説明

表示パネル及び表示パネルの製造方法

【課題】長期に亘って均一な輝度特性を維持することができる表示パネルを提供する。
【解決手段】映像を表示するための表示領域を規定するように配置された複数の発光画素を備える表示パネルであって、前記表示領域は、該表示領域の中心点を含む又は該中心点に近い第1領域と、該第1領域よりも前記中心点から離れた第2領域と、を含み、前記複数の発光画素は、前記第1領域において発光する第1発光層を有する第1発光画素と、前記第2領域において発光する第2発光層を有する第2発光画素と、を含み、前記第1発光層は、前記第2発光層よりも厚いことを特徴とする表示パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像を表示する表示パネル及び表示パネルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置は、一般的に、映像を表示するための表示パネルを備える。表示パネルは、典型的には、表示装置に入力された映像信号に基づき発光する発光素子を備える。発光素子は、映像を表現するために発光すると同時に発熱する。発光素子からの熱は、表示パネルの内部に籠もりやすい。表示パネル内の温度上昇は、表示パネルの正常な動作をしばしば妨げる。
【0003】
表示装置として、有機EL(エレクトロルミネセンス)ディスプレイが例示される。有機ELディスプレイは、有機EL発光素子を含む。有機EL発光素子の発光層は、熱によって劣化しやすい。したがって、表示パネル内で過度の温度上昇が生ずるならば、表示パネルの寿命は短くなる。
【0004】
図11は、均一な輝度の映像を表示する表示パネルの概略的な等温線図である。図11を用いて、一般的な表示パネルの温度特性が説明される。
【0005】
一般的に、映像が表示される領域の中央部分は、他の部分と比べて、高温になりやすい。中央部分の高温は、中央部分の映像を表示するために発光する発光素子の劣化を促進する。一方、他の部分の映像を表示するために発光する発光素子は、中央部分の発光素子と比べて、劣化しにくい。中央部分と他の部分との間での発光素子の劣化の差異は、画質の差異となって現れる。
【0006】
特許文献1は、筐体と表示パネルとの間に配設された伝熱材を備える表示装置を開示する。伝熱材は、表示パネルから発生した熱を面内方向に伝導するので、中央部分と他の部分との間での温度差を低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−84977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
伝熱材を用いたとしても、表示領域の中央部分が他の部分と比べて高温となる温度特性は、本質的には変わらない。したがって、中央部分の発光素子は、他の部分よりも早く劣化することとなり、長期に亘って均一な画質を維持することは困難である。
【0009】
本発明は、長期に亘って均一な画質を維持することができる表示パネル及び表示パネルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一の局面に係る表示パネルは、映像を表示するための表示領域を規定するように配置された複数の発光画素を備える。前記表示領域は、該表示領域の中心点を含む又は該中心点に近い第1領域と、該第1領域よりも前記中心点から離れた第2領域と、を含み、前記複数の発光画素は、前記第1領域において発光する第1発光層を有する第1発光画素と、前記第2領域において発光する第2発光層を有する第2発光画素と、を含み、前記第1発光層は、前記第2発光層よりも厚いことを特徴とする。
【0011】
本発明の他の局面に係る映像が表示される表示パネルの製造方法は、映像を表示するために発光する発光層を支持するための支持面を含む支持基板を用意する第1工程と、前記支持基板を第1方向に搬送する第2工程と、前記支持基板上に発光樹脂を塗布する塗布装置を用いて、前記発光層を形成する第3工程と、を備え、前記支持面は、該支持面の中心点を含む又は該中心点に近い第1支持領域と、前記中心点よりも遠い第2支持領域と、を含み、前記第3工程において、前記塗布装置は、前記第2支持領域よりも多く前記発光樹脂を前記第1支持領域に塗布することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る表示パネルは、厚さにおいて異なる発光層を有するので、長期に亘って均一な画質を維持することができる。また、本発明に係る表示パネルの製造方法にしたがって、厚さにおいて異なる発光層を有する表示パネルが好適に製造される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】表示パネルの概略的且つ巨視的な断面図である。
【図2】図1に示される表示パネルが組み込まれた表示装置の概略的な斜視図である。
【図3】図1に示される表示パネルの発光層の厚さの変動を表す概略的な等高線図である。
【図4A】図1に示される表示パネルの第1発光画素の微視的な概略断面図である。
【図4B】図1に示される表示パネルの第2発光画素の微視的な概略断面図である。
【図5】発光層の厚さと発光画素の発光効率との関係を表す概略的なグラフである。
【図6】第1領域及び第2領域に関する他の概念を表す表示装置の概略図である。
【図7】図1に示される表示パネルの製造方法の概略的なフローチャートである。
【図8】図7に示される製造方法に用いられる支持基板の概略的な斜視図である。
【図9】図7に示される製造方法の搬送工程中に搬送される支持基板の概略図である。
【図10】図7に示される製造方法の塗布工程における支持基板の搬送速度の変動を表す概略的なグラフである。
【図11】均一な輝度の映像を表示する一般的な表示パネルの概略的な等温線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、表示パネルが図面を参照して説明される。尚、以下に説明される実施形態において、同様の構成要素に対して同様の符号が付されている。また、説明の明瞭化のため、必要に応じて、重複する説明は省略される。図面に示される構成、配置或いは形状並びに図面に関連する記載は、表示パネルの原理を容易に理解させることを目的とするものであり、表示パネルの原理はこれらに何ら限定されるものではない。
【0015】
(表示パネルの構造)
図1は、表示パネル100の概略的且つ巨視的な断面図である。図1を用いて、表示パネル100が説明される。
【0016】
表示パネル100は、映像を表示するために発光する発光層110と、発光層110を支持するための基板120と、を備える。表示パネル100は、発光層110と基板120との間に配設された反射電極層130と、発光層110を覆うように形成された透明電極層140と、を更に備える。反射電極層130と透明電極層140との間の電圧によって、反射電極層130と透明電極層140との間に配設された発光層110に電流が流れ、発光層110は発光する。本実施形態において、発光層110として、有機EL材料を用いて形成された有機EL層が用いられる。
【0017】
反射電極層130は、発光層110が発生した光を反射する光反射性の材料から形成される。透明電極層140は、発光層110が発生した光を透過する光透過性の材料から形成される。本実施形態において、反射電極層130は、反射層及び/又は反射電極として例示される。また、透明電極層140は、透過層及び/又は透明電極として例示される。
【0018】
図2は、図1に示される表示パネル100が組み込まれた表示装置200の概略的な斜視図である。図1及び図2を用いて、表示パネル100が更に説明される。
【0019】
表示装置200は、表示パネル100と、表示パネル100を支持する筐体210と、を備える。映像が表示される表示領域DRは、筐体210から露出する。
【0020】
図2において、表示領域DR内に中心点CPが示されている。中心点CPは、矩形状の表示領域DRの一対の対角線の交点として定義されてもよい。尚、中心点CPの位置は、領域の中心を表す他の適切な数学的手法に従って、定義されてもよい。
【0021】
図2には、中心点CPを通過する水平線HLが示されている。図1は、水平線HLに沿う巨視的な断面図である。
【0022】
図1及び図2には、中心点CPを通過する表示領域DRの垂線PLが示されている。図1に示される如く、発光層110は、垂線PLに向けて徐々に厚くなる。また、透明電極層140は、垂線PLを中心に、徐々に基板120に近づくように発光層110に沿って配設される。
【0023】
図2(及び図1)に示される如く、表示領域DRは、中心点CP(垂線PL)を内包する中央領域CRと、中央領域CRを取り囲む周縁領域PRとを含む。図2において、中央領域CRと周縁領域PRとの間の境界は、表示領域DR内に描かれた矩形枠として示されている。本実施形態において、中央領域CRは、第1領域として例示される。中央領域CRよりも中心点CPから離間した周縁領域PRは、第2領域として例示される。
【0024】
表示パネル100は、表示領域DRを規定するように配置された複数の発光画素を備える。図1及び図2には、中央領域CR内に配置された第1発光画素310と、周縁領域PR内に配置された第2発光画素320とが、複数の発光画素として概略的に示されている。
【0025】
図3は、発光層110の厚さの変動を表す概略的な等高線図である。図1乃至図3を用いて、発光層110が説明される。
【0026】
図3において最も小さな楕円は、他の楕円よりも大きな値の厚さを表す。より大きな楕円は、より小さな発光層110の厚さを表す。図3に示される楕円の群は、中心点CPを中心に二次元的に(水平方向及び垂直方向に)拡がる。即ち、発光層110の厚さは、中心点CPから水平方向及び垂直方向に小さくなる。
【0027】
図3に示される如く、本実施形態において、発光層110は、同心楕円状の厚さ分布を有する。代替的に、発光層110は、略同心円状の厚さ分布を有してもよい。好ましくは、発光層110の厚さ分布は、表示パネル100の温度分布特性に応じて定められる。温度が高くなる領域において、発光層110は厚く形成され、温度が比較的低い領域において、発光層110は薄く形成される。本実施形態において、映像が表示されている間、中央領域CRは、周縁領域PRよりも高温となる温度特性を有する。
【0028】
図1及び図3に示されるように、本実施形態において、発光層110は、略円錐状であり、略平滑な円錐面を有する。代替的に、発光層110の面(透明電極層140に対向する面)は、階段状に形成され、発光層110の厚さが変動されてもよい。
【0029】
図4Aは、第1発光画素310の微視的な概略断面図である。図1及び図4Aを用いて、第1発光画素310が説明される。
【0030】
以下の説明において、第1発光画素310に対応する位置に存する透明電極層140は、第1透明電極部314と称される。第1発光画素310に対応する位置に存する発光層110は、第1発光層311と称される。第1発光画素310に対応する位置に存する反射電極層130は、第1反射電極部313と称される。第1発光画素310は、第1透明電極部314、第1発光層311及び第1反射電極部313を含む。
【0031】
中央領域CR内で発光する第1発光層311は、第1透明電極部314に対向する第1発光面315を含む。第1透明電極部314と第1反射電極部313との間の電圧によって、第1発光層311に電流が流れると、第1発光層311は、第1発光面315から光を出射する。
【0032】
第1発光面315から出射された光は、第1透明電極部314に向かう第1光成分と、第1反射電極部313に向かう第2光成分と、を含む。本実施形態において、第1発光面315から出射された光は、「発生光」として例示される。
【0033】
第1反射電極部313は、第1発光層311に対向する第1反射面316を含む。第1反射面316は、第1発光面315から第1反射電極部313に向かう第2光成分を反射し、第1透明電極部314に向かう反射光を生成する。本実施形態において、第1反射面316は、反射面として例示される。第1反射電極部313は、反射層として例示される。
【0034】
第1透明電極部314は、第1光成分と反射光とをそれぞれ透過する。この結果、第1発光面315から出射された光は、表示領域DRから出射され、観察者によって表示パネル100が表示する映像の一部として知覚される。本実施形態において、第1透明電極部314は、透過層として例示される。
【0035】
図4Bは、第2発光画素320の微視的な概略断面図である。図1、図4A及び図4Bを用いて、第2発光画素320が説明される。
【0036】
以下の説明において、第2発光画素320に対応する位置に存する透明電極層140は、第2透明電極部324と称される。第2発光画素320に対応する位置に存する発光層110は、第2発光層321と称される。第2発光画素320に対応する位置に存する反射電極層130は、第2反射電極部323と称される。第2発光画素320は、第2透明電極部324、第2発光層321及び第2反射電極部323を含む。
【0037】
周縁領域PR内で発光する第2発光層321は、第2透明電極部324に対向する第2発光面325を含む。第2透明電極部324と第2反射電極部323との間の電圧によって、第2発光層321に電流が流れると、第2発光層321は、第2発光面325から光を出射する。
【0038】
図4Aと図4Bとを比較すると、第1発光層311は、第2発光層321より厚いことが分かる。第1発光層311及び第2発光層321の厚さ寸法の設定に基づく発光効率の調整は後述される。
【0039】
第2発光面325から出射された光は、第2透明電極部324に向かう第1光成分と、第2反射電極部323に向かう第2光成分と、を含む。本実施形態において、第2発光面325から出射された光は、「発生光」として例示される。
【0040】
第2反射電極部323は、第2発光層321に対向する第2反射面326を含む。第2反射面326は、第2発光面325から第2反射電極部323に向かう第2光成分を反射し、第2透明電極部324に向かう反射光を生成する。本実施形態において、第2反射面326は、反射面として例示される。第2反射電極部323は、反射層として例示される。
【0041】
第2透明電極部324は、第1光成分と反射光とをそれぞれ透過する。この結果、第2発光面325から出射された光は、表示領域DRから出射され、観察者によって表示パネル100が表示する映像の一部として知覚される。本実施形態において、第2透明電極部324は、透過層として例示される。
【0042】
(発光層の厚さの設定)
図5は、発光層110の厚さと発光画素の発光効率との関係を表す概略的なグラフである。図1、図4A乃至図5を用いて、発光層110の厚さの設定が説明される。
【0043】
図5のグラフの横軸は、発光層の厚さ(即ち、発光面(例えば、第1発光面315や第2発光面325)と反射面(例えば、第1反射面316や第2反射面326)との距離)を表す。図5のグラフの縦軸は、発光画素(例えば、第1発光画素310や第2発光画素320)の発光効率を表す。発光効率は、以下の式で表される。
【0044】
(数1)

【0045】
図5に示されるように、発光層の厚さの増大に伴って、発光効率は繰り返し増減する。このような現象は、「マイクロキャビティ効果」として知られている。図4A及び図4Bを用いて、マイクロキャビティ効果が説明される。
【0046】
第1光成分及び反射光が強く共振するならば、発光効率の値は高くなる。第1光成分と反射光との共振が弱いならば、発光効率は低くなる。本実施形態において、第1光成分と反射光との共振を利用して、第1発光層311及び第2発光層321の厚さが設定される。
【0047】
図5に示されるグラフは、発光層の厚さ「T」の関数「Eff(T)」で表されてもよい。このとき、第1発光層311の厚さが、「T1」であるとき、第1発光層311(第1発光画素310)の発光効率は、「Eff(T1)」で表される。第2発光層321の厚さが、「T2」であるとき、第2発光層321(第2発光画素320)の発光効率は、「Eff(T2)」で表される。
【0048】
第1発光層311の厚さ「T1」は、第2発光層321の厚さ「T2」よりも大きくなるように設定される。加えて、第1発光画素310の厚さ「T1」は、第1発光画素310の発光効率「Eff(T1)」が、第2発光画素320の発光効率「Eff(T2)」よりも大きくなるように設定される。即ち、第1発光層311の厚さ「T1」は、以下の数学的関係が満たされるように設定される。
【0049】
(数2)
T1>T2
【0050】
(数3)
Eff(T1)>Eff(T2)
【0051】
図5には、第2発光層321の厚さ「T2」と、第2発光層321の厚さ「T2」に対応する第2発光画素320の発光効率「Eff(T2)」が示されている。また、図5には、上述の数学的関係が充足される発光層の厚さの範囲「R1」乃至「R4」が示されている。第1発光層311の厚さ「T1」は、厚さの範囲「R1」乃至「R4」の中から選択される。
【0052】
発光層110の発光面(例えば、第1発光面315や第2発光面325)と反射電極層130の反射面(例えば、第1反射面316や第2反射面326)との間の光学的距離は、発光層110の厚さ「T」に応じて変動する。以下の説明において、第1発光面315と第1反射面316との間の光学的距離は、第1光学的距離と称される。また、第2発光面325と第2反射面326との間の光学的距離は、第2光学的距離と称される。
【0053】
第1光学的距離は、第2光学的距離によってもたらされる第1光成分と反射光との共振よりも強いこれらの共振が得られるよう、概略、以下に説明する原理に基づいて設定される。発光層110の発光面と反射電極層130の反射面との間の光学的距離が、発光層110が発生した光の波長の四分の一の奇数倍に等しいならば、図5のグラフにおいて、発光効率Eff(T)は、ピークとなる。第1光学的距離と発光層110が発生した光の波長の四分の一の奇数倍の値との差異が、第2光学的距離と発光層110が発生した光の波長の四分の一の奇数倍の値との差異よりも小さいならば、第1光学的距離の下、第2光学的距離下で得られる共振よりも強い共振が得られることとなる。以下の数式は、第1光学的距離と第2光学的距離との関係を表す。
【0054】
(数4)

【0055】
上述の数式において、「N」は、奇数である。「λ」は、発光層110が発する光の波長である。「OL1」は、第1光学的距離を表す。「OL2」は、第2光学的距離を表す。
【0056】
図6は、第1領域及び第2領域に関する他の概念を表す表示装置200の概略図である。図2及び図6を対比し、第1領域及び第2領域が説明される。
【0057】
図2に示される中央領域CRは、第1領域として例示され、周縁領域PRは、第2領域として例示される。代替的に、表示領域DR上に規定された2つの領域のうち中心点CPに近い領域A1が第1領域として例示され、領域A1よりも中心点CPから遠い領域A2が第2領域として例示されてもよい。このとき領域A1内で発光する発光画素は、第1発光画素として例示される。また、領域A2内で発光する発光画素は、第2発光画素として例示される。
【0058】
(表示パネルの製造方法)
図7は、表示パネル100の製造方法の概略的なフローチャートである。図8乃至図10は、図7に示される様々な工程を表す。図1、図3、図6乃至図10を用いて、表示パネル100の製造方法が説明される。
【0059】
(ステップS110)
表示パネル100を製造するために、ステップS110が最初に実行される。ステップS110において、映像を表示するために発光する発光層110を支持するための支持基板400が作成される(作成工程)。
【0060】
図8は、支持基板400の概略的な斜視図である。支持基板400を作成する作成工程において、基板120上に反射電極層130が積層される。その後、反射電極層130上に、透明導電膜440が更に積層される。透明導電膜440上に、正孔注入層450が更に積層される。基板120上での反射電極層130、透明導電膜440及び正孔注入層450の積層は、既知の積層技術に従ってなされてもよい。本実施形態において、透明導電膜440及び正孔注入層450は、発光層110の一部として用いられる。
【0061】
支持基板400の上面(即ち、正孔注入層450の上面)は、発光層110として用いられる樹脂層を支持するための支持面401として用いられる。図8には、中心点CPが示されている。支持面401は、中心点CPを内包する中央支持領域CSRと、中央支持領域CSRを取り囲む周縁支持領域PSRと、を含む。支持面401内に描かれた矩形枠は、中央支持領域CSRと周縁支持領域PSRとの間の境界を表す。中央支持領域CSRは、図1に関連して説明された中央領域CRに対応する。周縁支持領域PSRは、図1に関連して説明された周縁領域PRに対応する。本実施形態において、中央支持領域CSRは、第1支持領域として例示される。中央支持領域CSRよりも中心点CPから離れた周縁支持領域PSRは、第2支持領域として例示される。尚、図6に関連して説明された領域A1に対応する支持面401上の領域が、第1支持領域として例示されてもよい。また、領域A2に対応する支持面401上の領域が、第2支持領域として例示されてもよい。
【0062】
基板120上での反射電極層130、透明導電膜440及び正孔注入層450の積層が完了すると、ステップS120が実行される。本実施形態において、作成工程は、第1工程として例示される。
【0063】
(ステップS120)
ステップS120において、支持基板400を搬送するための搬送工程が実行される。
【0064】
図9は、搬送工程中に搬送される支持基板400の概略図である。図8及び図9に示される「第1方向」との用語は、搬送工程における支持基板400の搬送方向を意味する。図9に示される如く、第1方向に搬送される支持基板400は、有機EL樹脂を塗布する塗布装置500に近づく。支持基板400の先頭縁402が塗布装置500の下方に到達すると、ステップS130が実行される。本実施形態において、有機EL樹脂は、発光樹脂として例示される。また、搬送工程は、第2工程として例示される。
【0065】
(ステップS130)
ステップS130において、支持基板400上に有機EL樹脂を塗布する塗布装置500を用いて、発光層110を形成する塗布工程が実行される。塗布装置500は、周縁支持領域PSRよりも多く発光樹脂を中央支持領域CSRに塗布する。
【0066】
図9に示される如く、塗布装置500は、第1方向に対して交差する(或いは、直交する)第2方向に配列された複数のアプリケータAPを含む。図9には、第2方向に直線状に整列した複数のアプリケータAPが示されている。代替的に、塗布装置のアプリケータは、第2方向にジグザグに配列されてもよい。本実施形態において、複数のアプリケータAPそれぞれは、塗布部として例示される。
【0067】
各アプリケータAPは、時間的に略一定の量の有機EL樹脂を塗布する。中心点CPに近いアプリケータAP(複数のアプリケータAPからなるアプリケータ列の中央に位置するアプリケータAP)は、中心点CPから離れたアプリケータAP(アプリケータ列の端に位置するアプリケータAP)よりも多くの有機EL樹脂を塗布する。この結果、図3に関連して説明された発光層110の垂直方向の隆起が形成される。
【0068】
図10は、塗布工程における支持基板400の搬送速度の変動を表す概略的なグラフである。塗布装置500が中央支持領域CSRに有機EL樹脂を塗布している間の搬送速度は、周縁支持領域PSRに有機EL樹脂が塗布されている間の搬送速度よりも小さく設定される。この結果、図3に関連して説明された発光層110の水平方向の隆起が形成される。
【0069】
本実施形態において、支持基板400の搬送速度は、正弦波状に変動する。代替的に、支持基板400の搬送速度は、ステップ関数状に変動してもよい。この場合、発光層は、水平方向に階段状の輪郭を有することとなる。
【0070】
上述された実施形態は、以下の構成を主に備える。以下の構成を備える表示パネルは、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0071】
上述された実施形態の一の局面に係る表示パネルは、映像を表示するための表示領域を規定するように配置された複数の発光画素を備える。前記表示領域は、該表示領域の中心点を含む又は該中心点に近い第1領域と、該第1領域よりも前記中心点から離れた第2領域と、を含み、前記複数の発光画素は、前記第1領域において発光する第1発光層を有する第1発光画素と、前記第2領域において発光する第2発光層を有する第2発光画素と、を含み、前記第1発光層は、前記第2発光層よりも厚いことを特徴とする。
【0072】
上記構成によれば、表示パネルは、映像を表示するための表示領域を規定するように配置された複数の発光画素を備える。表示領域は、表示領域の中心点を含む又は中心点に近い第1領域と、第1領域よりも中心点から離れた第2領域と、を含む。複数の発光画素は、第1領域において発光する第1発光層を有する第1発光画素と、第2領域において発光する第2発光層を有する第2発光画素と、を含む。第1発光層は、第2発光層よりも厚いので、第2発光層と比べて、第1発光層の劣化が生じにくくなる。この結果、表示パネルは、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0073】
上記構成において、前記複数の発光画素それぞれは、前記複数の発光画素が発生した発生光を透過する透過層と、前記発生光を反射し、反射光を生成する反射層と、を含み、前記第1発光層の厚さは、前記反射光と前記透過層へ向かう前記発生光との共振によって、前記第1発光画素が前記第2発光画素よりも高い発光効率を達成するように定められることが好ましい。
【0074】
上記構成によれば、複数の発光画素それぞれは、複数の発光画素が発生した発生光を透過する透過層と、発生光を反射し、反射光を生成する反射層と、を含む。第1発光層の厚さは、反射光と透過層へ向かう発生光との共振によって、第1発光画素が第2発光画素よりも高い発光効率を達成するように定められるので、第1発光層と第2発光層との厚さの差異に拘わらず、表示パネルは、均一な輝度特性を維持することができる。
【0075】
上記構成において、前記第1発光層は、前記透過層に対向する第1発光面を含み、前記反射層は、前記発生光を反射する反射面を含み、前記第1発光面と前記反射面との間の第1光学的距離は、前記反射光が前記透過層へ向かう前記発生光と共振するように定められることが好ましい。
【0076】
上記構成によれば、第1発光層は、透過層に対向する第1発光面を含む。反射層は、発生光を反射する反射面を含む。第1発光面と反射面との間の第1光学的距離は、反射光が透過層へ向かう発生光と共振するように定められるので、第1発光画素は、第2発光画素よりも高い発光効率を達成することができる。
【0077】
上記構成において、前記透過層は、光透過性の材料から形成された透明電極であり、前記反射層は、光反射性の材料から形成された反射電極であり、前記透明電極及び前記反射電極は、前記透明電極と前記反射電極との間に配設された前記複数の発光層に電流を生じさせることが好ましい。
【0078】
上記構成によれば、透過層は、光透過性の材料から形成された透明電極である。反射層は、光反射性の材料から形成された反射電極である。透明電極及び反射電極は、透明電極と反射電極との間に配設された複数の発光層に電流を生じさせるので、発光層は発光することができる。
【0079】
第1発光層は、第2発光層よりも厚いので、第1発光層の抵抗は、第2発光層の抵抗よりも大きい。したがって、第1発光層を流れる電流は、第2発光層を流れる電流よりも小さくなる。かくして、第2発光層と比べて、第1発光層の劣化は、生じにくくなる。この結果、表示パネルは、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0080】
第1発光層を流れる電流は、第2発光層を流れる電流よりも小さくなるけれども、第1発光層の厚さは、反射光と透過層へ向かう発生光との共振によって、第1発光画素が第2発光画素よりも高い発光効率を達成するように定められるので、表示パネルは、均一な輝度特性を維持することができる。
【0081】
上記構成において、前記映像が表示されている間、前記第1領域は前記第2領域よりも高温となる温度特性を有することが好ましい。
【0082】
上記構成によれば、映像が表示されている間、第1領域は、第2領域よりも高温となる温度特性を有するけれども、第1発光層は、第2発光層よりも厚いので、第2発光層と比べて、第1発光層の劣化が生じにくくなる。表示パネルは、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる。
【0083】
上記構成において、前記第1発光層及び前記第2発光層は、有機EL層を含むことが好ましい。
【0084】
上記構成によれば、第1発光層及び第2発光層は、有機EL層を含むので、表示パネルは、有機EL層の発光の下、長期間に亘って、高品位の映像を表示することができる。
【0085】
上述された実施形態の一の局面に係る表示パネルの製造方法は、映像を表示するために発光する発光層を支持するための支持面を含む支持基板を用意する第1工程と、前記支持基板を第1方向に搬送する第2工程と、前記支持基板上に発光樹脂を塗布する塗布装置を用いて、前記発光層を形成する第3工程と、を備え、前記支持面は、該支持面の中心点を含む又は該中心点に近い第1支持領域と、前記中心点よりも遠い第2支持領域と、を含み、前記第3工程において、前記塗布装置は、前記第2支持領域よりも多く前記発光樹脂を前記第1支持領域に塗布することを特徴とする。
【0086】
上記構成によれば、第1工程において、映像を表示するために発光する発光層を支持するための支持面を含む支持基板が用意される。第2工程において、支持基板は、第1方向に搬送される。第3工程において、塗布装置は、支持基板上に発光樹脂を塗布し、発光層を形成する。支持面は、支持面の中心点を含む又は中心点に近い第1支持領域と、中心点よりも遠い第2支持領域と、を含む。第3工程において、塗布装置は、第2支持領域よりも多く発光樹脂を第1支持領域に塗布するので、第1支持領域に形成された発光層は、第2支持領域に形成された発光層よりも厚くなる。したがって、第2支持領域に形成された発光層と比べて、第1支持領域に形成された発光層の劣化が生じにくくなる。この結果、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる表示パネルが製造されることとなる。
【0087】
上記構成において、前記第3工程において、前記第1支持領域に前記発光樹脂が塗布されている間の前記支持基板の搬送速度は、前記第2支持領域に前記発光樹脂が塗布されている間の前記搬送速度よりも低く設定されることが好ましい。
【0088】
上記構成によれば、第3工程において、第1支持領域に発光樹脂が塗布されている間の支持基板の搬送速度は、第2支持領域に発光樹脂が塗布されている間の搬送速度よりも低く設定されるので、第1支持領域に形成された発光層は、第2支持領域に形成された発光層よりも厚くなる。したがって、第2支持領域に形成された発光層と比べて、第1支持領域に形成された発光層の劣化が生じにくくなる。この結果、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる表示パネルが製造されることとなる。
【0089】
上記構成において、前記塗布装置は、前記第1方向に対して交差する第2方向に配列された複数の塗布部を含み、前記中心点に近い塗布部は、前記中心点から離れた塗布部よりも多く前記発光樹脂を塗布することが好ましい。
【0090】
上記構成によれば、塗布装置は、第1方向に対して交差する第2方向に配列された複数の塗布部を含む。中心点に近い塗布部は、中心点から離れた塗布部よりも多く発光樹脂を塗布するので、第1支持領域に形成された発光層は、第2支持領域に形成された発光層よりも厚くなる。したがって、第2支持領域に形成された発光層と比べて、第1支持領域に形成された発光層の劣化が生じにくくなる。この結果、長期間に亘って、均一な輝度特性を維持することができる表示パネルが製造されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0091】
上述の実施形態に係る原理は、映像を表示するための表示パネルに好適に適用される。
【符号の説明】
【0092】
100・・・・表示パネル
130・・・・反射電極層
140・・・・透明電極層
310・・・・第1発光画素
311・・・・第1発光層
313・・・・第1反射電極部
314・・・・第1透明電極部
315・・・・第1発光面
316・・・・第1反射面
320・・・・第2発光画素
321・・・・第2発光層
323・・・・第2反射電極部
324・・・・第2透明電極部
325・・・・第2発光面
326・・・・第2反射面
400・・・・支持基板
500・・・・塗布装置
A1・・・・・領域
A2・・・・・領域
AP・・・・・アプリケータ
CP・・・・・中心点
CR・・・・・中央領域
CSR・・・・中央支持領域
DR・・・・・表示領域
PR・・・・・周縁領域
PSR・・・・周縁支持領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像を表示するための表示領域を規定するように配置された複数の発光画素を備える表示パネルであって、
前記表示領域は、該表示領域の中心点を含む又は該中心点に近い第1領域と、該第1領域よりも前記中心点から離れた第2領域と、を含み、
前記複数の発光画素は、前記第1領域において発光する第1発光層を有する第1発光画素と、前記第2領域において発光する第2発光層を有する第2発光画素と、を含み、
前記第1発光層は、前記第2発光層よりも厚いことを特徴とする表示パネル。
【請求項2】
前記複数の発光画素それぞれは、前記複数の発光画素が発生した発生光を透過する透過層と、前記発生光を反射し、反射光を生成する反射層と、を含み、
前記第1発光層の厚さは、前記反射光と前記透過層へ向かう前記発生光との共振によって、前記第1発光画素が前記第2発光画素よりも高い発光効率を達成するように定められることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
【請求項3】
前記第1発光層は、前記透過層に対向する第1発光面を含み、
前記反射層は、前記発生光を反射する反射面を含み、
前記第1発光面と前記反射面との間の第1光学的距離は、前記反射光が前記透過層へ向かう前記発生光と共振するように定められることを特徴とする請求項2に記載の表示パネル。
【請求項4】
前記透過層は、光透過性の材料から形成された透明電極であり、
前記反射層は、光反射性の材料から形成された反射電極であり、
前記透明電極及び前記反射電極は、前記透明電極と前記反射電極との間に配設された前記複数の発光層に電流を生じさせることを特徴とする請求項2又は3に記載の表示パネル。
【請求項5】
前記映像が表示されている間、前記第1領域は前記第2領域よりも高温となる温度特性を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項6】
前記第1発光層及び前記第2発光層は、有機EL層を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項7】
映像を表示するために発光する発光層を支持するための支持面を含む支持基板を用意する第1工程と、
前記支持基板を第1方向に搬送する第2工程と、
前記支持基板上に発光樹脂を塗布する塗布装置を用いて、前記発光層を形成する第3工程と、を備え、
前記支持面は、該支持面の中心点を含む又は該中心点に近い第1支持領域と、前記中心点よりも遠い第2支持領域と、を含み、
前記第3工程において、前記塗布装置は、前記第2支持領域よりも多く前記発光樹脂を前記第1支持領域に塗布することを特徴とする表示パネルの製造方法。
【請求項8】
前記第3工程において、前記第1支持領域に前記発光樹脂が塗布されている間の前記支持基板の搬送速度は、前記第2支持領域に前記発光樹脂が塗布されている間の前記搬送速度よりも低く設定されることを特徴とする請求項7に記載の表示パネルの製造方法。
【請求項9】
前記塗布装置は、前記第1方向に対して交差する第2方向に配列された複数の塗布部を含み、
前記中心点に近い塗布部は、前記中心点から離れた塗布部よりも多く前記発光樹脂を塗布することを特徴とする請求項7又は8に記載の表示パネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−93426(P2013−93426A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234169(P2011−234169)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】