説明

表在Campylobacterjejuniポリペプチド

本発明はCampylobacter jejuniの表在ポリペプチドおよびカンピロバクターに対するワクチン接種におけるその使用に関する。本発明はさらにポリヌクレオチド、これらの表在ポリペプチドを発現する発現ベクター、組換えウィルスまたは組換え細胞のワクチン接種における使用に関する。さらにまた本発明は抗カンピロバクター療法のための表在ポリペプチドに対する抗体の使用に関する。最後に、表在ポリペプチドを介した、カンピロバクターを検出するため、および、抗カンピロバクター剤を同定するための方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2003年11月25日に出願された米国仮特許出願番号第60/524,617号の特許本出願であり、これは、本明細書中にその全体が参考として援用される。本出願に引用された全ての特許および非特許参考文献は、本明細書中にその全体が参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明はCampylobacter jejuniの細胞表在ポリペプチドおよびカンピロバクター感染に対抗した免疫化における、カンピロバクターの診断における、および、抗カンピロバクター活性を有する化合物の同定における、その使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
(カンピロバクター感染の発生)
グラム陰性の微好気性細菌であるカンピロバクターは1973年にヒト病原体として最初に同定された。以降、先進国における下痢性疾患の最も一般的な起因菌となり、より伝統的に認知されていた食品介在の病原体であるシゲラ種およびサルモネラ種を合わせたものよりも多くの疾患を誘発している。種々の疾患誘発性カンピロバクター菌株のうち、C.jejuniは最も重要であり、カンピロバクター症の原因の99%に相当する。地球的レベルにおいては、この微生物は病原体として最初に認識されて以来、カンピロバクター症の報告例数が一貫して増大していることが調査により示されている。実際、世界保健機構は現時点でカンピロバクター症を誘発する細菌を世界で最も重要な腸炎の原因菌と認識している。国際的な公衆衛生の当局の推定によれば、毎年世界規模で下痢の400〜500百万症例をC.jejuniが単独で誘発しており、そして米国における食品介在の病原体の第1となっている。2000年に関する最近のデータによれば食品介在疾病の他のより報告されている原因と比較した場合のカンピロバクターの重大性を指摘している。カンピロバクターはサルモネラまたは大腸菌媒介による食品介在疾病よりも多くの症例、入院および死亡の原因となっている。データセットのうち、カンピロバクターは症例の55%および入院の33%を超えている。
【0004】
(カンピロバクター感染の症状)
下痢はカンピロバクター症のより一貫した顕著な発現状態である。出血を伴う場合が多い。C.jejuni感染の典型的な症状は熱、吐き気、嘔吐、腹痛、頭痛および筋肉痛を包含する。症例の大部分は軽症であり入院を必要とせず、自己に限定される。しかしながらC.jejuni感染は重症で致命的となる場合がある。死亡は他の疾患(例えば癌、肝臓病および免疫不全関連の疾患)が存在する場合により一般的となる。5歳未満の小児および15〜29歳の若年者が最も罹患率の高い年齢群である。インキュベーション期間(曝露と最初の症状の発症の間の時間)は典型的には2〜5日であるが、発症は摂取後2日もの短期〜10日もの長期にわたる場合がある。病状は通常は1週間を超えて継続することは無いが、重症例は3週間まで持続する場合がある(食品介在疾患流行の確認に関するCDCカイドライン、MMWR、1996;45:59)。
【0005】
(カンピロバクターの長期の転帰)
カンピロバクター感染は場合により長期の転帰を示す場合がある。一部の患者ではカンピロバクター症後の身体の神経に影響するギヤン−バレー症候群と呼ばれる疾患を発症する。稀ではあるが、これは西洋における急性全身性麻痺の最も一般的な原因である。これはカンピロバクター患者の少数において下痢性の病状の数週間後に開始する。これは個体の免疫系がカンピロバクターの成分に対する抗体を形成する場合に生じ、それらの抗体は化学的に細菌成分と類似しているため、身体の神経細胞の成分を攻撃する(非特許文献1)。ギヤン−バレー症候群は脚部において始まり、全身に広がる。チクチク感から脆弱化に至り麻痺をもたらす。これは数週間〜数ヶ月持続し、集中治療を要する場合が多い。完全回復が一般的であるが、患者は重度の神経学的損傷を伴ったままとなる。ギヤン−バレー患者の約15%は1年後は寝たきりまたは車椅子使用となる。報告されているカンピロバクター症例の1000例当たり約1例(0.1%)がギヤン−バレー症候群を続発すると推定される。英国におけるギヤン−バレー症候群の40%もの症例がカンピロバクター症の後に起こっている(非特許文献2)。
【0006】
ミラーフィッシャー症候群はカンピロバクター症に後続する場合があるもう1つの関連する神経学的症候群であり、やはり免疫学的な模倣性により生じる。ミラーフィッシャー症候群においては、頭部の神経が身体の神経よりも高度に影響される。
【0007】
カンピロバクター感染に関連する別の慢性症状はライター症候群と称される関節炎である。これはひざおよび下背部のような大重量負荷の関節に影響する場合が多い反応性関節炎である。これは特定の遺伝子的特性と強力に関係している合併症であり;ヒトリンパ球抗原B27(HLA−B27)を有する個体が最も罹患し易い。
【0008】
さらにまたカンピロバクターは盲腸を誘発したり、または腹腔(腹腔炎)、心臓(心炎)、中枢神経系(髄膜炎)、胆嚢(胆のう炎)、尿道および血流に感染する場合がある。
【0009】
(カンピロバクター症の治療)
カンピロバクター症を有する患者は水分保持を維持するために下痢が持続している限り大量の液体を飲用する必要がある。ロペラミドのような抗下痢剤は一部の症状を緩和する場合がある。カンピロバクターは通常は自己限定性の疾病であるが、それが同定されれば治療が疾病の過程を短期化するため抗生物質を使用した特定の治療が指示される。胃腸炎のより重度の症例においては、抗生物質は培養結果が判明するよりも前に通常は開始される。マクロリド抗生物質(エリスロマイシン、クラリスロマイシンまたはアジトロマイシン)はC.jejuniに対する最も効果的な薬剤である。フルオロキノロン抗生物質(シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ガチフロキサシンまたはモキシフロキサシン)もまた使用できる。
【0010】
しかしながら、カンピロバクターの抗微生物剤に対する耐性は多くの国において報告されており、そして増大している(非特許文献3)。キノロン耐性は欧州、アジアおよび米国で増大している。耐性の増加は少なくとも部分的には家畜飼料中の抗生物質の使用に関係している(非特許文献4)。
【非特許文献1】Ang CWら、Infect Immun.、2001年、第69巻、第4号、p.2462−2469
【非特許文献2】Reesら、N Engl J Med、1995年、第333巻、p.1374−1379
【非特許文献3】PedungtonおよびKaneene、J.Vet.Med.Sci.2003年、第65巻、第2号、p.161−170
【非特許文献4】Smithら、N Engl J Med、1999年、第340巻、p.1525−1532
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
(カンピロバクターの治療、防止および診断のための新しい方策)
発生率の上昇および耐性の広範な発生のため、カンピロバクター感染の治療および防止のための新しい効果的な製品の開発の必要性は大きい。一方において、耐性の発生により、新しい抗カンピロバクター化合物の必要性が存在する。他方において、観察実験研究によりヒトにおける後天性免疫の発生の証拠が得られており、特にリスク群においてワクチン開発の概念を後押ししている(ScottおよびTribble、「Campylobacter」、第2版、NachamkinおよびBlaser編、American Sciciety for Microbiology、2000年、p.303−319)。さらにまた、カンピロバクター感染の診断のための新しい迅速で信頼性の高い方法が必要とされている。
【0012】
これらの目的は標的、即ち免疫系および/または抗体に対する標的、細胞毒性インヒビターに対する標的、または診断におけるインジケーター部分に対する標的として機能することができる適当なCampylobacter jejuniポリペプチドの同定および使用を介して達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の概要)
本出願はCampylobacter jejuniの表在ポリペプチドに関する。本出願の内容において、「表在」ポリペプチドとはCampylobacter jejuni細胞の外膜の外側に少なくとも部分的に(即ちポリペプチド鎖の部分またはまたポリペプチド分子の集合の部分)局在化するポリペプチドとして定義される。即ち表在ポリペプチドは外膜の外側の空間に向けて完全または部分的に露出しているポリペプチドである。表在ポリペプチドはさらに本明細書に記載する低pHの表面タンパク質抽出により得られる画分中に同定することができる全てのポリペプチドまたはポリペプチドフラグメントを包含する。
【0014】
表在ポリペプチドは、このようなポリペプチドの細胞外空間への露出がこれらのポリペプチドと相互作用する化合物(例えば細菌感染の防止、治療または診断のために使用される化合物)が有効であるために外膜へ進入または通過する必要がない場合が多いため、細菌感染の抗生物質療法および/または診断のための魅力的な標的である。
【0015】
Campylobacter jejuniポリペプチドの細胞表面局在化の測定は現時点では実験的にのみ行うことができ、この局在化に関する共通した分類シグナルまたはモチーフが知られていないため、バイオインフォマティクス的には不可能である。ポリペプチドがペリプラズムに進入できるか否かをある程度の確実性をもって予測することは可能であるが、ポリペプチドの表面局在化に関する一般的モチーフは同定されておらず、そしてこのために、あるペリプラズム(または非ペリプラズム)のポリペプチドが表面に輸送されるかどうかを配列のみから予測することは不可能である。確認された表面ポリペプチドの数はCampylobacter jejuniに関しては比較的少数であり、そして大部分は鞭毛構造のタンパク質および少数の非鞭毛関連の表面タンパク質、例えばPEB1−4を包含する。
【0016】
本発明者等はCampylobacter jejuniの細胞表面画分中の51種の異なるポリペプチドを同定している。使用した方法は比較的高レベルに発現されるポリペプチドを同定する。表面に露出されていること、および、比較的大量に存在することの組合せは、これらのポリペプチドを抗体の標的として、即ち受動または能動免疫/ワクチン接種において使用するために適するものとしている。
【0017】
従って、第1の態様において、本発明は、医薬として使用するための、下記成分:
− 配列番号1〜51の表在カンピロバクターポリペプチドからなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチド、
または、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
または、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、
または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、
または、
− 該ポリペプチドに結合し得る抗体、
を含む組成物に関する。
【0018】
別の主要な態様において、本発明は、カンピロバクター、好ましくはCampylobacter jejuniの感染に対抗して動物または人間を免疫化するための医薬の製造のための下記物質:
− 配列番号1〜51からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、
の使用に関する。
【0019】
さらにまた、本発明は主要な態様において、動物または人間におけるカンピロバクター、好ましくはCampylobacter jejuniの感染の治療または予防のための医薬の製造のための配列番号1〜51からなる群より選択されるポリペプチドに結合し得る抗体の使用に関する。
【0020】
同定されている51の表在ポリペプチドのうちの15(配列番号37〜51)はWO02/077183に記載の通り他の細菌の必須遺伝子を用いた相同性検索におけるヒットとして36000を超える他の遺伝子座の中から特に以前に報告されているものである。WO02/077183は同定されたポリペプチドの細胞下の局在化の同定もその発現レベルの測定も記載していない。
【0021】
別の主要な態様において、本発明は配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドに結合し得る抗体に関する。
【0022】
さらに別の主要な態様において、本発明は配列番号37〜51からなる群より選択されるポリペプチドに結合し得、そして、インタクトなCampylobacter jejuni細胞に結合できる抗体に関する。
【0023】
さらに別の主要な態様においては、本発明は上記した本発明の抗体を形成する方法に関する。
【0024】
表面露出であることと比較的大量に存在することの組合せはさらに、本発明により同定された51ポリペプチドをカンピロバクター症の診断のための標的として高度に適するものとしており、これにより高い感度でインタクトな細胞を検出できるようになる。即ち、別の主要な態様において、本発明は本明細書に記載する細胞表面に位置するポリペプチドを認識することができるインジケーターを用いてCampylobacter jejuniまたはその部分を検出するための方法に関する。
【0025】
さらにまた、51ポリペプチドの表面局在化はこれらをインヒビターの標的として適するものとしている。このようなインヒビターは殺菌性または制菌性であるか、または、宿主生物とのCampylobacter jejuniの相互作用(毒力)を防止する。すなわち、別の主要な態様において本発明は本明細書に記載した細胞表面局在ポリペプチドのインヒビターを同定するための方法に関する。
【0026】
(定義)
ワクチン:人間および動物における微生物に対抗した保護的な免疫応答を誘導することができる組成物を指すために使用する。
【0027】
防御免疫応答:感染体、本明細書においてはCampylobacter jejuniが一次応答ではなく二次応答にむしろ適合するものであり、これにより宿主生物に対するその衝撃を低減することができるような、生物における記憶を誘導する免疫応答(体液性/抗体および/または細胞性)を指すために使用する。
【0028】
ポリペプチド:特段の記載が無い限り、「ポリペプチド」という用語は本明細書において使用する場合は、ポリペプチドの改変体またはフラグメントも指すものとする。好ましいポリペプチドは抗原性ポリペプチドである。
【0029】
フラグメント:ポリペプチドの非完全長の部分を指すために使用する。即ち、フラグメントそのものもポリペプチドである。
【0030】
改変体:所定の参照ポリペプチドの「改変体」とは、該参照ポリペプチドと配列同一性の特定のレベルを示すが、該参照ポリペプチドと同一ではないポリペプチドを指す。
【0031】
抗原/抗原性の/抗原性/免疫原/免疫原性の/免疫原性:すべて免疫応答を誘導する能力を指す。
【0032】
免疫原性キャリア:免疫応答を直接または間接的に支援または強化する化合物を指す。
【0033】
発現ベクター:ポリヌクレオチド配列由来のポリペプチドの生産において使用される好ましくは組換えのプラスミドまたはファージまたはウィルスを指す。発現ベクターは発現コンストラクトを含み、これは(1)遺伝子発現において調節的な役割を有する遺伝子エレメント、例えばプロモーターまたはエンハンサー、(2)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳され、そして、(1)のエレメントに作動可能に連結している構造またはコーディング配列;および(3)適切な転写開始および終止配列の組立物を含む。
【0034】
結合相手:ポリペプチドの結合相手とは、該ポリペプチドに結合し得る分子を指す。このような結合は別の分子を介した間接的なものであることができるが、好ましくは直接的なものである。結合相手はいずれかの型の分子、例えば小型疎水性分子、または、例えば細胞内または細胞外の巨大分子、例えばタンパク質、炭水化物または核酸であることができる。好ましい型の結合相手は抗体、リガンドまたはインヒビターを包含する。
【0035】
複数:「複数」という用語は1つより多い、好ましくは10より多いことを指す。
【0036】
インジケーター部分:「インジケーター部分」という用語はあるポリペプチドおよび/または細胞に特異的に結合し得、そして、検出可能なシグナルを発生することができる分子または分子複合体を包含する。好ましくは、インジケーター部分は抗体であるか、抗体分子を含む。即ち、好ましいインジケーター部分は検出可能な物質とカップリングまたは複合体化する抗体である。
【0037】
宿主尤度分子または宿主分子:C.jejuniを感染させることができる宿主生物中に通常存在する分子を指す。宿主誘導分子は好ましくは宿主ポリペプチド、好ましくはヒトポリペプチドである。
【0038】
抗体:「抗体」という用語は、本明細書において使用する場合は、抗体並びにその機能的等価物を包含するものとする。即ち、これにはポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、ヒト化、ヒトまたはキメラ抗体、1本鎖抗体、および、さらには抗体の結合フラグメント、例えばFabフラグメント、F(ab’)フラグメント、Fab発現ライブラリにより作成されたフラグメント、抗イディオタイプ抗体、抗体フラグメント含むハイブリッドおよびこれらのいずれかのエピトープ結合フラグメントを含むハイブリッドが包含されるが、これらに限定されない。用語はさらに多価、多重特異性、例えば二重特異性の抗体およびモノクローナル抗体の混合物も包含する。
【0039】
解離定数Kdはマクロ分子間、例えば抗体とその抗原の間の結合の強度(または親和性またはアビディティー)を記載するための尺度である。Kdが小さいほど結合は強力である。
【0040】
単離された:本明細書に開示したポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび抗体に関して使用する場合は、「単離された」とは同定され、そしてその天然の、典型的には細胞の環境の成分から分離および/または回収されているものを指す。天然の環境の夾雑成分とは、ポリペプチドに関する診断または治療用途を典型的に妨害する物質であり、そして酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を包含する。本発明のポリペプチド、ポリヌクレオチドおよび抗体は好ましくは単離されており、そして本発明のワクチンおよび他の成分は好ましくは単離されたポリペプチドまたは単離されたポリヌクレオチドまたは単離された抗体を含む。
【0041】
2003年11月21日出願のデンマーク優先権出願PA200301726および2003年11月25日出願の米国暫定出願60/524,617から転記したリスト1は参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
(医薬として使用するための組成物)
第1の主要な態様において、本発明は医薬として使用するための、下記成分:
− 配列番号1〜51の表在カンピロバクターポリペプチドからなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、または、
− 該ポリペプチドに結合し得る抗体、
を含む組成物に関する。
【0043】
重要な実施形態において、組成物は下記成分:
− 配列番号1〜51からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、
を含む。
【0044】
該組成物は能動免疫化のためのワクチンとしてそれを必要とする固体において使用できる。これは「本発明のワクチン組成物およびワクチン接種の方法」のセクションにおいて説明する。
【0045】
1つの好ましい実施形態においては、組成物は配列番号1〜36からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチドを含む。別の好ましい実施形態においては、組成物は配列番号37〜51からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチドを含む。
【0046】
別の重要な実施形態においては、組成物は配列番号1〜51の表在カンピロバクターポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドに結合し得る抗体を含む。該組成物は例えば受動免疫において、それを必要とする個体に対し使用できる。これは「本発明の抗体および抗体を惹起するための方法」のセクションにおいて説明する。
【0047】
(本発明のワクチン組成物およびワクチン接種の方法)
ワクチン接種または能動免疫化の目的は抗原性または免疫原性の組成物を使用して感染性微生物に対する記憶応答を誘導することにより保護免疫を与えることである。即ちワクチンは人間または動物における微生物に対抗する保護免疫応答を誘導することができる組成物である。このような免疫応答は細胞性の応答および/または体液性の応答、例えば特異的T細部応答または抗体応答であることができる。
【0048】
従って、重要な実施形態において、組成物はワクチン組成物である。即ち、本発明はワクチンとしての下記成分:
− 配列番号1〜51の表在カンピロバクターポリペプチドからなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、
または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、を含む組成物の使用に関する。本明細書においては、改変体とは、該配列に対して少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する。
【0049】
上記した組成物の1つの実施形態においては、ポリペプチドは配列番号1またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0050】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号2またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0051】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号3またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0052】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号4またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0053】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号5またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0054】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号6またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0055】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号7またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0056】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号8またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0057】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号9またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0058】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号10またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0059】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号11またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0060】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号12またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0061】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号13またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0062】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号14またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0063】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号15またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0064】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号16またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0065】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号17またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0066】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号18またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0067】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号19またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0068】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号20またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0069】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号21またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0070】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号22またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0071】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号23またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0072】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号24またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0073】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号25またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0074】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号26またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0075】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号27またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0076】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号28またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0077】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号29またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0078】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号30またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0079】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号31またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0080】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号32またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0081】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号33またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0082】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号34またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0083】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号35またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0084】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号36またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0085】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号37またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0086】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号38またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0087】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号39またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0088】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号40またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0089】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号41またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0090】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号42またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0091】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号43またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。1つの好ましい実施形態においては配列番号43のXはVであり、そしてXはAであり、そしてXはTである。別の好ましい実施形態においては配列番号43のXはAであり、そしてXはTであり、そしてXはAである。
【0092】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号44またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0093】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号45またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0094】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号46またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0095】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号47またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0096】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号48またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0097】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号49またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0098】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号50またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0099】
上記した組成物の別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号51またはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0100】
組成物の一部の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号1〜51の群から選択される配列よりなる。別の実施形態においては、ポリペプチドは配列番号1〜51の群から選択される配列または該配列の抗原性フラグメントまたは改変体、ならびにタグ、例えばhisタグ、即ちポリヒスチジンタグを含む。
【0101】
組成物は配列番号1〜51の群から選択される1つのポリペプチドまたはそのフラグメントまたは改変体をふくむのみであってよい。しかしながら、別の実施形態においては、組成物は配列番号1〜51の群の1つより多いポリペプチドおよび/または配列番号1〜51から選択されるポリペプチドの1つより多いフラグメントを含む。即ち、本発明の組成物は1つより多い、例えば2、例えば3、例えば4、例えば5、例えば6、例えば7、例えば8、例えば9、例えば10、例えば5〜10の範囲のポリペプチドおよび/またはフラグメントの数、または10より多い、例えば10〜20の範囲の、配列番号1〜51の群から選択される異なるポリペプチドまたはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0102】
同様に、組成物は本発明の1つのポリヌクレオチド、1つの発現ベクター、または、1つの組換えウィルスまたは組換え細胞を含むのみであってよい。しかしながら、別の実施形態においては、組成物は本発明の1つのポリヌクレオチド、1つの発現ベクター、または、1つの組換えウィルスまたは組換え細胞より多くを含む。即ち本発明の組成物は、1つより多い、例えば2、例えば3、例えば4、例えば5、例えば6、例えば7、例えば8、例えば9、例えば10、または10より多い、例えば10〜20の範囲の、本明細書に記載した本発明の異なるポリヌクレオチド、発現ベクターまたは組換えウィルスまたは組換え細胞を含んでよい。
【0103】
さらにまた、一部の実施形態においては、本発明の組換え細部は配列番号1〜51のポリペプチド1つより多く、および/または、配列番号1〜51の群から選択されるポリペプチドの抗原性フラグメントまたは改変体1つより多くを発現してよい。即ち、本発明の組成物は1つより多い、例えば2、例えば3、例えば4、例えば5、例えば6、例えば7、例えば8、例えば9、例えば10、例えば5〜10の範囲のポリペプチドおよび/またはフラグメントの数、または10より多い、例えば10〜20の範囲の、配列番号1〜51の群から選択される異なるポリペプチドまたはその抗原性フラグメントまたは改変体を含む組換え細胞を含む。別の実施形態においては、本発明において使用する組成物は本発明に記載する複数の組換えウィルスまたは組換え細胞を含む。
【0104】
(ポリペプチドを含むワクチン)
好ましい実施形態においては、本発明は、ワクチンとして使用するための、配列番号1〜51からなる群より選択される配列、例えば配列番号1〜36のいずれか、または配列番号37〜51のいずれか、または該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチドを含む組成物に関する。好ましいフラグメントまたは改変体はフラグメントおよび改変体に関する本明細書のセクションにおいて記載するものである。
【0105】
従って、本実施形態においては、抗原性または免疫原性はCampylobacter jejuni細胞の表面に通常位置するポリペプチドの直接の投与により提供される。1つの特定の実施形態においては、ポリペプチドは、ワクチン組成物が異なるMHC分子、例えば異なるMHCクラスI分子に会合することができる複数のポリペプチドを含むように、選択される。好ましくは、ワクチンとして使用するための組成物は最も頻繁に存在するMHCクラスI分子と会合することができるポリペプチドおよび/またはフラグメントを含む。本発明の1つの特定の実施形態においては、組成物はMHCクラスI分子と会合することができるポリペプチドおよび/またはフラグメント1つ以上、および、MHCクラスII分子と会合することができるポリペプチドおよび/またはフラグメント1つ以上を含む。従って、ワクチン組成物は一部の実施形態においては、特定の細胞毒性T細胞応答および/または特定のヘルパーT細胞応答を形成することができる。MHC分子への会合は例えばAndersen et al.(1999)Tissue Antigens 54:185;またはTan et al.(1997)J.Immunol.Methods 209:25に記載の通り測定できる。
【0106】
(アジュバントおよび免疫原性キャリア)
好ましくは、本発明のワクチンとして使用するための組成物、即ちワクチン組成物は「本発明において使用するための組成物」のセクションにおいて本明細書に記載する通り薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0107】
組成物はさらにアジュバントを含むことができる。アジュバントは、それをワクチン組成物に添加することで、ポリペプチドまたは他の抗原に対する免疫応答を増大またはその他の変化をもたら物質である。アジュバントは例えばAlK(SO、AlNa(SO、AlNH(SO)、シリカ、ミョウバン、Al(OH)、Ca(PO、カオリン、炭素、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、ムラミルジペプチド、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−DMP)、N−アセチル−ノルムラミル−L−アラニル−D−イソ−グルタミン(CGP11687、nor−MDPとも称する)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミニル−L−アラニン−2−(1’2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP19835A、MTP−PEとも称する)、2%スクアレン/Tween−80.RTM.エマルジョン中のRIBI(MPL+TDM+CWS)、リポ多糖類および誘導体、例えば脂質A、フロイントの完全アジュバント(FCA)、フロイントの非完全アジュバント、メルクアジュバント65、ポリヌクレオチド(例えばポリICおよびポリAU酸)、マイコバクテリウム・ツベルクロシス由来ワックスD、コリネバクテリウム・パルバム、百日咳菌およびブルセラ属のメンバー中に存在する物質、リポソームまたは他の脂質エマルジョン、Titermax、ISCOMS、QuilA、ALUN(米国特許58767および5,554,372参照)、脂質A誘導体、コレラ毒誘導体、HSP誘導体、LPS誘導体、合成ペプチドマトリックスまたはGMDP、インターロイキン1、インターロイキン2、モンタニドISA−51およびQS−21のいずれかであることができる。本発明において使用するのに好ましいアジュバントはモンタニドISA−51およびQS−21を包含する。モンタニドISA−51(Seppic,Inc.)は通常はエマルジョンとして投与される不完全フロインドアジュバントに類似した鉱物油系のアジュバントである。QS−21(Antigenics;Aquilla Biopharmaceuticals,Framingham,MA)は水溶液と同様に取り扱われる高度に精製された水溶性のサポニンである。
【0108】
本発明に従って使用できるアジュバントの望ましい機能を以下の表に列挙する。
【0109】
【表1】

入手元:John C.Cox and Alan R.Coulter Vaccine 1997 Feb;15(3):248−56。
【0110】
本発明のワクチン組成物は異なるアジュバントを1つより多く含んでよい。本発明のカンピロバクターポリペプチド、またはそのフラグメント1つ以上およびアジュバントはいずれかの適切な順序において個別に投与できることも意図している。
【0111】
頻繁には、選択されるアジュバントは例えばミョウバン沈殿抗原と組み合わせて使用されるフロインドの完全または不完全アジュバント、または殺傷された百日咳菌である。アジュバントに関する一般的な考察はGoding,Monoclonal Antibodies:Principles&Practice(2nd edition,1986)p61−63に記載されている。しかしながらGodingによれば、目的の抗原が低分子量のものである場合、または免疫原性が乏しい場合は、免疫原性キャリアへのカップリングが推奨される(後述参照)。種々のサポニン抽出物およびサイトカインもまた免疫原性組成物中のアジュバントとして有用であることが示唆されている。近年、アジュバントとしてよく知られたサイトカインである顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)の使用が提案された(WO97/28816)。
【0112】
さらにまた、本発明のワクチン組成物は、カンピロバクターのポリペプチドまたはそのフラグメントが会合することができる相手となるスカホールド構造、例えばタンパク質または多糖類のような免疫原性キャリアを含むことができる。ワクチン組成物中に存在するカンピロバクターポリペプチドまたはその抗原性フラグメントまたは改変体は例えばタンパク質のような免疫原性キャリアと会合することができる。キャリアタンパク質へのポリペプチドの結合または会合は共有結合製または非共有結合性であってよい。免疫原性キャリアタンパク質はアジュバントとは独立して存在してよい。キャリアタンパク質の機能は、例えば、特定のフラグメントの分子量を増大させることによりその活性または免疫原性を増大させるか、安定性を付与するか、生物活性を増大させるか、または、血清中半減期を延長することである。さらにまた、免疫原性キャリアタンパク質はT細胞に対してカンピロバクターポリペプチドまたはそのフラグメントを提示する場合に寄与する。キャリアタンパク質としては例えばキーホールリンペットヘモシアニン、血清タンパク質、例えばトランスフェリン、ウシ血清アルブミン、ヒト血清アルブミン、タイログロブリンまたはオブアルブミン、免疫グロブリンまたはホルモン、例えばインスリンであるが、これらに限定されない。破傷風トキソイド、および/またはジフテリアトキソイドもまた本発明の1つの実施形態における適当なキャリアである。代替またはさらに加えて、デキストラン、例えばセファロースを添加してよい。さらに別の実施形態においては、抗原提示細胞、例えばT細胞に対してポリペプチドまたはそのフラグメントを提示することができる樹状細胞を添加することによりキャリアタンパク質と同様の作用を得てよい。
【0113】
ワクチン組成物の製造方法は例えば米国特許5,470,958およびその参考文献に記載されている。本発明のワクチン組成物のポリペプチド成分の有効量は、注射される場合は、典型的にはヒト対象に対し、約0.1〜約1000μg、例えば約1〜約900μg、例えば約5〜約500μg、そして一般的に約0.01〜10.0μg/kg対象動物体重の範囲である。上記した範囲は例示であり、本発明を限定するものではない。
【0114】
本発明の抗原性ポリペプチドの有効量は免疫調節剤の非存在下において検出可能な体液性免疫応答を誘発することができる量である。多くの免疫原について、これは、ヒト対象に対しては約5〜100μgの範囲である。使用すべき免疫原の適切な量はそれが誘発すべき免疫学的応答により異なる。さらにまた、必要とされる厳密な有効用は対象の種、齢および全身状態、治療すべき状態の重症度、投与様式等に応じて対象ごとに変動する。従って厳密な有効量を特定することは常時可能ではない。しかしながら、適切な有効量は当該分野の日常的実験または従来の知見を用いて当業者が決定してよい。
【0115】
(DNAワクチン組成物および組換えウィルスまたは組換え細胞を含むワクチン組成物)
DNAまたはRNAワクチンは、患者内への例えば抗原性ポリペプチド決定基の導入を、目的のポリペプチド、本明細書においては配列番号1〜51のポリペプチドまたはその抗原性フラグメントまたは改変体をコードする配列に作動可能に連結した発現制御配列を包含するポリヌクレオチドコンストラクトを患者の細胞内で過剰発現することにより行うことに関する。このようなフラグメントはメチオニン開始コドンを含有していない場合があるため、このようなコドンは場合により発現制御配列の部分として含まれる。ポリヌクレオチドコンストラクトは非複製の直鎖ポリヌクレオチド、環状発現ベクターまたは自律複製プラスミドまたはウィルス発現ベクターであってよい。コンストラクトは宿主ゲノム内に組み込まれてよい。哺乳類細胞をトランスフェクトで切るいずれかの発現ベクターを本発明による個体を免疫化する方法において使用してよい。発現ベクターを構築する方法は当該分野で良く知られている(例えばMolecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook et al.,eds.,Cold Spring Harbor Laboratory,2nd Edition,Cold Spring Harbor,N.Y.,1989参照)。好ましいものは本発明の配列番号1〜51から選択される複数のポリペプチドおよび/または複数の抗原フラグメントを発現することにより、予め選択された種々の標的に対して同時にワクチン接種を可能とするような、複数の遺伝子を含む組成物である。
【0116】
ワクチンはまた、生存しているが無害であるベクター、例えばウィルスまたは細胞、例えば弱毒化または毒性の減少した大腸菌またはサルモネラの細胞内に目的の特定の抗原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを取りこませることにより製造することもできる。無害な組換えウィルスまたは組換え細胞を意図されるレシピエントに注射する。このような組換え細胞は死滅または生存していてよい。生存している場合は、組換え生物は宿主内で複製する一方で抗原性ポリペプチドを生産し、宿主の免疫系に対して提示する。この型のワクチンは非複製型ワクチンよりも有効である。このようなワクチンが良好であるためには、ベクター生物は生存していなければならず、そして本来非毒性であるか、または、弱毒化または毒性の減少した表現型を有さなければならない。
【0117】
弱毒化細菌を使用するワクチン接種の方策およびそこで使用するための適当な細菌株は例えばMakino et al.(2001) Microb.Pathog.31:1−8;Gentschev et al.(2002) Int.J.Med.Microbiol.291:577−582;Turner et al.(2001) Infect.Immun.69:4969−4979;WO99/49026;およびWO03/022307に記載されている。
【0118】
適用することができるベクターの別の例は、例えばWO90/07936、WO91/02805、WO93/25234、WO93/25698およびWO94/03622に開示されているレトロウィルス、Berkner,Biotechniques 6:616−627,1988;Li et al.,Hum.Gene Ther.4:403−409,1993;Vincent et al.,Nat.Genet.5:130−134,1993;およびKolls et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91;215−219,1994に開示されているアデノウィルス、米国特許4,769,330;米国特許5,017,487;およびWO89/01973に開示されているポックスウィルス。WO91/11092に開示されているネイキッドDNA、WO93/03709に開示されている多価カチオン分子と複合体化しているポリヌクレオチド分子、およびWang et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA84:7851,1987に開示されているリポソームに会合しているポリヌクレオチドを含むベクターである。特定の実施形態においては、DNAはCuriel et al.,Hum.Gene Ther.3:147−154,1992;Cotton et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:6094に開示されている殺傷または不活性化アデノウィルスに連結してよい。他の適当な組成物はWu et al.,J.Biol.Chem.264:16985−16987,1989に開示されているDNAリガンド、および、Felgner et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA84:7413−7417,1989に開示されている脂質−DNA組合せを包含する。さらにまた、細胞へのネイキッドDNAの取り込みの効率は生体分解性のラテックスビーズ上にDNAをコーティングすることにより向上させてよい。
【0119】
ワクチンベクターは好ましくは免疫原性ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結した適当なプロモーターを含む。標的細胞内の高レベルの転写開始を指向することができるいずれかのプロモーターを本発明において使用してよい。即ち非組織特異的プロモーター、例えばサイトメガロウィルス(DeBernardi et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA88:9257−9261[1991]およびその参考文献)、マウスメタロチオイネンI(Hammer et al.,J Mol Appl Gen 1:273−288[1982])、HSVチミジンキナーゼ(McKnight,Cell 31:355−365[1982])およびSV40早期(Benoist et al.,Nature 290:304−310[1981])プロモーターを使用してよい。
【0120】
(ワクチン接種方法)
別の主要な態様において、本発明はCampylobacter jejuniの感染に対抗する動物またはヒトの免疫化のための医薬の製造のための下記物質:
− 配列番号1〜51からなる群より選択される配列、例えば配列番号1〜36のいずれかまたは配列番号37〜51のいずれかを含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、
のいずれかの1つ以上の使用に関する。免疫化が防御免疫応答を誘導するのが望ましい。
【0121】
同様に、本発明は下記物質:
− 配列番号1〜51の配列のいずれか、例えば配列番号1〜36のいずれかまたは配列番号37〜51のいずれかを含むか;または、該配列のいずれかのフラグメントまたは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、
のいずれか1つ以上を投与することによりCampylobacter jejuni感染に対抗して動物または人間を免疫化する工程を含む、Campylobacter jejuni感染に対抗した該動物または人間の免疫化のための方法に関する。
【0122】
動物はいずれかの鳥類または哺乳類、例えばニワトリ、アヒル、シチメンチョウ、ウシまたはブタであってよい。人間の特定の標的集団は危険集団、例えば4歳以下の小児集団、先進国民集団、または、開発途上国への無免疫または半免疫の旅行者集団に属する個体である。
【0123】
本発明の組成物の投与様式は、例えば全身投与、例えば静脈内または皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、鼻腔内投与、経口投与、および一般的には粘膜投与のいずれかの形態を包含する。
【0124】
本発明の免疫原性作用は例えばRIAにより血清サンプル中の抗体の試験により測定することができる。さらにまた、作用は例えばT細胞依存性抗原ポリペプチドに対するT細胞の増大した応答性を測定することによりインビボで測定でき、その場合、該増大した応答性はそのような抗原性ポリペプチドに対する正常な免疫応答の増強に態様的なものである。免疫刺激作用もまた特にIL−2、IL−3、IFN−ガンマおよび/またはGM−CSFの増強されたT細胞の生産として測定してよい。即ち、増強された免疫応答を誘発する能力を有するポリペプチドまたはそのフラグメントは例えば参照により本明細書に組み込まれるUS07/779,499に記載の通り、T細胞による増強されたIL−2、IL−3、IFN−ガンマまたはGM−CSF生産をスクリーニングすることにより容易に同定することができる。Young et al.(2000),Campylobacter,2nd ed.Ed.Nachamkin and Blaser,American Society for Microbiology,pp.287−301もまた治療および予防の方策の薬効のおよび組成物の評価において使用できる一連の適当な動物モデルを記載している。カンピロバクターに対抗したワクチン接種に関連する多くの態様、例えば潜在的標的集団、動物モデルおよびワクチン接種の方策は、Scott and Tribble(2000),Campylobacter,2nd ed.Ed.Nachamkin and Blaser,American Society for Microbiology,pp.303−319に記載されている。
【0125】
本明細書に記載したポリヌクレオチドおよび発現ベクターはいずれかの標準的な方法、例えばIS−COMS、リポソームまたは赤血球ゴースト内に取り込まれたネイキッドDNA(Donnelly et al.,Annu Rev Immunol 15:617−648[1997])として、または、バイオリスティックトランスファー、カルシウム沈降またはエレクトロポレーションにより、インビボまたはインビトロで標的細胞に導入できる。或いは、動物または人間の細胞内に目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを導入するための手段としてウィルス系ベクターを使用することもできる。好ましいウィルスベクターは複製欠損肝炎ウィルス(例えばHBVおよびHCV)、レトロウィルス(例えばWO89/07136;およびRosenberg et al.,N Eng J Med 323(9):570−578[1990]参照)、アデノウィルス(例えばMorsey et al.,J Cell Biochem,Supp.17E[1993]参照)アデノ関連ウィルス(Kotin et al.,Proc Natl Acad Sci USA87:2211−2215[1990])、複製欠損単純疱疹ウィルス(HSV;Lu et al.,Abstract,p.66,Abstracts of the Meeting on Gene Therapy, Sep.22−26,1992,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor, NY)、カナリア痘ウィルスから誘導したもの、および、これらのベクターのいずれかの修飾された型を包含する。インビトロでトランスフェクトされた細胞を培養し、所望によりクローニングした後に患者内に導入することができる。
【0126】
直接のインビボの操作法に加えて、細胞を動物から取り出し、修飾し、そして同じか別の動物に入れるというエクスビボの操作法を使用してよい。エクスビボの概念において組織の細胞内に本発明の抗原性ポリペプチドまたはこれをコードするポリヌクレオチドを導入するために、上記した組成物のいずれかを利用することができることは明白である。ウィルス的、物理的および化学的な取り込み方法に関するプロトコルは当該分野で知られている。即ち、患者への直接の本発明のポリペプチドまたはそのようなポリペプチドを発現できるベクターの投与の変わりに、患者からヘルパーT細胞を取り出し;これらのT細胞をエクスビボで同じ抗原性ポリペプチドまたはベクターを用いながら刺激し;そして刺激されたヘルパーT細胞を同じ患者に導入することができる。
【0127】
(本発明の抗体および本発明の抗体を惹起するための方法)
別の主要な実施形態において、医薬として使用するための組成物は配列番号1〜51の表在カンピロバクターポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドに結合し得る抗体を含む。このような医薬は抗体療法、例えば治療を要する個体の受動免疫のために使用できる。
【0128】
従って、別の主要な態様において、本発明は配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/またはその改変体、例えば配列番号1のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号2のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号3のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号4のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号5のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号6のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号7のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号8のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号9のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号10のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号11のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号12のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号13のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号14のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号15のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号16のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号17のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号18のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号19のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号20のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号21のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号22のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号23のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号24のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号25のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号26のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号27のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号28のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号29のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号30のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号31のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号32のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号33のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号34のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号35のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号36のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、に結合、好ましくは特異的に結合し得る抗体に関する。「特異的に結合する」とは、この内容においては、絶対的な特異性を意味することを意図していない。抗体は一部の実施形態においては例えばCampylobacter jejuni由来のポリペプチドと高度な配列同一性を有する他のカンピロバクター種に由来するポリペプチド、例えばCampylobacter jejuni由来のポリペプチドとの配列同一性90%超、例えば95%超または98%超を有するポリペプチドにも特異的に結合してよい。
【0129】
好ましい実施形態においては、抗体は配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチド、例えば配列番号1のポリペプチド、例えば配列番号2のポリペプチド、例えば配列番号3のポリペプチド、例えば配列番号4のポリペプチド、例えば配列番号5のポリペプチド、例えば配列番号6のポリペプチド、例えば配列番号7のポリペプチド、例えば配列番号8のポリペプチド、例えば配列番号9のポリペプチド、例えば配列番号10のポリペプチド、例えば配列番号11のポリペプチド、例えば配列番号12のポリペプチド、例えば配列番号13のポリペプチド、例えば配列番号14のポリペプチド、例えば配列番号15のポリペプチド、例えば配列番号16のポリペプチド、例えば配列番号17のポリペプチド、例えば配列番号18のポリペプチド、例えば配列番号19のポリペプチド、例えば配列番号20のポリペプチド、例えば配列番号21のポリペプチド、例えば配列番号22のポリペプチド、例えば配列番号23のポリペプチド、例えば配列番号24のポリペプチド、例えば配列番号25のポリペプチド、例えば配列番号26のポリペプチド、例えば配列番号27のポリペプチド、例えば配列番号28のポリペプチド、例えば配列番号29のポリペプチド、例えば配列番号30のポリペプチド、例えば配列番号31のポリペプチド、例えば配列番号32のポリペプチド、例えば配列番号33のポリペプチド、例えば配列番号34のポリペプチド、例えば配列番号35のポリペプチド、例えば配列番号36のポリペプチドに結合、好ましくは特異的に結合し得る。
【0130】
好ましい実施形態においては本発明の抗体はさらに、インタクトなCampylobacter jejuniに結合し得、即ち、自身の構造的一体性を保持している生存または死滅カンピロバクター細胞、好ましくは外膜の一体性を保持している細胞(即ち外膜が透過性となっていないもの)に結合し得る。インタクトな細胞への抗体の結合は例えばRioux et al.(2001) Infect.Immun.69:5162−5165またはSingh et al.(2003) Infect.Immun.71:3937−3946に記載されているフローサイトメトリーにより測定できる。
【0131】
別の主要な態様において、本発明はインタクトなCampylobacter jejuniに結合、好ましくは特異的に結合し得、そして、配列番号37〜51からなる群より選択されるポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、配列番号37のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号38のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号39のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号40のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号41のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号42のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号43のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号44のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号45のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号46のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号47のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号48のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号49のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号50のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体、例えば配列番号51のポリペプチドおよび/またはそのフラグメントおよび/または改変体に結合、好ましくは特異的に結合し得る抗体に関する。
【0132】
好ましい実施形態において、抗体はインタクトなCampylobacter jejuniに結合、好ましくは特異的に結合し得、そして、配列番号37〜51からなる群より選択されるポリペプチド、配列番号37のポリペプチド、例えば配列番号38のポリペプチド、例えば配列番号39のポリペプチド、例えば配列番号40のポリペプチド、例えば配列番号41のポリペプチド、例えば配列番号42のポリペプチド、例えば配列番号43のポリペプチド、例えば配列番号44のポリペプチド、例えば配列番号45のポリペプチド、例えば配列番号46のポリペプチド、例えば配列番号47のポリペプチド、例えば配列番号48のポリペプチド、例えば配列番号49のポリペプチド、例えば配列番号50のポリペプチド、例えば配列番号51のポリペプチドに結合、好ましくは特異的に結合し得る。
【0133】
好ましい抗体は5×10−6M未満、例えば10−6M未満、例えば5×10−7M未満、例えば10−7M未満、例えば5×10−8M未満、例えば10−8M未満、例えば5×10−9M未満、例えば10−9M未満、例えば5×10−10M未満、例えば10−10M未満、例えば5×10−11M未満、例えば10−11M未満、例えば5×10−12M未満、例えば10−12M未満、例えば5×10−13M未満、例えば10−13M未満、例えば5×10−14M未満、例えば10−14M未満、例えば5×10−15M未満、例えば10−15M未満の解離定数、即ちKdにおいて結合するものである。結合定数は当該分野で知られている方法、例えばELISA(例えばOrosz and Ovadi(2002)J.Immunol.Methods 270:155−162)または表面プラズモン共鳴分析を用いて測定することができる。
【0134】
抗体は哺乳類、好ましくは人間、より好ましくは免疫無防備状態の患者の受動免疫化のために使用できる。抗体の投与はCampylobacter jejuni感染を治癒または防止するために行うことができる。本発明の抗体は以下の好ましい機械的な群を包含する。
1.抗微生物剤(細菌の生活能力に影響する)として働く機能抑制抗体。このような抗体は患者の免疫状態とは無関係に有効となるはずである。好ましくはこのような抗体はCampylobacter jejuniの生育をインビボで抗体無添加の対照の50%未満、例えば25%未満、例えば10%未満、例えば5%未満まで低減することができる。
2.食作用性の殺傷を増強するように設計されたオプソニン作用性抗体。このような抗体の有効性は患者の免疫状態に依存しているが、それらが免疫無防備状態の患者においてさえも食作用性の殺傷を増強することは十分に可能である。
3.毒素または殺菌剤、例えばリシンまたは放射性同位体のような治療部分にコンジュゲートされた抗体。治療部分を抗体にコンジュゲートする手法は当該分野で知られており、例えばThorpe et al.(1982) Immunol.Rev.62,119−158を参照できる。これらの抗体は患者の免疫状態とは無関係に有効となるはずである。
【0135】
自身にコンジュゲートされた治療部分を有するか有さない抗体は、単独で投与される治療薬として、または、化学療法剤または他の治療薬と組み合わせて使用できる。
【0136】
1つの実施形態において本発明の抗体はオプソニン作用性並びに機能抑制性である。別の実施形態においては、本発明の抗体はオプソニン作用性であるが機能抑制性ではない。後者のグループの抗体は例えばカンピロバクターの生活能力のために必須ではない標的ポリペプチドに対して指向された抗体であることができる。
【0137】
別の主要な態様において、本発明は非ヒト動物における配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドに対する抗体を惹起するための方法であって、下記工程:
a.下記成分:
− 配列番号1〜36からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、
を提供すること、
b.該動物に該ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、組換えウィルスまたは組換え細胞を含む組成物を導入すること、
c.該動物において抗体を惹起させること、および、
d.抗体を単離し、場合により精製すること、
を含む上記方法に関する。
【0138】
別の主要な態様において、本発明は非ヒト動物における配列番号37〜51からなる群より選択されるポリペプチドに対する抗体を惹起するための方法であって、抗体はCampylobacter jejuni細胞に結合し得、方法は下記工程:
a.下記成分:
− 配列番号37〜51からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、
を提供すること、
b.該動物に該ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、組換えウィルスまたは組換え細胞を含む組成物を導入すること、
c.該動物において抗体を惹起させること、
d.抗体を単離し、場合により精製すること、および、
e.インタクトなCampylobacter jejuni細胞に結合し得る抗体を選択すること、
を含む上記方法に関する。
【0139】
上記した方法は好ましくはヒト抗体を産生し得るトランスジェニック動物において行う。さらに好ましい実施形態においては、上記方法は非治療性である。
【0140】
(モノクローナル/ポリクローナル抗体)
本発明の抗体はポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体またはモノクローナル抗体の混合物であることができる。好ましい実施形態においては、抗体はモノクローナル抗体またはそのフラグメントである。モノクローナル抗体(Mab)は各抗体分子が同様であり、従って同じエピトープを認識する抗体である。抗体はいずれかの種類の抗体であってよいが、好ましくはIgGまたはIgA抗体である。
【0141】
モノクローナル抗体は一般的にハイブリドーマ細胞系統により生産される。多金属酸化物および抗体合成ハイブリドーマ細胞を作成する方法は当該分野でよく知られている。抗体生産ハイブリドーマは例えば不朽化細胞系統に抗体生産Bリンパ球を融合させることにより作成してよい。モノクローナル抗体は以下の工程により作成することができる。動物を完全長ポリペプチドまたはそのフラグメントのような抗原で免疫化する。免疫化は典型的には、抗原を、免疫学的に有効な量、即ち免疫応答をもたらすのに十分な量で免疫学的にコンピテントな哺乳類に投与することにより達成される。好ましくは、哺乳類はウサギ、ラットまたはマウスのようなげっ歯類である。次に哺乳類が高親和性の抗体分子を生成するのに十分な時間、哺乳類をブースタースケジュールに維持する。抗体生産細胞の懸濁液を所望の抗体を分泌している各免疫化哺乳類から採取する。高親和性抗体を生成するのに十分な時間の後、動物(例えばマウス)を屠殺し、そして抗体生産リンパ球をリンパ節、脾臓および末梢血1つ以上から採取する。脾細胞が好ましく、そして当該分野でよく知られた方法を用いて生理学的媒体中で機械的に分離して個々の細胞とすることができる。抗体生産細胞はマウスミエローマ系統の細胞との融合により不朽化される。マウスリンパ球はマウス相同ミエローマとの安定な融合を高比率で可能とするが、ラット、ウサギおよびカエルの体細胞も使用できる。所望の抗体生産動物の脾細胞は一般的にはポリエチレングリコールのような融合剤の存在下にミエローマ細胞と融合することにより不朽化される。融合相手として適しているミエローマ細胞系統の多くのうちのいずれかとしては、例えばAmerican Type Culture Collection (ATCC),Rockville,Mdから入手できるP3−NS1/1−Ag4−1、P3−x63−Ag8.653またはSp2/O−Ag14ミエローマ系統であることができる。
【0142】
モノクローナル抗体はまた組換えDNA技術の分野の当業者のよく知る他の方法により作成することもできる。「コンビナトリアル抗体ディスプレイ」法と称される代替法が特定の特異性を有する抗体フラグメントの同定および単離のために開発されており、そしてモノクローナル抗体の生産のために利用されている。
【0143】
ポリクローナル抗体は特定のある抗原を認識する抗体分子の混合物であり、従って、ポリクローナル抗体は例えばポリペプチド内の異なるエピトープを認識してよい。一般的にポリクローナル抗体は抗原で予め免疫化されている哺乳類の血清から精製される。ポリクローナル抗体は例えばAntibodies:A Laboratory Manual, Ed Harlow and David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory Press,1988に記載の方法のいずれかにより作成してよい。ポリクローナル抗体はいずれかの適当な哺乳類種、例えばマウス、ラット、ウサギ、ロバ、ヤギおよびヒツジから誘導してよい。
【0144】
(特異性)
本発明の抗体は配列番号1〜51のポリペプチドのいずれかに対して単一特異性であってよい。別の実施形態においては、抗体は配列番号1〜51のポリペプチドのいずれかに対して特異的な部分少なくとも1つを有する二重特異性または多重特異性である。
【0145】
単一特異性抗体は1価、即ち結合ドメイン1個のみを有する。1価の抗体については、免疫グロブリン定常ドメインのアミノ酸配列は好ましくはCH1、CH2、CH3およびCH4のような当該分野で知られた抗体分子の構造的部分を含む。好ましいものはCとして当該分野で知られているものである。さらにまた定常ドメインが重鎖または軽鎖の定常ドメイン(それぞれCまたはC)である限り、種々の1価の抗体組成物が本発明により意図される。例えば軽鎖定常ドメインは別の軽鎖定常ドメインまたは重鎖定常ドメインのいずれかとジスルフィド結合し得る。一方、重鎖定常ドメインは2つの独立したジスルフィド架橋を形成することができ、これにより別の重鎖と軽鎖の両方と架橋可能であるか、または、重鎖の重合体を形成できる。即ち、別の実施形態においては、本発明は定常鎖ドメインCがジスルフィド架橋少なくとも1つを形成できるシステイン残基を有し、そして、組成物が該ジスルフィド架橋に共有結合した1価のポリペプチド少なくとも2つを含む1価のポリペプチドを含む組成物を意図している。
【0146】
本発明の別の実施形態においては、抗体は結合ドメイン少なくとも2つを有する多価の抗体である。結合ドメインは同じリガンドまたは異なるリガンドに対する特異性を有していてよい。
【0147】
(二重特異性を包含する多重特異性)
好ましい実施形態においては、本発明は少なくとも2つの異なる実体に対して親和性を有し、そして特異的に結合し得る多重特異性抗体に関する。
【0148】
1つの実施形態において多重特異性抗体は、少なくとも1つが抗体起源である少なくとも2つの異なる結合ドメインを担持した二重特異性の抗体である。本発明の二重特異性分子はまた1本鎖二重特異性分子であることもできる。多重特異性分子もまた1本鎖分子であるか、または、少なくとも2つの1本鎖分子を含んでよい。二重特異性を含む多重特異性の抗体は当業者の知るいずれかの態様により製造してよい。例えばWO94/09131;WO94/13804;WO94/13806または米国特許5,460,203;5,455,030;4,881,175;5,132,405;5,091,513;5,476,786;5,013,653;5,258,498;および5,482,858に記載のもののような多くの方法が開発されている。
【0149】
本発明の二重特異性または多重特異性の抗体を使用することは、単一特異性/1価の抗体と比較して幾つかの好都合な点をもたらす。二重特異性/多重特異性抗体は配列番号1〜51のCampylobacter jejuniポリペプチドのいずれかを特異的に認識して結合し得る第1の結合ドメインを有し、ここで別の結合ドメインは他の目的のために使用してよい。1つの実施形態において、少なくとも1つの別の結合ドメインをCampylobacter jejuniポリペプチドへの結合、例えば第1の結合ドメインとしての同じCampylobacter jejuniポリペプチド上の別のエピトープへの結合のために使用する。これによりCampylobacter jejuniに対する特異性が増大すると同時に抗体のアビディティーが増大する。別の実施形態においては、少なくとも1つの別の結合ドメインを哺乳類細胞、例えばヒト細胞に特異的に結合するために使用してよい。治療方法における抗体の作用を増大させるためには、少なくとも別の結合ドメインが免疫活性細胞、例えば白血球、マクロファージ、リンパ球、好塩基球および/または好酸球に結合できることが好ましい。このことは、少なくとも1つの別の結合ドメインが哺乳類タンパク質、例えばヒトタンパク質、例えばクラスター分化タンパク質(CD)、特にCD64および/またはCD89のいずれかから選択されるタンパク質に特異的に結合できることが確実であれば達成される。
【0150】
(ヒト化抗体)
ヒト治療のために非ヒト抗体を使用することは非ヒト「外来性」エピトープが治療すべき個体に免疫応答を誘発する可能性があるため常時望ましいわけではない。非ヒト抗体に関わる問題を排除するためには、キメラ抗体誘導体、即ちヒト定常領域(Fc)に非ヒトFab可変領域結合決定基を組合せる「ヒト化」抗体分子を作成することが望ましい。このような抗体は上記したモノクローナル抗体およびポリクローナル抗体の等しい抗原特異性および親和性を態様とし、ヒトに投与した場合に低免疫原性であり、そのため、治療すべき個体がより高い耐容性を示す。
【0151】
従って、1つの実施形態において本発明の抗体はヒト化抗体である。ヒト化抗体は一般的にヒト抗体から誘導した領域および非ヒト抗体、例えばげっ歯類抗体から誘導した領域を含むキメラ抗体である。ヒト化(リシェイピングまたはCDRグラフティングとも称する)は異種原料(一般的にはげっ歯類)由来のモノクローナル抗体(mAb)の免疫原性を低下させ、ヒト免疫グロブリンに対する相同性を増大させ、そしてヒト免疫系のその活性化を向上させるための十分確立された手法である。即ち、ヒト化抗体は典型的には一部のCDR残基および恐らくは一部のフレームワーク残基がげっ歯類抗体の類似の部位に由来する残基により置換されているヒト抗体である。
【0152】
ヒト化抗体は抗原に対する高度な親和性および他の好都合な生物学的特性を温存していることが重要である。この目的を達成するためには、好ましい方法によれば、ヒト化抗体は親配列および種々の概念的なヒト化産物を、親およびヒト化配列の三次元モデルを用いながら分析する過程により作成する。三次元免疫グロブリンモデルは市販されており、当該分野でよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推定される三次元コンホーメーションを図示してディスプレイするコンピュータプログラムが使用できる。これらのディスプレイの精査により、候補免疫グロブリン配列の機能における特定の残基の推定される役割の分析、即ち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響する残基の分析が可能となる。抗原結合に直接そして最も大きく影響するのはCDR残基であるが、このようにしてFR残基をレシピエントから選択して組合せ、そして所望の抗体特性、例えば標的抗原への増大した親和性が最大限となるように、配列を移入する。
【0153】
mAbをヒト化する1つの方法は、1つの抗体の完全な可変ドメインを含む抗原結合部位が第2の抗体、好ましくはヒト抗体に由来する定常ドメインに融合しているキメラ抗体の製造に関する。このようなキメラ化の操作法を実施するための方法は例えばEP−A−0120694(Celltech Limited),EP−A−0125023(Genentech Inc.),EP−A−0171496(Res.Dev.Corp.Japan),EP−A−0173494(Stanford University)およびEP−A−0194276(Celltech Limited)に記載されている。
【0154】
本発明のヒト化抗体は非ヒト抗体から誘導されたCDRでヒト抗体のCDRの少なくとも部分を置き換えることができるいずれかの方法により作成してよい。Winterは本発明のヒト化抗体を製造するために使用してよい方法を記載しており(英国特許出願GB2188638A)、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0155】
一例として、本発明のヒト化抗体は以下の操作法:
(a)CDRおよび抗体結合特異性を温存するために必要とされる可変ドメインフレームワーク領域の最小限部分が非ヒト免疫グロブリンから誘導され、そして抗体鎖の残余部分はヒト免疫グロブリンから誘導されている抗体重鎖をコードするDNA配列でオペロンを含有する発現ベクターを従来の手法により構築すること;
(b)CDRおよびドナーの抗体結合特異性を温存するために必要とされる可変ドメインフレームワーク領域の最小限部分が非ヒト免疫グロブリンから誘導され、そして抗体鎖の残余部分はヒト免疫グロブリンから誘導されている相補抗体軽鎖をコードするDNA配列でオペロンを含有する発現ベクターを従来の手法により構築すること;
(c)従来の手法で宿主細胞内に発現ベクターをトランスフェクトすること;および、
(d)従来の手法でトランスフェクトされた細胞を培養してヒト化抗体を製造すること、
により製造してよい。
【0156】
宿主細胞は、本発明の2ベクター、即ち第1のベクターは軽鎖誘導ポリペプチドをコードするオペロンを含有し、そして第2のベクターは重鎖誘導ポリペプチドをコードするオペロンを含有するもので同時トランスフェクトしてよい。2ベクターは異なる選択マーカーを含有するが、それ以外は、抗体重鎖および軽鎖コーディング配列を除き、好ましくは同一であることにより、可能な限り重鎖および軽鎖のポリペプチドの等しい発現を確保する。或いは、単一のベクターを使用し、そのベクターは軽鎖および重鎖のポリペプチドの両方をコードする配列を含むものとする。軽鎖および重鎖に関するコーディング配列はcDNAまたはゲノムDNAまたは両方を含んでよい。
【0157】
本発明の壊変抗体を発現するために使用する宿主細胞は大腸菌のような細菌細胞または真核細胞のいずれであってもよい。特に、この目的のために十分解明された型の哺乳類細胞、例えばミエローマ細胞またはチャイニーズハムスター卵巣細胞を使用してよい。
【0158】
本発明のベクターを構築するための一般的方法、本発明の宿主細胞を作成するために必要なトランスフェクション方法、および、このような宿主細胞から本発明の抗体を製造するために必要な培養方法は全て従来技術である。同様に、製造後は、本発明のヒト化抗体を標準的な操作法に従って精製してよい。
【0159】
(ヒト抗体)
より好ましい実施形態においては、本発明はヒト抗体により結合ドメインが担持されている、即ち、抗体がヒト化抗体よりも高いレベルのヒトペプチド配列を有している抗体に関する。
【0160】
ヒトタンパク質に対して指向されているヒトmAb抗体はマウスの系ではなくヒト免疫系を担持するトランスジェニックマウスを用いて作成することができる。目的の抗原で免疫化されたこれらのトランスジェニックマウスの脾細胞を用いてヒトタンパク質由来のエピトープに対して特異的親和性を有するヒトmAbを分泌するハイブリドーマを作成する(例えばWood等の国際特許出願WO91/00906、Kucherlapati等のPCT出願WO91/10741;Lonberg等の国際出願WO92/03918;Kay等の国際出願92/03917;Lonberg,N.et al.1994 Nature 368:856−859;Green,L.L.et al.1994 Nature Genet.7:13−21;Morrison,S.L.et al.1994 Proc.Natl.Acad.Sci.USA81:6851−6855;Bruggeman et al.1993 Year Immunol 7:33−40;Tuaillon et al.1993PNAS90:3720−3724;Bruggeman et al.1991 Eur J Immunol 21:1323−1326参照)。このようなトランスジェニックマウスはAbgenix,Inc.,Fremont,Calif.およびMedarex,Inc.,Annandale,NJより入手可能である。キメラおよび生殖細胞系統の突然変異マウスにおける抗体重鎖連結領域(IH)の遺伝子のホモ接合欠失は内因性抗体生産の完全な抑制をもたらすことが記載されている。ヒト生殖細胞系統の免疫グロブリン遺伝子アクロレインをそのような生殖細胞系突然変異マウスに移行させると、抗原攻撃によりヒト抗体の生産が起こる。例えばJakobovits et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits et al.,Nature 362:255−258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.7:33(1993);およびDuchosal et al.Nature 355:258(1992)を参照できる。ヒト抗体はまたファージディスプレイライブラリから誘導することもできる(Hoogenboom et al.,J.Mol.Biol.227:381(1992);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581−597(1991);Vaughan et al.,Nature Biotech 14:309(1996))。
【0161】
ヒトモノクローナル抗体を製造するための適当な方法はさらにWO03/017935、WO02/100348、US2003091561およびUS2003194403に記載されている。
【0162】
(抗体の結合フラグメント)
本発明の1つの実施形態においては、抗体は抗体のフラグメント、好ましくは抗原結合フラグメントまたは可変領域である。本発明において有用な抗体フラグメントの例はFab、Fab’、F(ab’)およびFvフラグメントである。抗体のパパイン消化により各々が単一の抗原結合部位を有するFabフラグメントと称される2つの同一の抗原結合フラグメントおよび容易に結晶化するその能力のために「Fc」フラグメントと称されている残余が生じる。ペプシン処理では抗原に交差結合できる2つの抗原結合フラグメントを有するF(ab’)フラグメントおよび残余の他のフラグメント(pFc’と称される)が生じる。別のフラグメントとしては抗体フラグメントから形成されるダイアボディー、線状抗体、1本鎖抗体分子および多重特異性抗体が包含される。
【0163】
抗体フラグメントFab、FvおよびscFvは抗体フラグメントが抗原結合部位を1つのみしか担持していない点において全抗体とは異なる。2結合部位を有する組換えフラグメントが数種の方法、例えばFvのVHのC末端(Cumber et al.,1992)またはscFvのVLのC末端(Pack and Pluckthun,1992)において導入されたシステイン残基の化学的交差結合によるか、または、Fab’のヒンジシステイン残基を介して(Carter et al.,1992)作成されている。
【0164】
好ましい抗体フラグメントはその抗原と選択的に結合することに関する抗体の能力の一部または本質的に全てを温存している。一部の好ましいフラグメントは以下に定義するとおりである。
(1)Fabは抗体分子の1価の抗原結合フラグメントを含有するフラグメントである。Fabフラグメントは酵素パパインで全抗体を消化してインタクトな軽鎖および1つの重鎖の部分を形成することにより作成できる。
(2)Fab’は抗体分子のフラグメントであり、そして、全抗体をペプシンで処理し、その後還元してインタクトな軽鎖および一部の重鎖を形成することにより得ることができる。2つのFab’フラグメントが抗体分子当たりえられる。Fab’フラグメントは抗体ヒンジ領域由来のシステイン1つ以上を含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端において数個の残基が吹かされることによりFabフラグメントとは異なる。
(3)(Fab’)は酵素ペプシンにより全抗体を処理し、後に還元を行うことなく得られる抗体のフラグメントである。F(ab’)はジスルフィド結合2つにより共に保持された2つのFab’フラグメントの2量体である。
(4)Fvは完全な抗原認識結合部位を含有する最小の抗体フラグメントである。この領域は堅固で非共有結合の会合における1つの重鎖および1つの軽鎖の可変ドメインの2量体よりなる(V−V2量体)。各可変ドメインの3つのCDRが相互作用してV−V2量体の表面上の抗原結合部位を決定するのはこの配置においてである。全体として6つのCDRが抗体への抗原結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原に対して特異的な僅か3つのCDRを含むFvの半分)であっても、全結合部位よりも低親和性では有るが、抗原を認識して結合する能力を有する。
【0165】
本発明の1つの実施形態において、抗体は遺伝子的に融合された1本鎖分子としての適当なポリペプチドリンカーにより連結された軽鎖の可変領域、重鎖の可変領域を含有する遺伝子工学による分子として定義される1本鎖抗体である。このような1本鎖抗体は「1本鎖Fv」または「sFv」抗体フラグメントとも称する。一般的に、Fvポリペプチドはさらに、sFvが抗原結合のための望ましい構造を形成できるようなVおよびVドメインの間にポリペプチドリンカーを含む。
【0166】
本発明の抗体フラグメントは当業者の知るいずれかの適当な態様で製造してよい。幾つかの微生物発現系が既に活性抗体フラグメント製造用に開発されており、例えば大腸菌またはコウボのような種々の宿主におけるFabの製造が記載されている。フラグメントはFab’として、またはFv’として製造できるが、さらにVおよびVは可撓性ポリペプチドリンカーによりいずれかの順序で遺伝子的に連結できることも示されており、その組合せはscFvとして知られている。
【0167】
(本発明において使用するための組成物)
医薬として使用するための組成物の好ましい実施形態においては、該組成物は活性成分のほかに、薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0168】
本明細書においては、組成物またはキャリアに関して使用する場合の「薬学的に受容可能な」という用語は、吐き気、眩暈、胃の不快感等の望ましくない生理学的作用をもたらすことなく物質をヒトまたは動物に投与することができることを示す。
【0169】
活性成分を自身に溶解または分散させて含有する組成物の製造は当該分野でよく知られている。このような組成物は液体の溶液または懸濁液、水性または非水性のいずれかにおいて滅菌注射液として製造される場合が多いが、使用前に液体中の溶液または懸濁液とするのに適する固体形態も製造できる。製剤は乳化することもできる。活性成分は製薬上許容され、そして活性成分と適合し、本明細書に記載した方法において使用するのに適する量のキャリアと混合することができる。適当なキャリアは例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等およびコレラの組合せである。さらにまた、所望により組成物は活性成分の有効性を増強する少量の副次的物質、例えば水和剤または乳化剤、pH緩衝剤等を含有することができる。
【0170】
本発明の組成物は成分の薬学的に受容可能な塩を含むことができる。薬学的に受容可能な塩は無機酸、例えば塩酸または燐酸、または有機酸、例えば酢酸、酒石酸、マンデル酸等と共に形成される酸付加塩(ポリペプチドの遊離のアミノ基で形成)を包含する。遊離のカルボキシル基で形成される塩もまた無機の塩基、例えばナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウムまたは水酸化鉄、および有機の塩基、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルチオ、エタノール、ヒスチジン、プロカイン等から誘導することができる。
【0171】
薬学的に受容可能なキャリアは当該分野でよく知られている。液体キャリアの例は活性成分および水のほかに物質を含有しないか、または、生理学的なpHのリン酸ナトリウムのような緩衝剤、生理食塩水または両方を含有する滅菌水溶液、例えばリン酸塩緩衝食塩水である。さらにまた、水性キャリアは1種より多い緩衝塩、ならびに塩化ナトリウムまたはカリウムのような塩類、デキストロース、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールおよび他の溶質も含有できる。液体組成物はまた水に加えて、および、水を除外して液相を含有できる。このような別の液相の例は、グリセリン、植物油、例えば綿実油、有機エステル、例えばオレイン酸エチルおよび水−油エマルジョンである。
【0172】
本発明のポリペプチドまたは抗体を含有する組成物は好ましくは総医薬組成物の重量当たりポリペプチドまたは抗体少なくとも0.1重量%の量を含有する。重量%は総組成物に対するポリペプチドまたは抗体の重量比である。即ち、例えば、0.1重量%は総組成物の100g当たりポリペプチドまたは抗体0.1gである。
【0173】
組成物はまたさらに抗生物質、例えばβラクタム、セファロスポリン、ペニシリン、アミノグリコシド、マクロリド抗生物質(エリスロマイシン、クラリスロマイシンまたはアジスロマイシン)およびフルオロキノロン抗生物質(シプロフロキサシン、レボフロキサシン、ガチフロキサシンまたはモキシフロキサシン)からなる群より選択される抗生物質を含む、および/または免疫刺激剤、例えばサイトカイン、インターフェロン、成長因子、例えばGCSFまたはGM−CSFを含むキットインパートであってよい。キットインパートは同時、逐次または個別の投与のために使用してよい。
【0174】
本発明はさらに、本明細書に記載した方法を実施するために有用な医薬組成物に関する。即ち、本発明は薬学的に受容可能なキャリアおよび下記成分:
− 配列番号1〜36の配列のいずれかを含むか、または、該配列のフラグメントまたは改変体を含む単離されたポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む単離されたポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、
を含む医薬組成物に関する。
【0175】
さらにまた、本発明は本明細書に記載した本発明の抗体および薬学的に受容可能なキャリアを含む医薬組成物に関する。
【0176】
(本発明のポリペプチド)
(本発明のフラグメント)
別の態様において、本発明は配列番号1〜51のいずれかに示したポリペプチドのフラグメント、例えば配列番号1〜36のいずれかのフラグメントまたは配列番号37〜51のいずれかのフラグメント、好ましくは抗原性フラグメントに関する。このようなフラグメントの長さはポリペプチドの2連続アミノ酸残基から完全長ポリペプチドマイナス1アミノ酸残基まで変動してよい。好ましくは、フラグメントは100未満の連続アミノ酸残基、例えば70〜50未満連続アミノ酸、例えば40未満の連続アミノ酸残基、例えば30未満の連続アミノ酸、例えば25未満の連続アミノ酸、例えば20未満の連続アミノ酸の長さである。即ち、例えばフラグメントは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20連続アミノ酸の長さであることができる。さらに好ましい実施形態においては、フラグメントは相当する完全長配列の6以上、例えば7以上、例えば8以上、例えば9以上、例えば10以上の連続アミノ酸を含む。好ましい範囲は、5〜50連続アミノ酸長、例えば5〜25アミノ酸長、例えば5〜20アミノ酸長のフラグメントを包含する。他の方法で表現すれば、フラグメントは完全長ポリペプチドと比較して100%未満の長さであるアミノ酸配列の部分よりなる。好ましくは、フラグメントの長さは完全長ポリペプチドの長さの99%未満、例えば75%未満、例えば50%未満、例えば25%未満、例えば20%未満、例えば15%未満、例えば10%未満である。さらに好ましい実施形態においては、フラグメントは完全長ポリペプチドと比較して100%未満であるが1%より大きい長さ、例えば完全長ポリペプチドと比較して100%未満であるが5%より大きい、例えば100%未満であるが10%より大きい、例えば100%未満であるが20%より大きい、例えば100%未満であるが25%より大きい、例えば100%未満であるが50%より大きい長さのアミノ酸配列の部分よりなる。
【0177】
好ましい特定のフラグメントは配列番号52〜119からなる群より選択されるフラグメントの残基1つ以上、例えば配列番号52〜119からなる群より選択されるフラグメントの2以上、例えば3以上、例えば4以上、例えば5以上、例えば6以上の連続残基を含むフラグメントを包含する。さらにより好ましい特定のフラグメントは配列番号52〜119からなる群より選択される配列よりなる、または本質的になるフラグメントを包含する。
【0178】
他の好ましいフラグメントは参照により本明細書に組み込まれる2003年11月21日出願のデンマーク優先権出願PA200301726および2003年11月25日出願の米国暫定出願60/524,617のリスト1のフラグメントを包含する。
【0179】
好ましくは本発明のフラグメントはインタクトなCampylobacter jejuni細胞または他の細胞において、そこで組換え発現されれば表面露出する。表面露出は例えばSingh et al.(2003)Infect.Immun.71:3973−3946に記載の通り該フラグメントに特異的なモノクローナル抗体を用いて測定することができる。さらに好ましいものはインタクトなCampylobacter jejuni細胞に特異的に結合できる抗体を誘導することができるフラグメントである。これはSingh et al.(2003)Infect.Immun.71:3973−3946に記載の通り、該フラグメントを用いてモノクローナル抗体を形成し、その後、インタクトな細胞への個々の抗体の結合を特性化することにより測定できる。
【0180】
本発明の配列番号1〜51の完全長ポリペプチド並びにフラグメントは当該分野で知られた従来の手法により組換え生産することができる。適当な宿主細胞は哺乳類細部、例えばCHO、COSまたはHEK293細胞であることができる。或いは、昆虫細胞、細菌細胞またはカビ細胞を使用できる。上記した細胞型におけるポリヌクレオチド配列の非相同発現およびその後の例えば精製後に除去してよいヒスチジンタグのようなタグ配列を用いたポリペプチド産物の精製のための方法は当該分野でよく知られている。或いは本発明のフラグメントは合成により製造することもできる。
【0181】
(本発明の改変体)
別の主要な態様において、本発明は、医薬として使用するための組成物中の配列番号1〜51に記載のポリペプチドのいずれか、例えば配列番号1〜36のいずれかまたは配列番号37〜51のいずれかの改変体、または、配列番号1〜51に記載のポリペプチドのいずれかのフラグメントの改変体の使用に関する。
【0182】
本明細書において使用する場合は、「配列番号Xに少なくとも95%の配列同一性を有するポリペプチド」という表現は、「配列番号Xのポリペプチドおよびその改変体、ただしここで改変体は該配列に少なくとも95%の配列同一性を有するもの」という表現と同じ対象を指向することを意図している。
【0183】
改変体は好ましくは所定のポリペプチドまたはフラグメントと少なくとも75%の配列同一性、例えば少なくとも80%の配列同一性、例えば少なくとも85%の配列同一性、例えば少なくとも90%の配列同一性、例えば少なくとも91%の配列同一性、例えば少なくとも92%の配列同一性、例えば少なくとも93%の配列同一性、例えば少なくとも94%の配列同一性、例えば少なくとも95%の配列同一性、例えば少なくとも96%の配列同一性、例えば少なくとも97%の配列同一性、例えば少なくとも98%の配列同一性、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する。配列同一性は、Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0においてアルゴリズムGAP、BESTFITまたはFASTAのいずれかにより、デフォルトギャップウエイトを用いて測定される。
【0184】
所定のポリペプチドまたはフラグメントの好ましい改変体は改変体と所定の比較対照ポリペプチドまたはフラグメントの間の全てのアミノ酸置換が保存的置換である改変体である。保存的アミノ酸置換とは、同様の側鎖を有する残基の互換性を指す。例えば、脂肪族の側鎖を有するアミノ酸のグループはグリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシンであり;脂肪族ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸のグループはセリンおよびスレオニンであり;アミド含有側鎖を有するアミノ酸のグループはアスパラギンおよびグルタミンであり;芳香族側鎖を有するアミノ酸のグループはフェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンであり;塩基性側鎖を有するアミノ酸のグループはリジン、アルギニンおよびヒスチジンであり;そしてイオウ含有側鎖を有するアミノ酸のグループはシステインおよびメチオニンである。好ましい連続アミノ酸置換のグループは、バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリンおよびアスパラギン−グルタミンである。
【0185】
ポリペプチドまたはそのフラグメントの改変体はまたアミノ酸1つ以上が欠失または挿入されているポリペプチドまたはフラグメントの形態も包含する。好ましくは、5未満、例えば4未満、例えば3未満、例えば2未満、例えば僅か1つのアミノ酸が挿入または欠失している。ポリペプチドまたはそのフラグメントの「改変体」とは、さらに、アミノ酸配列の翻訳後修飾により修飾されたこれらのポリペプチドまたはフラグメントの形態も包含する。
【0186】
(本発明のポリヌクレオチドおよび発現ベクター)
別の態様において、本発明は配列番号1〜51からなる群より選択される配列の抗原性フラグメントまたは改変体をコードする配列、例えば配列番号1〜36からなる群より選択される配列の抗原性フラグメントまたは改変体をコードする配列、または、配列37〜51からなる群より選択される配列の抗原性フラグメントまたは改変体をコードする配列を含むポリヌクレオチド、好ましくは単離および/または組換えポリヌクレオチドに関する。
【0187】
さらにまた本発明は配列番号1〜51からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列のいずれかのフラグメントまたは改変体を含むポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクターに関する。好ましい発現ベクターはDNAワクチン接種に適する。他の好ましい発現ベクターは、大腸菌やサルモネラの配列の発現を指示するプロモーターの制御下における本発明のポリヌクレチオドである。後者の発現ベクターは本明細書に記載する通り本発明の組換えウィルスまたは組換え細胞の製造において有用である。
【0188】
本発明のポリヌクレオチドおよび発現ベクターは当該分野でよく知られている標準的な組換えDNA手法により製造できる。
【0189】
(本発明の組換え細胞)
別の主要な態様において、本発明はポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドで形質転換またはトランスフェクトした組換え細胞に関し、ここで該ポリペプチドは配列番号1〜36からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含む。好ましくは、該組換え細胞は大腸菌またはサルモネラ属細胞、より好ましくは弱毒化または毒性の減少した大腸菌またはサルモネラ属細胞である。
【0190】
別の態様において、本発明はポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドで形質転換またはトランスフェクトされた、組換えの弱毒化または毒性の減少した微生物細胞、好ましくは大腸菌またはサルモネラ属細胞に関し、ここで該ポリペプチドは配列番号37〜51からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含む。
【0191】
本明細書において使用する適当な細菌株はMakino et al.(2001) Microb.Pathog.31:1−8;Gentschev et al.(2002) Int.J.Med.Microbiol.291:577−582;Turner et al.(2001) Infect.Immun.69:4969−4979;WO99/49026;およびWO03/022307およびその参考文献に記載されている。適当なサルモネラ菌株の例はCvD908−T7pol(Santiago−Machuca et al.(2002)Plasmid 47:108−119)、ATCC39183、ATCC53647およびATCC53648である。適当な大腸菌株はYT106およびE1392/75−2Aである。
【0192】
(本発明の方法および使用)
上記定義した組成物および他の産物はCampylobacter jejuni感染および/またはそのような感染から生じた疾患を治療または予防するために、それを要する動物または人間において使用できる。好ましくは動物はニワトリ、アヒル、シチメンチョウ、ウシまたはブタである。好ましいヒト集団は危険集団、例えば4歳以下の小児集団、先進国民集団、または、開発途上国への無免疫または半免疫の旅行者集団である。
【0193】
本発明における治療および防止は、Campylobacter jejuniに対抗するための全ての型の施療的治療および防止的治療および他の治療を包含し、例えばワクチン接種、予防、免疫活性化、受動免疫化、抗体投与、治療処置、緩解のための治療が挙げられる。特に、本発明の抗体を使用した受動免疫が免疫無防備状態の個体のための適当な治療である。
【0194】
即ち、別の態様において、本発明は下記物質:
− 配列番号1〜51の配列のいずれか、例えば配列番号1〜36の配列のいずれかまたは配列番号37〜51のいずれかを含むか;または、該配列のいずれかのフラグメントまたは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、または、
− 該ポリペプチドに特異的に結合し得る抗体、
のいずれか1つを投与することにより、該動物または人間におけるCampylobacter jejuni感染を治療または予防する工程を含む、動物または人間におけるCampylobacter jejuni感染の治療または予防のための方法に関する。
【0195】
好ましくは、該投与は非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経口または鼻腔内で行う。
【0196】
好ましくは、該医薬は非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経口または鼻腔内投与に適している医薬である。
【0197】
別の態様において、本発明は下記物質:
− 配列番号1〜51からなる群より選択される配列、例えば配列番号1〜36のいずれかまたは配列番号37〜51のいずれかを含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、
を投与する工程を含むCampylobacter jejuni感染に対抗する動物または人間の免疫化のための方法に関する。
【0198】
好ましくは該投与は非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経口または鼻腔内で行う。
【0199】
別の態様において本発明は動物または人間におけるCampylobacter jejuni感染の治療または予防のための医薬の製造のための本明細書に記載した本発明の抗体の使用に関する。即ち、本発明はまた本明細書に記載した本発明の抗体を投与することによりCampylobacter jejuni感染を治療または予防する工程を含むCampylobacter jejuni感染の治療または予防のための方法に関する。好ましくは該投与は非経口、静脈内、筋肉内、皮下、経口または鼻腔内で行う。
【0200】
(本発明の診断方法)
細胞において、表面露出であること、および、比較的高コピー数で存在することの組合せはまた、本発明で同定された51ポリペプチドをCampylobacter jejuniの検出のために極めて適するものとしており、これにより高い感度でこの微生物を検出することができる。
【0201】
従って、別の主要な態様において、本発明はサンプル中のCampylobacter jejuniまたはその部分を検出するための方法であって、下記工程:
a.配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドに特異的に結合し得るインジケーター部分に該サンプルを接触させること、および、
b.インジケーター部分がシグナルを発生したかどうかを測定することにより、該サンプルがCampylobacter jejuniまたはその部分を含有するかどうかを検出すること、
を含む上記方法に関する。
【0202】
好ましくは、該インジケーター部分はインタクトなCampylobacter jejuni細胞に結合、好ましくは特異的に結合し得る。
【0203】
別の態様において、本発明はサンプル中のCampylobacter jejuniを検出するための方法であって、下記工程:
a.配列番号37〜51からなる群より選択されるポリペプチドに特異的に結合し得るインジケーター部分に該サンプルを接触させること、ここでインジケーター部分はさらにインタクトなCampylobacter jejuni細胞に特異的に結合し得るものであること、および、
b.インジケーター部分がシグナルを発生したかどうかを測定することにより、該サンプルがCampylobacter jejuniまたはその部分を含有するかどうかを検出すること、
を含む上記方法に関する。
【0204】
上記した診断方法の好ましい実施形態においては、接触工程と測定工程との間に洗浄工程を実施することにより検出の特異性を向上させる。
【0205】
サンプルは例えば糞便、尿、組織、組織抽出液、液体サンプルまたは体液サンプル、例えば血液、血漿または血清であることができる。サンプルの別の例は食品サンプル、例えば畜肉サンプルである。
【0206】
上記した方法は個体におけるCampylobacter jejuni感染またはカンピロバクター症の診断に使用できる。上記方法の好ましい実施形態においては、該インジケーター部分はCampylobacter jejuni細胞の外膜を通過しない。該インジケーター部分の好ましい型は抗体、例えば本明細書に記載した本発明の抗体よりなる。
【0207】
当業者の知る通り、サンプル中において、自身の量がリガンドの量に関連する結合反応産物、本発明においてはC.jejuniまたはその部分を形成するためにインジケーター部分を使用できるような多くのよく知られた臨床診断化学操作法が存在する。即ち、例示される試験方法を本明細書に記載したが、本発明はそれらに限定されない。
【0208】
本発明はまた生物学的サンプル中のCampylobacter jejuniの存在、および、好ましくは量も試験するための好ましくはキット形態の診断系に関する。診断用キットの製造方法は例えば米国特許5,470,958およびその参考文献に記載されている。
【0209】
診断系には、少なくとも1回の診断を実施するために十分な量において、本発明のインジケーター部分を好ましくは別にパッケージされた試薬として、そしてより好ましくはさらに取扱説明書を包含する。パッケージされたとは固定された限界内に本発明のインジケーター部分を保持することができる固体マトリックスまたは物質、例えばガラス、プラスチック(例えばポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリカーボネート)、紙、ホイル等の使用を指す。即ち、例えば、パッケージは意図された標識されたインジケーター部分の長生物のミリグラム量を含有するために使用されるガラスバイアルであることができ、或いはそれは意図されるインジケーター部分のマイクログラム量を作用可能に固定化、即ちリガンドに結合できるように連結させてあるマイクロプレートのウェルであることができる。
【0210】
「取扱説明書」とは、典型的には試薬の濃度または少なくとも1つの試験方法のパラメーター、例えば混合すべき試薬およびサンプルの相対的な量、試薬/サンプル混合物の保守期間、温度、緩衝液の条件等を説明した有形の表記物を包含する。
【0211】
大部分の実施形態において、本発明の診断方法および系は、予め選択されたリガンド(即ち配列番号1〜51の配列のいずれかおよび/またはそのフラグメントを含むポリペプチド)と複合体化されたインジケーター部分を含有する結合反応複合体の形成をシグナリングすることができる標識または指示手段をインジケーター部分の一部として包含する。このような標識はそれら自体臨床診断化学においてよく知られている。
【0212】
標識手段は抗体または抗原にそれらを変性させること無く化学的に結合して有用な免疫蛍光トレーサーである蛍光色素(染料)を形成する蛍光標識剤であることができる。適当な蛍光標識剤は蛍光色素、例えばフルオレセインイソシアネート(FIC)、フルオレセインイソチオシアネーオト(FITC)、5−ジメチルアミン−1−ナフタレンスルホニルクオリド(DANSC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRITC)、リッサミン、ローダミン8200スルホニルクロリド(RB200SC)である。適当な蛍光物質の他の例はウンビリフェロン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロリドまたはフィコエリスリン等を包含する。免疫蛍光分析の手法の説明は、DeLuca,”Immunofluorescence Analysis”, Antibody As a Tool, Marchalonis, et al.,eds.,John Wiley & Sons, Ltd.,pp.189−231(1982)に記載されている。
【0213】
放射性元素もまた標識剤として有用である。例示される放射標識剤はガンマ線発光をもたらす放射性元素である。自体がガンマ線を発射する元素、例えば、124I、125I、128I、132Iおよび51Crはガンマ線発射性放射性元素標識群の1クラスを示す。特に好ましいものは125Iである。有用な標識手段の別の群は自体が陽電子を発射する11C、18F、15Oおよび13Nのような元素、またはベータエミッター、例えばHの111インジウムである。他の適当な放射性物質は131Iおよび35Sを包含する。
【0214】
抗体を使用する検出は、他の実施形態においては、抗体を別の検出可能な物質、例えば酵素、補欠分子族、ルミネセント物質またはバイオルミネセント物質にカップリングすることにより促進される。適当な酵素の例はセイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカルホスファターゼ、ベータガラクトシダーゼまたはアセチルコリンエステラーゼを包含し;適当な補欠分子族複合体の例はストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンを包含し;ルミネセント物質の例はルミノールを包含し;バイオルミネセント物質の例はルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンを包含する。
【0215】
好ましい実施形態においては、指示群は酵素、例えばセイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)またはグルコースオキシダーゼである。第1の指示群がHRPまたはグルコースオキシダーゼのような酵素である場合は、インジケーター部分/リガンド複合体(免疫反応体)が形成されたという事実を可視化するために別の試薬が必要になる。HRPのためのこのような別の試薬は過酸化水素およびジアミノベンジジンのような酸化染料前駆体を包含する。グルコースオキシダーゼのために有用である別の試薬は2,2’−アミノ−ジ−(3−エチル−ベンズチアゾリン−G−スルホン酸)である。
【0216】
標識を連結すること、即ち抗体のようなポリペプチドを標識することは当該分野でよく知られている。例えば培地中の成分として提供された放射性同位体含有アミノ酸の代謝的取り込みによりタンパク質を標識することができる。例えばGalfre et al.,Meth.Enzymol.,73:3−46(1981)を参照できる。活性化された官能基を介したタンパク質のコンジュゲート形成またはカップリングの手法が特に適用される。例えばAurameas, et al.,Scand.J.Immunol.,Vol.8 Suppl.7:7−23(1978),Rodwell et al.(1984)Biotech.3:889−894および米国特許4,493,795を参照できる。
【0217】
上記インジケーター部分を使用した種々の診断試験をCampylobacter jejuniに関してサンプルを試験するために設定できる。例示される試験はAntibodies:A Laboratory Manual,Harlow and Lane(eds.),Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1988に記載されいている。このような試験の代表例は向流免疫電気泳動(CIEP)、ラジオイムノアッセイ、ラジオ免疫沈降法、酵素連結免疫吸着試験(ELISA),ドットブロット試験、阻害または競合試験、およびサンドイッチ試験、免疫スティック(ディップスティック)試験、同時イムノアッセイ、免疫クロマトグラフィー試験、免疫濾過試験、ラテックスビーズ凝集試験、免疫蛍光試験、バイオセンサー試験および低光検出試験を包含する(さらに米国特許4,376,110および4,485,530参照)。
【0218】
1つの実施形態においては、本発明の診断用キットは液体サンプル中の予備選択されたリガンドの量を検出するための「ELISA」フォーマットにおいて使用できる。「ELISA」とは固相に結合した抗体または抗原および酵素−抗原または酵素−抗体コンジュゲートを使用することによりサンプル中に存在する抗原を検出して定量する酵素連結免疫吸着試験を指し、そして、本発明の方法に容易に適用される。即ち、一部の実施形態においては、本発明のインジケーター部分を固体マトリックスに固定することにより対照となる診断系におけるパッケージを含む固体支持体を形成することができる。試薬は典型的には水性媒体からの吸着により固体マトリックスに固定するが、抗体のようなポリペプチドに適用される当該分野でよく知られた他の様式の固定化も使用できる。有用な固体マトリックスも当該分野でよく知られている。このような物質は水不溶性であり、そしてPharmacia Fine Chemicals (Piscataway,N.J.)から商標SEPHADEXの下に入手可能な交差結合デキストラン;アガロース;North Chicago,IIIのAbbott Laboratoriesより入手可能な直径約1ミクロン〜約5ミリメートルのポリスチレンビーズのビーズ;ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、交差結合ポリアクリルアミド、ニトロセルロース系またはナイロン系の織物、例えばシート材、ストリップ材またはパドル材;またはポリスチレンまたはポリ塩化ビニルのような材料で作成された試験管、プレートまたはマイクロプレートのウェルを包含する。
【0219】
別の診断方法はリガンドに交差結合することにより複数のリガンドおよびポリペプチドの凝集物を形成し、沈殿性の凝集体を生じさせるために、本発明の1つの実施形態の抗体組成物の多価性を利用してよい。この実施形態は免疫沈降のよく知られた方法に匹敵するものである。この実施形態は、本発明の抗体を含む組成物にサンプルを添加混合して結合条件下に結合混合物を形成する工程、その後、形成した結合複合体を単離するための分離工程を含む。典型的には、単離は混合物から凝集物を除去するための遠心分離または濾過により達成される。結合複合体の存在は検出されるべき予備選択されたリガンドの存在を示す。
【0220】
(本発明のポリペプチドの結合相手およびインヒビター)
本発明が関連する51ポリペプチドの表在化はそれらをインヒビターのような結合相手のための標的として高度に適するものとする。病原性微生物の表在ポリペプチドは宿主生物と相互作用する場合が多い。即ち、表在ポリペプチドの結合相手のいずれかの型は宿主−病原体の相互作用を妨害する場合がある。即ち結合相手は微生物の病原性(毒力)を拮抗する場合が多い。結合相手はまたそれが結合するポリペプチドのインヒビターでもあってよい。
【0221】
即ち、別の主要な態様において、本発明は配列番号1〜51に示す表在ポリペプチドの結合相手の同定のための方法に関する。このような方法は生化学的または細胞系であってよい。
【0222】
(生化学的方法)
主要な態様において、本発明は配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドまたはそのフラグメントの結合相手を同定するための方法であって、下記工程:
a.配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドまたはそのフラグメントを提供すること、
b.該ポリペプチドまたはフラグメントを推定結合相手に接触させること、および、
c.該推定結合相手が該ポリペプチドまたはフラグメントに結合し得るかどうか測定すること、
を含む上記方法に関する。
【0223】
好ましい実施形態においては、該推定結合相手は宿主誘導分子である。
【0224】
方法の別の好ましい実施形態においては、ポリペプチドまたはそのフラグメントは固体支持体、例えばカラムまたはマイクロプレートの上に固定化されて提供され、そして、接触工程の後、推定結合相手が固体支持体に結合しているかどうかを測定する。ポリペプチドまたはそのフラグメントの固定化は、固体支持体への直接の結合を介して、または、例えば特異的抗体を用いた間接的な結合を介しターゲティング部分のであってよい。好ましい実施形態においては、洗浄工程を接触工程と測定工程の間に実施することにより検出の特異性を向上させる。別の好ましい実施形態においては推定結合相手は検出可能な標識と複合体化させる。推定相手は接触が起こる前に標識してよい。或いは、標識は接触工程後に行ってもよい。さらにまた、方法の一部の実施形態においては、固定化はポリペプチドまたはそのフラグメントが結合相手に結合した後に実施してよい。好ましい実施形態においては、方法は複数の推定結合相手に対して方法を反復するスクリーニング方法である。結合を測定する適当な方法は当該分野でよく知られており、その数種は本明細書において言及している。
【0225】
別の態様において、配列番号1〜51の群から選択されるポリペプチド、例えば配列番号1〜36のいずれか、または、配列番号37〜51のいずれかの宿主誘導結合相手は以下の通り、即ち、精製された宿主膜を電気泳動により分離し、メンブレン上にブロットし、目的のポリペプチドまたはそのフラグメントと共にインキュベートすることにより同定してよい。次に目的のポリペプチドまたはそのフラグメントに特異的な抗体を用いて結合を検出できる。ポリペプチドまたはそのフラグメントが結合している宿主結合相手はその後ブロットから溶出させ、そして後の質量スペクトルによる分析により、または、当該分野で知られている別の手法により、同定することができる。
【0226】
病原性生物の表在ポリペプチドの結合相手が宿主誘導分子である場合、表在ポリペプチドと宿主との間の相互作用が細菌の毒力のために重要となる場合がある。即ち表在ポリペプチドと宿主誘導結合相手の相互作用を部外する化合物はCampylobacter jejuni感染の防止または治療に適している。従って、本発明の別の方法は、下記工程:
a.配列番号1〜51のポリペプチドのいずれか、例えば配列番号1〜36のいずれか、または、配列番号37〜51のいずれか、またはそのフラグメントを提供すること、
b.該ポリペプチドの宿主誘導結合相手を提供すること(上記の通り、またはいずれかの他の方法で同定)、
c.該相互作用の推定インヒビターの非存在下で該宿主誘導結合相手に該ポリペプチドを接触させること、
d.該推定インヒビターの存在下で該宿主誘導結合相手に該ポリペプチドを接触させること、
および、
e.工程dで得られた該宿主誘導結合相手への該ポリペプチドの結合の強度が工程cで得られたものと比較して低減されているかどうか測定すること、
を含む配列番号1〜51の表在Campylobacter jejuniポリペプチドのいずれか、例えば配列番号1〜36のいずれか、または、配列番号37〜51のいずれかの宿主誘導結合相手との相互作用のインヒビターを同定する方法に関する。
【0227】
一部の実施形態においては、工程cおよびdは2つの異なるサンプルコンパートメントにおいて実施してよい。別の実施形態においては、工程dは工程cの混合物に推定インヒビターを添加することにより実施してよい。好ましい実施形態においては、方法は複数の推定インヒビターに対して反復する。
【0228】
特に有利なものは表在ポリペプチドの活性を阻害する結合相手である。このような活性は酵素活性、輸送活性またはいずれかの型の他の生化学的または細胞的な活性、好ましくは酵素活性である。
【0229】
好ましい宿主誘導結合相手は宿主のポリペプチドおよび宿主の脂質である。結合は例えばSzymanski and Armstrong(1996) Infect.Immun.64:3467−3474に記載の通り測定してよい。
【0230】
上記した生化学的方法の好ましい実施形態においては、結合相手と表在ポリペプチドまたはそのフラグメントの間の結合は5×10−6M未満、例えば10−6M未満、例えば5×10−7M未満、例えば10−7M未満、例えば5×10−8M未満、例えば10−8M未満、例えば5×10−9M未満、例えば10−9M未満、例えば5×10−10M未満、例えば10−10M未満、例えば5×10−11M未満、例えば10−11M未満、例えば5×10−12M未満、例えば10−12M未満、の解離定数、即ちKdを有する。解離定数は例えば表面プラズモン共鳴分析により測定できる。
【0231】
(細胞系の方法)
表在ポリペプチドのレベルを、それに対する構造遺伝子の欠失または破壊によるか、または、遺伝子発現をダウンレギュレート(後述参照)することにより低減することは、細菌細胞に影響する。細胞は細胞毒性化合物に対してより感受性となる場合がある。特に表在ポリペプチドの場合、そのレベルの低下は、細胞に化合物が進入することを防止する際の細胞の外部の部分、例えば外膜または細胞壁の機能に影響する。即ち、表在ポリペプチドのレベルの低下は種々の化合物に対して細胞をより「透過性」とすることができる。
【0232】
即ち、本発明の態様はCampylobacter jejuniに対する抗細菌活性を有する化合物を同定するための方法であって、下記工程:
a.配列番号1〜36のポリペプチドのいずれかの低減されたレベルを有する感作された細胞を提供すること、および、
b.推定抗細菌化合物に対する該細胞の感受性を、例えば増殖アッセイにより測定すること、
を含む上記方法に関する。
【0233】
好ましくは、方法は推定抗細菌化合物複数に対して操作法を反復するスクリーニング方法である。好ましい推定抗細菌化合物は、野生型Campylobacter jejuni細胞の外膜を通過しないものである。
【0234】
さらにまた、本発明はCampylobacter jejuniに対する抗細菌活性を有する化合物を同定するための方法であって、下記工程:
a.配列番号37〜51のポリペプチドのいずれかの低減されたレベルを有する感作された細胞を提供すること、および、
b.推定抗細菌化合物に対する該細胞の感受性を例えば増殖アッセイにより測定すること、ここで推定抗細菌化合物は野生型のCampylobacter jejuni細胞の外膜を通過することができないものであること、
を含む上記方法に関する。
【0235】
好ましくは、方法は推定抗細菌化合物複数に対して操作法を反復するスクリーニング方法である。
【0236】
この施策の背後にある論理的根拠は表在ポリペプチドのレベルがより低値である細胞は細胞毒性化合物に対して上昇した感受性を示すことになり、これにより試験に野生型細胞を使用する場合に見逃してしまう低力価を有する抗細菌化合物の同定を可能にするという点である。この方法により同定された化合物は力価を向上させるために修飾を要する場合が多い。これは化学的修飾により行える。
【0237】
表在ポリペプチドの活性の阻害は、細菌の生活能力(即ち生存、生育および/または増殖)に影響する場合がある。特に好都合なものはCampylobacter jejuniの生活能力にとって必須である表在ポリペプチドの阻害である。Campylobacter jejuni遺伝子の必須性は例えばWO02/077183に記載されている通り調べてよい。必須の表在ポリペプチドのインヒビターは細菌の生活能力に影響することが可能となるために必ずしも菌体内に進入する必要はない。即ち、抗微生物剤として有効であるためには、細胞内の標的のインヒビターに対するよりも、必須表在標的ポリペプチドのインヒビターの構造に対しては、要求される条件が一般的に少ない。
【0238】
従って本発明は、配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドのインヒビターを同定するための方法であって、下記工程:
a.配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドのレベルの異なる二つの細胞を提供すること、
b.該細胞の推定インヒビターに対する感受性を例えば増殖アッセイにより測定すること、および、
c.該二つの細胞が該推定インヒビターの存在により異なって影響されるかどうか測定すること、
を含む上記方法に関する。
【0239】
好ましくは推定インヒビターの複数に対して方法を反復する。好ましいインヒビターはCampylobacter jejuniの外膜を通過しない。
【0240】
さらにまた本発明は配列番号37〜51のポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドのインヒビターを同定するための方法であって、下記工程:
a.配列番号37〜51びポリペプチドのいずれかレベルの異なる二つの細胞を提供すること、
b.該細胞の推定インヒビターに対する感受性を、例えば増殖アッセイにより測定すること、ここで推定インヒビターはCampylobacter jejuni細胞の外膜を通過することができないものであること、および、
c.該二つの細胞が該推定インヒビターの存在により異なって影響されるかどうか測定すること、
を含む上記方法に関する。
【0241】
好ましくは推定インヒビターの複数に対して方法を反復する。
【0242】
この施策の背後にある論理的根拠は必須ポリペプチドのレベルがより低値である細胞はより高いレベルの細胞の生活の力よりもポリペプチドのインヒビターにより高度に影響されるという点である。2つの細胞が異なって影響されれば、これは、インヒビターが標的に対して、または少なくとも同じ生化学的経路において、作用することを示している。
【0243】
方法の一部の実施形態においては、目的のポリペプチドの異なる活性を有する2つの細胞は野性型細胞(または目的の遺伝子の野生型活性を有する他の細胞)および目的のポリペプチドの低減された活性を有する感作された細胞である。一部の実施形態においては、感作された細胞における異なる、または低減されたレベルは目的の遺伝子の異なる、または低減された発現レベルであることができる(異なる、または低減されたコピー数のポリペプチドを与える)。このことは、調節プロモーターの制御下に遺伝子を置くか、または、必須ポリペプチドをコードするmRNAの翻訳を阻害するアンチセンスRNAの調節可能な発現により、達成することができる。他の実施形態においては、異なる、または低減された活性は例えば温度感受性突然変異のような突然変異による、目的のポリペプチドの異なる、または低減された活性であることができる。
【0244】
感作された細胞を作成し、そしてそれをインヒビターのスクリーニングに使用する適当な方法はWO02/077183に記載されている。感作された細胞は、インデューサーまたはリプレッサーのある濃度の存在下、または、細菌の生活能力のために必要なあるレベルのその機能の有無が生活能力のための速度決定工程となる遺伝子産物を細菌の生活能力のために必要なレベルで与える条件において、コンディショナル発現のC.jejuni突然変異菌株を生育させることにより得てよい。Campylobacter jejuniのための調節可能なプロモーターは例えばKelana et al.(2003)J Food Prot 66:1190−1197およびDedieu et al.(2002) Appl Environ.Microbiol.68:4209−4215に記載されている。標的遺伝子の致死量未満の発現は、阻害が少なくとも約10%、例えば少なくとも約25%、例えば少なくとも約50%、例えば少なくとも約75%、例えば少なくとも約90%、例えば少なくとも約95%であってよい。
【0245】
本発明の細胞系試験の別の実施形態においては、感作された細胞は、ポリペプチドにおける温度感受性突然変異のような突然変異を用いて細菌の生活能力のために必要なポリペプチドのレベル活性の低減により得られる。許容温度および制限温度の間の中間的温度でこのような細胞を成育させることにより遺伝子産物の活性が低下した細胞が生成される。上記した方法は細菌の生活能力に必要な遺伝子産物の活性またはレベルを低減するが、これを消失させないいずれかの突然変異により実施してよい。この施策はまたコンディショナル発現の方法と組み合わせてもよい。この組合せの施策においては、目的の遺伝子内に温度感受性の突然変異を有し、やはりコンディショナル発現される細胞を作成する。
【0246】
必須ポリペプチドのインヒビターについてスクリーニングする場合は、生育阻害は対数増殖期のサンプル中の未接種の生育培地と相対比較した場合の培養物の工学密度により測定された生育の量を対照サンプルの値と直接比較することにより測定できる。細胞の増殖を試験するための代替法は緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーターコンストラクト発光の測定、種々の酵素活性試験、および当該分野でよく知られている他の方法を包含する。生活能力を測定するために使用する他のパラメーターは例えばコロニー形成単位を包含する。上記した方法は固相、液相、前記2培地の組合せ、またはインビボで実施してよい。複数の化合物を寒天プレートに写し、そして自動化および半自動化の装置を用いて同時に試験してもよい。
【0247】
本発明の細胞系の試験は、目的の標的分子に対して低い、または中等度の力価を示す化合物は、非感作細胞よりも感作細胞に対してその化合物が実質的により強力に作用するため、その検出が可能となる。作用は被験化合物が、非感作細胞と比較して感作細胞で試験した場合に、2〜数倍強力、例えば少なくとも10倍強力、例えば少なくとも20倍強力、例えば少なくとも50倍強力、例えば少なくとも100倍強力、例えば少なくとも1000倍強力、さらには1000倍を超えて強力となるようなものであってよい。
【0248】
表在ポリペプチドを過剰発現する変異体のCampylobacter jejuni菌株もまたポリペプチドを阻害する化合物を同定するために使用できる。化合物が細胞毒性である場合は、標的ポリペプチドの過剰発現は細胞をより耐性とする。即ち、本発明はまた配列番号1〜51の表在Campylobacter jejuniポリペプチドのいずれか、例えば配列番号1〜36のいずれか、または配列番号37〜51のいずれかのインヒビターを同定するための方法に関し、方法は下記工程:
a.列番号1〜51の表在Campylobacter jejuniポリペプチドのいずれか、例えば配列番号1〜36のいずれか、または配列番号37〜51のいずれかの活性において異なる二つの細胞を提供すること、ここで一方の細胞は実質的に該ポリペプチドの野生型のコピー数を含有し、そして他方の細胞は該ポリペプチドの野生型コピー数より高値を含有すること、
b.該細胞の推定インヒビターに対する感受性を例えば増殖アッセイにより測定すること、および、
c.該二つの細胞が該推定インヒビターの存在により異なって影響されるかどうか測定すること、
を含む。
【0249】
過剰発現は、強力なプロモーターを使用するか、または表在ポリペプチドに関する構造遺伝子の複数のコピーを導入することにより達成してよい。強力なCampylobacter jejuniプロモーターはWosten et al.(1998)J.Bacteriol.180:594−599に記載されている。インヒビターの細胞標的ではないポリペプチドの過剰発現もまたインヒビターに対して細胞を耐性とすることができるため、推定インヒビターによる目的標的ポリペプチドの阻害は他の手段、例えば生化学的試験により確認しなければならない。
【0250】
表在ポリペプチドの生化学的または他の細胞活性のインヒビターに加えて、上記した細胞系の方法は例えば遺伝子調節を妨害することにより標的の発現レベル、即ちコピー数を低減する化合物を同定するために使用できる。
【0251】
結合相手またはインヒビターを同定するための細胞形または生化学的な方法のいずれかの好ましい実施形態においては、方法は複数の候補化合物に対して反復される。
【0252】
別の態様において、本発明は本明細書に記載した細胞系の方法において使用される変異体のCampylobacter jejuni菌株、例えば非相同調節プロモーターの制御下に表在ポリペプチドをコードする遺伝子が置かれた菌株、表在ポリペプチドの温度感受性対立遺伝子を担持した菌株、および、表在ポリペプチドを過剰発現する菌株に関する。
【0253】
表在ポリペプチド、例えば配列番号1〜36のポリペプチドのいずれかをターゲティングすることにより細菌の生育を妨害する他の方法は、特定のアンチセンス、例えばアンチセンスRNAまたはDNAを使用する、そして、必須表在ポリペプチドをコードするmRNAに特異的なリボザイム分子を使用する遺伝子発現の抑制を包含する。
【実施例】
【0254】
(方法)
プロジェクトの実験工程は以下の通りである。低pH溶出により表面タンパク質を単離する。2Dゲルおよび質量スペクトルにより分析する。大腸菌発現ベクターにクローニングする。組換えタンパク質を作成し、マウスを免疫化し、免疫化されたマウスをCampylobacter jejuniで攻撃し、疾患および腸のコロニー形成に対抗した保護を観察する。大腸菌およびサルモネラの表面局在化も評価する(陽性であれば、弱毒化ベクター株使用の可能性)。
【0255】
(細菌培養)
Campylobacter jejuni(C.j.)菌株ML53(血清型0:19)、ヒト糞便臨床単離株はKaren Krogfeld(SSI)より寄贈された。血液寒天プレート上で通常通り37℃10%CO5%O雰囲気下にて生育させた。
【0256】
(表面タンパク質抽出)
細菌を血液寒天プレート上に一夜生育させ、50mMTrispH7.8中に採取し、6000gで5分間遠心分離することによりペレット化した。ペレットを0.2MグリシンpH2.2中に際懸濁し、細菌懸濁液を室温で10分間穏やかに混合した。細菌を5分間6000gで遠心分離することにより再度ペレット化し、表面タンパク質を含有する上澄みを採取し、NaOHで中和し、−80℃で凍結した。サンプルはAmersham HiTrap脱塩カラムで脱塩した後に2Dゲル電気泳動に付した。
【0257】
(2Dゲル電気泳動)
二次元ゲル電気泳動はEttan Dalt 2システム(Amersham Biosciences)またはNovex NuPageシステム(Invitrogen)のいずれかにおいてゲル系と共に提供された取扱説明書に従って実施した。
【0258】
慨すれば、第1の次元の泳動は7cmまたは24cmのプレキャストIPGストリップ(pH範囲3〜10または6〜11)において、Ettan IPGphor等電点電気泳動システム(Amersham Biosciences)を用いながら製造元の指示書に従って実施した。等電点電気泳動は以下の条件、即ち7cmpH3〜10ストリップ:8000Vh、7cmpH6〜11ストリップ:16000Vh、24cmpH3〜10ストリップ:52000Vhにおいて実施した。第2の次元はプレキャスト12.5%ゲル(Amersham Biosciences)を用いながら、15分間ゲル当たり5W、次に4〜6時間合計170Wで24cmストリップについて実施した。7cmストリップは40分間200ボルトでプレキャスト4〜12%ゲル(Invitrogen)を用いながらNovex NuPageシステム(Invitrogen)上を泳動させた。Mortz et al.(2001)Proteomics 1(11), 1359−1363に元法が記載された変法に従ってゲルを銀染色し、AmershamのEttan Spot Pickerを用いながら製造元の指示書に従って質量スペクトル分析用のスポットを切り出した。
【0259】
(質量スペクトル)
特異的タンパク質のスポットを切り出し、Milli−Q水中に入れた。これらのゲルプラグを50mM NHHCO/50%エタノールで洗浄し、96%エタノール中でインキュベートすることにより脱水した。還元およびアルキル化は還元溶液(10mM DTT、50mM NHHCO)中で56℃においてインキュベートし、その後暗所アルキル化溶液(55mMヨードアセトアミド、50mM NHHCO)中の室温インキュベーションにより実施した。次に2サイクルの洗浄および脱水を実施した後に5μLのトリプシン溶液(12.5ng/μL Promegaトリプシン、50mM NHHCO、10%アセトニトリル中)を添加した。次にさらに重炭酸ナトリウム溶液を添加し、消化物を37℃で一夜インキュベートした。トリフルオロ酢酸を添加して一夜消化した後に振とうインキュベートした。
【0260】
抽出物の一部をMALDI−TOFペプチド質量フィンガープリント分析(Reflex IV,Bruker Daltonics,Germany)において使用し、ピークリストを特定のCampylobacter jejuniデータベースに対するデータベース検索において使用した。Mascot検索プログラムおよびスコアリングアルゴリズム(Matrix Science,UK)をデータベース検索に使用した。ペプチド質量耐容性は60ppmおよび0.5Daにそれぞれ設定した。検索パラメーターはMetの酸化、カルバミドメチル基のCysへの付加が包含されるように調節し、そしてトリプシンはペプチド当たり1切断部位の取り落としは許容されるものとした。
【0261】
同定されたフラグメントは2003年11月21日出願のデンマーク優先権出願PA200301726のリスト1に記載され、そして、2003年11月25日出願の米国暫定出願60/524,617のリスト1(参照により本明細書に組み込まれる)が同定された。合計51の異なるCampylobacter jejuniタンパク質がこの操作法により同定された。これらのタンパク質の完全長の配列は配列番号1〜51に示す(図4参照)。配列表のタンパク質はSanger Instituteの分類に従って機能的に分類される。ゲノム配列から予測されたがこれまで特性化されておらず、以前に特性化されたタンパク質と何れの相同性も有していなかった全タンパク質はSanger instituteにより仮説的と分類された。既知のタンパク質に相同性を有していたものは相同性の程度に応じて、接頭辞「可能性有り(probable)」または「推定される(putative)」を付した相当する既知タンパク質として命名した。一部のタンパク質は厳密な生化学的/代謝的な機能を割り付けることのできなかった小型モチーフを有していたが、それらが特定の態様、例えばヌクレオチド結合モチーフ、膜結合部位等を保有しているという事実は明言できた。推定ペリプラズムタンパク質は同じ基準によりそのまま分類し、それらは短い(4〜6アミノ酸)N末端モチーフを有しており、これはペリプラズムへの輸送を媒介していると考えられる。
【0262】
(バイオインフォマティクス試験)
抗原指数試験はDNAStar社(Burland,TG(2000)Methods Mol.Biol.132:71−91)のLasergene配列分析ソフトウエアを用いて求めたデフォルトパラメーターを用いて実施した。配列番号52〜119に示す配列がその相当する完全長ポリペプチドの特に抗原性のフラグメントであると予測されている(図4参照)。
【0263】
(大腸菌におけるクローニングおよび発現)
目的のタンパク質に相当する遺伝子をPCR増幅し、hisタグを有する大腸菌発現ベクター(pET101,Invitrogen)内にクローニングした。得られたプラスミドを大腸菌BL21(DE3)菌株に形質転換し、4時間0.5mM IPTGでタンパク質発現を誘導した。グリシン溶出液を上記した通り調製し、3種類の独立した方法、即ち、クーマシー染色、抗hisタグ抗体によるウエスタンブロットおよび質量スペクトル分析により組換えCampylobacter jejuniタンパク質の存在について分析した。表面局在化の検出は8プラスミド(Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0715、Cj0772c、Cj1018c、Cj1380およびCj1643を発現するもの)について実施した。8プラスミド全てが大腸菌の細胞表面上に存在した。
【0264】
組換えタンパク質を培養物から精製し、製造元の指示書に従ってNTA−Niアガロース(Qiagen)を用いて上記した通り誘導した。精製タンパク質はPBSに対して透析し、−80℃で凍結保存した。
【0265】
(マウス免疫化)
(抗原用量決定)
各タンパク質について旨適免疫化用量およびワクチン接種のタイムスケジュールを決定するために、マウスを各タンパク質1、5、10および25ミリグラムを用いて免疫化した。PBS中に溶解したタンパク質の適切な量を100μgミョウバン(Alhydrogel,Brenntag Biosector)/マウスと混合し、30分間室温で回転させた。PBSで容量を0.5mLとした。マウスを3回(第0、14、28日)皮下免疫化した。各免疫化後第0日および7日(第7、21、35日)に採血した。200μL血液mLの血液サンプルを第7日に眼窩叢から採取し、1時間放置して凝固させ、3500gで10分間遠心分離し、血清を採取した。
【0266】
(血液分析)
抗体応答は血液中の抗体力価を測定することによりモニタリングした。これはウエスタンブロットにより行った。結成をPBS/0.1%Tween中1:100〜1:25600に連続希釈した。組換えタンパク質を分取用(2D)ウェルゲル(Invitrogen)上で膜上のタンパク質バンド1.5mmがタンパク質100ngに相当するように泳動させた。1.5mm幅のスロットを有するSurf−Blot装置(Idea Scientific,Minneapolis,MN)を用いてウエスタンブロットを実施した。血清の希釈液は一次抗体として使用し、アルカリホスファターゼコンジュゲート抗マウス抗体(Sigma)を二次抗体として使用した。ブロットはFastTab錠剤(Sigma)で発色させた。全抗原とも5、10および25マイクログラム/匹で適用した場合に12800〜25600の抗血清希釈度で検出可能であった。
【0267】
(攻撃のための免疫化)
第0、14および28日に上記の通り調製した組換えタンパク質ワクチン25マイクログラムでマウスを免疫化した。第7、21、35日に採血し、上記の通り試験した。最後のブースト後2週間以内に攻撃実験に用いなかったマウスは、攻撃の1週間前に組換えタンパク質10マイクログラムで再度ブーストした。
【0268】
(マウス経口チャレンジ)
Campylobacter jejuni菌株ML1およびML53(Karen Krogfeld、SSIより寄贈された臨床単離株)を42℃で血液寒天プレート上に生育させた。攻撃の前日、細菌を1%コウボエキス含有Brain heard注入ブロス中に採取し、OD6000.05となるまで希釈し、スターター培養物を得た。BHI寒天20mLの入った75cmのフラスコにスターター培養物25mLを接種し、42℃で一夜インキュベートした。攻撃当日、細菌を5分間6000gで遠心分離することにより採取し、新しいBHI/YEブロス中にOD6001となるまで再懸濁した(5×10〜10コロニー形成単位(cfu)/mL;実際のcfuはBHI寒天プレート上に連続希釈物をプレーティングすることにより各バッチに付き測定した)。懸濁液をマウスに与えるまで氷上に保存した(通常は調製3時間以内)。
【0269】
抗原当たり6〜8匹のワクチン接種マウスをCampylobacter jejuni2.5〜5×10cfuで経口攻撃した(上記調製した懸濁液0.5mL)。5検体の糞便ペレット(またはACE017実験では全糞便ペレット)を毎日採取し、10%グリセロール添加BHI/YEブロス0.5mL(または5mL)中に入れ、−80℃で凍結した。
【0270】
コロニー形成はカンピロバクター用の選択培地上にプレーティングすることによりモニタリングした。糞便ペレットをホモゲナイズし、容量を2(または12)mLに調節し、そしてホモジネート250μLを血液寒天プレート上面のBHI/YE1.5mL中に入れた。プレートを2〜3時間42℃でインキュベートし、そして液体150〜250μLをKarmali寒天プレート上に展開し、次にこれを48時間42℃でインキュベートした。プレートは以下の通り評点した。即ち、コンフルエントな菌叢が観察された場合には1000点、分離したコロニーが菌叢中に識別できれば500点、そして、コロニー数が100末端であれば100点(その場合コロニー計数した)とした。点数は毎日各抗原に付き全マウスに渡って平均した。
【0271】
(菌株スクリーニング)
Campylobacter jejuni13菌株およびカンピロバクター・コリの1菌株をマウス攻撃実験において使用した8抗原の存在についてスクリーニングした。溶解した全細胞をSDSゲル上で泳動し、免疫化マウス由来の抗結成でウエスタンブロットした。
【0272】
(結果)
種々の組合せの抗原および対照を含む5実験を以下の通り実施した。
【0273】
【化1】

実験ACE003bおよびACE003cのマウス由来の血液に対して実施した血液分析の例を図1および2に示す。
【0274】
攻撃の結果を図3に示す。
【0275】
種々のカンピロバクター菌株における抗原の存在に関するスクリーニングの結果を表1に示す。
【0276】
(ML53(血清型0:19)菌株由来のACE393のDNA配列決定)
菌株ML53由来のACE393(配列番号120)のDNA配列決定によればタンパク質配列への翻訳後のアミノ酸レベルにおいてNCBIで公開されている配列と比較して3相違点が判明した。相違点は以下の通りである。
アミノ酸配列の70位:V(公開配列)からA(ML53菌株)
アミノ酸配列の136位:A(公開配列)からT(ML53菌株)
アミノ酸配列の168位:T(公開配列)からA(ML53菌株)。
【0277】
初回の動物薬効試験において使用した菌株ML53(0:19)由来の組換えACE393のタンパク質配列の実験確認を実施した。分析には、MALDI−TOFによるインタクトな質量の測定;1Dゲル分析;2Dゲル分析および2Dゲルウエスタンブロットを用いた。データ(示さず)は初期コンストラクト、即ちC末端6HisタグおよびV5リンカー領域を含む配列に基づくものとした。全試験および分析は標準的プロトコルに従ってNi−His精製後に得られたACE393を用いて実施した。
【0278】
ACE393のインタクト分析より、2タンパク質が観察された。これらの2つの質量はN末端トランケーション型の予測質量と完全に一致していた(〜21アミノ酸および同様のN末端トランケーション型、および19アミノ酸の別のC末端トランケーション)。1D SDS PAGEによれば2つのスポットは1つが大型、1つが小型であった。これはインタクトMALDI−TOF分析のデータと極めてよく合致した。これらの2つのスポットのペプチドマッピングデータは恐らくオーバーロードによる如何なる相違も示していなかった。2Dゲル分析におけるスポットの数は混合物が2つより多い成分を含有している可能性があることを示していた。データは変化がSDS分子の数による電荷の相違に起因する可能性があることを示していた。マウス抗体を用いたウエスタンブロットのデータは同じパターンを示し、銀染色データと十分な合致を示した。
【0279】
(天然および組換えACE393のMALDI−TOFペプチドフィンガープリント分析)
(天然型)
ACE393の天然型は全カンピロバクター細胞溶解物を含有する4種の異なる2Dゲル中で検出された。同定は40〜55%の配列カバー度を有するMALDI−TOFペプチドフィンガープリント分析に基づいた。
【0280】
MALDI−TOFペプチドフィンガープリントデータを公開された配列およびACE393インハウス観察配列(ML53,0:19)の両方に対して検索した。インハウス配列は2つの別のペプチドを与えた。
【0281】
【化2】

(太字のアミノ酸は2配列の相違点である)。
【0282】
公開配列と比較して最後の修飾を含むペプチド
【0283】
【化3】

は小型過ぎるためMALDI−TOFペプチドフィンガープリント分析で検出できない。
【0284】
(組換え型)
組換えタンパク質のMALDI−TOFペプチドフィンガープリント分析は天然タンパク質の分析で検出されたものと同様の2修飾を示した。別のペプチドがリンカーHis配列から同定された。
【0285】
(過剰可変領域)
標的配列を”The genome sequence of the food−borne pathogen Campylobacter jejuni reveals hypervariable sequence.Nature, 2000 Feb 10;403(6770):665−8”に記載の潜在的に過剰可変のホモポリマー領域について確認した。本明細書に記載した標的はこれらの可変領域には存在せず、即ちこれらをワクチン候補として特に適するものとしている。
【図面の簡単な説明】
【0286】
【図1】実験ACE003bおよびACE003cから得た抗原当たり任意に選択した4マウス由来の血清を1:2000に希釈し、そして全細胞のカンピロバクター溶解物(B、D)または組換えタンパク質100ng(A、C)に対するウエスタンブロットに対して試験した。分子量マーカータンパク質MWのkD:97、64、51、39、28、19、14。
【図2】抗体力価測定の例。第21日(予め第1および第14日に免疫化)に採取した実験ACE003bおよびACE003cからの無作為に選択したマウス(抗原当たり1匹)の血清を連続希釈し、相当する組換えタンパク質に対してウエスタンブロットを実施した(100ng/スポット)。
【図3−1】マウス経口攻撃の結果。異なる組合せの抗原および対照を含む5実験を以下の通り実施した。ミョウバン陰性対照は四角、抗原は三角、ただしACE017は例外的に抗原は三角であるが、陽性対照をグリシン溶出物(Rombus)とし、陰性対照をCBP(下記)とし、四角に類似させた。実験名 使用抗原ACE003b Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE003c Cj0715、Cj1018c、Cl1380、Cj1643、ミョウバンACE011a Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE011b Cj0715、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、ミョウバンACE017 Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、クロストリジウム・セルロボランスのセルロース結合ドメインイン(CBP、Sigma Aldrich C8581)、グリシン溶出物は本文中のC.j.菌株由来)。
【図3−2】マウス経口攻撃の結果。異なる組合せの抗原および対照を含む5実験を以下の通り実施した。ミョウバン陰性対照は四角、抗原は三角、ただしACE017は例外的に抗原は三角であるが、陽性対照をグリシン溶出物(Rombus)とし、陰性対照をCBP(下記)とし、四角に類似させた。実験名 使用抗原ACE003b Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE003c Cj0715、Cj1018c、Cl1380、Cj1643、ミョウバンACE011a Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE011b Cj0715、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、ミョウバンACE017 Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、クロストリジウム・セルロボランスのセルロース結合ドメインイン(CBP、Sigma Aldrich C8581)、グリシン溶出物は本文中のC.j.菌株由来)。
【図3−3】マウス経口攻撃の結果。異なる組合せの抗原および対照を含む5実験を以下の通り実施した。ミョウバン陰性対照は四角、抗原は三角、ただしACE017は例外的に抗原は三角であるが、陽性対照をグリシン溶出物(Rombus)とし、陰性対照をCBP(下記)とし、四角に類似させた。実験名 使用抗原ACE003b Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE003c Cj0715、Cj1018c、Cl1380、Cj1643、ミョウバンACE011a Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE011b Cj0715、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、ミョウバンACE017 Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、クロストリジウム・セルロボランスのセルロース結合ドメインイン(CBP、Sigma Aldrich C8581)、グリシン溶出物は本文中のC.j.菌株由来)。
【図3−4】マウス経口攻撃の結果。異なる組合せの抗原および対照を含む5実験を以下の通り実施した。ミョウバン陰性対照は四角、抗原は三角、ただしACE017は例外的に抗原は三角であるが、陽性対照をグリシン溶出物(Rombus)とし、陰性対照をCBP(下記)とし、四角に類似させた。実験名 使用抗原ACE003b Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE003c Cj0715、Cj1018c、Cl1380、Cj1643、ミョウバンACE011a Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE011b Cj0715、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、ミョウバンACE017 Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、クロストリジウム・セルロボランスのセルロース結合ドメインイン(CBP、Sigma Aldrich C8581)、グリシン溶出物は本文中のC.j.菌株由来)。
【図3−5】マウス経口攻撃の結果。異なる組合せの抗原および対照を含む5実験を以下の通り実施した。ミョウバン陰性対照は四角、抗原は三角、ただしACE017は例外的に抗原は三角であるが、陽性対照をグリシン溶出物(Rombus)とし、陰性対照をCBP(下記)とし、四角に類似させた。実験名 使用抗原ACE003b Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE003c Cj0715、Cj1018c、Cl1380、Cj1643、ミョウバンACE011a Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE011b Cj0715、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、ミョウバンACE017 Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、クロストリジウム・セルロボランスのセルロース結合ドメインイン(CBP、Sigma Aldrich C8581)、グリシン溶出物は本文中のC.j.菌株由来)。
【図3−6】マウス経口攻撃の結果。異なる組合せの抗原および対照を含む5実験を以下の通り実施した。ミョウバン陰性対照は四角、抗原は三角、ただしACE017は例外的に抗原は三角であるが、陽性対照をグリシン溶出物(Rombus)とし、陰性対照をCBP(下記)とし、四角に類似させた。実験名 使用抗原ACE003b Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE003c Cj0715、Cj1018c、Cl1380、Cj1643、ミョウバンACE011a Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE011b Cj0715、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、ミョウバンACE017 Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、クロストリジウム・セルロボランスのセルロース結合ドメインイン(CBP、Sigma Aldrich C8581)、グリシン溶出物は本文中のC.j.菌株由来)。
【図3−7】マウス経口攻撃の結果。異なる組合せの抗原および対照を含む5実験を以下の通り実施した。ミョウバン陰性対照は四角、抗原は三角、ただしACE017は例外的に抗原は三角であるが、陽性対照をグリシン溶出物(Rombus)とし、陰性対照をCBP(下記)とし、四角に類似させた。実験名 使用抗原ACE003b Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE003c Cj0715、Cj1018c、Cl1380、Cj1643、ミョウバンACE011a Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE011b Cj0715、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、ミョウバンACE017 Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、クロストリジウム・セルロボランスのセルロース結合ドメインイン(CBP、Sigma Aldrich C8581)、グリシン溶出物は本文中のC.j.菌株由来)。
【図3−8】マウス経口攻撃の結果。異なる組合せの抗原および対照を含む5実験を以下の通り実施した。ミョウバン陰性対照は四角、抗原は三角、ただしACE017は例外的に抗原は三角であるが、陽性対照をグリシン溶出物(Rombus)とし、陰性対照をCBP(下記)とし、四角に類似させた。実験名 使用抗原ACE003b Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE003c Cj0715、Cj1018c、Cl1380、Cj1643、ミョウバンACE011a Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、ミョウバンACE011b Cj0715、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、ミョウバンACE017 Cj0092、Cj0143c、Cj0420、Cj0772c、Cj1018c、Cj1380、Cj1643、クロストリジウム・セルロボランスのセルロース結合ドメインイン(CBP、Sigma Aldrich C8581)、グリシン溶出物は本文中のC.j.菌株由来)。
【図4−1】本発明の配列表を示す。
【図4−2】本発明の配列表を示す。
【図4−3】本発明の配列表を示す。
【図4−4】本発明の配列表を示す。
【図4−5】本発明の配列表を示す。
【図4−6】本発明の配列表を示す。
【図4−7】本発明の配列表を示す。
【図4−8】本発明の配列表を示す。
【図4−9】本発明の配列表を示す。
【図5】13の無作為に選択したCampylobacter jejuniおよびカンピロバクター・コリ菌株における8抗原の存在。記載した14菌株の全細胞菌体溶解物をウエスタンブロットに付し、全8抗原に対する血清でプローブした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬として使用するための、以下:
− 配列番号1〜51の表在カンピロバクターポリペプチドからなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、または、
− 該ポリペプチドに結合し得る抗体、
を含有する、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、以下:
− 配列番号1〜51からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、
を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記改変体が、前記配列に対する少なくとも95%、例えば少なくとも96%、例えば少なくとも97%、例えば少なくとも98%、例えば少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項1または2のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記抗原性フラグメントが、前記配列の全長の99%未満、例えば75%未満、例えば50%未満、例えば25%未満、例えば20%未満、例えば15%未満または例えば10%未満を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記抗原性フラグメントが、前記配列の70未満の連続アミノ酸残基、例えば50未満、例えば40未満、例えば30未満、例えば20未満の連続残基を含む、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記抗原性フラグメントが、前記配列の6以上、例えば7以上、例えば8以上、例えば9以上、例えば10以上の連続アミノ酸を含む、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記抗原性フラグメントが、配列番号52〜119からなる群より選択されるフラグメントの1つ以上の残基、例えば配列番号52〜119からなる群より選択されるフラグメントの2つ以上の連続する残基、例えば3つ以上の連続する残基、例えば4つ以上の連続する残基、例えば5つ以上の連続する残基、例えば6つ以上の連続する残基を含む、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記ポリペプチドがタグ、例えばヒスチジンタグを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
前記組換え細胞が弱毒化されたか、もしくは毒性の減少したEscherichia coli細胞または弱毒化されたか、もしくは毒性の減少したサルモネラ属細胞である、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記組換え細胞が生存している、請求項1〜9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
前記組換え細胞が死滅している、請求項1〜10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
前記医薬がワクチンである、請求項2〜11のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が免疫原性キャリア、例えばキャリアタンパク質を含有し、該免疫原性キャリアは好ましくは前記ポリペプチドに結合している、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物がアジュバントを含有する、請求項12または13のいずれかに記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドに結合し得る抗体を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記抗体が、さらにインタクトなCampylobacter jejuni細胞に結合し得る、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、配列番号37〜51からなる群より選択されるポリペプチドに結合し得、かつ、インタクトなCampylobacter jejuni細胞に結合し得る抗体を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記抗体がポリクローナルである、請求項15〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記抗体がモノクローナルである、請求項15〜17のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
前記抗体がヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項15〜19のいずれかに記載の組成物。
【請求項21】
前記抗体が抗体の結合フラグメントである、請求項15〜20のいずれかに記載の組成物。
【請求項22】
前記抗体が5×10−6M未満、例えば10−6M未満、例えば5×10−7M未満、例えば10−7M未満、例えば5×10−8M未満、例えば10−8M未満、例えば5×10−9M未満、例えば10−9M未満、例えば5×10−10M未満、例えば10−10M未満、例えば5×10−11M未満、例えば10−11M未満、例えば5×10−12M未満、例えば10−12M未満、例えば5×10−13M未満、例えば10−13M未満、例えば5×10−14M未満、例えば10−14M未満、例えば5×10−15M未満、例えば10−15M未満の解離定数、即ちKdを有する請求項15〜21のいずれかに記載の組成物。
【請求項23】
前記組成物が薬学的に受容可能なキャリアを含有する、請求項1〜22のいずれかに記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が全身投与に適している、請求項1〜23のいずれかに記載の組成物。
【請求項25】
前記組成物が静脈内投与、筋肉内投与または皮下投与に適している、請求項1〜23のいずれかに記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が経口投与に適している、請求項1〜23のいずれかに記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物が鼻腔内投与に適している、請求項1〜23のいずれかに記載の組成物。
【請求項28】
配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドに結合し得る抗体。
【請求項29】
前記抗体がさらにインタクトなCampylobacter jejuni細胞に結合し得る、請求項28に記載の抗体。
【請求項30】
配列番号37〜51からなる群より選択されるポリペプチドに結合し得、かつ、インタクトなCampylobacter jejuni細胞に結合し得る、抗体。
【請求項31】
請求項18〜22のいずれかの特徴を含む、請求項28〜30のいずれかに記載の抗体。
【請求項32】
ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドで形質転換またはトランスフェクトされた組換え細胞であって、該ポリペプチドが配列番号1〜36からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含む、組換え細胞。
【請求項33】
前記組換え宿主細胞がEscherichia coliまたはサルモネラ属細胞である、請求項32に記載の組換え細胞。
【請求項34】
前記組換え細胞が弱毒化されたか、または毒性の減少した細胞である、請求項32または33に記載の組換え細胞。
【請求項35】
ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチドで形質転換またはトランスフェクトされた組換え弱毒化もしくは毒性の減少したEscherichia coliまたは組換え弱毒化もしくは毒性の減少したサルモネラ属細胞であって、該ポリペプチドは配列番号37〜51からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントもしくは改変体を含む、Escherichia coliまたはサルモネラ属細胞。
【請求項36】
カンピロバクター属、好ましくはCampylobacter jejuniの感染に対抗する動物またはヒトの免疫化のための医薬の調製のための、以下:
− 配列番号1〜51からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントまたは改変体を含む、ポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、
の使用。
【請求項37】
前記免疫化が防御免疫応答を誘導する、請求項36に記載の使用。
【請求項38】
前記医薬が、非経口投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、経口投与または鼻腔内投与に適した医薬である、請求項36または37に記載の使用。
【請求項39】
動物またはヒトにおけるカンピロバクター属、好ましくはCampylobacter jejuniの感染の治療または予防のための医薬の製造のための、配列番号1〜51からなる群より選択されるポリペプチドに結合し得る抗体、好ましくは請求項28〜31のいずれかに記載の抗体の使用。
【請求項40】
非ヒト動物における配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドに対して抗体を惹起するための方法であって、該方法は、以下:
a.以下:
− 配列番号1〜36からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントもしくは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、
を提供する工程、
b.該動物に該ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、組換えウィルスまたは組換え細胞を含有する組成物を導入する工程、
c.該動物において抗体を惹起させる工程、および、
d.該抗体を単離し、必要に応じて精製する工程、
を包含する、方法。
【請求項41】
非ヒト動物における配列番号37〜51からなる群より選択されるポリペプチドに対する抗体を惹起するための方法であって、該抗体はインタクトなCampylobacter jejuni細胞に結合し得、該方法は、以下:
a.以下:
− 配列番号37〜51からなる群より選択される配列を含むか、または、該配列の抗原性フラグメントもしくは改変体を含むポリペプチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含むポリヌクレオチド、
− 該ポリペプチドをコードする配列を含む発現ベクター、または、
− 該ポリヌクレオチドまたは該発現ベクターを含む組換えウィルスまたは組換え細胞、
を提供する工程、
b.該動物に該ポリペプチド、ポリヌクレオチド、ベクター、組換えウィルスまたは組換え細胞を含有する組成物を導入する工程、
c.該動物において抗体を惹起させる工程、
d.該抗体を単離し、必要に応じて精製する工程、および、
e.インタクトなCampylobacter jejuni細胞に結合し得る抗体を選択する工程、
を包含する、方法。
【請求項42】
前記動物がヒト抗体を産生し得るトランスジェニック動物である請求項40または41に記載の方法。
【請求項43】
サンプル中のCampylobacter jejuniまたはその部分を検出するための方法であって、該方法は、以下:
a.配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドに特異的に結合し得るインジケーター部分に該サンプルを接触させる工程、および、
b.該インジケーター部分によりシグナルが発生されたか否かを決定し、それにより、該サンプルがCampylobacter jejuniまたはその部分を含有するか否かを検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項44】
前記インジケーター部分がさらにインタクトなCampylobacter jejuni細胞に結合し得る、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
サンプル中のCampylobacter jejuniを検出するための方法であって、該方法は、以下:
a.配列番号37〜51からなる群より選択されるポリペプチドに特異的に結合し得るインジケーター部分に該サンプルを接触させる工程であって、該インジケーター部分はさらにインタクトなCampylobacter jejuni細胞に特異的に結合し得る、工程、および、
b.該インジケーター部分によりシグナルが発生されたか否かを決定する工程により、該サンプルがCampylobacter jejuniを含有するか否かを検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項46】
前記インジケーター部分がCampylobacter jejuni細胞の外膜を通過しない、請求項43〜45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記インジケーター部分が抗体、例えば請求項28〜31のいずれかに定義した抗体からなるか、または該抗体を含む、請求項43〜46のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドまたはそのフラグメントの結合相手を同定するための方法であって、該方法は、以下:
a.配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドまたはそのフラグメントを提供する工程、
b.該ポリペプチドまたはフラグメントを推定結合相手に接触させる工程、および、
c.該推定結合相手が該ポリペプチドまたはフラグメントに結合し得るか否か決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項49】
Campylobacter jejuniに対する抗細菌活性を有する化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
a.配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドの低減されたレベルを有する感作された細胞を提供する工程、および、
b.推定抗細菌化合物に対する該細胞の感受性を、例えば増殖アッセイにより決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項50】
Campylobacter jejuniに対する抗細菌活性を有する化合物を同定するための方法であって、該方法は、以下:
a.配列番号37〜51からなる群より選択されるポリペプチドの低減されたレベルを有する感作された細胞を提供する工程、および、
b.推定抗細菌化合物に対する該細胞の感受性を例えば増殖アッセイにより決定する工程であって、該推定抗細菌化合物は、野生型のCampylobacter jejuni細胞の外膜を通過し得ない、工程、
を包含する、方法。
【請求項51】
配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドのインヒビターを同定するための方法であって、該方法は、以下:
a.配列番号1〜36からなる群より選択されるポリペプチドのレベルの異なる二つの細胞を提供する工程、
b.該細胞の推定インヒビターに対する感受性を例えば増殖アッセイにより決定する工程、および、
c.該二つの細胞が該推定インヒビターの存在により異なって影響されるか否か決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項52】
前記推定インヒビターがCampylobacter jejuni細胞の外膜を通過しない、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
配列番号37〜51のポリペプチドからなる群より選択されるポリペプチドのインヒビターを同定するための方法であって、該方法は、以下:
a.配列番号37〜51からなる群より選択されるポリペプチドのレベルの異なる二つの細胞を提供する工程、
b.該細胞の推定インヒビターに対する感受性を、例えば増殖アッセイにより決定する工程であって、該推定インヒビターはCampylobacter jejuni細胞の外膜を通過し得ない、工程、および、
c.該二つの細胞が該推定インヒビターの存在により異なって影響されるか否かを決定する工程、
を包含する、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図3−3】
image rotate

【図3−4】
image rotate

【図3−5】
image rotate

【図3−6】
image rotate

【図3−7】
image rotate

【図3−8】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図4−3】
image rotate

【図4−4】
image rotate

【図4−5】
image rotate

【図4−6】
image rotate

【図4−7】
image rotate

【図4−8】
image rotate

【図4−9】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2008−501625(P2008−501625A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540171(P2006−540171)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/DK2004/000803
【国際公開番号】WO2005/049641
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(505457190)
【Fターム(参考)】