説明

表示一体型位置検出装置

【課題】不必要な素子や部品を搭載することなく、位置検出対応の製品と非対応の製品とで表示基板周りの部材を共用でき、表示基板の画素数や位置検出精度等の変更に際しても表示基板周りの部材の変更が少なくて済む表示一体型位置検出装置を提供する。
【解決手段】表示基板10の左右に切替基板20と短絡基板30とを配置し、切替基板20と短絡基板30とは、実質的に同一に形成された3個づつの中継基板60、70によって表示基板10に接続されている。中継基板60、70は、表示基板10上の多数の走査信号線14に走査信号を供給するドライバと、多数の走査信号線14から選択された複数の走査信号線14を切替基板20へ連絡する中継配線とを有する。切替基板20は、複数の走査信号線14を、ドライバと座標検出部80とに切り替える複数のスイッチ素子を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示セルを駆動する信号の基板配線を利用したループ回路を用いて画像表示装置の画面上で位置検出を行う表示一体型位置検出装置、詳しくは、ループ回路の起電力を検出する基板配線の取り出し構造に関する。
【背景技術】
【0002】
手持ちした位置指示器(ペン等)で画面上を指示して入力操作する携帯電話、携帯型演算装置、ゲーム装置、液晶テレビ、現金支払機、券売機、各種入力端末が実用化されている。
【0003】
特許文献1には、液晶表示装置のTFT駆動基板(表示基板)に配置された基板配線(走査信号線、書き込み信号線)を利用して、画面上のXY座標位置検出を行う表示一体型位置検出装置が示される。ここでは、所定間隔を隔てた一対の基板配線の一端側をスイッチング素子で短絡させてループ回路を形成し、ループ回路のアンテナを用いて位置指示器の先端部から放射される電磁波を検知する。そして、複数対の基板配線を次々に切り替えてループ回路の位置を画面上で移動させ、アンテナ最大出力が得られる位置を割り出して、先端部に指示された座標位置としている。
【0004】
特許文献2には、一対の電極間で帯電粒子を移動させて画素表示を行う電気泳動表示装置が示される。画素の表示セルは、表示面に配置された白色の表示電極と、表示面を囲む隔壁の起立面に配置された隔壁電極と、前記表示面と前記隔壁とで囲まれた移動空間に封入された黒色の帯電粒子とを有する。電気泳動表示装置は、液晶表示装置のような偏光板が不要なため、バックライト無しでも明るい表示が可能で、電圧印加を解除した後も画素表示が保持される画素表示のメモリー性を有する。これにより、上述した携帯電話、携帯型演算装置、ゲーム装置等への応用が期待されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−49301号公報
【特許文献2】特開平9−211499号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の液晶表示装置では、表示基板の片端に接続される駆動基板上に、表示基板上の並列な多数の基板配線にそれぞれ信号を供給するドライバと、表示基板上の並列な多数の基板配線から選択した複数の基板配線を、ループアンテナ出力検出回路とドライバとの間で切り替える切替スイッチ素子とを実装している。従って、表示基板の画素数、画素サイズ、画面の縦横比、位置検出精度を変更すると、専用の駆動基板を1から作り直す必要がある。
【0007】
また、同じ表示基板を位置検出機能付きの製品と位置検出機能無しの製品とで共用できるが、駆動基板は、位置検出機能付きの製品と位置検出機能無しの製品とで1から作り直す必要がある。
【0008】
また、位置検出対応の駆動基板を用いて位置検出機能無しの製品を組み立てることも可能であるが、不必要な切替スイッチ素子を実装して大型化した駆動基板を採用すると、表示画面を囲む外枠の幅が大きくなる等、製品のデザイン性が損なわれる。
【0009】
また、携帯端末の上位機種でペン入力を可能とする場合、下位機種に合わせた小さなスペースへ収まるような駆動基板を開発する必要が生じるので、設計的な不自由もあって多大な開発コストが発生する。しかし、そのような上位機種は生産数が限られているので、価格差以上の開発コスト上増しとなって開発コストを回収できない。生産数の少ない特殊な駆動基板では、ドライバの評価を含めて信頼性や耐久性の確保が困難でもある。
【0010】
本発明は、不必要な素子や部品を搭載することなく、位置検出対応の製品と非対応の製品とで表示基板周りの部材を共用でき、表示基板の画素数や位置検出精度等の変更に際しても表示基板周りの部材の変更が少なくて済む表示一体型位置検出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の表示一体型位置検出装置は、表示セルに信号を供給する多数の並列な基板配線を配列した表示基板と、一対の前記基板配線の一端を短絡したループ回路の起電力を検知する検出手段とを備えた表示一体型位置検出装置において、前記多数の並列な基板配線から選択された複数の基板配線のうち一対ずつを前記検出手段に切替接続する切替手段を実装した切替部材と、前記切替部材と前記表示基板との間に配置され、前記多数の並列な基板配線に前記信号を供給する発生手段を実装した中継部材とを備え、前記中継部材が、前記複数の基板配線を前記切替手段に連絡する中継配線を有するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の表示一体型位置検出装置では、表示セルを駆動する信号の発生手段を実装した中継部材と、切替手段を実装した切替部材とを別部材とし、中継部材を介して表示基板と切替部材とを接続するので、不必要な素子や部品を搭載することなく、切替部材有りの位置検出対応機種と切替部材無しの非対応機種とで中継部材を共用できる。
【0013】
また、中継部材における基本的な素子配置や配線配置に大きな変更を加えなくても、表示基板との中継接続部や切替部材との切替接続部に若干の変更を加えるだけで、表示基板の画素数、画素サイズ、画面の縦横比、位置検出精度と言った幅広い仕様変更に対応できるので、中継基板の開発期間と開発費用とが節約される。
【0014】
これにより、1種類の中継部材の適用範囲が増えて、中継部材の量産効果が期待でき、中継部材の品質や信頼性の向上、表示一体型位置検出装置を組み込んだ製品の外観デザインの向上、生産コストの削減、新製品開発期間の短縮等が実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態である位置検出機能付きの電気泳動表示装置100について、図面を参照して詳細に説明する。電気泳動表示装置100は、バックライトを持たない反射型であるが、本発明は、表示基板10の後方にバックライトを設けた透過型や半透過型の装置として実施してもよい。
【0016】
また、電気泳動表示装置100は、表示セル12ごとに形成した薄膜トランジスタ素子(TFT)13を、格子状に配列した多数の走査信号線14と多数の書き込み信号線15とによりダイナミック制御するアクティブマトリクス方式であるが、本発明は、アクティブマトリクス方式以外の表示セル駆動方式を採用してもよい。
【0017】
また、特許文献1に示される液晶素子の構造、表示基板上の基板配線、薄膜トランジスタ素子、起電力の検出回路、ループ回路の切替制御、先端から電磁波を放射する位置支持器の構造、動作等については、煩雑を避けるべく、一部図示を省略して詳細な説明も省略する。特許文献2に示される電気泳動表示装置の一般的な構造、一般的な製造方法、表面処理等についても、本発明の趣旨と隔たりがあるので、一部図示を省略して詳細な説明も省略する。
【0018】
本発明の表示一体型位置検出装置は、本実施形態で説明する電気泳動表示装置以外の各種画像表示装置、つまり、表示基板上に配置された並列な多数の基板配線を用いて表示セルに信号を供給する液晶表示装置、粒子移動型表示装置等でも実施可能である。
【0019】
<実施形態>
図1は本発明の一実施形態である位置検出機能付きの電気泳動表示装置のブロック図、図2は中継基板の接続状態の説明図、図3は切替基板の接続状態の説明図、図4は短絡基板の接続状態の説明図、図5は短絡基板の回路図、図6は表示セルの構成の説明図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の電気泳動表示装置100は、多数の画素セル12を縦横格子状に配置した表示基板10の周囲に、走査信号線用の切替基板20、書き込み信号線用の切替基板40、走査信号線用の短絡基板30、および書き込み信号線用の短絡基板50を配置している。表示基板10の表示画像を制御する制御基板85は、切替基板20、40、短絡基板30、50、座標検出部80、90に接続されている。
【0021】
切替基板20と切替基板40とは同一に構成され、それぞれY座標の座標検出部80とX座標の座標検出部90とに接続されている。表示基板10と切替基板20、40との間は、3個づつの中継基板60によって接続され、表示基板10と短絡基板30、50との間は3個づつの中継基板70によって接続されている。中継基板60と中継基板70とは、実装部品と回路構成が等しく、実質的に同一に形成されている。
【0022】
表示基板10には、基板配線として、多数の並列な走査信号線14と多数の並列な書き込み信号線15とが立体交差して形成されている。走査信号線14と書き込み信号線15との交点には、表示セル12ごとの薄膜トランジスタ素子(TFT)13が形成されている。薄膜トランジスタ素子13のゲート電極は走査信号線14、ソース電極は書き込み信号線15、ドレイン電極は表示セル12の表示電極41(図6参照)にそれぞれ接続されている。また、ドレイン電極には、走査信号のタイミングで取り込んだ書き込み信号を保持する不図示の補助容量が形成されている。表示基板10は、いわゆるアクティブマトリクス基板である。
【0023】
図2に示すように、中継基板60は、回路パターンが形成されたフレキシブルなテープ部材にドライバ61をパッケージングして構成され、テープ自動ボンディング法(TAB)によって表示基板10に位置決めて接続される。ドライバ61の出力端子は、重ねて相互に結合される中継接続部(タブ列)66、16を通じて、表示基板10の走査信号線14に接続される。
【0024】
ただし、位置検出を行うために選択された走査信号線14a、14b、14c、14dは、中継接続部16のタブ16a、16b、16c、16dから、中継基板60の中継配線69へ受け渡される。そして、反対側の切替接続部67、27を通じて、切替基板20のタブ27a、27b、27c、27dへ受け渡され、スイッチ素子(IC)21、22、23、24のそれぞれの共通端子に接続されている。
【0025】
一方、走査信号線14a、14b、14c、14dに走査信号を供給するドライバ61の各端子は、中継接続部66、16を経て、表示基板10上で外側へ迂回させ、中継接続部16のタブ16e、16f、16g、16hへ連絡している。タブ16e、16f、16g、16hは、中継基板60の中継配線69から反対側の切替接続部67、27を経て、切替基板20のタブ27e、27f、27g、27hへ連絡している。これにより、走査信号線14a、14b、14c、14dに走査信号を供給するドライバ61の各端子は、スイッチ素子21、22、23、24のスイッチ21b、22b、23b、24bへ連絡している。
【0026】
従って、スイッチ素子21のスイッチ21bが接続すると、中継基板60から表示基板10を迂回して中継基板60へ戻り、中継配線69から切替基板20を迂回して中継基板60へ戻り、中継配線69から表示基板10を迂回して再び中継基板60へ戻る回路が閉じられる。これにより、走査信号線14aに信号を供給するドライバ61の端子が走査信号線14aに接続される。
【0027】
また、スイッチ素子22のスイッチ22bが接続すると、中継基板60−表示基板10−中継基板60−切替基板20−中継基板60−表示基板10−中継基板60と辿る同様な回路が閉じて、走査信号線14bに信号を供給するドライバ61の端子が走査信号線14bに接続される。そして、スイッチ素子23のスイッチ23bが接続すると、走査信号線14cに信号を供給するドライバ61の端子が同様な迂回経路を経て走査信号線14cに接続される。そして、スイッチ素子24のスイッチ24bが接続すると、走査信号線14dに信号を供給するドライバ61の端子が同様な迂回経路を経て走査信号線14dに接続される。
【0028】
ドライバ61の入力端子、接地端子、電源端子は、入力接続部68、28を経て切替基板20へ受け渡され、切替基板20で中継して制御基板85(図1)に接続されている。制御基板85の表示制御回路は、表示基板10に表示すべき画像データを展開して走査線画像を形成し、書き込み信号と走査信号とを発生する。
【0029】
図3に示すように、スイッチ素子21、22、・・150、151、152、・・199のスイッチ21a、22a、・・150a、151a、152a、・・199aは、切替基板20上に配置されたスイッチアレイ素子25のスイッチ21c、22c、・・150c、151c、152c、・・199cに連絡している。スイッチ21c、22c、・・150cの他端は、1つにまとめられて座標検出部80の座標検出回路81に接続されている。残りのスイッチ151c、152c、・・199cの他端は、1つにまとめられて座標検出部80の接地電極に接続されている。
【0030】
従って、スイッチアレイ素子25のスイッチ21c、22c、・・150cのうちの1つを閉じ、スイッチ151c、152c、・・199cのうちの1つを閉じることにより、一対の走査信号線14が座標検出回路81に接続される。
【0031】
短絡基板20のスイッチ素子21、22、・・150、151、152、・・199は、画像書き込み期間にはドライバ61(図2)に接続されるが、画像書き込み期間の間隔に設定された位置検出期間には、スイッチアレイ素子25に接続される。これにより、Y座標検出を行う際には、座標検出に係る走査信号線14は、切替基板20上でドライバ61と切り離される。
【0032】
スイッチアレイ素子25は、表示基板10(図1)上で所定間隔を隔てた一対の走査信号線14を座標検出回路81に接続する。そして、一対の走査信号線14を次々に切り替えて座標検出に係る走査信号線14(ループ回路)を表示基板10上で移動させる。
【0033】
図4に示すように、中継基板60(図2)の反対側に配置される中継基板70は、中継基板60(図2)と実質同一に構成されている。ドライバ61の出力端子は、重ねて相互に結合される中継接続部76、17を通じて、表示基板10の走査信号線14に接続される。
【0034】
ただし、ループ形成を行うために選択された走査信号線14a、14b、14c、14dは、中継接続部17のタブ17a、17b、17c、17dから、中継接続部76、中継配線79、中継接続部77、37を経て短絡基板30へ受け渡される。これにより、走査信号線14a、14b、14c、14dは、短絡基板30のタブ37a、37b、37c、37dを経てスイッチ素子31、32、33、34のそれぞれの共通端子に接続されている。
【0035】
一方、走査信号線14a、14b、14c、14dに走査信号を供給するドライバ61の各端子は、中継接続部76、17を経て、表示基板10上で外側へ迂回させ、中継接続部17のタブ17e、17f、17g、17hへ連絡している。タブ17e、17f、17g、17hは、中継接続部76から中継配線79、切替接続部77、37を経て短絡基板37のタブ37e、37f、37g、37hへ連絡している。これにより、走査信号線14a、14b、14c、14dに走査信号を供給するドライバ61の各端子は、短絡基板30のスイッチ素子31、32、33、34のスイッチ31b、32b、33b、34bへ連絡している。
【0036】
従って、スイッチ素子31のスイッチ31bが接続すると、中継基板70から表示基板10を迂回して中継基板70へ戻り、中継配線79から短絡基板30を迂回して中継配線79へ戻り、表示基板10を迂回して再び中継基板70へ戻る回路が閉じられる。これにより、走査信号線14aに信号を供給するドライバ61の端子が走査信号線14aに接続される。
【0037】
また、スイッチ素子32のスイッチ32bが接続すると、中継基板70−表示基板10−中継基板70−短絡基板30−中継基板70−表示基板10−中継基板70と辿る同様な回路が閉じて、走査信号線14bに信号を供給するドライバ61の端子が走査信号線14bに接続される。そして、スイッチ素子33のスイッチ33bが接続すると、走査信号線14cに信号を供給するドライバ61の端子が同様な迂回経路を経て走査信号線14cに接続される。そして、スイッチ素子34のスイッチ34bが接続すると、走査信号線14dに信号を供給するドライバ61の端子が同様な迂回経路を経て走査信号線14dに接続される。
【0038】
ドライバ61の入力端子、接地端子、電源端子は、入力接続部78、38を経て短絡基板30へ受け渡され、短絡基板30で中継して制御基板85の表示制御回路に接続されている。
【0039】
図5に示すように、スイッチ素子31、32、・・250、251、252、・・299のスイッチ31a、32a、・・250a、251a、252a、・・299aは、短絡基板30上に配置されたスイッチアレイ素子25のスイッチ31c、32c、・・250c、251c、252c、・・299cに連絡している。スイッチ31c、32c、・・250cの他端は、ひとつにまとめられて、スイッチ251c、252c、・・299cの他端に短絡されている。
【0040】
従って、スイッチアレイ素子25のスイッチ31c、32c、・・250cのうちの1つを閉じ、スイッチ251c、252c、・・299cのうちの1つを閉じることにより、所定間隔を隔てた一対の走査信号線14が、例えば図中破線で示すように、ループ回路を形成する。
【0041】
短絡基板30のスイッチ素子31、32、・・250、251、252、・・299は、画像書き込み期間にはドライバ61(図4)に接続されるが、位置検出期間にはスイッチアレイ素子25に接続される。これにより、Y座標検出を行う際には、座標検出に係る走査信号線14は、短絡基板30上でドライバ61と切り離される。
【0042】
スイッチアレイ素子25は、表示基板10(図1)上の複数対の走査信号線14を一対ずつ短絡してループ回路を形成する。そして、短絡する走査信号線14を次々に切り替えて、位置検出に係るループ回路を表示基板10上で移動させる。
【0043】
一方、図1に示すように、表示画像情報に対応した書き込み電圧信号を書き込み信号線15に供給するドライバは、表示基板10に切替基板40を接続する3つの中継基板60と、表示基板10に短絡基板50を接続する3つの中継基板70とに配置されている。
【0044】
切替基板40は、選択された複数の書き込み信号線15について座標検出部90との接続切替を行って、X座標検出を行う際には、座標検出に係る書き込み信号線15を切替基板40上でドライバから切り離す。切替基板40は、走査信号線14について座標検出部80との接続切替を行う切替基板20と共通部品化されているので、切替基板40については説明を省略する。
【0045】
短絡基板50は、切替基板40の反対側で一対の書き込み信号線15を短絡してループ回路を形成し、表示基板10上のループ回路をX方向に切り替える。短絡基板50は、切替基板20の反対側で走査信号線14を短絡してループ回路を形成する短絡基板30と共通部品化されているので、短絡基板50についても説明を省略する。
【0046】
<表示セル>
表示基板10に縦横格子状に多数配列された表示セル12は、図6に示すように、隔壁2と表示電極1との間に印加される電圧極性に応じて帯電粒子3を移動させて画素表示を行うもので、画素表示のメモリー性を有する。
【0047】
表示セル12は、薄膜トランジスタ素子13(図1)を形成した後方基板7に、表示電極1および絶縁性反射層5を配置している。絶縁性反射層5(白色)上には、表示セル12ごとの表示電極1の外郭に対応させて導電性材料の隔壁2が形成され、隔壁2で囲まれた絶縁性反射層5の表面が表示面となっている。
【0048】
薄膜トランジスタ素子13のドレイン電極は、表示電極1に接続され、隔壁2はすべての表示セル12に共通で接地電位に接続されている。絶縁性反射層5と隔壁2と透明基板6とで囲まれた空間には、正に帯電した黒色の帯電粒子3を混合した分散液体4が封入されている。
【0049】
このように構成された表示セル12では、薄膜トランジスタ素子13を用いて表示電極1に正の書き込み電圧信号を印加することにより、隔壁2の起立面に帯電粒子3を移動させて表示面から追い払う。これにより、図6の右側の表示セル12に示すように、透明基板6側から絶縁性反射層5を見通させる白色表示を行う。また、表示電極1に負の書き込み電圧信号を印加することにより、図中左側の表示セル12に示すように、隔壁2の帯電粒子3を表示面へ移動させ、白色の絶縁性反射層5を覆い隠して黒色表示を行う。
【0050】
そして、一旦、白状態、黒状態になった表示セル12は、表示電極1の印加電圧を解除して0Vに戻しても、帯電粒子の分子間引力等によって表示状態がそのまま保持される。なお、本実施形態では、説明の簡単化のために、白黒2値表示の説明を行ったが、白状態で印加する書き込み電圧信号の電圧や印加時間を調整して、表示面を帯電粒子3で部分的に覆い隠した状態とすることにより、隠蔽率に応じた濃度の中間階調(灰色)を表示することも可能である。
【0051】
<座標検出回路>
図7は座標検出動作の説明図である。図7を参照して位置指示器110を用いた座標位置検出の概略を示す。図7中、(a)は表示基板10上の位置指示器110とループ回路L1、L2、L3の配置の説明図、(b)は位置指示器110のX座標位置に応じたループ回路L1、L2、L3の起電力の線図、(c)はループ回路L1、L2、L3の起電力に基づく位置検出処理の説明図である。
【0052】
図1に示すように、電気泳動表示装置100は、表示基板10の画像表示面上で位置を指示する位置指示器110を備えている。位置指示器110は、内部に交流電源、先端部に出力コイルをそれぞれ有しており、先端部から電磁波を放出して、上述したY座標検出用のループ回路およびX座標検出用のループ回路に誘導電流を発生させる。
【0053】
図7の(a)に示すように、表示基板10に大きさの等しい第1ループ回路L1、第2ループ回路L2、第3ループ回路L3が形成され、位置指示器110がX方向に移動する。
【0054】
このとき、位置指示器110がループ回路の中心に近いほどループ回路を貫通する磁束が増えるので、図7の(b)に示すように、第1ループ回路L1、第2ループ回路L2、第3ループ回路L3は、位置指示器110の電磁波に誘導されて、位置指示器110の異なるX位置で起電力(電圧または電流)のピークを形成する。
【0055】
図7の(a)に示すように、位置指示器110で座標位置Xpを指示したとき、座標検出部90(図1)は、図7の(b)に示すように、第1ループ回路L1、第2ループ回路L2、第3ループ回路L3の起電力を、座標位置Xpの破線との交点に相当して検出する。
【0056】
図7の(b)に示すように、制御基板85(図1)は、位置指示器110で座標位置Xpを指示した際の第1ループ回路L1、第2ループ回路L2、第3ループ回路L3の起電力を、第1ループ回路L1、第2ループ回路L2、第3ループ回路L3のそれぞれの中心位置における起電力として二次曲線で補間近似し、この二次曲線のピークのX座標位置を演算して位置指示器110のX座標位置とする。
【0057】
以上のようにして、所定間隔で選択した書き込み信号線15を用いた表示基板10上のループ回路の起電力を座標検出部90が検出し、制御基板85が補間計算を行うことにより、位置指示器110のX座標値が特定される。
【0058】
同様にして、所定間隔で選択した走査信号線14を用いた表示基板10上のループ回路の起電力を座標検出部80が検出し、制御基板85が補間計算を行うことにより、位置指示器110のY座標が特定される。
【0059】
本実施形態の電気泳動表示装置100は、位置指示を行わないモード(ペン入力OFF)と、位置指示を行うモード(ペン入力ON)とを選択して設定可能である。ペン入力OFFの場合、表示基板10全体の画像を書換えるのに要する時間は100msec、フレームレート(毎秒書換え回数)は10Hzである。
【0060】
しかし、ペン入力ONの場合には、座標検出期間と画像書換え期間とが交互に配置される。本実施形態では、画素表示のメモリー性を有する表示セル12を用いているので、静止画の上に座標検出結果を上書きしていく工程においては、画像書換え期間において、上書きする画素のみ書換えればよい。以下では、ペン入力ONの際の動作について説明し、静止画の上にペン入力(座標検出結果)を上書きしていく工程を説明する。
【0061】
座標検出期間になると、図3に示すスイッチ素子21、22、・・150、151、152、・・199のスイッチ21a、22a、・・150a、151a、152a、・・199aが閉じて、位置検出用の走査信号線14がスイッチアレイ素子25に接続される一方、上述したようにドライバ61(図2)からは分離される。
【0062】
同時に、図5に示す短絡基板30のスイッチ素子31、32、・・250、251、252、・・299のスイッチ31a、32a、・・250a、251a、252a、・・299aが閉じて、位置検出用の走査信号線14がスイッチアレイ素子25に接続される一方、上述したようにドライバ61(図4)からは分離される。
【0063】
そして、短絡基板30(図5)のスイッチアレイ素子25が一端側を短絡させた一対の走査信号線14を次々と切り替え、切替基板20(図3)のスイッチアレイ素子25が切り替わった一対の走査信号線14を次々と座標検出部80へ接続する。これにより、表示基板10上の複数のループ回路の起電力が座標検出部80によって次々に検出される。
【0064】
まず、図5に示すスイッチ素子31、251にそれぞれ連絡する一対の走査信号線14が短絡されて第1ループ回路が形成されると、図3に示すスイッチ素子21、151にそれぞれ連絡する走査信号線14が座標検出部80に接続されて第1ループ回路の起電力が検出される。
【0065】
次に、図5に示すスイッチ素子32、252にそれぞれ連絡する一対の走査信号線14が短絡されて第2ループ回路が形成されると、図3に示すスイッチ素子22、152にそれぞれ連絡する走査信号線14が座標検出部80に接続されて第2ループ回路の起電力が検出される。
【0066】
さらに、図5に示すスイッチ素子250、299にそれぞれ連絡する一対の走査信号線14が短絡されて第nループ回路が形成されると、図3に示すスイッチ素子150、199にそれぞれ連絡する走査信号線14が座標検出部80に接続されて第nループ回路の起電力が検出される。
【0067】
このように走査信号線14を用いて順次ループ回路を形成していき、表示基板10の表示面全域をY方向に走査する。そして、書き込み信号線15についても同様にして、順次ループ回路を形成していき、表示基板10の表面をX方向に走査する。
【0068】
次に画像を書換える画像書換え期間について説明する。画像書換え期間になると、図3に示すスイッチ素子21、22、・・150、151、152、・・199のスイッチ21b、22b、・・150b、151b、152b、・・199bが閉じて、位置検出用の走査信号線14が上述したようにドライバ61(図2)に接続される。
【0069】
同時に、図5に示す短絡基板30のスイッチ素子31、32、・・250、251、252、・・299のスイッチ31b、32b、・・250b、251b、252b、・・299bが閉じて、位置検出用の走査信号線14が上述したようにドライバ61(図4)に接続される。
【0070】
また、書き込み信号線15についても、同様にして、図1に示す切替基板40のスイッチ素子を切り替えて、切替基板40と表示基板10とを接続する中継基板60のドライバに位置検出に係る書き込み信号線が接続される。同時に、短絡基板50のスイッチ素子を切り替えて、短絡基板40と表示基板10とを接続する中継基板70のドライバに位置検出に係る書き込み信号線が接続される。
【0071】
そして、位置検出に係る走査信号線14を含むすべての走査信号線14の両端に、図2に示すドライバ61と図4に示すドライバ61とから同じ走査信号が順番に供給される。並行して、位置検出に係る書き込み信号線15を含むすべての書き込み信号線15の両端に、同じ書き込み信号が順番に供給されて、図1に示す表示基板10の表示セル12の表示状態が一行ずつ書き換えられる。
【0072】
このとき、前の座標検出期間において検出された座標(x、y)に対応する画素について書換え動作を行って画面上にポインタを表示する。ドライバ61より、座標(x、y)に対応する走査信号線14に対して薄膜トランジスタ素子13のON電圧Vonが印加され、その他の走査信号線14に対してはTFTのOFF電圧Voffが印加される。そして、不図示のドライバより、座標(x、y)に対応する書き込み信号線15に対し黒書き込み電圧V1が印加され、その他の書き込み信号線15に対しては0Vを印加する。以上の動作により、座標(x、y)に対応する画素を書換える。
【0073】
このように本実施例では、表示パネルの走査信号線14及び書き込み信号線15を用いて閉ループ回路を形成して、座標検出を高精度で行うことができた。また、汎用型のドライバICを用いた標準部品の中継基板60、70を採用したので、画素数の異なる複数の表示基板10に対して、中継基板60、70の個数を異ならせて対応することが可能となり、開発コストを低減できた。汎用型の集積回路を用いた共通仕様の中継基板60、70を使用して、各種、各サイズ、各種表示セルの表示基板に座標検出機能を具備することが可能である。
【0074】
また、本実施形態では、座標検出兼用の走査信号線14に接続するべきドライバ61の出力端子は、表示基板10に接続して、表示基板10上の配線を介して中継基板60の異なる端子に接続し、中継基板60を介して、切替基板20に接続する。この作用により、中継基板60の配線パターンを一層で構成することが可能となる。座標検出用の書き込み信号線15に接続するべきドライバの出力端子についても同様である。
【0075】
また、本実施形態では、座標検出兼用の走査信号線14を用いてY座標検出用のループ回路を形成し、座標検出兼用の書き込み信号線15を用いてX座標検出用のループ回路を形成する。そして、一端部から電磁波を放出して表示基板10上で位置を指示するための位置指示器110を具備し、制御基板85は、位置指示器110から放出された電磁波によりループ回路に誘導される起電力の波形に基づいて、位置指示器110により指示された表示基板110上でのXY座標を検出する。その作用により、電磁誘導による起電力を用いて座標検出を実施することが可能となる。
【0076】
また、本実施形態では、表示基板10を挟む両側に中継基板60、70を配置し、走査信号線14は、片側端で中継基板60のドライバ61と接続し、その反対側端で中継基板70のドライバ61と接続している。座標検出兼用の走査信号線14は、一端は切替基板20上でスイッチングして座標検出部80に接続し、反対端は短絡基板30上でスイッチングして異なる座標検出兼用の走査信号線14と短絡されてループ回路を形成する。この作用により、両側給電型の表示パネルにおいて、ループ回路を形成することが可能となり、電磁誘導による信号を受信する回路を形成せしめる。書き込み信号線15についても同様である。
【0077】
なお、本実施形態の電気泳動表示装置100は、画素表示のメモリー性がある電気泳動表示装置100の説明を行ったが、本発明は、当然それに限るものではなく、液晶パネル・有機ELパネルといった画素表示のメモリー性がない表示パネルにも用いることができる。そして、メモリー性を有する表示素子としても電気泳動表示素子には限定されず、ポリマーネットワーク液晶、強誘電性液晶、といった表示装置に対しても適用できる。さらに、電気泳動表示素子は、隔壁の起立面と表示面との間で帯電粒子を移動させるものには限定されず、上下移動型電気泳動表示素子に対しても、水平移動型電気泳動表示素子に対しても適用できる。帯電泳動粒子と分散液を多数のマイクロカプセルのそれぞれに内包させてマイクロカプセルの外側から電界を印加する電気泳動表示素子でもよい。
【0078】
また、本実施形態の電気泳動表示装置100は、表示基板10上の位置検出に係る走査信号線14と書き込み信号線15とを用いたすべてのループ回路を走査して毎回起電力を検出する制御を行ったが、本発明は、全てのループ回路を走査する制御に限らない。好ましくは、前回検出した位置指示器110の位置に近いN個(1<N<(走査信号線14あるいは書き込み信号線15により形成可能なループ回路の数))のループ回路を走査し、N個のループ回路の起電力を検出して座標位置の演算を行う。
【0079】
また、本実施形態では、電源を搭載した位置指示器110を用いて説明したが、これに限るものではない。好ましくは、位置指示器110に充電機構を有し、走査信号線14および書き込み信号線15により形成するループ回路を用いて電磁波を送信して位置指示器110の充電機構を充電し、そのエネルギーを用いて位置指示器110から電磁波を送信させる。
【0080】
また、本実施形態の電気泳動表示装置100は、それぞれの走査信号線14に対して、中継基板60のドライバ61と中継基板70のドライバ61とを用いて、両側から電圧信号を印加している。これは、画素欠陥などが生じて走査信号線をリペア(切断)した場合でも、両側給電により被害を最小限にすることができるからである。しかし、本発明は、両側給電には限定されず、片側給電としても実施可能である。
【0081】
<千鳥配線による実施形態>
図8はドライバを千鳥配線して片側給電を行う変形例の説明図である。変形例では、表示基板10B上の走査信号線14および書き込み信号線15に対して片側のドライバ61を接続する以外は、図2に示す実施形態と同じであるので、図2と共通する構成部材には共通の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0082】
図8に示すように、表示基板10B上の多数の並列な走査信号線14は、切替基板20Bと表示基板10Bとを接続する中継基板60Bのドライバ61に対して1つおきに接続される。残りの走査信号線14は、表示基板10Bを挟んで中継基板60Bの反対側に接続された不図示の中継基板(図1参照)のドライバに接続される。
【0083】
表示基板10B上の位置検出に係る走査信号線14は、この不図示のドライバに接続されて方側給電されており、中継基板60Bに接続される走査信号線14の間隔を通って表示基板10B上で外側へ迂回してタブに接続されている。そして、中継基板60B1枚あたり4本の走査信号線14が、中継配線69Bを経て切替基板20Bのスイッチ素子21B、22B、23B、24Bにそれぞれ接続されている。
【0084】
スイッチ素子21B、22B、23B、24Bの反対側の端子は、図3の中継基板20の場合と同様に、スイッチアレイ素子25に接続され、切り替え可能に座標検出部80に連絡している。しかし、中継基板60B側では、位置検出に係る走査信号線14へ給電しないので、図2の切替基板20、中継基板60、表示基板10のような、ドライバへ切り替え接続するための戻り配線は不要である。そして、スイッチ素子21B、22B、23B、24Bも切り替え接続不要な一回路ON/OFF型である。
【0085】
しかし、表示基板10Bを挟んで反対側に配置される不図示の短絡基板(図1参照)と、不図示の短絡基板と表示基板10Bとを接続する不図示の中継基板については、ドライバと短絡配線との切り替え接続を行う必要があるので、図2と同様な二回路切り替えのスイッチ素子とドライバの端子へ接続するための戻り配線が設けられる(図2、図4参照)。
【0086】
言い換えれば、切替基板20B上には、位置検出に係る走査信号線14の一端を座標検出部80側のスイッチアレイ素子(25:図3)へ接続するかハイインピーダンス状態にするかを選択できるスイッチ素子を備え、不図示の短絡基板上には、位置検出に係る走査信号線14の他端をドライバに接続するか短絡回路のスイッチアレイ素子(図25:図5)に接続するかを選択できるスイッチ素子を備える。そして、この作用により、千鳥給電型の表示パネルにおいて、閉ループ回路を形成することが可能となり、電磁誘導による信号を受信する回路を形成せしめる。
【0087】
また、変形例では、表示一体型座標検出装置は、走査信号線14の片側にドライバ61を具備し、その反対側にループ回路形成用スイッチング回路を具備する。位置検出に係る走査信号線14は、片側端でドライバ61と接続し、反対側端でループ回路形成用スイッチング回路と接続しており、片側端は切替基板20B上でスイッチングして座標検出部80(図3)に接続し、反対端は不図示の短絡基板上で異なる走査信号線14と接続して位置検出に係るループ回路を形成する。この作用により、片側給電型の表示パネルにおいて、閉ループ回路を形成することが可能となり、電磁誘導による信号を受信する回路を形成せしめる。書き込み信号線15についても同様である。
【0088】
また、走査信号線14と立体交差して配置された書き込み信号線(図1参照)についても走査信号線14と同様に、千鳥配線された表示基板10Bを挟んで不図示の切替基板と短絡基板とを配置して、ドライバを実装した不図示の中継基板で接続してある。
【0089】
このように構成された変形例では、図2に示す中継基板60と実質的に同一に形成された中継基板60Bを用いて、図1に示す表示基板10の4倍の表示セルを配置した高解像度の表示一体型位置検出装置を組み立てることができる。
【0090】
そして、走査信号線14および書き込み信号線15のドライバを接続しない片端を切替基板20Bへ中継するので、図2の構成に比較して、切替基板20Bにおけるスイッチ素子および回路パターンが簡略化される。
【0091】
<比較例の表示一体型座標検出装置>
図9は比較例の液晶表示装置の構成の説明図である。図9に示すように、比較例の液晶表示装置200は、アクティブマトリクス型の液晶パネル112を有する電磁誘導方式の座標検出装置である。液晶パネル112は、互いに直交するよう配置された多数の走査信号線G1〜Gn及び多数の書き込み信号線S1〜Smを有している。これらの走査信号線G1〜Gn及び書き込み信号線S1〜Smは、液晶パネル112の後方基板(アクティブマトリクス基板)上に形成されており、後方基板上の走査信号線G1〜Gn及び書き込み信号線S1〜Smの交点部分には、画素を駆動する薄膜トランジスタ素子(TFT)112aが設けられている。薄膜トランジスタ素子112aのゲートが走査信号線G1〜Gnに接続され、薄膜トランジスタ素子112aのソースが書き込み信号線S1〜Smに接続されている。薄膜トランジスタ素子112aのドレインは、液晶表示セルを駆動する画素電極に接続されている。後方基板に対向配置した透明基板に形成された共通電極と画素電極との間には、補助容量112bが形成されている。
【0092】
液晶表示装置200は、走査信号に対応した駆動信号を走査信号線G1〜Gnに供給するドライバと、表示データに対応した駆動信号を書き込み信号線S1〜Smに供給するドライバとを有している。走査信号線G1〜Gn及び書き込み信号線S1〜Smが所要のタイミングで駆動されて、液晶パネル112上で画像表示が行われる。
【0093】
液晶パネル112は、多数の走査信号線G1〜Gnのうちの所定間隔を隔てて位置する2つの走査信号線Gi、Gjを含むループ回路を、液晶パネル112のY方向の一端側から他端側までの所定の各部位にて順次形成する走査信号線用スイッチ回路119を有する。また、多数の書き込み信号線S1〜Smのうちの所定間隔を隔てて位置する2つの書き込み信号線Sk、Slを含むループ回路を、液晶パネル112のX方向の一端側から他端側までの所定の各部位にて順次形成する書き込み信号線用スイッチ回路110を有する。
【0094】
多数の走査信号線G1〜Gnは、走査信号線用回路121に接続されており、走査信号線用スイッチ回路119によって形成されたループ回路は、走査信号線用回路121のゲート線電流検出回路に切り替え接続されて起電力を検出される。検出された起電力は、増幅回路117を経て座標検出回路123に入力される。
【0095】
多数の書き込み信号線S1〜Smは、書き込み信号線用回路122に接続されており、書き込み信号線用スイッチ回路110によって形成されたループ回路は、書き込み信号線用回路122のソース線電流検出回路に切り替え接続されて起電力を検出される。検出された起電力は、増幅回路118を経て座標検出回路123に入力される。
【0096】
増幅回路117、118は、それぞれ走査信号線G1〜Gn及び書き込み信号線S1〜Smを含む閉ループ回路に直列に挿入される抵抗素子(図示せず)を流れる電流を増幅する。
【0097】
走査信号線用回路121は、走査信号線G1〜Gnに走査信号を供給するドライバを含むゲート線駆動回路を有し、ゲート線駆動回路は、走査信号線G1〜Gnをドライバとゲート線電流検出回路とに切り替え接続する切替回路を含む。ゲート線駆動回路とゲート線電流検出回路とは、回路構成上共有できる部分があるので、同一IC(走査信号線用回路121)に形成されている。
【0098】
書き込み信号線用回路122は、書き込み信号線S1〜Smに走査信号を供給するドライバを含むソース線駆動回路を有し、ソース線駆動回路は、書き込み信号線S1〜Smをドライバとソース線電流検出回路とに切り替え接続する切替回路を含む。ソース線駆動回路とソース線電流検出回路とは、回路構成上共有できる部分があるので、同一IC(書き込み信号線用回路122)に形成されている。
【0099】
走査信号線用スイッチ回路119は、液晶パネル112を構成する後方基板の走査信号線G1〜Gnの他端側部分上に形成された、電界効果型トランジスタなどの複数のスイッチ素子119aからなり、各トランジスタのゲートには、スイッチ素子119aを開閉制御する制御信号GDETが入力される。
【0100】
書き込み信号線用スイッチ回路110は、液晶パネル112を構成する後方基板の書き込み信号線S1〜Smの他端側部分上に形成された、電界効果型トランジスタなどの複数のスイッチ素子110aからなり、各トランジスタのゲートには、スイッチ素子110aを開閉制御する制御信号SDETが入力される。
【0101】
液晶パネル112上での位置を指示する位置指示ペン114は、一端部から電磁波を放出して、ループ回路に誘導電流を発生させる。座標検出装置123は、位置指示ペン114から放出された電磁波によってループ回路に誘導される起電力の波形に基づいて、位置指示ペン114により指示された液晶パネル112上での座標位置を検出する。座標検出回路123は、増幅回路117、118の出力Yk,Xkを受け、この出力に基づいて指示された位置の座標を算出する。
【0102】
このような構成の液晶表示装置200は、1フレーム期間における液晶パネル112上で画像表示が行われる表示期間中には、走査信号線用スイッチ回路119及び書き込み信号線用スイッチ回路110のスイッチ素子119a、110aをオフ状態とし、走査信号線G1〜Gnと書き込み信号線S1〜Smとに表示のための駆動信号を供給する。
【0103】
一方、1フレーム期間における座標検出期間には、走査信号線用スイッチ回路119及び書き込み信号線用スイッチ回路110のスイッチ素子119a、110aをオン状態として、ゲート線電流検出回路及びソース線電流検出回路によりループ回路の起電力を検出する。具体的には、座標検出期間のX信号検出期間には、走査信号線G1〜Gnを含むループ回路を上記のように順次形成し、座標検出期間のY信号検出期間には書き込み信号線S1〜Smを含むループ回路を上記のように順次形成する。
【0104】
そして、使用者が位置指示ペン114で液晶パネル112上のある部分を指示すると、つまりその先端を液晶パネル112に近接して位置させると、指示ペン114から放出される電磁波により、走査信号線G1〜Gnのループ回路及び書き込み信号線S1〜Smのループ回路に高周波の誘導電流が発生する。誘導電流は、ゲート線電流検出回路及びソース線電流検出回路を介して液晶パネル112の外部に取り出され、増幅回路117、118で増幅されて座標検出回路123に入力される。
【0105】
ここで、走査信号線G1〜Gnのループ回路は、座標検出期間のY信号検出期間に順次走査信号線G1〜Gnの配置方向に移動するよう形成され、また、書き込み信号線S1〜Smのループ回路は、座標検出期間のX信号検出期間に順次Y方向に移動するよう形成される。この結果、座標検出回路123には、液晶パネル112の個々の位置におけるループ回路に誘導された誘導電流が供給されることとなり、この誘導電流がピークになるタイミングから、位置指示ペン114により指示された液晶パネル112上での位置のY座標及びX座標を算出する。
【0106】
<発明との対応>
本実施形態の電気泳動表示装置100は、表示セル12に走査信号を供給する多数の並列な走査信号線14を配列した表示基板10と、一対の走査信号線14の一端を短絡したループ回路の起電力を検知する座標検出部80とを備える。そして、多数の並列な走査信号線14から選択された位置検出に係る走査信号線14を座標検出部80に切替接続するスイッチ素子21、22、23、24を実装した切替基板20と、切替基板20と表示基板10との間に配置され、多数の並列な走査信号線14に走査信号を供給するドライバ61を実装した中継基板60とを備える。さらに、中継基板60は、位置検出に係る走査信号線14をスイッチ素子21、22、23、24に連絡する中継配線69を有する。
【0107】
従って、表示セル12を駆動する走査信号のドライバ61を実装した中継基板60と、スイッチ素子21、22、23、24を実装した切替基板20とを別部材とし、中継基板60を介して表示基板10と切替基板20とを接続するので、不必要な素子や部品を搭載することなく、切替基板20有りの位置検出対応機種と切替基板20無しの非対応機種とで中継基板60を共用できる。
【0108】
また、中継基板60における基本的な素子配置や配線配置に大きな変更を加えなくても、表示基板10との中継接続部16、66や切替基板20との切替接続部27、67に若干の変更を加えるだけで、表示基板10の画素数、画素サイズ、画面の縦横比、位置検出精度と言った幅広い仕様変更に対応できる。従って、中継基板60の開発期間と開発費用とが節約される。
【0109】
これにより、1種類の中継基板60の適用範囲が増えて、中継基板60の量産効果が期待でき、中継基板60の品質や信頼性の向上、電気泳動表示装置100を組み込んだ製品の外観デザインの向上、生産コストの削減、新製品開発期間の短縮等が実現する。
【0110】
本実施形態の電気泳動表示装置100は、実質的に同一に形成された複数個の中継基板60を用いて、表示基板10と切替基板20とが接続される。従って、中継基板60の個数で表示基板10の解像度、画素数への対応が図れる。
【0111】
本実施形態の電気泳動表示装置100は、切替基板20の反対側で表示基板10に連絡し、座標検出部80に切替接続される一対の走査信号線14を短絡してループ回路を形成するスイッチ素子31、32、33、34を実装した短絡基板30を備える。従って、表示基板10に不必要なスイッチ素子を配置することなく、短絡基板30有りの位置検出対応機種と短絡基板30無しの非対応機種とで表示基板10を共用できる。
【0112】
本実施形態の電気泳動表示装置100は、中継基板60と実質的に同一に形成されて、表示基板10と短絡基板30とを接続する中継基板70を備え、位置検出に係る走査信号線14は、中継基板70を経由してスイッチ素子31、32、33、34に連絡している。従って、不必要な素子や部品を搭載することなく、短絡基板30有りの位置検出対応機種と短絡基板30無しの非対応機種とで中継基板70を共用できる。
【0113】
本実施形態の電気泳動表示装置100は、走査信号線14の両端が、中継基板60のドライバ61と中継基板70のドライバ61とに接続され、中継基板60は、中継配線69をドライバ61の外側に配置して、多数の並列な走査信号線14と中継配線69とを表示基板10と中継基板60との間で接続する中継接続部37、77を有し、位置検出に係る走査信号線14に接続されるドライバ61の出力を中継配線69へ迂回させる迂回配線を表示基板10に設けている。
【0114】
従って、中継基板20上でドライバ61の出力配線と位置検出に係る走査信号線14を切替基板20に連絡する配線とが立体交差しないので、安価な片面基板を利用できる。
【0115】
図8に示す千鳥配線の変形例では、走査信号線14の片端が、中継基板60のドライバ61と中継基板70のドライバ61とへ交互に接続され、中継配線69をドライバ61の外側に配置し、位置検出に係る走査信号線14のドライバ61に接続されない片端を中継配線69へ迂回させる迂回配線を表示基板10に設けている。従って、切替基板20および中継基板60に、位置検出に係る走査信号線14をドライバ61へ切り替え接続するためのスイッチや配線パターンが不要である。
【0116】
本実施形態の電気泳動表示装置100は、走査信号を供給する走査信号線14が接続される切替基板20と、書き込み信号を供給する前記書き込み信号線15が接続される切替基板40とを備える。そして、走査信号を供給する走査信号線14が接続される短絡基板30と、書き込み信号を供給する書き込み信号線15が接続される短絡基板50とを備える。従って、XY座標を検出可能である。
【0117】
本実施形態の電気泳動表示装置100は、走査信号を供給する走査信号線14を用いたループ回路の起電力を検知する座標検出部80と、書き込み信号を供給する書き込み信号線15を用いたループ回路の起電力を検知する座標検出部90とを備える。そして、手持ち可能に形成されて先端部から電磁波を放出する位置指示器110と、座標検出部80の出力と座標検出部90の出力とに基づいて、表示基板10上における位置指示器110の指示点の座標位置を演算する制御基板85とを備える。従って、XY座標を検出可能である。
【0118】
本実施形態の電気泳動表示装置100は、走査信号を供給する走査信号線14に接続されたゲート電極と、書き込み信号を供給する書き込み信号線15に接続されたソース電極と、表示セル12を駆動する表示電極1を接続したドレイン電極とを有する薄膜トランジスタ素子13を、表示セル12ごとに配置している。
【0119】
本実施形態の電気泳動表示装置100は、表示セル12の表示面に配置された表示電極1と、表示面を囲む隔壁2の起立面に配置された隔壁電極と、表示面と隔壁2とで囲まれた移動空間に封入された黒色の帯電粒子3とを有する。従って、バックライト無しでも明るい表示が可能で、消費電力が低く、画素表示のメモリー性を生かした画像表示の書換えが可能である。
【0120】
本実施形態における中継基板60は、切替基板20と表示基板10とを接続する。そして、表示基板10上に配列された多数の並列な走査信号線14が接続される中継接続部16、66と、位置検出に係る走査信号線14を除く多数の並列な走査信号線14が中継接続部16、66を介して接続される走査信号のドライバ61と、ドライバ61における位置検出に係る走査信号線14に接続される端子と位置検出に係る走査信号線14とを中継して表示基板10から切替基板20へ受け渡す中継配線69とを有する。
【0121】
従って、1種類の中継基板60で多種類の表示基板10、表示基板10を組み込んだ多品種の装置に対応できる。
【0122】
本実施形態の電気泳動表示装置100は、表示基板10上に配列された多数の並列な走査信号線14を備える。そして、多数の並列な配線から選択された位置検出に係る走査信号線14を次々に切り替えて一対づつを起電力の座標検出部80に接続するスイッチ素子21、22、23、24を実装した切替基板20と、座標検出部80に一端側を接続された一対の走査信号線14の他端側を短絡してループ回路を形成するスイッチ素子31、32、33、34を実装した短絡基板30とを備える。
【0123】
従って、不必要な素子や配線パターンを表示基板10に配置することなく、位置検出対応機種と非対応機種とで表示基板10を共用できる。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の一実施形態である位置検出機能付きの電気泳動表示装置のブロック図である。
【図2】中継基板の接続状態の説明図である。
【図3】切替基板の接続状態の説明図である。
【図4】短絡基板の接続状態の説明図である。
【図5】短絡基板の回路図である。
【図6】表示セルの構成の説明図である。
【図7】座標検出動作の説明図である。
【図8】ドライバを千鳥配線して片側給電を行う変形例の説明図である。
【図9】比較例の液晶表示装置の構成の説明図である。
【符号の説明】
【0125】
1 表示電極
2 隔壁
3 帯電粒子
4 分散液体
5 絶縁性反射層
10 表示基板
12 表示セル
13 薄膜トランジスタ素子
14、15 基板配線(走査信号線、書き込み信号線)
20、40 切替部材(切替基板)
21、22、23、24 切替手段(スイッチ素子)
30、50 短絡部材(短絡基板)
31、32、33、34 短絡手段(スイッチ素子)
60、70 中継部材(中継基板)
61 発生手段(ドライバ)
69 中継配線
80、90 座標検出部
85 座標検出手段(制御基板)
100 表示一体型位置検出装置(電気泳動表示装置)
110 位置指示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示セルに信号を供給する多数の並列な基板配線を配列した表示基板と、
一対の前記基板配線の一端を短絡したループ回路の起電力を検知する検出手段と、を備えた表示一体型位置検出装置において、
前記多数の並列な基板配線から選択された複数の基板配線のうち一対ずつを前記検出手段に切替接続する切替手段を実装した切替部材と、
前記切替部材と前記表示基板との間に配置され、前記多数の並列な基板配線に前記信号を供給する発生手段を実装した中継部材と、を備え、
前記中継部材は、前記複数の基板配線を前記切替手段に連絡する中継配線を有することを特徴とする表示一体型位置検出装置。
【請求項2】
実質的に同一に形成された複数個の前記中継部材を用いて、前記表示基板と前記切替部材とが接続されることを特徴とする請求項1記載の表示一体型位置検出装置。
【請求項3】
前記切替部材の反対側で前記表示基板に連絡し、前記検出手段に切替接続される一対の前記基板配線を短絡してループ回路を形成する短絡手段を実装した短絡部材を備えたことを特徴とする請求項1または2記載の表示一体型位置検出装置。
【請求項4】
前記中継部材と実質的に同一に形成されて、前記表示基板と前記短絡部材とを接続する短絡中継部材を備え、
前記複数の基板配線は、前記短絡中継部材を経由して前記短絡手段に連絡していることを特徴とする請求項3記載の表示一体型位置検出装置。
【請求項5】
前記基板配線の両端が、前記中継部材の前記発生手段と前記短絡中継部材の前記発生手段とに接続され、
前記中継部材は、前記中継配線を前記発生手段の外側に配置して、前記多数の並列な基板配線と前記中継配線とを前記表示基板と前記中継部材との間で接続する中継接続部を有し、
前記複数の基板配線に接続される前記発生手段の出力を前記中継配線へ迂回させる迂回配線を前記表示基板に設けたことを特徴とする請求項4記載の表示一体型位置検出装置。
【請求項6】
前記基板配線の片端が、前記中継部材の前記発生手段と前記短絡中継部材の前記発生手段とへ交互に接続され、
前記中継配線を前記発生手段の外側に配置し、
前記複数の基板配線の前記発生手段に接続されない片端を前記中継配線へ迂回させる迂回配線を前記表示基板に設けたことを特徴とする請求項4記載の表示一体型位置検出装置。
【請求項7】
走査信号を供給する前記基板配線が接続される走査信号線切替部材と、
書き込み信号を供給する前記基板配線が接続される書き込み信号線切替部材と、を前記切替部材として備え、
走査信号を供給する前記基板配線が接続される走査信号線短絡部材と、
書き込み信号を供給する前記基板配線が接続される書き込み信号線短絡部材と、を前記短絡部材として備えることを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の表示一体型位置検出装置。
【請求項8】
走査信号を供給する前記基板配線を用いたループ回路の起電力を検知する走査信号線検出手段と、
書き込み信号を供給する前記基板配線を用いたループ回路の起電力を検知する書き込み信号線検出手段と、を前記検出手段として備え、
手持ち可能に形成されて先端部から電磁波を放出する位置指示器と、
前記走査信号線検出手段の出力と前記書き込み信号線検出手段の出力とに基づいて、前記表示基板上における前記先端部の座標位置を演算する座標検出手段と、を備えることを特徴とする請求項7記載の表示一体型位置検出装置。
【請求項9】
走査信号を供給する前記基板配線に接続されたゲート電極と、書き込み信号を供給する前記基板配線に接続されたソース電極と、前記表示セルを駆動する表示電極を接続したドレイン電極と、を有する薄膜トランジスタ素子を、前記表示セルごとに配置したことを特徴とする請求項1乃至6いずれか1項記載の表示一体型位置検出装置。
【請求項10】
前記表示セルの表示面に配置された表示電極と、前記表示面を囲む隔壁の起立面に配置された隔壁電極と、前記表示面と前記隔壁とで囲まれた移動空間に封入された有色の帯電粒子と、を有することを特徴とする請求項9記載の表示一体型位置検出装置。
【請求項11】
切替部材と表示基板とを接続する中継部材において、
前記表示基板上に配列された多数の並列な基板配線が接続される中継接続部と、
選択された複数の基板配線を除く前記多数の並列な基板配線が前記中継接続部を介して接続される信号の発生手段と、
前記発生手段における前記複数の基板配線に接続される端子と前記複数の基板配線とを中継して前記表示基板から前記切替部材へ受け渡す中継配線と、を有することを特徴とする中継部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−115146(P2007−115146A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−307888(P2005−307888)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】