説明

表示パネル駆動装置およびその輝度調整方法

【課題】駆動電流値制御と駆動電流出力時間制御を組み合わせることによって、従来技術の方法の短所を解消または緩和することができる、表示パネル駆動装置およびその輝度調整方法を提供することを目的とする。
【解決手段】表示パネル駆動装置は、表示パネルに駆動電流を出力し、入力された輝度に基づいて、表示パネルの輝度を設定する。そして、表示パネル駆動装置は、所定の輝度よりも、高輝度の範囲においては駆動電流の電流値の増減を変化させ、低輝度の範囲においては駆動電流の出力時間の長短を変化させることによって、表示パネルの輝度を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施の形態は、表示パネル駆動装置およびその輝度調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機EL表示システムには二種類の駆動方法がある。一般にアクティブ方式とパッシブ方式と呼ばれる方式に分けられるが、以下に一般的なパッシブ方式の有機EL表示システムについて説明する。有機EL表示システムは、有機EL表示パネル、陽極ドライバ、陰極ドライバ、および、これらのドライバを制御するコントローラ、マイコンによって構成される。陽極ドライバと陰極ドライバが一体になっている物、又、コントローラが削除されたり、ドライバと一体とされたりするシステムも存在する。
【0003】
有機ELの発光システムは、陽極ドライバから一定時間内の間、一定の駆動電流が出力され、陰極ドライバによって電流を引き抜き、この電流ルートが形成された有機発光部のみが点灯される。従って、陽極ドライバから駆動電流が出力されない発光部、或いは、陰極ドライバによって電流ルートが遮断されている発光部は点灯しない。発光の明るさ(輝度)は、駆動電流の大小、或いは、駆動電流の出力時間の長短で可変される。
【0004】
すわなち、有機EL表示パネルの点灯輝度は、表示パネルの駆動電流値、もしくは駆動電流の出力時間によって変化する。そこで次の2つのいずれかの方法で輝度を調整している。
(a) 表示機器駆動電流の大きさを可変し輝度の調整を行う機構を設ける。
表示輝度を高くしたい場合は陽極ドライバからの駆動電流値を大きくし、表示輝度を低くしたい場合は陽極ドライバからの駆動電流値を小さくしている。
(b) 表示機器駆動電流の出力時間を可変し輝度の調整を行う機構を設ける。
表示輝度を高くしたい場合は陽極ドライバからの駆動電流の出力時間を長く、表示輝度を低くしたい場合は陽極ドライバからの駆動電流の出力時間を短くしている。
【0005】
これまでの従来技術は、このいずれかの方法によって、輝度調整を行っていた(特許文献1および2など参照)。例えば特許文献1に記載の輝度可変方法では、上述した(a)の方法により駆動電流の大小によって輝度可変を行っている。また、特許文献2に記載の輝度可変方法では、上述した(b)の方法により駆動電流は一定のまま、駆動電流出力時間の長短によって輝度可変を行っている。
【0006】
【特許文献1】特開2004−226977号公報
【特許文献2】特開2006−084818号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術の方法(a)を採用した場合の問題点として以下の点がある。陽極ドライバから表示機器へ流す駆動電流値は隣接する出力間において誤差があるため(全ての出力段で等しい電流を出力させることは実現困難である)、比較的駆動電流値が大きい高輝度領域では駆動電流値に対する誤差の割合が小さく、隣接する表示ドット間の輝度の差としては分かりにくい。しかし駆動電流値が小さい低輝度領域では駆動電流値の絶対誤差が高輝度の場合と同様であっても、駆動電流値に対する誤差の割合が大きくなり、当該表示ドット間の輝度の差となって目立つようになり縦縞模様状のムラとなって見え画質を劣化させる。又、高輝度時よりも低輝度時の方が、輝度差(輝度ムラ)として人の目には分かり易い(感知しやすい)。
【0008】
また、従来技術の方法(b)を採用した場合の問題点として以下の点がある。表示ドットへの駆動電流はクロック同期で出力しているため、ON/OFFの論理の出力時間はクロック周期時間の整数倍となる。駆動電流出力時間の制御はクロック数を以って行い、クロック数は制御を行うマイコンのメモリにデータテーブルとして予め格納する。しかしながらこのテーブルは(階調数×輝度ステップ数)のデータ数から成り、大きなメモリ資源(領域)を用意する必要がある。本発明が解決しようとする課題には上述した問題が一例として挙げられる。
【0009】
本発明では、前記問題に鑑みてなされたものであって、駆動電流値制御と駆動電流出力時間制御を組み合わせることによって、従来技術の方法(a)および(b)の短所を解消または緩和することができる、表示パネル駆動装置およびその輝度調整方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するため、請求項1に記載の表示パネル駆動装置は、前記表示パネルに駆動電流を出力する駆動手段と、所定の輝度よりも高輝度の範囲においては前記駆動電流の電流値の増減を変化させ、低輝度の範囲においては前記駆動電流の出力時間の長短を変化させることによって、前記表示パネルの輝度を設定する輝度設定手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に記載の表示パネル駆動装置における輝度調整方法は、前記表示パネルに駆動電流を出力する駆動ステップと、所定の輝度よりも高輝度の範囲においては前記駆動電流の電流値の増減を変化させ、低輝度の範囲においては前記駆動電流の出力時間の長短を変化させることによって、前記表示パネルの輝度を設定する輝度設定ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本実施の形態に係る表示パネル駆動装置およびその輝度調整方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
[本表示パネル駆動装置の概要]
以下、本表示パネル駆動装置の概要について説明し、その後、本表示パネル駆動装置の構成およびその輝度調整方法等について詳細に説明する。
【0014】
図1〜図3は、本実施の形態の基本原理を説明する図である。図1は、本実施の形態の表示パネル駆動装置の制御による輝度可変の原理の一例を示す概念図であり、図2は、各輝度、各階調における駆動電流のイメージ図であり、図3は、従来方法、および、本実施の形態の輝度調整の一例を示す図である。
【0015】
図1に示す表示パネル駆動装置は、一般的なパッシブ方式の有機EL表示システムとして構成されており、一例として、有機EL表示パネルなどの表示パネル50に接続されるドライバ10(陽極ドライバおよび陰極ドライバ)と、表示マイコン40に接続される表示コントローラ20と、輝度設定部30と、を備えて構成される。
【0016】
表示マイコン40は、表示コントローラ20に画像・映像データの階調データや外部クロック等を送信する情報送信手段である。表示マイコン40は、表示するための画像・映像データを、内部メモリまたは外部から通信手段を介して取得する。
【0017】
表示パネル50は、表示コントローラ20が電極ドライバ10を制御することにより画像・映像を表示させる表示手段である。
【0018】
ドライバ10(陽極ドライバおよび陰極ドライバ)は、表示パネル50における輝点を制御するための輝点制御ドライバ手段であり、概念的に、表示パネルに駆動電流を出力する駆動手段として機能する。
【0019】
表示コントローラ20は、表示装置を統括的に制御する表示制御手段である。
【0020】
輝度設定部30は、概念的に、入力された輝度に基づいて、表示パネル50の輝度を設定する輝度設定手段として機能し、所定の輝度よりも高輝度の範囲においては駆動電流の電流値の増減を変化させ、低輝度の範囲においては駆動電流の出力時間の長短を変化させることによって、表示パネル50の輝度を設定する。
【0021】
このように構成された本実施の形態の駆動装置における輝度調整方法は、図1に示すように、従来方式の前記(a)および(b)の方式を組み合わせて制御を行うが、ただ組み合わせただけでなく、お互いの長所を生かし、短所を打ち消す組み合わせである。すなわち、図2および図3に示すように、比較的輝度が高い高輝度領域では、駆動電流差による輝度差(輝度ムラ)が分かりにくい為、(a)の方法により、駆動電流の大小で輝度可変を行う。また、低輝度領域まで駆動電流を下げて輝度を下げていくと、駆動電流値に対して、隣接する表示ドットに加える駆動電流の差分(誤差)の割合が大きくなっていき、隣接する表示ドットに輝度差(輝度ムラ)が現れ始める場合がある。このような輝度差(輝度ムラ)の発生を防ぐ為に、低輝度領域では(b)の方法により、駆動電流出力時間の制御によって輝度可変を行う。
【0022】
また、電流誤差が輝度差(輝度ムラ)の原因となる、駆動電流は、隣接する表示部に加える駆動電流差分が無視できる程度の大きな駆動電流値に固定したまま、駆動電流出力時間を減少することによって輝度を下げていく。出力時間は、クロックのパルス数などによって制御される。クロックのパルス数を用いた場合には、各出力段に共通のクロックパルスである為、各出力段における電流出力時間に差分の発生は無い。よって、輝度差(輝度ムラ)の発生も起こらない。
【0023】
また、図2および図3に示すように、本実施の形態は、輝度設定の制御の分岐点である分岐設定輝度を、製品輝度仕様に調整する為の駆動電流調整点と一致させてもよい。これにより、電流誤差が最も少ない状態のまま低輝度領域まで制御することが可能となる。さらに、前記の分岐設定輝度、輝度調整点(駆動電流調整点)を製品の初期輝度設定点と一致させてもよい。これにより、複数の陽極ドライバや複数の発光色が存在する実使用上のシステムでは、初期輝度設定により、最も陽極ドライバ間の輝度差が分かりにくい設定ポイントとなる。
【0024】
また、本実施の形態は、各輝度、各階調における電流出力時間(クロック数)は、データテーブル(例えば、後述する輝度別階調パルステーブル)として予め用意しておいてもよい。つまり、データテーブルを用意する場合には、データーエリアとしてメモリ領域が占有されることとなる。よって、数多くのデータを持つことはメモリ領域の増大につながる為、本実施の形態においては必要最小限の輝度領域のみ時間制御方式として、駆動電流差が輝度差(輝度ムラ)に影響しない高輝度領域では駆動電流時間制御方式にて輝度可変を行う方式を提案した。これにより、必要なメモリ領域の占有を抑制することができる。
【0025】
また、本実施の形態は、表示パネル駆動装置において、駆動電流の出力時間を、固定分周比による同一のクロック幅のクロック周期に基づいて、または、可変分周比による異なるクロック幅のクロック周期に基づいて決定してもよい。すなわち、本実施の形態では駆動電流の出力時間を(クロック周期×クロック数)として、クロック数を変更することによって出力時間の調整を行ってもよいが、変形例としてクロック周期を変える方式を用いてもよい。クロック周波数を上げる(クロック周期を短くする)と出力時間を短くすることができ、クロック周波数を下げる(クロック周期を長くする)と出力時間を長くすることができる。ここで、全ての輝度可変範囲においてクロック周波数を変更することによって輝度調整を行うことが考えられるが、クロック周波数範囲が大きくなるにつれ広レンジの発振回路の実現やクロック同期回路のタイミングケアが難しくなる等の制約が発生する。そこで、この駆動電流出力時間制御方法と駆動電流値制御を組み合わせることにより、縦縞模様状のムラの発生による画質の劣化を防止し、かつクロックに関連した回路上の制約を緩和することが可能である。本変形例の場合、駆動電流出力時間制御についてクロックの発振周波数を変更するだけで実現が可能であり、データテーブルを用意する実施例に比べ構成が簡素となる。
【0026】
以上により、本実施の形態は、駆動電流値制御と駆動電流出力時間制御を組み合わせることによって、方法(a)および(b)の短所を解消または緩和することができる。すなわち、輝度可変機能を有している表示機器の駆動装置において、輝度可変範囲内で縦縞模様状の輝度ムラの発生が無い点(最高輝度、最低輝度点を除く)を分岐設定輝度と定めて、これより輝度が高い範囲では駆動電流値の増減で輝度を可変させ、この点より輝度が低い範囲では駆動電流の出力時間の長短で輝度を可変させる。このようにすることにより、低い輝度領域でも駆動電流値が分岐設定輝度と同一となる。言い換えると駆動電流値に対する誤差の割合が分岐設定輝度と低輝度領域とで常に同じ状態となる為、低輝度領域であっても輝度の差として分かりにくい。時間による相対誤差は、同一の基本パルスによって制御されている為、ほぼ皆無と考えられる。
【0027】
また、これにより縦縞模様状の輝度ムラの発生による画質の劣化を防止することが可能となる。一方、駆動電流出力時間のクロック数格納データテーブルは設定点以下の輝度ステップ分だけのデータ数で済み、方法(b)に対しメモリ占有の緩和を図ることができる。すなわち、駆動電流の出力時間(クロック数)は予め計算によって算出する必要があるが、本実施の形態では演算回路を用いずデータテーブルとして格納している。データテーブルを用いると、演算回路を設けた場合とは異なり、駆動電流の出力時間(輝度)の特性変形や微調整等を容易に行える利点がある。
【0028】
表示機器の輝度仕様に合わせる為、駆動電流値の調整により輝度調整を行う点を、前記の分岐設定輝度と一致させることで、複数の陽極ドライバや複数の発光色の間のバラツキを最小限に調整することが可能となる。
【0029】
さらに前記の分岐設定輝度、輝度調整点(電流調整点)を表示機器の輝度デフォルト設定点と一致させることで、最良の状態での製品化、および、市場への導入が可能となる。
以上で、本実施の形態の概要の説明を終了する。
【0030】
[表示パネル駆動装置の構成および処理]
以下、このような基本的特徴を具現化するための、本表示パネル駆動装置の構成および処理について、図4乃至図11を参照して説明する。
【0031】
図4は、一般的な有機EL表示システムを一例とした、本実施の形態が適用される表示パネル駆動装置の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本実施の形態に関係する部分のみを概念的に示している。図4において表示パネル駆動装置は、概略的に、電極ドライバ(陽極ドライバ)10と、表示コントローラ20と、輝度設定部30と、を備えて構成されており、これら各部は任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0032】
図4に示す輝度設定部30は、入力された輝度に基づいて、表示パネル50の輝度を設定する輝度設定手段であり、入力された輝度が所定の輝度よりも高い範囲である場合は、駆動電流の電流値の増減を変化させるように陽極ドライバ10を制御して表示パネル50の輝度を設定する。また、輝度設定部30は、入力された輝度が所定の輝度よりも低い範囲である場合は、駆動電流の出力時間の長短を変化させるように表示コントローラ20を制御することによって、表示パネル50の輝度を設定する。
【0033】
また、図4に示す陽極ドライバ10は、表示パネル50に駆動電流を出力する駆動手段である。ここで、陽極ドライバ10の内部の輝度調整に関する機能ブロックを、図5に示す。図5は、本実施の形態が適用される陽極ドライバ10の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本実施の形態に関係する部分のみを概念的に示している。図5において陽極ドライバ10は、概略的に、D/Aコンバータ11と、基準電流アンプ12と、駆動電流ドライブ13と、駆動電流制御部14と、を備えて構成されており、これら各部は図5に示すように任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0034】
D/Aコンバータ11は、基準電流アンプ12に接続され、輝度設定部30により出力された輝度データをアナログ電圧に変換し、基準電流アンプに出力する。
【0035】
基準電流アンプ12は、D/Aコンバータ11および駆動電流ドライブ13に接続され、D/Aコンバータ11より出力された基準電流を増幅して駆動電流ドライブに出力する。
【0036】
駆動電流ドライブ13は、基準電流アンプ12および駆動電流制御部14に接続され、駆動電流制御部14の制御により駆動電流を表示パネル50に出力する。
【0037】
駆動電流制御部14は、駆動電流ドライブ13に接続され、表示コントローラ20から出力された階調信号、同期信号、階調パルス信号に基づいて、駆動電流ドライブ13の駆動電流出力を制御する。
【0038】
このように構成された表示パネル駆動装置において、輝度設定部30および陽極ドライバ10による駆動電流(値)による輝度調整処理を図5を参照して以下に説明する。
【0039】
図5に示すように、輝度設定部30から陽極ドライバ10に入力された輝度設定データは、D/Aコンバータ11によって所定のアナログ電圧に変換される。このアナログ電圧は、基準電流アンプ12にて、駆動電流の基本(種)となる基準電流に変換される。この基準電流が各出力手段(ドライバ)である駆動電流ドライブ13に受け渡され、駆動電流(定電流)値が決定される。ここで、駆動電流は、基準電流値そのものでなく、整数倍、或いは、整数等分された電流値として使用される場合でもよい。
【0040】
ここで、輝度設定データ(変換後のアナログ電圧)を大きくすれば、基準電流、駆動電流も大きくなり輝度が高くなる。
【0041】
また、実際の駆動電流出力は、表示データの階調信号、同期信号、階調パルス信号に従って、駆動電流制御部14により制御される。
【0042】
以上で、輝度設定部30および陽極ドライバ10による駆動電流(値)による輝度調整処理の説明を終了する。
【0043】
再び図4に戻り、表示コントローラ20は、表示装置を統括的に制御する表示制御手段である。ここで、表示コントローラ20の内部の輝度調整等に関する機能ブロックを、図6に示す。図6は、本実施の形態が適用される表示コントローラ20の構成の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本実施の形態に関係する部分のみを概念的に示している。
【0044】
図6に示すように、表示コントローラ20は、概略的に、分周器21と、同期信号生成部22と、階調パルス信号生成部23と、輝度別階調パルステーブル24と、表示メモリ25と、階調信号出力部26と、を備えて構成されており、これら各部は図6に示すように任意の通信路を介して通信可能に接続されている。図6は、これまで示してきたコントローラの内部記述であり、一般的な表示コントローラにおけるパルス信号(クロック)生成ブロックおよび周辺ブロック図を表している。
【0045】
分周器21は、同期信号生成部22および階調パルス信号生成部23に接続され、表示コントローラ20内部のクロックを生成する。
【0046】
同期信号生成部22は、分周器21に接続され、分周器21により生成されたクロックにより同期信号を生成し、陽極ドライバ10に出力する。
【0047】
階調パルス信号生成部23は、分周器21および輝度別階調パルステーブル24に接続され、輝度設定部30により出力された輝度データに対応する階調パルステーブルを輝度別階調パルステーブル24から選択し、選択した階調パルステーブルに基づいて階調パルス信号を生成し、陽極ドライバ10に出力する。
【0048】
輝度別階調パルステーブル24は、輝度別に階調と階調パルス間の幅(クロック数)を定めたテーブルである。ここで、図11は、輝度別パルステーブルのデータ構造の一例および当該テーブルに基づく階調パルス信号の出力の一例を示す図である。図11の上図に示すように、ある輝度(n)における階調パルステーブルには、階調と階調パルス間の幅(クロック数)とがそれぞれ対応付けられて格納されている。すなわち、輝度数(n)分のテーブルが存在する。また、図11の下図は、上図に示すテーブルにおけるR階調(網掛けで示す)の階調パルス信号と階調1〜3に対応する出力信号の出力イメージを示す。例えば、階調1の場合には、クロック20個分の出力時間となり、階調2の場合には、クロック28個分(20+8)の出力時間となり、階調3の場合には、クロック34個分(28+6)の出力時間となる。
【0049】
また、図6において、表示メモリ25は、階調信号出力部26に接続され、表示マイコン40等から受信した画像・映像データの階調データを、一時的に記憶し階調信号出力部26に出力する表示メモリである。これにより、送信先の階調信号出力部26で階調データに動的に遅延量が変化しても、表示メモリ25において、受信した階調データを一時的にプールしておくことができるので階調データの欠落が生じない。
【0050】
また、図6において、階調信号出力部26は、表示メモリ25に接続され、表示メモリ25から入力された階調データを該当するライン走査に同期した所定のフォーマットに配列した階調信号を出力する。
【0051】
次に、表示パネル駆動装置において、輝度設定部30および表示コントローラ20による駆動電流出力時間による輝度調整方法を以下に図6を参照して説明する。なお、表示コントローラ20において、全ての信号は、分周器21で作られたクロックを基本単位として動いている。この分周比は、選択は可能ではあるが、その選択値で固定となる。
【0052】
図6に示すように、輝度設定部30により出力された輝度データによって、輝度別階調パルステーブル24を参照して予め設定された階調パルス(間隔)が呼び出され、階調パルス信号生成部23において、クロックに同期して階調パルス信号が生成され、出力される。また、階調パルス信号生成部23は、同期信号生成部22において生成されたフレーム、ラインのタイミング情報も取り込み、各走査ライン毎に階調パルス信号が出力される。
【0053】
次に、表示コントローラ20による、電流出力時間制御による出力例(輝度と階調の概念)を図7を参照して以下に説明する。図7は、図6に示す表示コントローラ20による、電流出力時間制御による出力例(輝度と階調の概念)を示す図である。図7は、一般的な設定輝度の違いによる各階調での電流出力時間を表した概念図である。
【0054】
図7の上図に示すように、低輝度設定時では、階調パルス信号は少ないクロック周期で出力される。また、図7の下図に示すように、高輝度時では、数多くのクロック周期で階調パルス信号が出力されるので、これに合わせた陽極ドライバからの駆動電流の出力時間が可変され、輝度調整(制御)が行われる。
【0055】
次に、表示コントローラ20の内部の輝度調整、階調パルス信号生成に関する機能ブロックの別の実施態様を、図8および図9を参照して以下に示す。図8は、本実施の形態が適用される表示コントローラ20の構成の別の一例を示すブロック図であり、該構成のうち本実施の形態に関係する部分のみを概念的に示している。図8において表示コントローラ20は、概略的に、表示コントローラ20は、概略的に、分周器21と、同期信号生成部22と、階調パルス信号生成部23と、輝度別階調パルステーブル24と、表示メモリ25と、階調信号出力部26と、を備えて構成されており、これら各部は図8に示すように任意の通信路を介して通信可能に接続されている。
【0056】
なお、図8は、クロック分周比を可変とする変形応用例を示し、図6に示す表示コントローラ20の変形応用例を表している。すなわち、図6に示す実施態様では、基本クロックを統一して、輝度に関する制御信号は、クロック数の違いで階調パルス間距離を制御していたが、図8の別の実施態様の表示コントローラ20においては、分周器21において輝度設定データにて基本クロックの周期を可変して、階調パルス間の距離を制御して、輝度の調整を行っている。
【0057】
また、図8の分周器21において分周比を変えて階調パルスを可変しているが、同期信号生成部22において表示全体に関する水平、垂直同期信号については不変とする為に、分周器21を通さずに(或いは、独自の分周器を通して)同期信号生成部22に加える必要がある。
【0058】
図9は、図8に示す表示コントローラ20による、電流出力時間制御による出力例(輝度と階調の概念)を示す図である。図9は、変形応用例として挙げたクロック分周比を可変した場合の出力波形例である。出力時間制御の領域であれば、このような手法による時間制御(輝度可変)も考えられる。
【0059】
本変形例の場合、駆動電流出力時間制御についてクロックの発振周波数を変更するだけで実現が可能であり、構成が簡素となる。
【0060】
次に、本実施の形態による、輝度調整の組み合わせの決定手法の一例について、以下に説明する。
【0061】
本発明者は、陽極ドライバICのドット駆動電流出力値に対する誤差(安定具合)を知るために、全端子の出力電流を測定し、以下の式に示す「平均電流に対する隣接ピン間バラツキ割合」を算出した。

(隣接ピンの出力電流差の絶対値) / (全ピン出力電流の平均値) × 100 〔%〕
【0062】
さらに、前記式による全隣接ピン間バラツキ割合の平均値を求めた。また、測定、算出は縦縞が最も目立つG色で行っている。ここで、図10は、陽極電流ドライバICと隣接ピン駆動電流のバラツキ割合の平均を示す表である。本表の結果を分析すると、低輝度設定になるに従ってこのバラツキ割合の平均が増加しており、縦縞の見え方の度合いはバラツキ割合と相関があることが明らかである。バラツキ割合が1%以下であれば縦縞がさほど目立たないという実験結果から、バラツキ割合が1%以上の輝度設定範囲では駆動電流の時間制御による輝度調整が適していると判断した(データテーブルの格納容量に余裕が無い場合の設定目安が分かった)。
【0063】
上述した実施の形態では、製品のデフォルト輝度設定値以下で駆動電流の時間制御を行うようにしている。
【0064】
これは、デフォルト輝度設定の為に駆動電流調整がされた状態(最も電流バラツキが少ないと思われる最高の状態)を維持したまま輝度調整を可能とすることを考慮しての設定である。
【0065】
[他の実施の形態]
さて、これまで本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態以外にも、前記特許請求の範囲に記載した技術的思想の範囲内において種々の異なる実施の形態にて実施されてよいものである。
【0066】
特に、本実施の形態においては、有機ELディスプレイに適用した例について説明するが、この場合に限られず、他の表示装置、例えば、ドットの表示階調を駆動電流の出力時間で表現している駆動方式(例えば、PWM駆動など)を採用する表示装置などにおいて、同様に適用することができる。
【0067】
また、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部または一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部または一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。
【0068】
この他、前記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種の登録データや検索条件等のパラメータを含む情報、画面例、データベース構成については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0069】
また、表示パネル駆動装置に関して、図示の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。
【0070】
例えば、表示パネル駆動装置が備える処理機能、特に各種の制御手段にて行なわれる各処理機能については、当該駆動装置にて解釈実行されるプログラムにて実現することができ、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現することも可能である。なお、プログラムは、後述する記録媒体に記録されており、必要に応じて表示パネル駆動装置に機械的に読み取られる。
【0071】
また、本実施の形態にかかるプログラムを、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納することもできる。ここで、この「記録媒体」とは、フレキシブル・ディスク、光磁気ディスク、ROM、EPROM、EEPROM、CD−ROM、MO、DVD等の任意の「可搬用の物理媒体」や、各種コンピュータ表示パネル駆動装置に内蔵されるROM、RAM、HD等の任意の「固定用の物理媒体」、あるいは、LAN、WAN、インターネットに代表されるネットワークを介してプログラムを送信する場合の通信回線や搬送波のように、短期にプログラムを保持する「通信媒体」を含むものとする。
【0072】
また、「プログラム」とは、任意の言語や記述方法にて記述されたデータ処理方法であり、ソースコードやバイナリコード等の形式を問わない。なお、「プログラム」は必ずしも単一的に構成されるものに限られず、複数のモジュールやライブラリとして分散構成されるものや、OS(Operating System)に代表される別個のプログラムと協働してその機能を達成するものをも含む。なお、実施の形態に示した各装置において記録媒体を読み取るための具体的な構成、読み取り手順、あるいは、読み取り後のインストール手順等については、周知の構成や手順を用いることができる。
【0073】
さらに、表示パネル駆動装置等の分散・統合の具体的形態は明細書および図面に示すものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷等に応じた任意の単位で、機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本実施の形態の表示パネル駆動装置の制御による輝度可変の原理の一例を示す概念図である。
【図2】各輝度、各階調における駆動電流のイメージ図である。
【図3】従来方法、および、本実施の形態の輝度調整の一例を示す図である。
【図4】本実施の形態が適用される表示パネル駆動装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】本実施の形態が適用される陽極ドライバ10の構成の一例を示すブロック図である。
【図6】本実施の形態が適用される表示コントローラ20の構成の一例を示すブロック図である。
【図7】図6に示す表示コントローラ20による、電流出力時間制御による出力例(輝度と階調の概念)を示す図である。
【図8】本実施の形態が適用される表示コントローラ20の構成の別の一例を示すブロック図である。
【図9】図8に示す表示コントローラ20による、電流出力時間制御による出力例(輝度と階調の概念)を示す図である。
【図10】陽極電流ドライバICと隣接ピン駆動電流のバラツキ割合を示す表の一例を示す図である。
【図11】輝度別パルステーブルのデータ構造の一例および当該テーブルに基づく階調パルス信号の出力の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
10 陽極ドライバ
11 D/Aコンバータ
12 基準電流アンプ
13 駆動電流ドライブ
14 駆動電流制御部
20 表示コントローラ
21 分周器
22 同期信号生成部
23 階調パルス信号生成部
24 輝度別階調パルステーブル
25 表示メモリ
26 階調信号出力部
30 輝度設定部
40 表示マイコン
50 表示パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示パネルの駆動装置であって、
前記表示パネルに駆動電流を出力する駆動手段と、
所定の輝度よりも、高輝度の範囲においては前記駆動電流の電流値の増減を変化させ、低輝度の範囲においては前記駆動電流の出力時間の長短を変化させることによって、前記表示パネルの輝度を設定する輝度設定手段と、を備えることを特徴とする表示パネル駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示パネル駆動装置において、
前記駆動電流の出力時間は、固定分周比による同一のクロック幅のクロック周期に基づいて、または、可変分周比による異なるクロック幅のクロック周期に基づいて決定されることを特徴とする表示パネル駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表示パネル駆動装置において、
前記所定の輝度は、製品輝度仕様に調整する為の駆動電流調整点、または、製品の初期輝度設定点と一致することを特徴とする表示パネル駆動装置。
【請求項4】
表示パネルの駆動装置により実行される輝度調整方法であって、
前記表示パネルに駆動電流を出力する駆動ステップと、
所定の輝度よりも、高輝度の範囲においては前記駆動電流の電流値の増減を変化させ、低輝度の範囲においては前記駆動電流の出力時間の長短を変化させることによって、前記表示パネルの輝度を設定する輝度設定ステップと、を含むことを特徴とする輝度調整方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−107737(P2008−107737A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−292915(P2006−292915)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(503213291)パイオニア・マイクロ・テクノロジー株式会社 (25)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】