説明

表皮のピンホール検査装置

【課題】 車両用内装品の表皮に形成されるピンホールを精度よく検査することができ、しかも製造費が安価である表皮の検査装置を提供する。
【解決手段】 表皮の検査装置を装着部材20と光源30とによって構成する。装着部材20は、検査対象たる表皮を有する車両用内装品の芯材2を利用して構成する。つまり、芯材2の両端部を切り落としたものを装着部材20とする。光源30は、芯材2の切り落とされた端部と対向するようにして装着部材20の背面側に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両用内装品の表皮にピンホールがあるか否かを検査するための表皮のピンホール検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、樹脂の成形品には、成形不良によってピンホールが発生することがある。そのようなピンホールの有無を検査する場合には、成形品の一方の側に光源を配置し、他方の側に受光手段を配置する。そして、光源から出射された検査光を受光手段が受光するか否かによって成形品にピンホールが有るか否かを検出している(特許文献1参照)。
【0003】
このような検査方法は、芯材とこの芯材を覆う表皮とを有する車両用内装品の表皮の検査にも採用されている。通常、表皮の検査に際しては、表皮を手で持ち、ピンホールが形成される危険性のある箇所を光源にかざす。そして、表皮を通過する光が有るか否かを目視することにより、ピンホールの有無を確認している。
【0004】
【特許文献1】特開2002−310924
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表皮を手でもってピンホールの検査を行う場合には、表皮を皺が寄らないように適切に保持しないとピンホールが押し潰されるおそれがある。ピンホールが押し潰されると、検査孔が表皮を通過しないため、ピンホールを有する表皮が正常品として検査を通過してしまう。この結果、検査精度が低下してしまう。また、ピンホールが形成される危険性のある箇所は、表皮に複数あることが多く、そのような場合には、表皮を何度も持ち替えながら検査を行わなければならず、作業者に多大の労力を強いるとともに、作業能率を低下させるという問題があった。
【0006】
このような問題を解決するために、本願の発明者は、当初、ピンホールの検査に際し表皮を装着部材に装着することを考えた。ところが、そのようにするためには検査すべき車両用内装品毎に専用の装着部材を作製しなければならず、装着部材に多大の費用を要するという問題あった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記の問題を解決するために、芯材とこの芯材の表面を覆う表皮とを有する車両用内装品の上記表皮にピンホールがあるか否かを検査するための検査装置であって、表面部に上記表皮が装着される装着部材と、この装着部材の背面側に配置された光源とを備え、上記装着部材として上記表皮の検査対象部位に対応する箇所に切欠き部が形成された芯材が用いられ、上記光源が上記切欠き部と対向するように配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
上記特徴構成を有するこの発明によれば、表皮の検査に際しては表皮を装着部材に装着するだけでよく、表皮を持ち替える必要がない。したがって、作業者の労力を軽減することができるとともに、作業能率を向上させることができる。また、検査すべき表皮が取付けられる芯材によって装着部材が構成されているから、表皮をほぼ本来の形状通りに保持することができる。したがって、ピンホールが潰されるようなことがなく、ピンホールを確実に検出することができる。また、芯材を利用して装着部材を作製しているので、装着部材に要する費用を低減することができ、ひいては検査装置の製造費を安価に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1〜図3は、この発明に係る表皮の検査装置によってピンホールの有無が検査される表皮を有するインストルメントパネル(車両用内装品)1を示す。勿論、この発明に係る表皮のピンホール検査装置は、ドアトリム等のインストルメントパネル1以外の車両用内装品の表皮の検査にも採用することができる。インストルメントパネル1は、横向きの略「U」字状をなす前板部1aと、この前板部1aの左右両側部にそれぞれ形成され側板部1b,1bを有している。側板部1bは、前板部1aに沿って延びており、前板部1aからインストルメントパネル1の背面側に突出している
【0010】
インストルメントパネル1は、芯材2と表皮3とによって構成されている。芯材2は、樹脂を成形してなるものであり、インストルメントパネル1全体を一定の形状に維持するだけの剛性を有している。この芯材2によってインストルメントパネル1の背面側部分が構成されている。したがって、芯材2は、インストルメントパネル1の前板部1a及び側板部1b、1bに対応する前板部2a及び側板部2b,2bを有している。一方、表皮3は、真空成形法等によって成形されており、適度の柔軟性を有している。表皮3は、芯材2の表面に固着され、インストルメントパネル1の表面側部分を構成している。したがって、表皮3も、インストルメントパネル1の前板部1a及び側板部1b、1bに対応した前板部3a及び側板部3b、3bを有している。
【0011】
表皮3は、その厚さが比較的薄い。このため、表皮3には樹脂を成形する際にピンホールが形成される危険性がある。ピンホールが形成される危険性は、表皮3全体にわたって均一なものではなく、前板部3aと側板部2b,2bとの各交差部において危険性が高い。特に、前板部3aと側板部2bとの交差部の中央部(Y円及びZ円で囲む部分)において危険性が高くなっている。その他の部分は、ピンホールが形成される危険性がほとんどない。したがって、表皮3についてピンホールの有無を検査する場合には、前板部3aと側板部3bとの交差部を検査すれば十分である。
【0012】
次に、上記インストルメントパネル1の表皮3にピンホールが有るか否かを検査するための検査装置について説明すると、図4〜図6に示すように、表皮3のピンホール検査装置10は、装着部材20と光源30とを有している。
【0013】
装着部材20は、その表面21側の部分(表面部)に表皮3が装着されるものであり、基台(図示せず)に設置されている。装着部材20は、インストルメントパネル1の芯材2の一部を切り欠くことによって構成されている。芯材2の切り欠かれるべき一部は、表皮3のピンホールが形成される危険性がある箇所に対応する部位である。上記のように、表皮3においてピンホールが形成される危険性があるのは、前板部3aと側板部3bとの交差部である。そこで、この実施の形態では、芯材2の左右の両端部が切り欠かれており(図4及び図5において、切り欠かれた左端部が想像線で示されている。右端部は省略されている。)、それによって装着部20が構成されている。
【0014】
なお、表皮3において、ピンホールが形成される危険性がある箇所が前板部3aと側板部3bとの交差部以外の箇所であるときには、芯材2の当該箇所に対応する部位が切り欠かれる。また、ピンホールが形成される危険性が、前板部3aと側板部3bとの交差部全体ではなく、中央部にだけ危険性があるような場合には、図7に示すように、芯材2の前板部2aと側板部2bとの交差部の中央部にだけ切欠き部22を形成してもよい。
【0015】
光源30は、装着部材20に装着された表皮3のうち、芯材2の切り欠かれた部分に対応する部位に検査光を照射するためのものである。そこで、光源30は、芯材2の切欠き部と対向するようにして装着部材20の背面側に配置されている。したがって、光源30は、装着部材20の両端側にそれぞれ配置されている。勿論、切り欠かれた部分が芯材2の両端部以外にも存在する場合には、その切欠き部に対向するように他の光源30が配置される。光源30としてこの実施の形態では白熱電球が用いられているが、他の発光手段を用いてもよい。
【0016】
上記構成の検査装置10を用いて表皮3にピンホールが有るか否かを検査する場合には、まず装着部材20の表面21側部分に表皮3を装着する。装着部材20への表皮3の装着が完了したら、光源30を点灯する。すると、表皮3にピンホールがある場合には、光源30から出射された検査光がピンホール通過して装着部材20の表面側へ漏れ出る。この漏れ出た光を目視することにより、表皮3にピンホールがあることを確認することができる。表皮3にピンホールがない場合には、光源からの検査光が表皮3によって遮られるので検査光を目視することがない。これにより、ピンホールがないことを確認することができる。
【0017】
上記ピンホールの検査装置によれば、表皮3を装着部材20に装着しているので、ピンホールの検査時には作業者が表皮3を手で持つ必要がない。まして、表皮3を持ち替える必要がない。したがって、作業者の疲労を軽減することができるとともに、検査能率を向上させることができる。また、装着部材20が芯材2を利用して構成されているので、検査装置の製造費を安価に抑えることができる。しかも、装着部材20は、表皮3を皺がよったりすることなく、本来の形状通りに保持することができる。したがって、ピンホールが押し潰されるような事態を未然に防止することができる。よって、検査精度を向上させることができる。
【0018】
なお、この発明は、上記の実施の形態に限定されるものでなく、その要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
例えば、上記の実施の形態は、芯材2に表皮3が直接設けられるインストルメントパネル(内装品)の表皮3を検査対象としているが、表皮が芯材にフォーム層を介して設けられる内装品の表皮にも適用可能である。その場合には、芯材にフォーム層を固着するとともに、表皮のピンホールが形成される箇所に対応する芯材及びフォーム層の各部位を切り欠いたものを装着部材とすればよい。
また、上記の実施の形態では、光源から発せられた検査光を目で確認するようになっているが、装着部材20の表面21側に受光手段を光源30と対向するようにして配置するとともに、この受光手段がピンホールから漏れ出た検査光を検知したときに警告を発する警告手段を設け、警告手段による警告の有無によってピンホールが有るか否かを確認するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明に係る表皮の検査装置が検査対象とする表皮を有するインストルメントパネルの一例を示す斜視図である。
【図2】図1のX−X線に沿う断面図である。
【図3】図1のY円部の拡大平断面図である。
【図4】この発明に係る表皮の検査装置の一実施の形態の概略構成を示す斜視図である。
【図5】同実施の形態の平断面図である。
【図6】図5のX−X線に沿う断面図である。
【図7】装着部材の他の例の一部を要部を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 インストルメントパネル(車両用内装品)
2 芯材
3 表皮
10 表皮のピンホール検査装置
20 装着部材
21 切欠き部
30 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材とこの芯材の表面を覆う表皮とを有する車両用内装品の上記表皮にピンホールがあるか否かを検査するための検査装置であって、
表面部に上記表皮が装着される装着部材と、この装着部材の背面側に配置された光源とを備え、上記装着部材として上記表皮の検査対象部位に対応する箇所に切欠き部が形成された芯材が用いられ、上記光源が上記切欠き部と対向するように配置されていることを特徴とする表皮のピンホール検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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