表示体、印刷物、およびその検証装置
【課題】
従来のホログラムに検証機能を付加することにより、よりセキュリティ性が高く、仮に偽造された場合においても真贋判定が容易な表示体、印刷物およびその検証装置を提供する。
【解決手段】
方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域1と、前記第1領域1とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域2とからなるレリーフ界面3を一方の面に有し、かつ、反対面に第二の反射界面4を有する透明層6を具備した構成とし、予め設計された画像パターン5に基づき第1領域1および第2領域2を近接して配置することにより、特定の観察条件でのみ画像パターン5が再現される。
従来のホログラムに検証機能を付加することにより、よりセキュリティ性が高く、仮に偽造された場合においても真贋判定が容易な表示体、印刷物およびその検証装置を提供する。
【解決手段】
方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域1と、前記第1領域1とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域2とからなるレリーフ界面3を一方の面に有し、かつ、反対面に第二の反射界面4を有する透明層6を具備した構成とし、予め設計された画像パターン5に基づき第1領域1および第2領域2を近接して配置することにより、特定の観察条件でのみ画像パターン5が再現される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面レリーフ型ホログラムおよび散乱構造に関するものであり、特に、ラベル・商品券・証明書として用いることが可能な、潜像となる画像パターンを有するセキュリティ媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホログラムは、各種セキュリティ用途に多く使用されており、その形態としては、ホログラムシール、ホログラム転写箔、および、各種紙媒体に用いられるスレッドホログラムがある。
【0003】
また、従来のホログラムは、アルミ等の金属薄膜を反射層として用いることにより銀色に輝いて見えるものが一般的であるが、反射層として透明薄膜層を用いることで、被転写物の絵柄上にホログラム画像を表現することができる、透明ホログラム転写箔も知られている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−223195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記ホログラムでは、近年のカラーコピー機の複写再現精度の向上により、カラーコピー機による再現が金属光沢感を除けば可能なため、余程注意して見なければ見逃してしまう程精巧に再現が可能となっている。また、ホログラムそのものについても、その構造や層構成が簡単なものは偽造されやすくなりつつあり、偽造防止効果も薄れてきている。さらに、偽造されたホログラムの一部には、真贋判定が困難なほど精巧に模倣されたものも存在する。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解消するためになされたものであり、従来のホログラムに専用の道具を用いることなく検証が可能な機能を付加することにより、よりセキュリティ性が高く、仮に偽造された場合においても真贋判定が容易な表示体、印刷物およびその検証装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係わる表示体は、方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域と、前記第1領域とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域とからなるレリーフ界面を一方の面に有し、かつ、反対面に第二の反射界面を有する透明層を具備しており、予め設計された画像パターンに基づき前記第1領域および第2領域を近接して配置することにより、特定の観察条件でのみ画像パターンを再現するように構成した。
【0008】
また、請求項2に係わる表示体は、前記透明層の一部または全部が、レリーフ界面から剥離できるように構成した。
【0009】
また、請求項3に係わる表示体は、方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域と、前記第1領域とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域とからなるレリーフ界面を有し、予め設計された画像パターンに基づき前記第1領域および第2領域が近接して配置されたものであり、第二の反射界面を有する検証用フィルムを表示体の表面に貼付することにより、特定の観察条件において画像パターンが再現するように構成した。
【0010】
また、請求項4に係わる表示体は、前記レリーフ界面および前記第二の反射界面のうち、観察面から遠い界面に不透明反射層を設けて構成した。
【0011】
また、請求項5に係わる表示体は、前記レリーフ界面と前記第二の反射界面との間の厚みが50μm以上に構成した。
【0012】
また、請求項6に係わる表示体は、前記第1領域および第2領域として、複数の画素をマトリクス状に配列して構成した。
【0013】
また、請求項7に係わる表示体は、前記第1領域と第2領域の配置により、前記観察条件が互いに異なる複数の前記画像パターンを有するように構成した。
【0014】
また、請求項8に係わる印刷物は、基材と、前記基材上に形成された印刷層と、前記基材に支持された請求項1〜7の何れか1項に記載の表示体とを備えて構成した。
【0015】
また、請求項9に係わる検証装置は、被検証領域に照明光を照射する光照射手段と、前記被検証領域より得られる回折光および/または散乱光を観察する観察手段とを備え、前記光照射手段及び観察手段が、前記被検証領域の中心である注視点における被検証領域の法線から同一方向に45度以上の角度で配置された、請求項1〜8の表示体および/または印刷物を検証するように構成した。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の表示体によれば、方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域と、第1領域とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域を近接して配置することで、特定の観察条件において第1領域で回折および/または散乱した光が第二の反射界面で反射した後、第2領域で回折および/または散乱し観察可能となる。この観察可能な光は第1領域のパターンおよび第2領域のパターンのいずれとも異なる画像パターンとすることが可能であり、観察可能な位置もまた、第1領域のパターンおよび第2領域のパターンが観察可能な位置のいずれとも異なる。画像パターンは第1領域と第2領域の配置によって決定されるため、この配置を設計することで画像パターンを任意のパターンとすることが可能である。
【0017】
請求項2の表示体によれば、透明層の一部または全部が、レリーフ界面から剥離できるようにすることで、真正品かどうかの検証が可能となるようにしたものである。画像パターンは透明層の一部または全部を剥離することにより消失またはその幅が減少するが、画像パターンを例えばチェンジングホログラムにより表現した模造品においてはこの効果が見られないため、識別が可能となる。
【0018】
請求項3の表示体によれば、方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域と、第1領域とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域を近接して配置した表示体の表面に、第二の反射界面を有する検証用フィルムを貼付することにより、特定の観察条件において第1領域で回折および/または散乱した光が検証用フィルムの第二の反射界面で反射した後、第2領域で回折および/または散乱し観察可能となる。画像パターンは検証用フィルムを貼付していない状態では観察できないため、真正品かどうかの検証方法として用いることが可能である。
【0019】
請求項4の表示体によれば、レリーフ界面および第二の反射界面のうち、観察面から遠い界面に不透明反射層を設けることで、入射光の反射率を上げ、画像パターンの視認性を向上させることが可能となる。
【0020】
請求項5の表示体によれば、レリーフ界面と第二の反射界面との間の厚みを50μm以上とすることで、画像パターンの幅を、目視で十分視認可能な幅とすることができる。画像パターンの幅はレリーフ界面と第二の反射界面との間の厚みにより影響を受け、この厚さが薄いと画像パターンの幅も狭くなる。画像パターンの幅はこの要因以外にも第1領域および第2領域の配置の仕方、レリーフの形状や方向、透明層や検証フィルムの屈折率、第二の反射界面の形状によって影響を受けるが、レリーフ界面と第二の反射界面との間の厚みを50μm以上とすることで、画像パターンの幅は概ね100μm以上となり、目視での確認が容易となる。
【0021】
請求項6の表示体によれば、第1領域および第2領域として、複数の画素をマトリクス状に配列することで、画像パターンの設計を容易にしたものである。マトリクス状に配列することで、第1領域により表現される回折および/または散乱パターンとも、第2領域により表現される回折および/または散乱パターンとも異なる、いわゆる潜像を表現することが容易となり、また、配列における第1領域と第2領域の位置関係を指定することにより、画像パターンが観察可能な方向が容易に決定できる。
【0022】
請求項7の表示体によれば、第1領域と第2領域の位置関係が異なる複数の配置を行うことにより、観察条件が互いに異なる複数の画像パターンを表現することが可能となる。
【0023】
請求項8の印刷物によれば、印刷層が形成された基材に請求項1〜7の何れか1項に記載の表示体を設けることにより、偽造防止効果の高い印刷物を提供することが可能となる。
【0024】
請求項9の検証装置によれば、簡便で安価な装置構成の検証装置を用いることで、容易にかつ確実に請求項1〜8の表示体および/または印刷物の真偽判定を行うことができる。また、その装置を用いて容易にかつ確実に真偽判定を行うことができる物品を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示体における画像パターンの観察条件を示す構成説明図である。
【図2】図1の観察条件において観察可能な画像パターンを示す構成説明図である。
【図3】図1の画像パターンの別の観察条件を示す構成説明図である。
【図4】図3の観察条件において観察可能な画像パターンを示す構成説明図である。
【図5】図1の表示体の要部を断面して示す構成説明図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る表示体を断面して示す構成説明図である。
【図7】図1の表示体の画像パターンの幅の概念を説明するために要部を断面して示す構成説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る検証装置の要部を断面して示す構成説明図である。
【図9】本発明の他の実施の形態に係る表示体の要部を断面して示す構成説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る印刷物の要部を断面して示す構成説明図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る印刷物の要部を断面して示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る表示体、印刷物、およびその検証装置について詳細に説明する。
【0027】
本発明の一実施の形態に係る表示体について図1〜図7を参照して詳細に説明する。即ち、表示体10は、方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域1と、前記第1領域1とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域2とからなるレリーフ界面3を一方の面に有する(図1〜図7参照)。この本発明による表示体10の用途としては、例えば、カード類、商品券、チケット、ラベル等に用いるのに好適するが、これに限定されるものではない。
【0028】
先ず、前記レリーフ界面3について説明する。レリーフ界面3は,樹脂、金属、ガラスなどの表面に微細な凹凸が設けられる。この微細な凹凸は、方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備え、少なくとも特定方向に揃った第1領域1と、第1領域1とは異なる方向に揃った第2領域2とからなる。
【0029】
第1領域1および第2領域2は、予め設計された画像パターン5に基づき、近接して配置され、一度第1領域1または第2領域2にて散乱または回折した光が透明層6の反対側の界面にて反射し、さらに他方の領域で散乱または回折することにより、特定の観察条件でのみ画像パターン5が再現される。画像パターン5は、絵柄を表現していることが好ましく、絵柄とは画像、図柄、数字、文字、パターンなどを指すものである。
【0030】
画像パターン5は、第1領域1と第2領域2の近接の仕方により発生するものであり、もともとの第1領域1および第2領域2のパターンと無関係なパターンとすることが可能で、潜像としての効果を持つ。第1領域1と第2領域2をそれぞれ複数の画素からなるマトリクス状に配列することで、潜像パターンを自由かつ容易に設計することができる。
【0031】
画像パターン5が確認可能な観察条件は、第1領域1と第2領域2の配置により決定し、配置の仕方により観察方向が異なる。このため、異なる観察方向においてそれぞれ異なる画像パターン5を有する表示体10を作製することも可能であり、複数の潜像パターンを持つ表示体10が作製可能である。
【0032】
ここで、図1は、図の右下方向から光を入射した時の光の進み方を示したもので、入射と同じ右下方向から観察した場合には、図2の白部分が画像パターン5として観察される。一方、図3は、図1とまったく同じ構造であるが、光を図の左下方向から入射した時の光の進み方を示したもので、左下方向から観察した場合に図4の白部分が画像パターン5として観察される。
【0033】
また、画像パターン5は、第1領域1と第2領域2が近接することにより発生するため、単にレリーフ界面3のみを表面的に観察するだけでは解析できない。特に画素をマトリクス状に配列し潜像パターンを発生させた場合、偽造はきわめて困難となる。
【0034】
微細な凹凸は、凹凸が逆の構造を持つ原版から複製することが一般的であるが、フォトリソや切削といった、光学的方法や物理的な加工によって作製しても良い。原版からの複製方法としては、熱圧によるプレス、UV樹脂の硬化、押出成形などの方法があるが、材料が金属の場合は電鋳による複製方法が用いられる。
【0035】
微細な凹凸をレリーフ界面3として機能させるために、反射層を設けても良い。反射層としては、反射透明性を有する透明薄膜層や不透明な金属薄膜層を用いることができる。適切な反射層材料の実例としては、アルミニウム、錫、硫化亜鉛、二酸化チタン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。レリーフ界面3が第二の反射界面4に対して観察者から遠い側にある場合には、散乱および/または回折の効果を高めるために不透明反射層を設けることができるが、レリーフ界面3が第二の反射界面4に対して観察者から近い側にある場合には透過性のある反射層を設ける必要がある。
【0036】
ここで、前記表示体10の一部は、第1領域1のパターンおよび第2領域2のパターンのいずれとも異なる画像パターン5を表示するために、レリーフ界面3とは別の界面を持つ透明層6を有する。透明層6は、レリーフ界面3を一方の表面に持ち、他方の表面に第二の反射界面4を持つ。一度レリーフ界面3の第1領域1または第2領域2にて散乱または回折した光が透明層6の反対側の界面にて反射し、さらに他方の領域で散乱または回折することにより、画像パターン5が再現される。レリーフ界面3と第二の反射界面4は、観察者から見てどちらが手前でもよく、同様の効果が得られる。レリーフ界面3が観察者から見て遠い側にある場合には、光が図5に示すように進み、レリーフ界面3が観察者から見て近い側にある場合には、光が図6に示すように進む。
【0037】
前記透明層6の厚みは、画像パターン5の大きさに影響を与える。透明層6がない場合には、画像パターン5は再現されず、厚くなるほど画像パターン5が再現される面積が大きくなる。第1領域1と第2領域2が隣接し、その境界線が直線状であるとき、再現される画像パターン5は直線状となり、その線幅は、レリーフの構造により異なるが、概ね透明層6の厚みの2倍程度となる。
【0038】
ここで、図7は、第1領域1と第2領域2の境界線に直交する断面を示したものであり、図のAが画像パターン5の線幅となる。透明層6の厚みは、画像パターン5の視認性を考慮し、25μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
【0039】
また、透明層6の厚みにより画像パターン5の大きさが変化するため、透明層6の厚みを局所的に変化させることにより、再現される画像パターン5の大きさを局所的に変化させることができる。厚みの差を大きくすることで、画像パターン5の幅の違いが明確に認識可能となる。
【0040】
透明層6は、レリーフ界面3から剥離可能な構成とすることで、真贋判定の手段とすることが可能である。透明層6をレリーフ界面3から剥離すると、それまで確認可能であった画像パターン5が消失するため、画像パターン5をレリーフ界面3に直接表現した模造品との識別が可能となる。ただし、透明層6は、一度剥離すると元に戻すことが出来ないため、この手段は真贋判定の最終手段となる。
【0041】
また、透明層6は、複数の層から構成されていても良く、さらには、透明層6を構成する層間で剥離可能な構成とすることも出来る。レリーフ界面3を露出させることは、偽造を行おうとする者にそのレリーフ構造をトレースさせてしまう危険性があるため好ましくない。このため、剥離をレリーフ界面3ではなく透明層6の層間とし、レリーフ界面側に残った透明層6の厚みを画像パターン5が視認できない程度まで薄くすることで、レリーフ構造をトレースされる危険なく、真贋判定手段を得ることが出来る。透明層6を複数の層から構成する場合には、各層の屈折率が近いものを選定することが好ましい。
【0042】
また、前記表示体10のうち十分な厚みを持った透明層6を持たないものは、基材7の一方の表面に粘着層9が積層された、反射界面を有する検証用フィルム21を、その表面に貼付することにより(図11参照)、第1領域1のパターンおよび第2領域2のパターンのいずれとも異なる画像パターン5が特定の観察条件において観察可能となる。検証用フィルム21にて画像パターン5を検証する表示体10は、レリーフ界面3を最表層に有していてもよい。検証用フィルム21の粘着層9を表示体表面に貼付した状態で、レリーフ界面3と第二の反射界面4が形成され、透明層6と同様の効果が生じる。レリーフ界面3と第二の反射界面4との厚みは透明層6と同様、25μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
【0043】
この検証用フィルム21として、一般的な透明粘着テープ(例えばセロハンテープ等)を用いることも可能であり、特別な道具を用いることなく真贋判定を行うことができる。透明層6を剥離する真贋判定方法と異なり、検証用フィルム21を貼付する方法は、表示体10を破壊しないため、検証用フィルム21を剥がすことで元の状態に戻すことができる。
【0044】
また、検証用フィルム21は、粘着層9を含め複数の層から構成されていても良いが、この場合各層の屈折率が近いものを選定することが好ましい。さらに、レリーフ界面3が最表層にない表示体10の場合には、レリーフ界面3と最表層の間に存在する層についても、検証用フィルム21を構成する各層の屈折率に近いことが好ましい。また、検証用フィルム21をレリーフ界面3に直接貼付する形態の場合は、レリーフ界面3の効果が低下しないように、レリーフ界面3と粘着層9の屈折率の差が大きいことが好ましい。検証用フィルム21は、透明性を有する必要があるが、視認性を妨げない範囲で着色されていても良い。
【0045】
ここで、表示体10は、少なくとも画像パターン5を検証する際には第二の反射界面4を有する。第二の反射界面4は、表示体10の構成の一部である透明層6の界面として存在するか、検証用フィルム21の界面として存在する。第二の反射界面4の役割は、レリーフ界面3で散乱および/または回折した光を再度レリーフ界面3に入射させることにある。このため、第二の反射界面4は、可能な限り平滑であることが望ましいが、必ずしも平面に限定されるものではなく、回折格子、ブレーズド格子等を用いて反射の方向を制御することも可能である。
【0046】
第二の反射界面4は、透明層6と空気との界面または検証用フィルム21と空気との界面を用いることが最も単純な形態であるが、透明層6または検証用フィルム21に反射層を設けても良い。反射層としては、レリーフ界面3と同様透明薄膜層や金属薄膜層を用いることができる。第二の反射界面4がレリーフ界面3に対して観察者から遠い側にある場合には、散乱および/または回折の効果を高めるために不透明反射層を設けることができるが、第二の反射界面4がレリーフ界面3に対して観察者から近い側にある場合には透過性のある反射層を設ける必要がある。
【0047】
次に、本発明の一実施の形態に係る検証装置について説明する。
【0048】
図8は、検証装置を側面から見た状態を示すもので、被検証領域12に照明光を照射する光照射手段13と、被検証領域12より得られる回折光および/または散乱光を観察する、例えば窓部14bから肉眼(観察者の瞳)14aで観察する手段等の観察手段とを備えて構成される。
【0049】
即ち、光照射手段13及び観察手段は、被検証領域12の中心である注視点15における被検証領域12の法線16から、同一方向かつ45度以上の位置に配置されている。図8に示すように、注視点における法線16と注視点15と観察手段の端部(図8中では、窓部の端部)とを結ぶ直線17とのなす角θが、45度以上であることを意味する。なお、図8においては、Z方向に光照射手段13と観察手段とが順次配置されているが、この順序は逆であってもよい。
【0050】
一般的に、光照射手段13や観察手段の配置位置などの条件が適切でない場合、画像パターン5の観察は難しい。特に、光照射手段13が被検証領域12の法線16から45度未満の位置にある場合や、光照射手段13と観察手段が被検証領域12の法線16を挟んで向かい合っている場合には、第1領域1および/または第2領域2から直接射出される回折光または/および散乱光の影響により画像パターン5の目視確認は、非常に困難である。しかし、本発明の検証装置においては、光照射手段13及び観察手段が、被検証領域12の中心である注視点15における被検証領域12の法線16から45度以上の同じ側に配置されているため、画像パターン5を確実に観察することができる。このとき、第1領域1および第2領域2から直接射出される回折光または/および散乱光は観察されず、真偽判定を容易にかつ確実に行うことができる。
【0051】
検証方法としては、表示体10および/または印刷物20(図10参照)において被検証領域12の位置や角度を予め決めておき、指定した位置や角度にセットすることで、容易かつ確実に画像パターン5を観察することができる。
【0052】
前記光照射手段13は、被検証領域12に照明光を照射する機能を有するものである。光源13aと拡散シート13bとを離間して配置したものを用いることができるが、これに限定されるものではない。このような光照射手段13を用いることで、拡散シート13bによって光照射手段13の長さを容易に設定できると共に均一な照明光を作りやすく、検証装置を極めてコンパクト化、安価化、軽量化することができる。
【0053】
また、光照射手段13から照射する照明光は、拡散光であることが好ましい。拡散光を用いることにより、被検証領域12が大きいサイズの場合でも、被検証領域全体に均一に光を照射することができ、画像パターン5が安定して観察できる。また、拡散シート13bとしては、光を透過し、透過した光を拡散させることができるものであればよく、特に限定されるものではない。
【0054】
前記光源13aとしては、単色LEDやLDなどの可視光の単色光源や、白色蛍光ランプ、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、白色無電極ランプ、白色LED、白色ELなどの白色光源を挙げることができる。可視光の単色光源とは、可視光領域におけるただ一種類の波長あるいは十分に狭い波長帯域の光を照射する光源であり、白色光源とは、スペクトル分布が可視光領域にほぼ全体に広がっており、肉眼で白色に見ることができる光源である。
【0055】
前記観察手段は、被検証領域12より得られる回折光を観察するものであり、図8に示すように、検証装置内部を覗き込める窓部14bから肉眼14aで観察するものであってもよく、図8には図示していないが、検証装置の窓部14bに設置したCCDやCMOSなどのイメージセンサで撮像するものであってもよいが、これに限定されるものではない。ここで、窓部14bを設けることは、周囲に遮光部を設けることでもあり、太陽光や室内照明など、観察条件を変動させる外光を遮断する効果もあり、一層安定した、確実な検証を行うことができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の表示体の実施例について詳細に説明する。
【0057】
(実施例1)
図9は、本発明による構成例を示すもので、透明層6は、基材7とレリーフ形成層8とから構成されている。この実施例では、レリーフ界面3上に不透明反射層としてアルミ蒸着を設けている。そして、第二の反射界面4は、基材7と空気の界面によりなるものである。
【0058】
この基材7に形成される第1領域1と第2領域2は、図1に示すようにマトリクス状に隣接して配置される。第1領域1は、方向の揃った複数の直線状の凸部および凹部からなる光散乱構造であり、指向性を有する散乱構造である。第2領域2は、第1領域1の構造の向きと直交する方向に揃った複数の直線状の凸部および凹部からなる光散乱構造であり、第1領域1と同様、指向性を有する散乱構造である。
【0059】
ここで、実施例1では、基材7として厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名E5100,東洋紡績社製)を用い、コロナ処理が施された面上にレリーフ形成層8をグラビアコーティングにより設けた。オーブンでの乾燥後、レリーフ形成層8の膜厚は2μmであった。
【0060】
形成したいレリーフ構造とは、凹凸が逆の構造を持つ原版を用い、ロールエンボス装置にて熱プレスを行い、レリーフ形成層8にレリーフ構造を成形した。レリーフ形成層8上にアルミ蒸着を行い、不透明反射層を設けた。アルミ蒸着の膜厚は50nmであった。以上により、基材7/レリーフ形成層8/不透明反射層の構成を有する表示体10を得た。
【0061】
以上のように作製した表示体10は、図1の右下方向に光源13a(図8参照)を設け、同一方向から観察を行うことにより、図2の白枠で示される画像パターン5が観察された。このとき、第1領域1および第2領域2からの直接の散乱光は観察されないため、画像パターン5のみが明瞭に確認できた。また、図3のように左上方向に光源13a(図8参照)を設け、同一方向から観察を行うと、図4の白枠で示される画像パターン5が観察された。この場合も同様に、第1領域1および第2領域2からの直接の散乱光は観察されず、画像パターン5は明瞭に確認可能であった。
【0062】
(実施例2)
図10は、本発明による他の構成例(実施例2)を示すもので、ステッカータイプの表示体を貼付した印刷物20の構成例を示す。即ち、最表面にアルミ薄膜からなるレリーフ界面3を有し、レリーフ形成層8、基材7、粘着層9の順に積層された表示体10が、印刷基材19上に貼付された印刷物20となっている。この実施例2においては、検証用フィルム21を貼付することにより画像パターン5が確認できる構成となっており、図10の状態では画像パターン5は確認できない。
【0063】
また、他の構成例として図11に示すように前記印刷物20に検証用フィルム21を貼付して構成した。この構成例においては、基材7と粘着層9とから構成された検証用フィルム21をレリーフ界面3に貼付したことにより、画像パターン5の検証が可能となる。この場合には、第二の反射界面4は、検証用フィルム21の基材7と空気の界面によりなる。
【0064】
また、印刷物20は、実施例1の表示体10の基材側表面に粘着層9を設け、オフセット印刷を行ったOCR用紙上へ貼付することで作製した。検証用フィルム21としては市販の透明粘着テープ(商品名:セロテープ(登録商標)NO.405,厚み50μm,ニチバン社製)を用いた。
【0065】
以上のように構成した印刷物20は、検証用フィルム21を貼付しない状態では第1領域1および第2領域2の直接の散乱光によるパターンのみが確認されるが、レリーフ界面3に検証用フィルム21を貼付することで、実施例1と同様の観察条件において画像パターン5が確認できた。
【0066】
このように、本発明の表示体および/または印刷物は、従来のホログラムに検証機能を付加することで、よりセキュリティ性が高く、真贋判定が容易となっており、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグ、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部として使用することが可能である。
【0067】
本発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより、種々の発明が抽出され得る。
【0068】
例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、従来のホログラムに専用の道具を用いることなく検証が可能な機能を付加するだけの簡単な構成で、よりセキュリティ性が高く、仮に偽造された場合においても真贋判定が容易な表示体、印刷物およびその検証装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…第1領域
2…第2領域
3…レリーフ界面
4…第二の反射界面
5…画像パターン
6…透明層
7…基材
8…レリーフ形成層
9…粘着層
10…表示体
11…検証装置
12…被検証領域
13…光照射手段
13a…光源
13b…拡散シート
14a…観察者の瞳
14b…窓部
15…注視点
16…注視点における被検証領域の法線
17…注視点と光照射手段または観察手段の端部とを結ぶ直線
18…インキ
19…印刷基材
20…印刷物
21…検証用フィルム
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面レリーフ型ホログラムおよび散乱構造に関するものであり、特に、ラベル・商品券・証明書として用いることが可能な、潜像となる画像パターンを有するセキュリティ媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ホログラムは、各種セキュリティ用途に多く使用されており、その形態としては、ホログラムシール、ホログラム転写箔、および、各種紙媒体に用いられるスレッドホログラムがある。
【0003】
また、従来のホログラムは、アルミ等の金属薄膜を反射層として用いることにより銀色に輝いて見えるものが一般的であるが、反射層として透明薄膜層を用いることで、被転写物の絵柄上にホログラム画像を表現することができる、透明ホログラム転写箔も知られている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−223195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記ホログラムでは、近年のカラーコピー機の複写再現精度の向上により、カラーコピー機による再現が金属光沢感を除けば可能なため、余程注意して見なければ見逃してしまう程精巧に再現が可能となっている。また、ホログラムそのものについても、その構造や層構成が簡単なものは偽造されやすくなりつつあり、偽造防止効果も薄れてきている。さらに、偽造されたホログラムの一部には、真贋判定が困難なほど精巧に模倣されたものも存在する。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解消するためになされたものであり、従来のホログラムに専用の道具を用いることなく検証が可能な機能を付加することにより、よりセキュリティ性が高く、仮に偽造された場合においても真贋判定が容易な表示体、印刷物およびその検証装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1に係わる表示体は、方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域と、前記第1領域とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域とからなるレリーフ界面を一方の面に有し、かつ、反対面に第二の反射界面を有する透明層を具備しており、予め設計された画像パターンに基づき前記第1領域および第2領域を近接して配置することにより、特定の観察条件でのみ画像パターンを再現するように構成した。
【0008】
また、請求項2に係わる表示体は、前記透明層の一部または全部が、レリーフ界面から剥離できるように構成した。
【0009】
また、請求項3に係わる表示体は、方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域と、前記第1領域とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域とからなるレリーフ界面を有し、予め設計された画像パターンに基づき前記第1領域および第2領域が近接して配置されたものであり、第二の反射界面を有する検証用フィルムを表示体の表面に貼付することにより、特定の観察条件において画像パターンが再現するように構成した。
【0010】
また、請求項4に係わる表示体は、前記レリーフ界面および前記第二の反射界面のうち、観察面から遠い界面に不透明反射層を設けて構成した。
【0011】
また、請求項5に係わる表示体は、前記レリーフ界面と前記第二の反射界面との間の厚みが50μm以上に構成した。
【0012】
また、請求項6に係わる表示体は、前記第1領域および第2領域として、複数の画素をマトリクス状に配列して構成した。
【0013】
また、請求項7に係わる表示体は、前記第1領域と第2領域の配置により、前記観察条件が互いに異なる複数の前記画像パターンを有するように構成した。
【0014】
また、請求項8に係わる印刷物は、基材と、前記基材上に形成された印刷層と、前記基材に支持された請求項1〜7の何れか1項に記載の表示体とを備えて構成した。
【0015】
また、請求項9に係わる検証装置は、被検証領域に照明光を照射する光照射手段と、前記被検証領域より得られる回折光および/または散乱光を観察する観察手段とを備え、前記光照射手段及び観察手段が、前記被検証領域の中心である注視点における被検証領域の法線から同一方向に45度以上の角度で配置された、請求項1〜8の表示体および/または印刷物を検証するように構成した。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の表示体によれば、方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域と、第1領域とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域を近接して配置することで、特定の観察条件において第1領域で回折および/または散乱した光が第二の反射界面で反射した後、第2領域で回折および/または散乱し観察可能となる。この観察可能な光は第1領域のパターンおよび第2領域のパターンのいずれとも異なる画像パターンとすることが可能であり、観察可能な位置もまた、第1領域のパターンおよび第2領域のパターンが観察可能な位置のいずれとも異なる。画像パターンは第1領域と第2領域の配置によって決定されるため、この配置を設計することで画像パターンを任意のパターンとすることが可能である。
【0017】
請求項2の表示体によれば、透明層の一部または全部が、レリーフ界面から剥離できるようにすることで、真正品かどうかの検証が可能となるようにしたものである。画像パターンは透明層の一部または全部を剥離することにより消失またはその幅が減少するが、画像パターンを例えばチェンジングホログラムにより表現した模造品においてはこの効果が見られないため、識別が可能となる。
【0018】
請求項3の表示体によれば、方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域と、第1領域とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域を近接して配置した表示体の表面に、第二の反射界面を有する検証用フィルムを貼付することにより、特定の観察条件において第1領域で回折および/または散乱した光が検証用フィルムの第二の反射界面で反射した後、第2領域で回折および/または散乱し観察可能となる。画像パターンは検証用フィルムを貼付していない状態では観察できないため、真正品かどうかの検証方法として用いることが可能である。
【0019】
請求項4の表示体によれば、レリーフ界面および第二の反射界面のうち、観察面から遠い界面に不透明反射層を設けることで、入射光の反射率を上げ、画像パターンの視認性を向上させることが可能となる。
【0020】
請求項5の表示体によれば、レリーフ界面と第二の反射界面との間の厚みを50μm以上とすることで、画像パターンの幅を、目視で十分視認可能な幅とすることができる。画像パターンの幅はレリーフ界面と第二の反射界面との間の厚みにより影響を受け、この厚さが薄いと画像パターンの幅も狭くなる。画像パターンの幅はこの要因以外にも第1領域および第2領域の配置の仕方、レリーフの形状や方向、透明層や検証フィルムの屈折率、第二の反射界面の形状によって影響を受けるが、レリーフ界面と第二の反射界面との間の厚みを50μm以上とすることで、画像パターンの幅は概ね100μm以上となり、目視での確認が容易となる。
【0021】
請求項6の表示体によれば、第1領域および第2領域として、複数の画素をマトリクス状に配列することで、画像パターンの設計を容易にしたものである。マトリクス状に配列することで、第1領域により表現される回折および/または散乱パターンとも、第2領域により表現される回折および/または散乱パターンとも異なる、いわゆる潜像を表現することが容易となり、また、配列における第1領域と第2領域の位置関係を指定することにより、画像パターンが観察可能な方向が容易に決定できる。
【0022】
請求項7の表示体によれば、第1領域と第2領域の位置関係が異なる複数の配置を行うことにより、観察条件が互いに異なる複数の画像パターンを表現することが可能となる。
【0023】
請求項8の印刷物によれば、印刷層が形成された基材に請求項1〜7の何れか1項に記載の表示体を設けることにより、偽造防止効果の高い印刷物を提供することが可能となる。
【0024】
請求項9の検証装置によれば、簡便で安価な装置構成の検証装置を用いることで、容易にかつ確実に請求項1〜8の表示体および/または印刷物の真偽判定を行うことができる。また、その装置を用いて容易にかつ確実に真偽判定を行うことができる物品を提供することができる
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施の形態に係る表示体における画像パターンの観察条件を示す構成説明図である。
【図2】図1の観察条件において観察可能な画像パターンを示す構成説明図である。
【図3】図1の画像パターンの別の観察条件を示す構成説明図である。
【図4】図3の観察条件において観察可能な画像パターンを示す構成説明図である。
【図5】図1の表示体の要部を断面して示す構成説明図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る表示体を断面して示す構成説明図である。
【図7】図1の表示体の画像パターンの幅の概念を説明するために要部を断面して示す構成説明図である。
【図8】本発明の一実施の形態に係る検証装置の要部を断面して示す構成説明図である。
【図9】本発明の他の実施の形態に係る表示体の要部を断面して示す構成説明図である。
【図10】本発明の一実施の形態に係る印刷物の要部を断面して示す構成説明図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る印刷物の要部を断面して示す構成説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態に係る表示体、印刷物、およびその検証装置について詳細に説明する。
【0027】
本発明の一実施の形態に係る表示体について図1〜図7を参照して詳細に説明する。即ち、表示体10は、方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域1と、前記第1領域1とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域2とからなるレリーフ界面3を一方の面に有する(図1〜図7参照)。この本発明による表示体10の用途としては、例えば、カード類、商品券、チケット、ラベル等に用いるのに好適するが、これに限定されるものではない。
【0028】
先ず、前記レリーフ界面3について説明する。レリーフ界面3は,樹脂、金属、ガラスなどの表面に微細な凹凸が設けられる。この微細な凹凸は、方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備え、少なくとも特定方向に揃った第1領域1と、第1領域1とは異なる方向に揃った第2領域2とからなる。
【0029】
第1領域1および第2領域2は、予め設計された画像パターン5に基づき、近接して配置され、一度第1領域1または第2領域2にて散乱または回折した光が透明層6の反対側の界面にて反射し、さらに他方の領域で散乱または回折することにより、特定の観察条件でのみ画像パターン5が再現される。画像パターン5は、絵柄を表現していることが好ましく、絵柄とは画像、図柄、数字、文字、パターンなどを指すものである。
【0030】
画像パターン5は、第1領域1と第2領域2の近接の仕方により発生するものであり、もともとの第1領域1および第2領域2のパターンと無関係なパターンとすることが可能で、潜像としての効果を持つ。第1領域1と第2領域2をそれぞれ複数の画素からなるマトリクス状に配列することで、潜像パターンを自由かつ容易に設計することができる。
【0031】
画像パターン5が確認可能な観察条件は、第1領域1と第2領域2の配置により決定し、配置の仕方により観察方向が異なる。このため、異なる観察方向においてそれぞれ異なる画像パターン5を有する表示体10を作製することも可能であり、複数の潜像パターンを持つ表示体10が作製可能である。
【0032】
ここで、図1は、図の右下方向から光を入射した時の光の進み方を示したもので、入射と同じ右下方向から観察した場合には、図2の白部分が画像パターン5として観察される。一方、図3は、図1とまったく同じ構造であるが、光を図の左下方向から入射した時の光の進み方を示したもので、左下方向から観察した場合に図4の白部分が画像パターン5として観察される。
【0033】
また、画像パターン5は、第1領域1と第2領域2が近接することにより発生するため、単にレリーフ界面3のみを表面的に観察するだけでは解析できない。特に画素をマトリクス状に配列し潜像パターンを発生させた場合、偽造はきわめて困難となる。
【0034】
微細な凹凸は、凹凸が逆の構造を持つ原版から複製することが一般的であるが、フォトリソや切削といった、光学的方法や物理的な加工によって作製しても良い。原版からの複製方法としては、熱圧によるプレス、UV樹脂の硬化、押出成形などの方法があるが、材料が金属の場合は電鋳による複製方法が用いられる。
【0035】
微細な凹凸をレリーフ界面3として機能させるために、反射層を設けても良い。反射層としては、反射透明性を有する透明薄膜層や不透明な金属薄膜層を用いることができる。適切な反射層材料の実例としては、アルミニウム、錫、硫化亜鉛、二酸化チタン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。レリーフ界面3が第二の反射界面4に対して観察者から遠い側にある場合には、散乱および/または回折の効果を高めるために不透明反射層を設けることができるが、レリーフ界面3が第二の反射界面4に対して観察者から近い側にある場合には透過性のある反射層を設ける必要がある。
【0036】
ここで、前記表示体10の一部は、第1領域1のパターンおよび第2領域2のパターンのいずれとも異なる画像パターン5を表示するために、レリーフ界面3とは別の界面を持つ透明層6を有する。透明層6は、レリーフ界面3を一方の表面に持ち、他方の表面に第二の反射界面4を持つ。一度レリーフ界面3の第1領域1または第2領域2にて散乱または回折した光が透明層6の反対側の界面にて反射し、さらに他方の領域で散乱または回折することにより、画像パターン5が再現される。レリーフ界面3と第二の反射界面4は、観察者から見てどちらが手前でもよく、同様の効果が得られる。レリーフ界面3が観察者から見て遠い側にある場合には、光が図5に示すように進み、レリーフ界面3が観察者から見て近い側にある場合には、光が図6に示すように進む。
【0037】
前記透明層6の厚みは、画像パターン5の大きさに影響を与える。透明層6がない場合には、画像パターン5は再現されず、厚くなるほど画像パターン5が再現される面積が大きくなる。第1領域1と第2領域2が隣接し、その境界線が直線状であるとき、再現される画像パターン5は直線状となり、その線幅は、レリーフの構造により異なるが、概ね透明層6の厚みの2倍程度となる。
【0038】
ここで、図7は、第1領域1と第2領域2の境界線に直交する断面を示したものであり、図のAが画像パターン5の線幅となる。透明層6の厚みは、画像パターン5の視認性を考慮し、25μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
【0039】
また、透明層6の厚みにより画像パターン5の大きさが変化するため、透明層6の厚みを局所的に変化させることにより、再現される画像パターン5の大きさを局所的に変化させることができる。厚みの差を大きくすることで、画像パターン5の幅の違いが明確に認識可能となる。
【0040】
透明層6は、レリーフ界面3から剥離可能な構成とすることで、真贋判定の手段とすることが可能である。透明層6をレリーフ界面3から剥離すると、それまで確認可能であった画像パターン5が消失するため、画像パターン5をレリーフ界面3に直接表現した模造品との識別が可能となる。ただし、透明層6は、一度剥離すると元に戻すことが出来ないため、この手段は真贋判定の最終手段となる。
【0041】
また、透明層6は、複数の層から構成されていても良く、さらには、透明層6を構成する層間で剥離可能な構成とすることも出来る。レリーフ界面3を露出させることは、偽造を行おうとする者にそのレリーフ構造をトレースさせてしまう危険性があるため好ましくない。このため、剥離をレリーフ界面3ではなく透明層6の層間とし、レリーフ界面側に残った透明層6の厚みを画像パターン5が視認できない程度まで薄くすることで、レリーフ構造をトレースされる危険なく、真贋判定手段を得ることが出来る。透明層6を複数の層から構成する場合には、各層の屈折率が近いものを選定することが好ましい。
【0042】
また、前記表示体10のうち十分な厚みを持った透明層6を持たないものは、基材7の一方の表面に粘着層9が積層された、反射界面を有する検証用フィルム21を、その表面に貼付することにより(図11参照)、第1領域1のパターンおよび第2領域2のパターンのいずれとも異なる画像パターン5が特定の観察条件において観察可能となる。検証用フィルム21にて画像パターン5を検証する表示体10は、レリーフ界面3を最表層に有していてもよい。検証用フィルム21の粘着層9を表示体表面に貼付した状態で、レリーフ界面3と第二の反射界面4が形成され、透明層6と同様の効果が生じる。レリーフ界面3と第二の反射界面4との厚みは透明層6と同様、25μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。
【0043】
この検証用フィルム21として、一般的な透明粘着テープ(例えばセロハンテープ等)を用いることも可能であり、特別な道具を用いることなく真贋判定を行うことができる。透明層6を剥離する真贋判定方法と異なり、検証用フィルム21を貼付する方法は、表示体10を破壊しないため、検証用フィルム21を剥がすことで元の状態に戻すことができる。
【0044】
また、検証用フィルム21は、粘着層9を含め複数の層から構成されていても良いが、この場合各層の屈折率が近いものを選定することが好ましい。さらに、レリーフ界面3が最表層にない表示体10の場合には、レリーフ界面3と最表層の間に存在する層についても、検証用フィルム21を構成する各層の屈折率に近いことが好ましい。また、検証用フィルム21をレリーフ界面3に直接貼付する形態の場合は、レリーフ界面3の効果が低下しないように、レリーフ界面3と粘着層9の屈折率の差が大きいことが好ましい。検証用フィルム21は、透明性を有する必要があるが、視認性を妨げない範囲で着色されていても良い。
【0045】
ここで、表示体10は、少なくとも画像パターン5を検証する際には第二の反射界面4を有する。第二の反射界面4は、表示体10の構成の一部である透明層6の界面として存在するか、検証用フィルム21の界面として存在する。第二の反射界面4の役割は、レリーフ界面3で散乱および/または回折した光を再度レリーフ界面3に入射させることにある。このため、第二の反射界面4は、可能な限り平滑であることが望ましいが、必ずしも平面に限定されるものではなく、回折格子、ブレーズド格子等を用いて反射の方向を制御することも可能である。
【0046】
第二の反射界面4は、透明層6と空気との界面または検証用フィルム21と空気との界面を用いることが最も単純な形態であるが、透明層6または検証用フィルム21に反射層を設けても良い。反射層としては、レリーフ界面3と同様透明薄膜層や金属薄膜層を用いることができる。第二の反射界面4がレリーフ界面3に対して観察者から遠い側にある場合には、散乱および/または回折の効果を高めるために不透明反射層を設けることができるが、第二の反射界面4がレリーフ界面3に対して観察者から近い側にある場合には透過性のある反射層を設ける必要がある。
【0047】
次に、本発明の一実施の形態に係る検証装置について説明する。
【0048】
図8は、検証装置を側面から見た状態を示すもので、被検証領域12に照明光を照射する光照射手段13と、被検証領域12より得られる回折光および/または散乱光を観察する、例えば窓部14bから肉眼(観察者の瞳)14aで観察する手段等の観察手段とを備えて構成される。
【0049】
即ち、光照射手段13及び観察手段は、被検証領域12の中心である注視点15における被検証領域12の法線16から、同一方向かつ45度以上の位置に配置されている。図8に示すように、注視点における法線16と注視点15と観察手段の端部(図8中では、窓部の端部)とを結ぶ直線17とのなす角θが、45度以上であることを意味する。なお、図8においては、Z方向に光照射手段13と観察手段とが順次配置されているが、この順序は逆であってもよい。
【0050】
一般的に、光照射手段13や観察手段の配置位置などの条件が適切でない場合、画像パターン5の観察は難しい。特に、光照射手段13が被検証領域12の法線16から45度未満の位置にある場合や、光照射手段13と観察手段が被検証領域12の法線16を挟んで向かい合っている場合には、第1領域1および/または第2領域2から直接射出される回折光または/および散乱光の影響により画像パターン5の目視確認は、非常に困難である。しかし、本発明の検証装置においては、光照射手段13及び観察手段が、被検証領域12の中心である注視点15における被検証領域12の法線16から45度以上の同じ側に配置されているため、画像パターン5を確実に観察することができる。このとき、第1領域1および第2領域2から直接射出される回折光または/および散乱光は観察されず、真偽判定を容易にかつ確実に行うことができる。
【0051】
検証方法としては、表示体10および/または印刷物20(図10参照)において被検証領域12の位置や角度を予め決めておき、指定した位置や角度にセットすることで、容易かつ確実に画像パターン5を観察することができる。
【0052】
前記光照射手段13は、被検証領域12に照明光を照射する機能を有するものである。光源13aと拡散シート13bとを離間して配置したものを用いることができるが、これに限定されるものではない。このような光照射手段13を用いることで、拡散シート13bによって光照射手段13の長さを容易に設定できると共に均一な照明光を作りやすく、検証装置を極めてコンパクト化、安価化、軽量化することができる。
【0053】
また、光照射手段13から照射する照明光は、拡散光であることが好ましい。拡散光を用いることにより、被検証領域12が大きいサイズの場合でも、被検証領域全体に均一に光を照射することができ、画像パターン5が安定して観察できる。また、拡散シート13bとしては、光を透過し、透過した光を拡散させることができるものであればよく、特に限定されるものではない。
【0054】
前記光源13aとしては、単色LEDやLDなどの可視光の単色光源や、白色蛍光ランプ、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、白色無電極ランプ、白色LED、白色ELなどの白色光源を挙げることができる。可視光の単色光源とは、可視光領域におけるただ一種類の波長あるいは十分に狭い波長帯域の光を照射する光源であり、白色光源とは、スペクトル分布が可視光領域にほぼ全体に広がっており、肉眼で白色に見ることができる光源である。
【0055】
前記観察手段は、被検証領域12より得られる回折光を観察するものであり、図8に示すように、検証装置内部を覗き込める窓部14bから肉眼14aで観察するものであってもよく、図8には図示していないが、検証装置の窓部14bに設置したCCDやCMOSなどのイメージセンサで撮像するものであってもよいが、これに限定されるものではない。ここで、窓部14bを設けることは、周囲に遮光部を設けることでもあり、太陽光や室内照明など、観察条件を変動させる外光を遮断する効果もあり、一層安定した、確実な検証を行うことができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明の表示体の実施例について詳細に説明する。
【0057】
(実施例1)
図9は、本発明による構成例を示すもので、透明層6は、基材7とレリーフ形成層8とから構成されている。この実施例では、レリーフ界面3上に不透明反射層としてアルミ蒸着を設けている。そして、第二の反射界面4は、基材7と空気の界面によりなるものである。
【0058】
この基材7に形成される第1領域1と第2領域2は、図1に示すようにマトリクス状に隣接して配置される。第1領域1は、方向の揃った複数の直線状の凸部および凹部からなる光散乱構造であり、指向性を有する散乱構造である。第2領域2は、第1領域1の構造の向きと直交する方向に揃った複数の直線状の凸部および凹部からなる光散乱構造であり、第1領域1と同様、指向性を有する散乱構造である。
【0059】
ここで、実施例1では、基材7として厚み50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名E5100,東洋紡績社製)を用い、コロナ処理が施された面上にレリーフ形成層8をグラビアコーティングにより設けた。オーブンでの乾燥後、レリーフ形成層8の膜厚は2μmであった。
【0060】
形成したいレリーフ構造とは、凹凸が逆の構造を持つ原版を用い、ロールエンボス装置にて熱プレスを行い、レリーフ形成層8にレリーフ構造を成形した。レリーフ形成層8上にアルミ蒸着を行い、不透明反射層を設けた。アルミ蒸着の膜厚は50nmであった。以上により、基材7/レリーフ形成層8/不透明反射層の構成を有する表示体10を得た。
【0061】
以上のように作製した表示体10は、図1の右下方向に光源13a(図8参照)を設け、同一方向から観察を行うことにより、図2の白枠で示される画像パターン5が観察された。このとき、第1領域1および第2領域2からの直接の散乱光は観察されないため、画像パターン5のみが明瞭に確認できた。また、図3のように左上方向に光源13a(図8参照)を設け、同一方向から観察を行うと、図4の白枠で示される画像パターン5が観察された。この場合も同様に、第1領域1および第2領域2からの直接の散乱光は観察されず、画像パターン5は明瞭に確認可能であった。
【0062】
(実施例2)
図10は、本発明による他の構成例(実施例2)を示すもので、ステッカータイプの表示体を貼付した印刷物20の構成例を示す。即ち、最表面にアルミ薄膜からなるレリーフ界面3を有し、レリーフ形成層8、基材7、粘着層9の順に積層された表示体10が、印刷基材19上に貼付された印刷物20となっている。この実施例2においては、検証用フィルム21を貼付することにより画像パターン5が確認できる構成となっており、図10の状態では画像パターン5は確認できない。
【0063】
また、他の構成例として図11に示すように前記印刷物20に検証用フィルム21を貼付して構成した。この構成例においては、基材7と粘着層9とから構成された検証用フィルム21をレリーフ界面3に貼付したことにより、画像パターン5の検証が可能となる。この場合には、第二の反射界面4は、検証用フィルム21の基材7と空気の界面によりなる。
【0064】
また、印刷物20は、実施例1の表示体10の基材側表面に粘着層9を設け、オフセット印刷を行ったOCR用紙上へ貼付することで作製した。検証用フィルム21としては市販の透明粘着テープ(商品名:セロテープ(登録商標)NO.405,厚み50μm,ニチバン社製)を用いた。
【0065】
以上のように構成した印刷物20は、検証用フィルム21を貼付しない状態では第1領域1および第2領域2の直接の散乱光によるパターンのみが確認されるが、レリーフ界面3に検証用フィルム21を貼付することで、実施例1と同様の観察条件において画像パターン5が確認できた。
【0066】
このように、本発明の表示体および/または印刷物は、従来のホログラムに検証機能を付加することで、よりセキュリティ性が高く、真贋判定が容易となっており、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグ、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部として使用することが可能である。
【0067】
本発明は、上記実施の形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記実施形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより、種々の発明が抽出され得る。
【0068】
例えば実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明によれば、従来のホログラムに専用の道具を用いることなく検証が可能な機能を付加するだけの簡単な構成で、よりセキュリティ性が高く、仮に偽造された場合においても真贋判定が容易な表示体、印刷物およびその検証装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…第1領域
2…第2領域
3…レリーフ界面
4…第二の反射界面
5…画像パターン
6…透明層
7…基材
8…レリーフ形成層
9…粘着層
10…表示体
11…検証装置
12…被検証領域
13…光照射手段
13a…光源
13b…拡散シート
14a…観察者の瞳
14b…窓部
15…注視点
16…注視点における被検証領域の法線
17…注視点と光照射手段または観察手段の端部とを結ぶ直線
18…インキ
19…印刷基材
20…印刷物
21…検証用フィルム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域と、前記第1領域とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域とからなるレリーフ界面を一方の面に有し、かつ、反対面に第二の反射界面を有する透明層を具備する表示体であって、
予め設計された画像パターンに基づき前記第1領域および第2領域を近接して配置することにより、特定の観察条件でのみ前記画像パターンが再現されることを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記透明層の一部または全部が、レリーフ界面から剥離可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域と、前記第1領域とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域とからなるレリーフ界面を有し、予め設計された画像パターンに基づき前記第1領域および第2領域が近接して配置された表示体であって、
一方の表面に粘着層が積層され、第二の反射界面を有する検証用フィルムを、前記表示体の表面に貼付することにより、特定の観察条件において画像パターンが再現されることを特徴とする表示体。
【請求項4】
前記レリーフ界面および前記第二の反射界面のうち、観察面から遠い界面に不透明反射層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表示体。
【請求項5】
前記レリーフ界面と第二の反射界面との間の厚みが50μm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表示体。
【請求項6】
前記第1領域および第2領域は、複数の画素をマトリクス状に配列してなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示体。
【請求項7】
前記観察条件が互いに異なる複数の前記画像パターンを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表示体。
【請求項8】
基材と、前記基材上に形成された印刷層と、前記基材に支持された請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体とを具備したことを特徴とする印刷物。
【請求項9】
請求項1乃至8の表示体および/または印刷物を検証するための検証装置であって、
被検証領域に照明光を照射する光照射手段と、前記被検証領域より得られる回折光および/または散乱光を観察する観察手段とを備え、前記光照射手段及び観察手段が、前記被検証領域の中心である注視点における被検証領域の法線から同一方向に45度以上の角度で配置されていることを特徴とする検証装置。
【請求項1】
方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域と、前記第1領域とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域とからなるレリーフ界面を一方の面に有し、かつ、反対面に第二の反射界面を有する透明層を具備する表示体であって、
予め設計された画像パターンに基づき前記第1領域および第2領域を近接して配置することにより、特定の観察条件でのみ前記画像パターンが再現されることを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記透明層の一部または全部が、レリーフ界面から剥離可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
方向の揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第1領域と、前記第1領域とは異なる方向に揃った複数の直線状の凸部および/または凹部からなる光散乱構造および/または回折構造を備えた反射界面を持つ第2領域とからなるレリーフ界面を有し、予め設計された画像パターンに基づき前記第1領域および第2領域が近接して配置された表示体であって、
一方の表面に粘着層が積層され、第二の反射界面を有する検証用フィルムを、前記表示体の表面に貼付することにより、特定の観察条件において画像パターンが再現されることを特徴とする表示体。
【請求項4】
前記レリーフ界面および前記第二の反射界面のうち、観察面から遠い界面に不透明反射層が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表示体。
【請求項5】
前記レリーフ界面と第二の反射界面との間の厚みが50μm以上であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表示体。
【請求項6】
前記第1領域および第2領域は、複数の画素をマトリクス状に配列してなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示体。
【請求項7】
前記観察条件が互いに異なる複数の前記画像パターンを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表示体。
【請求項8】
基材と、前記基材上に形成された印刷層と、前記基材に支持された請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体とを具備したことを特徴とする印刷物。
【請求項9】
請求項1乃至8の表示体および/または印刷物を検証するための検証装置であって、
被検証領域に照明光を照射する光照射手段と、前記被検証領域より得られる回折光および/または散乱光を観察する観察手段とを備え、前記光照射手段及び観察手段が、前記被検証領域の中心である注視点における被検証領域の法線から同一方向に45度以上の角度で配置されていることを特徴とする検証装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−173535(P2012−173535A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−35933(P2011−35933)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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