説明

表皮角化細胞賦活剤および皮膚外用剤

【課題】従来のものに比べ高活性な表皮角化細胞賦活剤を提供すること、また、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果のみならず、ニキビ・吹き出物改善効果という従来の表皮角化細胞賦活剤では得られなかった効果を有する皮膚外用剤を提供すること。
【解決手段】表皮角化細胞賦活剤はホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を有効成分として含有する。また、皮膚外用剤はホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を乾燥残留物として0.0001〜5質量%含有し、アスコルビン酸またはその誘導体を0. 0001〜5質量%含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は特定の植物抽出物を含有する新規な表皮角化細胞賦活剤および皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、ホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を有効成分として含有する高活性な表皮角化細胞賦活剤、およびホソバヒカゲスゲ抽出物とアスコルビン酸またはその誘導体をそれぞれ特定量含有する皮膚外用剤に関する。本発明の皮膚外用剤は、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果、ニキビ・吹き出物改善効果にいずれも優れている。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、表皮と真皮からなる組織であり、外界からの物理的あるいは化学的ストレスから身体を守るバリア機能を果たしている。皮膚の外側に存在する表皮は、基底層、有棘層、顆粒層、角層からなり、主に角化細胞から構成されている。基底膜で分裂した角化細胞は、分化・成熟を経て上層に移行し、外表面の角層まで達した後、脱落し、ターンオーバー(新陳代謝)を繰り返し、表皮を形成している。表皮のターンオーバーは、皮膚バリア能や水分量の保持等に関与している。
したがって、老化や外部ストレスによって、角化細胞の増殖・角化・脱落のターンオーバーが滞ると、肌荒れや乾燥肌などの原因となると考えられている。そのため、肌荒れや乾燥肌の予防・治療に、表皮角化細胞賦活剤が用いられている。
【0003】
これまでに、表皮角化細胞賦活剤として、アルギン酸オリゴ糖又はその塩(特許文献1)、高級脂肪族炭化水素(特許文献2)、ニトロ化脂肪族炭化水素(特許文献3)、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(非特許文献1)などの化合物だけでなく、ハス胚芽抽出物(特許文献4)、ヒカゲノカズラ属抽出物(特許文献5)、タイソウ抽出物(特許文献6)などの植物抽出物についても報告されている。
【0004】
しかしながら、従来の表皮角化細胞賦活剤は、効果が充分でなかったり、配合量を上げると逆に効果が低下したりするなどの課題があり、皮膚外用剤に配合する際の用量に注意しなければならなかった。さらに、従来の表皮角化細胞賦活剤は、肌荒れ改善効果、保湿効果、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果を有することが知られているが、ニキビ・吹き出物改善効果を有するものは知られていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−81378号公報
【特許文献2】特開2007−238444号公報
【特許文献3】特開2007−238446号公報
【特許文献4】特開2002−68993号公報
【特許文献5】特開2003−292418号公報
【特許文献6】特開2006−316028号公報
【特許文献7】仏国特許出願第2000−15098号明細書(仏国特許発明第2816843号明細書)
【特許文献8】仏国特許出願第2002−11628号明細書(仏国特許発明第2844714号明細書)
【特許文献9】仏国特許出願第2006−2294号明細書(仏国特許発明第2898493号明細書)
【特許文献10】韓国特許出願第2007−52002号明細書(韓国特許公開第2008−104759号公報)
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】The FASEB Journal, 2003, Vol.17, p.1913-1915
【非特許文献2】American Journal of Chinese Medicine, 2004, Vol.32, No.4, p.521-530
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来のものに比べ高活性な表皮角化細胞賦活剤を提供すること、また、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果のみならず、ニキビ・吹き出物改善効果をも優位に有する皮膚外用剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために、表皮ターンオーバー促進作用に関与する角化細胞賦活作用について、様々な植物抽出物を用いて鋭意研究を重ねてきた。その結果、ホソバヒカゲスゲ抽出物が高活性の表皮角化細胞賦活作用を有することを見出した。また、ホソバヒカゲスゲ抽出物と、アスコルビン酸またはその誘導体とをそれぞれ特定量含有させることによって、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果のみならず、ニキビ・吹き出物改善効果という従来の表皮角化細胞賦活剤では得られなかった効果を有することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、ホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を有効成分として含有する表皮角化細胞賦活剤であり、またホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を乾燥残留物として0.0001〜5質量%含有し、アスコルビン酸またはその誘導体を0. 0001〜5質量%含有する皮膚外用剤である。
【0010】
ホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )は、カヤツリグサ科スゲ属の多年草であり、北東アジア全体に分布する植物である。ホソバヒカゲスゲ抽出物についてはすでに、5α−レダクターゼ阻害作用(特許文献7)、ホルモンバランスが崩れた肌用スキンケア成分(特許文献8)、老化遅延用化粧品組成物(特許文献9)、チロシナーゼ阻害作用による美白効果(特許文献10)、抗炎症作用(非特許文献2)についての報告がある。
しかしながら、ホソバヒカゲスゲ抽出物が高活性な表皮角化細胞賦活作用を有すること、また、ホソバヒカゲスゲ抽出物とアスコルビン酸またはその誘導体を皮膚外用剤にそれぞれ特定量含有させることによって、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果のみならず、ニキビ・吹き出物改善効果が得られることは、未だ報告されていない。
【発明の効果】
【0011】
本発明の表皮角化細胞賦活剤は、従来の表皮角化細胞賦活剤に比べ高活性な表皮角化細胞賦活作用を有する。また本発明の皮膚外用剤は、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果のみならず、ニキビ・吹き出物改善効果をも優位に有するものであり、さらに経時安定性に優れるという効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の表皮角化細胞賦活剤および皮膚外用剤は、いずれもホソバヒカゲスゲ抽出物を含有する。まず、ホソバヒカゲスゲ抽出物について説明する。
【0013】
〔ホソバヒカゲスゲ抽出物〕
本発明に用いられるホソバヒカゲスゲ抽出物は、カヤツリグサ科スゲ属に属するホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )の根、葉、花、種子(中でも好ましくは根)を、そのままもしくは乾燥させた後、各種溶媒にて抽出したものであり、抽出液そのもの、もしくはその希釈物や濃縮物をいう。
【0014】
抽出に用いられる溶媒としては、炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、ハロゲン化炭化水素、水溶性のアルコール類及び水などが挙げられる。中でも好ましくは水、低級アルコール、多価アルコールの1種または2種以上を用いたものであり、更に好ましくは水、エタノール、1,3−ブチレングリコールの1種または2種以上を用いたものである。
【0015】
抽出方法は常法に従い、ホソバヒカゲスゲをそのまま、もしくは乾燥させた後、1種または2種以上の溶媒に1時間以上浸漬し、ろ過することで目的の抽出物を得ることができる。抽出は、常圧または加圧、減圧下で、室温または加熱、冷却下で行うことができる。さらに、二酸化炭素などを利用した超臨界抽出法や亜臨界抽出法、水蒸気蒸留など蒸留を用いて抽出する方法、ホソバヒカゲスゲを圧搾して抽出する方法、還流抽出法なども利用することができる。得られた抽出液は、溶媒留去により濃縮したり、カラムクロマトグラフィーや溶媒分画等の処理により精製しても良い。
【0016】
〔表皮角化細胞賦活剤〕
本発明の表皮角化細胞賦活剤は、上記ホソバヒカゲスゲ抽出物を有効成分として含有するものであり、医薬品、医薬部外品、化粧品類(例えば、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、美容液、パック、オイル、軟膏、スプレー、貼付剤など)として利用することができる。また、本発明の表皮角化細胞賦活剤は、例えば、患者から得られた表皮細胞を培養して増殖させることを目的として、あるいは市販されている正常ヒト表皮角化細胞培養キットに添加して培養液を調製し、これを用いて細胞の増殖を促進させることを目的として利用することもできる。本発明の表皮角化細胞賦活剤を医薬として適用する場合は、各種疾患又は症状を治療又は改善する目的、例えば、やけど、創傷又はアザ等に対する治療を目的として用いることができる。本発明の表皮角化細胞賦活剤は、ホソバヒカゲスゲ抽出物に加え必要に応じ、本発明の効果を損なわない範囲内で、医薬品、医薬部外品、化粧品類に添加され得る添加剤を含有していても良い。
【0017】
〔皮膚外用剤〕
本発明の皮膚外用剤は、上記ホソバヒカゲスゲ抽出物を乾燥残留物として0.0001〜5質量%含有するものである。本発明における乾燥残留物の質量は、実際に溶媒を除去して乾燥させた残留物の質量のみならず、残留物に含まれる溶媒量を算出し、その溶媒量を減じた残留物の質量も概念的に包含される。例えば、抽出溶媒が揮発性である場合は、抽出溶媒を105℃〜120℃で完全に留去させ、残存した固形分の質量であり、抽出溶媒が不揮発性である場合は、高速液体クロマトグラフィー等で溶媒量を定量し、それ以外の成分量が乾燥残留物の質量である。
【0018】
ホソバヒカゲスゲ抽出物の配合量は、乾燥残留物として0.0001〜5質量%であり、好ましくは0.0005〜2.5質量%であり、更に好ましくは0.001〜1質量%である。配合量が0.0001質量%未満では肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果、ニキビ・吹き出物改善効果を発揮することができず、5%質量を越えると製剤の安定性に問題が生じ易くなり好ましくない。
【0019】
本発明の皮膚外用剤は、さらに、アスコルビン酸またはその誘導体を0. 0001〜5質量%含有する。アスコルビン酸の誘導体としては、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等の水溶性塩誘導体や、脂肪酸エステル、リン酸エステル、硫酸エステル等のエステル誘導体、アスコルビン酸配糖体、アルキルエーテル等のエーテル誘導体などが挙げられる。中でも好ましくはエステル誘導体、エーテル誘導体であり、さらに好ましくはエステル誘導体である。アスコルビン酸またはその誘導体の配合量は0. 0001〜5質量%であり、好ましくは0.0005〜2.5質量%であり、更に好ましくは0.001〜1質量%である。0. 0001〜5質量%を含有させることで、本発明の表皮角化細胞賦活剤の有効成分であるホソバヒカゲスゲ抽出物との相乗的な効果が認められるようになり、その結果、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果、ニキビ・吹き出物改善効果を優位に有する皮膚外用剤が得られる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤は、様々な剤形にて調製することができ、例えば、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、美容液、パック、オイル、軟膏、スプレー、貼付剤などとして利用することができる。本発明においては、化粧料や医薬品等の皮膚外用剤に常用されている添加物を、本発明の効果を損なわない範囲で、適宜配合することも可能である。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、特に断りのない限り、%は質量%を表す。
【0022】
〔ホソバヒカゲスゲ抽出物および表皮角化細胞賦活剤の調製〕
採取したホソバヒカゲスゲ根を純水で洗浄し乾燥させたもの50gに、500gの70%エタノール水溶液を加え24時間浸漬し抽出した。ろ過後、得られた抽出物を脱臭・脱色処理し、さらに濃縮することによりホソバヒカゲスゲ抽出物粉末を得た。
【0023】
〔実施例1、比較例1:表皮角化細胞賦活試験〕
上記のホソバヒカゲスゲ抽出物粉末と、(−)−エピガロカテキン−3−ガレート(和光純薬社製)をそれぞれ80%エタノール水溶液で10mg/mLになるように溶解し、試験に供した。
マウス表皮角化細胞Pam212を96ウェルプレートに2.0×104cells/100μL/wellになるように播種した。播種培地はダルベッコ変法イーグル培地(Dalbecco’s Modified Eagle Medium, DMEM 和光純薬)に牛胎児血清(Biowest 社製)を終濃度10%になるように添加し、さらに終濃度100U/mLのペニシリン・ストレプトマイシン(GIBCO社製)を使用した。37℃、5%CO2 下で24時間培養後、培地を除去し各濃度の試料を含む低血清培地(1%FBS/DMEM)に置換し、72時間培養した。培養後、MTTアッセイにてミトコンドリア活性を測定し、表皮角化細胞賦活作用とした。MTTアッセイにより生成したホルマザンの量を570nmと630nmの吸光度の差として算出し、細胞賦活率は以下の式を用いて算出した。結果を表1に示す。細胞賦活率120%以上で有効と判定した。
細胞賦活率=(A570 −A630 )sample/(A570 −A630 )control ×100(%)
【0024】
【表1】

【0025】
表1の結果から、ホソバヒカゲスゲ抽出物は、従来の表皮角化細胞賦活剤として用いられている化合物よりも優れた表皮角化細胞賦活作用を示し、また高濃度においても賦活活性を示すことが明らかとなった。
【0026】
〔実施例2、3、比較例2、3、4、5:官能評価〕
上記の表皮角化細胞賦活試験に供したホソバヒカゲスゲ抽出物の80%エタノール水溶液、アスコルビン酸誘導体、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートを使用して、表2に示す化粧水(皮膚外用剤)を調製し、5項目について下記評価基準により評価を行なった。結果を表2に示す。
【0027】
【表2】

【0028】
(評価項目及び評価基準)
(1)肌のくすみ改善効果
20名の女性(38才〜63才)をパネラーとし、皮膚外用剤を1日2回、4週間使用後の肌の状態について下記のように官能評価を行った。
2点:明らかに肌のくすみが改善してきたと感じた場合。
1点:やや肌のくすみが改善してきたと感じた場合。
0点:肌に変化を感じなかった、また肌のくすみが悪化したと感じた場合。
【0029】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上(非常に優れた肌のくすみ改善作用を有する皮膚外用剤)
○:30点以上35点未満(優れた肌のくすみ改善作用を有する皮膚外用剤)
△:15点以上30点未満(わずかに肌のくすみ改善作用を有する皮膚外用剤)
×:15点未満(肌のくすみ改善作用を有しない皮膚外用剤)
【0030】
(2)美白効果
20名の女性(38才〜63才)をパネラーとし、皮膚外用剤を1日2回、4週間使用した後の肌の状態について下記のように官能評価を行った。
2点:明らかに肌のシミ・そばかすが薄くなったと感じた場合。
1点:やや肌のシミ・そばかすが薄くなったと感じた場合。
0点:肌に変化を感じなかった、またはシミ・そばかすが増えたと感じた場合。
【0031】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上(非常に優れた美白作用を有する皮膚外用剤)
○:30点以上35点未満(優れた美白作用を有する皮膚外用剤)
△:15点以上30点未満(わずかに美白作用を有する皮膚外用剤)
×:15点未満(美白作用を有しない皮膚外用剤)
【0032】
(3)肌のキメ改善効果
20名の女性(38才〜63才)をパネラーとし、皮膚外用剤を1日2回、4週間使用した後の肌の状態について下記のように官能評価を行った。
2点:肌のキメが明らかに改善されたと感じた場合。
1点:肌のキメがやや改善されたと感じた場合。
0点:肌のキメに変化を感じない、またはキメが悪化したと感じた場合。
【0033】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上(非常に優れた肌のキメ改善作用を有する皮膚外用剤)
○:30点以上35点未満(優れた肌のキメ改善作用を有する皮膚外用剤)
△:15点以上30点未満(わずかに肌のキメ改善作用を有する皮膚外用剤)
×:15点未満(肌のキメ改善作用を有しない皮膚外用剤)
【0034】
(4)ニキビ・吹き出物改善効果
ニキビや吹き出物に悩む20名の男女(18〜32才)をパネラーとし、皮膚外用剤を1日2回、4週間使用後の肌の状態について下記のように官能評価を行った。
2点:明らかにニキビ・吹き出物が改善してきたと感じた場合。
1点:ややニキビ・吹き出物が改善してきたと感じた場合。
0点:肌に変化を感じなかった、またはニキビ・吹き出物が悪化したと感じた場合。
【0035】
さらに、20名の評価を加算し、合計点を下記の基準で判定した。
◎:35点以上(非常に優れたニキビ・吹き出物改善作用を有する皮膚外用剤)
○:30点以上35点未満(優れたニキビ・吹き出物改善作用を有する皮膚外用剤)
△:15点以上30点未満(わずかにニキビ・吹き出物改善作用を有する皮膚外用剤)
×:15点未満(ニキビ・吹き出物改善作用を有しない皮膚外用剤)
【0036】
(5)経時安定性
化粧料を透明ガラス容器に密封して0℃、25℃、40℃でそれぞれ3ヶ月間保存し、その外観を観察して、下に示す2段階で評価した。
○:安定性良好(いずれの温度においても外観の変化がない。)
×:安定性不良(いずれかの温度において、沈殿を生じるまたは分離する。もしくは変色を生じる。)
【0037】
実施例2、3の結果から、本発明によるホソバヒカゲスゲ抽出物とアスコルビン酸誘導体を併用した化粧水は、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果、ニキビ・吹き出物改善効果に優れ、製剤の安定性も良好であることが理解できる。
【0038】
一方、本発明によるホソバヒカゲスゲ抽出物の成分を含有していない比較例2では、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果、ニキビ・吹き出物改善効果は認められなかった。また、ホソバヒカゲスゲ抽出物のみを配合した比較例3では、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果、ニキビ・吹き出物改善効果は認められるものの、いずれも十分なものではなかった。さらに、アスコルビン酸誘導体のみを含有する比較例4、公知の表皮細胞賦活剤である(−)−エピガロカテキン−3−ガレートを配合した比較例5においても、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果、ニキビ・吹き出物改善効果はいずれも認められなかった。
【0039】
〔実施例4、5、比較例6、7、8、9:官能評価〕
上記のホソバヒカゲスゲ抽出物粉末、アスコルビン酸誘導体、(−)−エピガロカテキン−3−ガレートを使用して、表3に示す乳液(皮膚外用剤)を調製し、実施例2、3と同様の方法により評価を行なった。なお、ホソバヒカゲスゲ抽出物を含有する乳液の調製は、ホソバヒカゲスゲ抽出物粉末を表3に示す多価アルコールとノニオン性界面活性剤成分にあらかじめ溶解した後、他の成分に配合することにより行った。結果を表3に示す。
【0040】
【表3】

【0041】
実施例4、5の結果から、本発明によるホソバヒカゲスゲ抽出物とアスコルビン酸誘導体を併用した乳液は、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果、ニキビ・吹き出物改善効果に優れ、製剤の安定性も良好であった。
一方、ホソバヒカゲスゲ抽出物のみを配合した比較例6では、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果、ニキビ・吹き出物改善効果は認められるものの、いずれも十分なものではなかった。さらに、アスコルビン酸誘導体のみを含有する比較例7、公知の表皮細胞賦活剤である(−)−エピガロカテキン−3−ガレートを配合した比較例8,9でも、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果、ニキビ・吹き出物改善効果とも認められなかった。
【0042】
〔実施例6、7、比較例10、11:官能評価〕
上記のホソバヒカゲスゲ抽出物粉末、アスコルビン酸誘導体を使用して、表4に示すクリームを調製し、実施例2、3と同様の方法により評価を行なった。なお、ホソバヒカゲスゲ抽出物粉末を含有するクリームの調製は、乳液の場合と同様に、ホソバヒカゲスゲ抽出物粉末を表4に示す多価アルコールとノニオン性界面活性剤成分にあらかじめ溶解した後、他の成分に配合することにより行った。結果を表4に示す。
【0043】
【表4】

【0044】
実施例6、7の結果から、本発明によるホソバヒカゲスゲ抽出物とアスコルビン酸誘導体を併用したクリームは、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果、ニキビ・吹き出物改善効果に優れており、製剤の安定性も良好であった。
一方、ホソバヒカゲスゲ抽出物のみを配合した比較例10では、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果、ニキビ・吹き出物改善効果は認められるものの、いずれも十分なものではなかった。さらに、アスコルビン酸誘導体のみを含有する比較例11においては、肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果、ニキビ・吹き出物改善効果はいずれも認められなかった。
【0045】
〔総括〕
以上詳述の通り、本発明の表皮角化細胞賦活剤は、従来のものよりも高活性な表皮角化細胞賦活作用を有しており、また高濃度においても賦活活性を示すことが明らかとなった。そのため、本発明の表皮角化細胞賦活剤の有効成分であるホソバヒカゲスゲ抽出物と、アスコルビン酸またはその誘導体とを含有する皮膚外用剤は、従来の表皮角化細胞賦活剤を含有する皮膚外用剤で認められる肌のくすみ改善効果、美白効果、肌のキメ改善効果よりも単に優れるだけでなく、かかる従来の皮膚外用剤では得られなかったニキビ・吹き出物改善効果をも優位に有しており、安定性も良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の表皮角化細胞賦活剤および皮膚外用剤は、医薬品、医薬部外品、化粧品類(例えば、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、美容液、パック、オイル、軟膏、スプレー、貼付剤など)として利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を有効成分として含有する表皮角化細胞賦活剤。
【請求項2】
ホソバヒカゲスゲ(Carex humilis )抽出物を乾燥残留物として0.0001〜5質量%含有し、アスコルビン酸またはその誘導体を0. 0001〜5質量%含有する皮膚外用剤。

【公開番号】特開2011−105624(P2011−105624A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−260520(P2009−260520)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【出願人】(501255239)東亜化成株式会社 (6)
【出願人】(302009590)バイオランド・リミテッド (8)
【Fターム(参考)】