説明

表在性真菌症予防および治療用非経口投与剤

【課題】爪から局所的に投与されたとき治療目的とする部位に効果発現に必要な量の有効成分を送達でき、重篤な全身性の副作用の発現を軽減することで早期の病態から有効かつ安全に投与でき有効性および安全性に優れた表在性の真菌症予防および治療用非経口投与剤を提供する。
【解決手段】(E)−N−(6,6−ジメチル−2−へプテン−4−インイル)−N−メチル−1−ナフタレンメチルアミン、その塩および/または誘導体から選ばれる少なくとも1種の親化合物とシクロアミロースとからなる錯体化合物を有効成分として含有することを特徴とする表在性の真菌症予防および治療用非経口投与剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分を爪に投与することにより親化合物が体循環を介することなく局所的に罹患部に送達される、表在性真菌症の予防および治療用非経口投与剤に関する。
【背景技術】
【0002】
抗真菌薬の可溶化の手段としてはエタノール等の低級アルコールおよび界面活性剤を用いる方法(特許文献1)、ポリオール、ジブチルヒドロキシトルエンおよび有機酸を用いる方法(特許文献2)が開示されている。しかしこれらの方法では十分な可溶化および爪への薬物の浸透性を示しているとは言えない。
【0003】
下記式(1):
【化1】

【0004】
で示される(E)−N−(6,6−ジメチル−2−へプテン−4−インイル)−N−メチル−1−ナフタレンメチルアミン((E)−N−(6,6−Dimethyl−2−hepten−4−ynyl)−N−methyl−1−naphthalenemethylamine)、その塩または誘導体(以下、「親化合物」という)は、クリーム剤として皮膚白癬などの治療に利用されているが、皮膚や爪への浸透性が低いことから、角質層の厚い部分および爪を患部とした真菌症に対しては十分な薬物量を患部に送達できないため効果が弱い。上記の親化合物を角質層の厚い部分や爪などの患部に効果を現すのに十分な量を送達することができる外用剤は今日まで提案されていない。
【0005】
上記の親化合物を含有する従来の軟膏やクリームでは爪および角質層の厚い部分などの白癬を治療するための十分な薬物量を送達することができないため経口剤による治療が主な薬物治療となっている。しかし、上記の親化合物が血液を介し罹患部へ送達される場合、薬剤性肝障害、薬物相互作用など重篤な副作用のリスクが大きいことや肝障害の既往歴のある患者には投与できないなどが治療上問題となっている。
【0006】
上記の親化合物は、強い抗真菌性作用を有するため軽症の状態から投与されることが治療および非罹患部または他者への感染を防止するうえで好ましい。しかし、効果としては逆に重篤な副作用を示すため使い難いのが現状である。経口または注射のような投与経路の場合、薬物の作用を発揮させるために十分な薬物量を血液中に必要とする。この場合患者によっては肝障害を起こす危険性もある。また、疾患が重複する場合に同時に投与される薬物との相互作用により親化合物の血液中濃度が必要以上に高くなることによる副作用の発現などが治療上問題となる。
【0007】
上記の親化合物は、真菌に直接的に作用させることで抗真菌作用を示すことが知られている。しかし、外用製剤中に上記の親化合物を含有させ爪や角質層の厚い部分などにも効果を現すのに十分な薬物量を送達することは容易ではない。
【0008】
したがって、局所的に罹患部に送達されることで安全かつ有効に薬物を投与でき早期の病態から有効かつ安全に投与できる表在性の真菌症予防および治療用非経口投与剤が強く望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、爪から局所的に投与されたとき治療目的とする部位に効果発現に必要な量の有効成分を送達でき、重篤な全身性の副作用の発現を軽減することで早期の病態から有効かつ安全に投与でき有効性および安全性に優れた表在性の真菌症予防および治療用非経口投与剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は前記式(1)で示される親化合物をシクロアミロースとの錯体化合物とすると意外にも従来の技術に比べ可溶性および爪への薬物の浸透性が顕著に高まることを見出し本発明に到達した。
【0011】
即ち、本発明は(E)−N−(6,6−ジメチル−2−へプテン−4−インイル)−N−メチル−1−ナフタレンメチルアミン、その塩および/または誘導体から選ばれる少なくとも1種の親化合物とシクロアミロースとからなる錯体化合物を有効成分として含有することを特徴とする表在性の真菌症予防および治療用非経口投与剤である。
【0012】
本発明において、シクロアミロースがシクロヘキサアミロース、シクロヘプタアミロースおよびシクロオクタアミロースから選ばれる少なくとも1種であり、水酸基の少なくとも一部が化学修飾されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明において、有効成分の含有率は0.01〜80%であることが好ましい。
本発明の非経口投与剤の形態は、液、固形、半固形、乳、懸濁状、自己支持性固体組成物または貼付剤のいずれでもよい。
また本発明の非経口投与剤には吸収促進剤を含有させることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の非経口投与剤は副作用を低減、特に肝障害、薬物相互作用など重篤な副作用を低減し、罹患患部における予防および治療効果を発現する。その結果、爪の真菌症を主体とする疾患に適した種々の投与形態で最適の予防および治療を行うことができるとともに角質層の厚い皮膚の真菌性を主体とする疾患に適した種々の投与形態で最適の予防および治療を行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明で用いる親化合物は前記式(1)で示される化合物、その塩および/またはその誘導体である。
本発明で用いるシクロアミロースは親化合物と錯体を形成することが可能であれば特に限定されないが、通常水酸基が化学修飾され誘導体化されているシクロヘキサアミロース、シクロヘプタアミロース、シクロオクタアミロースが好ましく使用される。誘導化されたシクロへプタアミロースおよび/またはシクロオクタアミロース、特にシクロヘプタアミロースが好ましい。
【0016】
それらの誘導体は誘導体化が可能であれば誘導体の種類には特に限定されないが、アルキル化誘導体、アシル化誘導体、窒素を含む誘導体、ハロゲン化誘導体、6−デオキシ誘導体、イオウを含む誘導体、シリル化誘導体、カルボン酸基を含む誘導体、カーボネートおよびカーバメート、グルコシルーシクロデキストリン等があげられ、さらに好ましくはメチル、エチル、プロピル、アリル、ヒドロキシアルキル、ベンジルトリチル化等の誘導体、アセチル、ベンゾイル、トシル、メシル、サクシニル、シンナモイル、グルタリル、ラウリル等の誘導体、アミノ、アルキルアミノ、アジド、イミダゾイル、ピペリジル、アデニル、ヒスタミニル、ピリジン等の誘導体、ジメチルシリル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル等の誘導体等があげられる。
【0017】
また、本発明に用いられる誘導体化シクロアミロースは水溶性が増大し非結晶化された誘導体化シクロアミロースが好ましい。このような観点から、炭素数1〜7のアルキルおよび/またはヒドロキシアルキル、炭素数3〜15からなる糖および/または糖アルコール、カルボン酸、含窒素化合物からなる誘導体が特に好ましい。誘導化は水酸基の一部ないし全部を行いうる。
【0018】
本発明では親化合物をシクロアミロース(以下その誘導体を包含する)との錯体の形で用いることを要する。この錯体はシクロアミロースの水溶液中に親化合物の適量を溶解するか、両化合物の混合粉砕、練合または加熱することで親化合物とシクロアミロース間の相互作用により容易に形成することができる。この錯体の生成は示差熱分析および溶解度法等により確認できる。この錯体は組合せる両化合物の分子の大きさ等に応じ、通常親化合物1モルに対しシクロアミロースが0.25〜3モル付加した構造となっている。
【0019】
本発明における非経口投与剤は有効成分として親化合物とシクロアミロースよりなる錯体を含有するかぎり剤形や任意成分については特に制限されない。
また、この錯体は製剤中に溶解または分散した状態で存在させることができ、製剤中に錯体を共存するかぎり非錯体である薬物およびシクロアミロースを共存させることもできる。本発明の錯体は、罹患患部において錯体のままの効果、生体の親油成分と親化合物との間で交換が起こり親化合物を遊離することによる効果およびシクロアミロースが分解され親化合物が遊離されることによって効果を発揮する。
【0020】
本発明における製剤中の有効成分の含有量は、通常0.1〜80W/W%であり、好ましくは0.5〜70W/W%、さらに好ましくは1〜60W/W%である。
本発明の非経口投与剤における半固形状、液状および懸濁状の液性は特に限定されないが、通常pH3〜12であり、好ましくはpH3〜8、さらに好ましくはpH3.5〜7に調整することもできる。
【0021】
本発明の非経口投与剤は、非経口投与可能であればその製剤形態は特に限定されないが、半固形状製剤は軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤等、液状製剤は溶液、懸濁液、ローション、乳液等があげられ、必要に応じリポソーム化の技術やマイクロおよび/またはナノ粒子化の製剤技術を用いることもでき、溶液、懸濁液、ローション、乳液等はエアゾールまたはスプレー剤とすることもできる。
貼付剤としては、ハップ剤、プラスター剤、パッチ剤等があげられ、自己支持性固定組成物としてはスチック剤、シート剤等があげられる。
【0022】
本発明の製剤中に配合する吸収促進剤は特に制限されないが、好ましくは脂肪酸、ジメチルポリシロキサン、ひまし油、ハッカ油、アジピン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、中鎖脂肪酸トリグリセリド、モノテルペン、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミン、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、コレステロール、クロタミトン、スクワラン、スクワレン、炭酸プロピレン等の親油性成分、アルキルアリルポリエーテルアルコール、高級アルコール硫酸化物、N−コイル−L−アルギニンエチルエステルDL−ピロリドンカルボン酸塩、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロプレングリコール、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、モノグリセリン脂肪酸エステル、ラウロマクロゴール、ラウリル硫酸ナトリウム、四級アンモニウム塩、レシチン、水添レシチン等の界面活性剤、オレイルアルコール、ラウリルアルコール等の高級アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の多価アルコール、ベンジルアルコール、ステアリルアルコール、ゲラニオール変性アルコール、メタノール変性アルコール、八アセチルショ糖変性アルコール、エタノール、イソプロピルアルコール、メタノール等のアルコール等から選ばれる一種または二種以上の吸収促進剤が望ましい。
本発明における製剤中に配合される吸収促進剤の量は0.05〜80W/W%であり、好ましくは0.5〜60W/W%、更に好ましくは1〜50W/W%である。
【0023】
本発明における製剤中に任意成分として製剤上許容される適宜の添加成分を配合することができる。これらの任意成分としては製剤学上通常用いられる基剤、添加剤等があげられる。これら基剤、添加剤はなんら限定されるものではないが、例えば親水軟膏、吸水軟膏をはじめとする乳剤性基剤、ポリエチレングリコール等の親水性基剤、ワックス、ワセリン、プラスチベース、ミツロウ、生ゴム、RSNo1生ゴム、アクリル酸メチルn−ブチルコポリマー、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、スチレンイソプロピレンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンゴム、ステアリン酸ナトリウム、天然ゴム、天然ゴムラテックス、テルペン樹脂、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸部分中和物、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、流動パラフィン、ゼラチン、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂等の基剤、白糖、ブドウ糖、キシリトール、マルチトール、マルトース、D−マンニトール、乳糖、セルロース等の賦形剤、アスコルビン酸およびその塩または誘導体、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、エデト酸ナトリウム、L−システイン、塩酸シスチン、酢酸トコフェロール、天然ビタミンE、BHT、BHA、オキシベンゾン、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、エリソルビン酸およびその塩等の安定化剤、プルラン、ペクチン、キサンタンガム、アルギン酸およびその塩または誘導体、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等の多糖類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カーボポール等の増粘剤および有機アミン、高級アルコール、低級アルコール、多価アルコール、精製水等の溶剤のほか、水素添加ロジングリセリンエステル、石油樹脂、ロジン、水系アクリルエマルジョン、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルへキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルへキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体等の添加剤を用いることができる。また、緩衝剤、pH調整剤、保存剤、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の放出制御膜等も必要に応じて用いることができる。
【0024】
半固形状製剤中に配合される任意成分としては製剤上許容される適宜の添加成分は、上述した成分になんら限定されたものではないが、好ましくは親水軟膏、吸水軟膏をはじめとする乳剤性基剤、ポリエチレングリコール等の親水性基剤、ワックス、ワセリン、プラスチベース、ミツロウ、高級アルコール、脂肪酸およびその塩等の油性基剤、流動パラフィン等の基剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カーボポール等の増粘剤、低級アルコール、多価アルコール、精製水等の溶剤、界面活性剤、安定化剤、多糖類、増粘剤、緩衝剤、pH調整剤等が望ましい。
【0025】
液状および懸濁状製剤中に配合される任意成分としては製剤上許容される適宜の添加成分は、上述した成分になんら限定されたものではないが、好ましくは流動パラフィン等高級アルコール、脂肪酸およびその塩等の油性基剤、流動パラフィン、ポリアクリル酸部分中和物等の基剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カーボポール等の親水性高分子、低級アルコール、多価アルコール、精製水等の溶剤、界面活性剤、安定化剤、多糖類、増粘剤、緩衝剤、pH調整剤等が望ましい。
【0026】
自己支持性固体組成物中に配合される任意成分としては製剤上許容される適宜の添加成分は、上述した成分になんら限定されたものではないが、好ましくは、ポリエチレングリコール等の親水性基剤、ワックス、ワセリン、プラスチベース、ミツロウ、高級アルコール、脂肪酸およびその塩等の油性基剤、流動パラフィン等の基剤、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カーボポール等の増粘剤、低級アルコール、多価アルコール、精製水等の溶剤、界面活性剤、安定化剤、多糖類、増粘剤、緩衝剤、pH調整剤等が望ましい。
【0027】
貼付剤中に配合される任意成分としては製剤上許容される適宜の添加成分は、上述した成分になんら限定されたものではないが、好ましくは生ゴム、RSNo1生ゴム、アクリル水系エマルジョン、アクリル酸メチルn−ブチルコポリマー、脂環族飽和炭化水素樹脂、脂肪族炭化水素樹脂、スチレンイソプロピレンゴム、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体、スチレンブタジエンゴム、ステアリン酸ナトリウム、天然ゴム、天然ゴムラテックス、テルペン樹脂、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸部分中和物、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、流動パラフィン、ゼラチン、シリコン系樹脂、アクリル系樹脂等の基剤、水素添加ロジングリセリンエステル、石油樹脂、ロジン、アクリル酸・アクリル酸オクチルエステル共重合体、アクリル酸エステル・酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸2−エチルへキシル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸2−エチルへキシル・メタクリル酸ドデシル共重合体等の添加剤を用いることができる。また、緩衝剤、pH調整剤、保存剤、エチレン・酢酸ビニル共重合体等の放出制御膜等も必要に応じて用いることができる。
【0028】
本発明の親化合物とシクロアミロースからなる錯体化合物を有効成分として含有する製剤は有効成分を疾患部位である爪に投与されることで、罹患患部において作用を発現するための有効量を送達することができ、肝障害等の経口剤のような全身的投与による副作用を低減させることができ、真菌による爪の感染症の予防および治療に極めて有用である。
【0029】
本発明を例証するために、実施例を挙げて説明する。ただし、これらは本発明の一具体例であり、本発明はこれになんら限定されるものではない。
製剤中の有効成分は薬物治療に必要な量が含有されている必要があるとともに疾患部位である爪への移行性や角質層の厚い皮膚への移行性が改善されている必要性がある。親化合物は、親化合物とシクロアミロースからなる錯体化合物とすることで非晶質化され製剤中の含有量および爪や角質層の厚い皮膚に投与された親化合物の疾患部位への移行性が改善される。
【0030】
以上のことから親化合物とシクロアミロースからなる錯体化合物の溶解度や爪などへの移行性を検討することで製剤中含有量および爪や角質層の厚い皮膚への移行性の改善を判断できる。そのためこれらを例証するために以下の実施例1から3を行った。
【実施例1】
【0031】
pH6緩衝液にメチルシクロヘプタアミロースを添加し、5,10および20W/W%のメチルシクロヘプタアミロース/pH6溶液を調整した。この液5mLに親化合物の塩酸塩0.4gを添加し、60℃で1時間インキュベートした。これをさらに37℃で3時間インキュベートした後、不溶物を濾過しメチルシクロヘプタアミロース/親化合物比が表1に記載の有効成分I〜IIIを得た。また5,10W/W%2−ヒドロキシプロピルシクロヘプタアミロース/pH6溶液(有効成分IV、V)および10W/W%マントシルシクロヘプタアミロース/pH6溶液(有効成分VI)を調製し、前記同様に試験し表1に記載の2−ヒドロキシプロピルシクロヘプタアミロースおよびマントシルシクロヘプタアミロース/親化合物比の有効成分を得た。またシクロヘプタアミロース/親化合物比は、親化合物の溶解量および親化合物を溶解するのに必要なシクロヘプタアミロース量より算出した。
【0032】
【表1】

【0033】
この結果、本発明の有効成分は親化合物モルに対しシクロアミロース0.25〜3モルが付加された錯体化合物であることがわかった。
【実施例2】
【0034】
上記で作製した本発明の有効成分I〜VIにおけるpH6緩衝液中薬物の溶解度について特許文献2に示されているポリオール(1,3−ブチレングリコール)、有機酸(クエン酸)を配合した技術(比較例1)におけるpH6緩衝液中薬物の溶解度、本発明に用いられる親化合物のpH4緩衝液中溶解度(比較例2)、pH5緩衝液中溶解度(比較例3)およびpH6緩衝液中溶解度(比較例4)と比較した。
その結果を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
本発明の有効成分I〜VIにおける親化合物の溶解度は、親化合物単独(比較例2〜4)に比べ明らかに高く、本発明の有効成分は親化合物単独に比べ溶解性が明らかに改善することがわかった。また、ポリオール(1,3−ブチレングリコール)、有機酸(クエン酸)を配合した技術(比較例1)では十分な薬物の溶解度を得ることはできなかった。これらのことから本発明の有効成分は親化合物の溶解度改善に有用であることが示された。
【実施例3】
【0037】
精製水、pH6における本発明の有効成分Iの50℃1ヶ月保存による安定性について特許文献2に示されているポリオール(1,3−ブチレングリコール)、有機酸(クエン酸)を配合した液(比較例1)およびポリオール(1,3−ブチレングリコール)、ジブチルヒドロキシトルエン、有機酸(クエン酸)、エタノールを含有した液(比較例5)中の薬物の安定性を比較した。
【0038】
本発明の有効成分においては50℃1ヶ月保存においても残存量の低下は認められず、本有効成分は可溶化のためのポリオール等の添加、安定化のためのジブチルヒドロキシトルエン、有効酸の添加に比べ安定性においても優れていた。
【実施例4】
【0039】
本発明における有効成分の爪における有効成分の透過性を例証するためにpH6緩衝液中の有効成分Iにおける親化合物の爪透過性について牛蹄を用いて検討した。爪透過性の比較には比較例2、親化合物を含有する市販液剤(比較例6)、親化合物を含有する市販クリーム(比較例7)と比較した。透過試験はチャンバーに蹄(厚さ100〜200μm)を挟みドナー側に比較例または本発明の有効成分Iを含有するpH6緩衝液を入れ、レシーバー側(pH4緩衝液)に透過した親化合物の量をHPLCで測定した。また、透過試験は32℃のインキュベーター内で行い24時間目の透過量を比較した。
【0040】
本発明における有効成分の爪における有効成分の透過性は、比較例2、5および7に比べ高い蹄透過性を示した。
このことから本発明の有効成分は爪における親化合物の透過性を増大させるとともに角質層の厚い皮膚などの疾患部への親化合物の透過性を増大させることがわかった。
【実施例5】
【0041】
本発明における有効成分の爪における移行性を例証するためにpH6緩衝液中の有効成分Iにおける親化合物の爪濃度について牛蹄を用いて検討した。また、爪移行性は比較例2と比較した。移行性の試験はチャンバーに蹄(厚さ700〜800μm)を挟みドナー側に比較例または本発明の有効成分Iを含有するpH6緩衝液を入れ、32℃,24,96,144時間後の蹄内の親化合物量を比較した。
【0042】
本発明の有効成分における親化合物は、比較例2に比べ明らかに高い蹄内薬物量を示した。このことから本発明の有効成分は爪への親化合物の移行性を増大させるとともに角質層の厚い皮膚などの疾患部への親化合物の移行性を増大させることがわかった。
【0043】
以上のように本発明の親化合物とシクロアミロースからなる錯体化合物を有効成分とする表在性の真菌症予防および治療用非経口投与剤は、爪に投与することで親化合物の患部への移行性を増大し、安全に投与でき薬物治療にきわめて有用な非経口投与剤である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】薬物の安定性の実験結果を示すグラフ。
【図2】薬物の透過試験結果を示すグラフ。
【図3】薬物の爪における移行性の実験結果を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(E)−N−(6,6−ジメチル−2−へプテン−4−インイル)−N−メチル−1−ナフタレンメチルアミン、その塩および/または誘導体から選ばれる少なくとも1種の親化合物とシクロアミロースとからなる錯体化合物を有効成分として含有することを特徴とする表在性の真菌症予防および治療用非経口投与剤。
【請求項2】
シクロアミロースがシクロヘキサアミロース、シクロヘプタアミロースおよびシクロオクタアミロースから選ばれる少なくとも1種であり、水酸基の少なくとも一部が化学修飾されていることを特徴とする請求項1記載の表在性の真菌症予防および治療用非経口投与剤。
【請求項3】
有効成分の含有率が0.01〜80%であることを特徴とする請求項1または2記載の表在性の真菌症予防および治療用非経口投与剤。
【請求項4】
非経口投与剤の投与形態が半固形状、液状または懸濁状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の表在性の真菌症予防および治療用非経口投与剤。
【請求項5】
非経口投与剤の投与形態が有効成分を自己支持性固体組成物中に含有させてなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の表在性の真菌症予防および治療用非経口投与剤。
【請求項6】
非経口投与剤の投与形態が有効成分を含有する基剤を支持性フィルムおよび/または基布に転延してなる貼付剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の表在性の真菌症予防および治療用非経口投与剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−7265(P2009−7265A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−168482(P2007−168482)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(390039468)三笠製薬株式会社 (7)
【Fターム(参考)】