説明

表示パネルの製造方法および表示パネル

【課題】ラインバンク方式のような画素規定層を設けることなく、有機発光層の膜厚を均一化することができる表示パネルの製造方法等を提供する。
【解決手段】平坦化膜103上に2次元配置された複数の画素領域に、有機発光材料を含むインクを滴下して有機層を形成してなる表示パネルの製造方法は、平坦化膜103の上方に、画素領域と画素領域との間を第1の方向に延伸する第1隔壁111と、画素領域と画素領域との間を第1の方向と交差する第2の方向に延伸し且つ第1隔壁111の上端部よりも低い位置で第1の方向へのインクの流動を許容する流路を構成する第2隔壁121とを形成する隔壁形成工程と、滴下されたインクの上面が流路よりも高くなるように、第2の方向に隣り合う一組の第1隔壁111の間にインクを第1の方向に沿って間欠的に滴下する滴下工程とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルの製造方法および表示パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL表示パネル(以下、表示パネルと略記する)の研究・開発が進められている。この表示パネルでは、各画素部が、アノード電極およびカソード電極と、その間に介挿された有機発光層とを有している。そして、表示パネルの駆動においては、アノード電極からホール注入し、カソード電極から電子注入し、有機発光層内でホールと電子とが再結合することにより発光する。
【0003】
上記有機発光層の製法の例として蒸着法と印刷法とが存在する。特に印刷法の一つであるインクジェット法によって画素領域にインクを滴下して発光層を形成する場合は、インク滴下により隣接する他の画素領域である他の色の材料と混ざる(混色)ことを防ぐために、隣接する他の画素領域との間を絶縁材料などから構成された隔壁(バンク)によって区画する必要がある。その隔壁を形成する方式には、複数のライン状に形成された隔壁によって有機発光層(画素領域)をストライプ状に区画する方式(ラインバンク方式:特許文献1)と、井桁状(格子状)に形成された隔壁によって各画素の周囲を囲繞する方式(ピクセルバンク方式)とが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−200049号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では以下のような問題が生じる。
ラインバンク方式の場合、有機発光層を形成する材料をインクジェット等の印刷方式にて画素領域に塗布すると、複数の画素領域に亘って有機発光層を形成する材料が移動するので、複数の画素部において有機発光層の膜厚を均一にできる。
しかし、ラインバンク方式の場合、ライン状に配置した複数の画素部の各々を区画するために、画素部の端部での発光を制御するための画素規定層という隔壁とは別の層を、ライン状の隔壁に直交させて配置することが必要となる。
【0006】
そのため、この画素規定層という別の層の形成のために、有機EL表示パネルを形成するプロセスが一つ増え、コスト増になるという問題がある。
一方、ピクセルバンク方式の場合、前記画素規定層は不要となって、コスト上の問題は解消される。しかし、有機発光層を形成する材料をインクジェット等の印刷方式にて塗布した場合、複数の画素部(画素領域)の一つ一つは個々に規制されているため、複数の画素領域間に亘って有機発光層を形成する材料が移動せず、複数の画素部において有機発光層の膜厚を均一化することが難しいという問題がある。なお、上記問題は、他の機能を有する有機層を形成する場合にも同様に生じる。
【0007】
本発明は、上記課題の解決を図るためになされたものであって、ラインバンク方式のような画素規定層を設けることなく、有機発光層の膜厚を均一化することができる表示パネルの製造方法および表示パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る表示パネルの製造方法は、平坦化膜上に2次元配置された複数の画素領域に、有機発光材料を含むインクを滴下して有機層を形成してなる表示パネルの製造方法であって、前記平坦化膜の上方に、画素領域と画素領域との間を第1の方向に延伸する第1隔壁と、画素領域と画素領域との間を第1の方向と交差する第2の方向に延伸し且つ前記第1隔壁の上端部よりも低い位置で前記第1の方向への前記インクの流動を許容する流路を構成する第2隔壁とを形成する隔壁形成工程と、滴下されたインクの上面が前記流路よりも高くなるように、前記第2の方向に隣り合う一組の第1隔壁の間に前記インクを前記第1の方向に沿って間欠的に滴下する滴下工程とを具備する。
【0009】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係る表示パネルは、平坦化膜の上方に形成され且つ2次元配置された複数の画素領域間を第1の方向に延伸する第1隔壁と、前記平坦化膜の上方に形成され且つ前記複数の画素領域間を第1の方向と交差する第2の方向に延伸する第2隔壁と、前記第1隔壁と前記第2隔壁とにより区画された画素領域に形成された有機発光層と具備し、前記第2隔壁は前記第1の隔壁よりも低い上面部を有し、前記第2隔壁の上面部上に、当該第2隔壁を挟んで隣り合う画素領域の有機発光層と同じ材料の層が存在する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様に係る表示パネルの製造方法では、第2隔壁を形成するために、例えば従来のピクセルバンク方式を採用することができ、第2隔壁を容易に形成することができる。さらに、第2隔壁に対してフォトリソグラフィ等の従来技術を適用したり、平坦化膜の第2隔壁形成予定部位に窪み部を形成したりすることで容易に流路を形成することができる。
【0011】
また、インクが滴下されると、第2隔壁を挟んで隣接する画素領域は、第2隔壁の流路を介して連続することとなり、少なくとも2つの画素領域間で有機発光材料を含むインクのレベリング(厚み調整)が可能となり、均一の発光層を得ることができる。
また、本発明の一態様に係る表示パネルは、前記第2隔壁は前記第1の隔壁よりも低い上面部を有しているため、画素領域に有機発光層をインクジェット方式で形成する際に、第2隔壁を挟んだ画素領域間でインクが連続することとなり、均一な膜厚の有機発光層を有することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態に係る有機EL表示パネル1の概略構成を示すブロック図である。
【図2】画像表示部10における画素部100を示すA−A’模式断面図である。
【図3】画像表示部10における画素部100を示すB−B’模式断面図である。
【図4】画像表示部10におけるバンク111,121の構造を示す模式平面図および模式断面図である。
【図5】発光層113が形成される前のバンク111,121の構造を示す模式斜視図である。
【図6】平坦化膜に形成された窪み部123を示す模式平面図である。
【図7】画像表示部10の製造方法における平坦化膜形成工程を示す模式断面図である。
【図8】画像表示部10の製造方法におけるアノード電極形成工程を示す模式断面図である。
【図9】画像表示部10の製造方法におけるバンク形成工程を示す模式断面図である。
【図10】画像表示部10の製造方法における有機発光層形成工程を示す模式断面図である。
【図11】画像表示部10の製造方法における平坦化膜形成工程およびアノード電極形成工程を示す模式断面図である。
【図12】画像表示部10の製造方法におけるバンク形成工程および有機発光層形成工程を示す模式断面図である。
【図13】画像表示部10の製造方法におけるバンク形成工程の一部を詳細に示す模式断面図である。
【図14】インク172の射出及び塗布を説明する模式図である。
【図15】変形例1に係る画像表示部10のバンク111,121の構造を示す模式断面図である。
【図16】変形例1に係る画像表示部10のバンク111,121の構造を示す模式断面図である。
【図17】変形例2に係る画像表示部10のバンク111,121の構造を示す模式断面図である。
【図18】変形例3に係る画像表示部10の画素部100の構造を示す模式断面図である。
【図19】変形例4に係る画像表示部10の画素部100の構造を示す模式断面図である。
【図20】変形例5に係る画像表示部10の画素部100の構造を示す模式断面図である。
【図21】変形例6の例1に係るインク505の射出及び塗布を説明する模式図である。
【図22】変形例6の例2に係るインク515の射出及び塗布を説明する模式図である。
【図23】変形例7に係るバンク111,553の構造を示す模式斜視図である。
【図24】有機EL表示パネル1を含む有機EL表示装置600を示す外観斜視図である。
【図25】有機EL表示装置600の要部構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[本発明の一態様の概要]
本発明の一態様は、平坦化膜上に2次元配置された複数の画素領域に、有機発光材料を含むインクを滴下して有機発光層を形成してなる表示パネルの製造方法であって、前記平坦化膜の上方に、画素領域と画素領域との間を第1の方向に延伸する第1隔壁と、画素領域と画素領域との間を第1の方向と交差する第2の方向に延伸し且つ前記第1隔壁の上端部よりも低い位置で前記第1の方向への前記インクの流動を許容する流路を構成する第2隔壁とを形成する隔壁形成工程と、滴下されたインクの上面が前記流路よりも高くなるように、前記第2の方向に隣り合う一組の第1隔壁の間に前記インクを前記第1の方向に沿って間欠的に滴下する滴下工程とを具備する。
【0014】
ここでいう「インクを間欠的に滴下する」とは、インクを所定時間をおいて液滴として射出して滴下を行うことをいう。
また、前記インクの滴下は、前記一組の第1隔壁の間に存在する複数の画素領域と複数の第2隔壁とに対して行われる。あるいは、前記隔壁形成工程の前に、前記平坦化膜における前記第2隔壁の形成予定領域に下層窪み部を形成する工程を具備し、前記隔壁形成工程において、前記下層窪み部の内部形状に追従させて、前記下層窪みに対応した上層窪み部と前記第1隔壁よりも低い上面部とを有する第2隔壁を形成し、前記滴下工程における前記第2隔壁に対する前記インクの滴下は、前記上層窪み部に対して行われる。さらに、前記上層窪み部に滴下されたインクが溢れて、前記第1の方向への前記インクの流動が許容される。
【0015】
また、前記滴下工程において、前記インクを充填したインクジェットヘッドを用い、前記インクジェットヘッドの複数の吐出口から前記インクを不連続で吐出させて滴下させ、前記上層窪み部に対して滴下するインク量は、前記第2隔壁を挟んで隣り合う画素領域に対して滴下するインク量よりも多い。あるいは、前記滴下工程において、前記インクを充填したインクジェットヘッドを用い、前記インクジェットヘッドの複数の吐出口から前記インクを不連続で吐出させて滴下させ、前記上層窪み部に対応する吐出口からのインク吐出回数は、前記第2隔壁を挟んで隣り合う画素領域に対応する各吐出口からのインク吐出回数よりも多い。あるいは、前記滴下工程において、前記インクを充填したインクジェットヘッドを用い、前記インクジェットヘッドの複数の吐出口から前記インクを不連続で吐出させて滴下させ、前記上層窪み部に対応する吐出口からのインク吐出量は、前記第2隔壁を挟んで隣り合う画素領域に対応する各吐出口からのインク吐出量よりも多い。
【0016】
また、前記隔壁形成工程において、前記平坦化膜上に前記第1隔壁及び前記第2隔壁を形成する隔壁材料を塗布し、塗布された隔壁材料が前記下層窪み部の内部に入り込んだ後、前記第1隔壁及び前記第2隔壁を残すマスクパターンを介して前記隔壁材料を露光する。あるいは、前記マスクパターンは、前記第2隔壁の平面領域を前記下層窪み部の平面領域より広く残すマスクパターンである。
【0017】
また、前記隔壁形成工程の前に、前記平坦化膜における前記第2隔壁の形成予定領域にマスクパターンを介して下層窪み部を形成する下層窪み部形成工程を具備し、前記下層窪み部を形成するマスクパターンは、光の透過率が互いに異なる複数の透光領域を有するマルチトーンのマスクパターンである。あるいは、前記下層窪み部形成工程において、前記マルチトーンのマスクパターンによりコンタクトホールが形成される領域とコンタクトホールの周囲の領域とに照射される光の透過率を異ならせて前記下層窪み部形成領域に対して露光し、前記平坦化膜に段差を有する下層窪み部を形成する。
【0018】
また、前記隔壁形成工程において、前記平坦化膜上に前記第1隔壁及び前記第2隔壁を形成する隔壁材料を塗布し、前記第1隔壁が形成される領域及び前記第2隔壁が形成される領域に照射される光の透過率が等しくされたマスクパターンを介して前記隔壁材料を露光する。あるいは、前記隔壁形成工程の前に、前記平坦化膜上に前記複数の画素領域の各々に対応して画素電極層を形成する電極層形成工程を具備し、前記画素電極層の端部の一部は、前記下層窪み部の内部に配置されており、前記隔壁形成工程において、前記第2隔壁によって前記画素電極層の端部の一部を被覆する。さらに、前記画素電極層は、前記画素領域から前記下層窪み部の内部に延び、前記下層窪み部の開口縁において屈曲した形状に形成されており、前記画素電極層の端部の一部は、前記屈曲した部分である。
【0019】
本発明の一態様の表示パネルは、平坦化膜の上方に形成され且つ2次元配置された複数の画素領域間を第1の方向に延伸する第1隔壁と、前記平坦化膜の上方に形成され且つ前記複数の画素領域間を第1の方向と交差する第2の方向に延伸する第2隔壁と、前記第1隔壁と前記第2隔壁とにより区画された画素領域に形成された有機発光層と具備し、前記第2隔壁は前記第1の隔壁よりも低い上面部を有し、前記第2隔壁の上面部上に、当該第2隔壁を挟んで隣り合う画素領域の有機発光層と同じ材料の層が存在する。
【0020】
[実施の形態]
以下では、本発明を実施するための形態の一例について、図面を参酌しながら説明する。
なお、以下の説明で用いる形態は、本発明の構成および作用・効果を分かりやすく説明するために用いる例であって、本発明は、その本質的な特徴部分以外に何ら以下の実施の形態に限定を受けるものではない。
1.有機EL表示パネル1の概略構成
本実施の形態に係る有機EL表示パネル1(以下、「表示パネル1」と略記する)の全体構成について、図1を用い説明する。
【0021】
表示パネル1は、画像表示部10と、これに接続された駆動制御部20とを有し構成されている。画像表示部10は、有機材料の電界発光現象を利用した有機EL表示器であり、複数の画素部が配列され構成されている。
また、駆動制御部20は、信号線駆動回路21と走査線駆動回路23と制御回路25とから構成されている。信号線駆動回路21と走査線駆動回路23には、後述する薄膜トランジスタ層に薄膜トランジスタからなる画素回路を制御する制御配線が接続されている。
【0022】
信号線駆動回路21と走査線駆動回路23は、電力供給部(図21参照)から電力が供給される。なお、実際の表示パネル1では、画像表示部10に対する駆動制御部20の配置については、これに限られない。
2.画像表示部10の構成
画像表示部10の構成について図2および図3を用いて説明する。なお、本実施の形態に係る画像表示部10は、一例として、トップエミッション型の有機EL表示器を採用している。また、画像表示部10は、赤(R)、緑(G)、青(B)の何れかの色の発光材料を有する有機発光層を備える画素部100を複数有し、これらがマトリクス状に配置され構成されている。なお、図1において、「円C」の内側に、複数の画素部100の配列の一部を拡大して模式的に示した。
【0023】
図2は、一部の画素部100について、図1におけるA-A’断面を模式的に示した図である。また、図3は、1つの画素部100について、図2に示すB-B’断面を模式的に示した図である。なお、図2および図3の上側(Z軸方向)を、画像表示部10の上方として説明する。
画像表示部10には、基板101の上面に薄膜トランジスタ層(TFT層)102が形成され、その上方に平坦化膜103が形成されている。
【0024】
TFT層102は、基板101上面に複数の薄膜トランジスタ(TFT)105や配線パターンが形成されてなる。そのTFT層102と平坦化膜103との間には、絶縁保護膜たるパッシベーション膜107が介挿されている。なお、図2および図3において、TFT層102を簡略化して図示しており、一部の構成の図示を省略している。
TFT105は、信号線駆動回路21および走査線駆動回路23によって作動させられ、各画素部100に電力を供給する。TFT105は、図3に示すように、ソース105a、ドレイン105b、チャネル層105c、ゲート絶縁膜105d、ゲート電極105eが積層されてなる。
【0025】
なお、一方のTFT105のソース105aもしくはドレイン105bが延長され、画素部100と電気的に接続されるSD電極(ソースドレイン電極)106が形成されている。パッシベーション膜107は、窒化ケイ素(SiN)、酸化ケイ素(SiO)等の無機系誘電材料や、アクリル系、ポリイミド系等の有機系誘電材料によって形成されている。
【0026】
平坦化膜103は、凹凸が存在するTFT層102上に堆積させられ、TFT層102の上方に平坦面103aが形成されている。なお、平坦化面103aは、少なくとも画素部100が形成される領域を平坦にできればよく、後述するコンタクトホールや窪み部等が形成されている等、全ての領域が平坦化されている必要はない。
また、平坦化膜103は、パッシベーション膜107と同等の機能を持たせることが可能であるので、その場合にはパッシベーション膜107は必須ではない。つまり、平坦化膜はTFT層の上面に形成される。
【0027】
本実施の形態において、行列上に配された複数の画素部100をストライプ状に区画するラインバンク方式が採用されている。そのため、画像表示部10には、画素部100をストライプ状に区画する複数の第1バンク111(図2)が、平坦化膜103上に並設されている。第1バンク111は、Y軸方向に直線的に延設されている。また、第1バンク111の断面(Y軸方向と直交する断面である。)形状は、図2に示すように、略台形状が望ましく、X軸方向の両側面111aの各々が傾斜面となっており、頂部は概ね平坦な頂面111bとなっている(つまり、断面形状は、平坦化膜103の平坦化面103aを基準にすると先細り状の台形状である。)。そして、2つの側面111aが、それぞれ、画素部100の有機発光層113の1側面を規定する隔壁として機能している。
【0028】
互いに隣り合う第1バンク111間の領域には、平坦化膜103上面にアノード電極112が形成され、そのアノード電極112の上方または上面に有機発光層113が形成されている。なお、アノード電極112および有機発光層113は、画素部100毎に分離された状態で形成されている。また、少なくとも発光領域において、アノード電極112と有機発光層113との間には、例えば正孔注入層(図示省略)や正孔輸送層(図示省略)等が挿入されていても良い。
【0029】
そして、第1バンク111および有機発光層113の上方または上面に、カソード電極114、および封止層(図示省略)が、順に積層形成されている。なお、有機発光層113とカソード電極114との間には電子輸送層(図示省略)や電子注入層(図示省略)が、画素部100の発光特性に応じて挿入されていても良い。また、図3において、Z軸方向の最上部に、切断面の奥側にある第1バンク111の側面111aに沿って形成されたカソード電極114が白塗りで図示されている。
【0030】
また、画像表示部10には、互いに隣り合う一組の第1バンク111間において、列状に配された複数の画素部100間の領域を横断する複数の第2バンク121(図3)が形成されている。各第2バンク121は、一組の第1バンク111とそれぞれ連結されている。それら第2バンク121によって、第1バンク111の延設方向(Y軸方向)における画素部100の境界が形成されている。
【0031】
第2バンク121の断面(X軸方向と直交する断面である。)形状は、第1バンク111と大きく異なっている。第2バンク121の断面形状は、図3に示すように、あたかも、第1バンク111と同様な断面形状のバンクが、平坦化膜103の窪みに陥没して形成されたような形状をしている。これは、後述するように第2バンク121の形成方法に起因するものである。
【0032】
なお、第1バンク111,第2バンク121(以下、「バンク111,121」と略記する)および平坦化膜103は絶縁性を有している。
本実施の形態において、画素部100は、平坦化膜103上に積層されたアノード電極112、有機発光層113、およびカソード電極114からなり、その平面視における領域(以下、平面領域と記載する)が、第1バンク111と第2バンク121とによって規定されている。
【0033】
画素部100の平面領域は、主に有機発光層113の平面領域によって定まり、有機発光層113は、X軸方向において一組の第1バンク111によって挟まれ、Y軸方向において一組の第2バンク121によって挟まれ、その平面領域が制限されている。
すなわち、一組の第1バンク111間に並ぶ各画素部100のX軸と交差する両側面は、一組の第1バンク111によって規定され、一組の第2バンク121間に並ぶ各画素部100のY軸と交差する両側面は、一組の第2バンク121によって規定されているのである
3.各部構成
以下に、画像表示部10の主要な構成の材料を示す。
a)基板101
基板101は、例えば、無アルカリガラス、ソーダガラス、無蛍光ガラス、燐酸系ガラス、硼酸系ガラス、石英、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエチレン、ポリエステル、シリコン系樹脂、又はアルミナ等の絶縁性材料をベースとして形成されている。
b)平坦化膜103
平坦化膜103には、ポジ型の感光性樹脂材料であるポリイミド系、アクリル系、シクロテン系、ノボラック系が用いられている。なお、平坦化膜103の材料として、例えば、アクリル、ポリイミド、シロキサン等の感光性樹脂材料を用いることもできる。また、ネガ型の感光性樹脂材料を用いてもよい。
c)アノード電極112
アノード電極112は、金属性材料からなる単層、あるいは複数の層が積層されてなる積層体から構成されており、例えば、Ag(銀)、APC(銀、パラジウム、銅の合金)、ARA(銀、ルビジウム、金の合金)、MoCr(モリブデンとクロムの合金)、NiCr(ニッケルとクロムの合金)などを用い形成されている。また、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(In−ZnO)、ZnO、InO、SnO等の半導体材料を用いてアノード電極112を形成することもできる。
【0034】
ここで、金属性材料は、温度が上昇すると抵抗が大きくなるものを指し、半導体材料は、温度が上昇すると抵抗が小さくなるものを指す。なお、本実施の形態のように、トップエミッション型の場合には、高反射性の材料で形成されていることが好ましい。
d)バンク111,121
バンク111,121は、樹脂等の有機材料で形成されており、ポジ型の感光性および絶縁性を有する。バンク111,121の形成に用いる有機材料の例としては、(シクロテン系樹脂)があげられる。そして、バンク111,121は、有機溶剤耐性を有することが好ましい。なお、ネガ型の感光性材料を用いることもできる。
【0035】
さらに、バンク111,121の形成においては、塗布処理、露光・現像処理、ベーク処理などが施されるので、それらの処理の後にインク塗布工程での良好なインク撥水性や、パネルの駆動・保管時における分解ガス量が微量であること等、所望の機能を有する材料で形成されることが好ましい。
なお、バンク111,121の形成に用いる絶縁材料については、上記の各材料をはじめ、特に抵抗率が10[Ω・cm]以上の材料を用いることができる。これは、抵抗率が10[Ω・cm]以下の材料を用いた場合には、アノード電極112とカソード電極114との間でのリーク電流、あるいは隣接画素部100間でのリーク電流の発生の原因となり、消費電力の増加などの種々の問題を生じることになるためである。
【0036】
また、第1バンク111に撥液性をもたせるために、フッ素樹脂等の撥水性を有する材料を用いるか、あるいは表面をフッ素ガスでプラズマ処理することもできる。もし、バンク111を親液性の材料を用いて形成した場合には、画像表示部10の製造時に、有機発光材料を含むインクがバンク111の表面を伝ってX軸方向に隣り合う画素部100間を移動し、互いに異なる色のインクが混ざってしまう虞がある。
【0037】
さらに、バンク111,121の構造については、図2に示すような一層構造だけでなく、二層以上の多層構造を採用することもできる。この場合には、層毎に上記材料を組み合わせることもできるし、層毎に無機材料と有機材料とを用いることもできる。
e)有機発光層113
有機発光層113は、アノード電極112から注入されたホールと、カソード電極114から注入された電子とが再結合されることにより励起状態が生成され発光する機能を有する。有機発光層113の形成に用いる材料は、湿式印刷法を用いて製膜できる発光性の有機材料を用いることが必要である。
【0038】
具体的には、例えば、特許公開公報(特開平5−163488号公報)に記載のオキシノイド化合物、ペリレン化合物、クマリン化合物、アザクマリン化合物、オキサゾール化合物、オキサジアゾール化合物、ペリノン化合物、ピロロピロール化合物、ナフタレン化合物、アントラセン化合物、フルオレン化合物、フルオランテン化合物、テトラセン化合物、ピレン化合物、コロネン化合物、キノロン化合物及びアザキノロン化合物、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、ローダミン化合物、クリセン化合物、フェナントレン化合物、シクロペンタジエン化合物、スチルベン化合物、ジフェニルキノン化合物、スチリル化合物、ブタジエン化合物、ジシアノメチレンピラン化合物、ジシアノメチレンチオピラン化合物、フルオレセイン化合物、ピリリウム化合物、チアピリリウム化合物、セレナピリリウム化合物、テルロピリリウム化合物、芳香族アルダジエン化合物、オリゴフェニレン化合物、チオキサンテン化合物、アンスラセン化合物、シアニン化合物、アクリジン化合物、8−ヒドロキシキノリン化合物の金属錯体、2−ビピリジン化合物の金属錯体、シッフ塩とIII族金属との錯体、オキシン金属錯体、希土類錯体などの蛍光物質で形成されることが好ましい。
f)カソード電極114
カソード電極114は、例えば、ITO、IZO(酸化インジウム亜鉛)などで形成される。トップエミッション型の画像表示部10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが好ましい。光透過性については、透過率が80[%]以上とすることが好ましい。
【0039】
カソード電極114の形成に用いる材料としては、上記の他に、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、またはそれらのハロゲン化物を含む層と銀を含む層とをこの順で積層した構造を用いることもできる。上記において、銀を含む層は、銀単独で形成されていてもよいし、銀合金で形成されていてもよい。また、光取出し効率の向上を図るためには、当該銀を含む層の上から透明度の高い屈折率調整層を設けることもできる。
g)封止層
封止層は、有機発光層113などが水分に晒されたり、空気に晒されたりすることを抑制する機能を有し、例えば、SiN(窒化シリコン)、SiON(酸窒化シリコン)などの材料を用い形成される。トップエミッション型の画像表示部10の場合においては、光透過性の材料で形成されることが好ましい。
4.バンク111,121、アノード電極112および平坦化膜等の詳細な構成
以下、図2〜図4を参照して、第1バンク111,第2バンク121、および平坦化膜103等について説明する。図4(a)は、画像表示部10の一部について、第1バンク111,第2バンク121の平面図を模式的に示した図である。また、図4(b),(c)はX−X’断面を、図4(d),(e)はY−Y’断面を模式的に示した図である。なお、これらの図に、有機発光層113やカソード電極114は図示されていない。
a)画素領域100a
図4(a)に示すように、画素部100が形成される画素領域100aが、第1バンク111と第2バンク121とによって囲繞されている。各画素領域100aは、Y軸方向に長尺の矩形状とされている。なお、図4(b),(c)において、Z軸方向の上側に、切断面の奥側にある第2バンク121が白塗りで図示されている。
【0040】
各画素領域100a(および画素部100)は、図中の記号R,G,Bで示すように、赤(R)、緑(G)、青(B)の何れかの色に対応している。また、画素領域100aは、Y軸方向に並ぶものが互いに同じ色に対応している。一方、X軸方向の並びに着目すると、画素領域100aの対応する色がRGBの順に変化する。つまり、互いに隣り合う一組の第1バンク111間に存する複数の画素領域100aは、互いに同じ色に対応している。一方、任意の画素領域100aは、一組の第1バンク111によってX軸方向において区画された両隣の画素領域100aのそれぞれと異なる色に対応している。
b)窪み部122
図5に発光層113が形成される前のバンク111,121の構造の斜視図を示し、図6に平坦化膜103の上面を示す。平坦化膜103の上面は、大部分が平坦面103aとされているが、第2バンク121下の領域に、窪み部122が形成されている。
【0041】
窪み部122は、上部が箱形状の箱形部123(上部窪み部)とされ、下部が略円柱形状のコンタクトホール部125(下部窪み部)とされている(図3および図4参照)。箱形部123の内部形状は底面および上面(正確には、開口の実存する面はなく、仮想上面となる。)が例えば長方形にされた角錐台形状とされ、コンタクトホール部125の内部形状は例えば円錐台形状とされており、それら箱形部123とコンタクトホール部125とは連通している。
【0042】
図6に示すように、窪み部122は、Y軸方向において互いに隣り合う画素領域100a間に、X軸方向において互いに隣り合う一組の第1バンク111間の領域を横断して形成されている。また、箱形部123は、複数の画素領域100aの境界を形成する領域を、第1バンク111と交差する方向に横断して形成されている。
具体的には、箱形部123は、X軸方向において、互いに隣り合う一組の第1バンク111のうち、一方の第1バンク111の側面111aの下端位置から、他方の第1バンク111の側面111aの下端位置まで連続した領域に形成されている。なお、本実施の形態において、箱形部123は、X軸方向と交差する辺部(縁部)が、第1バンク111の側面111aの下(この下の位置が図6において第1バンク111を示す2点鎖線である。)に進入した状態で形成されている。
【0043】
また、平坦化膜103の上面において、X軸方向に隣り合う箱形部123の間には所定の間隔を置いた領域103bが存在し、当該領域103bの上方に第1バンク111の頂面111bが位置する。頂面111bの下に位置する平坦化膜103(領域103b)の高さは、画素領域100aにおける平坦化膜103の高さと同じにされている。つまり、平坦化膜103における領域103と画素領域100aとは同一平面内に存する。
【0044】
一方、箱形部123が形成された領域では、平坦化膜103の高さは、頂面111bの下に位置する平坦化膜103の領域103bの高さよりも低くなっている。なお、領域103bは、頂面111bに沿ってY軸方向に延びており、Y軸方向において、高さが均一にされている。
箱形部123は、図6に示すように、四角形の底面123aと、窪みの上方が拡大する向きに傾斜した4つの側面123b,123cとを有する。この箱形部123内に、図3に示すように、アノード電極112の電極端部112a,112bが位置するようにアノード電極112が形成されている。
【0045】
コンタクトホール部125は、平坦化膜103における箱形部123の下方に存する部分を貫通する穴であり、箱形部123の底面123aに形成されている。そして、箱形部123の底面123a側と、TFT105のSD電極106側とにそれぞれ開口を有している。
なお、箱形部123は、平面視において四角形の形状をしているが、円形でも良く、多角形でも良い。さらには、コンタクトホール部125は、平面視において円形の形状をしているが、四角でも良く、多角形でも良い。
【0046】
箱形部123とコンタクトホール部125との間には、図3に示すように、段差が生じている。窪み部122は、段差が形成された箇所において段階的に縮径しており、箱形部123の4つの側面123b,123cや、コンタクトホール部125において連続的に縮径している。さらに、窪み部122は、段差が一段にされているが、複数段の段差を形成することができる。
【0047】
また、各段差において、図3に示すように、コンタクトホール部125の開口縁は、角を有する形状であってもよいし、図3とは異なり、角がなく湾曲している形状であってもよい。さらにまた、箱形部123の側面123b,123cと底面123aとが交わる部分についても同様に、角を有する形状であってもよいし、角がなく湾曲している形状であってもよい。
【0048】
また、本実施の形態において、箱形部123は、平坦化膜の上面(平坦面103a)に開口する上側開口部を有している。コンタクトホール部125は、平坦化膜の下面(パッシベーション膜107側の面)に開口する下側開口部を有している。
上記のコンタクトホール部125内には、図3に示すように、アノード電極112の一部が凹入してコンタクトプラグ112cが形成され、そのコンタクトプラグ112cはSD電極106に電気的に接続されている。
c)アノード電極112
アノード電極112は画素部100ごとに設けられており、互いに隣り合う画素部100のアノード電極112間には、絶縁のために所定の離間距離が確保されている。つまり、図3において、左側に位置する窪み部122内で、左側のアノード電極112の電極端部112aと右側のアノード電極112の電極端部112bとが絶縁性を確保するために離れている。なお、コンタクトプラグ112cの円板形状の下端部によって、SD電極106との接続が行われ、この部分がコンタクト部となる。
【0049】
なお、図6から分かるように、平面視において、コンタクト部の領域は、箱形部123の底面123aの領域よりも小さくされている。つまり、窪み部122の平面視における面積が、コンタクトホール部125の平面視における面積よりも大きくされている。
また、Z軸方向において、コンタクトホール部125の領域全てが、箱形部123の領域と重なっている。つまり、平面視において、コンタクトホール部123は、箱形部123の領域内に存在する。
d)窪み部122と第1バンク111
図4(c)のX2−X2’断面に示すように、X軸方向において、互いに隣り合う窪み部122間には所定の離間距離が確保されている。具体的には、箱形部123は第1バンク111の頂面111b下には形成されていない。これは、平坦化膜103の第1バンク111の頂面111b下の領域の高さを画素領域100aと同じにしておくためである。これにより、第1バンク111の頂面111bの高さがY軸方向において略均一になる。このように、第1バンク111の頂面111b下の領域103b(図6参照)に窪み部122を形成しないことで、第1バンク111の形状や頂面111bの高さを良好に保つことができる。なお、前述のように、箱形部123は第1バンク111の側面111a下の領域103bに形成されているが、これは第2バンク121を全体的に低くし、有機発光材料を含むインクを塗布した場合に、Y軸方向に並ぶ画素領域100a間でインクの流動性を向上させるためである。
e)窪み部122と第2バンク121
第2バンク121は、上記窪み部122の上面に形成され、窪み部122の内部形状に追従する形状になる。具体的には、第2バンク121は、図6に示す箱形部123の底面123aと、4つの側面123b,123cとに沿う形状とされ、図3及び図5に示すように、第2バンク121上部に窪み部122と略相似形の小さな窪みである窪み部127が形成されている。また、製造条件等によるが、コンタクトホール部125の上方に小さな窪みが形成される。
【0050】
なお、窪み部127内には、製造上の都合により、有機発光材料129が堆積させられているが(図3)、第2バンク121によって絶縁されているため発光しない。
また、第2バンク121には、図6に示す平坦面103aよりも高い位置に突出させられた突出部121aが形成されている(図3参照)。その突出部121aによって、Y軸方向における画素部100の境界が形成されている。具体的には、突出部121aの有機発光層113側の傾斜面121bによって、有機発光層113のY軸方向における側面が規定されているのである。このことから、箱形部123は、複数の画素部100の各々の境界となる領域に形成され、当該箱形部123に第2バンク121が形成されている。
【0051】
なお、正確には、突出部121aは、アノード電極112の上面よりも高くされている。しかしながら、本実施の形態において、突出部121aの平坦面103aからの突出量に比して、アノード電極112の厚さは、例えば、10分の1前後と非常に薄くされているため、上述のように簡明に表現した。
上記突出部121aは、第1バンク111よりも低くされている。これにより、後述するように、有機発光材料を含むインク滴下時に、第1バンク111の延設方向へのインクの流動が許容される。つまり、第1バンク111(の上面あるいは上端部)よりも低い上面を有する第2バンク121により本発明の通路が構成される。また、画素領域100aに塗布されたインクは、第1バンク111により、異なる色に対応する隣の画素領域100aに流入することが防止される。
【0052】
また、突出部121aの端部は、Y軸方向において、窪み部122外へ食み出し、平坦面103aの上方(つまり、アノード電極112の上面)に位置している(図3や図4(e))。すなわち、平面視において、第2バンク121の領域が、窪み部122の領域よりも大きくされているのである。その結果、電界が集中し易いアノード電極112の屈曲部112dが、第2バンク121によって覆われることとなる。具体的には、第2バンク121の突出部121aと側壁121cとによって屈曲部112dが覆われている。なお、図3において、屈曲部112dは、角張った形状に描かれているが、比較的小さい曲率半径で折れ曲がっているような形状でもよい。その場合は、曲率半径の小さい部分を第2バンク121によって被覆することができる。
5.表示パネルの作動
上記画像表示部10に画像を表示する場合、アクティブマトリクス方式により、信号線駆動回路21および走査線駆動回路23によって、TFT105を介して所定の画素部100に電圧が印加される。その結果、所定の画素部100のアノード電極112とカソード電極114との間に電流が流れて有機発光層113が発光させられる。また、画素部100が対応する色(赤、緑、青)に応じて有機発光層113を形成する有機発光材料が異なり、各画素部100は赤、緑、青のいずれかの色の光を放射する。
【0053】
上記画像表示部10は、有機発光材料を含んだインクが塗布された際に第2バンク122の上面に存する通路により、Y軸方向に隣り合う画素領域100a上で連続することとなり、Y軸方向に並ぶ複数の有機発光層113の膜厚が均一にされる。このため、輝度や色度も均一になり、良質な画像を表示することができる。
なお、前述のように、第2バンク121の窪み部127内に堆積した有機発光材料129は、第2バンク121によってアノード電極112と電気的に絶縁されているため、有機発光材料129に電流が流れず、発光することはない。
6.製造方法
上記表示パネル1の製造方法を、以下に説明する。
【0054】
図7〜図10に、画像表示部10の製造時におけるX1−X1’断面およびX2−X2’断面を左右に並べて模式的に示す。また、図11、図12に、表示パネル1の製造時におけるY2−Y2’断面を模式的に示す。
図7〜図10において、X1−X1’断面を(a1)等に示し、X2−X2’断面を(a2)等に示している。なお、(a1)等および(a2)等を、単に(a)等と略記する場合がある。図7〜図12において、基板101の図示を省略し、TFT層102はSD電極106以外の図示を省略する。また、Y1−Y1’断面については、他の図面および本実施の形態の説明から容易に推測できるため、図示を省略する。なお、上記図において、切断面の奥側にあるバンク111、121の側面や、窪み部122の側面等が白塗りで図示されている場合がある。これは、第1バンク111と第2バンク121との高さの違いを分かり易く示すためである。
a)平坦化膜形成工程
図7(a1),(a2)に示すように、TFT層102上にポジ型の感光性材料からなるレジスト膜137が塗布された後に、マルチトーンマスク140を用いて露光が行われる。その後、現像処理において、図7(a2),(b2)に示すように、光が照射された部分(露光部分)が取り除かれて、窪み部122(箱形部123およびコンタクトホール部125である。)が形成される。その後、焼成処理(ベーク処理)が行われる。
【0055】
レジスト膜137は、スピンコート法等の液層製膜法によって塗布され、TFT層102上の凹凸が埋まることで表面が平坦化される。なお、レジスト膜は、スピンコート法以外に、スリットコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法等の液層製膜法によっても塗布することもできる。
露光処理に用いられるマルチトーンマスク140は、光を透過させる透光部141と、透過光を弱める半透光部142と、光を遮る遮光部143とからなる。半透光部142は、露光機の解像度よりも充分微細なパターンを配置し、単位面積当たりに配置する微細パターンの数を調整して透過率を調整したものや、任意の透過率を持った膜をさらに積層して透過率を調整したもの等があり、このような半透光部142によって中間露光を実現している。特に、RGB毎に窪み部123の深さを異ならせる場合のマルチトーンマスク140は、露光機の解像度よりも充分微細なパターンを配置し、単位面積当たりに配置する微細パターンの数を調整して透過率を調整したものが、好適である。
【0056】
X1−X1’断面は、画素領域100aに対応しており、窪み部122が形成されないため、遮光部143によって遮光されている。その結果、図7(b1)に示すように、平坦面103aが維持される。一方、X2−X2’断面、Y2−Y2’断面では、それぞれ図7(a2),(b2)、図11(a),(b)を対比すると分かるように、透光部141は、コンタクトホール部125の形成領域に対応し、半透光部142は箱形部123の形成領域(コンタクトホール部125の形成領域以外の領域)に対応している。なお、本実施の形態において、コンタクトホール部125の形成領域と箱形部123の形成領域とが重なっているため、上記半透光部142は、箱形部123の形成領域のうち、コンタクトホール部125の形成領域以外の領域に対応している。
【0057】
現像処理において、透光部141を通過した強い光が照射された部分が取り除かれて、平坦化膜103を貫通する穴、つまり、コンタクトホール部125が形成される。また、半透光部142を通過した弱い光が照射された部分(コンタクトホール部125の形成領域を除く)が取り除かれて、平坦化膜103の上面が凹み、箱形部123が形成される。なお、パッシベーション膜107(図3参照)には、レジスト膜137が塗布される前に、リソグラフィ処理(露光、現像、エッチング処理等)により、コンタクトホール部125と連通する開口部が形成されている。もしくはパッシベーション膜107が形成されていない。
【0058】
焼成処理により、例えば、レジスト膜137に残留していた溶媒等が取り除かれて形成された形状が安定するとともにTFT層102との密着性が向上する。
ここで、露光処理と窪み部122の形状との関係について簡単に説明する。箱形部123およびコンタクトホール部125は、上方に向かって拡径する形状とされている。これは、透光部141および半透光部142を通過した光が、回折によって広がることに起因する。
【0059】
具体的に説明する。例えば、透光部141を直進する光は比較的強く、レジスト膜137の最深部まで到達するが、回折した光は比較的弱いため、レジスト膜137の中間あるいは表面までしか到達しない。特に、直進光との角度差が大きいほど光の強度が弱まる。その結果、透光部141に対応する部分はレジスト膜137の下面側に開口し、その周囲は徐々にレジスト膜137の厚さが増加するため傾斜面となるのである。
【0060】
上記事情は、箱形部123についても同様である。なお、絶縁保護膜たるパッシベーション膜107に形成された開口部がコンタクトホールの一部であると考えることもできる。その場合には、窪み部122は、コンタクトホールのうちの上記開口部を除いた部分の機能を有していると考えることができる。
b)アノード電極形成工程
アノード電極112を形成する処理を、図8(a)〜(e)、図11(c)〜(g)に示す。
【0061】
まず、平坦化膜103上に、例えばスパッタリング、真空蒸着等によりAgおよびITO等の薄膜149を形成する(図8(a)、図11(c))。
次に、薄膜149上にポジ型のレジスト150を塗布し、モノトーンマスク151を用いて露光する(図8(b)、図11(d))。モノトーンマスク151は、光を透過させる透光部152と、光を遮る遮光膜部153とからなる。このモノトーンマスク151によって、レジスト150の露光部分は格子形状になる。
【0062】
そして、現像、焼成処理によって、レジスト150を所定のパターンに形成する(図8(c)、図11(e))。このとき、レジスト150は、平面視において、格子形状の溝155によって区画され、複数の矩形状部分が行列状に並べられた形状にされる。
その後、ドライエッチング処理(あるいはウェットエッチング処理)により、薄膜149のレジスト150に被覆されていない格子形状の部分が取り除かれて平面視矩形状のアノード電極112が形成される(図8(d)、図11(f))。その後、レジスト150が取り除かれる(図8(e)、図11(g))。
c)バンク形成工程
平坦化膜103およびアノード電極112上にバンク111,121を形成するバンク形成工程について説明する。
【0063】
アノード電極112が形成された平坦化膜103上に、ポジ型の感光性樹脂材料からなるバンク材料を塗布し、モノトーンマスク161を用いて露光する(図9(a)、図12(a))。
バンク材料の塗布では、例えば、スピンコート法などを用い、平坦化膜103上にバンク材料層160を概ね均一な厚さで堆積させる。バンク材料層160における窪み部122の周辺部分では、窪み部122内へのバンク材料の流入があるため、バンク材料層160の厚みが薄くなっている。
【0064】
なお、窪み部122等が形成されて凹凸のある部分では多少厚さが変化してもよい。バンク材料の塗布において、例えば、スプレーコート法、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、スリットコート法などを用いることもできる。
モノトーンマスク161は、光を透過させる透光部162と、光を遮る遮光部163とからなる。本実施の形態では、バンク材料層160はポジ型の感光性材料からなるため、第1バンク111、第2バンク121が形成される部分が遮光され、バンク111、121以外の部分に光が照射される。
【0065】
次に、現像処理によって画素領域100a上のバンク材料層160が取り除かれ、残存部分が焼成処理される(図9(b)、図12(b))。このように、第1バンク111および第2バンク121が同時に形成される。
上記第2バンク121に対する露光および焼成について、図13(a),(b)に模式的に示して説明する。これらは、それぞれ図12(a),(b)に対応している。
【0066】
図13(a)に示すように、遮光部163は、箱形部123よりも若干広い領域に対応している。これは、第2バンク121を箱形部123よりも若干広い領域に形成して、第2バンク121によって屈曲部112dを被覆する他、第2バンク121の上面を第1バンク111の上面よりも低くするためである。
また、前述した図7(a2),(b2)の露光処理と窪み部122の形状との関係と同様に、透光部162を通過した光が回折によって広がるため(図13(a)中P,Qの矢印)、バンク材料層160のうちの遮光部162の下に位置する部分であって透光部162に近い部分を弱く照らすことができる。これにより、図13の(b)に示すように、画素領域側の側面が平坦化膜103から上方に離れるに従って窪み部122側に近づくように傾斜する側面166aが形成される。
【0067】
窪み部122の周辺のバンク材料層160は窪み部122内に流入するため、窪み部122の周辺でのバンク材料層160の厚みが、画素領域100aやX軸方向に隣り合う画素領域100aの間でのバンク材料層160の厚みよりも薄くなっている。すなわち、窪み部122の周辺でのバンク材料層160の上面位置が、第1バンク111となる画素領域100a間でのバンク材料160の上面位置よりも低くなっている。
【0068】
これにより、窪み部122の領域に形成される第2バンク121の上面は、特別なプロセスを経ずに、第1バンク111の上面よりも低くなる。
上記露光後の現像処理により、図13(b)に示す第2バンク121の未焼成体166が得られる。その後、焼成処理において、未焼成体166が変形し、画素領域100a側の傾斜面166aの傾斜角度が小さくなり(直線R)、第2バンク121が形成される。なお、この焼成処理において、未焼成体166の表面部分が溶融して、その溶融部分が画素電極112と密着し順テーパー形状となる。また焼成処理により、さらに画素領域100a側(箱形部123の外側)に僅かに流動し、未焼成体166(あるいは第2バンク121)がY軸方向に広がる場合がある。
【0069】
上述の露光、現像処理において、平坦下層130の窪み部122の上面及び窪み部122の周辺上面に第2バンク121が形成されることで、第2バンク121が第1バンク111よりも低くされる。第2バンク121が第1バンク111よりも低くされていることで、後述する印刷処理において、有機発光材料を含むインクが第2バンク121を越えて流動することが可能になる。
【0070】
なお、第1バンク111の高さが一様でない場合、第2バンク121の高さが、第1バンク111の最小の高さよりも低ければよい。また、滴下された直後において、インク172の流動をよりスムーズにするために、第2バンク121の高さを、第1バンク111の高さの80%以下にすることが好ましい。なお、ここでいうバンク111,121の高さは、平坦化膜103の平坦面103aを基準とした高さとする。なお、本実施の形態において、第2バンク121の高さは、第1バンク111の高さの30%以上かつ60%以下にされている。
【0071】
バンク111の形成においては、有機発光層113の形成に用いるインクが隣接する画素部100に漏れ出さないようにするため、少なくとも表面の一部が撥液性にされている。なお、第2バンク121は、バンク111を構成する材料と同じあっても良いし、異なっても良い。同じ材料の場合、バンク111,121を効率的(同時)に成形することができる。
d)有機発光層形成工程
有機発光層113の形成工程について説明する。
【0072】
有機発光層113の形成には、インクジェット法が用いられる。図10(a)、図12(c)、図14(a)に、印刷装置のインクジェットヘッド170を示す。なお、図14は、説明の便宜上、インクジェットヘッド170は、ノズル171を現すためにインクの射出方向から見た状態の図であり、ノズル171から射出されるインク172をインクジェットヘッド170の右側に示す。ノズル17は、一組の第1バンク111間の略中央上方に配されるが、図14では、画素領域の平面図を示すため、画素領域に重ならないように、インクジェットヘッド170と射出されたインク172とを表している。
【0073】
インクジェットヘッド170は、図10及び図12に示すように、Y軸方向に延設され、複数のノズル171から有機発光材料を含むインク172を第1バンク111間に間欠的に滴下する。各ノズル171からは、対応する色のインク172が射出される。ここでは、Y軸方向に同色の画素が形成されるため、同一色のインク172が滴下される。
塗布されたインク173(画素領域等に着弾し接触しているインクを指し、ノズル171からは射出されているが着弾していないインク172と区別する。)は、その表面張力によって第1バンク111間で盛り上がり、上面が湾曲した状態となる(図10(b))。第1バンク111は撥液性にされており、塗布されたインク173がはじかれて第1バンク111を超えにくくされている。それは、X軸方向に隣り合う画素領域100aには、互いに異なる色のインク172が塗布されているため、第1バンク111を超えて異色のインク172が混ざらないようにするためである。
【0074】
また、インク172は、第2バンク121上にも滴下され(図12(c))、第2バンク121上にもインク173が塗布される。塗布されたインク173は、その表面張力によって第2バンク121上で盛り上がり、上面が湾曲する状態で隣り合うインク173同士がつながる(図12(d))。これにより、塗布されたインク173が、Y軸方向に連なった状態となり、Y軸方向に流動できるようになる。このため、第2バンク121を挟んでY軸方向に隣接する画素領域100a上に塗布されたインク量が平均化される(図14(b))。
【0075】
なお、第2バンク121は、撥液性にされているため、第2バンク121上に塗布されたインク173は平面視において円形状をしているが、時間の経過と共に乾燥が始まり、結果的に図1(b)に示すように平坦状となる。
塗布されたインク173を乾燥させると、所定の厚さの有機発光層113が形成される(図10(c)、図12(f))。また、第2バンク121の窪み部127内に、有機発光材料129が堆積するが、前述のように発光しないようにされている。
【0076】
インク172の滴下は、図14(a)に示すように、列方向に等間隔をおいて行われ、画素領域100aに対してだけでなく、第2バンク121に対して行われる。具体的には、窪み部122と、窪み部122の両側(窪み部122に対して列方向の隣り合う両側部分である。)の合計3か所である。窪み部122の両側の位置は、第2バンク121上であって隣り合う画素領域100aに近い位置である。
【0077】
第2バンク121上に塗布されるインク172を射出する間隔、つまり、ノズルピッチは、第2バンク121上に塗布された後(着弾後)のインク173の直径d(図14(b))よりも小さい必要がある。なお、着弾後のインク173の直径は、インク量、第2バンク121の撥液性等によって変化するが、試し打ち等により求めることができる。
インク172の滴下量は、第1バンク111と第2バンク121とで区画される画素領域100aであって、塗布されたインク173の上面が第2バンク121の上面よりも高くなるように、設定される必要がある。
e)カソード電極形成工程等
カソード電極114を形成する工程について説明する。
【0078】
スパッタリング法、真空蒸着法等によって陰極材料を有機発光層113等上に堆積させ、カソード電極114を形成する(図10(c)、図12(g))。なお、カソード電極114の層上には、真空蒸着法によって封止膜が製膜されても良いし、カソード電極114の層上に配置される封止基板との間に樹脂を封入して封止膜としても良いし、カソード電極114の層上に配置される封止基板との間に不活性ガスを封入しても良い(図示省略)。
7.作用効果
本実施の形態の表示パネル1は、複数の画素部100をライン状の第1バンク111によってストライプ状に区画するラインバンク方式とされている。なお、一組の第1バンク111により区画されている複数の画素部100が配列する方向が本発明の「第1の方向」に相当する。
【0079】
一方、複数の画素部100を区画する第2バンク121は、その高さが第1バンク111の高さよりも低く形成されている。これにより、有機発光層113を形成する場合に、第2バンク121上に塗布されたインク173を介してY軸方向に隣り合う画素領域100a上に塗布されたインク173が連続することとなり、塗布されたインク173がY軸方向に流動でき、Y軸方向に並ぶ複数の画素領域100aにおいて、インク172の塗布量が均一になる(図12(d)〜(e))。
【0080】
また、Y軸方向に隣り合う画素領域100a上に塗布されたインク173が第2バンク121上で連続することでY軸方向に流動でき、乾燥後の有機発光層113の膜厚を調節しやすくなる。例えば、Y軸方向に隣り合う画素領域100a上のインク173が第2バンク121上で連続していない場合、各画素領域100aに滴下するインク172の液滴数を1つでも増減させると有機発光層113の膜厚が比較的大きく変化して、目標の厚さにすることが困難な場合がある。それに対して、本実施の形態の表示パネル1では、窪み部122の容積を調節し、第2バンク121の窪み部127に堆積する有機発光材料129の体積を調節することで、有機発光層113の膜厚を微調整することが可能である。
【0081】
また、本実施の形態の表示パネル1では、平坦化膜103に窪み部123が形成されており、その窪み部123上に第2バンク121を形成することで、第1バンク111と第2バンク121とで露光量を変えなくとも、高さの異なる第1バンク111と第2バンク121とを同時に形成することができる。そのため、バンク111,121を露光する際には、マルチトーンマスク140の使用が必須ではなくなり、マルチトーンマスク140に適合したバンク材料を選択する必要はない。よって、バンク材料の選択肢が増加し、バンク材料の制約が少なくなる。ただし、マルチトーンマスク140を使用し、かつ、窪み部123上に第2バンク121を形成してもよい。
【0082】
なお、マルチトーンマスクを用いた場合でも、平坦化膜103に深さの異なる穴を形成することは一般的に行われていることから、平坦化膜103に必然的に形成されるコンタクトホールと窪み部とを同時に形成することは容易である。すなわち、製造工程数を増加させずに、互いに高さの異なる2つのバンク111,121を同時に形成することができるのである。なお、本実施の形態において、窪み部122がコンタクトホール部125を有しており、窪み部122がコンタクトホールの機能を備えている。
【0083】
また、本実施の形態の表示パネル1では、アノード電極112は、画素領域100aだけでなく、窪み部123内に延びている。アノード電極112の窪み部123内に配置された部分は、第2バンク121に覆われているため、有機発光層113を発光させるために寄与しない。しかしながら、仮に画素領域100aに電極端部112bが位置していると、局部的な電流(あるいはショート)を防止するために第2バンク121によって電極端部112bを被覆した場合に、アノード電極112の露出面積が減少してしまう可能性がある。その結果、有効に発光し得る面積が減少する。
【0084】
それに対して、本実施の形態において、電極端部112a,112bが窪み部123に配置されることで、アノード電極112の露出面積が減少しにくくなり、有効に発光し得る面積が大きくなる。
なお、電極端部112a,112bが窪み部123に配置されることで、アノード電極112に窪み部123の開口縁に沿う屈曲部112dが形成されることとなるが、第2バンク121は窪み部123より広くされているため、第2バンク121によって屈曲部112dが覆われ、有機発光層113に局部的に電流が流れることが防止されている。
【0085】
また、本実施の形態の表示パネル1では、平面視において、窪み部122が形成される領域内に、コンタクトホール部125が形成されている。窪み部とコンタクトホールとを異なる領域に形成すると、画素領域100aが狭くなってしまうが、窪み部122内にコンタクトホール部125が形成されていることにより、画素領域100aの減少を抑制することができる。
8.第2バンクの窪み部について<変形例1>
第2バンク121の窪み部127の形状は、箱形部123の形状を変えることで容易に変化させることができる。図15、図16には、それぞれ、箱形部123の深さ、広さを変化させることにより、第2バンク121の窪み部127の深さD、広さWを変えた例を示す。窪み部127の深さ、広さを変えることで、窪み部127の容積(内部空間の体積)を変化させ、有機発光層113の厚みを調整したり、窪み部127に堆積する有機発光材料129の量を増減させたりできる。
【0086】
なお、窪み部127には、有機発光材料129が堆積するが電流が供給されないため、発光に寄与しない。しかしながら、窪み部127に堆積する有機発光材料129の量を変化させることで、画素領域100aでの有機発光層113の膜厚を調節することが可能である。例えば、赤、緑、青の色ごとに有機発光層113の膜厚を調節する場合に、各色のインク172の滴下量を変えなくとも、予め窪み部127の体積を色ごとに異ならせておくことで、有機発光層113の膜厚を色ごとに調節することができる。そして、有機発光層113の膜厚を色ごとに調節することにより、発光色に応じた輝度、色度調整が容易になる。なお、3色全ての有機発光層113の膜厚を色ごとに異ならせることは必須ではなく、例えば、3色中の2色の有機発光層113の膜厚が等しくてもよい。
【0087】
箱形部123の深さを異ならせるためには、例えば、マルチトーンマスク140に、互いに透過率の異なる複数の半透光部142を設けることができる。そして、マルチトーンマスクを、深い窪み部を形成する部分に透過率の高い半透光部が対応し、浅い窪み部を形成する部分に透過率の低い半透光部が対応するように形成する。そのマルチトーンマスクを用いて露光、現像処理を行うことによって、深さの異なる窪み部を同時に形成することができる。なお、窪み部を深くする場合、平坦化膜103を貫通させてもよい。
【0088】
箱形部123の広さを異ならせるためには、例えば、マルチトーンマスク140の半透光部142の広さを変えることができる。
なお、色ごとに箱形部123の深さと広さとの両方を異ならせることもできる。
本変形例において、箱形部123の深さや広さは変化するが、コンタクトホール部125の下側開口部の大きさや形状は変化しない。これにより、アノード電極とTFT層102との導電性を変化させずに済む。
9.第2バンクの傾斜面について<変形例2>
第2バンク121は、Y軸方向の端部の画素領域100a側の傾斜面121bにおいて、有機発光層113のY軸方向における側面を規定している。その傾斜面121bの傾斜角度を、赤、緑、青の色ごとに異ならせることができる。
【0089】
図17(a),(b),(c)に、それぞれ傾斜面121bの傾斜角度をθ1〜θ3と、異ならせた例を示す。
傾斜面121bの傾斜角度を調整するには、箱形部123に対する第2バンク121のY軸方向の長さを調節することでなされる。例えば、図17(a)に示すように、第2バンク121のY軸方向の長さを短くし、平面視Y軸方向において箱形部123から食み出す量を小さくした場合、バンクの焼成処理(図13(b)参照)で説明した変形の度合いが大きくなり、焼成後の傾斜面121bの傾斜角度が小さくなる。逆に、図17(c)に示すように、第2バンク121のY軸方向の長さを長くし、平面視Y軸方向において箱形部123から食み出す量を大きくした場合、焼成処理による変形の度合いが小さくなり、焼成後の傾斜面121bの傾斜角度が小さくなる。図17(b)では、箱形部123からの食み出し量が(a)と(c)との中間的な大きさにされており、傾斜面121bの傾斜角度も(a)と(c)との中間的な大きさになる。
【0090】
なお、図中の直線M1,M3によって、(a)と(c)とにおける箱形部123からの食み出し量の違いを視覚的に表している。
傾斜面121bの傾斜角度を各色のインク172に適した角度とすることで、例えば、乾燥後に形成される有機発光層113の膜厚が不均一になることを防止する等、有機発光層113の形状を適切なものとすることができる。
【0091】
具体的に説明する。複数の画素領域100a上等に滴下された直後のインク173は、Y軸方向に連なった状態で貯留されている(図12(d)参照)。しかし、乾燥が進み、貯留されたインク173の上面高さが第2バンク121以下になった場合、各画素領域100a上のインク173は、第2バンク121の窪み部127上のインク173と分離される。そして、第2バンク121の傾斜面121bが撥液性にされ、かつ、乾燥途中のインク173に流動性が残っている場合は、各画素領域100a上のインク172の上面は、その表面張力によって湾曲する。その湾曲の度合いを、傾斜面121bの傾斜角度を適切にすることで、乾燥後の有機発光層113の形状を適切なものとすることができる。傾斜面121bの傾斜角度は、例えば、各色のインク172の粘性や表面張力に基づいて決定することができる。なお、3色全ての有機発光層113に対応する傾斜面121bの傾斜角度が互いに異なっている必要はなく、2色分の傾斜面121bの傾斜角度が同じであってもよい。すなわち、各色で使用するインク172の特性に合わせて適切な傾斜角度を設定できるので、使用できるインクの選択肢が増える。
【0092】
なお、特開2007−311235号公報には、バンク表面に親液性の突状部を形成することで、インクのピンニング位置を制御し、有機発光層の膜厚が不均一になることを防止している。それに対して、本変形例の表示パネル1では、傾斜面121bの傾斜角度を変えることで、インクのピンニング位置を制御し、有機発光層の膜厚が不均一になることを防止することができる。
10.画像素示部の構造について<変形例3>
上記実施の形態において、アノード電極112とカソード電極114との間に有機発光層113が挟まれていた。さらに、アノード電極112と有機発光層113との間にホール注入輸送層を介挿し、有機発光層113とカソード電極114との間に電子注入層を介挿することができる。
【0093】
図18に、図1におけるA−A’断面を模式的に示す。本変形例の画像表示部200は、アノード電極112上にホール注入輸送層201が積層形成され、有機発光層113上に電子注入層202が積層形成されている。
ホール注入輸送層201は、ホールを安定的に、またはホールの生成を補助して、有機発光層113に対しホールを注入および輸送する機能を有し、大きな仕事関数を有する。そのホール注入輸送層201は、例えば、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、イリジウム(Ir)などの酸化金属によって形成することができる。ここで、ホール注入輸送層201を遷移金属の酸化物から構成する場合には、複数の酸化数をとるためこれにより複数の準位をとることができ、その結果、ホール注入が容易になり駆動電圧を低減することができる。なお、ホール注入輸送層201については、上記のような金属酸化物を以って形成する他に、PEDOT(ポリチオフェンとポリスチレンスルホン酸との混合物)や、フタロシアニン系、トリアリールアミン系、トリフェニルアミン系、などを用い形成することもできる。
【0094】
ホール注入輸送層201の形成は、前記アノード電極形成工程の後、バンク形成工程の前に行われる。そして、スパッタリング法、真空蒸着法等によって平坦化膜103およびアノード電極112上に、ホール注入輸送層201が形成される。なお、ホール注入輸送層201を酸化金属によって形成する場合には、平坦化膜103およびアノード電極112上に、金属膜を製膜し、その金属膜を酸化することによってホール注入輸送層201を形成することができる。
【0095】
電子注入層202は、カソード電極112から注入された電子を有機発光層113へ輸送する機能を有し、例えば、バリウム、フッ化リチウム、などで形成されることが好ましい。
電子注入層202の形成は、有機発光層形成工程の後、カソード電極形成工程の前に行われる。そして、真空蒸着法等によって上記材料が有機発光層113およびバンク111,121上に製膜される。
【0096】
本変形例の画像表示部200でも、バンク形成工程において、窪み部122の上方に第2バンク121を形成することで、第1バンク111と第2バンク121とで露光量を変えなくとも、高さの異なる第1バンク111と第2バンク121とを同時に形成することができる。よって、前記実施の形態に記載の作用効果を奏することができる。また、本変形例の画像表示部200は、ホール注入輸送層201と電子注入層202とを備えており、有機発光層113への電荷(ホール、電子)の供給バランスを制御でき、より発光効率が高くなる。
【0097】
なお、本変形例において、ホール注入輸送層201が平坦化膜103の全面を覆うように形成されているが、アノード電極112上だけに形成してもよい。また、アノード電極112が反射電極である場合、アノード電極112とホール注入輸送層201との間に、ITO(酸化インジウムスズ)膜等からなる電極被覆層を介挿してもよい。また、本変形例において、電子注入層202を省略してもよい。なお、本変形例において、箱型部の底面は、第1バンク111の底面より低くされ、さらに、第1バンク111の頂面111b下におけるホール注入輸送層201の下面よりも低くされている。
11.平坦化層の窪み部について<変形例4>
前記実施の形態および変形例において、窪み部122は、箱形部123とコンタクトホール部125とを有していた。その箱形部123を、平坦化膜の下面側に開口するまで深くして、窪み部122の容積を最大にすることもできる。
【0098】
図19は、本変形例における表示パネルの断面(図2のB−B'断面に相当する)を示す図である。本変形例において、平坦化膜や第2隔壁の形状以外は、前記実施の形態と大部分が同じであるため、同じ構成部分には前記実施の形態と同じ符号を付し、異なる構成部分について説明する。
平坦化膜253には、略四角錐台形状の窪み部272が形成されている。この窪み部272は、上側開口部の形状は前記実施の形態の窪み部122と同じにされている。窪み部272の底面272aは、パッシベーション膜107の上面によって形成されている。また、窪み部272の4つの側面272b,272c(図19には側面272bだけ、代表的に示す)には、いずれも段差は形成されておらず、窪み部272は、上側開口部から下側開口部に向かって連続的に縮径する形状とされている。
【0099】
上記窪み部272は、前記図7(a2),(b2)、および図11(a),(b)の工程において、概ね底面272aに相当する領域に、透光部141の光を照射した後、現像することで形成することができる。つまり、マルチトーンマスクを用いなくとも、モノトーンマスクを用いた露光処理によって窪み部272を形成することができる。なお、前記図7(a2),(b2)の工程において説明したように、露光処理における光の回折に起因して、側面272b,272cが傾斜し、窪み部272が下方に向かって縮径する形状となっている。
【0100】
また、窪み部272内に配置されたアノード電極262は、パッシベーション膜107の開口107aを通り抜け、コンタクト部262gにおいてSD電極106に接続されている。このように、本変形例の窪み部272は、平面視において、コンタクト部262gと重なる領域に形成されており、コンタクトホールとしての機能を兼ね備えている。
第2バンク271は、窪み部272の底面272aおよび側面272b,282cに沿った形状とされている。また、前記実施の形態の第2バンク121と同様に突出部271a、および、傾斜面271bが形成されている。窪み部272が深くなっていることで、第2バンク271の上部の窪み部277の容積は、前記実施の形態の窪み部127よりも大きくなっている。その結果、窪み部277に堆積する有機発光材料279の体積は、前記実施の形態の有機発光材料129の体積よりも大きくなっている。なお、図において、有機発光層113の膜厚は前記実施の形態と同じにされているが、インクの塗布量を等しくした場合、本変形例の有機発光層の膜厚は、前記実施の形態のものより薄くなる。
【0101】
第2バンク271の形成、および、有機発光層113の形成は、前記実施の形態と同様である。
本変形例では、窪み部272を有する平坦化膜253を、モノトーンマスクを用いて露光することができ、平坦化膜253の形成が容易である。また、窪み部272の容積を可及的に大きくできるため、窪み部277に堆積する有機発光材料279の体積を大きくしたい場合に好適である。なお、本変形例では、図19に示すように、窪み部272の4つの側面272b,272c(図において、側面272bを代表的に示す)は、それぞれ平面とされているが、これに限られない。即ち、窪み部272の側面は、少なくとも一部が曲面であってもよい。なお、窪み部272の側面全てが曲面であってもよく、例えば、窪み部をお椀状の形状にしてもよい。
12.第2バンクの窪み部について<変形例5>
前記実施の形態および変形例では、窪み部122等は、X軸方向において、第1バンク111の側面111a下に進入していたが、第1バンク111下に進入しない態様とすることもできる。
【0102】
図20(a),(b)は、本変形例における表示パネルの断面(それぞれ、図4のX1−X1’断面、X2−X2'断面に相当する)を示す図である。この図において、有機発光層やカソード電極の図示が省略されている。
本変形例において、平坦化膜や第2隔壁の形状以外は、前記実施の形態と大部分が同じであるため、同じ構成部分には前記実施の形態と同じ符号を付し、異なる構成部分について説明する。
【0103】
本変形例では、X軸方向において、窪み部422の縁部(側面423cの上端)は、第1バンク411の側面411aの下端位置でとどまっており、第1バンク411下に進入していない(側面411aの下端位置と窪み部422の縁部とが一致している。)。そのため、第2バンク421には、中央に第1バンク411より低い低部451(低部により、本発明の「流路」の一部が構成される。)が形成され、X軸方向における端部に第1バンク411と同じ高さの高部452が形成されている。その結果、低部451のX軸方向における長さが、前記実施の形態の第2バンク121より小さくなっている。この点では、インクの流動性を向上させるという観点で、前記実施の形態の第2バンク121よりも劣っている。しかしながら、第1バンク411の頂面411bの高さをより安定的に確保するという点で、前記実施の形態よりも優れている。
【0104】
また、本変形例では、窪み部422の容積が小さくなっているが、コンタクトホール部425の大きさは前記実施の形態と同じであり、箱形部423の容積が減少している。また、箱形部423の容積が減少したのに伴い、第2バンク421の上部の窪み部427の容積も小さくなっている。
なお、第1バンク411と第2バンク421との境界は明確ではないが、第1バンク411のうちの画素領域100aに隣接する部分を延長した部分が第1バンク411であり、図20(b)において、第1バンク411の側面411aを破線で示す。また、図20(b)において、第1バンク411を除いた部分が第2バンク421となる。つまり、第1バンク411のX軸方向の外側部分(破線の外側部分)が第2バンク42となる。
【0105】
なお、上記高部452を第1バンク411の構成要素と考えることもできる。その場合には、本変形例では、第1バンク411の幅(X軸方向における長さ)が一定ではなく、第2バンク421と隣接する部分において広くなっていると考えることができる。そのように考えた場合、窪み部422の縁部が、第1バンク411の側面411aの下に進入している態様となる。
13.インクの滴下について<変形例6>
上記実施の形態では、第2バンク121上にインク173を塗布(貯留)するために、第2バンク121上の3か所に対してインク72を射出していたが、第2バンクを介してY軸方向(本発明の「第1の方向」である。)に隣り合う画素領域に塗布されたインクが第2バンク上のインクを介して連続すれば良く、インクの塗布方法等は実施の形態で説明した方法に限定されるものではない。以下、別の塗布方法について図21、図22を用いて説明する。なお、インクが塗布される画素領域の構造は上記実施の形態と同様である。
a)例1
本例1において、インクジェットヘッド501は、実施の形態と同様に、Y軸方向に等間隔に設けられた複数のノズル503を有している。第2バンク121へのインク505の射出は、第2バンク121上であって画素領域100aに近い2か所に対して2回行われる。つまり、画素領域100aへのインク505の射出回数は1回であり、第2バンク121へのインク505の射出回数は2回である。
【0106】
なお、本例では、第2バンクの幅(Y軸方向(第1の方向)の寸法である。)が広く、インクの塗布量が多い場合について説明している。例えば、1回のインクの射出量が多い場合は、第2バンク121上であって画素領域100aに近い2か所に対して1回行われても良い。
b)例2
本例2において、インクジェットヘッド511は、実施の形態と同様に、Y軸方向に等間隔に設けられた複数のノズル513を有している。第2バンク121へのインク515の射出は、第2バンク121上であって画素領域100aに近い2か所に対して行われる。ここでは、第2バンク121画素領域100aとも射出回数は1回であるが、第2バンク121上に射出されるインク量(515a)は、画素領域100a上に射出されるインク量(515b)よりも多くなっている。なお、1回の射出でのインク量を変化させるには、例えば、インクの吐出電圧を変化させたり、第2バンク121へと射出するノズル位置が固定されている場合にはノズル径を変化させたりすることで実施できる。
c)例3
上記実施の形態や上記例では、インクを第2隔壁の上面に対して滴下している。これは、バンクを撥液性材料で構成した場合、第2バンク上でインクが弾かれてしまい、Y軸方向に隣り合う画素領域上のインクが連続しないためである。
【0107】
したがって、バンクを親液性の材料で構成した場合、上記のようにインクが弾かれることがないため、第2バンク上にインクを滴下しなくても、Y軸方向に隣り合う画素領域上のインクが第2バンク上で連続する可能性はある。
14.第2隔壁<変形例7>
実施の形態では、第2隔壁の上面部を第1隔壁の上端部(上面部)よりも低くして流路を構成していたが、第1隔壁からインクがあふれることなく、第2隔壁を挟んで隣り合う画素領域間でインクが連続して流動できれば良く、第2隔壁のすべての上面部(突出部121aの上面)を第1隔壁よりも低くする必要はない。
【0108】
すなわち、実施の形態ではラインバンク方式のバンクを用いた表示パネルに対して本発明を適用した場合について説明したが、本発明はピクセルバンク方式のバンクを用いた表示パネルに対しても適用できる。
以下、第2隔壁についての実施の形態と別の形態について図23を用いて説明する。なお、実施の形態で説明した部材・構造と同じものは、同じ符号を用いて説明する。
【0109】
平坦化膜103の上面には複数の画素領域103aが2次元(行列状である。)配置されている。画素領域103aと画素領域103aとの間には、Y軸方向(第1の方向)に延伸する第1バンク111と、X軸方向(第2の方向)に延伸する第2バンク553とがそれぞれ形成されている。
第2バンク553の上面部553aは、第1バンク111の上面部111bと同じ高さになっている。第2バンク553の上面部553aには、第2バンク553をY軸方向から挟む2つの画素領域100aを結ぶ溝553bが形成されている。
【0110】
溝553の底は、有機発光層を形成する際に塗布されるインク(乾燥前である。)の上面よりも低い位置にある。すなわち、溝553は、第2バンク553をY軸方向から挟んだ2つの画素領域間でインクの流動が可能となる深さを有している。
なお、溝553bの断面形状は、ここでは「V」字状をしているが、例えば、「U」状、「凹」状、段付の凹状等の他の形状であっても良い。また、平面視において、溝553bはY軸方向に直線的に延伸しているが、例えば、湾曲していても良いし、枝分かれしても良い。さらに、溝553bの本数は、1本に限定するものでなく、複数本あっても良い。
[その他]
1.流路
a)構成
実施の形態において、流路は、一組の第1隔壁における互いに対向しあう面と、第2隔壁の上面とで構成されている。つまり、一組の第1隔壁間であって塗布されたインクの上面よりも低い位置に存在する第2隔壁の上面部とで流路が構成される。
【0111】
変形例7においては、流路は、第2隔壁に形成された溝であって塗布されたインクの上面よりも低い部分で構成されている。
このように、流路は、第1隔壁と第2隔壁とで構成しても良いし、第2隔壁だけで構成しても良い。なお、流路を第2隔壁だけで構成する場合、第2の隔壁の上面部は第1隔壁の上面部よりも高くても良いし、低くても良い。
b)形状
流路は、実施の形態や変形例7で示すように、隣り合う画素領域間でインクの流動が許容されれば、その形状を特に限定するものではない。また、本数についても変形例7の欄で説明したように特に限定するものではない。
c)容量
実施の形態では流路の一部を第2隔壁の窪み部で構成し、窪み部の容量を変化させたものを変形例4で説明している。このように、流路に流れるインクの流量について特に限定するものではないが、流路の容量を調節することによって、画素領域に塗布されたインクの膜厚を調整できるという効果がある。
2.画素領域と第1及第2の方向
実施の形態では、画素領域は平面視において第1の方向(Y軸方向)に長い矩形状をしていたが、第1の方向に短い矩形状であっても良い。さらには、円形状、楕円、長円形状であっても良いし、三角形等の多角形状であっても良い。
【0112】
第1の方向と第2の方向とは、実施の形態でのX軸方向とY軸方向のように、直交していても良い。この場合、単位面積当たりの画素領域の占有面積が四角形の場合よりも小さくなる。なお、第1の方向及び第2の方向は、隣り合っている、画素領域と画素領域の間を一定方向に延伸する方向である。この方向は、画素領域が並ぶ方向でもあり、画素領域の境界線と第1の方向及び第2の方向とが一致する必要はない。
【0113】
また、画素領域の平面視形状を例えば正六角形状として、第1の方向と第2の方向との角度を90度以外の120度とすることもできる。この場合、単位面積当たりの画素領域の占有面積を大きくできる。
3.有機層
実施の形態等では、有機発光材料を含むインクを用いて有機発光層を形成する場合について説明している。つまり、有機発光層を有機層に適用した場合について説明している。しかしながら、本発明は、有機材料を含むインクを用いて有機層を形成する場合に適用でき、有機発光層以外の他の有機層にも適用できる。他の有機層としては、例えば、正孔輸送層、正孔注入層等がある。
【0114】
また、表示パネルは、実施の形態では有機発光層を備える有機EL表示パネルであったが、例えば、正孔輸送層や正孔注入層を有機材料で構成し、発光層を無機材料で構成した無機発光層を備える無機EL表示パネルであっても良い。
4.上記実施の形態およびその変形例において説明した表示パネル1は、例えば、テレビジョン受像機等の表示装置に用いられる。図24に、表示パネル1を備えた有機EL表示装置600(以下、単に表示装置600と記載する)を示す。また、図25に、表示装置600の主要構成を示すブロック図を示す。
【0115】
表示装置600は、表示パネル1の他に、チューナ610と、外部信号入力部611と、映像処理部612と、音声処理部613と、制御部614と、表示パネル1に電力を供給する電力供給部615とを備えている。また、表示装置600には、内部もしくは外部にスピーカ616が接続されている。
表示装置600において、チューナ610によって受信された信号が、図示を省略する復調・分離回路によって映像信号と音声信号に分離され、それぞれ映像処理部612と音声処理部613に伝送される。映像処理部612では、映像信号を複合してフレーム画像信号を生成し、表示パネル1に所定周期で順次伝送する。表示パネル1の制御回路25は、フレーム画像信号に基づいて少なくとも信号線駆動回路21および走査線駆動回路23を制御し、画像表示部10に1フレーム分の画像を順次表示させる(図1参照)。音声処理部613は、音声信号を複合および増幅し、スピーカ616に出力する。
【0116】
外部信号入力部611には、例えば、DVDレコーダ620等の外部の映像再生機器が接続され、その映像再生機器の映像信号、音声信号が入力される。映像処理部612、音声処理部613は、制御部614の指令に応じてチューナ610または外部信号入力部611のいずれかの信号を選択し、表示パネル1等に出力する。
制御部614は、CPU(Central Processing Unit)、ROM、RAM等を備え、図示を省略するリモートコントローラや操作スイッチ等によって入力される動作指令に応じて、各構成を制御し、表示装置600の各種の動作を実現する。
【0117】
上記表示装置600は、前記実施の形態およびその変形例に記載の表示パネル1を備えることで、前記実施の形態等と同様の作用効果を奏することができる。
5.上記実施の形態および変形例1〜3では、本発明の構成および作用・効果を分かりやすく説明するために一例としての各構成を採用するものであり、本発明は、本質的な部分を除き、上記形態に限定されるものではない。例えば、上記実施の形態では、図2に示すように、有機発光層113に対し、そのZ軸方向下側にアノード電極112が配されている構成を一例として採用したが、本発明は、これに限らず有機発光層113に対し、そのZ軸方向下側にカソード電極114が配されているような構成を採用することもできる。
6.上記実施の形態および変形例1〜7では、アノード電極112を反射金属とし、カソード電極114を透明もしくは半透明金属としたトップエミッション構造としても良いし、アノード電極112を透明もしくは半透明金属とし、カソード電極114を反射金属としたボトムエミッション構造としても良い。
7.上記の実施の形態および変形例1〜7では、基板上にTFT層102を有するアクティブマトリックス駆動を前提に説明したが、本願はパッシブマトリックス駆動にも適用できる。この場合、TFT層は必要なく、有機発光層を駆動するための駆動配線によって有機発光層に電流を供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、輝度ムラが少なく、高い画質性能を有する表示装置を実現するに有用である。
【符号の説明】
【0119】
1 有機EL表示パネル
10,200 画像表示部
100 画素部
100a 画素領域
101 基板
102 TFT層
103 平坦化膜
103a 平坦面
111 第1バンク
112 アノード電極
112e 開口縁部
113 有機発光層
114 カソード電極
121 第2バンク
121a 突出部
121b 傾斜面
122 窪み部
123 箱形部
125 コンタクトホール
127 窪み部
129 有機発光材料
140 マルチトーンマスク
172 インク
300 有機EL表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦化膜上に2次元配置された複数の画素領域に、有機材料を含むインクを滴下して有機層を形成してなる表示パネルの製造方法であって、
前記平坦化膜の上方に、画素領域と画素領域との間を第1の方向に延伸する第1隔壁と、画素領域と画素領域との間を第1の方向と交差する第2の方向に延伸し且つ前記第1隔壁の上端部よりも低い位置で前記第1の方向への前記インクの流動を許容する流路を構成する第2隔壁とを形成する隔壁形成工程と、
滴下されたインクの上面が前記流路よりも高くなるように、前記第2の方向に隣り合う一組の第1隔壁の間に前記インクを前記第1の方向に沿って間欠的に滴下する滴下工程と
を具備する
表示パネルの製造方法。
【請求項2】
前記インクの滴下は、前記一組の第1隔壁の間に存在する複数の画素領域と複数の第2隔壁とに対して行われる
請求項1に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項3】
前記隔壁形成工程の前に、前記平坦化膜における前記第2隔壁の形成予定領域に下層窪み部を形成する工程を具備し、
前記隔壁形成工程において、前記下層窪み部の内部形状に追従させて、前記下層窪みに対応した上層窪み部と前記第1隔壁よりも低い上面部とを有する第2隔壁を形成し、
前記滴下工程における前記第2隔壁に対する前記インクの滴下は、前記上層窪み部に対して行われる
請求項2に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項4】
前記上層窪み部に滴下されたインクが溢れて、前記第1の方向への前記インクの流動が許容される
請求項3に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項5】
前記滴下工程において、前記インクを充填したインクジェットヘッドを用い、前記インクジェットヘッドの複数の吐出口から前記インクを不連続で吐出させて滴下させ、
前記上層窪み部に対して滴下するインク量は、前記第2隔壁を挟んで隣り合う画素領域に対して滴下するインク量よりも多い
請求項3または4に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項6】
前記滴下工程において、前記インクを充填したインクジェットヘッドを用い、前記インクジェットヘッドの複数の吐出口から前記インクを不連続で吐出させて滴下させ、
前記上層窪み部に対応する吐出口からのインク吐出回数は、前記第2隔壁を挟んで隣り合う画素領域に対応する各吐出口からのインク吐出回数よりも多い
請求項3または4に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項7】
前記滴下工程において、前記インクを充填したインクジェットヘッドを用い、前記インクジェットヘッドの複数の吐出口から前記インクを不連続で吐出させて滴下させ、
前記上層窪み部に対応する吐出口からのインク吐出量は、前記第2隔壁を挟んで隣り合う画素領域に対応する各吐出口からのインク吐出量よりも多い
請求項3または4に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項8】
前記隔壁形成工程において、
前記平坦化膜上に前記第1隔壁及び前記第2隔壁を形成する隔壁材料を塗布し、
塗布された隔壁材料が前記下層窪み部の内部に入り込んだ後、前記第1隔壁及び前記第2隔壁を残すマスクパターンを介して前記隔壁材料を露光する
請求項3に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項9】
前記マスクパターンは、前記第2隔壁の平面領域を前記下層窪み部の平面領域より広く残すマスクパターンである
請求項8に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項10】
前記隔壁形成工程の前に、前記平坦化膜における前記第2隔壁の形成予定領域にマスクパターンを介して下層窪み部を形成する下層窪み部形成工程を具備し、
前記下層窪み部を形成するマスクパターンは、光の透過率が互いに異なる複数の透光領域を有するマルチトーンのマスクパターンである
請求項1に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項11】
前記下層窪み部形成工程において、前記マルチトーンのマスクパターンによりコンタクトホールが形成される領域とコンタクトホールの周囲の領域とに照射される光の透過率を異ならせて前記下層窪み部形成領域に対して露光し、前記平坦化膜に段差を有する下層窪み部を形成する
請求項10に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項12】
前記隔壁形成工程において、
前記平坦化膜上に前記第1隔壁及び前記第2隔壁を形成する隔壁材料を塗布し、
前記第1隔壁が形成される領域及び前記第2隔壁が形成される領域に照射される光の透過率が等しくされたマスクパターンを介して前記隔壁材料を露光する
請求項1に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項13】
前記隔壁形成工程の前に、前記平坦化膜上に前記複数の画素領域の各々に対応して画素電極層を形成する電極層形成工程を具備し、
前記画素電極層の端部の一部は、前記下層窪み部の内部に配置されており、
前記隔壁形成工程において、前記第2隔壁によって前記画素電極層の端部の一部を被覆する
請求項3から11のいずれか1項に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項14】
前記画素電極層は、前記画素領域から前記下層窪み部の内部に延び、前記下層窪み部の開口縁において屈曲した形状に形成されており、
前記画素電極層の端部の一部は、前記屈曲した部分である
請求項13に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項15】
平坦化膜の上方に形成され且つ2次元配置された複数の画素領域間を第1の方向に延伸する第1隔壁と、
前記平坦化膜の上方に形成され且つ前記複数の画素領域間を第1の方向と交差する第2の方向に延伸する第2隔壁と、
前記第1隔壁と前記第2隔壁とにより区画された画素領域に形成された有機発光層と
具備し、
前記第2隔壁は前記第1の隔壁よりも低い上面部を有し、
前記第2隔壁の上面部上に、当該第2隔壁を挟んで隣り合う画素領域の有機層と同じ材料の層が存在する
ことを特徴とする表示パネル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2013−89293(P2013−89293A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225612(P2011−225612)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】