説明

衣類

【課題】 本発明は、優れた着用感が得られ、解れの発生を防止すること可能となる衣類を提供する。
【解決手段】 丸編機によって1枚毎に編み立てられる衣類であって、端縁部に向かって、接合糸によって接結された第一袋編部及び第二袋編部が構成され、前記第二袋編部の端縁編成部に熱融着性繊維糸が編み込まれており、湿熱又は乾熱による熱処理により、前記熱融着性繊維糸が熱融着されてなる衣類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優れた着用感が得られ、解れの発生を防止することが可能な衣類に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、成型編により形成されるシャツやパンツなどの下着および靴下やストッキング等において、シャツの裾部、パンツの足口、ストッキングのウエスト部などを袋編に編立てる、メークアップ(Make−up)編成による衣類の開口部の処理方法が記載されている。
【0003】
図7は、従来の筒状成型丸編機により、成型編みされたパンツの身丈方向における主要部断面による斜視図を示したものである。図7中、70は身頃部、71はウエスト部、72は同ウエスト部71の袋編部、75は裾部、76は同裾部75の袋編部、77は裾部75の袋編部76の上端縁の接結部を表している。また、図8は、図7のZ−Z断面に基づく概略断面図である。
【0004】
裾部75のメークアップ編成は以下のようにされる。ウエスト部71及び身頃部70まで編成された後、身頃部70の端編ループを編み機の上針(ジャック)に持たせた状態で下針によって袋編部76を編成し、袋編部76の終わりで上針に持たせていた身頃部70の端編ループと袋編部76のループを一緒に編成することで、接結部77を形成して袋編部を閉じ、その後に編み終わり端縁編成部80が編成される。ここで、編み終わり端縁編成部80の最終端のコースである平編コース81は、特に解れ易いために、裾周り全周に亘って編み終わり端縁編成部80、袋編部76及び身頃部70をオーバー縫い等で一体的に縫着85し、解れ防止を確実に行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−292153号公報
【特許文献2】特開2000−345407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の袋編を有する衣類では、裾周り全周に亘って編み終わり端縁編成部、袋編部及身頃部をオーバー縫い等で一体的に縫着するために、同縫着部位が凸状になり、かつ、縫着部の肌触りが悪いため着用感が低下するという問題があった。
また、編み終わり端縁編成部、袋編部及び身頃部を一体的に縫着することは、それだけ余分な縫着作業を必要とし、生産能率の低下を招くなど、品質や能率面での改善が不充分となっていた。
本発明は、優れた着用感が得られ、解れの発生を防止することが可能な衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、丸編機によって1枚毎に編み立てられる衣類であって、端縁部に向かって、接合糸によって接結された第一袋編部及び第二袋編部が構成され、前記第二袋編部の端縁編成部に熱融着性繊維糸が編み込まれており、湿熱又は乾熱による熱処理により、前記熱融着性繊維糸が熱融着されてなる衣類である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
丸編機によって編成された平編地は編み組織の特性上カールし易い傾向があり、また、袋編を行った場合でも、編み終わり端縁編成部においてカールが生じていた。
本発明は、第一袋編部に加えて、編み終わり端縁編成部に熱融着性繊維糸を編み込み、熱処理することで熱融着させた第二袋編部を有することを特徴とするものである。
【0009】
図1〜3は本発明の衣類の一例を示したものである。
図1〜3中、1はパンツで、2は前身頃、3は後身頃、5は袋編部6で形成されたウエスト部、7は袋編部8で形成された裾部、9は股部用生地10で形成された股部、11、12は夫々股部用生地10の両端縁に設けた袋編部であり、13は筒状編生地で、筒状成型丸編機によって1枚毎に編み立てられたパンツ1の成型丸編生地で、前身頃2及び後身頃3を一体的に編成するようにしてある。更に上記成型丸編生地の上方及び下方端縁には、夫々ウエスト部5及び裾部7の袋編部6、8を編成してある。
また、パンツ1の股部用生地10についても成型丸編生地で編成するようにしてあり、11、12はそれぞれ前記裾部7と同一の編組織による袋編部である。
なお、図1〜3では、第一袋編部及び第二袋編部を合わせて袋編部8として図示した。
【0010】
図4は、図1のX−X断面に基づく一部断面による概略斜視図である。
図4において、15は裾部7の第一袋編部18上端に設けた第一接結部、27は第二袋編部28の編み終わり端縁編成部で、編み終わり端縁編成部27は平編コースで編成されている。
【0011】
なお、図1〜3のパンツ1では、ウエスト部5及び裾部7の袋編部6、8と股部用生地10の両端縁に設けた袋編部11、12の編組織が、夫々同一の編組織で編成されている。これらのうち、裾部7の袋編部8について、本発明の衣類の応用例について以下述べる。
なお、以下の応用例では、裾部についてのみ説明するが、ウエスト部5の袋編部6や、股部用生地10の両端縁に設けた袋編部11、12でも同様に、下記の応用例を用いることできる。
【0012】
本発明の第1の応用例を、図5に示す。第1の応用例では、裾部7の端縁部に向かって、第一袋編部18及び第二袋編部28が編成されており、第一袋編部18は第一接結部15によって接結されており、第二袋編部28は第二接結部25によって接結されている。
第1の応用例では、第一袋編部18に加えて、更に第二袋編部28を有することで、より解れ難い構造となっている。
【0013】
第1の応用例では、第二袋編部28の端縁編成部27に、熱融着性繊維糸が編み込まれている。これにより、湿熱又は乾熱による熱処理を施すことで、熱融着性繊維糸と熱融着性繊維糸以外の糸とが熱融着して、固定され、解れ止め加工がより確実に施される。
【0014】
また、第1の応用例では、第二袋編部28の第二接結部25は、熱融着性繊維糸からなる接合糸によって接結されている。これにより、湿熱又は乾熱による熱処理を施すことで、熱融着性繊維糸と熱融着性繊維糸以外の糸とが熱融着して、固定され、第二接結部の接結をより強固なものにすることができ、解れの発生を防止できるだけでなく、優れた着用感が得られる。
【0015】
更に、第1の応用例では、第一袋編部18の第一接結部15が、第二袋編部28の第二接結部25よりも身頃側に位置する構成となっている。これにより、従来のような凸状の編み終わり端縁編成部がもたらした肌触りの悪さが解消されるだけではなく、第二袋編部28による着用時の引っかかりが少なくなるため解れ難い。加えて、第二袋編部28が裾部に折れ曲がることによるごろつきの発生を防止することができる。
【0016】
本発明の第2の応用例を、図6に示す。第2の応用例でも、第1の応用例と同様に、裾部7の端縁部に向かって、第一袋編部18及び第二袋編部28が編成されており、第一袋編部18は第一接結部15によって接結されており、第二袋編部28は第二接結部25によって接結されている。第2の応用例では、第一袋編部18の第一接結部15が、第二袋編部28の第二接結部25よりも裾部側に位置する構成となっている。
【0017】
第2の応用例において、第二袋編部28の端縁編成部27には、熱融着性繊維糸が編み込まれており、湿熱又は乾熱による熱処理を施すことにより、熱融着性繊維糸と熱融着性繊維糸以外の糸とが熱融着して、固定され、解れ止め加工が確実に施される。第2の応用例でも、第一袋編部18に加えて、更に第二袋編部28を有することで、より解れ難い構造となっている。
更に、従来の袋編部のように、編み終わり端縁編成部、袋編部及身頃部を縫製により一体的に縫着しなくても、優れた着用感を実現することができる。
【0018】
また、第2の応用例においても、第二袋編部28の第二接結部25は、熱融着性繊維糸からなる接合糸によって接結されている。これにより、湿熱又は乾熱による熱処理を施すことで、熱融着性繊維糸と熱融着性繊維糸以外の糸とが熱融着して、固定され、第二接結部の接結をより強固なものにすることができ、解れの発生を防止できるだけでなく、優れた着用感が得られる。
【0019】
上述のように、本発明では、第二袋編部28の第二接結部25は、熱融着性繊維糸からなる接合糸によって接結されている。これにより、第二接結部の接結をより強固なものにすることができる。
【0020】
本発明では、第二袋編部の端縁編成部に熱融着性繊維糸が編み込まれていることを必須要件とする。なお、本発明において、「第二袋編部の端縁編成部」とは、第二接結部の接合糸も含むものである。
上記熱融着性繊維糸は、第二袋編部の編み終わり端縁編成部の1〜3コースに亘って編み込まれていることが好ましい。また、上記熱融着性繊維糸は、第二接結部の接合糸に用いられることがさらに好ましい。
【0021】
本発明において、熱融着性繊維糸とは、湿熱または乾熱による熱処理で熱融着し、かつ、熱融着部位において伸縮性(弾性)が失われることない糸のことをいう。
本発明では、より高度な伸縮性(弾性)を有する熱融着性弾性繊維糸を用いることが好ましい。
また、上記熱融着性繊維糸としては、少なくとも、染色工程の熱処理において熱融着するものが好ましい。
また、上記熱融着性繊維糸はカバリング糸であることが好ましい。上記熱融着性繊維糸としてカバリング糸を用いる場合は、総繊度の好ましい下限は33dtexであり、好ましい上限は200dtexである。より好ましい下限は44dtexであり、より好ましい上限は120dtexである。
上記熱融着性繊維糸としてカバリング糸でない糸を用いる場合は、繊度の好ましい下限は44dtexであり、好ましい上限は200dtexである。より好ましい下限は55dtexであり、より好ましい上限は120dtexである。上記繊度が44dtex未満であると、編成工程での糸切れトラブルを引き起こすことがあり、200dtexを超えると融着部が硬くなることがある。
【0022】
上記熱融着性繊維糸としては、伸縮性(弾性)に優れ、加熱によって熱融着し、かつ、熱融着部位においては、伸縮性(弾性)が失われることなく、高度の伸縮性(弾性)が保有されるものを用いることができる。具体的には、低融点ポリアミド繊維糸、低融点ポリエステル系繊維糸(低融点ポリエステル共重合体繊維糸、低融点脂肪族ポリエステル繊維糸)、ポリウレタン系合成繊維糸等が挙げられる。なかでも、低融点ポリエステル系繊維糸が好ましい。
【0023】
上記低融点ポリエステル共重合体繊維糸を構成する低融点ポリエステル共重合体の好ましい共重合成分としては、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ吉草酸、6−ヒドロキシカプロン酸等のヒドロキシカルボン酸類の他、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール等の分子内に複数の水酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体、アジピン酸、セバシン酸、フマル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸等の分子内に複数のカルボン酸基を含有する化合物類またはそれらの誘導体が挙げられる。
【0024】
上記低融点脂肪族ポリエステル繊維糸を構成する低融点脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシブチレートバリレート、ポリカプロラクトン等が挙げられる。
【0025】
上記熱融着性繊維糸の市販品として、例えば、ロイカSF(旭化成せんい社製、「ロイカ」は旭化成せんい社の登録商標)、モビロンRL(日清紡績社製、「モビロン」は日清紡績社の登録商標)等が挙げられる。
上記熱融着性繊維糸の市販品としては、他に、80〜130℃の乾熱や、50〜100℃の湿熱で溶融する低融点ポリアミド繊維糸、例えば、フロール(ユニチカ社製)、エルダー(東レ社製)、ジョイナー(フジボウ社製)等を用いてもよい。
また、80〜130℃の乾熱や、50〜100℃の湿熱で溶融する低融点ポリエステル繊維糸、例えば、ソフィット(クラレ社製)、メルティ(ユニチカ社製)、ソルスター(三菱レイヨン社製)、ベルコンビ(鐘紡社製)、エステナール(東洋紡績社製)等を用いてもよい。
【0026】
上記熱融着性繊維糸を熱処理して熱融着させる手段としては、湿熱または乾熱による熱処理が用いられる。
上記湿熱処理としては、例えば、蒸気や、熱水、染色浴などの熱液体による処理が挙げられる。
上記乾熱処理としては、例えば、熱風乾燥などによる熱処理などの処理が挙げられる。
なお、精練や染色、ソーピング等の浴中工程を行う場合は、浴中で湿熱処理による熱融着が可能となるため、工程削減にもなり好ましい。この場合の熱処理温度は、好ましい下限が50℃、好ましい上限が100℃である。より好ましい下限としては60℃、さらに好ましい下限は65℃である。
【0027】
また、本発明では、第二袋編部の端縁編成部に熱融着性繊維糸を編み込むとともに、更に、非熱融着性のカバリング弾性糸を追加して編み込むことが好ましい。これにより、編み終わり端縁編成部の編み目が密になり、また最も解れやすい最終端がその伸縮性により内側にカールして入り込むことで、さらに解れ難くすることができる。
なお、非熱融着性のカバリング弾性糸は、端縁編成部に1〜3コース追加することよって編み込むことが好ましい。
【0028】
本発明の衣類に用いる地糸としては、ナイロン繊維やポリエステル系繊維などの合成繊維を用いるか、或いは綿などの天然繊維又は天然繊維と合成繊維等による適宜の混紡糸を用いることが好ましい。
【0029】
本発明の衣類は、上記図に示すパンツ以外に、足口やウエスト部を有するズボン下やガードルや、裾部、襟部及び袖口を有するシャツなどの下着、履き口を有する靴下やウエスト部を有するストッキング、筒状の腹巻などに適用することができる。
【0030】
本発明の衣類を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、第1の応用例の衣類を製造する場合は、ウエスト部及び身頃部を編成した後、身頃部の端編ループを編み機のトランスファージャックに持たせた状態で下針によって第一袋編部を編成し、第一袋編部の終了直前に下針で第二袋編部の編成をオールニット(全針をニット)のコースでスタートさせた後、1×3の組織(1針をウエルト、3針をニット、の繰り返し)で数コース編成し、その後、トランスファージャックに持たせていた身頃部の端編ループと袋編部のループを一緒に編成することで、接結部を形成し、第一袋編部を閉じる。
さらに1×3の組織で数コース編成した後、再度ウエルトの針をニットさせ第二接結部を形成することで、第二袋編部を閉じる方法等が挙げられる。このとき、トランスファージャックに持たせた状態で第二袋編部を編成すると、生地が重なり合うため、「かぶり」という編成不具合を生じることがある。この状態にならないように、第二袋編部を編成する際には、33〜200dtex程度の糸のみのコースを含む構成にすることが好ましく、33〜120dtex程度の糸のみのコースを含む構成にすることがより好ましい。なお、「かぶり」とは、針が既成ループを脱げない(ノックオーバーできない)状態を指す。
さらに、第一袋編部及び第二袋編部を形成した衣類を、湿熱又は乾熱によって熱処理することにより、熱融着性繊維糸と熱融着性繊維糸以外の糸とが熱融着され、本発明の衣類が得られる。
【0031】
また、例えば、第2の応用例の衣類を製造する場合は、ウエスト部及び身頃部を編成した後、身頃部の端編ループを編み機のトランスファージャックに持たせた状態で、下針によって第一袋編部を編成し、第一袋編部の終わりでトランスファージャックに持たせていた身頃部の端編ループと袋編部のループを一緒に編成することで、接結部を形成して第一袋編部を閉じる。次いで、下針で第二の袋編みをスタートさせ、数コース編成した後、第二袋編部を閉じる方法が挙げられる。
【0032】
本発明では、上記第1及び第2の応用例の衣類を製造する際に、1×3の組織で数コース編成する前のオールニットにおいて、熱融着性繊維糸を用いることで、第二袋編部が熱融着性繊維糸からなる接合糸で接結された構成とすることができる。なお、上記熱融着性繊維糸からなる接合糸としては、熱融着性繊維糸単体からなる接合糸を用いてもよく、熱融着性繊維糸と補強用の糸とからなる複合糸(カバリング糸を含む)を用いてもよく、また、熱融着性繊維糸と補強用の糸とを引き揃えて用いてもよい。補強用の糸を複合糸や引き揃え等で用いることにより一般的に引張物性が低い熱融着性繊維糸の編成時の糸切れトラブルや、熱処理時の編組織の穴あきトラブル等を未然に防ぐことができるためである。
補強用の糸としては編成時及び熱処理時に糸切れに至らない強力を有しているものであればよく、本発明の衣類の地糸として用いられる素材から選択することが好ましい。
更に、1×3の組織は、1×1の組織(1針をウエルト、1針をニット、の繰り返し)であってもよく、1×5の組織(1針をウエルト、5針をニット、の繰り返し)であってもよい。
【発明の効果】
【0033】
本発明の衣類は、従来の袋編部を形成した衣料と比較して、優れた着用感が得られ、解れの発生を防止すること可能となる。また、本発明の衣類は、端縁編成部等の縫着工程が必要なく、生産効率を大幅に高めることできる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の衣類の一例であるパンツの前身側概略斜視図である。
【図2】本発明の衣類の一例であるパンツの後身側概略斜視図である。
【図3】本発明の衣類の一例であるパンツの股部に股部用生地を縫着した状態の概略平面図である。
【図4】図1のX−X断面に基づく一部断面による概略斜視図である。
【図5】応用例1に基づく裾部における袋編部の概略断面図である。
【図6】応用例2に基づく裾部における袋編部の概略断面図である。
【図7】従来の袋編部を有するパンツの前身側概略斜視図である。
【図8】図7のZ−Z断面に基づく概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
ガーメントレングス編機として釜径14インチ、針本数1152本、給糸口数8口の筒状成型丸編機を使用し、表糸としてナイロンキュプラ複合糸(90dtex、旭化成社製)、裏糸としてSCY18/33(芯糸:18dtexのポリウレタン弾性繊維[オペロンテックス社製]、巻き糸:33dtexのナイロン繊維、SCY糸)を用いて天竺組織のプレーティング編(添え糸編)により、ウエスト部及び身頃部を編成した後、身頃部の端編ループを編み機のトランスファージャックに持たせた状態で、下針によって第一袋編部を編成し、第一袋編部の終わりでトランスファージャックに持たせていた身頃部の端編ループと袋編部のループを一緒に編成することで、第一接結部を形成して第一袋編部を閉じた。
その後、8口の給糸口のうち4口の表糸の給糸をしない給糸設定に変更して、下針でオールニット(全針がニット)のコースで第二袋編部の編成をスタートさせた後、下針で1×3の組織(1針をウエルト、3針をニット、の繰り返し)で数コース編成し、再度1×3の組織におけるウエルトの針をニットとし、オールニットのコースとすることで第二接結部を形成し、第二袋編部を閉じた。
このとき、1×3の組織で編成する前のオールニットのコースに熱融着性繊維糸(融点65℃、低融点ポリエステル系繊維糸、100dtex、24フィラメント、グンゼ社製)及び添え糸(ナイロン44dtex、東レ社製、を双糸使い)を入れることによって、第二袋編部を熱融着性繊維糸からなる接合糸で接結させた。第二袋編部を閉じた後、生地を針から放す時に第二接結部が解けないように数コースを更に編成した。
その後、染色浴液中で95℃50分の加熱を行うことにより、熱融着性繊維糸を熱融着させることで、図6に示すような第一袋編部及び第二袋編部を有する衣類を得た。
【0037】
(実施例2)
表糸としてナイロン(78dtex、東レ社製)を用いた以外は実施例1と同様にして、図6に示すような第一袋編部及び第二袋編部を有する衣類を得た。
【0038】
(実施例3)
ガーメントレングス編機として釜径14インチ、針本数1152本、給糸口数8口の筒状成型丸編機を使用し、表糸としてナイロンキュプラ複合糸(90dtex、旭化成社製)、裏糸としてSCY18/33を用いて、ウエスト部及び身頃部を編成した後、身頃部の端編ループを編み機のトランスファージャックに持たせた状態で下針によって第一袋編部を編成し、第一袋編部の終わり直前に、8口の給糸口のうち4口の表糸の給糸をしない給糸設定に変更して、下針で1×3の組織(1針をウエルト、3針をニット、の繰り返し)で第二袋編部の編成をスタートし、数コース編成した後、トランスファージャックに持たせていた身頃部の端編ループと袋編部のループを一緒に編成することで、第一接結部を形成し、第一袋編部を閉じた。
その後、数コース編み立てた後に1×3の組織のウエルトの針をニットとし、オールニットのコースとすることで第二接結部を形成し、第二袋編部を閉じた。
このとき、1×3の組織で編成する前のオールニットのコースに熱融着性繊維糸(融点65℃、低融点ポリエステル系繊維糸、100dtex、24フィラメント、グンゼ社製)及び添え糸(ナイロン44dtex、東レ社製、を双糸使い)を入れることによって、第二袋編部を熱融着性繊維糸からなる接合糸で接結させた。第二袋編部を閉じた後、生地を針から放す際に第二接結部が解けないように数コースを更に編成した。
その後、染色浴液中で95℃50分の加熱を行うことにより、熱融着性繊維糸を熱融着させることで、図5に示すような第一袋編部及び第二袋編部を有する衣類を得た。
【0039】
(実施例4)
表糸としてナイロン(78dtex、東レ社製)を用いた以外は実施例3と同様にして、図5に示すような第一袋編部及び第二袋編部を有する衣類を得た。
【0040】
(実施例5)
8口とも常に表糸を給糸する設定で運転する以外は実施例3と同様にして、図5に示すような第一袋編部及び第二袋編部を有する衣類を得た。
【0041】
(実施例6)
8口とも常に表糸を給糸する設定で運転する以外は実施例4と同様にして、図5に示すような第一袋編部及び第二袋編部を有する衣類を得た。
【0042】
(比較例1)
表糸としてナイロンキュプラ複合糸(90dtex、旭化成社製)、裏糸としてSCY18/33を用いて、ウエスト部及び身頃部を編成した後、身頃部の端編ループを編み機のトランスファージャックに持たせた状態で下針によって袋編部を編成し、袋編部の終わりでトランスファージャックに持たせていた身頃部の端編ループと袋編部のループを一緒に編成することで、接結部を形成して袋編部を閉じることで、図8に示すような袋編部及び閉じられていない端縁編成部を有する衣類を得た。
【0043】
(比較例2)
表糸としてナイロン(78dtex、東レ社製)を用いた以外は比較例1と同様にして、図8に示すような袋編部及び閉じられていない端縁編成部を有する衣類を得た。
【0044】
(評価)
(1)かぶり発生頻度
実施例について、100枚編み立て後の第二袋編部編成時における、かぶり発生頻度を測定した。なお、かぶり発生頻度は、30%未満である場合に、かぶりの発生が少ないと判定される。
【0045】
(2)裾部着用感
実施例及び比較例で得られた衣料について、それぞれ10名に24時間着用させ、ごろつき感を10段階で評価し,その合計点を裾部着用感とした。
なお、点数は、ごろつき感が最も強い場合を0点とし、違和感がない場合10点として順に採点し、その合計を算出した。
【0046】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、優れた着用感が得られ、解れの発生を防止することが可能な衣類を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丸編機によって1枚毎に編み立てられる衣類であって、
端縁部に向かって、接合糸によって接結された第一袋編部及び第二袋編部が構成され、
前記第二袋編部の端縁編成部に熱融着性繊維糸が編み込まれており、
湿熱又は乾熱による熱処理により、前記熱融着性繊維糸が熱融着されてなる
ことを特徴とする衣類。
【請求項2】
第二袋編部が熱融着性繊維糸からなる接合糸で接結されていることを特徴とする請求項1記載の衣類。
【請求項3】
第一袋編部の接結部である第一接結部が、第二袋編部の接結部である第二接結部よりも身頃側に位置することを特徴とする請求項1又は2記載の衣類。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−172271(P2012−172271A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33087(P2011−33087)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】