説明

表示パネルの梱包方法

【課題】パネルの輸送時における破損を防ぐことができ、しかも梱包部材の安価な梱包方法を提供することを目的とする。
【解決手段】周辺部に端子取出し用のフレキシブル配線板10aを配置するとともに端部にチップ管10bを取り付けた平板形状のガラス製のパネル10を有し、このパネル10を間に緩衝材18を介在させて複数個平積みするとともに固定することによりパネル積層体を構成し、かつ前記緩衝材18は、フレキシブル配線板10aを含めたパネル10の大きさより大きい面積を有するとともに、前記パネル10のチップ管10bに対応する位置に、チップ管10bが他のパネル10に当接しないように空間18aを設け、かつ周辺端部に支柱部材が貫通する貫通孔18dを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大画面で、薄型、軽量のディスプレイ装置として知られているプラズマディスプレイ装置などの表示装置において、表示パネルの梱包方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイ装置は、視認性に優れた表示パネル(薄型表示デバイス)として注目されており、高精細化及び大画面化が進められている。
【0003】
このプラズマディスプレイ装置には、大別して、駆動的にはAC型とDC型があり、放電形式では面放電型と対向放電型の2種類があるが、高精細化、大画面化及び製造の簡便性から、現状では、AC型で面放電型のプラズマディスプレイ装置が主流を占めるようになってきている。
【0004】
このようなプラズマディスプレイ装置においては、透明な一対のガラス基板を間に放電空間が形成されるように対向配置するとともにガラス基板に電極群を配置したパネルと、このパネルを保持するシャーシ部材と、このシャーシ部材に取り付けられ前記パネルに信号を印加して表示を行う表示駆動回路基板とでパネルモジュールを構成し、このパネルモジュールを筐体で覆うことにより完成品としている。
【0005】
このようなプラズマディスプレイ装置は、液晶表示装置やCRTなどの他の表示装置に比べて大画面を実現しやすく、また他の大型の表示装置に比べて鮮明な映像が得られるという特徴を有しており、このため多くの人が集まる場所での情報表示装置として、また家庭で迫力のある映像を楽しむことができる映像機器として脚光を集めている。
【0006】
一方、このプラズマディスプレイ装置は、大画面を実現しやすいという反面、パネルの主要構成部品であるガラス基板として、大きいガラス基板が必要となり、また複数の放電セルを選択的にプラズマ放電させることにより画像を表示することから、表示駆動時に多くの熱が発生してしまう。このため、プラズマディスプレイ装置においては、他の表示装置では考慮しなくてもよかった事項について、対策を検討することが要求されている。
【0007】
ところで、近年、この種のプラズマディスプレイ装置においては、パネルの製造に大規模な設備を準備する必要があることから、パネルを生産するメーカーよりパネルモジュールの状態で購入し、そのパネルモジュールに搭載されていない他の駆動回路基板を組込むと共に、筐体内に入れてプラズマディスプレイ装置の完成品とすることが行われている。しかも、パネル単品ではなく、パネルにアルミニウムなどのシャーシを取付けた状態で輸送しており、シャーシにガラスが固定されているため、輸送等についても強度的にも何ら心配することはなかった。
【0008】
一方、特許文献1に示すように、パネル単品の状態で輸送することも検討されているが、パネルはガラスで構成されているため、シャーシがない状態では強度的に非常に弱く、またパネルから引き出されたフレキシブル配線板をどのように梱包するかという大きな課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−67159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、パネルの輸送時における破損を防ぐことができ、しかも梱包部材の安価な梱包方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明は、周辺部に端子取出し用の配線板を配置するとともに端部にチップ管を取り付けた平板形状のガラス製のパネルを有し、このパネルを間に緩衝材を介在させて複数個平積みするとともに固定することによりパネル積層体を構成し、かつ前記緩衝材は、フレキシブル配線板を含めたパネルの大きさより大きい面積を有するとともに、前記パネルのチップ管に対応する位置に、チップ管が他のパネルに当接しないように空間を設け、かつ周辺端部に支柱部材が貫通する貫通孔を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、平板形状のガラス製のパネルを有し、このパネルを間に緩衝材を介在させて複数個平積みするとともに固定することによりパネル積層体を構成し、かつ前記緩衝材は、フレキシブル配線板を含めたパネルの大きさより大きい面積を有するとともに、前記パネルのチップ管に対応する位置に、チップ管が他のパネルに当接しないように空間を設け、かつ周辺端部に支柱部材が貫通する貫通孔を設けたものであり、シャーシがないパネル単品の状態であっても、充分な強度でパネルを梱包することができ、輸送時におけるパネルの破損を防ぐことができ、しかも梱包部材の安価な梱包方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プラズマディスプレイ装置のパネル構造を示す斜視図
【図2】同パネルの電極配線を示す配線図
【図3】プラズマディスプレイ装置の全体構成を示す分解斜視図
【図4】本発明の一実施の形態による表示パネルの梱包方法を説明するための分解斜視図
【図5】同梱包方法において、上面側から見た平面図
【図6】同梱包方法において、積層状態を示す概略断面図
【図7】図6のA部の拡大図
【図8】同梱包方法において、上面側から見た分解斜視図
【図9】同梱包方法において、パネル積層体を固定した状態を示す斜視図
【図10】同梱包方法において、パネル積層体をパネルが垂直になるように配置した状態を示す斜視図
【図11】梱包箱に収容する梱包方法を説明するための斜視図
【図12】梱包箱に収容する梱包方法を説明するための斜視図
【図13】梱包箱に収容する梱包方法を説明するための斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について、プラズマディスプレイ装置に用いる表示パネルを例にとって、図1〜図13を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0015】
まず、プラズマディスプレイ装置について、図1〜図3を用いて説明する。図1にプラズマディスプレイ装置におけるパネルの構造を示している。図1に示すように、ガラス基板などの透明な前面側の基板1上には、スキャン電極とサステイン電極とで対をなすストライプ状の表示電極2が複数列形成され、そしてその電極群を覆うように誘電体層3が形成され、その誘電体層3上には保護膜4が形成されている。
【0016】
また、前記前面側の基板1に対向配置される背面側の基板5上には、スキャン電極及びサステイン電極の表示電極2と交差するように、オーバーコート層6で覆われた複数列のストライプ状のアドレス電極7が形成されている。このアドレス電極7間のオーバーコート層6上には、アドレス電極7と平行に複数の隔壁8が配置され、この隔壁8間の側面及びオーバーコート層6の表面に蛍光体層9が設けられている。
【0017】
これらの基板1と基板5とは、スキャン電極及びサステイン電極の表示電極2とアドレス電極7とがほぼ直交するように、微小な放電空間を挟んで対向配置されるとともに、周囲が封止され、そして前記放電空間には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、キセノンのうちの一種または混合ガスが放電ガスとして封入されている。また、放電空間は、隔壁8によって複数の区画に仕切ることにより、表示電極2とアドレス電極7との交点が位置する複数の放電セルが設けられ、その各放電セルには、赤色、緑色及び青色となるように蛍光体層9が一色ずつ順次配置されている。
【0018】
図2にこのプラズマディスプレイパネルの電極配列を示している。図2に示すようにスキャン電極及びサステイン電極とアドレス電極とは、M行×N列のマトリックス構成であり、行方向にはM行のスキャン電極SCN1〜SCNM及びサステイン電極SUS1〜SUSMが配列され、列方向にはN列のアドレス電極D1〜DNが配列されている。
【0019】
このような電極構成のプラズマディスプレイパネルにおいては、アドレス電極とスキャン電極の間に書き込みパルスを印加することにより、アドレス電極とスキャン電極の間でアドレス放電を行い、放電セルを選択した後、スキャン電極とサステイン電極との間に、交互に反転する周期的な維持パルスを印加することにより、スキャン電極とサステイン電極との間で維持放電を行い、所定の表示を行うものである。
【0020】
図3に上記で説明した構造のパネルを組み込んだプラズマディスプレイ装置の全体構成の一例を示している。図において、表示パネルとしてのパネル10を収容する筐体は、前面枠11と金属製のバックカバー12とから構成され、前面枠11の開口部には光学フィルター及びパネル10の保護を兼ねたガラス等からなる前面カバー13が配置されている。また、この前面カバー13には電磁波の不要輻射を抑制するために、例えば金属メッシュによる遮蔽部材が配置されている。さらに、バックカバー12には、パネル10等で発生した熱を外部に放出するための複数の通気孔12aが設けられている。
【0021】
前記パネル10は、背面側に平板形状のアルミニウム等からなるシャーシ部材14の前面を熱伝導シート15を介して接着することにより配置してパネル10を保持し、そしてシャーシ部材14の背面側には、パネル10に駆動信号を供給するための複数の駆動回路基板16が取り付けられ、これによりパネルモジュールが構成されている。前記熱伝導シート15は、パネル10で発生した熱をシャーシ部材14に効率よく伝え、放熱を行うためのものである。また、駆動回路基板16はパネル10の表示駆動とその制御を行うための電気回路を備えており、パネル10の縁部に引き出された電極引出部に、シャーシ部材14の四辺の縁部を越えて延びる複数のフレキシブル配線板(図示せず)によって電気的に接続されている。
【0022】
また、シャーシ部材14の背面には、駆動回路基板16を取り付けたり、バックカバー12を固定するためのピン14aが設けられている。
【0023】
本発明はこのようなプラズマディスプレイ装置において、パネルの状態で輸送する場合に、この輸送時における衝撃よりパネルが破損するのを防ぐとともに、安価な梱包部材による梱包が可能な梱包方法を提供するものであり、以下その実施の形態について図4〜図13を用いて詳しく説明する。
【0024】
図4に本発明の一実施の形態による表示パネルの梱包方法において、主要部の構成を分解斜視図で示し、図5に上面側から見た平面図を示し、図6に積層状態を概略断面図で示し、図7に図6のA部の拡大図で示している。
【0025】
図4〜図7において、平板形状のパネル10は、上述したように放電空間が形成されるように対向配置したガラス製の基板に電極群を配置するとともに、前記電極群に接続された端子取出し用のフレキシブル配線板10aをパネル10の3辺の周辺部に配置したものである。また、パネル10の端部には、2枚のガラス製の基板を対向配置し、周辺部をガラスフリットなどの封着部材で封着してパネル10を組み立てた後、パネル10内の排気と放電ガスの封入を行うためのガラスからなるチップ管10bが取り付けられている。
【0026】
この平板形状のガラス製のパネル10は、それぞれのパネル10の前記チップ管10bが重ならないように2個のパネル10を位置をずらせた状態で、間に紙やプラスチックなどからなる厚みが1mm以下の保護シート17を介在させて重ね合わせることによりパネル群とし、このパネル群を間に紙やプラスチックなどからなる緩衝材18を介在させて複数個平積みしてパネル積層体19としている。なお、パネル群と緩衝材18の間にも前記保護シート17が介在されている。前記保護シート17および緩衝材18は、端子取出し用のフレキシブル配線板10aを含めたパネル10の大きさより大きい面積を有している。
【0027】
また、緩衝材18において、ずらせて重ね合わせた前記パネル群それぞれのパネル10のチップ管10bに対応する位置に、チップ管10bが他のパネル群のパネル10に当接しないように空間18aが形成されている。さらに、緩衝材18の周縁部には、パネル群のそれぞれのパネル10のコーナー部が当接することにより位置決めを行う位置決め部18b、18cが設けられており、位置決め部18bはパネル10の長手方向の位置規制を行い、位置決め部18cはパネル10の幅方向の位置規制を行うように配置されている。
【0028】
さらに、図8に示すように、2個のパネル10を位置をずらせた状態で重ね合わせたパネル群とし、このパネル群を間に緩衝材18を介在させて複数個、例えば15個のパネル群を平積みしてパネル積層体19を構成した後、緩衝材18の周辺端部のコーナー部に設けた貫通孔18dに、紙管からなる円筒形状の支柱部材20を貫通させるとともに、パネル積層体の底面と上面に、紙やプラスチックなどからなる底板21および天板22を重ね合わせて配置し、その後図9に示すように、底板21および天板22を含めてパネル積層体19をプラスチック製のバンド23によりパネル10の幅方向に複数箇所(図9のものは3箇所)で縛って固定することにより、パネルの梱包を行う。なお、前記底板21および天板22には、バンド23が嵌り合う溝21a、22aが設けられているとともに、前記底板21のコーナー部には、支柱部材20の一端が嵌り込むことにより支柱部材20の一端を底板21に固定する穴21bが設けられている。
【0029】
このように本発明においては、周辺部に端子取出し用のフレキシブル配線板10aを配置するとともに端部にチップ管10bを取り付けた平板形状のガラス製のパネル10を前記チップ管10bが重ならないように2個のパネル10を位置をずらせた状態で重ね合わせたパネル群とし、このパネル群を間に緩衝材18を介在させて複数個平積みしてパネル積層体19とするとともに、このパネル積層体19を緩衝材18とともにバンド23で縛って固定することにより梱包を行うため、輸送途中におけるパネルの破損を簡単な構成で防ぐことができる。
【0030】
また、本発明においては、周辺部に端子取出し用のフレキシブル配線板10aを配置するとともに端部にチップ管10bを取り付けた平板形状のガラス製のパネル10を前記チップ管10bが重ならないように2個のパネル10を位置をずらせた状態で重ね合わせたパネル群とし、このパネル群を間に緩衝材18を介在させて複数個平積みしてパネル積層体19とし、かつ前記緩衝材18は、フレキシブル配線板10aを含めたパネル10の大きさより大きい面積を有するとともに、前記パネル10のチップ管10bに対応する位置に、チップ管10bが他のパネル10に当接しないように空間18aを設け、かつ周辺端部に支柱部材20が貫通する貫通孔18dを設けた構成であり、パネル群を平積みしてパネル積層体19としても、パネル10の平積み方向に加わる荷重を支柱部材20が受けるため、パネル10に荷重がかかり、パネル10が破損するということも防ぐことができる。
【0031】
ここで、図9に示すように、パネル積層体19をバンド23で縛って固定した状態で輸送することも可能であるが、さらに本発明においては、図10に示すように、図9に示す状態のパネル積層体19をパネル10が垂直となるように立てた状態とし、この状態のパネル積層体19を図11〜図13に示すように、複数個(図示のものは2個)並べて梱包箱24に収容することにより、梱包を行う。なお、梱包箱24は、パレット24aと上箱24bとから構成され、パレット24aには、フォークリフトなどの輸送機器のツメなどが挿入可能な穴24cと、上箱24bと結合するための連結片24dが設けられている。
【0032】
このように周辺部に端子取出し用のフレキシブル配線板10aを配置するとともに端部にチップ管10bを取り付けた平板形状のガラス製のパネル10を前記チップ管10bが重ならないように2個のパネル10を位置をずらせた状態で重ね合わせたパネル群とし、このパネル群を間に緩衝材18を介在させて複数個平積みするとともに固定することによりパネル積層体19を構成し、このパネル積層体19をパネル10が垂直となるように立てた状態として複数個梱包箱24に収容することにより、パネル10の厚み方向に荷重が加わりにくくなり、より一層パネルの輸送時の破損を簡単な構成で防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように本発明によれば、パネルを輸送する上で有益な発明である。
【符号の説明】
【0034】
10 パネル
10a フレキシブル配線板
10b チップ管
18 緩衝材
18a 空間
18b、18c 位置決め部
18d 貫通孔
19 パネル積層体
20 支柱部材
21 底板
22 天板
23 バンド
24 梱包箱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺部に端子取出し用の配線板を配置するとともに端部にチップ管を取り付けた平板形状のガラス製のパネルを有し、このパネルを間に緩衝材を介在させて複数個平積みするとともに固定することによりパネル積層体を構成し、かつ前記緩衝材は、フレキシブル配線板を含めたパネルの大きさより大きい面積を有するとともに、前記パネルのチップ管に対応する位置に、チップ管が他のパネルに当接しないように空間を設け、かつ周辺端部に支柱部材が貫通する貫通孔を設けたことを特徴とする表示パネルの梱包方法。
【請求項2】
前記パネル積層体を前記パネルが垂直となるように立てた状態として複数個梱包箱に収容することを特徴とする請求項1に記載の表示パネルの梱包方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−241480(P2010−241480A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93815(P2009−93815)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】