類の欠陥検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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