説明

表示パネルモジュール組立装置

【課題】表示パネルモジュール組立装置における圧着装置では、上刃とパネル基板や下刃の面平行にずれが生じると搭載する部品にずれが生じる。搭載ずれを抑制するためには、極めて高い面平行度が要求されるため調整に労力と時間が必要であるとともに、経時的な各部材の平行度ずれなどには対応できない。
【解決手段】圧着装置の圧着刃7,8に、圧着方向に直交する軸周りの回転機構12と圧着するパネル基板17の面内方向にスライド可能なスライド機構13を設けることで、圧着動作時に、上刃7とパネル基板17や下刃8の面平行ズレのために生じるパネル基板面方向への剪断力を抑制しつつ、上刃7とパネル基板17や下刃8の面平行を確保することにより、圧着動作時の搭載部品16のずれを防止し、高精度かつ安定な部品搭載が可能な表示パネルモジュール組立装置が実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルモジュールの組立装置に係り、液晶やプラズマなどのFPD(Flat Panel Display)の表示パネル基板(表示セル基板)の周辺に駆動ICの搭載やCOF(Chip on Film),FPC(Flexible Printed Circuits)などのいわゆるTAB(Tape Automated Bonding)接続および周辺基板(PCB=Printed Circuit Board)を実装する表示パネルモジュール組立装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示パネルモジュール組立装置は、液晶やプラズマなどのFPDの表示パネル基板に、複数の処理作業工程を順次行うことで、前記表示パネル基板の周辺に駆動IC,TABおよびPCBなどを実装する装置である。
【0003】
例えば、処理工程の一例としては、(1)表示パネル基板端部のTAB貼付け部を清掃する端子クリーニング工程,(2)清掃後の表示パネル基板端部に異方性導電フィルム (ACF=Anisotropic Conductive Film)を貼付けるACF工程,(3)ACFを貼付けた位置に、表示パネル基板側の配線と位置決めしてTABやICを搭載する搭載工程(TABテープからCOFなどを打抜工程含む),(4)搭載したTABを加熱圧着することで、ACFフィルムにより固定する圧着工程,(5)搭載したTABやICの位置や接続状態を検査する検査工程,(6)TABの表示パネル基板側と反対側にPCBをACFなどで貼付け搭載するPCB工程(PCBへのACF貼付け工程を含む)などからなる。
【0004】
このうち(4)の圧着工程および(6)におけるTABとPCBの圧着工程は、パネルやPCBに位置決め搭載されたTABやICを、下刃と上刃で挟込み高温高圧を付加することで、完全に固定接続するための工程である。この圧着工程では、パネルやPCBと下刃や上刃の面の平行度がずれていると、圧着動作時に搭載した部品にずれが生じてしまうという課題が存在する。
【0005】
特許文献1および特許文献2には、圧着ヘッドの上刃と下刃の平行度や上刃の平行度を高精度に調整するための手段について開示されている。
【0006】
特許文献1では、上刃と下刃面の平行度を高精度に測定するため、レーザを用いた変位測定治具について開示されている。特許文献2は、圧着する押圧ヘッド(上刃)を上下に2分した構成とするとともに、スリーブボルトによって押圧ヘッド下部を弾性変形の範囲内で回転変位させて押圧面の面角度を調整する方式を開示している。
【0007】
更に、特許文献3には、磁力を利用して圧着ヘッドの上刃と下刃面の平行度を確保する方法が開示されている。圧着ヘッド(上刃)を加圧ブロックと揺動可能な状態で連結し、基板支持台(下刃)に電磁石コイルを設けて、圧着ヘッド(上刃)を基板支持台(下刃)に倣わせるように構成されている。
【0008】
また、圧着プロセスでは、圧着ヘッドに付加する押圧力の反力で、圧着装置のフレーム全体も変形する。この変形による圧着ヘッドの平行度への影響も無視できない。特許文献4および特許文献5には、圧着圧力の反力によるフレーム変形の影響を抑制する方策が開示されている。
【0009】
特許文献4によれば、圧着ヘッドの押圧時の反力を受ける上部フレームを分離し、高剛性の側フレームによって基部に連結することで、圧着ヘッドやヘッド保持部に曲げ荷重が作用することを防止できる。
【0010】
特許文献5では、圧着ヘッドの搭載された圧着ヘッド用フレームと駆動機構が搭載された駆動機構用フレームを分離するとともに、駆動機構用フレームにリンク支点を配置することで、圧着動作時の反力が、駆動機構用フレームに作用するように構成したものである。
【0011】
また、特許文献6には、加圧ヘッドの圧着面を複数に分割することで、加圧対象の面の形状にならうように構成したものも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平08−107132号公報
【特許文献2】特開2003−332790号公報
【特許文献3】特開2010−034105号公報
【特許文献4】特開2004−221184号公報
【特許文献5】特開2006−086181号公報
【特許文献6】特開2003−289090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1および特許文献2に記載されている方法を用いることで、高精度に圧着ヘッドの上刃と下刃の平行度を計測するとともに、ヘッドの平行度調整が可能である。しかし、この方法では、圧着動作による経時的なヘッドの平行度ずれが生じた場合、再度計測調整が必要になる。さらに、処理対象であるパネルやPCBにおける反りなどの形状誤差などに対応することはできないという課題を有している。
【0014】
特許文献3に開示されている方法では、上刃を揺動可能な状態で連結するとともに、基板支持台(下刃)に設けた電磁石コイルによって上刃と下刃の吸引密着を行っているために、経時的なヘッドの平行度のずれなどの影響は回避できる。しかし、圧着動作時に、上刃の揺動動作によってTABやICにパネル面内方向の力が作用し、これによって搭載位置ずれが生じてしまう。また、本方式においても、前記パネルやPCBにおける反りなどの形状誤差などに対応することは難しい。
【0015】
特許文献4および特許文献5は、圧着動作時の反力による圧着装置フレーム全体の変形による影響が、圧着精度に及ぼす影響を抑制する有効な方法である。しかし、これらの対策を施したとしても、圧着ヘッドの上刃と下刃面の平行度やパネル面との平行度については、高精度に確保することが必要である。
【0016】
特許文献6は、加圧ヘッドの圧着面を複数に分割することで、加圧対象の面の形状にならうように構成しており、加圧対象物の平面性が悪い場合においても、安定した圧着を行うことを目的としている。しかし、現実には加圧ヘッドの構成が非常に複雑になるとともに、圧着面の分割数に限界があるため、所望の効果を得ることは非常に難しい。
【0017】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、比較的簡単な構成で、圧着装置における圧着ヘッドの下刃面とパネル実装面および上刃面が高い面精度で圧着可能な構成を提供することで、圧着動作時の搭載部品のずれを防止し、高精度かつ安定な部品搭載を可能にする表示パネルモジュール組立装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は上刃および下刃からなる圧着刃を有し、この上刃および下刃との間に基板と実装部品とを挟み込んで加圧することで、基板と実装部品とを接続する表示パネルモジュール組立装置において、その特徴とするところは、前記圧着刃の下刃および上刃の少なくとも一方が、前記基板の面内の少なくとも1方向にスライド可能なスライド機構を具備することにより、上刃および下刃による圧着時に生じる基板の面内方向の剪断力を軽減したところにある。
【0019】
本発明では更に、スライド機構の具体的構成、非加圧時における中立位置への復帰機構、及び表示パネルモジュール組立装置としての全体構成等についても提案するが、その詳細は以下述べる発明の実施の形態の中で明らかにする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、比較的簡単な構成により、圧着ヘッドの下刃面とパネル実装面および上刃面が高い面精度で圧着可能となることから、圧着動作時の搭載部品のずれを軽減し、高精度かつ安定な部品搭載が可能な表示パネルモジュール組立装置を実現することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る表示パネルモジュール組立装置の圧着装置部の一実施例図
【図2】本発明の圧着ヘッド部の一実施例およびその圧着動作時の挙動説明図
【図3】ヘッド回転機構やヘッド・スライド機構を備えないヘッド部の挙動説明図
【図4】本発明の圧着ヘッド部の他の実施例およびその圧着動作時の挙動説明図
【図5】表示パネルモジュール組立装置の動作工程を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図1から図5を用いて説明する。
先ず初めに、表示パネルモジュールの組立工程について簡単に説明する。図5は、表示パネルモジュールの組立工程を説明するための図である。表示パネルモジュールの組立は、次の手順で行われる。
【0023】
(1)端子清掃工程:表示パネル基板30の周辺端子領域を清掃する工程。溶剤など浸込ませた清掃テープ18、端子部の異物などを拭取り除去19する。その他の異物除去方法として、UVやプラズマを用いる方法が用いられる場合もある。
【0024】
(2)ACF貼付工程(パネル側):異方性導電フィルム (ACF)を表示パネル基板30に貼付ける工程。数10℃〜100℃前後の温度で、ACFテープ20を軟化させて表示パネル基板30の部品搭載位置に仮付け21する。
【0025】
(3)搭載工程:表示パネル基板30周辺にCOF22やCOG(パネル基板周辺搭載IC)24などの部品を搭載23,25する工程。表示パネル基板30に設けられた基準マークとCOF22やCOG24などに設けられた基準マークを検出し位置決めを行って、既定の位置に搭載23,25する。
【0026】
(4)圧着工程(COG,COF):搭載工程で、表示パネル基板周辺に搭載する部品を、圧着ヘッド7により、数100℃程度の高温加熱加圧26することで、導通を確保しACFを硬化させる。
【0027】
(5)ACF貼付工程(PCB側):異方性導電フィルム(ACF)20を周辺基板(PCB)28に貼付ける工程。パネル側への貼付けと同様に数10℃〜100℃前後の温度で、ACFテープ20を軟化させて周辺基板(PCB)28の接続位置に仮付け29する。
【0028】
(6)PCB搭載・圧着工程(PCB):周辺回路基板28を表示パネル基板30周辺に圧着する工程。表示パネル基板30に取り付けられたCOF22やFPCなどの反対側に、周辺回路基板28を位置決めし、数100℃程度の高温加熱加圧27することで、導通を確保しACFを硬化接合する。
その他、各工程での検査などの工程も必要に応じて行われる。
【0029】
表示パネルモジュール組立装置は、これらの各種処理工程を行う処理装置を連結し、搬送手段により、処理装置間での搬送を行うことで、連続的に組み立て処理を実施している。
【0030】
近年、パネルモジュールの高性能化や低価格化に伴って、搭載部品の小型化や配線ピッチの狭小化が進んできている。表示パネルモジュール組立装置には、狭小配線ピッチの部品を高精度かつ高安定に実装することが求められている。
【0031】
狭小配線ピッチの部品に対応した高精度な搭載を実現するためには、搭載工程(3)において高い搭載精度で部品を搭載するとともに、次の圧着工程(4)においても、圧着動作で搭載部品をずらすことなく確実に圧着固定することが重要である。当然のことながら、PCBの圧着工程(5)においても同様である。
【0032】
搭載工程(3)においては、基準マークの検出精度や位置決め機構部の精度によって、搭載精度を改善することができる。搭載工程で高精度に部品を配置しても、圧着工程(4)又は(6)において、パネル(またはPCB)や圧着ヘッド間にずれなどがあると、圧着動作時に部品が動いてしまい、最終的な圧着固定位置の精度低下の要因となってしまう。パネル(またはPCB)と搭載部品を上下から高温高圧のヘッドで挟込む圧着プロセスでは、微妙な上下ヘッド間やパネル(またはPCB)との相対的な面の平行度を高精度に確保することが、部品の位置ずれを防止する上で非常に重要である。
【0033】
これまで、前記特許文献4および特許文献5などの方法により、圧着反力によるフレームなどの歪が、圧着ヘッド部に影響することを抑制するとともに、特許文献2などの方法で、圧着ヘッドの平行度を厳密に合わせるという方法が一般的である
しかし、これらの方法を用いても、圧着ヘッドの平行度を厳密に合わせる作業は手間がかかる。さらに、経時的に圧着ヘッドの平行度を保証することは非常に難しいことは言うまでもない。また、処理を行うパネル(またはPCB)や部材についても反りなどの状態は様々であり、これらに対して、常に圧着ヘッドが平行に接触するように保障することは殆ど不可能である。
【0034】
本実施例では、このような点に鑑み、圧着ヘッドの高精度な平行度合わせを必要とすることなく、圧着動作時における圧着ヘッドと部材との安定接触を可能としている。
【0035】
図1は本発明に係る表示パネルモジュール組立装置の圧着装置部の一実施例であり、図2は図1の圧着ヘッド部の基本構造および圧着動作時の挙動を説明するための図である。尚、パネルに搭載された部品を圧着するための圧着装置とPCBとTABを圧着するための圧着装置の構成は基本的にほぼ同一である。
【0036】
圧着装置は、パネル(またはPCB)と部材を圧着するための上刃7と下刃8からなる圧着ヘッドとその圧着ヘッドを保持するガイド6などからなるヘッド機構部10とヘッド機構部に加圧力を付加するためのモータ1などのからなる加圧機構部4からなる。
【0037】
図1に示した本実施例の圧着装置では、加圧機構部4とヘッド機構部10の保持フレームを分離した構成としている。図に示すように、圧着動作によって、加圧機構部はヘッド機構部に加圧力を与えた反力によって、加圧機構部4を支える加圧フレーム3は後ろ側に反り返る様な変形が発生する。尚、実際は図1(b)ほど大きく反りかえることはないが、説明の都合上、分かりやすい様に図では誇張している。
【0038】
しかし、ヘッド機構部10を支えるヘッドガイドフレーム9と加圧フレーム3は、分離されているために、ヘッドガイドフレーム9は、反力の影響をほとんど受けることがない。この効果を確実なものにするためには、ヘッドガイドフレーム9と加圧フレーム3の分離とともに、加圧機構部4とヘッド機構部10を結合するジョイント5が重要である。
【0039】
ジョイント部は、加圧時の加圧フレーム3の変形を逃がすために設置されるものであり、加圧フレーム3の変形の影響がヘッドガイドフレーム9に伝達されないように構成されている。図1の場合は、加圧時に加圧フレーム3が後ろ側(図右側)に反るように変形することから、ジョイント部は、図中の紙面内で回転する様な回転ジョイントで接続している。圧着装置の構成によって、加圧時の加圧フレーム3の変形は異なることから、各圧着装置の加圧フレーム3の変形方向に応じたジョイント5の構成にすることが必要である。
【0040】
図2に示す本発明を適用した一実施例であるヘッド機構部10は、加圧軸11の押圧方向に直交する回転軸を有するヘッド回転機構12と押圧方向に直交方向にスライドするヘッド・スライド機構13から構成されている。
【0041】
図2では、上刃とパネルや下刃の面平行度が悪い場合における本実施例の圧着ヘッドの挙動および効果を模式的に表現している。尚、実際は図2ほど大きく上刃とパネルや下刃の面平行度が悪くはないが、説明の都合上、分かりやすい様に図では誇張している。
【0042】
図2に示すように、ヘッド回転機構12とへッド・スライド機構13を具備した本実施例の圧着ヘッド構造10では、上刃7とパネル17や下刃8の面平行度が悪い場合においても、圧着動作時には、上刃7とパネル17や下刃8の面平行を確保して圧着を行うことができる。16はCOFやICなどの搭載部品である。
【0043】
図3は、本実施例の圧着ヘッド構造10の効果を説明するために、ヘッド回転機構12やヘッド・スライド機構13がない場合の状態を示している。図3(a)に示すように、ヘッド回転機構がない場合、上刃7とパネル17や下刃8の面平行度が悪いと上刃7とパネル17や下刃8の接触が不安定になるために、圧着不足領域や未圧着領域が発生する。また、図3(b)に示すように、ヘッド回転機構12はあるが、ヘッド・スライド機構13がない場合は、押圧力によって上刃7が回転するときに、パネル17や下刃8の上をずれるように移動回転する力31が発生することから、搭載する部材をずらしてしまう。
【0044】
これに対して、図2で示した本実施例の圧着ヘッド10では、ヘッド回転機構12によって、上刃7とパネル17や下刃8の面平行度誤差を吸収するとともに、ヘッド・スライド機構13によって、ヘッド回転時に生じる部材をずらす力の発生を防止することができる。これによって、通常おこりえる範囲内での上刃7とパネル17や下刃8の面平行度が悪化レベルであれば、確実かつ安定な圧着特性を確保することが十分可能となる。
【0045】
また、図2には図示されていないが、ヘッド・スライド機構13には、左右からの押しばね等を配置することで、中立位置復帰手段を付加することも出来る。これによって、無負荷時つまり非圧着動作時には、上刃7が、スライド・ストロークの中央付近に復帰させるように構成できる。圧着前には、常に、ヘッド回転機構12およびヘッド・スライド機構13の可動範囲の中央付近に上刃を復帰させるように構成することが、パネルや下刃との平行度のずれに追従させるために必要であり、中立位置復帰手段はこのために有効である。
【0046】
図2に示した本実施例のヘッド機構部10のヘッド回転機構12では、上刃などの自重で、可動範囲の中央付近に復帰させることも可能であることから、前記ばね等による中央位置復帰手段を積極的に設ける必要はない。しかし、圧着動作を短い時間間隔で連続して行うような場合には、ヘッド回転機構12やヘッド・スライド機構13部の揺れが問題になる場合もある。このような場合は、摩擦ダンパなどの揺れ止め機構を付加することで回避することも有効である。
【0047】
尚、中立位置に復帰させるための前記ばねの強度は、圧着動作時のヘッド・スライドに影響を与えない範囲に設定することが必要であることは言うまでもない。また、実施例の押しばねを用いた方法以外にも、ヘッド・スライド機構13の可動範囲の中央付近に上刃を復帰させる方式としては、本スライドガイドを下に凸の緩やかな曲線にする方法などの種々の方式が考えられる。ヘッド回転機構12およびヘッド・スライド機構13ともに、ヘッド機構部10構成および圧着装置全体構成を考慮して、適切な中央付近への復帰手段を具備させればよい。
【0048】
また、図2に示した本発明の一実施例では、説明を容易にするために、紙面内のパネルや下刃の傾斜誤差とそれを吸収するためのヘッド回転機構12とヘッド・スライド機構13を開示している。しかし、実際の装置やパネルの場合は3次元的な面平行誤差への対応が必要となる場合が多くある。このような場合は、ヘッド回転機構12として、押圧方向に直交する2つの回転軸からなるヘッド回転機構12および押圧方向に直交する2方向にスライドするへッド・スライド機構13を配することで、3次元的な面平行誤差への対応が可能となる。ヘッド回転機構12の押圧方向に直交する2つの回転軸は、互いに直交に近い角度で配置した方が、3次元的な面平行に追従しやすい。また、押圧方向に直交する2方向にスライドするへッド・スライド機構13のスライド方向も、互いに直交に近い角度で配置した方が、機能しやすい。
【0049】
更に、図2に示す本発明の一実施例であるヘッド機構部10では、圧着ヘッドの上刃7は、加熱圧着のための温度検出手段とヒータからなる加熱手段15を有するとともに、上刃の直上に断熱性の部材で構成された熱遮断層14が設けられている。
【0050】
これは、上刃に供給した熱の機構部品などを通しての伝熱による放熱を防止するためであり、加熱部分(上刃周辺)の熱容量を少しでも小さくしておくことが、加熱の効率と温度安定性を確保するために重要である。また、上刃直上に熱遮断層14を設けることで、ヘッド回転機構12やへッド・スライド機構13への熱伝達を抑制でき、これらの部品の熱による劣化を抑制することができる。
【0051】
勿論、ヘッド回転機構12やへッド・スライド機構13の耐熱性が十分高いのであれば、部品は位置上の都合などによっては、熱遮断層14をヘッド回転機構12やへッド・スライド機構13より上側に配置する構成も考えられるが、上記上刃周辺部の熱容量の観点からは、あまり好ましくはない。
【0052】
図4は本発明の圧着ヘッド部の構成に関する他の実施例である。本実施例では、本発明の特徴を成すスライド機構に弾性体を用いた例、特にここでは複数のばね部材を用いて簡単な構造で実現するための一実施例を示す。弾性体の例としては、ばね部材に限らず、加圧の際に基板の面内の少なくとも1方向にスライド可能な特性を有するものであれば、同様に適用することができる。
【0053】
図4の圧着ヘッド部は押圧軸に対して上刃部分を複数のばねによる懸架構成としている例であり、図4(a)は非圧着動作時の圧着ヘッド部の構成、図4(b)に圧着動作時の圧着ヘッド挙動を示す。
【0054】
本実施例の圧着ヘッド部構成では、圧着動作時の押圧力で完全につぶれない様なばねの数や強度(ばね定数)を選定しておく必要がある。圧着動作時の押圧力によって、ばねが完全につぶれないように構成することで、水平方向の力に対してばね部が比較的容易に変形することから、図4(b)に示すように、圧着動作時には上刃7とパネル17や下刃8の面平行を確保して圧着を行うことができる。
【0055】
本実施例の圧着ヘッド部構成では、図2に示した本実施例の圧着ヘッドにおけるヘッド回転機構12とへッド・スライド機構13の機能を、上刃部分を複数のばねによる懸架構成とすることで、比較的簡単な構成で実現している。但し、圧着動作時の押圧力にばねが完全につぶれないように設定しても有る程度の水平方向の力は有しているので、本実施例の構成では、押圧時に発生する水平力が、圧着部材をずらさない程度になるようにばねを選定・配置することが肝要である。
【0056】
水平方向の力は水平方向の大きなずれから生じるので、ばね懸架されている上刃部分7とパネル17や下刃8の平行度については、有る程度は確保しておくことが必要であり、その水平精度を補正する範囲で発生する水平方向の力が、圧着部材をずらさないようにすることが必要である。ばね懸架されている上刃部分7とパネル17や下刃8の平行度を確保するためには、複数のばねで上刃部を懸架することが有効である。
【0057】
また、図4の一実施例における圧着ヘッドの上刃7は、加熱圧着のための温度検出手段とヒータからなる加熱手段15を有するとともに、上刃の直上に断熱性の部材で構成された熱遮断層14が設けられ、上刃を懸架しているばね部への熱伝導を抑制している。
【0058】
本実施例の構成のような圧着ヘッドの上刃7をばね懸架する構成では、ばね部に有る程度の熱遮断効果を期待できることから、ばねの長さや数および配置などの条件によっては、熱遮断層14を省略した、より単純なヘッド機構部10も可能である。
【0059】
以上、本実施例によれば、上刃7とパネル17や下刃8の面平行度が悪い場合においても、圧着部材をずらす水平方向の力を抑制しながら、上刃7とパネル17や下刃8の安定接触および安定な温度・圧力の付加が可能になる。さらに、圧着動作中に振動などの外乱が生じた場合においても、上刃部分7とパネル17や下刃8は一体として振動することから、相対的位置関係は保持され、圧着部材ずれなどの不具合が発生するのを防止することもできる。従って、圧着動作時の搭載部品のずれを防止し、高精度かつ安定な部品搭載が可能な表示パネルモジュール組立装置を実現することが出来る。
【符号の説明】
【0060】
1・・・ヘッド機構部に加圧力を付加するモータ,
2・・・加圧機構部の加圧方向ガイド,
3・・・加圧フレーム,
4・・・加圧機構部,
5・・・加圧機構部とヘッド機構部を結合するジョイント,
6・・・圧着ヘッドの保持ガイド,
7・・・上刃(圧着ヘッド),
8・・・下刃,
9・・・ヘッドガイドフレーム,
10・・・ヘッド機構部,
11・・・ヘッド機構部の加圧軸(および加圧方向),
12・・・ヘッド回転機構,
13・・・ヘッド・スライド機構,
14・・・熱遮断層,
15・・・加熱手段,
16・・・搭載部品(COFやICなど),
17・・・パネル(またはPCB)などの基板,
18・・・溶剤など浸込ませた清掃テープ,
19・・・端子部の異物などを拭取り除去動作,
20・・・異方性導電フィルム (ACFテープ),
21・・・パネル基板へのACFテープの仮付け動作,
22・・・COF(=Chip on Film),
23・・・COFの搭載動作,
24・・・COG(=Chip on Glass,パネル基板周辺搭載IC),
25・・・COGの搭載動作,
26・・・圧着ヘッドによるCOFの圧着動作,
27・・・圧着ヘッドによるPCBの圧着動作,
28・・・PCB(=Printed Circuit Board,周辺基板),
29・・・PCBへのACFテープの仮付け動作,
30・・・表示パネル基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上刃および下刃からなる圧着刃を有し、当該上刃および下刃との間に基板と実装部品とを挟み込んで加圧することで、前記基板と前記実装部品とを接続する表示パネルモジュール組立装置において、前記圧着刃の下刃および上刃の少なくとも一方が、前記基板の面内の少なくとも1方向にスライド可能なスライド機構を具備することを特徴とする表示パネルモジュール組立装置。
【請求項2】
請求項1記載の表示パネルモジュール組立装置において、前記圧着刃の上刃側に前記スライド機構を具備してなることを特徴とする表示パネルモジュール組立装置。
【請求項3】
請求項1記載の表示パネルモジュール組立装置において、前記圧着刃に設けられたスライド機構は、前記基板の面内の2方向にスライド可能なスライド機構であることを特徴とする表示パネルモジュール組立装置。
【請求項4】
請求項1記載の表示パネルモジュール組立装置において、前記圧着刃に設けられたスライド機構は、非圧着動作時に可動範囲の中間位置に復帰する中立位置復帰手段を有することを特徴とする表示パネルモジュール組立装置。
【請求項5】
請求項1記載の表示パネルモジュール組立装置において、前記圧着刃は、圧着方向に直交する軸周りの回転機構を具備してなることを特徴とする表示パネルモジュール組立装置。
【請求項6】
請求項5記載の表示パネルモジュール組立装置において、前記回転機構は、圧着方向に直交する2つの方向の軸周りに回転する機構で構成されていることを特徴とする表示パネルモジュール組立装置。
【請求項7】
請求項5記載の表示パネルモジュール組立装置において、前記回転機構は、非圧着動作時に回転可動範囲の中間位置に復帰する中立位置復帰手段を有することを特徴とする表示パネルモジュール組立装置。
【請求項8】
請求項1記載の表示パネルモジュール組立装置において、前記スライド機構は、前記基板の面内の少なくとも1方向にスライド可能な弾性部材で構成されていることを特徴とする表示パネルモジュール組立装置。
【請求項9】
請求項8記載の表示パネルモジュール組立装置において、前記弾性部材は少なくとも一つ以上のバネ部材で構成されていることを特徴とする表示パネルモジュール組立装置。
【請求項10】
請求項1〜9記載のいずれかの表示パネルモジュール組立装置において、上下一組の前記圧着刃からなる圧着ヘッドと該圧着ヘッドを保持するガイドから構成されるヘッド機構部と、該ヘッド機構部に加圧力を付加する加圧手段と該加圧手段からの加圧力伝達軸を保持する部材から構成される加圧機構部と、を備え、前記ヘッド機構部を保持するガイドフレームと前記加圧機構部を保持する加圧フレームとは、独立したフレーム構造で構成されることを特徴とする表示パネルモジュール組立装置。
【請求項11】
請求項10記載の表示パネルモジュール組立装置において、前記加圧機構部の加圧力伝達軸と前記ヘッド機構部を接続するジョイント機構を具備し、前記ジョイント機構は、前記加圧機構部の加圧力伝達方向に直交する少なくとも1つ以上の方向に回動可能なジョイント手段で構成されていることを特徴とする表示パネルモジュール組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−220651(P2012−220651A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85089(P2011−85089)
【出願日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】