説明

表層地盤改良工法の品質管理方法

【課題】簡易且つ安価に実際の建築現場の表層改良地盤の強度を推定でき、これに基づいて品質管理することができる表層地盤改良工法の品質管理方法を提供する。
【解決手段】改良土4を採取してモールド1に詰めて加圧し7日養生して製作した品質管理用供試体の強度を計測し、関係式に基づいて、品質管理用供試体の強度から28日間養生しコア採取した供試体の強度を推定するものであって、関係式は材齢期間を補正する係数である比率α、建設現場で混合攪拌し養生した供試体と室内で混合攪拌し標準養生した供試体との強度差を補正する係数である比率β、コア採取した供試体との強度差を補正する係数である比率γを用いる数式である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、固化材を用いて行う表層地盤改良工法の品質管理方法に関し、詳しくは、固化材を用いて改良した表層地盤の強度品質の管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表層地盤改良工法においては、まず地盤改良を行う改良区域を定め、次に、改良区域内の表層をすきとり、その上に固化材を散布する。そして、改良区域内の改良すべき深度までの土砂と固化材とを混合攪拌する。その後、例えばクローラショベル等で改良区域内を踏み固め、例えば28日間養生を行う。
【0003】
従来、このような表層地盤改良工法の品質管理方法としては、平板載荷試験を行い表層地盤が設計強度を満足しているかどうか確認する方法や、一定期間養生した改良地盤からコア採取した供試体に対して一軸圧縮試験を行い当該供試体が設計強度に達しているか確認する方法が採用されていた。
【0004】
具体的には、平板載荷試験を行う場合には、改良地盤に載荷板を載荷し、載荷重と変形量の関係から地盤係数及び地盤の支持力を求める。また、コア採取した改良地盤に対して一軸圧縮試験を行う場合には、改良地盤からコアボーリングなどによってコアを採取し、当該コアに対して一軸圧縮試験を行い、コア採取した供試体の強度を測定する。
【0005】
しかし、上述の方法は、改良地盤の強度を比較的正確に計測することはできるものの、改良地盤の強度が設計強度を満足しているかどうかの評価は、材齢28日強度で判断するため、最低でも28日間を要し、時間が長くかかるとともに必要なコストが大きくなる。また、改良地盤への石の混入度合いや土質によってはコア採取することが困難な場合も多く、さらに、コア採取にはある程度の熟練が必要であった。
【0006】
そこで、住宅等の小規模な建築工事においては、より簡単且つ安価な表層地盤改良工法の品質管理方法として、混合攪拌された土砂と固化材との混合物を養生する前に採取して、円筒形のモールドに詰めて圧縮した後養生を行って供試体を製作し、製作された供試体に対して一軸圧縮試験を行い、供試体が設計強度に達しているか確認する方法が採用されている。
【0007】
このようなモールドに詰めて製作した供試体を用いて表層地盤改良工法の品質管理方法においては、設計強度を満足するか否かを評価する基準となる期間よりも短い期間養生を行った供試体強度に予め求められた補正係数を乗じることで、基準期間経過後の供試体強度を推定する方法が種々提案されている(例えば特許文献1、2)。
【0008】
【特許文献1】特開2000−346768号公報
【特許文献2】特開2004−44327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上述のような表層地盤改良工法の品質管理方法を用いると、モールドに詰めて製作した供試体の強度は把握できるものの、実際の表層改良した地盤の強度そのものを把握することはできない。実際の建築現場の表層改良地盤の強度は、養生日数以外にも様々な要因によって左右されるものであるので正確な改良地盤の強度を把握できないという問題がある。
【0010】
そこで本発明は、簡易且つ安価に実際の建築現場の表層改良地盤の強度を正確に推定でき、これに基づいて品質管理することができる表層地盤改良工法の品質管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、請求項1記載の表層地盤改良工法の品質管理方法は、表層地盤改良工法における改良土を採取してモールドに詰めて加圧し、基準材齢期間よりも短い弱材齢期間養生を施して製作した品質管理用供試体の強度を計測し、予め統計的に算出した係数を用いる関係式に基づいて、前記品質管理用供試体の強度から前記基準材齢期間養生を行いコア採取した供試体の強度を推定する表層地盤改良工法の品質管理方法であって、前記係数は、改良区域内に固化材を散布し、前記改良区域内の所定深度までの土砂と前記固化材とを混合攪拌して形成した改良土を採取し、前記改良土を所定のモールドに詰めて加圧し、前記弱材齢期間室内空中養生して製作した第1の供試体強度に対する、前記改良土を採取して、前記改良土を所定のモールドに詰めて加圧し、前記基準材齢期間室内空中養生して製作した第2の供試体の強度の比率αと、前記第2の供試体の強度に対する、所定条件の室内で土砂と前記固化材とを混合攪拌して得られた改良土を所定のモールドに詰めて加圧し、前記基準材齢期間標準養生して製作した第3の供試体の強度の比率βと、前記第3の供試体の強度に対する、前記改良区域内の所定深度まで土砂と前記固化材とを混合攪拌し、締め固め、前記基準材齢期間養生を行った後、コア採取した第4の供試体の強度の比率γと、であって、前記関係式は、前記品質管理用供試体の強度をAとし、前記基準材齢期間養生を行いコア採取した供試体強度をBとしたときに、数式A×α×β×γ=Bで表されることを特徴としている。
【0012】
請求項2記載の表層地盤改良工法の品質管理方法は、請求項1に記載の表層地盤改良工法の品質管理方法において、前記係数αは、2から1までの範囲内の数値であって、前記係数βは、3から1までの範囲内の数値であって、前記係数γは、0.3から0.7までの範囲内の数値であることを特徴としている。
【0013】
請求項3記載の表層地盤改良工法の品質管理方法は、請求項1又は請求項2に記載の表層地盤改良工法の品質管理方法において、前記基準材齢期間は28日であるときに、前記弱材齢期間は7日であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の表層地盤改良工法の品質管理方法によれば、改良区域内に固化材を散布し、前記改良区域内の所定深度までの土砂と前記固化材とを混合攪拌して形成した改良土を採取し、前記改良土を所定のモールドに詰めて加圧し、前記弱材齢期間室内空中養生して製作した第1の供試体強度に対する、前記改良土を採取して、前記改良土を所定のモールドに詰めて加圧し、前記基準材齢期間室内空中養生して製作した第2の供試体の強度の比率αを用いることで、弱材齢期間養生した供試体の強度と基準材齢期間養生した供試体の強度との差を補正することができる。
【0015】
そして、改良土を採取して、前記改良土を所定のモールドに詰めて加圧し、前記基準材齢期間室内空中養生して製作した第2の供試体の強度に対する、所定条件の室内で土砂と前記固化材とを混合攪拌して得られた改良土を所定のモールドに詰めて加圧し、前記基準材齢期間標準養生して製作した第3の供試体の強度の比率βを用いることで、建設現場で混合攪拌を行い室内空中養生した供試体の強度と、所定条件の室内で混合攪拌を行い標準養生した供試体の強度との差を補正することができる。
【0016】
さらに、所定条件の室内で土砂と前記固化材とを混合攪拌して得られた改良土を所定のモールドに詰めて加圧し、前記基準材齢期間標準養生して製作した第3の供試体の強度に対する、前記改良区域内の所定深度まで土砂と前記固化材とを混合攪拌し、締め固め、前記基準材齢期間養生を行った後、コア採取した第4の供試体の強度の比率γを用いることで、所定条件の室内で混合攪拌を行い標準養生した供試体の強度とコア採取した供試体の強度との差を補正することができる。
【0017】
そして、表層地盤改良工法における改良土を採取してモールドに詰めて加圧し、基準材齢期間よりも短い弱材齢期間養生を施して製作した品質管理用供試体の強度を計測し、計測した強度に比率α、比率β、及び比率γを乗じることで、前記品質管理用供試体の強度から前記基準材齢期間養生を行いコア採取した供試体の強度を推定するので、基準材齢期間よりも短い弱材齢期間で改良された表層地盤の強度品質を評価することができる。また、改良土をモールドに詰めて加圧するという比較的簡易な方法を用いて、コア採取するという比較的困難且つ高コストの手法を用いた場合と同等の供試体強度を推定することができる。コア採取した供試体の強度は、改良土をモールドに詰めて加圧して作製した供試体の強度に比べて、実際に表層地盤改良工法により改良した地盤の強度に近いものとなるので、このような方法で品質管理を行うことで、比較的簡易、短期間、且つ低コストで、信頼性の高い品質管理を行うことができるという利点がある。
【0018】
請求項2記載の表層地盤改良工法の品質管理方法によれば、前記係数αは、2から1までの範囲内の数値であって、前記係数βは、3から1までの範囲内の数値であって、前記係数γは、0.3から0.7までの範囲内の数値であり、これらの数値は統計的に算出された信頼度の高い数値であるので、これらの数値に基づいて好適に品質管理することができる。
【0019】
請求項3記載の表層地盤改良工法の品質管理方法によれば、コア採取による検査の基準となる養生日数である28日よりも極めて短い期間である7日間で改良された地盤の強度を評価することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の表層地盤改良工法の品質管理方法の最良の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。まず、図1を参照しつつ、本実施形態の表層地盤改良工法の品質管理方法の概要について説明する。表層地盤改良工法の品質管理方法は、まず、建設現場で固化材と土砂とを混合攪拌して得られた改良土をモールド1に詰めて突固める。そして、設計強度の基準となる基準材齢期間よりも短い弱材齢期間として、7日間養生して品質管理用供試体を作製する。そして、作製した品質管理用供試体に対して、一軸圧縮試験を実施し、品質管理用供試体の一軸圧縮強さを求める。その後、求められた品質管理用供試体の一軸圧縮強さに予め統計的に算出した係数である比率α、比率β、及び比率γを乗じて、建設現場で実際に表層改良され、28日間養生した地盤(以下、改良地盤という)の強度を推定する。そして、推定された強度が設計基準強度を満たすものであるか否か判断することにより、表層地盤改良工法の品質管理を行うものである。
【0021】
本実施形態においては、品質管理用供試体の養生日数、すなわち弱材齢期間を7日とし、改良地盤の養生日数、すなわち基準材齢期間を28日としている。土砂に固化材を混入攪拌した場合の材齢に対する強度発現率をグラフで表すと、図2に示すように、材齢側の軸(X軸)を対数とする片対数グラフで表すことができる。このグラフによると、材齢28日の強度発現率を100パーセントとしたときの材齢7日の強度発現率は70パーセントを超える。したがって、養生日数を7日間取ることで、材齢28日の場合の強度との誤差を30パーセント未満に抑えることができ、さらに、比率αを用いて補正することで、養生日数の差による強度の誤差を小さくすることができる。なお、品質管理用供試体の養生日数は7日に限られるものではなく、統計的に補正することで材齢28日の強度を推定することができる場合には、より短い期間とすることもできる。
【0022】
品質管理用供試体を作製するときには、図3に示すように、まず、建築現場の表層地盤を改良べき改良区域を確定させる(S100)。すなわち、建物を建設する上で表層地盤に十分な強度が必要な区域を確定させる。そして、改良区域内の表層の土砂を一定量すきとる(S102)。ここで、すきとる土砂は、この後表層地盤改良のために散布する固化材の量とほぼ等しくなるようにする。次に、改良区域に固化材を散布する(S104)。ここで固化材は、例えばセメント系固化材が用いられるが、表層地盤の改良に用いることができる他の固化材を用いてもよい。また、固化材は粉体のもの又はスラリー状のものを用いることもでき、改良区域の土砂の性質等に応じて選択される。改良区域に固化材が散布されると、次に、例えばバックホーを用いて、固化材と土砂とを十分に混合攪拌する(S106)。そして、固化材と土砂との混合物である改良土を採取する(S108)。このとき採取する改良土は、改良区域内の互いに離れた3箇所からそれぞれ採取する。その後、採取した改良土を9.5ミリメートルのふるいにかける(S110)。
【0023】
次に、以上のようにして製作された改良土をモールド1に詰めて、突き固める作業を行う(S112)。モールド1に改良土4を詰めて突き固める作業は、3箇所から採取した改良土4毎にそれぞれ行う。ここでモールド1は、図4に示すように、内径5センチメートルで、高さ10センチメートルの円筒形のものが用いられる。また、突き固め作業に用いるランマー2は、図5に示すように、質量1.5キログラムのハンマー21を少なくとも高さ20センチメートルから落下させることができるようにガイド22に案内させたものである。また、モールド1の上層においてランマー2を落下させるときに、ランマー2の位置を固定させるために、モールド1の外径とほぼ同じ内径を有する円筒形のカラー3が用いられる。
【0024】
改良土4をモールド1に詰めて、突き固める作業は、図6に示すように、まず、突き固めた後に改良土4の高さがモールド1の高さのほぼ3分の1となるように、調整しつつ改良土4をモールド1に詰める。そして、ランマー2を用いて、高さ20センチメートルからハンマー21を自由落下させる作業を12回繰り返す。その後、改良土の上面にへらなどで刻みを付ける。そして次に、モールド1の高さのほぼ3分の1まで突き固められた改良土の上から、更に突き固めたときにモールド1の高さのほぼ3分の2となるように改良土を詰める。そして、ランマー2を用いて、高さ20センチメートルからハンマー21を自由落下させる作業を12回繰り返す。その後、改良土の上面にへらなどで刻みを付ける。そして次に、モールド1の上方にカラー3を取り付ける。その後、モールド1の3分の2の高さまで突き固められた改良土の上から、突き固められたときにモールド1の高さとほぼ等しくなるように改良土4を詰めて、ランマー2を用いて、高さ20センチメートルからハンマー21を自由落下させる作業を12回繰り返す。そして、カラー3をモールド1から取り外し、改良土の上面が平坦になるように余分な改良土をへらで削り取る。そして、砂粒などのために改良土4の上面にできた穴に改良土4の細粒分で埋め、モールド1の上縁とモールド1に詰めた改良土4の上面とが同じ高さになるように仕上げる。
【0025】
そして、次にステップS112でモールド1に詰め固められた改良土4を養生する作業を行う(S114)。具体的には、改良土4の上面にポリエチレンフィルムなどを被せ、輪ゴムなどで密封して乾燥を防ぎ、直射日光の当たらない室内で7日間の空中養生を行い、品質管理用供試体の製作工程を終了する。このような、工程を経て品質管理用供試体を製作することで、作業者の違いにより強度に誤差が生じることを防ぐことができる。
【0026】
そして、以上のようにして、製作された品質管理用供試体に対して一軸圧縮試験を行う。一軸圧縮試験は、例えばJIS A1216(JGS 0511)に準拠して行い、前述の製作工程を経て得られた3つの品質管理用供試体それぞれについて行う。そして、それぞれの値を品質管理用供試体の強度として採用する。
【0027】
次に、比率α、比率β、及び比率γについて説明する。各比率は、それぞれの条件にしたがって製作された第1の供試体、第2の供試体、第3の供試体、及び第4の供試体の一軸圧縮強さのデータを蓄積し、それぞれのデータに基づいて、統計的に算出される係数である。
【0028】
第1の供試体は、前述の品質管理用供試体と同一の製作工程を経て得られた供試体であり、第2の供試体は、養生期間を28日間とする以外は、第1の供試体と同一の製作工程を経て得られた供試体である。そして、同一の建築現場から採取された改良土を用いて製作された第1の供試体及び第2の供試体に対してそれぞれ一軸圧縮試験を行う。比率αは、第1の供試体の一軸圧縮強さに対する第2の供試体の一軸圧縮強さの比率を統計的に算出した係数である。したがって、7日間養生された品質管理用供試体の一軸圧縮強さに比率αを乗じると、28日間養生して作製した供試体の一軸圧縮強さを推定することができる。
【0029】
第1の供試体の一軸圧縮強さ及び第2の供試体の一軸圧縮強さのデータを複数蓄積した散布図を図7に示す。また、この散布図のデータを数値化したものを表1に示す。図7の散布図は、横軸を第1の供試体の一軸圧縮強さとし、縦軸を第2の供試体の一軸圧縮強さとして、それぞれのデータを点で表したものである。このデータによると、第1の供試体の一軸圧縮強さに対する第2の供試体の一軸圧縮強さの比率の最小値は0.96であり、最大値は2.1である。特に、殆どの数値が1〜2の範囲内である。このことから比率αの値としては1から2の範囲内の値であることが好ましい。また、第1の供試体の一軸圧縮強さに対する第2の供試体の一軸圧縮強さの比率の平均値は1.37である。そこで、比率αの値としては、値1.37の少数点以下2桁を切り捨てた値である1.3が最も好ましい。
【表1】

【0030】
第3の供試体は、建築現場の改良区域内の土砂を採取して所定条件の室内で固化材と混合攪拌したものである。具体的には建築現場の改良区域内で固化材を散布する前の土砂を採取し、9.5ミリメートルのふるいにかけた後、例えば室温が摂氏20度の室内で土砂に固化材を添加して、例えばソイルミキサなどのミキサを用いて均一になるまで十分に混合攪拌して、改良土を得る。そして、前述の品質管理用供試体と同一の方法で、モールド1に改良土を詰めて突き固める。そして、温度23度から17度の範囲内で、且つ湿度95パーセント以上の恒温恒湿槽内又はこれに準じる環境で28日間標準養生して、第3の供試体を得る。
【0031】
第3の供試体は、上述のように、第2の供試体に比べて土砂と固化材との混合攪拌が十分に行われており、また、より適切な条件で養生するので、第2の供試体よりも高い強度を発現し易い。比率βは、第2の供試体の一軸圧縮強さに対する第3の供試体の一軸圧縮強さの比率を統計的に算出した数値である。したがって、品質管理用供試体の一軸圧縮強さに比率αを乗じた値に比率βを乗じることで、所定条件下の室内で、固化材と土砂とを混合攪拌し、28日間標準養生した供試体の一軸圧縮強さを推定することができる。
【0032】
第2の供試体の一軸圧縮強さ及び第3の供試体の一軸圧縮強さのデータを複数蓄積した散布図を図8に示す。また、この散布図のデータを数値化したものを表2に示す。図8の散布図は、横軸を第2の供試体の一軸圧縮強さとし、縦軸を第3の供試体の一軸圧縮強さとして、それぞれのデータを点で表したものである。このデータによると、第2の供試体の一軸圧縮強さに対する第3の供試体の一軸圧縮強さの比率の最小値は0.41であり、最大値は6.54である。そして、多くのデータの値は、1〜3の範囲内にある。このことから、比率βの値としては、1から3の範囲内の値であることが好ましい。また、第2の供試体の一軸圧縮強さに対する第3の供試体の一軸圧縮強さの比率の平均値は2.03である。したがって、比率βの値としては、値2.03の小数点以下2桁を切り捨てた値である2が最も好ましい。
【表2】

【0033】
第4の供試体は、建設現場において改良区域内の土砂に固化材を混合攪拌し、そのまま地盤を締め固めて28日間養生して表層地盤の改良を完了するものである。そして、改良された地盤からコアボーリングなどにより直径5センチメートルで高さ10センチメートルの円柱状の第4の供試体を得る。第4の供試体は、実際に改良された地盤からコアボーリングにより抽出した供試体であるので、実際の改良地盤とほぼ同一の一軸圧縮強さを有することになる。
【0034】
そして、比率γは、第3の供試体の一軸圧縮強さに対する第4の供試体の一軸圧縮強さの比率を統計的に算出した係数である。したがって、品質管理用供試体の一軸圧縮強さに比率α、及び比率βを乗じた値に、さらに、比率γを乗じることで、実際の建築現場において固化材を用いて表層改良された改良地盤をコアボーリングして得られた供試体の一軸圧縮強さを推定することができる。
【0035】
なお、標準的な条件の室内で十分に混合攪拌した改良土4をモールド1に詰めて突き固め28日間標準養生した供試体の一軸圧縮強さに対する改良地盤をコアボーリングして得られた供試体の一軸圧縮強さの比率は、例えばセメント協会発行の「セメント系固化材による地盤改良マニュアル」等に示されるように、0.3から0.7の範囲内であることが知られている。したがって、比率γの値としては、0.3から0.7までの範囲内であることが好ましい。より好ましくは、最も安全な値となる0.3であることが好ましい。
【0036】
このように、比率α、比率β、及び比率γを用いることで、建設現場で固化材と土砂とを混合攪拌して得られた改良土をモールド1に詰めて突固めるという比較的簡易な方法で作製され、7日間という比較的短い期間養生した品質管理用供試体の一軸圧縮強さに基づいて、建築現場において表層改良された改良地盤をコアボーリングして得られた供試体の一軸圧縮強さを推定することができるので、簡易かつ短期間により正確なデータに基づいて、表層地盤改良工法の品質管理を行うことができる。
【0037】
具体的に表層地盤改良工法の品質管理を行う場合、例えば、建物の建設に必要な表層地盤の設計上の一軸圧縮強さが150kN/mであるときに、品質管理用供試体に必要な一軸圧縮強さ(kN/m)は、150×1/(比率α×比率β×比率γ)で表すことができる。この場合に、例えば、比率αの値を「1.3」、比率βの値を「2」、比率γの値を「0.3」とすると、150×1/(1.3×2×0.3)=192.3となる。そこで繰上げを行い、3本の品質管理用供試体の一軸圧縮強さがそれぞれ200kN/m以上である場合に表層地盤の設計上の一軸圧縮強さが設計基準を満たすものとして品質管理することができる。
【0038】
なお、本発明の実施の形態は上述の形態に限ることなく、本発明の思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の表層地盤改良工法の品質管理方法は、表層地盤改良工法における強度品質の管理に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態の表層地盤改良工法の品質管理方法の概要を示す図
【図2】材齢と強度発現率との関係を示す片対数グラフ
【図3】品質管理用供試体の製作方法を示す図
【図4】モールド及びカラーを示す斜視図
【図5】ランマーを示す断面図
【図6】改良土をモールドに詰めて突き固める作業工程を示す図
【図7】第1の供試体と第2の供試体との一軸圧縮強さの関係を示す散布図
【図8】第2の供試体と第3の供試体との一軸圧縮強さの関係を示す散布図
【符号の説明】
【0041】
1 モールド
4 改良土

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層地盤改良工法における改良土を採取してモールドに詰めて加圧し、基準材齢期間よりも短い弱材齢期間養生を施して製作した品質管理用供試体の強度を計測し、
予め統計的に算出した係数を用いる関係式に基づいて、前記品質管理用供試体の強度から前記基準材齢期間養生を行いコア採取した供試体の強度を推定する表層地盤改良工法の品質管理方法であって、
前記係数は、
改良区域内に固化材を散布し、前記改良区域内の所定深度までの土砂と前記固化材とを混合攪拌して形成した改良土を採取し、前記改良土を所定のモールドに詰めて加圧し、前記弱材齢期間室内空中養生して製作した第1の供試体強度に対する、
前記改良土を採取して、前記改良土を所定のモールドに詰めて加圧し、前記基準材齢期間室内空中養生して製作した第2の供試体の強度の比率αと、
前記第2の供試体の強度に対する、
所定条件の室内で土砂と前記固化材とを混合攪拌して得られた改良土を所定のモールドに詰めて加圧し、前記基準材齢期間標準養生して製作した第3の供試体の強度の比率βと、
前記第3の供試体の強度に対する、
前記改良区域内の所定深度まで土砂と前記固化材とを混合攪拌し、締め固め、前記基準材齢期間養生を行った後、コア採取した第4の供試体の強度の比率γと、であって、
前記関係式は、
前記品質管理用供試体の強度をAとし、
前記基準材齢期間養生を行いコア採取した供試体強度をBとしたときに、以下の数式で表されることを特徴とする表層地盤改良工法の品質管理方法。
〔数1〕
A×α×β×γ=B
【請求項2】
前記係数αは、2から1までの範囲内の数値であって、
前記係数βは、3から1までの範囲内の数値であって、
前記係数γは、0.3から0.7までの範囲内の数値である
ことを特徴とする請求項1に記載の表層地盤改良工法の品質管理方法。
【請求項3】
前記基準材齢期間は28日であるときに、前記弱材齢期間は7日であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の表層地盤改良工法の品質管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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