説明

表皮ブドウ球菌抗原

本発明は、表皮ブドウ球菌由来の過免疫血清反応性抗原またはその断片をコードする単離核酸分子および過免疫血清反応性抗原またはその断片、かかる抗原の単離方法およびその特定の用途を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮ブドウ球菌によって起こる細菌感染症の予防および治療のための医薬品の調製における使用に好適な、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)の抗原をコードする単離核酸分子に関する。
【背景技術】
【0002】
ブドウ球菌(Staphylococci)は、軽度の感染から生命を脅かす疾患にわたる疾病をもたらしうる日和見性の病原菌である。多数のブドウ球菌のうち、少なくとも3種類は一般にヒト疾患に関連している: 黄色ブドウ球菌(S.aureus)、表皮ブドウ球菌(S.epidermidis)およびまれにS. saprophyticus である(Crossley、K.B. and Archer G.L、eds. (1997). The Staphylococci in Human Disease. Churchill Livingston Inc.)。ブドウ球菌感染は全世界の病院においてますます脅威を与えている。ブドウ球菌の出現と疾患を引き起こす能力は抗生物質の広範な使用に関係しており、抗生物質の使用により、多剤耐性が次から次へと誘導される。黄色ブドウ球菌と表皮ブドウ球菌はともに多くの一般に用いられている抗生物質、もっとも重要にはメチシリン (MRSA)およびバンコマイシン(VISA)に対して耐性となってきた。薬物耐性は公衆衛生の観点からますます重要となっており、ブドウ球菌によって起こる感染症の多くはすぐに抗生物質で治療できなくなりうる。公衆衛生に対するその有害作用に加えて、抗菌薬耐性は保健医療のコストを高くする。というのは、抵抗性感染症の治療にはしばしば、より毒性でより高価な薬物の使用が必要であり、感染した患者の入院期間を長引かせる結果となりうるからである。さらに、有効な抗生物質の力を借りても、もっとも重篤なブドウ球菌感染の死亡率は30-50%である。
【0003】
すべてのヒトには表皮ブドウ球菌が定着している。表皮ブドウ球菌の通常の生息部位は皮膚と粘膜である。一般に、鼻部の確立した細菌叢は新しい株の定着を防ぐ。しかし、感受性キャリア株の排除を導く抗生物質処置が行われた場合、その他の株による定着が起こりうる。こういった状況は病院内で起こるため、患者には耐性院内ブドウ球菌が定着するようになりうる。
【0004】
ブドウ球菌は、天然バリア(皮膚、粘膜)が破られた際に、微生物と免疫系との自然なバランスが破壊されるとすぐに潜在的に病原性となる。凝固酵素-陽性黄色ブドウ球菌はもっとも病原性の高いブドウ球菌の種であり、長い間外科医におそれられている。非常に高い頻度で、それは手術創感染を引き起こし、膿瘍の形成をもたらす。表皮ブドウ球菌は、異物の存在と装置の使用にほとんど関連する疾患を引き起こす。例えば、カテーテル関連感染、脳脊髄液シャント感染、透析患者(主にCAPD)における腹膜炎、人工弁を有する個人における心内膜炎等である。これは免疫無防備状態の個体、例えば、腫瘍患者や未熟新生児などの、凝固酵素-陰性ブドウ球菌感染が血管内装置の使用にともなってしばしば起こる個体において例証されている。発生率の上昇は、かかる装置の使用の増加および免疫無防備状態の患者数の増加と関連している。
【0005】
ブドウ球菌の病因は多因子性である。感染を開始するためには、病原菌は宿主の細胞と組織に接近、即ち付着しなければならない。付着は明らかに異物感染の開始に必須の工程であるため、表皮ブドウ球菌は外来物質への付着を促進する多くの細胞表面分子を備えており、この機構を介して宿主への感染を確立している。表皮ブドウ球菌の多くの病原性株の特徴は粘液の生産であり、その結果、バイオフィルムが形成される。粘液は主にブドウ球菌の細胞壁中に通常みられる分泌されたタイコ酸である。人工補装具の表面にバイオフィルムを形成するこの能力がこれら細菌の病原性の重要な決定因子であろう。というのはこれによって細菌の食作用が妨げられるからである。ブドウ球菌がその宿主に損傷を与えるさらなる手段は分泌産物、例えば、エンテロトキシン、外毒素、および組織損傷酵素である。これら毒素は宿主の防御に重要な免疫細胞を殺すかまたは間違った方向に導く。数種類のタイプの毒素が感染の際のほとんどの症状の原因である。
【0006】
上記理由のために、有効な予防および治療処置の必要性があるが、今日まで有効な予防または治療用ワクチンは認可されていない。抗体欠乏状態がブドウ球菌の持続に寄与することが示されており、抗-ブドウ球菌抗体が宿主防御において重要であることが示唆される。受動免疫として添加されるか活性ワクチン接種によって誘導される、表面成分に対する抗体は、細菌の付着の予防と毒素の中和、そして食作用を促進しうる。有効なワクチンは一般に待機手術が迫っている患者、そして特に血管内装置を与えられる患者にとって大きな可能性を付与する。さらに、免疫応答が低下するか持続的携帯型腹膜透析を受ける慢性疾患を患う患者はかかるワクチンによる恩恵を受けるであろう。
【0007】
ワクチンはいろいろな種類の抗原を含みうる。抗原の例としては、死んだまたは弱毒化した生物全体、これら生物/組織の細画分、タンパク質、またはそのもっとも単純な形態において、ペプチドが挙げられる。抗原はグリコシル化タンパク質またはペプチドの形態で免疫系によって認識され得、多糖または脂質を含んでいてもよい。短いペプチドも利用できる。というのは例えば、細胞障害性T細胞(CTL)は主要組織適合性遺伝子複合体 (MHC)と結合した通常8-11アミノ酸長のペプチドの短い形態における抗原を認識するからである。B-細胞は 4-5 アミノ酸といった短い直鎖状エピトープおよび三次元構造 (高次構造エピトープ)を認識することが出来る。持続性の、抗原-特異的免疫応答を得るためには、アジュバントが、必要な免疫系のすべての細胞を伴う免疫カスケードをトリガーする必要がある。第一に、アジュバントはその作用機序に限定されず、いわゆる抗原提示細胞(APC)に作用する。これら細胞は通常まず抗原に遭遇し、次いで加工されたかまたは非修飾の抗原を免疫エフェクター細胞に提示する。中間細胞タイプも関与しうる。適切な特異性を有するエフェクター細胞のみが生産的(productive)免疫応答において活性化される。アジュバントはまた、抗原および共注入されたその他の因子を局所的に保持しうる。さらに、アジュバントはその他の免疫細胞に対する化学誘引物質としても作用し得、あるいは免疫系の刺激剤として局所的および/または全身的に作用しうる。
【0008】
ワクチンを開発するアプローチは今日まで主に黄色ブドウ球菌に向けられてきた{Shinefield、H. et al.、2002}。それゆえ、表皮ブドウ球菌または優先的に両方のブドウ球菌を標的化するワクチンの開発には非常に意義があるであろう。
【0009】
本発明者らは、特定の病原菌、特に黄色ブドウ球菌および表皮ブドウ球菌からの過免疫血清反応性抗原の同定、単離および産生方法を開発した(WO 02/059148)。本発明にとって重要なことに、表皮ブドウ球菌からの抗原の同定のための血清の選択は、以前のスクリーニングに用いたものとは異なる。
【0010】
持続的腹膜透析を受ける個体は、表皮ブドウ球菌に感染した患者のもっとも重要な一群である。ブドウ球菌は優先的に透析カテーテルなどの異物を備えた患者に感染する。腹膜透析患者は主に黄色ブドウ球菌および凝固酵素陰性ブドウ球菌、特に表皮ブドウ球菌によって引き起こされる腹膜炎を患う。腹膜炎の際にヒトにおいて表皮ブドウ球菌によって発現される抗原を同定するために、ヒト血清サンプルを、長期間腹膜透析を受けており、12ヶ月以内に表皮ブドウ球菌によって引き起こされ、疾患の後期回復期にあると考えられる腹膜炎を患う患者から採取した。重篤なブドウ球菌疾患、例えば腹膜炎を患う患者が1年にわたって持続する抗体を生成することが確認された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の根底となる問題は、表皮ブドウ球菌感染症に対するワクチン等の医薬を開発する手段を提供することであった。より具体的には、問題は、該医薬の製造に有用であり得る、有効かつ関連するセットの表皮ブドウ球菌由来の核酸分子または過免疫血清反応性抗原を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
それゆえ、本発明は、以下からなる群から選択される核酸配列を含む過免疫血清反応性抗原またはその断片をコードする単離核酸分子を提供する:
a)配列番号 1、4、6-9、11-13、15、17、19、21、25-26、28-31から選択される核酸分子と少なくとも70%の配列同一性を有する核酸分子、
b) a)の核酸分子に相補的な核酸分子、
c) a)またはb)の核酸分子の少なくとも15の連続する塩基を含む核酸分子、
d) a)、b)、またはc)の核酸分子にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でアニールする核酸分子、
e)遺伝暗号の縮重がなければ、a)、b)、c)またはd)の核酸分子にハイブリダイズしうる核酸分子。
【0013】
本発明の好ましい態様によると、配列同一性は少なくとも80%、好ましくは少なくとも95%、特に100%である。
【0014】
さらに、本発明は以下からなる群から選択される核酸配列を含む過免疫血清反応性抗原またはその断片をコードする単離核酸分子を提供する:
a)配列番号 2-3、5、10、14、16、18、22-24、27から選択される核酸分子に対して少なくとも96%の配列同一性を有する核酸分子、
b) a)の核酸分子に相補的な核酸分子、
c) a)またはb)の核酸分子の少なくとも15の連続する塩基を含む核酸分子、
d) a)、b)、またはc)の核酸分子にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でアニールする核酸分子、
e)遺伝暗号の縮重がなければ、a)、b)、c)またはd)の核酸にハイブリダイズしうる核酸分子。
【0015】
別の態様によると、本発明は以下からなる群から選択される核酸配列を含む単離核酸分子を提供する:
a)配列番号 20から選択される核酸分子、
b) a)の核酸に相補的な核酸分子、
c) 遺伝暗号の縮重がなければ、a)、b)、c)またはd)の核酸にハイブリダイズしうる核酸分子。
【0016】
好ましくは、核酸分子はDNAまたはRNAである。
【0017】
本発明の好ましい態様によると、核酸分子はゲノムDNA、特に表皮ブドウ球菌ゲノムDNAから単離される。
【0018】
本発明によると、本発明のいずれかによる核酸分子を含むベクターが提供される。
【0019】
好ましい態様においてベクターは本発明による核酸分子によってコードされる過免疫血清反応性抗原またはその断片の組換え発現に適するものである。
【0020】
本発明はまた、本発明によるベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0021】
別の態様によると、本発明はさらに本発明による核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含む過免疫血清反応性抗原を提供する。
【0022】
好ましい態様において、アミノ酸配列 (ポリペプチド)は、配列番号 32、35、37-40、42-44、46、48、50、52、56-57、59-62からなる群から選択される。
【0023】
別の好ましい態様において、アミノ酸配列 (ポリペプチド)は配列番号 33-34、36、41、45、47、49、53-55、58からなる群から選択される。
【0024】
さらに好ましい態様において、アミノ酸配列 (ポリペプチド)は配列番号 51からなる群から選択される。
【0025】
さらなる態様によると、本発明は、表1の「予測免疫原性アミノ酸」および「同定された免疫原性領域の位置」の列のアミノ酸配列を含むペプチドからなる群から選択される過免疫血清反応性抗原の断片; 表2の血清反応性エピトープ、特に以下のアミノ酸を含むペプチドを提供する:配列番号 32の6-28、54-59、135-147、193-205、274-279、284-291、298-308、342-347、360-366、380-386、408-425、437-446、457-464、467-477、504-510、517-530、535-543、547-553、562-569、573-579、592-600、602-613、626-631、638-668および396-449; 配列番号 33の 5-24、101-108、111-117、128-142、170-184、205-211、252-267、308-316、329-337、345-353、360-371、375-389、393-399、413-419、429-439、446-456、471-485、495-507、541-556、582-588、592-602、607-617、622-628、630-640および 8-21; 配列番号 34の 10-20、23-33、40-45、59-65、72-107、113-119、127-136、151-161および33-59; 配列番号 35の 4-16、28-34、39-61、66-79、100-113、120-127、130-137、142-148、150-157、192-201、203-210、228-239、245-250、256-266、268-278、288-294、312-322、336-344、346-358、388-396、399-413、425-430、445-461、464-470、476-482、486-492、503-511、520-527、531-541、551-558、566-572、609-625、635-642、650-656、683-689、691-705、734-741、750-767、782-789、802-808、812-818、837-844、878-885、907-917、930-936および 913-933; 配列番号 36の 5-12、20-27、46-78、85-92、104-112、121-132、150-167、179-185、200-213、221-227、240-264、271-279、282-290、311-317 および 177-206; 配列番号 37の 18-24、31-40、45-51、89-97、100-123、127-132、139-153、164-170、184-194、200-205、215-238、244-255、257-270、272-280、289-302、312-318、338-348、356-367および132-152; 配列番号 38の7-16、39-45、73-83、90-98、118-124、130-136、194-204、269-280、320-327、373-381、389-397、403-408、424-430、436-441、463-476、487-499、507-514、527-534、540-550、571-577、593-599、620-629、641-647、650-664、697-703、708-717、729-742、773-790、794-805、821-828、830-837、839-851、858-908、910-917、938-947、965-980、1025-1033、1050-1056、1073-1081、1084-1098、1106-1120、1132-1140、1164-1170、1185-1194、1201-1208、1215-1224、1226-1234、1267-1279、1325-1331、1356-1364、1394-1411、1426-1439、1445-1461、1498-1504、1556-1561、1564-1573、1613-1639、1648-1655、1694-1714、1748-1755、1778-1785、1808-1813、1821-1827、1829-1837、1846-1852、1859-1865、1874-1883、1895-1900、1908-1913、1931-1937、1964-1981、1995-2005、2020-2033、2040-2047、2103-2109、2118-2127、2138-2144、2166-2175、2180-2187、2220-2225、2237-2242、2247-2253、2273-2281、2286-2306、2314-2320、2323-2345、2350-2355、2371-2384、2415-2424、2426-2431、2452-2472、2584-2589、2610-2621、2638-2655、2664-2670、2681-2690、2692-2714、2724-2730 および687-730; 配列番号 39の10-40、53-59、79-85、98-104、117-122、130-136、144-158、169-175、180-185、203-223、232-237、243-254、295-301 および254-292; 配列番号 40の 28-50、67-85、93-115、120-134、144-179、240-249、328-340、354-360、368-400、402-417、419-427、429-445、447-455、463-468、472-480、485-500、502-510、512-534、537-546、553-558、582-594、619-637、645-654、690-709、735-745、749-756、786-792、275-316および 378-401; 配列番号 41の 5-16、21-30、33-40、52-74、101-108、116-122、164-182、185-219、256-261、273-279、285-291、297-304、312-328、331-338、355-362、364-371、373-401、411-423 および 191-208; 配列番号 42の 34-55、67-74、85-93、105-115、138-152、161-171、182-189、197-205、213-219、232-239、241-248、250-263、272-277、288-299 および 216-231; 配列番号 43の 21-27、32-37、43-51、67-74、82-92、94-100、106-112、140-149、153-159、164-182、193-215、222-227、260-267、308-322、330-340、378-387、396-403、417-432、435-441、448-465、476-482、488-498、500-510 および 214-280;配列番号 44の 4-21、29-52、80-87、104-123、126-133、141-157、182-189、194-202、214-220、227-235、242-252 および 33-108;配列番号 45の 12-18、20-27、29-59、64-72、84-90、96-103、109-121、125-155、164-177、179-186、188-201、216-227、235-253、259-274、276-294、296-310、322-339、341-348、369-379、398-403、409-421 および 76-96; 配列番号 46の 4-15、24-41、71-80、104-111、113-119、123-130、139-149、168-178、187-200 および 4-45; 配列番号 47の 13-19、32-37、44-56 および 1-14; 配列番号 48の 6-11、16-35、75-81、95-100、126-139、206-214、225-233、241-259、268-276、319-325、339-360、371-401、435-441、452-459、462-472、491-503、505-516、549-556、567-580、590-595、612-622、624-630、642-648、656-662、687-693、698-704、706-712、736-750、768-777、784-789、812-818、847-858、894-900、922-931、938-949、967-984、986-992、1027-1032、1041-1054、1082-1088、1091-1097、1119-1124、1234-1240、1250-1258、1274-1289、1299-1305、1392-1398、1400-1405、1429-1442、1460-1474、1505-1514、1531-1537、1540-1552、1558-1571、1582-1587、1616-1623、1659-1666、1671-1677、1680-1686、1698-1704、1706-1712、1768-1774、1783-1797、1814-1819、1849-1855、1870-1876、1890-1897、1947-1953、1972-1980、1999-2013、2044-2051、2068-2084、2093-2099、2122-2131、2142-2147、2156-2163、2170-2179、2214-2220、2235-2245、2271-2281、2287-2293、2308-2317、2352-2362、2373-2378、2387-2407、2442-2448、2458-2474、2507-2516、2531-2537、2540-2551、2555-2561、2586-2599、2617-2627、2644-2649、2661-2675、2685-2692、2695-2707、2733-2739、2741-2747、2774-2783、2788-2795、2860-2870、2891-2903、2938-2947、2973-2980、2993-2999、3004-3030、3046-3059、3066-3077、3082-3088、3120-3132、3144-3149、3153-3169、3200-3212、3232-3256、3276-3290、3308-3322、3330-3338、3353-3360、3363-3371、3390-3408、3431-3447、3454-3484、3503-3515、3524-3541、3543-3550、3560-3567、3586-3599、3616-3621、3642-3647、3663-3679、213-276、579-621 および 1516-1559;配列番号 49の 19-41、43-49、55-62、67-74、114-121、130-140、188-197、208-217、226-232、265-287、292-299、301-319、372-394、400-410、421-427 および 12-56;配列番号 50の 6-12、44-51、53-60、67-88、91-100、104-123、137-142、148-158、161-168、175-201、204-210、222-231、239-253、258-264、272-282 および 60-138;配列番号 51の4-63、69-104、110-121、124-131、134-152、161-187、204-221、223-237、239-296、298-310、331-365、380-405、423-451、470-552、554-562、574-581、592-649、651-658、661-671、673-707、713-734、741-748、758-765、773-790 および 509-528;配列番号 52の 89-94、102-115、123-129、181-188、200-206、211-235、239-249、267-281、295-310、316-321、331-341、344-359、365-386、409-422、443-453、495-506、514-521、539-547、553-560、563-570、586-596、621-626、633-638、651-657、666-683、697-705、731-739、761-768、865-883 および 213-265;配列番号 53の 5-20、24-34、37-43、92-102、134-139、156-162、184-191、193-205、207-213、225-231、241-247、259-267、269-286、337-350、365-372、378-386、399-413、415-421、447-457、467-481 および 145-183;配列番号 54の 12-19、29-41、43-57、80-98、106-141、143-156、172-183、185-210、214-220、226-234、278-287 および 237-287;配列番号 55の 5-12、32-48、50-72、75-81、88-94 および 16-40; 配列番号 56の4-21、29-42、48-62、65-80、95-101、103-118、122-130、134-140、143-152、155-165、182-192、198-208、232-247、260-268、318-348、364-369、380-391、403-411、413-424 および 208-230; 配列番号 57の 4-18、65-75、82-92、123-140、144-159、166-172、188-194 および 174-195; 配列番号 58の 7-20、58-71、94-101、110-119、199-209、231-242、247-254、267-277、282-290、297-306、313-319、333-342、344-369、390-402、414-431、436-448、462-471 および 310-350; 配列番号 59の4-25、37-44、53-59、72-78、86-99、119-128、197-203、209-218、220-226、233-244、246-254、264-271、277-289、407-430、437-445、464-472、482-488、503-509 および 308-331;配列番号 60の 4-12、14-43、52-58 および 43-58; 配列番号 61の4-14、21-29、35-49 および 38-50; 配列番号 62の 4-19、31-37、58-72、94-108 および 1-72。
【0026】
本発明はまた、好適な発現系において本発明による1以上の核酸分子を発現させることを含む本発明による表皮ブドウ球菌過免疫血清反応性抗原またはその断片の産生方法も提供する。
【0027】
さらに、本発明は、本発明によるベクターによって好適な宿主細胞を形質転換または形質移入することを含む、本発明による表皮ブドウ球菌過免疫血清反応性抗原またはその断片を発現する細胞の生産方法を提供する。
【0028】
本発明によると、医薬組成物、特に、本発明の過免疫血清反応性抗原またはその断片または本発明の核酸分子を含むワクチンが提供される。
【0029】
好ましい態様において、医薬組成物はさらに、好ましくは以下を含む群から選択される免疫賦活物質を含む:ポリカチオン性ポリマー、特にポリカチオン性ペプチド、免疫賦活性デオキシヌクレオチド(ODN)、少なくとも2つのLysLeuLysモチーフを含むペプチド、特にKLKL5KLK、向神経活性化合物、特にヒト成長ホルモン、ミョウバン(alumn)、フロイント完全または不完全アジュバントまたはそれらの組み合わせ。
【0030】
より好ましい態様において、免疫賦活物質は、ポリカチオン性ポリマーと免疫賦活性デオキシヌクレオチドの組み合わせまたは少なくとも2つのLysLeuLysモチーフを含むペプチドと免疫賦活性デオキシヌクレオチドの組み合わせのいずれかである。
【0031】
より好ましい態様において、ポリカチオン性ポリマーはポリカチオン性ペプチド、特にポリアルギニンである。
【0032】
本発明によると、本発明による核酸分子または本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片の、医薬調製物の製造、特に表皮ブドウ球菌感染症に対するワクチンの製造のための使用が提供される。
【0033】
また、少なくとも本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片の選択的部分に結合する抗体、または少なくともその有効な部分が提供される。
【0034】
好ましい態様において、抗体はモノクローナル抗体である。
【0035】
別の好ましい態様において、抗体の有効な部分はFab断片を含む。
【0036】
さらに好ましい態様において、抗体はキメラ抗体である。
【0037】
より好ましい態様において、抗体はヒト化抗体である。
【0038】
本発明はまた、本発明による抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を提供する。
【0039】
さらに、本発明は以下の工程によって特徴づけられる本発明による抗体の生産方法を提供する:
本発明において規定される過免疫血清反応性抗原またはその断片を非ヒト動物に投与することにより、非ヒト動物において免疫応答を開始させる工程、
抗体を含有する体液を該動物から取り出す工程、および、
該抗体を含有する体液をさらなる精製工程に供することにより抗体を生産する工程。
【0040】
したがって、本発明はまた、以下の工程によって特徴づけられる本発明による抗体の生産方法も提供する:
本発明の過免疫血清反応性抗原またはその断片を非ヒト動物に投与することによって非ヒト動物において免疫応答を開始させる工程、
該動物から脾臓または脾臓細胞を取り出す工程、
該脾臓または脾臓細胞のハイブリドーマ細胞を作る工程、
該過免疫血清反応性抗原またはその断片に特異的なハイブリドーマ細胞を選択し、クローン化する工程、
該クローン化したハイブリドーマ細胞の培養、そして所望によりさらなる精製工程により抗体を産生する工程。
【0041】
上記方法によって提供または生産された抗体は表皮ブドウ球菌感染症の治療または予防のための医薬の調製に使用されうる。
【0042】
別の態様によると本発明は、本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片に結合するアンタゴニストを提供する。
【0043】
本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片に結合することが出来るかかるアンタゴニストは以下の工程を含む方法によって同定されうる:
a)単離または固定化された本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片を、候補アンタゴニストと、該候補アンタゴニストと該過免疫血清反応性抗原または断片の結合を可能とする条件下で、候補アンタゴニストの該過免疫血清反応性抗原またはその断片への結合に応答した検出可能なシグナルを提供できる成分の存在下で接触させる工程;および、
b)アンタゴニストの過免疫血清反応性抗原またはその断片への結合に応答して生成したシグナルの存在または不在を検出する工程。
【0044】
本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片とその相互作用パートナーとの相互作用活性を低減または阻害することができるアンタゴニストは以下の工程を含む方法によって同定されうる:
a) 本発明による過免疫血清反応性抗原またはその過免疫断片を提供する工程、
b)該過免疫血清反応性抗原またはその断片に対する相互作用パートナー、特に本発明による抗体を提供する工程、
c)該過免疫血清反応性抗原またはその断片の該相互作用パートナーとの相互作用を可能にして相互作用複合体を形成させる工程、
d)候補アンタゴニストを提供する工程、
e)候補アンタゴニストと相互作用複合体との間で競合反応を起こさせる工程、
f)過免疫血清反応性抗原またはその断片と相互作用パートナーとの相互作用活性を候補アンタゴニストが阻害または低減するかを判定する工程。
【0045】
本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片は、該過免疫血清反応性抗原またはその断片の相互作用パートナーの単離および/または精製および/または同定のために用いることが出来る。
【0046】
本発明は、本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片をコードする核酸配列の存在または本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片の存在を判定することを含む、本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片の発現に関連する疾患をインビトロで診断する方法も提供する。
【0047】
本発明はまた、本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片をコードする核酸配列の存在または本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片の存在を分析することを含む、細菌感染症、特に表皮ブドウ球菌感染症をインビトロで診断する方法も提供する。
【0048】
さらに、本発明は該過免疫血清反応性抗原またはその断片に対して結合するペプチドを作るための本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片の使用を提供し、ここでペプチドはアンチカリン(anticaline)である。
【0049】
本発明はまた、本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片の、機能的核酸の製造のための使用を提供し、ここで該機能的核酸は、アプタマーおよびスピーゲルマー(spiegelmer)を含む群から選択される。
【0050】
本発明による核酸分子はまた、機能的リボ核酸の製造のためにも使用することができ、ここで該機能的リボ核酸はリボザイム、アンチセンス核酸およびsiRNAを含む群から選択される。
【0051】
本発明は、ヒト血漿プールからの抗体の調製物および表皮ブドウ球菌のゲノム由来の表面発現ライブラリーを用いて表皮ブドウ球菌から同定された有効かつ関連するセットの単離核酸分子およびそれらにコードされる過免疫血清反応性抗原またはその断片を有利なことに提供する。したがって、本発明は表皮ブドウ球菌抗原、ワクチン、診断および抗体の調製および表皮ブドウ球菌感染症に対して有効な化合物の同定の手順において有用な産物に対する広く感じられていた要求を満たすものである。
【0052】
有効なワクチンは、すべての株によって発現され、表皮ブドウ球菌の細胞 表面成分に対する高親和性の豊富な抗体を誘導することが出来るタンパク質またはポリペプチドから構成されるべきである。抗体はオプソニン作用のためにはIgG1 および/または IgG3であるべきであり、付着および毒素作用の中和のためにはいずれかのIgG サブタイプおよびIgAであるべきである。化学的に規定されたワクチンは、全細胞ワクチン(弱毒化または死んだ)と比較して明確に優れていなければならない。というのはヒト組織と交差反応するかオプソニン作用を阻害する可能性のある表皮ブドウ球菌の成分が排除でき、保護抗体および/または保護免疫応答を誘導する個々のタンパク質を選択できるからである。
【0053】
本発明に用いられたアプローチは、ブドウ球菌タンパク質またはペプチドとヒト血清に存在する抗体との相互作用に基づく。ヒト免疫系によって表皮ブドウ球菌に対して産生され、ヒト血清中に存在する抗体は、抗原性タンパク質のインビボでの発現およびその免疫原性を示す。さらに、あらかじめ選択された血清のプールを用いて細菌表面ディスプレー発現ライブラリーによって同定された抗原性タンパク質は、個々の選択または生成された血清による第二および第三ラウンドのスクリーニングによって加工される。したがって本発明は、医薬組成物、特に表皮ブドウ球菌による感染症の予防用ワクチンとしての有効かつ関連するセットのブドウ球菌抗原を供給する。
【0054】
本発明による関連する有効なセットの抗原の同定のための抗原同定プログラムにおいて、3種類の細菌表面発現ライブラリーが血清収集物由来の血清プールによってスクリーニングされる。血清収集物は、過免疫であると考えられ、そして本発明に適用するスクリーニング方法に関連するように、表皮ブドウ球菌の抗原性化合物、例えば全細胞抽出物および培養上清タンパク質に対して試験された。ヒト免疫系によってブドウ球菌に対して産生され、ヒト血清中に存在する抗体は抗原性タンパク質のインビボ発現およびその免疫原性を示す。
【0055】
本発明に用いられる発現ライブラリーはすべての可能性のある抗原の発現を可能とするもの、例えば表皮ブドウ球菌のすべての表面タンパク質に由来するものでなければならない。細菌表面ディスプレーライブラリーは、細菌宿主膜における多数の選択された外膜タンパク質 (LamB、FhuA)上にブドウ球菌の(すべての)セットの発現するペプチド配列をディスプレーする細菌宿主の組換えライブラリーによって表される{Georgiou、G.、1997; Etz、H. et al.、2001}。組換え発現ライブラリーを用いる利点の一つは、同定された過免疫血清反応性抗原を、さらなる組換えDNA技術またはクローニング工程を必要とせずに、過免疫血清反応性抗原を発現するスクリーニングおよび選択されたクローンのコード配列の発現によってすぐに産生できることである。
【0056】
本発明による上記のプログラムによって同定された包括的なセットの抗原をさらに1以上のさらなるラウンドのスクリーニングによって分析する。それゆえ、免疫原性であると同定された選択されたペプチドに対して作られた個体の抗体調製物または抗体が用いられる。好ましい態様によると第二ラウンドのスクリーニングのための個体の抗体調製物は、ブドウ球菌による急性感染症を患ったことのある患者、特に一定の最低レベルを超える抗体力価を示す患者、例えば抗体力価が試験したヒト(患者または健康個体)血清の80 パーセンタイル、好ましくは90 パーセンタイル、特に95 パーセンタイルを超える患者に由来する。かかる高力価の個体の抗体調製物を第二スクリーニングラウンドに用いることにより、表皮ブドウ球菌からの過免疫血清反応性抗原およびその断片の選択性の非常に高い同定が可能となる。
【0057】
スクリーニング手順の後、組換えタンパク質として、またはインビトロ翻訳産物として発現した選択された抗原性タンパク質(この場合、原核発現系で発現することはできない)、または同定された抗原性ペプチド(合成により作られたもの)を、一連のELISAおよびウェスタンブロッティングアッセイによる第二スクリーニングにて試験し、大きなヒト血清収集物(> 100非感染、> 50 患者血清)を用いてその免疫原性を評価する。
【0058】
個体の抗体調製物 (選択された血清でもよい)は、第一ラウンドからのすべての有望な候補からのすべての過免疫血清反応性抗原のなかでもっとも有望な候補の選択的同定を可能にするものであることが重要である。それゆえ、好ましくは 少なくとも 10個体の抗体調製物 (即ち、選択された病原菌の感染症を患ったことがある少なくとも10の異なる個体からの抗体調製物 (例えば血清))を第二スクリーニングラウンドにおいてかかる抗原の同定に用いるべきである。もちろん、10個体未満の調製物を使用することも可能であるが、しかし工程の選択性は少ない個体数の抗体調製物では最適とならない。一方、ある過免疫血清反応性抗原 (またはその抗原性断片)が少なくとも 10個体の抗体調製物、好ましくは少なくとも30、特に少なくとも 50個体の抗体調製物によって認識されたら、過免疫血清反応性抗原の同定は適切な同定に十分に選択的である。過免疫血清-反応性はもちろん、可能な限り多くの個体の調製物を用いて試験するとよい (例えば、100を超えるか、あるいは1,000を超える)。
【0059】
それゆえ、本発明の方法による過免疫血清-反応性抗体調製物の関連する部分は、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも 30、特に少なくとも 50個体の抗体調製物であるべきである。あるいは(または組み合わせて) 過免疫血清反応性抗原は好ましくは第二スクリーニングラウンドに用いられるすべての個体の抗体調製物の少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%、特に少なくとも40%によって同定される。
【0060】
本発明の好ましい態様によると、第二ラウンドのスクリーニングのための個体の抗体調製物が調製される(または抗体調製物として用いられる)血清は、表皮ブドウ球菌 (例えば、この病原菌の調製物、例えば溶解液、細胞壁成分および組換えタンパク質)に対するその力価によって選択される。好ましくは、ELISAにおける抗原として微生物全体(全溶解液または全細胞)が用いられる場合、総IgA 力価 4,000 Uを超え、特に 6,000 Uを超え、および/または IgG 力価10,000 Uを超え、特に12,000 Uを超える(U = ユニット、一定の希釈度でのOD405nmの読みから計算)ものが選択される。
【0061】
ヒト免疫系によってブドウ球菌に対して産生され、ヒト血清に存在する抗体は、抗原性タンパク質のインビボ発現およびその免疫原性を示す。直線状エピトープの抗体による認識は4-5 アミノ酸程度の短い配列に基づきうる。もちろん、かかる短いペプチドが所与の抗体をインビボで誘導できるということを必ずしも意味しない。そのため、規定されたエピトープ、ポリペプチドおよびタンパク質をさらに、インビボで選択されたタンパク質に対する抗体を誘導する能力について動物(主にマウス)で実験すべきである。
【0062】
好ましい抗原は細胞表面に位置するか分泌されており、それゆえ細胞外で接近可能なものである。細胞壁タンパク質に対する抗体は2つの目的に役立つと考えられる:付着の阻害、そして食作用の促進である。分泌タンパク質に対する抗体は、毒素または病原性成分としてのその機能の中和において有用である。細菌は分泌タンパク質を介して互いに情報交換していることも知られている。これらタンパク質に対する中和抗体は、連鎖球菌種間または種内の成長を促進するクロストークを妨害する。生物情報分析(シグナル配列、細胞壁局在化シグナル、膜貫通ドメイン)は、細胞表面局在または分泌の評価に非常に有用であることが判明している。実験アプローチは、対応するエピトープおよびタンパク質によるヒト血清からの抗体の単離、および細菌表面ディスプレースクリーニングにより選択された(ポリ)ペプチドに対するマウスにおける免疫血清の作成を含む。これらの血清は次いで以下のアッセイにおける試薬として第三ラウンドのスクリーニングに用いられる:様々な条件下で培養したブドウ球菌の細胞表面染色(FACS、顕微鏡観察)、中和能力 (毒素、付着)の測定、およびオプソニン作用および食作用(インビトロ食作用アッセイ)の促進。
【0063】
この目的のために、細菌である大腸菌クローンをマウスに直接注入し、免疫血清を採取し、関連するインビトロアッセイにおいて機能的オプソニンまたは中和抗体について試験する。あるいは、特異的抗体をヒトまたはマウス血清から基質としてペプチドまたはタンパク質を用いて精製してもよい。
【0064】
表皮ブドウ球菌に対する宿主防御は主に自然免疫機構に依存する。オプソニンおよび中和タイプの高親和性抗体をワクチン接種により誘導することにより、自然免疫系が細菌および毒素を排除することが助けられる。これによって本発明による方法はブドウ球菌抗原性タンパク質の同定の最適手段となる。
【0065】
皮膚および粘膜はブドウ球菌による侵入に対して恐るべき障壁である。しかしいったん皮膚または粘膜を超えられると、非-適応細胞防御の最前線は補体および食細胞、特に多核白血球(PMN)を介した協調作用を開始する。かかる細胞は侵入する細菌の排除における基盤であると考えられる。ブドウ球菌は本来細胞外病原菌であるため、主な抗-ブドウ球菌適応応答は免疫系の体液性の武器から生じ、それは3つの主な機構によって媒介される:オプソニン作用、毒素中和の促進、および付着の阻害。オプソニン作用は特に重要であると考えられている。というのはそれは有効な食作用に必要であるからである。有効なオプソニン作用のためには微生物表面は、IgG分子のFc断片または活性化C3bに対する受容体を介するPMNによる認識のために抗体および補体因子によって被覆されなければならない。オプソニン作用の後、ブドウ球菌は貪食され、殺される。細菌の細胞表面の特定の抗原に結合した抗体は、PMNへの結合のためのリガンドとして作用し、食作用を促進する。アドヘシンおよびその他の細胞表面タンパク質に結合した全く同じ抗体は付着を中和し、コロニー形成を防ぐと考えられる。このため本発明によって提供されるような抗原の選択は、動物モデルまたはヒトにおける感染症に対する防御を導くものの同定に非常に適している。
【0066】
ここで用いた抗原同定方法によると、本発明は驚くべきことに、とりわけ以下に記載するようにして、表皮ブドウ球菌の一連の新規な核酸および新規な過免疫血清反応性抗原およびその断片を提供することが出来る。一つの態様によると、本発明は特に過免疫血清反応性抗原をコードするヌクレオチド配列(その配列は配列表の配列番号1-31に示される)に関し、そして過免疫血清反応性抗原を表す対応するコードされるアミノ酸配列が配列表の配列番号 32-62に示される。
【0067】
本発明の好ましい態様において、配列番号 1、4、6-9、11-13、15、17、19、21、25-26、28-31に示すヌクレオチド配列に対してその全長にわたって70%の同一性を示す核酸分子が提供される。もっとも好ましいのは配列番号 1、4、6-9、11-13、15、17、19、21、25-26、28-31に示す核酸分子に対してその全長に渡って少なくとも 80% または少なくとも 85%同一である領域を含む核酸である。これに関して、同核酸分子に対してその全長に渡って少なくとも 90%、91%、92%、93%、94%、95%、または96%同一である核酸分子が特に好ましい。さらに、少なくとも 97%同一であるものが非常に好ましく、少なくとも 98%および少なくとも 99%同一であるものが特に好ましく、少なくとも 99%または 99.5% 同一であるのがきわめて好ましく、100% 同一であるのが特に好ましい。さらに、この点に関して好ましい態様は、配列番号 1、4、6-9、11-13、15、17、19、21、25-26、28-31に示す核酸によってコードされる成熟ポリペプチドと実質的に同じ生理機能または活性を保持する過免疫血清反応性抗原またはその断片 (ポリペプチド)をコードする核酸である。
【0068】
当該技術分野で知られているように、ここで用いる同一性とは、2以上のポリペプチド配列または2以上のポリヌクレオチド配列の、配列を比較して測定される関係である。当該技術分野において、同一性はまた、場合によってはかかる配列の文字列の間の一致によって判定される、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド配列の間の配列関連性の程度を意味する。同一性は容易に計算することが出来る。2つのポリヌクレオチドまたは2つのポリペプチド配列の間の同一性を測定する多くの方法が存在するが、この用語は当業者に周知である (例えば、Sequence Analysis in Molecular Biology、von Heinje、G.、Academic Press、1987)。同一性を判定する好ましい方法は試験する配列間のもっとも大きい一致を与えるよう設計されたものである。同一性の判定方法はコンピュータ・プログラムにおいて体系化されている。2つの配列の間の同一性の判定の好ましいコンピュータ・プログラ方法としては、これらに限定されないが、GCGプログラムパッケージ{Devereux、J. et al.、1984}、BLASTP、BLASTN、および FASTA {Altschul、S. et al.、1990}が含まれる。
【0069】
本発明の別の態様によると、配列番号 2-3、5、10、14、16、18、22-24、27に示す核酸配列に対して少なくとも 96%の同一性を示す核酸分子が提供される。
【0070】
本発明のさらなる態様によると、配列番号 20に示す核酸配列と同一の核酸分子が提供される。
【0071】
本発明による核酸分子は、二番目の選択として、一番目の選択として上記した核酸に少なくとも実質的に相補的な核酸分子であってもよい。本明細書において用いる、相補的とは、核酸鎖がワトソン・クリック塩基対形成を介して第二の核酸鎖と塩基対形成することを意味する。本明細書において用いる、実質的に相補的とは、それぞれの鎖のすべての塩基について塩基対形成が起こっているわけではなく、一定数または一定率の塩基が対形成していないかまちがって対形成していることを意味する。正しく対形成している塩基のパーセンテージは、好ましくは少なくとも 70 %、より好ましくは 80 %、さらに好ましくは 90 %、そしてもっとも好ましくは90 %を超えるパーセンテージである。 70 %が一致する塩基のパーセンテージは相同性であると考えられ、この程度に一致する塩基対を有するハイブリダイゼーションはストリンジェントであると考えられる。この種のストリンジェントなハイブリダイゼーションのハイブリダイゼーション条件は、Current Protocols in Molecular Biology (John Wiley and Sons、Inc.、1987)に記載されている。より具体的には、ハイブリダイゼーション条件は以下のようにすればよい:
例えば、5 x SSPE、5 x デンハルト試薬、0.1% SDS、100 g/mLの剪断(sheared)DNA 中で68℃で行うハイブリダイゼーション
0.2xSSC、O.1% SDS中、42℃での中程度のストリンジェンシーの洗浄、
0.1xSSC、0.1% SDS中、68℃での高いストリンジェンシーの洗浄。
【0072】
GC含量が50%のゲノムDNAはTMがおよそ96℃である。1%のミスマッチについて、TMはおよそ1℃低くなる。
【0073】
さらに、本明細書に記載するその他のハイブリダイゼーション条件のいずれも理論的には同様に用いることが出来る。
【0074】
もちろん、本発明によって同定されたものと同じポリペプチド分子をコードするすべての核酸配列分子が所与のコード配列の開示によって包含される。というのは、遺伝暗号の縮重は、かかる縮重核酸分子の数が多いとしても、所与のポリペプチド分子をコードするすべての可能な核酸分子を明らかに決定するために直接適用できるからである。断片が例えば能動または受動ワクチンのようにワクチン接種に関連して用いるのに好適なポリペプチドをコードするかぎり、所与のポリペプチドの断片に対してもこれは適用できる。
【0075】
本発明による核酸分子は、三番目の選択として、上記本発明による核酸分子の第一および第二の選択による核酸分子の少なくとも 15 塩基のストレッチを含む核酸であってもよい。好ましくは、塩基は連続するストレッチの塩基を形成する。しかし、ストレッチが、いくつかの塩基によって分離されている2以上の部分からなる場合も本発明の範囲に含まれる。
【0076】
本発明の核酸は好ましくは、少なくとも 20、より好ましくは少なくとも 30、特に少なくとも 50の本明細書に開示の配列からの連続塩基からなる。好適な長さは計画する使用領域によって容易に最適化できよう(例えば(PCR) プライマー、プローブ、捕捉分子(例えば(DNA)チップ上)などとして)。好ましい核酸分子は、表1および2に挙げる1以上の予測免疫原性アミノ酸配列、特に表2の配列であってスコア10を超え、好ましくは20を超え、特にスコア25を超えるものの少なくとも連続する15塩基部分を含む。特に好ましいのは、本発明の用途の配列プロトコールにおいて、公表された表皮ブドウ球菌株 RP62A ゲノム (http://www.tigr.org/tdb/mdb/mdbinprogress.html) および/またはその他の公表された表皮ブドウ球菌ゲノム配列またはその部分と比較して1以上またはより好ましくは2以上、特に5以上の、非同一核酸残基を示すいずれかの配列のDNA 配列の連続部分を含む核酸である。特に好ましい非同一核酸残基は、非同一アミノ酸残基を導く残基である。好ましくは、核酸配列は上記の公表された表皮ブドウ球菌対応物と比較して少なくとも 1、好ましくは 少なくとも 2、好ましくは少なくとも3の異なるアミノ酸残基を有するポリペプチドをコードする。また本明細書で言及する、例えば配列表に挙げるタンパク質の断片である(または全タンパク質)かかる単離ポリペプチドであって少なくとも 6、7、または8 アミノ酸残基を有し、かかる核酸によってコードされるものも好ましい。
【0077】
本発明による核酸分子は、四番目の選択として、上記第一、第二および第三の選択による本発明の核酸のいずれかとストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でアニールする核酸分子であってもよい。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は典型的には本明細書に記載するものである。
【0078】
最後に、本発明による核酸分子は、五番目の選択として、上記第一、第二、第三および第四の選択による本発明のいずれかの核酸分子による核酸分子のいずれかと遺伝暗号の縮重がなければ、ハイブリダイズしうる核酸分子であってもよい。この種の核酸分子は、好ましくは本発明による核酸が、本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片をコードすることをいう。この種の核酸分子は本発明による核酸分子の検出に特に有用であり、したがって、対応する微生物、例えば、表皮ブドウ球菌およびこの種の微生物が関与する疾患または疾患状態の診断に有用である。好ましくは、ハイブリダイゼーションは四番目の選択について記載したストリンジェントな条件下でおこるか行われる。
【0079】
本明細書において用いる核酸分子は、一般にリボ核酸分子またはデオキシリボ核酸分子のいずれかであり、非修飾 RNAまたはDNAあるいは修飾RNAまたはDNAであってもよい。したがって例えば、本明細書において用いる核酸分子は、とりわけ、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖 RNAの混合物であるDNA、および一本鎖および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖またはより典型的には二本鎖または三本鎖または一本鎖および二本鎖領域の混合物であってよいDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子である。さらに、本明細書において用いる核酸分子は、RNAまたは DNAあるいはRNAとDNAとの両方を含む三本鎖領域もさす。かかる領域における鎖は同一分子由来でも異なる分子由来でもよい。領域は1以上の分子のすべてを含んでもよいが、より典型的にはいくつかの分子の領域のみを含む。三重らせん領域の分子の1つはしばしばオリゴヌクレオチドである。本明細書において用いる、核酸分子の語は、1以上の修飾塩基を含む上記のDNAまたは RNAを含む。したがって、安定性またはその他の理由で修飾された骨格を有するDNAまたは RNAは本明細書でいうところの「核酸分子」である。さらに、珍しい塩基、例えばイノシン、または修飾塩基、トリチル化塩基を含むDNAまたは RNAは、二例を挙げただけだが、本明細書でいうところの核酸分子である。多くの有用な目的に役立つDNA およびRNAに対する様々な修飾がなされていることは当業者に知られている。核酸分子の語は、本明細書で用いる場合、かかる化学的、酵素的または代謝的に修飾された形態の核酸分子、およびとりわけウイルスおよび、単細胞および多細胞を含む細胞に典型的な化学形態のDNAおよび RNAを含む。核酸分子の語はまた、オリゴヌクレオチドとしばしば称される短い核酸分子も含む。「ポリヌクレオチド」および「核酸」または「核酸分子」は本明細書において互換的に用いられる。
【0080】
本発明において提供される核酸分子は多数の独特の断片を含み、それらには表皮ブドウ球菌コード領域の配列表に示す核酸分子配列より長いものも短いものもあり、標準的クローニング方法によって作成できるものである。独特であるためには、断片はその他の既知の核酸配列と区別するのに十分な大きさで有る必要があり、その違いはコンピュータ・データベース、例えば、GenBankにおけるヌクレオチド 配列に対して選択した表皮ブドウ球菌断片を比較することによって簡単に決定される。
【0081】
さらに、修飾は、本発明に含まれる核酸分子およびポリペプチドに対して行ってもよい。例えば、核酸によってコードされるポリペプチドを変更しないヌクレオチド置換を行ってもよく、したがって、過免疫血清反応性抗原またはその断片をコードするあらゆる核酸分子が本発明に含まれる。
【0082】
さらに本発明によって提供される過免疫血清反応性抗原またはその断片をコードする核酸分子はいずれも、標準的技術、例えば標準的クローニング技術を用いて、あらゆる所望の調節配列に機能的に連結させてもよく、これは表皮ブドウ球菌調節配列または異種調節配列、異種リーダー配列、異種マーカー配列または融合タンパク質を作る異種コード配列であってよい。
【0083】
本発明の核酸分子はRNAの形態、例えば、 mRNAまたはcRNA、あるいはDNAの形態、例えば、クローニングによって得られるか、化学合成技術によって製造されるかまたはその組み合わせによって作られるcDNAおよびゲノムDNAであってもよい。DNAは、三本鎖、二本鎖または一本鎖であってよい。一本鎖 DNAはセンス鎖としても知られているコード鎖であってもよいし、アンチセンス鎖として知られている非コード鎖であってもよい。
【0084】
本発明はさらに、配列表に示す推定表皮ブドウ球菌アミノ酸配列を有する過免疫血清反応性抗原およびその断片の断片、アナログおよび誘導体をコードする上記の核酸分子の変異形にも関する。核酸分子の変異形は、天然の変異形、例えば、天然の対立遺伝子変異形でもよいし、天然には起こることが知られていない変異形であってもよい。かかる核酸分子の非天然の変異形は、例えば核酸分子、細胞または生物体に対して行われる突然変異誘発技術によって作ることが出来る。
【0085】
これに関する変異形は、ヌクレオチド置換、欠失または付加によって上記核酸分子と異なる変異形である。置換、欠失または付加は1以上のヌクレオチドを伴いうる。変異形はコードまたは非コード領域において変わっているものでも両方が変わっているものでもよい。コード領域における変化は、保存的または非保存的アミノ酸置換、欠失または付加を作りうる。配列表に示す表皮ブドウ球菌配列を有する、変異形、アナログ、誘導体または断片、あるいは断片の変異形、アナログまたは誘導体をコードする核酸分子が好ましく、ここでいくつかの、数個、5〜10、1〜 5、1 〜 3、2、1または0のアミノ酸が置換、欠失または付加されているかあるいはその組み合わせである。このなかで特に好ましいのは、サイレントな置換、付加および欠失であり、これらは配列表に示す表皮ブドウ球菌ポリペプチドの性質および活性を変化させない。この点で特に好ましいのは、保存的置換である。
【0086】
本発明によるペプチドおよび断片はまた修飾エピトープを含み、ここで所与のエピトープの好ましくは1または2のアミノ酸が、例えば{Tourdot、S. et al.、2000}に開示の規則にしたがって、修飾されるか、置換されている。かかる修飾エピトープをコードする核酸配列も同様である。
【0087】
アミノ酸置換による本発明のエピトープに由来するエピトープであって、エピトープのT 細胞活性化能力を向上、保存または少なくとも有意に阻害しないものも本発明によるエピトープに含まれることが明らかである。それゆえ、本発明のエピトープは表皮ブドウ球菌由来の元の配列を含まないが、T 細胞応答をトリガーし、好ましくはT 細胞応答を向上させるエピトープも含む。これらエピトープは「ヘテロクリティック」と称される; これらはMHC/HLA 分子に対して同様のまたは好ましくはより高い親和性を有している必要があり、元のエピトープに対するT 細胞受容体 (TCR)を同様にまたは好ましくはより強く刺激する能力を有する必要がある。
【0088】
ヘテロクリティックエピトープは、合理的設計により得ることが出来る。即ち例えば{Rammensee、H. et al.、1999}に記載のように個々の残基のMHC/HLAへの結合に対する寄与を考慮し、それとともにTCRとの相互作用の能力がある残基を系統的に交換し、その結果得られた配列を元のエピトープに対するT 細胞を用いて試験するとよい。かかる設計は過度の実験をしなくても当業者に可能である。
【0089】
もう一つの可能性は、元のエピトープに対するT 細胞によるペプチドライブラリーのスクリーニングを含む。好ましい方法は合成ペプチドライブラリーの位置スキャニング(positional scanning)である。かかるアプローチは、例えば{Hemmer、B. et al.、1999}およびそのなかの引用文献に詳細に記載されている。
【0090】
本発明由来のアミノ酸配列またはヘテロクリティックエピトープによって代表されるエピトープの代わりに、これらエピトープを模倣する物質、例えば、「ペプチド疑似体」または「レトロ逆転(retro-inverso)-ペプチド」も利用できる。
【0091】
改良エピトープの設計のその他の態様は、そのT 細胞の刺激能力を向上させる物質による製剤または修飾である。これらにはヘルパーT細胞エピトープ、脂質またはリポソームまたはWO 01/78767に記載の好ましい修飾が含まれる。
【0092】
エピトープのT 細胞刺激能力を上昇させるもう一つの方法は、それらを免疫刺激物質、例えば、サイトカインまたはケモカイン、例えば、インターロイキン-2、-7、-12、-18、クラスIおよびII インターフェロン (IFN)、特にIFN-ガンマ、GM-CSF、TNF-アルファ、flt3-リガンドその他とともに製剤することである。
【0093】
本発明の核酸分子アッセイについてさらに説明すると、例えば、上記の本発明の核酸分子は、本発明のポリペプチドをコードする全長 cDNAおよびゲノムクローンの単離および本発明の核酸分子と高い配列類似性を有するその他の遺伝子のcDNAおよびゲノムクローンの単離のためのRNA、cDNAおよびゲノムDNAのためのハイブリダイゼーションプローブとして用いることが出来る。かかるプローブは一般に少なくとも 15塩基を含む。好ましくは、かかるプローブは、少なくとも 20、少なくとも 25または 少なくとも 30塩基を有し、少なくとも 50塩基を有することもある。特に好ましいプローブは少なくとも 30塩基であって50塩基以下、例えば、30、35、40、45、または50塩基である。
【0094】
例えば、本発明の核酸分子のコード領域はオリゴヌクレオチドプローブの合成のための既知のDNA 配列を用いて関連ライブラリーをスクリーニングすることによって単離することが出来る。本発明の遺伝子の配列と相補的配列を有する標識化オリゴヌクレオチドを用いて次にcDNA、ゲノムDNAまたはmRNAのライブラリーをスクリーニングし、ライブラリーのどのメンバーにプローブがハイブリダイズするかを判定する。
【0095】
本発明の核酸分子およびポリペプチドは、とりわけ核酸分子アッセイに関してさらに説明するように、疾患、特にヒト疾患の治療および診断の開発用試薬および材料として用いることが出来る。
【0096】
オリゴヌクレオチドである本発明の核酸分子は、上記方法に用い、好ましくはPCRに用いて、全体または部分を本明細書において同定した表皮ブドウ球菌遺伝子が存在するか、および/または、血液などの感染組織において転写されているかを判定することが出来る。かかる配列は感染の段階および病原菌が達成した感染の種類の診断における有用性も有することが認識される。この目的および他の目的のために本明細書に記載する本発明による少なくとも1つの核酸を含むアレイを利用することが出来る。
【0097】
本発明による核酸分子は、核酸分子およびこれら核酸を含む生物またはサンプルの検出に用いることが出来る。好ましくはかかる検出は診断のためであり、より好ましくは表皮ブドウ球菌の存在または量に関連または連動する疾患の診断のためである。
【0098】
表皮ブドウ球菌により感染した真核生物(「個体」とも称する)、特に哺乳類、特にヒトを、様々な技術によってDNAレベルで検出される本発明による核酸分子のいずれかを検出することによって同定することが出来る。表皮ブドウ球菌をその他の生物と区別するための好ましい核酸分子候補を得ることが出来る。
【0099】
本明細書に記載する様々なポリペプチドは治療および/または診断用途を有する。本出願は、表皮ブドウ球菌(S.epi.)に特徴的な様々な免疫原性ポリペプチドおよび免疫原性ポリペプチド領域を同定するものである。免疫原性ポリペプチド領域はそれ自体であってもよいし、より長いポリペプチドの一部であってもよい。ポリペプチドおよびポリペプチド領域は、あるヒトが、表皮ブドウ球菌に感染しているか、感染したことがあるかを示す診断用途に利用できる。例えば、表皮ブドウ球菌免疫原性領域を含むポリペプチドは表皮ブドウ球菌抗体の作成に利用でき、該抗体は血清中の表皮ブドウ球菌の存在の検出に利用できる;そして表皮ブドウ球菌免疫原性領域を含むポリペプチドは血清中の表皮ブドウ球菌抗体の存在の検出に利用することが出来る。
【0100】
本発明は表皮ブドウ球菌による感染によって生じる疾患の診断方法を提供し、該方法は、配列表に示す核酸分子の配列を有する核酸分子の発現レベルの上昇を、個体から単離または由来したサンプルから判定することを含む。核酸分子の発現は核酸分子の定量のための当該技術分野に周知の方法のいずれかを用いて測定することが出来、例えば、PCR、RT-PCR、Rnase 保護、ノザンブロッティング、その他のハイブリダイゼーション方法および本明細書に記載するアレイが挙げられる。
【0101】
本明細書において用いる単離とは、その天然の状態から「人の手によって」分離されていることを意味する; 即ち、それが天然に存在する場合、その元の環境から変化または取り出されているか、その両方である。例えば、天然状態において生体に天然に存在する天然の核酸分子またはポリペプチドは「単離」されていないが、同じ核酸分子またはポリペプチドがその天然状態で共に存在する物質から分離されていると、ここで用いる用語では「単離」されていることになる。単離の一部としてまたは単離の後に、かかる核酸分子に例えば、融合タンパク質を形成させるための突然変異誘発のために、そして宿主での増殖または発現のために、DNA等のその他の核酸分子を結合させてもよい。単離核酸分子は単独でまたはベクター等のその他の核酸分子と結合させて、培養中または生体全体における宿主細胞に導入することが出来る。培養中または生体全体における宿主細胞に導入されても、かかるDNAは本明細書の意味ではいまだに単離されたままである。というのはそれらは天然の形態または環境にはないからである。同様に核酸分子およびポリペプチドは組成物、例えば、培地製剤、核酸分子またはポリペプチドの、例えば細胞への導入用の溶液、化学反応または酵素反応のための組成物または溶液中にあってもよく、これらは天然の組成物ではなく、そして本明細書の意味によるとそこでも単離核酸分子またはポリペプチドは単離された状態である。
【0102】
本発明による核酸は化学合成してもよい。あるいは核酸は当業者に知られた方法によって表皮ブドウ球菌から単離してもよい。
【0103】
本発明の別の態様によると、本明細書に記載の抗原同定方法の使用により、新規な過免疫血清反応性抗原およびその断片の網羅的セットが提供される。本発明の好ましい態様において、本明細書に記載の核酸分子のいずれかによってコードされるアミノ酸配列を含む過免疫血清反応性抗原およびその断片が提供される。本発明の別の好ましい態様において、配列番号 32、35、37-40、42-44、46、48、50、52、56-57、59-62に示されるポリペプチド配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む新規なセットの過免疫血清反応性抗原およびその断片が提供される。本発明のさらに好ましい態様において、配列番号 33-34、36、41、45、47、49、53-55、58に示されるポリペプチド配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む過免疫血清反応性抗原およびその断片が提供される。本発明のより好ましい態様において、配列番号 51に示されるポリペプチド配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む過免疫血清反応性抗原およびその断片が提供される。
【0104】
本発明において提供される過免疫血清反応性抗原およびその断片には、配列表に示すあらゆるポリペプチドおよび配列表に示すポリペプチドに対して少なくとも 70%の同一性を有するポリペプチド、配列表に示すポリペプチドに対して好ましくは 少なくとも 80%または85%の同一性を有するポリペプチド、より好ましくは配列表に示すポリペプチドに対して少なくとも 90%の類似性(より好ましくは少なくとも 90%の同一性)、さらにより好ましくは配列表に示すポリペプチドに対して少なくとも 95%、96%、97%、98%、99%または99.5%の類似性(さらにより好ましくは 少なくとも 95%、96%、97%、98%、99%、または 99.5%の同一性) を有するポリペプチドが含まれ、また、かかるポリペプチドの部分も含まれ、ここでポリペプチドの部分は一般に少なくとも 4 アミノ酸、より好ましくは少なくとも 8、より好ましくは少なくとも 30、さらにより好ましくは少なくとも 50 アミノ酸、例えば4、8、10、20、30、35、40、45または50 アミノ酸を含む。
【0105】
本発明はまた、これら過免疫血清反応性抗原およびその断片の、断片、アナログ、および誘導体に関する。アミノ酸配列が配列表に示される抗原について用いられる、「断片」、「誘導体」および「アナログ」は、かかる過免疫血清反応性抗原およびその断片と実質的に同一または類似の生理機能または活性を保持するポリペプチドを意味する。
【0106】
過免疫血清反応性抗原およびその断片の、断片、誘導体またはアナログは以下であり得る:1)1以上のアミノ酸残基が保存的または非保存的アミノ酸残基 (好ましくは保存的アミノ酸残基)によって置換されており、かかる置換アミノ酸残基が遺伝暗号によってコードされるものであってもなくてもよいもの、または2)1以上のアミノ酸残基が置換基を含むもの、または3)成熟過免疫血清反応性抗原またはその断片が別の化合物、例えば、過免疫血清反応性抗原およびその断片の半減期を上昇させる化合物 (例えば、ポリエチレングリコール)と融合しているもの、または4)追加のアミノ酸(リーダーまたは分泌配列または成熟過免疫血清反応性抗原またはその断片の精製に利用される配列あるいはプロタンパク質配列)が成熟過免疫血清反応性抗原またはその断片に融合しているもの。かかる断片、誘導体およびアナログは本明細書の教示から当業者の技術範囲内である。
【0107】
この点で本発明の特に好ましい態様は、配列表に示す過免疫血清反応性抗原、その変異形、アナログ、誘導体および断片、ならびに断片の変異形、アナログおよび誘導体である。さらに過免疫血清反応性抗原、その変異形、アナログ、誘導体および断片、断片の変異形、アナログおよび誘導体を含む融合ポリペプチドも本発明に含まれる。かかる融合ポリペプチドおよびタンパク質、ならびにそれらをコードする核酸分子は標準的技術を用いて容易に作ることが出来、かかる技術としては、融合タンパク質をコードする組換えポリ核酸の産生および発現のための標準的組換え技術が含まれる。
【0108】
変異形のなかで好ましいのは保存的アミノ酸置換によって基準(reference)と異なるものである。かかる置換はポリペプチド中の所与のアミノ酸を類似の特徴を有する別のアミノ酸で置換するものである。保存的置換として典型的にみられるのは、脂肪族アミノ酸、 Ala、Val、Leuおよび Ile内での互いの置換;ヒドロキシル残基 Ser およびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基 Asnおよび Glnの置換、塩基性残基Lysおよび Arg の交換、および芳香族残基PheおよびTyrの置換である。
【0109】
この点でさらに特に好ましいのは、配列表に示すいずれかのポリペプチドのアミノ酸配列を有する、変異形、アナログ、誘導体および断片、そして断片の変異形、アナログおよび誘導体であって、いくつかの、数個、5 〜 10、1 〜 5、1〜 3、2、1または0のアミノ酸残基が置換、欠失または付加された、あるいはその組み合わせのものである。なかでも特に好ましいのは本発明のポリペプチドの性質および活性を変化させないサイレントな置換、付加および欠失である。この点で特に好ましいのは保存的置換である。もっとも好ましいのは配列表に示すアミノ酸配列を有し、置換を有さないポリペプチドである。
【0110】
本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片は好ましくは単離形態で提供され、好ましくは均一に精製されたものである。
【0111】
本発明の好ましい態様は、配列表に示すアミノ酸配列を有するポリペプチドの断片を含むポリペプチド、および配列表に示すポリペプチドの変異形および誘導体の断片である。
【0112】
この点で断片とは、上記過免疫血清反応性抗原およびその断片、およびその変異形または誘導体、アナログ、断片のアミノ酸配列のすべてではないが一部と全く同じであるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。かかる断片は「独立」であり得る。即ち、その他のアミノ酸またはポリペプチドの一部ではなくまたはそれに融合しているわけではなく、それらが一部または領域を形成するより大きいポリペプチドに含まれていてもよい。本発明のこの点で好ましいのは本発明のポリペプチドの構造または機能特性によって特徴づけられる断片、即ち、本発明のポリペプチドのアルファヘリックスおよびアルファヘリックス形成領域、ベータシートおよびベータシート形成領域、ターン・ターン-形成領域、コイル・コイル-形成領域、親水性領域、疎水性領域、アルファ両親媒性領域、ベータ-両親媒性領域、可動性領域、表面形成領域、基質結合領域、および高い抗原性指数領域を含む断片、およびかかる断片の組み合わせである。好ましい領域は本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片の活性を媒介する領域である。この点でもっとも好ましいのは本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片の化学、生物またはその他の活性を有する断片であり、例えば、類似の活性または向上した活性、または低下した望ましくない活性を有する断片である。特に好ましいのは表皮ブドウ球菌の生存に必須な機能またはヒトにおける疾患を引き起こす能力を付与する酵素の受容体またはドメインを含む断片である。さらに好ましいポリペプチド断片は、動物、特にヒトにおける抗原または免疫原決定基を含むものである。
【0113】
抗原性断片とは、それ自体が抗原性であるかハプテンとして提供されると抗原性となる、同定された抗原の断片として定義される。それゆえ、1または(より長い断片については)数個のみのアミノ酸交換のみを示す抗原または抗原性断片が本発明の範囲で可能であるが、ただし、アミノ酸交換を有するかかる断片の抗原性能力が交換によってひどく損なわれていないことを条件とする。即ち、この抗原によってワクチン接種された個体における適当な免疫応答の誘発に好適であり、個体の血清からの個体の抗体調製物によって同定されるものである。
【0114】
過免疫血清反応性抗原のかかる断片の好ましい例は、表1の列、「予測免疫原性アミノ酸」および「同定された免疫原性領域の位置」; 表2の血清反応性エピトープのアミノ酸配列を含むペプチドからなる群から選択され、特に以下のアミノ酸を含むペプチドである:配列番号 32の6-28、54-59、135-147、193-205、274-279、284-291、298-308、342-347、360-366、380-386、408-425、437-446、457-464、467-477、504-510、517-530、535-543、547-553、562-569、573-579、592-600、602-613、626-631、638-668 および 396-449;配列番号 33 の5-24、101-108、111-117、128-142、170-184、205-211、252-267、308-316、329-337、345-353、360-371、375-389、393-399、413-419、429-439、446-456、471-485、495-507、541-556、582-588、592-602、607-617、622-628、630-640 および 8-21; 配列番号 34の 10-20、23-33、40-45、59-65、72-107、113-119、127-136、151-161 および 33-59; 配列番号 35の 4-16、28-34、39-61、66-79、100-113、120-127、130-137、142-148、150-157、192-201、203-210、228-239、245-250、256-266、268-278、288-294、312-322、336-344、346-358、388-396、399-413、425-430、445-461、464-470、476-482、486-492、503-511、520-527、531-541、551-558、566-572、609-625、635-642、650-656、683-689、691-705、734-741、750-767、782-789、802-808、812-818、837-844、878-885、907-917、930-936 および 913-933;配列番号 36 の5-12、20-27、46-78、85-92、104-112、121-132、150-167、179-185、200-213、221-227、240-264、271-279、282-290、311-317 および 177-206;配列番号 37の18-24、31-40、45-51、89-97、100-123、127-132、139-153、164-170、184-194、200-205、215-238、244-255、257-270、272-280、289-302、312-318、338-348、356-367 および 132-152; 配列番号 38の7-16、39-45、73-83、90-98、118-124、130-136、194-204、269-280、320-327、373-381、389-397、403-408、424-430、436-441、463-476、487-499、507-514、527-534、540-550、571-577、593-599、620-629、641-647、650-664、697-703、708-717、729-742、773-790、794-805、821-828、830-837、839-851、858-908、910-917、938-947、965-980、1025-1033、1050-1056、1073-1081、1084-1098、1106-1120、1132-1140、1164-1170、1185-1194、1201-1208、1215-1224、1226-1234、1267-1279、1325-1331、1356-1364、1394-1411、1426-1439、1445-1461、1498-1504、1556-1561、1564-1573、1613-1639、1648-1655、1694-1714、1748-1755、1778-1785、1808-1813、1821-1827、1829-1837、1846-1852、1859-1865、1874-1883、1895-1900、1908-1913、1931-1937、1964-1981、1995-2005、2020-2033、2040-2047、2103-2109、2118-2127、2138-2144、2166-2175、2180-2187、2220-2225、2237-2242、2247-2253、2273-2281、2286-2306、2314-2320、2323-2345、2350-2355、2371-2384、2415-2424、2426-2431、2452-2472、2584-2589、2610-2621、2638-2655、2664-2670、2681-2690、2692-2714、2724-2730 および 687-730;配列番号 39の10-40、53-59、79-85、98-104、117-122、130-136、144-158、169-175、180-185、203-223、232-237、243-254、295-301 および 254-292;配列番号 40の28-50、67-85、93-115、120-134、144-179、240-249、328-340、354-360、368-400、402-417、419-427、429-445、447-455、463-468、472-480、485-500、502-510、512-534、537-546、553-558、582-594、619-637、645-654、690-709、735-745、749-756、786-792、275-316 および 378-401; 配列番号 41の 5-16、21-30、33-40、52-74、101-108、116-122、164-182、185-219、256-261、273-279、285-291、297-304、312-328、331-338、355-362、364-371、373-401、411-423 および 191-208; 配列番号 42の 34-55、67-74、85-93、105-115、138-152、161-171、182-189、197-205、213-219、232-239、241-248、250-263、272-277、288-299 および 216-231; 配列番号 43の21-27、32-37、43-51、67-74、82-92、94-100、106-112、140-149、153-159、164-182、193-215、222-227、260-267、308-322、330-340、378-387、396-403、417-432、435-441、448-465、476-482、488-498、500-510 および 214-280; 配列番号 44の 4-21、29-52、80-87、104-123、126-133、141-157、182-189、194-202、214-220、227-235、242-252 および 33-108; 配列番号 45の 12-18、20-27、29-59、64-72、84-90、96-103、109-121、125-155、164-177、179-186、188-201、216-227、235-253、259-274、276-294、296-310、322-339、341-348、369-379、398-403、409-421 および 76-96;配列番号 46の4-15、24-41、71-80、104-111、113-119、123-130、139-149、168-178、187-200 および 4-45; 配列番号 47の13-19、32-37、44-56 および 1-14;配列番号 48の 6-11、16-35、75-81、95-100、126-139、206-214、225-233、241-259、268-276、319-325、339-360、371-401、435-441、452-459、462-472、491-503、505-516、549-556、567-580、590-595、612-622、624-630、642-648、656-662、687-693、698-704、706-712、736-750、768-777、784-789、812-818、847-858、894-900、922-931、938-949、967-984、986-992、1027-1032、1041-1054、1082-1088、1091-1097、1119-1124、1234-1240、1250-1258、1274-1289、1299-1305、1392-1398、1400-1405、1429-1442、1460-1474、1505-1514、1531-1537、1540-1552、1558-1571、1582-1587、1616-1623、1659-1666、1671-1677、1680-1686、1698-1704、1706-1712、1768-1774、1783-1797、1814-1819、1849-1855、1870-1876、1890-1897、1947-1953、1972-1980、1999-2013、2044-2051、2068-2084、2093-2099、2122-2131、2142-2147、2156-2163、2170-2179、2214-2220、2235-2245、2271-2281、2287-2293、2308-2317、2352-2362、2373-2378、2387-2407、2442-2448、2458-2474、2507-2516、2531-2537、2540-2551、2555-2561、2586-2599、2617-2627、2644-2649、2661-2675、2685-2692、2695-2707、2733-2739、2741-2747、2774-2783、2788-2795、2860-2870、2891-2903、2938-2947、2973-2980、2993-2999、3004-3030、3046-3059、3066-3077、3082-3088、3120-3132、3144-3149、3153-3169、3200-3212、3232-3256、3276-3290、3308-3322、3330-3338、3353-3360、3363-3371、3390-3408、3431-3447、3454-3484、3503-3515、3524-3541、3543-3550、3560-3567、3586-3599、3616-3621、3642-3647、3663-3679、213-276、579-621 および 1516-1559;配列番号 49の 19-41、43-49、55-62、67-74、114-121、130-140、188-197、208-217、226-232、265-287、292-299、301-319、372-394、400-410、421-427 および 12-56; 配列番号 50の 6-12、44-51、53-60、67-88、91-100、104-123、137-142、148-158、161-168、175-201、204-210、222-231、239-253、258-264、272-282 および 60-138; 配列番号 51の4-63、69-104、110-121、124-131、134-152、161-187、204-221、223-237、239-296、298-310、331-365、380-405、423-451、470-552、554-562、574-581、592-649、651-658、661-671、673-707、713-734、741-748、758-765、773-790 および 509-528; 配列番号 52の 89-94、102-115、123-129、181-188、200-206、211-235、239-249、267-281、295-310、316-321、331-341、344-359、365-386、409-422、443-453、495-506、514-521、539-547、553-560、563-570、586-596、621-626、633-638、651-657、666-683、697-705、731-739、761-768、865-883 および 213-265; 配列番号 53の 5-20、24-34、37-43、92-102、134-139、156-162、184-191、193-205、207-213、225-231、241-247、259-267、269-286、337-350、365-372、378-386、399-413、415-421、447-457、467-481 および 145-183; 配列番号 54の 12-19、29-41、43-57、80-98、106-141、143-156、172-183、185-210、214-220、226-234、278-287 および 237-287; 配列番号 55の5-12、32-48、50-72、75-81、88-94 および 16-40; 配列番号 56の4-21、29-42、48-62、65-80、95-101、103-118、122-130、134-140、143-152、155-165、182-192、198-208、232-247、260-268、318-348、364-369、380-391、403-411、413-424 および 208-230; 配列番号 57の 4-18、65-75、82-92、123-140、144-159、166-172、188-194 および 174-195; 配列番号 58の 7-20、58-71、94-101、110-119、199-209、231-242、247-254、267-277、282-290、297-306、313-319、333-342、344-369、390-402、414-431、436-448、462-471 および 310-350; 配列番号 59の 4-25、37-44、53-59、72-78、86-99、119-128、197-203、209-218、220-226、233-244、246-254、264-271、277-289、407-430、437-445、464-472、482-488、503-509 および 308-331; 配列番号 60の 4-12、14-43、52-58 および 43-58; 配列番号 61の4-14、21-29、35-49 および 38-50; 配列番号 62の 4-19、31-37、58-72、94-108 および 1-72、および、該配列の少なくとも 6、好ましくは8より長い、特に10より長いアミノ酸を含む断片。これらのすべての断片は個々に、そしてそれぞれが独立に本発明の好ましい選択された態様を形成する。
【0115】
特定の抗原のすべての直鎖状の過免疫血清反応性断片は少なくとも10アミノ酸の長さの1 アミノ酸がオーバーラップするペプチドのセットによってタンパク質抗原の全体の配列を分析することによって同定できる。その後、非直鎖状エピトープは、発現した全長タンパク質またはそのドメインポリペプチドを用いて過免疫血清によってタンパク質抗原を分析することによって同定できる。タンパク質の異なるドメインはネイティブなタンパク質とは独立な3D構造を形成するのに十分であるとすると、それぞれ組換えまたは合成により作ったドメインポリペプチドの過免疫血清による分析により、マルチドメインタンパク質の個々のドメイン内の高次構造エピトープの同定が可能となるであろう。ドメインが直鎖状および高次構造エピトープを有する抗原については、直鎖状エピトープに対応するペプチドによる競合実験を用いて、高次構造エピトープの存在を確認することが出来る。
【0116】
本発明はまた、とりわけ、上記断片をコードする核酸分子、該断片をコードする核酸分子にハイブリダイズする核酸分子、特にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子、および断片をコードする核酸分子を増幅するためのPCR プライマー等の核酸分子にも関することが理解されよう。この点に関して、好ましい核酸分子は上記の好ましい断片に対応するものである。
【0117】
本発明はまた、本発明の1以上の核酸分子を含むベクター、本発明のベクターで遺伝子操作された宿主細胞、および組換え技術による過免疫血清反応性抗原およびその断片の産生にも関する。
【0118】
非常に様々な発現ベクターを用いて本発明による過免疫血清反応性抗原またはその断片を発現させることが出来る。一般に、宿主においてポリペプチドを発現するために核酸を維持、増殖または発現させるのに好適ないずれのベクターを発現に用いてもよい。本発明のこの態様によると、ベクターは例えば、プラスミドベクター、一本鎖または二本鎖ファージベクター、一本鎖または二本鎖 RNAまたはDNA ウイルスベクターであってよい。ここに開示の開始プラスミドは市販されているか、公共のものか、あるいは、周知の公表された手順を常套に適用することによって入手可能なプラスミドから構築できるものである。好ましいベクターは、特定の態様では、本発明の核酸分子および過免疫血清反応性抗原またはその断片の発現のためのものである。宿主細胞中の核酸コンストラクトは組換え配列によってコードされる遺伝子産物を産生するための常套方法によって用いることが出来る。あるいは、本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片は常套のペプチド合成器によって合成的に生産することも出来る。成熟タンパク質は適当なプロモーターの制御下で、哺乳類細胞、酵母、細菌またはその他の細胞中で発現させうる。かかるタンパク質を産生するのに本発明のDNA コンストラクト由来のRNAを用いて無細胞翻訳系を用いてもよい。
【0119】
宿主細胞を遺伝子操作して核酸分子を組込み、本発明の核酸分子を発現させることが出来る。適当な宿主の代表例には、細菌細胞、例えばブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌、ストレプトマイセスおよび枯草菌細胞; 真菌細胞、例えば酵母細胞およびコウジカビ細胞; 昆虫細胞、例えば ショウジョウバエ S2 および スポドプテラ Sf9 細胞; 動物細胞、例えば CHO、COS、Hela、C127、3T3、BHK、293および Bowes メラノーマ細胞;および植物細胞が含まれる。
【0120】
本発明はまた、表皮ブドウ球菌過免疫血清反応性抗原およびその断片の生産方法も提供し、該方法は本発明によって提供される核酸分子によってコードされる過免疫血清反応性抗原またはその断片を宿主細胞から発現させることを含む。本発明はさらに表皮ブドウ球菌過免疫血清反応性抗原またはその断片を発現する細胞の生産方法も提供し、該方法は、好適な宿主細胞に本発明によるベクターを形質転換または形質移入して、形質転換または形質移入された細胞にベクターに含まれる核酸によってコードされるポリペプチドを発現させることを含む。
【0121】
ポリペプチドは修飾形態、例えば融合タンパク質として発現させてもよく、分泌シグナルだけでなくさらなる異種機能性領域を含んでいてもよい。したがって例えば、さらなるアミノ酸、特に荷電アミノ酸の領域を、ポリペプチドのN-またはC-末端に付加して、精製または続く操作および保存の際の宿主細胞における安定性および持続性を向上させてもよい。また、精製を容易にするために領域をポリペプチドに付加してもよい。かかる領域はポリペプチドの最終調製の前に除くとよい。分泌または排出を起こすため、安定性を向上させるため、または精製を促進するための、ペプチド部分のポリペプチドへの付加はよく知られており、当該技術分野で常套の技術である。好ましい融合タンパク質は、ポリペプチドの可溶化または精製に有用な免疫グロブリンからの異種領域を含む。例えば、EP-A-O 42-3、5、10、14、16、18、22-24、27 533 (カナダ対応2045869)は、免疫グロブリン分子の定常部の様々な部分とともにその他のタンパク質またはその部分を含む融合タンパク質を開示している。創薬において、例えば、タンパク質を抗体 Fc 部分と融合させて、アンタゴニストの同定のためのハイスループットスクリーニングアッセイが行われている。例えば{Bennett、D. et al.、1995}および{Johanson、K. et al.、1995}を参照されたい。
【0122】
表皮ブドウ球菌過免疫血清反応性抗原またはその断片は組換え細胞培養物から周知の方法によって回収および精製できる。かかる方法は例えば、硫安またはエタノール沈殿、酸抽出、陽イオンまたは陰イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィーおよびレクチンクロマトグラフィーである。
【0123】
本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片は化学合成および生物工学手段によって作ることが出来る。後者は、本発明による核酸を含むベクターによる宿主細胞の形質移入または形質転換、および、形質移入または形質転換された宿主細胞の当業者に知られた条件下での培養を含む。産生方法は作るべきポリペプチドの精製または単離のために精製工程を含んでいてもよい。好ましい態様において、ベクターは本発明によるベクターである。
【0124】
本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片は生物またはそれ由来のポリペプチドを含むサンプルにおける1以上の生物の検出にも用いることが出来る。好ましくはかかる検出は診断のためであり、より好ましくは疾患の診断のためであり、もっとも好ましくは、グラム陽性細菌、特にブドウ球菌、連鎖球菌およびラクトコッカスを含む群から選択される細菌の存在または量に関連または連関する疾患の診断のためである。より好ましくは、微生物は黄色ブドウ球菌および腐性ブドウ球菌(Staphylococcus saprophyticus)を含む群から選択され、特に微生物は表皮ブドウ球菌である。
【0125】
本発明はまた、細胞および組織における本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片のレベルの検出のための定量および診断アッセイといった診断アッセイにも関し、レベルが正常であるか異常であるかの判定も含む。したがって、例えば、正常対照組織サンプルと比較したポリペプチドの過剰発現を検出するための本発明による診断アッセイを用いて感染の存在を検出することが出来、例えば、感染生物を同定することが出来る。宿主に由来するサンプルにおけるポリペプチドのレベルの測定のために用いることが出来るアッセイ技術は当業者に周知である。かかるアッセイ方法には、ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウェスタンブロット分析およびELISA アッセイが含まれる。なかでも、ELISAはしばしば好ましい。ELISA アッセイはまず、ポリペプチドに対して特異的な抗体、好ましくはモノクローナル抗体の調製を含む。さらに、モノクローナル抗体に結合するレポーター抗体が一般に調製される。レポーター抗体は、検出可能な試薬、例えば、放射性、蛍光性またはセイヨウワサビペルオキシダーゼ酵素などの酵素試薬、に結合している。
【0126】
本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片はアレイの目的で、またはアレイと組み合わせて用いてもよい。より具体的には、少なくとも1つの本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片を支持体に固定化すればよい。該支持体は典型的には多様な過免疫血清反応性抗原およびその断片を含み、その多様性は1または数個の本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片および/または異なる過免疫血清反応性抗原およびその断片の使用によって作ることが出来る。かかるアレイおよび一般のアレイの特徴は、該支持体またはその表面上の特有の、またはあらかじめ決められた領域または位置において、特有のポリペプチドが固定化されているということである。このためアレイの特有の位置または領域のあらゆる活性を特定のポリペプチドに関連づけることが出来る。支持体に固定化された異なる過免疫血清反応性抗原およびその断片の数は10〜数千種類の範囲の過免疫血清反応性抗原およびその断片でありうる。1cm2当たりの過免疫血清反応性抗原およびその断片の密度は、好ましい態様において、1cm2当たり10 ペプチド/ポリペプチド〜1cm2当たり少なくとも 400種類のペプチド/ポリペプチドであり、より具体的には1cm2当たり少なくとも 1000種類の過免疫血清反応性抗原およびその断片である。
【0127】
かかるアレイの製造は当業者に知られており、例えば、米国特許 5744309号に記載されている。アレイは好ましくは少なくとも第一の表面を有する平面状、多孔性または非孔性固体支持体を含む。本明細書に開示する過免疫血清反応性抗原およびその断片を該表面に固定化する。好ましい支持体材料は、特に、ガラスまたはセルロースである。アレイを本明細書に記載する診断用途のいずれに用いる場合も本発明に含まれる。本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片だけでなく、本発明による核酸分子も上記のアレイの作成に用いることが出来る。本明細書に記載する抗体、好ましくはモノクローナル抗体でできたアレイにもこれは当てはまる。
【0128】
さらなる態様において、本発明は、本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片、その誘導体または断片に対する抗体にも関する。本発明には例えば、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、およびFab断片、またはFab 発現ライブラリーの生成物も含まれる。抗体がキメラである場合、即ち、その異なる部分が異なる種由来である場合、または少なくともそれぞれの配列が異なる種から得られたものである場合も本発明に含まれる。
【0129】
本発明の配列に対応する過免疫血清反応性抗原およびその断片に対する抗体は、過免疫血清反応性抗原およびその断片の動物への直接の注射、または過免疫血清反応性抗原およびその断片の動物、好ましくは非-ヒトへの投与により得ることが出来る。そうして得られた抗体は過免疫血清反応性抗原およびその断片自体に結合する。このようにして、過免疫血清反応性抗原およびその断片の、断片のみをコードする配列であっても、全体のネイティブな過免疫血清反応性抗原およびその断片に結合する抗体の作成に用いることが出来る。かかる抗体はかかる過免疫血清反応性抗原およびその断片を発現する組織からの過免疫血清反応性抗原およびその断片の単離に用いることが出来る。
【0130】
モノクローナル抗体の調製のために、連続的な細胞株培養によって作られる抗体を提供する当該技術分野で知られているあらゆる技術を用いることが出来る (元々{Kohler、G. et al.、1975}に記載されている)。
【0131】
一本鎖抗体の産生について記載されている技術(米国特許第4946778号)は本発明による免疫原性過免疫血清反応性抗原およびその断片に対する一本鎖抗体の作成に適用することが出来る。また、トランスジェニックマウス、またはその他の哺乳類などのその他の生物を用いて、本発明による免疫原性過免疫血清反応性抗原およびその断片に対するヒト化抗体を発現させることができる。
【0132】
あるいは、ファージディスプレー技術またはリボゾームディスプレー(ribosomal display)を用いて、それぞれの標的抗原を有するようにスクリーニングされたヒトからのリンパ球のPCR 増幅されたv-遺伝子のレパートリー、または未処置ライブラリーのいずれかから、過免疫血清反応性抗原およびその断片に対して結合活性を有する抗体遺伝子を選択することが出来る{McCafferty、J. et al.、1990}; {Marks、J. et al.、1992}。かかる抗体の親和性は、鎖シャフリング(chain shuffling)によっても増強することが出来る{Clackson、T. et al.、1991}。
【0133】
2つの抗原結合ドメインが存在する場合、各ドメインは異なるエピトープに対するものでもよく、「二重特異的」抗体と称される。
【0134】
上記抗体を用いて過免疫血清反応性抗原およびその断片を発現するクローンの単離または同定、あるいは本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片の精製を行ってもよく、これは、単離のための固体支持体への抗体の結合および/または親和性クロマトグラフィーによる精製による。
【0135】
したがって、とりわけ、本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片に対する抗体は感染、特に細菌感染症、特に表皮ブドウ球菌による感染症の阻害および/または治療に用いることが出来る。
【0136】
過免疫血清反応性抗原およびその断片は、抗原的に、エピトープ的に(epitopically)または免疫学的に同等な誘導体を含み、これらは本発明の特定の態様を形成する。本明細書において用いる「抗原的に同等な誘導体」の語は、本発明によるタンパク質または過免疫血清反応性抗原およびその断片に対し生じた場合、病原菌と哺乳類宿主との相互作用に干渉する特定の抗体によって特異的に認識される過免疫血清反応性抗原およびその断片またはその同等物を含む。本明細書において用いる「免疫学的に同等な誘導体」の語は、脊椎動物において抗体をつくるための好適な製剤中で用いられた場合、抗体が病原菌と哺乳類宿主との相互作用を干渉するよう作用するペプチドまたはその同等物を含む。
【0137】
過免疫血清反応性抗原およびその断片、例えば、抗原的または免疫学的に同等なその誘導体または融合タンパク質はマウスまたはその他の動物、例えばラットまたはニワトリの免疫化のための抗原として用いることが出来る。融合タンパク質は過免疫血清反応性抗原およびその断片に安定性を付与しうる。抗原は、例えば、免疫原性キャリアタンパク質、例えばウシ血清アルブミン (BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン (KLH)と、接合によって、結合させることが出来る。あるいは、多コピーのタンパク質または過免疫血清反応性抗原およびその断片、あるいは抗原的または免疫学的に同等な過免疫血清反応性抗原およびその断片を含む抗原性ペプチドは、キャリアの使用が不要となるよう免疫原性を向上させるよう十分に抗原性であり得る。
【0138】
好ましくは、抗体またはその誘導体は個体中で免疫原性が低くなるよう改変する。例えば、個体がヒトの場合、抗体はもっとも好ましくは「ヒト化」し、ここで例えば{Jones、P. et al.、1986}または{Tempest、P. et al.、1991}に記載のように、ハイブリドーマ-由来抗体の相補性決定領域をヒトモノクローナル抗体に移植する。
【0139】
遺伝子による免疫法における本発明のポリヌクレオチドの使用には、好ましくは好適な送達方法を用いる。例えば、筋肉へのプラスミド DNAの直接注射、特定のタンパク質キャリアと複合化したDNAの送達、DNA とリン酸カルシウムとの共沈、様々な形態のリポソーム中へのDNAのカプセル封入、微粒子銃 {Tang、D. et al.、1992}、{Eisenbraun、M. et al.、1993}およびクローン化されたレトロウイルスベクターを用いたインビボ感染等である{Seeger、C. et al.、1984}。
【0140】
さらなる態様において、本発明は、本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片のいずれかに結合するペプチド、およびかかるペプチドの製造方法に関し、ここでその方法は、本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片の使用および当業者に知られた基本的工程の使用を特徴とする。
【0141】
かかるペプチドは当該技術分野の最新の方法、例えばファージディスプレーまたはリボゾームディスプレーを用いて作ることが出来る。ファージディスプレーの場合、基本的にはファージの形態においてペプチドのライブラリーを作り、この種のライブラリーを標的分子、ここでは本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片と接触させる。標的分子に結合するペプチドは次いで、好ましくは標的分子との複合体として、それぞれの反応から取り出す。結合特性は、少なくともある程度は、具体的に実施した実験設定、例えば、塩濃度等に依存することが当業者に知られている。高い親和性即ち強い力で標的分子に結合するペプチドを、ライブラリーの非結合メンバーから分離した後、そして所望により標的分子とペプチドの複合体から標的分子を除いた後、それぞれのペプチドを特徴づけるとよい。特徴付けに先立って、所望により増幅工程をおこなってもよく、例えば、ペプチドをコードするファージを増殖させる。特徴付けは好ましくは標的結合ペプチドの配列決定を含む。基本的には、ペプチドは長さによって制限されないが、しかし、約8〜20 アミノ酸の長さを有するペプチドが好ましくはそれぞれの方法において得られる。ライブラリーのサイズは約102〜1018、好ましくは 108 〜1015 種類のペプチドであるが、それに限定されない。
【0142】
特定の形態の標的結合過免疫血清反応性抗原およびその断片はいわゆる「アンチカリン」であり、独特許出願DE 197 42 706に記載されている。
【0143】
さらなる態様において、本発明は、本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片のいずれかと相互作用する機能的核酸、およびかかる機能的核酸の製造方法に関し、ここで該方法は、本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片および当業者に知られた基本的工程の使用を特徴とする。機能的核酸は好ましくはアプタマーおよびスピーゲルマーである。
【0144】
アプタマーは、一本鎖または二本鎖であって、標的分子と特異的に相互作用するD-核酸である。アプタマーの製造または選択は、例えば欧州特許 EP 0 533 838に記載されている。基本的には以下の工程を実施する。第一に、核酸の混合物、即ち潜在的アプタマーを提供し、ここで各核酸は典型的には数個、好ましくは少なくとも8の続くランダムなヌクレオチドのセグメントを含む。この混合物をついで標的分子と接触させ、これによって例えば候補混合物と比較して標的に対する高い親和性または強い力に基づいて核酸が標的分子に結合する。結合核酸を次いで混合物の残りから分離する。所望により、こうして得られた核酸を、例えばポリメラーゼ連鎖反応を用いて増幅する。これらの工程を数回繰り返して最終的に標的に特異的に結合する核酸の比が上昇した混合物が得られ、これから最終的な結合核酸が所望により選択される。かかる特異的に結合する核酸は、アプタマーと称される。アプタマーの作成または同定方法のいずれの段階においても、個々の核酸の混合物のサンプルを採取して、標準的技術を用いて配列を調べることが出来ることが明らかである。例えば、アプタマーの作成の当業者に知られた特定の化学基を導入することによってアプタマーが安定化されていてもよく、これも本発明に含まれる。かかる修飾は例えばヌクレオチドの糖部分の2'-位へのアミノ基の導入である。アプタマーは現在治療薬として用いられている。しかし標的バリデーションのため、および/または、医薬、好ましくは低分子に基づく医薬の開発のためのリード物質として、選択または作成したアプタマーを用いることができるということも本発明に含まれる。これは実際は競合アッセイにより行われ、ここで、標的分子とアプタマーとの特異的相互作用が候補薬剤によって阻害され、標的とアプタマーの複合体からのアプタマーの置換により、それぞれの薬剤候補が標的とアプタマーの間の相互作用の特異的阻害を可能にすると考えられ、その相互作用が特異的である場合、該候補薬剤は、少なくとも理論的には、標的の阻害に好適であり、したがってかかる標的を含むそれぞれの系における生物学的有効性または活性を減少させる。このように得られた低分子を次いでさらなる誘導体化および修飾に供し、その物理的、化学的、生物学的および/または医学的特徴、例えば、毒性、特異性、生分解性およびバイオアベイラビリティを最適化するとよい。
【0145】
スピーゲルマーおよびその作成または製造は同様の原理に基づく。スピーゲルマーの製造は国際特許出願 WO 98/08856に記載されている。スピーゲルマーはL-核酸であり、アプタマーがD-ヌクレオチドから構成されるのに対してL-ヌクレオチドから構成されることを意味する。スピーゲルマーは生物系において非常に高い安定性を有することを特徴とし、アプタマーと同様、それが向けられた標的分子と特異的に相互作用する。スピーゲルマーの作成工程において、D-核酸の不均一な集団を作り、この集団を標的分子の光学異性体、この場合例えば、本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片の天然の L-エナンチオマーのD-エナンチオマーと接触させる。次いで、標的分子の光学異性体と相互作用しないD-核酸を分離する。しかし、標的分子の光学異性体と相互作用するD-核酸を分離し、所望により同定および/または配列決定し、次いで対応するL-核酸をD-核酸から得られた核酸配列情報に基づいて合成する。標的分子の光学異性体と相互作用する上記のD-核酸と配列の点では同じであるこれらL-核酸はその光学異性体ではなく、天然の標的分子と特異的に相互作用する。アプタマーの作成方法と同様に、様々な工程を数回繰り返して、標的分子の光学異性体に特異的に相互作用する核酸を濃縮することが可能である。
【0146】
さらなる態様において、本発明は本発明による核酸分子のいずれかと相互作用する機能的核酸およびかかる機能的核酸の作成方法に関し、ここで該方法は本発明による核酸分子とそのぞれぞれの配列および当業者に知られた基本的工程の使用を特徴とする。機能的核酸は好ましくはリボザイム、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびsiRNAである。
【0147】
リボザイムは触媒的に活性の核酸であり、好ましくはRNAからなり、基本的には2つの部分を含む。第一の部分は触媒活性を示し、第二の部分は標的核酸、この場合本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片をコードする核酸との特異的相互作用を担当する。典型的には、2つのハイブリダイズする鎖上の塩基の実質的に相補的なストレッチのハイブリダイゼーションとワトソン・クリック塩基対形成による、標的核酸とリボザイムの第二の部分との相互作用により、触媒活性部分が活性となる。即ち、リボザイムの触媒活性がホスホジエステラーゼ活性の場合、それが分子内または分子間的に標的核酸を触媒する。次いで、さらに標的核酸の分解が起こり、最終的には標的核酸ならびに標的核酸に由来するタンパク質が分解される。リボザイム、その使用および設計原理は当業者に知られており、例えば、{Doherty、E. et al.、2001}および{Lewin、A. et al.、2001}に記載されている。
【0148】
医薬の製造のため、および診断薬としてのアンチセンスオリゴヌクレオチドの活性および設計はそれぞれ同様の作用機序に基づく。基本的には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは塩基相補性に基づき、標的RNA、好ましくは mRNAにハイブリダイズし、それによって RNase Hを活性化する。RNase Hはホスホジエステルおよびホスホロチオエート連結DNAの両方によって活性化される。ホスホジエステル-連結DNAはしかし、細胞内ヌクレアーゼによって容易に分解されるがホスホロチオエート連結DNA はそうではない。これらの耐性の、非-天然の DNA 誘導体はRNAとのハイブリダイゼーションによってRNase Hを阻害しない。言い換えると、アンチセンスポリヌクレオチドはDNA RNA ハイブリッド複合体としてのみ有効である。この種のアンチセンスオリゴヌクレオチドの例は、米国特許5,849,902および5,989,912に記載されている。言い換えると、この場合は本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片に対する核酸分子である標的分子の核酸配列に基づいて、それぞれの核酸配列が論理的に推定された標的タンパク質から、あるいは、核酸配列、特にmRNA自体を知ることにより、好適なアンチセンスオリゴヌクレオチドが塩基相補性の原理に基づいて設計できる。
【0149】
短いストレッチのホスホロチオエート DNA (3〜9塩基)を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドが特に好ましい。細菌RNase H の活性化には最低3 DNA 塩基が必要であり、哺乳類RNase Hの活性化には最低5塩基が必要である。これらキメラオリゴヌクレオチドにおいて、RNase Hに対する基質を形成しない修飾ヌクレオチドからなるハイブリダイズする「腕」によって挟まれているRNase Hに対する基質を形成する中心領域がある。キメラオリゴヌクレオチドのハイブリダイズする腕は例えば2'-O-メチルまたは2'-フルオロによって修飾されていてもよい。別のアプローチでは、メチルホスホネートまたはホスホラミダート結合を該腕において用いた。本発明の実施に有用なアンチセンスオリゴヌクレオチドのさらなる態様はP-メトキシオリゴヌクレオチド、部分P-メトキシオリゴデオキシリボヌクレオチドまたはP-メトキシオリゴヌクレオチドである。
【0150】
本発明に特に関連する用途はより具体的には上記2つの米国特許に記載のアンチセンスオリゴヌクレオチドである。これらオリゴヌクレオチドは天然の 5'→3'-連結ヌクレオチドを含まない。そうではなく、オリゴヌクレオチドは2タイプのヌクレオチドを有する: RNase H を活性化する2'-デオキシホスホロチオエート、および活性化しない2'-修飾ヌクレオチドである。 2'-修飾ヌクレオチド間の連結は、ホスホジエステル、ホスホロチオエートまたは P-エトキシホスホジエステルでありうる。RNase Hの活性化は近接するRNase H-活性化領域によって達成され、これは細菌RNase Hの活性化には3〜 5の2'-デオキシホスホロチオエートヌクレオチドを含み、真核生物、特に哺乳類RNase Hの活性化のためには5〜10の2'- デオキシホスホロチオエートヌクレオチドを含む。分解からの保護は5' および3' 末端塩基を高度にヌクレアーゼに耐性にし、そして所望により3'末端保護基をつけることによって達成する。
【0151】
より具体的には、アンチセンスオリゴヌクレオチドは5'末端および3'末端; そして位置11 〜 59に 2'-修飾ホスホジエステル ヌクレオチドおよび 2'-修飾 P-アルキルオキシホスホトリエステルヌクレオチドからなる群から独立に選択される5'→3'-連結ヌクレオチド; を含み、ここで5'末端ヌクレオシドは3〜10の近接するホスホロチオエート連結デオキシリボヌクレオチドのRNase H-活性化領域に連結し、該オリゴヌクレオチドの3'-末端は以下からなる群から選択される:逆位(inverted)デオキシリボヌクレオチド、近接するストレッチの1〜3のホスホロチオエート 2'-修飾リボヌクレオチド、ビオチン基およびP-アルキルオキシホスホトリエステルヌクレオチド。
【0152】
5' 末端ヌクレオシドが RNase H-活性化領域に連結しておらず、3' 末端ヌクレオシドが上記のようなアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いることも出来る。また、オリゴヌクレオチドの3' 末端ではなく5' 末端が特定の基から選択されるものでもよい。
【0153】
本発明による核酸および過免疫血清反応性抗原およびその断片は、医薬組成物、特にワクチンの製造に用いることが出来る。好ましくはかかる医薬組成物、好ましくはワクチンは表皮ブドウ球菌によって引き起こされる、または関連する疾患の予防または治療用である。さらなる態様において本発明は、個体、特に哺乳類において免疫応答を誘導する方法に関し、該方法は、感染、特にブドウ球菌感染、そしてもっとも具体的には表皮ブドウ球菌感染症から個体を保護するための抗体の産生に適当な本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片、またはその断片または変異形を個体に接種することを含む。
【0154】
本発明のさらに別の態様は、個体における免疫応答の誘導方法に関し、該方法は、遺伝子療法その他を介して、過免疫血清反応性抗原およびその断片、またはその断片または変異形をインビボで発現する過免疫血清反応性抗原およびその断片、またはその断片または変異形を機能的にコードする核酸を、抗体を産生する免疫応答または、サイトカイン産生T 細胞または細胞障害性T細胞のいずれかの細胞媒介T 細胞応答を誘導するために送達することを含み、疾患から該個体を保護するためのものである。ここで疾患は既に個体に確立しているものでもそうでなくてもよい。遺伝子の投与の1つの方法は、粒子の被覆その他として所望の細胞へとそれを加速させることによる。
【0155】
本発明のさらなる態様は免疫学的組成物に関し、そのなかで免疫応答を誘導することが出来る宿主に導入すると、かかる宿主に免疫応答を起こすものであり、ここで該組成物は本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片の抗原をコードおよび発現する組換え DNAを含む。免疫応答は治療的または予防的に用いてもよく、抗体免疫または細胞性免疫、例えばCTL またはCD4+ T 細胞によるもののいずれの形態でもよい。
【0156】
本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片またはその断片はそれ自体では抗体を産生できないが、第一のタンパク質を安定化させることが出来、免疫原性および保護特性を有する融合タンパク質を作るような共-タンパク質と融合させてもよい。この融合組換えタンパク質は好ましくはさらに、抗原性共-タンパク質、例えば、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ (GST)または ベータ・ガラクトシダーゼ、タンパク質を可溶化し、その産生および精製を容易にする比較的大きい共-タンパク質を含んでもよい。さらに共-タンパク質は免疫系の全身刺激を提供する意味でアジュバントとしても作用しうる。共-タンパク質は第一のタンパク質のアミノまたはカルボキシ末端のいずれに結合させてもよい。
【0157】
また、本発明によって、表皮ブドウ球菌による感染の動物モデルにおける遺伝子による免疫法の実験における上記核酸分子またはその特定の断片の使用方法も提供される。かかる断片は予防的または治療的免疫応答を誘発することができるタンパク質エピトープの同定に特に有用である。このアプローチにより、哺乳類、特にヒトにおける表皮ブドウ球菌感染症の予防薬または治療薬の開発のために、感染に抵抗し、排除することが出来る動物の要求される器官から、特に有用なモノクローナル抗体の調製が可能となる。
【0158】
過免疫血清反応性抗原およびその断片は、細菌の侵入から保護する、例えば、細菌の損傷組織への付着を阻害する特異的抗体を産生するための、宿主のワクチン接種ための抗原として利用できる。組織損傷の例には、例えば、機械的、化学的または熱的損傷による、または留置装置の埋め込みによる皮膚または結合組織の創傷、粘膜の損傷、例えば口腔、乳腺、尿道または膣の損傷が含まれる。
【0159】
本発明はまた、免疫原性組換えタンパク質と好適なキャリアを含むワクチン製剤も含む。タンパク質は胃で分解されるので、それは好ましくは非経口的に投与し、例えば、皮下、筋肉内、静脈内、皮内、鼻腔内または経皮投与が挙げられる。非経口投与に好適な製剤には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および、製剤を、個体の体液、好ましくは血液と等張にする溶質を含んでいてもよい水性または非水性無菌注射溶液; 懸濁剤または増粘剤を含んでいてもよい水性および非水性無菌懸濁液が含まれる。製剤は、単位用量または複数用量の例えば、密封アンプルおよびバイアルなどの容器において提供されてもよいし、使用の直前に無菌の液体のキャリアを添加するだけでよい凍結乾燥状態で保存してもよい。ワクチン製剤は製剤の免疫原性を増強するためのアジュバント系を含んでいてもよく、例えば水中油系および当該技術分野で知られているその他の系が挙げられる。用量はワクチンの特定の活性に依存し、常套の実験によって容易に決定できる。
【0160】
本発明は別の態様によると、表皮ブドウ球菌のための本発明において提供される過免疫血清反応性抗原またはその断片を含む医薬組成物に関する。かかる医薬組成物は表皮ブドウ球菌に対する1以上の過免疫血清反応性抗原またはその断片を含んでいてもよい。所望により、かかる表皮ブドウ球菌過免疫血清反応性抗原またはその断片はその他の病原菌に対する抗原を組み合わせ医薬組成物中にて混合したものでもよい。好ましくは、該医薬組成物は、表皮ブドウ球菌および/またはその抗原がワクチンに含まれているその他の病原菌によって引き起こされる感染症の予防または治療用のワクチンである。
【0161】
さらなる態様によると、本発明は表皮ブドウ球菌について同定された過免疫血清反応性抗原またはその断片をコードする核酸分子を含む医薬組成物に関する。かかる医薬組成物は1以上の表皮ブドウ球菌に対する過免疫血清反応性抗原またはその断片をコードする核酸分子を含んでいてよい。所望により、かかる過免疫血清反応性抗原またはその断片をコードする表皮ブドウ球菌核酸分子はその他の病原菌に対する抗原をコードする核酸分子を組み合わせ医薬組成物中にて混合したものでもよい。好ましくは、該医薬組成物は、表皮ブドウ球菌 および/またはその抗原がワクチンに含まれているその他の病原菌によって引き起こされる感染症の予防または治療用のワクチンである。
【0162】
医薬組成物はいずれの好適な補助物質を含んでいてもよく、例えば、緩衝物質、安定剤またはさらなる活性成分、特に医薬組成物および/またはワクチン産生に関連して知られている成分が挙げられる。
【0163】
本発明による過免疫血清反応性抗原、その断片またはそれをコードする核酸分子のための好ましいキャリアまたは賦形剤は、所与の過免疫血清反応性抗原、その断片またはそれをコードする核酸分子に対する免疫応答をさらに刺激する免疫賦活性化合物である。好ましくは本発明による医薬調製物における免疫賦活性化合物は以下からなる群から選択される:ポリカチオン性物質、特にポリカチオン性ペプチド、免疫賦活性核酸分子、好ましくは免疫賦活性デオキシヌクレオチド、ミョウバン、フロイント完全アジュバント、フロイント不完全アジュバント、向神経活性化合物、特にヒト成長ホルモン、またはそれらの組み合わせ。
【0164】
本発明による過免疫血清反応性抗原、その断片および/またはそれをコードする核酸分子以外に、生物学的または医薬上活性なその他の化合物を含む医薬組成物、特にワクチンも本発明に含まれる。好ましくは、ワクチン組成物は少なくとも1つのポリカチオン性ペプチドを含む。本発明によって用いられるポリカチオン性化合物はWO 97/30721 に記載の特徴的な効果を示すいずれのポリカチオン性化合物でもよい。好ましいポリカチオン性化合物は塩基性ポリッペチド(polyppetide)、有機性ポリカチオン、塩基性ポリアミノ酸またはそれらの混合物から選択される。かかるポリアミノ酸は少なくとも4アミノ酸残基の長さの鎖を有さなければならない(WO 97/30721)。特に好ましいのはポリリジン、ポリアルギニンなどの物質および、20 %より多い、特に50 %より多い塩基性アミノ酸を含み、8を超える、特に20を超えるアミノ酸残基のポリペプチドまたはその混合物である。その他の好ましいポリカチオンおよびその医薬組成物はWO 97/30721 (例えば、ポリエチレンイミン)および WO 99/38528に記載されている。好ましくはかかるポリペプチドは20〜500 アミノ酸残基、特に30〜200残基を含む。
【0165】
かかるポリカチオン性化合物は化学的または組換え的に作ってもよいし、天然源由来のものでもよい。
【0166】
カチオン性 (ポリ)ペプチドは{Ganz、T.、1999}に概説されている性質を有し、抗菌性でもありうる。これら(ポリ)ペプチドは原核生物または動物または植物のいずれの由来であってもよく、化学的に合成しても組換えにより作ってもよい(WO 02/13857)。ペプチドはデフェンシンのクラスに属するものでもよい(WO 02/13857)。かかるペプチドの配列は例えば、以下のインターネットアドレスのAntimicrobial Sequence Databaseにおいてみられる:http://www.bbcm.univ.trieste.it/~tossi/pag2.html。
【0167】
かかる宿主防御ペプチドまたは防御物質(defensives)もまた本発明によるポリカチオン性ポリマーの好ましい形態である。一般に、最終産物として、好ましくはAPCによって媒介される(樹状細胞を含む)適応性免疫系の活性化(または下方制御)を可能とする化合物が、ポリカチオン性ポリマーとして用いられる。
【0168】
本発明におけるポリカチオン性物質としての使用に特に好適なのは、カテリシジン(cathelicidin)由来の抗菌ペプチドまたはその誘導体 (国際特許出願 WO 02/13857、引用により本明細書に含める)、特に哺乳類カテリシジン由来の抗菌ペプチド、好ましくはヒト、ウシまたはマウス由来のものである。
【0169】
天然源由来のポリカチオン性化合物には、HIV-REVまたは HIV-TAT (由来カチオン性ペプチド、アンテナペディアペプチド、キトサンまたはその他のキチンの誘導体)あるいはこれらペプチドまたはタンパク質由来の生化学的または組換え産生によるその他のペプチドが挙げられる。その他の好ましいポリカチオン性化合物はカテリン(cathelin)またはカテリンに関連または由来する物質である。例えば、マウスカテリンはアミノ酸配列 NH2-RLAGLLRKGGEKIGEKLKKIGOKIKNFFQKLVPQPE-COOHを有するペプチドである。関連または由来カテリン物質は少なくとも 15-20 アミノ酸残基を有するカテリン 配列の全部または一部を含む。誘導には20の標準アミノ酸以外のアミノ酸による天然のアミノ酸の置換または修飾が含まれる。さらに、さらなるカチオン性残基をかかるカテリン分子に導入してもよい。これらカテリン分子は抗原との混合に好ましい。これらカテリン分子は驚くべきことに、さらなるアジュバントを添加しなくても抗原のためのアジュバントとして有効であることが判明した。それゆえ、さらなる免疫賦活性物質とともに、またはそれをともなわずに、ワクチン製剤中に有効なアジュバントとしてかかるカテリン分子を用いることが出来る。
【0170】
本発明により用いられる別の好ましいポリカチオン性物質は、3 〜 7の疎水性アミノ酸のリンカーによって分離されている少なくとも 2のKLK-モチーフを含む合成ペプチドである (国際特許出願 WO 02/32451、引用により本明細書に含める)。
【0171】
本発明の医薬組成物はさらに免疫賦活性核酸を含んでいてもよい。免疫賦活性核酸は例えば、天然または合成のCpG含有核酸、または非脊椎動物由来の短いストレッチの核酸、または非メチル化シトシン-グアニンジ-ヌクレオチド(CpG)を特定の塩基中に含む短いオリゴヌクレオチド(ODN)の形態である(例えば、WO 96/02555に記載)。あるいは、例えばWO 01/93903に記載のイノシンおよびシチジンに基づく核酸、またはデオキシ-イノシンおよび/または デオキシウリジン残基を含むデオキシ核酸(WO 01/93905 および PCT/EP 02/05448に記載、引用により本明細書に含める)が好ましくは本発明の免疫賦活性核酸として用いることが出来る。好ましくは、異なる免疫賦活性核酸の混合物を本発明によって用いる。
【0172】
上記のいずれかのポリカチオン性化合物が上記のいずれかの免疫賦活性核酸と組み合わされたものも本発明に含まれる。好ましくは、かかる組み合わせはWO 01/93905、WO 02/32451、WO 01/54720、WO 01/93903、WO 02/13857およびPCT/EP 02/05448および豪特許出願A 1924/2001に記載のものであり、引用により本明細書に含める。
【0173】
さらにまたはあるいは、かかるワクチン組成物は本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片、およびそれをコードする核酸分子の他に向神経活性化合物を含んでいてもよい。好ましくは、向神経活性化合物は例えばWO 01/24822に記載のヒト成長因子である。また好ましくは、向神経活性化合物は上記のいずれかのポリカチオン性化合物および/または免疫賦活性核酸と組み合わされる。
【0174】
さらなる態様において、本発明は医薬組成物に関する。かかる医薬組成物は例えば、本明細書に記載するワクチンである。また、医薬組成物は、以下の化合物またはその組み合わせのいずれかを含む医薬組成物である: 本発明による核酸分子、本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片、本発明によるベクター、本発明による細胞、本発明による抗体、本発明による機能的核酸、本発明によるアンチカリンなどの結合性ペプチド、本明細書に記載するようにスクリーニングされたいずれかのアゴニストおよびアンタゴニスト。それらに関連してこれら化合物のいずれも、非無菌または無菌の1以上の細胞、組織または生物用キャリア、例えば、対象への投与に好適な医薬用キャリアと組み合わせて用いることが出来る。かかる組成物は例えば、培地添加剤(media additive)または治療上有効量の本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片および医薬上許容されるキャリアまたは賦形剤を含む。かかるキャリアにはこれらに限定されないが、生理食塩水、緩衝食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノールおよびそれらの組み合わせが含まれる。製剤は投与様式に適合したものでなければならない。
【0175】
医薬組成物は有効な便宜な方法で投与すればよく、例えば、局所、経口、肛門、膣、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、鼻腔内または皮内経路によって投与すればよい。
【0176】
治療または予防において、活性薬剤は、注射可能組成物、例えば好ましくは等張の無菌水性分散液として個体に投与すればよい。
【0177】
あるいは、組成物は局所用に製剤してもよく、例えば、軟膏、クリーム、ローション、眼軟膏、点眼剤、点耳剤、洗口、浸透性包帯剤および縫合およびエアロゾルの形態であって、適宜便宜な以下のような添加剤を含んでいてもよい:例えば、保存料、薬剤浸透を補助する溶媒、および軟膏およびクリームにおける緩和剤。かかる局所製剤は適合性の常套のキャリア、例えばクリームまたは軟膏基剤、およびローション用のエタノールまたはオレイルアルコールを含んでいてもよい。かかるキャリアは製剤の約 1 重量% 〜約 98重量%を構成するのがよい;より通常は製剤の約 80 重量%までを構成する。
【0178】
上記治療に加えて、本発明の組成物は、創傷組織において曝されたマトリックスタンパク質への細菌の付着を妨げる創傷治療剤としても一般に使用でき、抗菌予防法のかわりに、またはそれと組み合わせて歯科治療において予防的に用いることも出来る。
【0179】
ワクチン組成物は便宜に注射可能形態である。常套のアジュバントを用いて免疫応答を増強させることが出来る。ワクチン接種のための好適な単位用量は0.05-5 μg 抗原 / kg体重であり、かかる用量を好ましくは1-3 週間の間をあけて1-3回投与する。
【0180】
示された用量範囲において、好適な個体への投与が妨げられるような有害な毒性作用は本発明の化合物によって観察されるべきではない。
【0181】
さらなる態様において、本発明は本発明の上記組成物の1以上の成分を入れた1以上の容器を含む診断および医薬パックおよびキットに関する。成分は有用な量、用量、剤形または組み合わせで存在すればよい。かかる容器には、医薬または生物学的製品の製造、使用または販売を管理する政府機関によって規定された形態の指示書をつけて、ヒト投与への製品の製造、使用または販売が政府によって許可されたことを示してもよい。
【0182】
本発明に関して本明細書に開示する疾患に関連する使用、例えば、医薬組成物またはワクチンの使用は、特にブドウ球菌、より好ましくは、表皮ブドウ球菌によってもたらされるか、それに関連する疾患または疾患状態である。それに関して、表皮ブドウ球菌は本明細書に開示するものを含む複数の株を含むことに注意されたい。本発明によって予防および/または治療すべき細菌感染症によって引き起こされるか、それに関する疾患としては、異物の存在および装置、例えばカテーテルの使用に関連する疾患に加えて、ヒトにおける脳脊髄液シャント(shunt)感染、腹膜炎および心内膜炎が含まれる。
【0183】
さらなる態様において本発明は、本発明による過免疫血清反応性抗原または核酸のいずれかを用いるスクリーニング方法に関する。スクリーニング方法自体は当業者に知られており、アゴニストまたはアンタゴニストがスクリーニングされるように設計すればよい。好ましくは、この場合、本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片の相互作用パートナーへの結合を阻害または防止するアンタゴニストをスクリーニングする。かかる相互作用パートナーは天然の相互作用パートナーであっても非天然の相互作用パートナーであってもよい。
【0184】
本発明はまた、本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片または核酸分子の機能、例えば、その結合性分子との相互作用を増強する(アゴニスト)または阻害する(アンタゴニスト)ものを同定するための化合物のスクリーニング方法を提供する。スクリーニング方法はハイスループットのものも含む。
【0185】
例えば、アゴニストまたはアンタゴニストをスクリーニングするために、本発明による核酸分子および核酸の相互作用パートナーはそれぞれ、合成反応混合物、細胞内区画、例えば、膜、細胞外皮または細胞壁または、その調製物であってよく、本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片に結合する分子を発現する細胞から調製できる。調製物をアゴニストまたはアンタゴニストの候補分子の不在下または存在下で、標識した過免疫血清反応性抗原およびその断片とともにインキュベートする。候補分子の結合性分子に対する結合能力は、標識したリガンドの結合の減少によって反映される。意味無く結合する分子、即ち、過免疫血清反応性抗原およびその断片の機能性効果を誘導しないものはおそらく良好なアンタゴニストであろう。良好に結合し、過免疫血清反応性抗原およびその断片と同じまたは密接に関連する機能性効果を誘発する分子は良好なアゴニストである。
【0186】
潜在的アゴニストおよびアンタゴニストの機能性効果は、例えば、候補分子と細胞または適当な細胞調製物との相互作用を追跡するレポーターシステムの活性の測定、およびその効果を本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片または、過免疫血清反応性抗原およびその断片と同一の効果を誘発する分子による効果を比較することによって測定できる。この点で有用なレポーターシステムにはこれらに限定されないが、生成物に変換される比色標識された基質、過免疫血清反応性抗原およびその断片の機能的活性の変化に応答するレポーター遺伝子、および当該技術分野で知られた結合アッセイが含まれる。
【0187】
アンタゴニストのアッセイの別の例は競合アッセイであり、これは、本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片と、膜結合型結合性分子を含む潜在的アンタゴニスト、組換え結合性分子、天然の基質またはリガンドまたは基質またはリガンド疑似体とを、競合阻害アッセイに適当な条件下で混合するものである。過免疫血清反応性抗原およびその断片を放射能または比色化合物によって標識し、結合性分子に結合したか、または生成物に変換された過免疫血清反応性抗原およびその断片の分子数を正確に測定し、潜在的アンタゴニストの有効性を評価することが出来る。
【0188】
潜在的アンタゴニストには、本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片に結合し、それによってその活性を阻害または消失させる、有機低分子、ペプチド、ポリペプチドおよび抗体が含まれる。潜在的アンタゴニストはまた、本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片の機能的活性を誘導することなく、結合性分子の同じ部位に結合する有機低分子、ペプチド、ポリペプチド、例えば密接に関連するタンパク質または抗体であってもよい。
【0189】
潜在的アンタゴニストには、過免疫血清反応性抗原およびその断片の結合部位に結合してその部位を占有し、それによって細胞の結合性分子の結合を阻害し、正常の生理活性を妨げる低分子も含まれる。低分子の例としては、これらに限定されないが、有機低分子、ペプチドまたはペプチド-様分子が挙げられる。
【0190】
その他の潜在的アンタゴニストにはアンチセンス分子が含まれる(かかる分子の説明については{Okano、H. et al.、1991}; OLOGODEOXYNUCLEOTIDES AS ANTISENSE INHIBITORS OF GENE EXPRESSION; CRC Press、Boca Ration、FL (1988)、を参照されたい)。
【0191】
好ましい潜在的アンタゴニストには本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片の誘導体が含まれる。
【0192】
本明細書において用いる、本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片の活性は、その相互作用パートナーのいずれかと結合するその能力または、そのまたはいずれかの相互作用パートナーと結合するかかる能力の程度である。
【0193】
特定の態様において、本発明は、本発明の過免疫血清反応性抗原およびその断片、核酸分子または阻害剤の、感染の後遺症の原因である病原菌と哺乳類宿主との最初の物理的相互作用を阻害するための使用を提供する。特に本発明の分子は以下のように用いられる: i)留置装置上の哺乳類細胞外マトリックスタンパク質へのまたは創傷における細胞外マトリックスタンパク質への表皮ブドウ球菌の付着の予防; ii) 組織損傷を媒介する哺乳類細胞外マトリックスタンパク質と細菌タンパク質の細菌付着の阻害のための、例えば、哺乳類チロシンキナーゼのリン酸化の開始による、哺乳類細胞侵入によって媒介されるタンパク質の阻害{Rosenshine、I. et al.、1992} ; iv)留置装置の移植またはその他の外科技術以外によって開始される感染における病因の正常の進行の阻害。
【0194】
ここで提供されるDNA コード配列はいずれも抗細菌化合物の発見と開発に用いることが出来る。コードされるタンパク質は発現すると、抗細菌薬のスクリーニングのための標的として用いることが出来る。さらに、コードされるタンパク質のアミノ末端領域をコードするDNA 配列またはShine-Delgarno 配列またはそれぞれのmRNAのその他の翻訳促進配列を用いて問題のコード配列の発現を制御するアンチセンス配列を設計することが出来る。
【0195】
アンタゴニストおよびアゴニストは、例えば、ブドウ球菌、特に表皮ブドウ球菌による感染に起因する疾患、例えば敗血症を阻害するために用いることが出来る。
【0196】
さらなる態様において、本発明は親和性装置に関し、かかる親和性装置は、少なくとも支持体材料および支持体材料に結合させた本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片のいずれかを含む。その標的細胞または標的分子またはその相互作用パートナーに対する本発明による過免疫血清反応性抗原およびその断片の特異性のために、過免疫血清反応性抗原およびその断片は、結合のための条件が合えば、支持体材料に適用したいずれかのサンプルからの相互作用パートナーを選択的に取り出すことを可能とする。サンプルは生物サンプルまたは医学サンプルでよく、これらに限定されないが、発酵ブロス、細胞細片、細胞調製物、組織調製物、器官調製物、血液、尿、リンパ液、髄液などが含まれる。
【0197】
過免疫血清反応性抗原およびその断片はマトリックスに共有または非共有結合させればよい。好適な支持体材料は当業者に知られており、セルロース、シリコン、ガラス、アルミニウム、常磁性ビーズ、デンプンおよびデキストランを含む群から選択される。
【0198】
本発明はさらに、以下の図面、実施例および配列表によって説明され、そこから特徴、態様および利点が理解される。本実施例は説明の目的であって開示を限定するものではないことを理解されたい。
【0199】
本発明に関して、
図 1は、選択された、表皮ブドウ球菌に特異的なヒト高力価血清の特徴付けを示す。
【0200】
図 2は、表皮ブドウ球菌 RP62Aからの小断片ゲノムライブラリー、LSE-70の特徴付けを示す。
【0201】
図 3は、ビオチン化ヒト IgGを用いるMACSによる細菌細胞の選択を示す。
【0202】
図 4は、同定された抗原による遺伝子分布研究の例を示す。
【0203】
表1は、ゲノム表皮ブドウ球菌ライブラリーおよびヒト血清を用いて行ったスクリーニングの要約および選択された抗原についての遺伝子分布データを示す。
【0204】
本明細書において参照すべき図面を以下にさらに詳細に説明する。
【0205】
図 1は、 表皮ブドウ球菌抗原の同定のためのヒト血清サンプルの特徴付けおよび選択を示す。(A) ELISA: 全抗-表皮ブドウ球菌 IgGを2種類の血清希釈で全細菌可溶化液を被覆抗原として用いて標準的ELISAによって測定した。5つの血清 (EP.1-5)を表皮ブドウ球菌腹膜炎を患う患者から得た血清収集物から選択した。 C、非関連感染を有する患者からの対照血清。(B) イムノブロット分析: 選択した高力価血清を、8種類の表皮ブドウ球菌臨床分離株(レーン1-8)、および表皮ブドウ球菌 株 RP62A (レーンC)から調製した全細菌可溶化液を用いてイムノブロッティングによって特徴づけた。各レーンにおいて、〜20μの、BHI培地で一晩培養した細菌から抽出した全可溶化液タンパク質をローディングした。代表的イムノブロットを EP.4 血清について示す。膜を希釈度5,000のEP.4 血清とインキュベートし、抗-ヒト IgG二次試薬で現像した。Mw、タンパク質標準 (kDa)。
【0206】
図 2Aは、表皮ブドウ球菌 RP62A 小断片ゲノムライブラリー、LSE-70の断片サイズの分布を示す。572のランダムに選択したクローンを配列決定した後、配列を切断してベクター残基を除き、様々なゲノム断片サイズを有するクローンの数をプロットした。(B) 表皮ブドウ球菌染色体上の、LSE-70の同じセットのランダムに配列決定したクローンの分布のグラフ表示。丸は、+/+ および +/-方向において注釈をつけたORFに一致する配列を示す。四角は、+/+および +/-方向において非コード染色体配列に対して完全に一致したクローンを示す。菱形は、すべてのキメラクローン配列の最良の一致を位置づける。塩基対における数の距離は、円形ゲノムにわたって場所を示すために示される。ライブラリー内の様々なクローンセットの分配は、図の下に数とパーセンテージにて示す。
【0207】
図 3Aは、ビオチン化 ヒト IgG によるMACS選択を示す。pMAL9.1 中のLSE-70 ライブラリー を10μgのビオチン化、ヒト血清 (P15-IgG)によって第一および第二の選択ラウンドにおいてスクリーニングした。陰性対照には、スクリーニングのためのライブラリー細胞に血清を添加しなかった。第一および第二の溶出の後に選択された細胞の数を各選択ラウンドについて示す。図 3Bは1:3,000の希釈度でMACSによる選択のために用いたヒト血清 (P15-IgG)によるウェスタンブロット分析によって分析した細菌表面ディスプレーにより単離された特定のクローン(1-26)の反応性を示す。負荷(loading)対照として、同じブロットを、プラットフォームタンパク質 LamB に対する抗体を1:5,000の希釈度で用いて分析した。LB、外来ペプチドインサートを有さないLamBを発現するクローンからの抽出物。
【0208】
図 4は、それぞれのオリゴヌクレオチドによる、ORF1163の遺伝子分布のためのPCR 分析を示す。PCR 断片の予測サイズはおよそ1,000 bpである。分析に用いた31の凝固酵素陰性ブドウ球菌および 11の表皮ブドウ球菌株を図に示す; N、ゲノムDNA 無添加; P、ライブラリー構築のためのテンプレートとして用いた表皮ブドウ球菌 RP62AからのゲノムDNA。
【0209】
表1:細菌表面ディスプレーによって同定された免疫原性タンパク質
A、lamB におけるLSE-70 ライブラリー と P15-IgG (804)、B、fhuA におけるLSE-150 ライブラリーと P15-IgG (826)、C、fhuA におけるLSA-300 ライブラリーと P15-IgG (729)、*、5 アミノ酸より長い抗原性配列の予測をプログラムANTIGENIC {Kolaskar、A. et al.、1990}を用いて行った。§、42の凝固酵素陰性ブドウ球菌または表皮ブドウ球菌株を関連する抗原をコードする遺伝子に特異的なオリゴヌクレオチドを用いたPCRによって試験した。31のCNS 株のうち6が、分析したすべての遺伝子について陰性であったので、本発明者らはこれらデータを要約から除いた。というのはこれらの株は表皮ブドウ球菌に密接に関連していないようであるからである。
【実施例】
【0210】
実施例1:ヒト血清からの抗体の調製
実験手順
ペプチド合成
ペプチドは標準的 F-moc 化学を用いて Rinkアミド樹脂上で (PepChem、Tubingen、Germany) SyroII 合成機(Multisyntech、Witten、Germany)を用いてスモールスケール(4 mg 樹脂; 並行して 288まで)で合成した。配列を組み立てた後、ペプチドをFmoc-イプシロン-アミノヘキサン酸 (リンカーとして)およびビオチン (Sigma、St. Louis、MO;正常のアミノ酸のように活性化)により伸長させた。ペプチドを93%TFA、5% トリエチルシラン、および2% 水によって1時間で樹脂からはずした。ペプチドを減圧下で乾燥させ、アセトニトリル/水 (1:1)から3回凍結乾燥させた。正確な質量の存在をReflex III MALDI-TOF (Bruker、Bremen Germany)で質量分析によって確認した。ペプチドはさらに精製せずに用いた。
【0211】
酵素結合免疫測定法 (ELISA)
血清特徴付けのために: ELISA プレート (Maxisorb、Millipore) を被覆バッファー (0.1M 炭酸ナトリウム pH 9.2)で希釈した5-10 μg/mlの全タンパク質で被覆した。3種類の希釈度の血清(2,000X、10,000X、50,000X)をPBS-BSA中に作成した。
ペプチド血清学のために: ビオチン-標識ペプチドを、ストレプトアビジン ELISA プレート(EXICON)に、10 μg/mlの濃度で製造業者の指示に従って被覆した。血清は2種類の希釈度、200Xおよび 1,000Xで試験した。
【0212】
高度に特異的なセイヨウワサビペルオキシダーゼ (HRP)-結合抗-ヒト IgGまたは抗-ヒト IgA 二次抗体(Southern Biotech) を製造業者の推奨にしたがって用いた(希釈度: 1,000x)。抗原-抗体複合体を、基質(ABTS)の着色生成物への変換を、自動 ELISAリーダー(TECAN SUNRISE)におけるOD405nmの読みに基づいて測定することによって定量した。手作業での被覆の後、ペプチドプレートをビルトインリーダー(GENIOS、TECAN)を備えた Gemini 160 ELISA ロボット (TECAN) によって加工および分析した。
【0213】
イムノブロッティング
全細菌可溶化液および培養上清サンプルをインビトロで培養した表皮ブドウ球菌 RP62Aから調製した。10〜25μg全タンパク質/レーンをBioRad Mini-Protean 3 Cell 電気泳動システムを用いてSDS-PAGEによって分離し、タンパク質をニトロセルロース膜 (ECL、Amersham Pharmacia)にトランスファーした。5% ミルクでの一晩のブロッキングの後、2,000x希釈の抗血清を添加し、 HRPO標識抗-マウス IgGを検出に用いた。
【0214】
細菌抗原抽出物の調製
全細菌可溶化液: 細菌を凍結乾燥サイクルの繰り返しによって溶解した:ドライアイス/エタノール-混合物中で凍結するまで (1分) インキュベーションし、37℃で解凍した(5 分):これを 3回繰り返した。この後、超音波処理を行い、上清を遠心分離(3,500 rpm、15分、4℃)によって回収した。
培養上清:細菌を除いた後、一晩培養した細菌培養物の上清を氷冷エタノール (100%)で沈殿させた: 1部の上清/3部のエタノールを一晩-20℃でインキュベートした。沈殿を遠心分離 (2,600 g、15分)によって回収し、乾燥させた。乾燥ペレットをELISAのためにPBSに溶解するか、SDS-PAGEおよびイムノブロッティングのために尿素およびSDS-サンプルバッファーに溶解した。サンプルのタンパク質濃度は Bradford アッセイによって測定した。
【0215】
ゲノムスクリーニングのための抗体の精製
患者群からの5つの血清をスクリーニング手順に用いる血清プールについて総抗-ブドウ球菌力価に基づいて選択した。大腸菌タンパク質に対する抗体を、熱不活性化血清と全細胞大腸菌細胞(細菌表面ディスプレーに用いたのと同じ条件で培養したpHIE11で形質転換したDH5α)とをインキュベートすることによって除いた。プールした、枯渇血清から高度に濃縮されたIgGの調製物を、タンパク質 G 親和性クロマトグラフィーによって、製造業者の指示に従って (UltraLink Immobilized Protein G、Pierce)作成した。IgA抗体も、ストレプトアビジン-アガロース (GIBCO BRL)上に固定化されたビオチン-標識抗-ヒト IgA (Southern Biotech)を用いた親和性 クロマトグラフィーによって精製した。枯渇および精製の有効性は、 SDS-PAGE、ウェスタンブロッティング、ELISAおよびタンパク質濃度測定によって確認した。
【0216】
ヒト免疫系によって産生され、ヒト血清に存在する表皮ブドウ球菌に対する抗体は、抗原性タンパク質のインビボ発現とその免疫原性を示す。かかる分子は本発明に記載の、特異的抗-ブドウ球菌抗体と対応する表皮ブドウ球菌ペプチドまたはタンパク質の相互作用に基づくアプローチにおいて個々の抗原を同定するために必須である。関連する抗体レパートリーを得るために、ヒト血清を表皮ブドウ球菌感染症、即ち腹膜炎の回復期の患者から回収した。
【0217】
血清を一連のELISAおよびイムノブロッティングアッセイによって抗-表皮ブドウ球菌 抗体について特徴づけた。BHI (Brain Heart Infusion) 培地中で一晩培養した(定常期) 表皮ブドウ球菌 RP62Aから調製した細菌可溶化液タンパク質をブドウ球菌抗原として用いた。IgG およびIgA 抗体レベルの両方を測定した。もっとも高い抗体レベルを示す5つの血清をプールし、抗原性タンパク質を同定するために細菌表面ディスプレーにおいて用いるためのIgGを調製した。
【0218】
力価は応答が線形である所与の希釈度で比較した。血清は複数のブドウ球菌成分に対する反応性に基づいてランク付けし、もっとも高いものをイムノブロッティングによるさらなる分析のために選択した(図 1)。この大規模な抗体特徴付けアプローチにより抗-ブドウ球菌過免疫血清の明確な同定が導かれた。
【0219】
実施例2:非常にランダムな、フレームを選択した(frame-selected)、表皮ブドウ球菌の小断片ゲノムDNA ライブラリーの作成
実験手順
ブドウ球菌 ゲノムDNAの調製
50 mlのBHI培地に凍結穿刺からの表皮ブドウ球菌 RP62A 細菌を播き、通気および撹拌しながら18 時間 37℃で培養した。培養物を収集し、1,600x gで 15分遠心分離し、上清を除いた。細菌ペレットを3回PBSで洗浄し、0.5 mlのリゾチーム溶液(100 mg/ml)に注意深く再懸濁した。0.1 mlの10 mg/ml熱処理 RNase Aおよび 20 UのRNase T1を添加し、注意深く混合し、溶液を1時間37℃でインキュベートした。0.2 mlの20 % SDS 溶液および0.1 mlのプロテイナーゼ K (10 mg/ml)の添加後、チューブを一晩55℃でインキュベートした。1/3容積の飽和 NaClを添加し、溶液を20分4℃でインキュベートした。抽出物を微量遠心管 (13,000 rpm)中にペレットにし、上清を新しいチューブに移した。溶液をPhOH/CHCl3/IAA (25:24:1)およびCHCl3/IAA (24:1)で抽出した。DNAを0.6x 容積のイソプロパノールの添加によって室温で沈殿させ、溶液から無菌パスツールピペットで取り出し、80% 氷冷エタノールを含むチューブに移した。DNAを沈殿を10-12,000x gで遠心分離することにより回収し、風乾し、ddH2Oに溶解した。
【0220】
小ゲノムDNA 断片の調製
ゲノムDNA 断片をcup-horn超音波処理器(Bandelin Sonoplus UV 2200 sonicator、BB5 cup hornを備えており、100 % 出力で10秒のパルス)を用いて機械的に剪断して150 〜300 bp のサイズの断片にするか、または、穏やかなDNase I(Novagen)処理によって50〜 70 bpのサイズの断片にした。超音波処理によって、よりタイトな断片サイズ分布が得られ、DNAが150-300 bp サイズの範囲の断片となることが観察された。しかし、DNAを超音波-誘導機械的剪断力に強く曝したにも拘わらず、その結果としての断片サイズの減少は十分ではなく、再現性もなかった。それゆえ、50〜70 bpのサイズの断片をNovagenのショットガン切断キットを用いる穏やかな DNase I 処理によって得た。キットに提供されたDNase I の1:20希釈を調製し、消化はMnCl2の存在下、60 μl容積で20℃で5分行い、酵素による二本鎖の切断を確実にした。反応は2 μlの0.5 M EDTAで停止させ、断片化効率は 2% TAE-アガロースゲルで評価した。この処理の結果、ゲノムDNAが50-70 bp 断片へと全体的に断片化された。断片をT4 DNA ポリメラーゼを用いて 100 μM の各dNTPの存在下で2回平滑末端化し、末端の有効なフラッシングを確実にした。断片はすぐにライゲーション反応に用いるか、または後で使用するまで-20℃で凍結した。
【0221】
ベクターの説明
ベクター pMAL4.31はpASK-IBA 骨格 {Skerra、A.、1994}上に構築し、ベータ・ラクタマーゼ (bla)遺伝子をカナマイシン耐性遺伝子で置換した。さらに bla遺伝子をマルチクローニングサイトにクローン化した。成熟ベータ・ラクタマーゼをコードする配列の前にompAのリーダーペプチド配列があることにより、細胞膜を横切る有効な分泌が可能となる。さらに成熟ベータ・ラクタマーゼの最初の12アミノ酸(スペーサー配列)をコードする配列がompA リーダーペプチド配列の後にあり、リーダーペプチダーゼ切断部位の直後の配列の融合が避けられる。というのは例えば、この領域における正に荷電したアミノ酸のクラスターは細胞膜を横切る転移を減少または無くするからである{Kajava、A. et al.、2000}。 SmaI 制限部位はライブラリー挿入に役立つ。選択された断片の回収に用いられる、上流のFseI 部位および下流のNotI 部位がSmaI部位に隣接する。3つの制限部位は12 アミノ酸のスペーサー配列をコードする配列の後に挿入され、bla遺伝子は -1 リーディングフレームにて転写され、NotI部位の15 bp後に終止コドンが生じる。+1 bp挿入はbla ORFを回復し、ベータ・ラクタマーゼタンパク質が生じ、結果としてアンピシリン耐性となる。
【0222】
ベクター pMAL9.1を、lamB遺伝子をpEH1 {Hashemzadeh-Bonehi、L. et al.、1998}のマルチクローニングサイトにクローニングすることにより構築した。次いで、制限部位、 FseI、SmaI および NotIを含む配列を、lamB中のアミノ酸 154の後に挿入した。この挿入に対するリーディングフレームは、プラスミド pMAL4.31 からのFseIおよびNotIによる消化によって切り出されたフレーム選択した(frame-selected)DNA 断片の移動により、lamBとそれぞれのインサートの連続的なリーディングフレームが生じるように構築した。
【0223】
ベクター pHIE11はpEH1のマルチクローニングサイトにfhuA遺伝子をクローニングすることによって構築した。その後、制限部位 FseI、XbaI および NotIを含む配列をfhuA中のアミノ酸 405の後に挿入した。この挿入のためのリーディングフレームはプラスミド pMAL4.31 からのFseI および NotIによる消化によって切り出されたフレーム選択した(frame-selected)DNA 断片の移動により、fhuAおよびそれぞれのインサートの連続的なリーディングフレームが生じるように選択した。
【0224】
クローニングおよびフレーム選択のためのライブラリーの評価
ゲノム表皮ブドウ球菌 DNA 断片をベクター pMAL4.31のSmaI 部位にライゲーションした。組換え DNAを DH10B エレクトロコンピテント大腸菌細胞 (GIBCO BRL)にエレクトロポーレーションし、形質変換体をカナマイシン (50 μg/ml)およびアンピシリン (50 μg/ml)を付与したLB-アガーに播いた。プレートを37℃で一晩インキュベートし、コロニーをラージスケール DNA抽出のために回収した。代表的なプレートを保存し、コロニー PCR 分析およびラージスケール配列決定のためのコロニーの回収用に保存した。簡便なコロニー PCR アッセイを用いてだいたいの断片サイズ分布および挿入効率をまず決定した。配列決定データから、正確な断片サイズを評価し、挿入部位における接合部の完全性(junction intactness)およびフレーム選択の正確性(3n+1規則)を評価した。
【0225】
クローニングおよび細菌表面ディスプレーのライブラリーの評価
ゲノムDNA 断片を表皮ブドウ球菌 ライブラリーを含む pMAL4.31 ベクターから、制限酵素FseIおよび NotIによって切り出した。断片の全集団をFseIおよび NotIによって消化しておいたプラスミドpMAL9.1 (LamB)または pHIE11 (FhuA)に移した。これら2つの8 bp GC リッチ配列を認識する制限酵素を用いることにより、pMAL4.31 ベクターにおいて選択されたリーディングフレームが、プラットフォームベクターのそれぞれにおいて維持される。プラスミドライブラリーを大腸菌 DH5α細胞にエレクトロポーレーションによって形質転換した。細胞を50 μg/ml カナマイシンを付与したラージLB-アガープレートに播き、37℃で一晩、明らかに目に見えるシングルコロニーが得られる密度で培養した。細胞をこれらプレートの表面から掻き取り、新しいLB培地で洗浄しアリコートにおいてライブラリースクリーニングのために-80℃で保存した。
【0226】
結果
フレーム選択のためのライブラリー
2つのライブラリー (LSE-70および LSE-150)をpMAL4.31 ベクター中に作成し、サイズはそれぞれおよそ70、150および 300 bpであった。各ライブラリーについて、ライゲーションと、続くおよそ1 μgのpMAL4.31 プラスミド DNA および50 ngの 断片化ゲノム表皮ブドウ球菌 DNAの形質転換により、フレーム選択後に4x 105〜2x 106のクローンが生じた。ライブラリーのランダムさを評価するために、およそ600のランダムに選んだLSE-70のクローンを配列決定した。生物情報分析により、これらクローンのなかでわずかのみが2回以上存在することが示された。さらに、90%のクローンが16 〜 61 bpのサイズ範囲内にあり、平均サイズは34 bpであることが示された(図 2)。ほとんどすべての配列が3n+1 規則にしたがい、すべてのクローンが正しくフレーム選択されたことが示された。
【0227】
細菌表面ディスプレーライブラリー
大腸菌表面上のペプチドのディスプレーは、LSE ライブラリーからのインサートの、フレーム選択ベクター pMAL4.31からディスプレープラスミドpMAL9.1 (LamB) またはpHIE11 (FhuA)への移動を必要とする。ゲノムDNA 断片をFseIおよび NotI 制限酵素によって切り出し、5ngのインサートと 0.1μgのプラスミド DNA をライゲーションし、次いでDH5α細胞に形質転換して、2-5x 106のクローンを得た。クローンをLB プレートから掻き取り、さらに増幅させずに凍結した。
【0228】
実施例 3: 細菌表面にディスプレーしたゲノムライブラリーとヒト血清を用いた表皮ブドウ球菌からの高度に免疫原性ペプチド配列の同定
実験手順
MACS スクリーニング
所与のライブラリーからのおよそ2.5x 108 細胞を 50 μg/ml カナマイシンを追加した5 ml LB-培地で2時間37℃で培養した。発現は1 mM IPTGの添加により30分間誘導した。細胞を新鮮なLB培地で2回洗浄し、およそ2x 107 細胞を100 μl LB培地に再懸濁し、エッペンドルフチューブに移した。
【0229】
10 μgのビオチン化した血清から精製したヒト IgGを細胞に添加し、懸濁液を4℃で一晩おだやかに振盪しながらインキュベートした。 900 μlのLB培地を添加し、懸濁液を混合し、次いで10分 6,000 rpmで 4℃で遠心分離した (IgAスクリーニングのためには、10 μg の精製IgAを用い、ビオチン化抗-ヒト-IgG 二次抗体で捕獲した)。細胞を1 ml LBで1回洗浄し、次いで100 μl LB培地に再懸濁した。10 μlのストレプトアビジン (Miltenyi Biotech、Germany)に結合したMACS マイクロビーズを添加し、インキュベーションを20分4℃で続けた。その後、900 μlのLB培地を添加し、MACS マイクロビーズ細胞懸濁液を平衡化した磁石に固定したMSカラム (Miltenyi Biotech、Germany)にかけた (MSカラムは1 ml 70% EtOHで1回、2 ml LB培地で2回洗浄することによって平衡化した)。
【0230】
カラムを3 ml LB培地で3回洗浄した。磁石を除いた後、細胞を2 ml LB培地で洗浄することにより溶出した。3 ml LB培地でカラムを洗浄した後、2 mlの溶出液を再び同じカラムにかけ、洗浄および溶出工程を繰り返した。ローディング、洗浄および溶出工程は3回行い、その結果最終溶出液は2 mlとなった。
【0231】
第二ラウンドのスクリーニングを以下のように行った。最終溶出液からの細胞を遠心分離によって回収し、50 μg/ml カナマイシンを追加した1 ml LB培地に再懸濁した。培養物を37℃で90分間インキュベートし、1 mM IPTGで 30分間誘導した。細胞を回収し、1 ml LB培地で1回洗浄し、10 μl LB培地に懸濁した。容積を減らしたため、10 μgのヒトビオチン化 IgGを添加し、懸濁液を4℃で一晩穏やかに振盪しながらインキュベートした。すべてのさらなる工程は、第一の選択ラウンドと全く同じとした。2回の選択ラウンドの後に選択された細胞を50 μg/ml カナマイシンを追加したLB-アガープレートに播き、37℃で一晩培養した。
【0232】
選択したクローンの配列決定およびウェスタンブロット分析による評価
選択したクローンを37℃で一晩50 μg/ml カナマイシンを追加した3 ml LB培地で培養し、標準的手順によってプラスミド DNAを調製した。配列決定はMWG (Germany)で行った。
ウェスタンブロット分析のためにおよそ10〜20 μgの全細胞タンパク質を10% SDS-PAGEによって分離し、HybondC メンブレン (Amersham Pharmacia Biotech、England)にブロッティングした。LamBまたはFhuA 融合タンパク質を、ヒト血清を一次抗体としておよそ1:5,000の希釈度で用い、HRPに結合した抗-ヒト IgG または IgA 抗体を 1:5,000の希釈度で二次抗体として用いて検出した。検出は ECL 検出キット(Amersham Pharmacia Biotech、England)を用いて行った。あるいは、ウサギ抗 FhuA またはマウス 抗 LamB 抗体を一次抗体としてそれぞれHRPに結合した二次抗体と組み合わせて用いて融合タンパク質を検出した。
【0233】
結果
ビオチン化 Igを用いた磁性活性化細胞ソーティング (MACS)による細菌表面ディスプレーライブラリーのスクリーニング
pMAL9.1 中のライブラリー LSE-70およびpHIE11中のLSE-150を患者血清由来のビオチン化ヒト IgG のプールでスクリーニングした(実施例1:ヒト血清からの抗体の調製を参照)。さらに、黄色ブドウ球菌ライブラリー (pHIE11中のLSA-300)を同じ血清プール、P15-IgGでスクリーニングした。選択手順は実験手順に記載のように行った。図 3AはLSE-70 ライブラリー およびP15-IgGを用いたスクリーニングの代表例を示す。MACS スクリーニングからの第一の選択サイクル後のコロニー数から明らかなように、最終的に回収された細胞の総数は、およそ 3x 107 細胞からおよそ2x 104 細胞へと劇的に減少しており、一方抗体を添加しなかった選択では、約 1x104 細胞への減少を示した(図 3A)。第二ラウンドの後では、同様の数の細胞が P15-IgGから回収されたが、ヒト血清からのIgGを添加しなかったときにはおよそ8分の1の少ない細胞が回収され、これは明らかに選択が表皮ブドウ球菌特異的抗体に依存していたことを示す。スクリーニングの性能を評価するため、26の選択されたクローンをランダムに取り出し、同一のプールされた血清を用いたウェスタンブロット分析にかけた (図 3B)。この分析により、70%の選択されたクローンが関連する血清に存在する抗体と反応性を示すのに対し、表皮ブドウ球菌特異的インサートを含まないLamBを発現する対照株は同じ血清と反応しなかったことが明らかになった。一般に、反応性の割合は、35〜 75%の範囲にあることが観察された。コロニー PCR 分析により、すべての選択されたクローンは予測されたサイズ範囲のインサートを含んでいることが示された。
【0234】
次いで、多数のランダムに取り出したクローン (600〜1000 /スクリーニング)の配列決定により、スクリーニングに用いたヒト血清によって特異的に認識される遺伝子および対応するペプチドまたはタンパク質配列が同定された。特異的クローンが選択される頻度は、少なくとも部分的には、このクローンによって提示されるエピトープを認識する、選択に用いられた血清における特異的抗体の量および/または 親和性を反映する。表1は3つの行われたスクリーニングについて得られたデータを要約するが、今までのスクリーニングによっては同定されていない遺伝子のみを挙げるものである。表1に挙げるすべてのクローンは、シングルクローンからの全細胞抽出液を用いたウェスタンブロット分析によって、それぞれのスクリーニングに用いたヒト血清のプールと示された反応性を示すことが確認されている。表1から理解されるように、同定されたORFの異なる領域は免疫原性であると同定される。というのは、サイズが可変のタンパク質の断片がプラットフォームタンパク質によって表面にディスプレーされているからである。黄色ブドウ球菌ライブラリーによるスクリーニングによって一つの新規な抗原が明らかとなり、これは以前のスクリーニングでは同定されていなかったものである。
【0235】
細菌表面ディスプレースクリーニングによって同定された遺伝子のほとんどは、表皮ブドウ球菌の表面に付着する、および/または、分泌されるタンパク質をコードすることは注目に値する。これは表面結合または分泌タンパク質の表皮ブドウ球菌の病原性における予測された役割に一致する。
【0236】
実施例4: 表皮ブドウ球菌から同定された高度に免疫原性のタンパク質の遺伝子分布研究
PCRによるブドウ球菌抗原の遺伝子分布
理想的なワクチン抗原とは、ワクチンが向けられる標的生物のすべてまたは大多数の株に存在する抗原であろう。同定された表皮ブドウ球菌抗原をコードする遺伝子が表皮ブドウ球菌および凝固酵素陰性ブドウ球菌株に普遍的に存在するかどうかを確認するために、一連の独立の表皮ブドウ球菌および凝固酵素陰性ブドウ球菌分離株に対して、目的の遺伝子に特異的なプライマーを用いてPCRを行った。プライマーとしてのオリゴヌクレオチド配列はおよそ1,000 bpの産物を生じるすべての同定されたORFについて設計し、可能であれば、すべての同定された免疫原性エピトープをカバーする。すべてのブドウ球菌株のゲノムDNAを、実施例2に記載のように調製した。PCRはTaq ポリメラーゼ (1U)、200 nM dNTP、10 pMolの各オリゴヌクレオチドを用いて反応容積25 μlにて行い、キットは製造業者の指示にしたがって用いた (Invitrogen、The Netherlands)。個々のプライマー対に条件を適合させる必要がない場合、標準として、30サイクル (1x: 5分 95℃、30x: 30秒 95℃、30秒56℃、30秒 72℃、1x 4分 72℃) を用いた。
【0237】
結果
実施例により、免疫原性タンパク質をコードする多数の遺伝子が、42種類の凝固酵素陰性ブドウ球菌 (CNS)または表皮ブドウ球菌株におけるその存在についてPCRによって試験された。図 4はすべての示された42の株でのORF1163に対するPCR反応を示す。すべてのCNS 株が表皮ブドウ球菌分離株を表すわけではないことが予測された。それゆえ31のCNS 株のうち6株が分析したすべての遺伝子について陰性であることは驚くべきことではなかった。同定された抗原をコードし、PCR分析された8つの選択された遺伝子の中には、試験した多くの株にて存在するものもあり(例えば、ORF0026、ORF0217 およびORF1163)、これらはさらなる開発のための良好な候補である。いくつかの遺伝子は試験した42の株のうち少数にしか存在しなかった (例えば、ORF0742 およびORF2700)。この結果は、分析した分離株における遺伝子の不在を示すのかもしれないが、PCR 分析に用いたオリゴヌクレオチドの配列における変異による可能性もある。興味深いことに、8つの分析した遺伝子のいずれもサイズにおいて変動を示さなかった。1つの株から生成したPCR 断片の配列決定およびRP62A 株との比較により、正しいDNA 断片が増幅されていたことが確認された。重要なことに、配列およびサイズにおいてすべての株でよく保存されていた同定された抗原は、表皮ブドウ球菌による感染を予防するための新規なワクチン候補を構成する。表1から理解されるように、リストされた30の表皮ブドウ球菌抗原のうち20は黄色ブドウ球菌 COLにおいてホモログを有しており、アミノ酸レベルで少なくとも 50%の配列同一性を有する。4つは同一性が 50%未満のホモログを有し、 6つの抗原は黄色ブドウ球菌 COL において相同配列を有さない。これは抗原のうちいくつかがその他のブドウ球菌株、例えば、黄色ブドウ球菌に対する交差保護を示す能力を有することを示す。
【0238】
参考文献
Altschul, S., et al. (1990). Journal of Molecular Biology 215: 403-10.
Bennett, D., et al. (1995). J Mol Recognit 8: 52-8.
Clackson, T., et al. (1991). Nature 352: 624-8.
Crossley, K.B. and Archer G.L., eds (1997). The Staphylocacci in Human Disease. Churchill Livingston Ing.
Devereux, J., et al. (1984). Nucleic acids research 12: 387-95.
Doherty, E., et al. (2001). Annu Rev Biophys Biomol Struct 30: 457-475.
Eisenbraun, M., et al. (1993). DNA Cell Biol 12: 791-7.
Etz, H., et al. (2001). J Bacteriol 183: 6924-35.
Ganz, T. (1999). Science 286: 420-421.
Georgiou, G. (1997). Nature Biotechnology 15: 29-34.
Hashemzadeh-Bonehi, L., et al. (1998). Mol Microbiol 30: 676-678.
Heinje, von G (1987) e.g. Sequence Analysis in Molecular Biology, Academic Press
Hemmer, B., et al. (1999). Nat Med 5: 1375-82.
Johanson, K., et al. (1995). J Biol Chem 270: 9459-71.
Jones, P., et al. (1986). Nature 321: 522-5.
Kajava, A., et al. (2000). J Bacteriol 182: 2163-9.
Kohler, G., et al. (1975). Nature 256: 495-7.
Kolaskar, A., et al. (1990). FEBS Lett 276: 172-4.
Lewin, A., et al. (2001). Trends Mol Med 7: 221-8.
Marks, J., et al. (1992). Biotechnology (N Y) 10: 779-83.
McCafferty, J., et al. (1990). Nature 348: 552-4.
Okano, H., et al. (1991). J Neurochem 56: 560-7.
Oligodeoxynucleotides as antisense Inhibitors of Gene Expression; CRC Press, Boca Ration, FL (1988) for a description o these molecules
Rammensee, H., et al. (1999). Immunogenetics 50: 213-9.
Rosenshine, I., et al. (1992). Infect Immun 60: 2211-7.
Seeger, C., et al. (1984). Proc Natl Acad Sci U S A 81: 5849-52.
Shinefield, H., et al. (2002). N Engl J Med 346: 491-6.
Skerra, A. (1994). Gene 151: 131-5.
Tang, D., et al. (1992). Nature 356: 152-4.
Tempest, P., et al. (1991). Biotechnology (N Y) 9: 266-71.
Tourdot, S., et al. (2000). Eur J Immunol 30: 3411-21.
Wiley, J., et al. (1987) Current Protocols in Molecular Biology
【0239】
表1:細菌表面ディスプレーによって同定された免疫原性タンパク質
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1】図 1は、選択された、表皮ブドウ球菌に特異的なヒト高力価血清の特徴付けを示す。
【図2】図 2は、表皮ブドウ球菌 RP62Aからの小断片ゲノムライブラリー、LSE-70の特徴付けを示す。
【図3】図 3は、ビオチン化ヒト IgGを用いるMACSによる細菌細胞の選択を示す。
【図4】図 4は、同定された抗原による遺伝子分布研究の例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群から選択される核酸配列を含む、過免疫血清反応性抗原またはその断片をコードする単離核酸分子:
a)配列番号 1、4、6-9、11-13、15、17、19、21、25-26、28-31から選択される核酸分子に対して少なくとも 70%の配列同一性を有する核酸分子、
b) a)の核酸分子に相補的な核酸分子、
c) a)またはb)の核酸分子の少なくとも15の連続する塩基を含む核酸分子、
d) a)、b)、またはc)の核酸分子にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でアニールする核酸分子、
e)遺伝暗号の縮重がなければ、a)、b)、c)またはd)の核酸分子にハイブリダイズしうる核酸分子。
【請求項2】
配列同一性が、少なくとも 80%、好ましくは少なくとも 95%、特に100%である、請求項1の単離核酸分子。
【請求項3】
以下からなる群から選択される核酸配列を含む過免疫血清反応性抗原またはその断片をコードする単離核酸分子:
a)配列番号 2-3、5、10、14、16、18、22-24、27から選択される核酸分子に対して少なくとも 96%の配列同一性を有する核酸分子、
b) a)の核酸分子に相補的な核酸分子、
c) a)またはb)の核酸分子の少なくとも15の連続する塩基を含む核酸分子、
d) a)、b)、またはc)の核酸分子にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でアニールする核酸分子、
e) 遺伝暗号の縮重がなければ、a)、b)、c)またはd)の核酸にハイブリダイズしうる 核酸分子。
【請求項4】
以下からなる群から選択される核酸配列を含む単離核酸分子:
a) 配列番号 20から選択される核酸分子、
b) a)の核酸に相補的な核酸分子、
c)遺伝暗号の縮重がなければ、a)、b)、c)またはd)の核酸にハイブリダイズしうる核酸分子。
【請求項5】
核酸がDNAである、請求項 1、2、3または4のいずれかの核酸分子。
【請求項6】
核酸がRNAである、請求項1、2、3、4、または5のいずれかの核酸分子。
【請求項7】
核酸分子が、ゲノムDNA、特に表皮ブドウ球菌ゲノムDNAから単離されたものである、請求項1〜5のいずれかの単離核酸分子。
【請求項8】
請求項1〜 7のいずれかの核酸分子を含むベクター。
【請求項9】
ベクターが、請求項1〜 7のいずれかによる核酸分子によってコードされる過免疫血清反応性抗原またはその断片の組換え発現に適したものである、請求項 8のベクター。
【請求項10】
請求項8または9のベクターを含む宿主細胞。
【請求項11】
請求項1、2、5、6 または7のいずれかによる核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列が配列番号 32、35、37-40、42-44、46、48、50、52、56-57、59-62からなる群から選択される、過免疫血清反応性抗原およびその断片。
【請求項12】
請求項3、5、6、または7のいずれかの核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列が配列番号 33-34、36、41、45、47、49、53-55、58 からなる群から選択される、過免疫血清反応性抗原およびその断片。
【請求項13】
請求項 4、5、6、または7のいずれかの核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含み、該アミノ酸配列が配列番号 51からなる群から選択される、過免疫血清反応性抗原およびその断片。
【請求項14】
表2の列「予測免疫原性アミノ酸」および「同定された免疫原性領域の位置」のアミノ酸配列を含むペプチド、表2の血清反応性エピトープ、特に以下のアミノ酸を含むペプチドからなる群から選択される過免疫血清反応性抗原の断片:配列番号 32の6-28、54-59、135-147、193-205、274-279、284-291、298-308、342-347、360-366、380-386、408-425、437-446、457-464、467-477、504-510、517-530、535-543、547-553、562-569、573-579、592-600、602-613、626-631、638-668 および 396-449;配列番号 33の 5-24、101-108、111-117、128-142、170-184、205-211、252-267、308-316、329-337、345-353、360-371、375-389、393-399、413-419、429-439、446-456、471-485、495-507、541-556、582-588、592-602、607-617、622-628、630-640 および 8-21; 配列番号 34の 10-20、23-33、40-45、59-65、72-107、113-119、127-136、151-161 および 33-59;配列番号 35の4-16、28-34、39-61、66-79、100-113、120-127、130-137、142-148、150-157、192-201、203-210、228-239、245-250、256-266、268-278、288-294、312-322、336-344、346-358、388-396、399-413、425-430、445-461、464-470、476-482、486-492、503-511、520-527、531-541、551-558、566-572、609-625、635-642、650-656、683-689、691-705、734-741、750-767、782-789、802-808、812-818、837-844、878-885、907-917、930-936 および 913-933; 配列番号 36の5-12、20-27、46-78、85-92、104-112、121-132、150-167、179-185、200-213、221-227、240-264、271-279、282-290、311-317 および 177-206; 配列番号 37の18-24、31-40、45-51、89-97、100-123、127-132、139-153、164-170、184-194、200-205、215-238、244-255、257-270、272-280、289-302、312-318、338-348、356-367 および 132-152; 配列番号 38の 7-16、39-45、73-83、90-98、118-124、130-136、194-204、269-280、320-327、373-381、389-397、403-408、424-430、436-441、463-476、487-499、507-514、527-534、540-550、571-577、593-599、620-629、641-647、650-664、697-703、708-717、729-742、773-790、794-805、821-828、830-837、839-851、858-908、910-917、938-947、965-980、1025-1033、1050-1056、1073-1081、1084-1098、1106-1120、1132-1140、1164-1170、1185-1194、1201-1208、1215-1224、1226-1234、1267-1279、1325-1331、1356-1364、1394-1411、1426-1439、1445-1461、1498-1504、1556-1561、1564-1573、1613-1639、1648-1655、1694-1714、1748-1755、1778-1785、1808-1813、1821-1827、1829-1837、1846-1852、1859-1865、1874-1883、1895-1900、1908-1913、1931-1937、1964-1981、1995-2005、2020-2033、2040-2047、2103-2109、2118-2127、2138-2144、2166-2175、2180-2187、2220-2225、2237-2242、2247-2253、2273-2281、2286-2306、2314-2320、2323-2345、2350-2355、2371-2384、2415-2424、2426-2431、2452-2472、2584-2589、2610-2621、2638-2655、2664-2670、2681-2690、2692-2714、2724-2730 および 687-730; 配列番号 39の 10-40、53-59、79-85、98-104、117-122、130-136、144-158、169-175、180-185、203-223、232-237、243-254、295-301 および 254-292; 配列番号 40の28-50、67-85、93-115、120-134、144-179、240-249、328-340、354-360、368-400、402-417、419-427、429-445、447-455、463-468、472-480、485-500、502-510、512-534、537-546、553-558、582-594、619-637、645-654、690-709、735-745、749-756、786-792、275-316 および 378-401; 配列番号 41の 5-16、21-30、33-40、52-74、101-108、116-122、164-182、185-219、256-261、273-279、285-291、297-304、312-328、331-338、355-362、364-371、373-401、411-423 および 191-208;配列番号 42の34-55、67-74、85-93、105-115、138-152、161-171、182-189、197-205、213-219、232-239、241-248、250-263、272-277、288-299 および 216-231; 配列番号 43の 21-27、32-37、43-51、67-74、82-92、94-100、106-112、140-149、153-159、164-182、193-215、222-227、260-267、308-322、330-340、378-387、396-403、417-432、435-441、448-465、476-482、488-498、500-510 および 214-280; 配列番号 44の4-21、29-52、80-87、104-123、126-133、141-157、182-189、194-202、214-220、227-235、242-252 および 33-108; 配列番号 45の12-18、20-27、29-59、64-72、84-90、96-103、109-121、125-155、164-177、179-186、188-201、216-227、235-253、259-274、276-294、296-310、322-339、341-348、369-379、398-403、409-421 および 76-96; 配列番号 46の 4-15、24-41、71-80、104-111、113-119、123-130、139-149、168-178、187-200 および 4-45; 配列番号 47の13-19、32-37、44-56 および 1-14; 配列番号 48の 6-11、16-35、75-81、95-100、126-139、206-214、225-233、241-259、268-276、319-325、339-360、371-401、435-441、452-459、462-472、491-503、505-516、549-556、567-580、590-595、612-622、624-630、642-648、656-662、687-693、698-704、706-712、736-750、768-777、784-789、812-818、847-858、894-900、922-931、938-949、967-984、986-992、1027-1032、1041-1054、1082-1088、1091-1097、1119-1124、1234-1240、1250-1258、1274-1289、1299-1305、1392-1398、1400-1405、1429-1442、1460-1474、1505-1514、1531-1537、1540-1552、1558-1571、1582-1587、1616-1623、1659-1666、1671-1677、1680-1686、1698-1704、1706-1712、1768-1774、1783-1797、1814-1819、1849-1855、1870-1876、1890-1897、1947-1953、1972-1980、1999-2013、2044-2051、2068-2084、2093-2099、2122-2131、2142-2147、2156-2163、2170-2179、2214-2220、2235-2245、2271-2281、2287-2293、2308-2317、2352-2362、2373-2378、2387-2407、2442-2448、2458-2474、2507-2516、2531-2537、2540-2551、2555-2561、2586-2599、2617-2627、2644-2649、2661-2675、2685-2692、2695-2707、2733-2739、2741-2747、2774-2783、2788-2795、2860-2870、2891-2903、2938-2947、2973-2980、2993-2999、3004-3030、3046-3059、3066-3077、3082-3088、3120-3132、3144-3149、3153-3169、3200-3212、3232-3256、3276-3290、3308-3322、3330-3338、3353-3360、3363-3371、3390-3408、3431-3447、3454-3484、3503-3515、3524-3541、3543-3550、3560-3567、3586-3599、3616-3621、3642-3647、3663-3679、213-276、579-621 および 1516-1559; 配列番号 49の19-41、43-49、55-62、67-74、114-121、130-140、188-197、208-217、226-232、265-287、292-299、301-319、372-394、400-410、421-427 および 12-56; 配列番号 50の 6-12、44-51、53-60、67-88、91-100、104-123、137-142、148-158、161-168、175-201、204-210、222-231、239-253、258-264、272-282 および 60-138; 配列番号 51の 4-63、69-104、110-121、124-131、134-152、161-187、204-221、223-237、239-296、298-310、331-365、380-405、423-451、470-552、554-562、574-581、592-649、651-658、661-671、673-707、713-734、741-748、758-765、773-790 および 509-528; 配列番号 52の 89-94、102-115、123-129、181-188、200-206、211-235、239-249、267-281、295-310、316-321、331-341、344-359、365-386、409-422、443-453、495-506、514-521、539-547、553-560、563-570、586-596、621-626、633-638、651-657、666-683、697-705、731-739、761-768、865-883 および 213-265; 配列番号 53の 5-20、24-34、37-43、92-102、134-139、156-162、184-191、193-205、207-213、225-231、241-247、259-267、269-286、337-350、365-372、378-386、399-413、415-421、447-457、467-481 および 145-183; 配列番号 54の12-19、29-41、43-57、80-98、106-141、143-156、172-183、185-210、214-220、226-234、278-287 および 237-287; 配列番号 55の 5-12、32-48、50-72、75-81、88-94 および 16-40; 配列番号 56の 4-21、29-42、48-62、65-80、95-101、103-118、122-130、134-140、143-152、155-165、182-192、198-208、232-247、260-268、318-348、364-369、380-391、403-411、413-424 および 208-230; 配列番号 57の4-18、65-75、82-92、123-140、144-159、166-172、188-194 および 174-195; 配列番号 58の 7-20、58-71、94-101、110-119、199-209、231-242、247-254、267-277、282-290、297-306、313-319、333-342、344-369、390-402、414-431、436-448、462-471 および 310-350; 配列番号 59の4-25、37-44、53-59、72-78、86-99、119-128、197-203、209-218、220-226、233-244、246-254、264-271、277-289、407-430、437-445、464-472、482-488、503-509 および 308-331; 配列番号 60の4-12、14-43、52-58 および 43-58;配列番号 61の4-14、21-29、35-49 および 38-50;配列番号 62の4-19、31-37、58-72、94-108 および 1-72。
【請求項15】
請求項1〜 7のいずれかによる核酸分子を発現させることを含む、請求項11〜 14のいずれかの表皮ブドウ球菌過免疫血清反応性抗原またはその断片の生産方法。
【請求項16】
好適な宿主細胞に請求項 8または請求項 9によるベクターを形質転換または形質移入することを含む、請求項11〜 14のいずれかの表皮ブドウ球菌過免疫血清反応性抗原またはその断片を発現する細胞の生産方法。
【請求項17】
請求項11〜 14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片、または請求項1〜 7のいずれかの核酸分子を含む、医薬組成物、特にワクチン。
【請求項18】
好ましくは以下を含む群から選択される免疫賦活物質をさらに含む、請求項 17の医薬組成物、特にワクチン:ポリカチオン性ポリマー、特にポリカチオン性ペプチド、免疫賦活性デオキシヌクレオチド (ODN)、少なくとも2つのLysLeuLysモチーフを含むペプチド、向神経活性化合物、特にヒト成長ホルモン、ミョウバン、フロイント完全または不完全アジュバントまたはそれらの組み合わせ。
【請求項19】
医薬調製物の製造のため、特に表皮ブドウ球菌感染症に対するワクチンの製造のための、請求項1〜 7のいずれかの核酸分子または請求項11〜 14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片の使用。
【請求項20】
請求項11〜 14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片の選択的部分に少なくとも結合する、抗体、または少なくともその有効な部分。
【請求項21】
抗体がモノクローナル抗体である、請求項 20の抗体。
【請求項22】
該有効な部分がFab断片を含む請求項 20または21の抗体。
【請求項23】
抗体がキメラ抗体である、請求項20〜 22のいずれかの抗体。
【請求項24】
抗体がヒト化抗体である、請求項20〜23のいずれかの抗体。
【請求項25】
請求項20〜24のいずれかの抗体を産生するハイブリドーマ細胞株。
【請求項26】
以下の工程によって特徴づけられる、請求項 20による抗体の生産方法:
請求項11〜 14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片を非ヒト動物に投与することにより、該非ヒト動物における免疫応答を開始させる工程、
該動物から抗体を含有する体液を取り出す工程、および
該抗体を含有する体液をさらなる精製工程に供することにより、抗体を生産する工程。
【請求項27】
以下の工程によって特徴づけられる、請求項 21の抗体の生産方法:
請求項12〜15のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片を、非ヒト動物に投与することにより、該非ヒト動物における免疫応答を開始させる工程、
該動物から脾臓または脾臓細胞を取り出す工程、
該脾臓または脾臓細胞のハイブリドーマ細胞を作る工程、
該過免疫血清反応性抗原またはその断片に特異的なハイブリドーマ細胞を選択およびクローニングする工程、
該クローニングしたハイブリドーマ細胞を培養することにより、そして所望によりさらなる精製工程により抗体を生産する工程。
【請求項28】
表皮ブドウ球菌感染症の治療または予防用医薬の調製のための請求項20〜24のいずれかの抗体の使用。
【請求項29】
請求項11〜 14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片に結合するアンタゴニスト。
【請求項30】
以下の工程を含む、請求項11〜 14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片に結合することが出来るアンタゴニストの同定方法:
a)単離または固定化された請求項11〜 14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片を、候補アンタゴニストと、該候補アンタゴニストの該過免疫血清反応性抗原または断片に対する結合を可能とする条件下で、候補アンタゴニストの該過免疫血清反応性抗原またはその断片に対する結合に応答して検出可能なシグナルを提供することができる成分の存在下で、接触させる工程; および、
b)アンタゴニストの過免疫血清反応性抗原またはその断片に対する結合に応答して生じたシグナルの存在または不在を検出する工程。
【請求項31】
以下の工程を含む、請求項11〜 14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片の、その相互作用パートナーに対する相互作用活性を低減または阻害することができるアンタゴニストの同定方法:
a) 請求項11-14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその過免疫b)断片を提供する工程、
c)該過免疫血清反応性抗原またはその断片に対する相互作用パートナー、特に請求項20〜24のいずれかの抗体を提供する工程、
d)該過免疫血清反応性抗原またはその断片を該相互作用パートナーと相互作用させて相互作用複合体を形成させる工程、
e)候補アンタゴニストを提供する工程、
f)候補アンタゴニストと相互作用複合体との間で競合反応を起こさせる工程、
g)候補アンタゴニストが、過免疫血清反応性抗原またはその断片と相互作用パートナーとの相互作用活性を阻害または低減するかどうかを判定する工程。
【請求項32】
請求項11〜 14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片の、該過免疫血清反応性抗原またはその断片の相互作用パートナーの単離および/または精製および/または同定のための使用。
【請求項33】
請求項1〜 7のいずれかの過免疫血清反応性抗原および断片をコードする核酸配列の存在または、請求項11-14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片の存在を判定することを含む、請求項11〜 14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片の発現に関連する疾患をインビトロで診断する方法。
【請求項34】
請求項1〜 7のいずれかの過免疫血清反応性抗原および断片をコードする核酸配列の存在または請求項11〜 14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片の存在を分析することを含む、細菌感染症、特に表皮ブドウ球菌感染症をインビトロで診断する方法。
【請求項35】
過免疫血清反応性抗原またはその断片に結合するペプチドを作成するための請求項11〜 14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片の使用、ここで該ペプチドはアンチカリンを含む群から選択される。
【請求項36】
機能的核酸の製造のための請求項11〜 14のいずれかの過免疫血清反応性抗原またはその断片の使用、ここで機能的核酸はアプタマーおよびスピーゲルマーを含む群から選択される。
【請求項37】
機能的リボ核酸の製造のための請求項11〜 14のいずれかの核酸分子の使用、ここで機能的リボ核酸は、リボザイム、アンチセンス核酸および siRNAを含む群から選択される。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−523609(P2007−523609A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−504930(P2006−504930)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/EP2004/003398
【国際公開番号】WO2004/087746
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(502270718)インターツェル・アクチェンゲゼルシャフト (26)
【氏名又は名称原語表記】INTERCELL AG
【Fターム(参考)】