表示体、表示体付きラベルおよびラベル付き物品
【課題】見る角度によって絵柄や文字が変化する表示体において、優れた装飾効果/又は美的効果、偽造防止効果を、印刷層を用いないで達成可能とすることにある。
【解決手段】上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、二次元的に単位レンズを配列したレンズシートと表示シートが重ね合わされ、観察角度により柄が変化して見える表示体において、前記表示シートは、凹凸構造層と、その上に反射層があり、接着層により前記レンズシートと接着しており、前記単位画素は、単位レンズに対応し、かつ凹凸パターンからなる第1領域及び/あるいは、前記第1領域とは異なる凹凸パターンからなる第2領域を含む。
【解決手段】上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、二次元的に単位レンズを配列したレンズシートと表示シートが重ね合わされ、観察角度により柄が変化して見える表示体において、前記表示シートは、凹凸構造層と、その上に反射層があり、接着層により前記レンズシートと接着しており、前記単位画素は、単位レンズに対応し、かつ凹凸パターンからなる第1領域及び/あるいは、前記第1領域とは異なる凹凸パターンからなる第2領域を含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、見る角度によって絵柄や文字が変化する表示体と、その表示体によって装飾効果/又は美的効果、偽造防止効果を持たせる表示体付きラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平面の画像に動作変化を与える表示体の技法として、あらかじめ複数の像を縦方向または横方向に多数の線状帯に分け、これら異なる画像の線状帯を順次に並べて1枚に印刷し、その上に線状帯のピッチと方向に合わせたかまぼこ状の微細レンズの集合体からなるレンチキュラースクリーンを張り付け、レンチキュラースクリーンのレンズ作用により、複数の画像を重ね合わせ普通の視角距離で結合して店、画面を傾けることにより、画像の変化を与える方法が採られている(特許文献1、2)。
【0003】
上記の技法はかなり昔から多くの分野で利用されており、レンチキュラースクリーンのレンズを用い、色模様や異なった複数の画像を印刷インキ層により提供している。それなりに優れた装飾効果を持つが、これらの表示体は今や一般的になりすぎており、これ以上の装飾効果を持つものや、独自の画像変化を与える技法の提案が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−55149号公報
【特許文献2】特開平8−234335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、見る角度によって絵柄や文字が変化する表示体において、優れた装飾効果/又は美的効果、偽造防止効果を、印刷インキ層を用いることなく、達成可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、表示シートの上に多数の単位レンズを配列して構成される表示体であって、表示シートの表面は前記単位レンズに対応して多数の単位画素に区分されており、これら多数の単位画素は、そのそれぞれの表面に凹凸パターンが設けられており、これら多数の単位画素は、その表面に設けられた凹凸パターンの種類によって少なくとも2種類の単位画素に分類することができ、少なくとも2種類のこれら単位画素から射出する可視光を、多数の前記単位レンズを通して射出することにより画像を表示することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、多数の前記単位画素のうち少なくとも1種類の単位画素が、その表面を複数の領域に区分されており、これら複数の領域は凹凸パターンの種類によって区分されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、多数の前記単位画素のうち少なくとも2種類の単位画素が、その表面を複数領域に区分され、かつ、これら複数領域のうち少なくとも1つの領域に凹凸パターンが設けられており、これら少なくとも2種類の単位画素の間では前記複数領域の各領域の面積が同一であり、しかも、これら少なくとも2種類の単位画素の間で互いに対応する領域に、互いに異なる凹凸パターンが設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、前記凹凸パターンが、この凹凸パターンに入射した可視光を回折もしくは散乱させて射出するか、又は入射した可視光を吸収するパターンであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、前記凹凸パターンのピッチが50nm以上2μm以下であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、多数の前記単位レンズが、表示シートの凹凸パターンを有する表面上に配列していることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、多数の前記単位レンズが、表示シートの凹凸パターンを有する表面とは反対側に配列していることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に記載の発明は、多数の前記単位レンズが透明基材上に設けられており、この透明基材が前記表示シートの上に配置されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に記載の発明は、前記透明基材を前記表示シートに向けて配置していることを特徴とする。
【0015】
また、請求項10に記載の発明は、前記単位レンズを前記表示シートに向けて配置していることを特徴とする。
【0016】
また、請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の表示体の表示シート側に粘着層が設けられ、さらに粘着層面に剥離紙が積層されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項12に記載の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の表示体と、これを支持した物品とを含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、優れた装飾効果および偽造防止効果を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一態様に係る表示体を示す斜視図
【図2】図1に示す表示体を概略的に示す平面図
【図3】図1に示す表示体のIV−IV線に沿った断面図
【図4】図1に示す表示体の一例を概略的に示す分解平面図。
【図5】図4に示す表示体が表示する像の一例を概略的に示す平面図
【図6】図4に示す表示体が表示する像の他の例を概略的に示す平面図
【図7】レンズシートを省略した場合に図1に示す表示体の他の一例を概略的に示す平面図
【図8】図7に示す表示体が表示する像の一例を概略的に示す平面図
【図9】図7に示す表示体が表示する像の他の例を概略的に示す平面図
【図10】変形例に係る表示体を概略的に示す断面図
【図11】変形例に係る表示体を概略的に示す断面図
【図12】変形例に係る表示体を概略的に示す断面図
【図13】変形例に係る表示体を概略的に示す断面図
【図14】変形例に係る表示体を概略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。なお、すべての図面を通じて同様または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る表示体を示す斜視図である。図2は、図1に示す表示体を概略的に示す平面図である。図3は、図2に示す表示体のIV−IV線に沿った断面図である。図4は、図1に示す表示体の一例を概略的に示す分解平面図である。
【0022】
図1及び図3に示すように、表示体10は表示シート11とレンズシート12とを含んでいる。表示シート11とレンズシート12とは、図1及び図3に示すように、接着層13を介して張り合わされている。この表示体10の表面側はレンズシート12側であり、背面側は表示シート11側である。
【0023】
表示シート11は、図3に示すように、基材111と表面に反射層14を持つ凹凸構造層112との積層体を含んでいる。表示シート11は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0024】
基材111は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネート(PC)などの樹脂からなるフィルムまたはシートである。基材111の材料として、ガラスなどの無機材料を使用してもよい。基材111は、透明であってもよく、不透明であってもよい。
【0025】
基材111は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材111には、反射防止処理、低反射防止処理、ハードコート処理、帯電防止処理及び防汚処理などの処理を施してもよい。基材111は省略することができる。
【0026】
凹凸構造層112は、基材111上に形成されており、凹凸構造層112は、透明であってもよく不透明であっても良い。
【0027】
表示シート11の片面には、凹凸構造層112が形成されており、複数の単位画素に対応する。図3及び図4において、単位画素境界BLを破線で表示している。
【0028】
一例を図4に示すが、表示体10は、4種の単位画素PX1、PX2、PX3、PX4を配列させて成る。これら単位画素PXは、例えば、正方格子、矩形格子及び三角格子などの格子状にあるいはハニカム状配列させることができる。ここでは、一例として、単位領域はほぼ正方格子状に配列していることとする。
【0029】
各単位画素には、図3に示す凹凸パターンDP1及び/又はDP2が設けられている。DP1及びDP2の各凹凸構造は、その高さ、ピッチ、形状のいずれか一つ以上が互いに異なることとする。また、凹凸パターンDP1及びDP2は、可視光を回折、または散乱、または吸収する構造により形成されている。
【0030】
凹凸構造層112は、例えば、表面レリーフ型ホログラムの製造で使用されている、微細な凸部及び/また凹部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、凹凸構造層112は、基材111上に形成された熱可塑性樹脂層に、凸部及び/又は凹部が設けられた金型を、熱を印加しながら押し当てる方法、すなわち、熱エンボス加工法により得られる。
【0031】
あるいは、凹凸構造層112は、基材111上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに金型を押し当てながら基材111側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後
、金型を取り除く方法により形成することも可能である。
【0032】
この金型は、例えば、電子描画装置を用いて製造することができる。まず、レジスト層への電子描画によって樹脂からなる凹凸パターンを含んだ原版を得る。引き続き電鋳によって、原版に設けられた凹凸パターンを含んだ金型を得る。その後、この金型のパターンを熱可塑性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂層に転写して複数の版を製造し、これら版から電鋳によって複数の金型を製造する。このようにして得られた金型の凹凸パターンを樹脂層に転写することにより、表示シート11上の複数の凹凸パターンDPを持つ凹凸構造層112を得ることができる。
【0033】
凹凸構造層112の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂及びアクリル系/スチレン系共重合樹脂などの熱可塑性樹脂材料又は紫外線硬化樹脂を使用することができ、さらには、熱可塑性樹脂材料又は紫外線硬化樹脂を使用する代わりに、珪酸塩を含んだ無機系材料を使用しても良い。
【0034】
表示シート11の凹凸パターンDPが設けられた面は、図3に示すように反射層14で被覆されている。反射層14は、例えば、凹凸パターンDPの回折効率を高める。反射層14は、パターニングされていてもよい。例えば、凹凸パターンのDP1あるいはDP2のみを被覆していてもよい。反射層14は省略することができる。
【0035】
反射層14は、金属や金属の酸化物、硫化物またはフッ化物からなり、金属層の材料としては、アルミニウム、銀、スズ、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト若しくはこれらを含む合金を使用することができ、金属の酸化物、硫化物、フッ化物としては、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、二酸化珪素、フッ化カルシウム、フッ化セリウム、フッ化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ジルコニウム、フッ化マグネシウム、二酸化チタンフッ化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化錫およびその組合せた積層体を使用することができる。反射層14は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法などの気相堆積法により形成することができる。反射層14を気相堆積法により形成する場合、その厚さは30〜100nmで十分である。
【0036】
反射層14として、金属の酸化物、硫化物、フッ化物を使用した場合、肉眼で表示体10を観察したときに表示体10の背面側にある物体を視認できる可能性がある。反射層14として金属酸化物の多層構造の透明反射膜を使用した場合には、表示体10に波長選択性を与えることができる。したがって、反射層14として金属の酸化物、硫化物、フッ化物の単層の誘電体膜を使用した場合とは異なる視覚効果を得ることができる。金属の酸化物、硫化物、フッ化物は、基材11上に、例えば、硫化亜鉛などの高屈折率材料とフッ化マグネシウムなどの低屈折率の材料とを交互に蒸着することによって得られる。
【0037】
レンズシート12は、図1、図3及び図4に示すように、透明基材121と、複数のレンズ122とを含んでいる。
【0038】
透明基材121は、例えばPET及びPCなどの樹脂からなるフィルム又はシートである。基材121の材料として、ガラスなどの無機材料を使用してもよい。透明基材121は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材121には、反射防止処理、低反射防止処理、ハードコート処理、帯電防止処理及び防汚処理などの処理を施してもよい。基材121は、省略することができる。
【0039】
レンズ122は、透明基材121の一方の主面上で前記単位画素と同じ配列で規則的に配列している。レンズ122は、前記単位画素と同じく、例えば、正方格子、矩形格子及び三角格子などの格子状にあるいはハニカム状配列させることができる。ここでは、レン
ズ122は、前記単位画素に対応させてほぼ正方格子状に配列していることとする。
【0040】
レンズ122は、例えば球面レンズである。レンズ122は、非球面レンズであってもよい。なお、球面レンズは、球面の一部分からなる面を持つレンズである。非球面レンズは、形状を若干ずらした球面の一部分からなる面を持つレンズである。錐体レンズは、Z方向に平行な断面が三角形状のレンズである。
【0041】
レンズシート12は、例えば、複数の凹部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、レンズシート12は、基材121上に形成された熱可塑性樹脂層に、レンズ122に対応した形状の凹部が設けられた金型を、熱を印加しながら押し当てる方法、すなわち、熱エンボス加工法により得られる。あるいは、レンズシート12は、基材121上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに金型を押し当てながら基材121側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、金型を取り除く方法により形成することも可能である。またレンズシートには、凹凸構造層112と同時に形成することもできる。
【0042】
レンズシート12の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂及びアクリル系/スチレン系共重合樹脂等の熱可塑性樹脂材料又は紫外線硬化樹脂を使用することができる。レンズシート12の材料として、樹脂を使用する代わりに、珪酸塩を含んだ無機系材料を使用してもよい。レンズシート12の材料は、凹凸構造層112の材料と比較して粘性が高くても構わない。
【0043】
接着剤層13は、省略することが可能であり、表示シート11とレンズシート12とは、固定具を用いて一体化してもよい。なお、接着剤層13を省略した場合、表示シート11とレンズシート12との間に空気層が生じるため、凹凸パターンDP1及び/あるいは凹凸パターンDP2に回折格子を用いた場合、反射層14を省略しても高い回折効率を容易に達成できる。
【0044】
この表示体10では、表示する像情報に基づき、凹凸パターンDP1よりなる第1領域S1と、凹凸パターンDP2よりなる第2領域S2を、図2に示すように単位画素PX毎に配置し、レンズ122を、単位画素の配列と同じ周期で規則的に配置している。
【0045】
そして、単位画素の配列とレンズ122の配列との方位を正確に合わせる。この時第1領域S1が必ずしもレンズの中心にくる必要はないが、S1及びS2は同様に同一のピッチで中心からずれている必要はある。
【0046】
このように、単位画素の配列とレンズ122の配列とを正確に合わせて重ねると、凹凸パターンDP1よりなる第1領域S1と、凹凸パターンDP2よりなる第2領域S2それぞれの像が合成され表示される。
【0047】
図5は、図4に示す表示体が表示する像の一例を概略的に示す平面図である。図6は、図4に示す表示体が表示する像の他の一例を概略的に示す平面図である。
【0048】
表示体10は、図4において4種の単位画素PX1、PX2、PX3、PX4より成る。図4の単位画素PX1は、例えば、単位画素の真ん中の領域を凹凸パターンDP1にて占め、単位画素PX中の凹凸パターンDP1以外の部分を凹凸パターンDP2にて構成したもので、凹凸パターンDP1とDP2の面積はほぼ一定となっている。
【0049】
また、単位画素PX2は、2つの領域の形状および配置がPX1と同じであり、凹凸パターンDP1と凹凸パターンDP2を入れ替えただけの構成となっている。さらに単位画
素PX3は、凹凸パターンDP1のみで画素全面が構成されており、単位画素PX4は、凹凸パターンDP2のみで画素全面が構成されている。
【0050】
表示体10は、図2を参照しながら説明したように単位画素PXの配列とレンズ122の配列とを正確に重ね合わせると、凹凸パターンDP1及び/あるいは凹凸パターンDP2それぞれの像が合成され表示される。
【0051】
図4において実施形態の一例を説明する。凹凸パターンDP1は光を吸収する構造で、凹凸パターンDP2は光を散乱する構造である。光を吸収する構造を持つ凹凸パターンDP1は、黒ないしは灰色を呈して見える。一方、光を散乱する構造を持つ凹凸パターンDP2は、白ないしは明度の高い無彩色を呈して見える。よって表示体10を真上(正面方向)から観察すると、単位画素PXの中央に位置する凹凸パターンDP1及び/あるいは凹凸パターンDP2によって、表示体10は図5に示すような合成像1G1として見える。
【0052】
また、図4の表示体を左右あるいは上下方向に傾けて観察した場合、単位画素PXの側面に位置する凹凸パターンDP1及び/あるいは凹凸パターンDP2によって、表示体10は図6に示すような合成像2G2として見える。
【0053】
図4において、表示体10からレンズシート12を省略した場合、凹凸パターンDP1及びDP2によって表示される合成像G1およびG2は知覚されない。また、凹凸パターンDP1及びDP2の領域はそれぞれ数十μ平方程度の大きさであるため、肉眼による観察では凹凸パターンDP1よりなる第1領域S1と凹凸パターンDP2よりなる第2領域S2の配列を知覚することができない。
【0054】
また、第1画素PX1及び第2画素PX2において凹凸パターンDP1及びDP2の領域をほぼ同面積とした場合、肉眼による観察では、第1画素PX1と第2画素PX2はどちらも凹凸パターンDP1及び凹凸パターンDP2の混色として知覚され、種類の違う2つの凹凸パターンが配列されていることを悟られにくくする。これにより、偽造防止効果を達成することが可能となる。
【0055】
図7は、レンズシート12を省略した場合に図1に示す表示体10の他の一例を概略的に示す平面図である。図8は、図7に示す表示体10が表示する像の一例を概略的に示す平面図であり、図9は、図7に示す表示体10が表示する像の他の例を概略的に示す平面図である。
【0056】
表示体10は、図7において4種の第1画素PX1、第2位画素PX2、第3画素PX3、第4画素PX4より成る。図7の第1画素PX1において、凹凸パターンDP1にて第1画素PX1の中央部を、凹凸パターンDP2にて第1画素PX1の側面部を構成しており、第2画素PX2においては凹凸パターンDP1及び凹凸パターンDP2とは異なる周期的な凹凸構造を持つ凹凸パターンDP3にて第2画素PX2の中央部を、凹凸パターンDP1にて第2画素PX2の側面部を構成している。
【0057】
さらに、第3画素PX3においては凹凸パターンDP3にて第三画素PX3の中央部を、凹凸パターンDP2にて第3画素PX3の側面部を構成しており、第4画素PX4においては、凹凸パターンDP4のみで単位画素全体を構成している。
【0058】
表示体10は、単位画素PXの配列とレンズ122の配列とを正確に重ね合わせると、凹凸パターンDP1及び/あるいは凹凸パターンDP2及び/あるいは凹凸パターンDP3が表示する像を合成してなる合成像G3あるいは合成像G4が表示される。
【0059】
図7において、第1画素PX1の中央部及び第2画素PX2の側面部は、例えば、光を散乱する構造を持つ凹凸パターンDP1によって構成されており、第1画素PX1の側面部及び第3画素PX3の側面部は、例えば、光を回折する構造を持つ凹凸パターンDP2によって構成されている。
【0060】
また第2画素PX2の中央部及び第3画素PX3の中央部は、例えば、光を吸収する構造を持つ凹凸パターンDP3によって構成されている。光を吸収する構造を持つ凹凸パターンDP3は、例えば、黒ないしは灰色を呈して見える。また光を散乱する構造を持つ凹凸パターンDP1は、白ないしは明度の高い無彩色を呈して見える。このとき表示体10を正面方向から観察すると、図8に示すように、黒ないしは灰色を呈した「B」という合成像G3を見ることができる。
【0061】
また表示体10は、上下もしくは左右に傾けることで、第1画素PX1、第2画素PX2及び第3画素PX3中の各側面部が知覚され、複数の単位画素PXからなる側面部の像を合成して、図9に示すような合成像G4として見える。
【0062】
表示体10は、図8を参照しながら説明したときと同様に、第1画素PX1の中央部及び第2画素PX2の側面部は、例えば、光を散乱する構造を持つ凹凸パターンDP1によって構成されており、第1画素PX1の側面部及び第3画素PX3の側面部は、例えば、光を回折する構造を持つ凹凸パターンDP3によって構成されており、第2画素PX2の中央部及び第3画素PX3の中央部は、例えば、光を吸収する構造を持つ凹凸パターンDP3によって構成されている。光を散乱する構造を持つ凹凸パターンDP1は、例えば、白ないしは明度の高い無彩色を呈する。
【0063】
また、光を回折する構造を持つ凹凸パターンDP2は、例えば任意の角度で可視光域の光を射出する、あるいは、その構造自体が着色を呈する。そのため、傾けて観察した表示体10は図9に示すように、可視光域で着色した「A」という合成像G4として見える。
【0064】
このように、表示体10で用いる凹凸パターンを3種にすることで、表示体10をより複雑にすることができ、よって、より一層優れた偽造防止効果を達成することができる。また、表示体10で用いる凹凸パターンを3種にすることで、正面から観察した場合と傾けて観察した場合の双方で知覚すべき第3画素PX3を設けることができるため、チェインジングのデザイン設計での自由度が増し、より一層優れた装飾効果を達成することが可能となる。
また、表示体10で用いる凹凸パターンにおいて、光を回折する構造を持つ凹凸パターンDPを用いた場合、正面もしくは傾けたときに回折光が射出され、パターン部及び/あるいは背景部が色チェンジして知覚される。これは印刷では不可能な表現であり、これによって偽造防止効果および装飾効果を高めることが可能となる。
【0065】
この表示体10では、単位画素PXにおける凹凸パターンDP1と凹凸パターンDP2の面積はほぼ一定であり、典型的には、単位画素の40〜60%の面積をどちらかの凹凸パターンが占め、残りを他方の凹凸パターンが占めることとする。
【0066】
図10から図14は、変形例に係る表示体の概略断面図である。
【0067】
図10に示す表示体10は、基材111がレンズシート12と向き合うように表示シート11をレンズシート12に張り合わせていること以外は、図3に示す表示体10と同様の構造を有している。この構造では、平坦面同士を接着しているため、貼り合わせが容易である。また、この表示体10から接着層13を省略した構造は、レンズシート12との
摩擦によって凹凸パターンDPまたは反射層14からの損傷を受けることがない。
【0068】
図11に示す表示体10は、レンズ122が表示シート11と向き合うようにレンズシート12を表示シート11に貼り合わせていること以外は、図3に示す表示体10と同様の構造を有している。この構造では、基材111及び121を最外層としているので、それらの間に介在したレンズ122等の部材の損傷を生じ難い。
【0069】
図12に示す表示体10は、レンズ122が表示シート11と向き合うようにレンズシート12を表示シート11に貼り合わせていること以外は、図10に示す表示体10と同様の構造を有している。この構造では、レンズ122の損傷を生じ難い。また、この表示体10から接着剤層13を省略した構造は、レンズシート12との摩擦によって凹凸パターンDPまたは反射層14が損傷を受けることがない。
【0070】
図13に示す表示体10は、基材121及び接着剤層13を省略したこと以外は、図3に示す表示体10と同様の構造を有している。すなわち、この表示体10では、反射層14の上にレンズ122が形成されている。この表示体10は、図3に示す表示体10と比較して部品点数が少ないため、より少ない工程数で製造することができる。また、この表示体10は、図3に示す表示体10と比較して、より薄く形成できる。
【0071】
図14に示す表示体10は、基材121及び接着剤層13を省略したこと以外は、図10に示す表示体10と同様の構造を有している。すなわち、この表示体10では、基材111上にレンズ122が形成されている。この表示体10は、図10に示す表示体10と比較して部品点数が少ないため、より少ない工程数で製造することができる。また、この表示体10は、図10に示す表示体10と比較してより薄く形成できる。
【0072】
上述した表示体10は、レンズ122の形状を工夫したりすることで視覚効果を変化させることができる。
【0073】
表示体10は、例えば、偽造または不正使用等が制御されるべき物品に使用される。例えば、この表示体10とこれを支持した物品とを含んだラベル付き物品を真正品とした場合、真正であるか否かが未知の物品が、上述した絵柄、文字、色等のチェインジング効果を示さないときには、その物品は非真正品であると判断することができる。特に、回折光による色チェンジは、非真正品との差別化に有効である。したがって、例えば、有価証券、銀行オ権、身分証明書などの証明書、及びクレジットカードなどの印刷物や美術品及び工芸品などの高級品の偽造を防止または抑制することができる。
【0074】
なお、表示体10をラベルとして利用する場合、表示体10は物品に様々な方法で支持させることができる。例えば、表示体10に粘着剤層を設け、この粘着剤層を介して表示体10を物品に貼り付けてもよい。あるいは、表示体10と熱可塑性樹脂からなる接着層とを含んだ転写箔を製造し、熱及び圧力を利用した転写により、表示体10を物品に貼り付けてもよい。あるいは、表示体10を含んだタグを製造し、これを紐及び鎖などの取付具を介して物品に支持させてもよい。あるいは、表示体10を含んだ包装材料を製造し、この包装材料で物品を包装してもよい。
【0075】
この表示体10は、偽造防止以外の目的で使用することも可能である。例えば玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。すなわち、これら表示体10は、偽造防止効果、装飾効果及び/又は美的効果を提供する。
【実施例】
【0076】
本例では、接着剤層13を省略したこと以外は図1〜図3を参照した説明と同様の構造
を有する表示体10を製造した。
【0077】
具体的には、表示シート11は、以下の方法により作製した。まず、電子描画装置を用いて樹脂からなる原版を製造し、電鋳によりこの原版から金型を製造した。次に、この金型に紫外線硬化樹脂としてアクリル系樹脂を注入し、この樹脂層と厚さが50μmのPETフィルム111とをラミネートした。PETフィルム111側から紫外線を照射して樹脂を効果させ、その後、PETフィルムからなる基材111を硬化させた樹脂層と共に金型から剥離した。これにより、PETフィルムからなる基材111と凹凸構造層112とを含んだ表示シート11を得た。
【0078】
なお、金型は、凹凸構造層112の表面のうち、一辺が4mmの正方形の領域を2つ隣り合わせたものを設計した。隣り合った4mm四方の正方形のうち一方では、凹凸パターンDP1が50μm角の正方形状を有し、100μmピッチで正方格子状に配列するように設計した。凹凸パターンDP1の凹凸部の深さは400nmとし、凸部の中心間距離は150nmとした。この片方の4mm四方の正方形からなる領域内で、凹凸パターンDP1以外の部分はすべて凹凸パターンDP2を配置した。凹凸パターンDP2は光散乱パターンであり、この光散乱パターンは、基材表面に形成する微細な凹部又は凸部を設けて光散乱体を構成する最小単位となる光散乱要素とし、この光散乱要素を複数配置して構成されたものである。
【0079】
また、隣り合った4mm四方の正方形のうち、上記とは別のもう片方では、凹凸パターンDP2が50μm角の正方形状を有し、100μmピッチで正方格子状に配列するように設計した。凹凸パターンDP2は上記と同様に構成された光散乱パターンである。この正方形の領域内で、凹凸パターンDP2以外の部分はすべて凹凸パターンDP1を配置した。凹凸パターンDP1は上記と同様で凹凸部の深さは400nmとし、凸部の中心間距離は150nmである。
【0080】
ここでは金型に剥離処理は施さなかった。そして、ラミネート圧は、凹凸構造層112の厚さが約15μmとなるように軽めに設定した。この金型と凹凸構造層112とを調べたところ、成形時の剥離ムラはなく、凹凸構造層112を金型から綺麗に剥離することができる。
【0081】
凹凸構造層112上には、蒸着法によりアルミニウムからなる反射層14を形成した。このとき、反射層14は40から60nmの厚みとした。
【0082】
レンズシート12は、以下の方法により作製した。まず、金型に紫外線硬化樹脂としてアクリル系/スチレン系共重合樹脂を注入し、この樹脂層と厚さが75μmのPETフィルム121とをラミネートした。PETフィルムからなる基材121側から紫外線を照射して樹脂を硬化させ、その後、PETフィルム121を硬化形成した樹脂と共に金型から剥離した。これにより、PETフィルムからなる基材121上に、ピッチが100μmであり、高さが約26μmであり、焦点距離が約90μmであるレンズ122を正方格子状に配列させてなるレンズシート12を得る。
【0083】
このようにして得られた表示シート11とレンズシート12とを、それらの間に反射層14が介在するように重ね合わせた。以上のようにして、表示体10を完成する。
【0084】
表示シート11とレンズシート12とを、その配列ピッチが正確に重なるようにして重ね合わせたところ、表示体10は、片方の領域内(4mm四方の正方形内)すべてで凹凸パターンDP1の構造の色である黒色が知覚でき、もう片方の領域内(4mm四方の正方形内)すべてで凹凸パターンDP2の構造の色である白色に見える。
【0085】
上記表示体10を、法線方向に対してX軸あるいはY軸方向に大きく傾けて観察したところ、垂直方向からの観察においては黒色に知覚できた片方の4mm四方の正方形側では凹凸パターンDP2の構造の色である白色が知覚できた。また、垂直方向からの観察において白色に見える。
【0086】
さらに、上記表示体10を、法線方向に対してX軸あるいはY軸方向にゆるやかに傾けて観察したところ、凹凸パターンDP1から射出される回折光をも知覚でき、2段階の色変化が可能である。
【0087】
作成した表示体10の、観察の行われれるレンズシート面と反対の表示シート面に、粘着剤を塗布し、粘着面に剥離紙をラミネートして積層体を作製し、さらに打ち抜きによりラベルを作製した。作製した表示体ラベルは粘着剤等により物品への接着が可能である。
【符号の説明】
【0088】
10・・・表示体
11・・・表示シート
12・・・レンズシート
13・・・接着剤層
14・・・反射層
111・・・基材
112・・・凹凸構造層
121・・・基材
122・・・レンズ
DP1・・・凹凸パターン
DP2・・・凹凸パターン
DP3・・・凹凸パターン
PX・・・単位画素
PX1・・・第1画素
PX2・・・第2画素
PX3・・・第3画素
PX4・・・第4画素
G1・・・合成像1
G2・・・合成像2
G3・・・合成像3
G4・・・合成像4
S1・・・凹凸パターンDP1よりなる第1領域
S2・・・凹凸パターンDP2よりなる第2領域
S3・・・凹凸パターンDP3よりなる第3領域
BL・・・単位画素の境界
【技術分野】
【0001】
本発明は、見る角度によって絵柄や文字が変化する表示体と、その表示体によって装飾効果/又は美的効果、偽造防止効果を持たせる表示体付きラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平面の画像に動作変化を与える表示体の技法として、あらかじめ複数の像を縦方向または横方向に多数の線状帯に分け、これら異なる画像の線状帯を順次に並べて1枚に印刷し、その上に線状帯のピッチと方向に合わせたかまぼこ状の微細レンズの集合体からなるレンチキュラースクリーンを張り付け、レンチキュラースクリーンのレンズ作用により、複数の画像を重ね合わせ普通の視角距離で結合して店、画面を傾けることにより、画像の変化を与える方法が採られている(特許文献1、2)。
【0003】
上記の技法はかなり昔から多くの分野で利用されており、レンチキュラースクリーンのレンズを用い、色模様や異なった複数の画像を印刷インキ層により提供している。それなりに優れた装飾効果を持つが、これらの表示体は今や一般的になりすぎており、これ以上の装飾効果を持つものや、独自の画像変化を与える技法の提案が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−55149号公報
【特許文献2】特開平8−234335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、見る角度によって絵柄や文字が変化する表示体において、優れた装飾効果/又は美的効果、偽造防止効果を、印刷インキ層を用いることなく、達成可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、表示シートの上に多数の単位レンズを配列して構成される表示体であって、表示シートの表面は前記単位レンズに対応して多数の単位画素に区分されており、これら多数の単位画素は、そのそれぞれの表面に凹凸パターンが設けられており、これら多数の単位画素は、その表面に設けられた凹凸パターンの種類によって少なくとも2種類の単位画素に分類することができ、少なくとも2種類のこれら単位画素から射出する可視光を、多数の前記単位レンズを通して射出することにより画像を表示することを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、多数の前記単位画素のうち少なくとも1種類の単位画素が、その表面を複数の領域に区分されており、これら複数の領域は凹凸パターンの種類によって区分されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の発明は、多数の前記単位画素のうち少なくとも2種類の単位画素が、その表面を複数領域に区分され、かつ、これら複数領域のうち少なくとも1つの領域に凹凸パターンが設けられており、これら少なくとも2種類の単位画素の間では前記複数領域の各領域の面積が同一であり、しかも、これら少なくとも2種類の単位画素の間で互いに対応する領域に、互いに異なる凹凸パターンが設けられていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に記載の発明は、前記凹凸パターンが、この凹凸パターンに入射した可視光を回折もしくは散乱させて射出するか、又は入射した可視光を吸収するパターンであることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に記載の発明は、前記凹凸パターンのピッチが50nm以上2μm以下であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に記載の発明は、多数の前記単位レンズが、表示シートの凹凸パターンを有する表面上に配列していることを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に記載の発明は、多数の前記単位レンズが、表示シートの凹凸パターンを有する表面とは反対側に配列していることを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に記載の発明は、多数の前記単位レンズが透明基材上に設けられており、この透明基材が前記表示シートの上に配置されていることを特徴とする。
【0014】
また、請求項9に記載の発明は、前記透明基材を前記表示シートに向けて配置していることを特徴とする。
【0015】
また、請求項10に記載の発明は、前記単位レンズを前記表示シートに向けて配置していることを特徴とする。
【0016】
また、請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の表示体の表示シート側に粘着層が設けられ、さらに粘着層面に剥離紙が積層されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項12に記載の発明は、請求項1〜10のいずれかに記載の表示体と、これを支持した物品とを含んだことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、優れた装飾効果および偽造防止効果を達成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一態様に係る表示体を示す斜視図
【図2】図1に示す表示体を概略的に示す平面図
【図3】図1に示す表示体のIV−IV線に沿った断面図
【図4】図1に示す表示体の一例を概略的に示す分解平面図。
【図5】図4に示す表示体が表示する像の一例を概略的に示す平面図
【図6】図4に示す表示体が表示する像の他の例を概略的に示す平面図
【図7】レンズシートを省略した場合に図1に示す表示体の他の一例を概略的に示す平面図
【図8】図7に示す表示体が表示する像の一例を概略的に示す平面図
【図9】図7に示す表示体が表示する像の他の例を概略的に示す平面図
【図10】変形例に係る表示体を概略的に示す断面図
【図11】変形例に係る表示体を概略的に示す断面図
【図12】変形例に係る表示体を概略的に示す断面図
【図13】変形例に係る表示体を概略的に示す断面図
【図14】変形例に係る表示体を概略的に示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明を実施するための形態を、図面を用いて詳細に説明する。なお、すべての図面を通じて同様または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る表示体を示す斜視図である。図2は、図1に示す表示体を概略的に示す平面図である。図3は、図2に示す表示体のIV−IV線に沿った断面図である。図4は、図1に示す表示体の一例を概略的に示す分解平面図である。
【0022】
図1及び図3に示すように、表示体10は表示シート11とレンズシート12とを含んでいる。表示シート11とレンズシート12とは、図1及び図3に示すように、接着層13を介して張り合わされている。この表示体10の表面側はレンズシート12側であり、背面側は表示シート11側である。
【0023】
表示シート11は、図3に示すように、基材111と表面に反射層14を持つ凹凸構造層112との積層体を含んでいる。表示シート11は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0024】
基材111は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)及びポリカーボネート(PC)などの樹脂からなるフィルムまたはシートである。基材111の材料として、ガラスなどの無機材料を使用してもよい。基材111は、透明であってもよく、不透明であってもよい。
【0025】
基材111は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材111には、反射防止処理、低反射防止処理、ハードコート処理、帯電防止処理及び防汚処理などの処理を施してもよい。基材111は省略することができる。
【0026】
凹凸構造層112は、基材111上に形成されており、凹凸構造層112は、透明であってもよく不透明であっても良い。
【0027】
表示シート11の片面には、凹凸構造層112が形成されており、複数の単位画素に対応する。図3及び図4において、単位画素境界BLを破線で表示している。
【0028】
一例を図4に示すが、表示体10は、4種の単位画素PX1、PX2、PX3、PX4を配列させて成る。これら単位画素PXは、例えば、正方格子、矩形格子及び三角格子などの格子状にあるいはハニカム状配列させることができる。ここでは、一例として、単位領域はほぼ正方格子状に配列していることとする。
【0029】
各単位画素には、図3に示す凹凸パターンDP1及び/又はDP2が設けられている。DP1及びDP2の各凹凸構造は、その高さ、ピッチ、形状のいずれか一つ以上が互いに異なることとする。また、凹凸パターンDP1及びDP2は、可視光を回折、または散乱、または吸収する構造により形成されている。
【0030】
凹凸構造層112は、例えば、表面レリーフ型ホログラムの製造で使用されている、微細な凸部及び/また凹部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、凹凸構造層112は、基材111上に形成された熱可塑性樹脂層に、凸部及び/又は凹部が設けられた金型を、熱を印加しながら押し当てる方法、すなわち、熱エンボス加工法により得られる。
【0031】
あるいは、凹凸構造層112は、基材111上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに金型を押し当てながら基材111側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後
、金型を取り除く方法により形成することも可能である。
【0032】
この金型は、例えば、電子描画装置を用いて製造することができる。まず、レジスト層への電子描画によって樹脂からなる凹凸パターンを含んだ原版を得る。引き続き電鋳によって、原版に設けられた凹凸パターンを含んだ金型を得る。その後、この金型のパターンを熱可塑性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂層に転写して複数の版を製造し、これら版から電鋳によって複数の金型を製造する。このようにして得られた金型の凹凸パターンを樹脂層に転写することにより、表示シート11上の複数の凹凸パターンDPを持つ凹凸構造層112を得ることができる。
【0033】
凹凸構造層112の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂及びアクリル系/スチレン系共重合樹脂などの熱可塑性樹脂材料又は紫外線硬化樹脂を使用することができ、さらには、熱可塑性樹脂材料又は紫外線硬化樹脂を使用する代わりに、珪酸塩を含んだ無機系材料を使用しても良い。
【0034】
表示シート11の凹凸パターンDPが設けられた面は、図3に示すように反射層14で被覆されている。反射層14は、例えば、凹凸パターンDPの回折効率を高める。反射層14は、パターニングされていてもよい。例えば、凹凸パターンのDP1あるいはDP2のみを被覆していてもよい。反射層14は省略することができる。
【0035】
反射層14は、金属や金属の酸化物、硫化物またはフッ化物からなり、金属層の材料としては、アルミニウム、銀、スズ、亜鉛、鉄、ニッケル、クロム、コバルト若しくはこれらを含む合金を使用することができ、金属の酸化物、硫化物、フッ化物としては、硫化亜鉛、フッ化マグネシウム、二酸化珪素、フッ化カルシウム、フッ化セリウム、フッ化アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、二酸化ジルコニウム、フッ化マグネシウム、二酸化チタンフッ化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化錫およびその組合せた積層体を使用することができる。反射層14は、例えば、真空蒸着法やスパッタリング法などの気相堆積法により形成することができる。反射層14を気相堆積法により形成する場合、その厚さは30〜100nmで十分である。
【0036】
反射層14として、金属の酸化物、硫化物、フッ化物を使用した場合、肉眼で表示体10を観察したときに表示体10の背面側にある物体を視認できる可能性がある。反射層14として金属酸化物の多層構造の透明反射膜を使用した場合には、表示体10に波長選択性を与えることができる。したがって、反射層14として金属の酸化物、硫化物、フッ化物の単層の誘電体膜を使用した場合とは異なる視覚効果を得ることができる。金属の酸化物、硫化物、フッ化物は、基材11上に、例えば、硫化亜鉛などの高屈折率材料とフッ化マグネシウムなどの低屈折率の材料とを交互に蒸着することによって得られる。
【0037】
レンズシート12は、図1、図3及び図4に示すように、透明基材121と、複数のレンズ122とを含んでいる。
【0038】
透明基材121は、例えばPET及びPCなどの樹脂からなるフィルム又はシートである。基材121の材料として、ガラスなどの無機材料を使用してもよい。透明基材121は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。基材121には、反射防止処理、低反射防止処理、ハードコート処理、帯電防止処理及び防汚処理などの処理を施してもよい。基材121は、省略することができる。
【0039】
レンズ122は、透明基材121の一方の主面上で前記単位画素と同じ配列で規則的に配列している。レンズ122は、前記単位画素と同じく、例えば、正方格子、矩形格子及び三角格子などの格子状にあるいはハニカム状配列させることができる。ここでは、レン
ズ122は、前記単位画素に対応させてほぼ正方格子状に配列していることとする。
【0040】
レンズ122は、例えば球面レンズである。レンズ122は、非球面レンズであってもよい。なお、球面レンズは、球面の一部分からなる面を持つレンズである。非球面レンズは、形状を若干ずらした球面の一部分からなる面を持つレンズである。錐体レンズは、Z方向に平行な断面が三角形状のレンズである。
【0041】
レンズシート12は、例えば、複数の凹部を設けた金型を樹脂に押し付けることにより形成することができる。例えば、レンズシート12は、基材121上に形成された熱可塑性樹脂層に、レンズ122に対応した形状の凹部が設けられた金型を、熱を印加しながら押し当てる方法、すなわち、熱エンボス加工法により得られる。あるいは、レンズシート12は、基材121上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに金型を押し当てながら基材121側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、金型を取り除く方法により形成することも可能である。またレンズシートには、凹凸構造層112と同時に形成することもできる。
【0042】
レンズシート12の材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂及びアクリル系/スチレン系共重合樹脂等の熱可塑性樹脂材料又は紫外線硬化樹脂を使用することができる。レンズシート12の材料として、樹脂を使用する代わりに、珪酸塩を含んだ無機系材料を使用してもよい。レンズシート12の材料は、凹凸構造層112の材料と比較して粘性が高くても構わない。
【0043】
接着剤層13は、省略することが可能であり、表示シート11とレンズシート12とは、固定具を用いて一体化してもよい。なお、接着剤層13を省略した場合、表示シート11とレンズシート12との間に空気層が生じるため、凹凸パターンDP1及び/あるいは凹凸パターンDP2に回折格子を用いた場合、反射層14を省略しても高い回折効率を容易に達成できる。
【0044】
この表示体10では、表示する像情報に基づき、凹凸パターンDP1よりなる第1領域S1と、凹凸パターンDP2よりなる第2領域S2を、図2に示すように単位画素PX毎に配置し、レンズ122を、単位画素の配列と同じ周期で規則的に配置している。
【0045】
そして、単位画素の配列とレンズ122の配列との方位を正確に合わせる。この時第1領域S1が必ずしもレンズの中心にくる必要はないが、S1及びS2は同様に同一のピッチで中心からずれている必要はある。
【0046】
このように、単位画素の配列とレンズ122の配列とを正確に合わせて重ねると、凹凸パターンDP1よりなる第1領域S1と、凹凸パターンDP2よりなる第2領域S2それぞれの像が合成され表示される。
【0047】
図5は、図4に示す表示体が表示する像の一例を概略的に示す平面図である。図6は、図4に示す表示体が表示する像の他の一例を概略的に示す平面図である。
【0048】
表示体10は、図4において4種の単位画素PX1、PX2、PX3、PX4より成る。図4の単位画素PX1は、例えば、単位画素の真ん中の領域を凹凸パターンDP1にて占め、単位画素PX中の凹凸パターンDP1以外の部分を凹凸パターンDP2にて構成したもので、凹凸パターンDP1とDP2の面積はほぼ一定となっている。
【0049】
また、単位画素PX2は、2つの領域の形状および配置がPX1と同じであり、凹凸パターンDP1と凹凸パターンDP2を入れ替えただけの構成となっている。さらに単位画
素PX3は、凹凸パターンDP1のみで画素全面が構成されており、単位画素PX4は、凹凸パターンDP2のみで画素全面が構成されている。
【0050】
表示体10は、図2を参照しながら説明したように単位画素PXの配列とレンズ122の配列とを正確に重ね合わせると、凹凸パターンDP1及び/あるいは凹凸パターンDP2それぞれの像が合成され表示される。
【0051】
図4において実施形態の一例を説明する。凹凸パターンDP1は光を吸収する構造で、凹凸パターンDP2は光を散乱する構造である。光を吸収する構造を持つ凹凸パターンDP1は、黒ないしは灰色を呈して見える。一方、光を散乱する構造を持つ凹凸パターンDP2は、白ないしは明度の高い無彩色を呈して見える。よって表示体10を真上(正面方向)から観察すると、単位画素PXの中央に位置する凹凸パターンDP1及び/あるいは凹凸パターンDP2によって、表示体10は図5に示すような合成像1G1として見える。
【0052】
また、図4の表示体を左右あるいは上下方向に傾けて観察した場合、単位画素PXの側面に位置する凹凸パターンDP1及び/あるいは凹凸パターンDP2によって、表示体10は図6に示すような合成像2G2として見える。
【0053】
図4において、表示体10からレンズシート12を省略した場合、凹凸パターンDP1及びDP2によって表示される合成像G1およびG2は知覚されない。また、凹凸パターンDP1及びDP2の領域はそれぞれ数十μ平方程度の大きさであるため、肉眼による観察では凹凸パターンDP1よりなる第1領域S1と凹凸パターンDP2よりなる第2領域S2の配列を知覚することができない。
【0054】
また、第1画素PX1及び第2画素PX2において凹凸パターンDP1及びDP2の領域をほぼ同面積とした場合、肉眼による観察では、第1画素PX1と第2画素PX2はどちらも凹凸パターンDP1及び凹凸パターンDP2の混色として知覚され、種類の違う2つの凹凸パターンが配列されていることを悟られにくくする。これにより、偽造防止効果を達成することが可能となる。
【0055】
図7は、レンズシート12を省略した場合に図1に示す表示体10の他の一例を概略的に示す平面図である。図8は、図7に示す表示体10が表示する像の一例を概略的に示す平面図であり、図9は、図7に示す表示体10が表示する像の他の例を概略的に示す平面図である。
【0056】
表示体10は、図7において4種の第1画素PX1、第2位画素PX2、第3画素PX3、第4画素PX4より成る。図7の第1画素PX1において、凹凸パターンDP1にて第1画素PX1の中央部を、凹凸パターンDP2にて第1画素PX1の側面部を構成しており、第2画素PX2においては凹凸パターンDP1及び凹凸パターンDP2とは異なる周期的な凹凸構造を持つ凹凸パターンDP3にて第2画素PX2の中央部を、凹凸パターンDP1にて第2画素PX2の側面部を構成している。
【0057】
さらに、第3画素PX3においては凹凸パターンDP3にて第三画素PX3の中央部を、凹凸パターンDP2にて第3画素PX3の側面部を構成しており、第4画素PX4においては、凹凸パターンDP4のみで単位画素全体を構成している。
【0058】
表示体10は、単位画素PXの配列とレンズ122の配列とを正確に重ね合わせると、凹凸パターンDP1及び/あるいは凹凸パターンDP2及び/あるいは凹凸パターンDP3が表示する像を合成してなる合成像G3あるいは合成像G4が表示される。
【0059】
図7において、第1画素PX1の中央部及び第2画素PX2の側面部は、例えば、光を散乱する構造を持つ凹凸パターンDP1によって構成されており、第1画素PX1の側面部及び第3画素PX3の側面部は、例えば、光を回折する構造を持つ凹凸パターンDP2によって構成されている。
【0060】
また第2画素PX2の中央部及び第3画素PX3の中央部は、例えば、光を吸収する構造を持つ凹凸パターンDP3によって構成されている。光を吸収する構造を持つ凹凸パターンDP3は、例えば、黒ないしは灰色を呈して見える。また光を散乱する構造を持つ凹凸パターンDP1は、白ないしは明度の高い無彩色を呈して見える。このとき表示体10を正面方向から観察すると、図8に示すように、黒ないしは灰色を呈した「B」という合成像G3を見ることができる。
【0061】
また表示体10は、上下もしくは左右に傾けることで、第1画素PX1、第2画素PX2及び第3画素PX3中の各側面部が知覚され、複数の単位画素PXからなる側面部の像を合成して、図9に示すような合成像G4として見える。
【0062】
表示体10は、図8を参照しながら説明したときと同様に、第1画素PX1の中央部及び第2画素PX2の側面部は、例えば、光を散乱する構造を持つ凹凸パターンDP1によって構成されており、第1画素PX1の側面部及び第3画素PX3の側面部は、例えば、光を回折する構造を持つ凹凸パターンDP3によって構成されており、第2画素PX2の中央部及び第3画素PX3の中央部は、例えば、光を吸収する構造を持つ凹凸パターンDP3によって構成されている。光を散乱する構造を持つ凹凸パターンDP1は、例えば、白ないしは明度の高い無彩色を呈する。
【0063】
また、光を回折する構造を持つ凹凸パターンDP2は、例えば任意の角度で可視光域の光を射出する、あるいは、その構造自体が着色を呈する。そのため、傾けて観察した表示体10は図9に示すように、可視光域で着色した「A」という合成像G4として見える。
【0064】
このように、表示体10で用いる凹凸パターンを3種にすることで、表示体10をより複雑にすることができ、よって、より一層優れた偽造防止効果を達成することができる。また、表示体10で用いる凹凸パターンを3種にすることで、正面から観察した場合と傾けて観察した場合の双方で知覚すべき第3画素PX3を設けることができるため、チェインジングのデザイン設計での自由度が増し、より一層優れた装飾効果を達成することが可能となる。
また、表示体10で用いる凹凸パターンにおいて、光を回折する構造を持つ凹凸パターンDPを用いた場合、正面もしくは傾けたときに回折光が射出され、パターン部及び/あるいは背景部が色チェンジして知覚される。これは印刷では不可能な表現であり、これによって偽造防止効果および装飾効果を高めることが可能となる。
【0065】
この表示体10では、単位画素PXにおける凹凸パターンDP1と凹凸パターンDP2の面積はほぼ一定であり、典型的には、単位画素の40〜60%の面積をどちらかの凹凸パターンが占め、残りを他方の凹凸パターンが占めることとする。
【0066】
図10から図14は、変形例に係る表示体の概略断面図である。
【0067】
図10に示す表示体10は、基材111がレンズシート12と向き合うように表示シート11をレンズシート12に張り合わせていること以外は、図3に示す表示体10と同様の構造を有している。この構造では、平坦面同士を接着しているため、貼り合わせが容易である。また、この表示体10から接着層13を省略した構造は、レンズシート12との
摩擦によって凹凸パターンDPまたは反射層14からの損傷を受けることがない。
【0068】
図11に示す表示体10は、レンズ122が表示シート11と向き合うようにレンズシート12を表示シート11に貼り合わせていること以外は、図3に示す表示体10と同様の構造を有している。この構造では、基材111及び121を最外層としているので、それらの間に介在したレンズ122等の部材の損傷を生じ難い。
【0069】
図12に示す表示体10は、レンズ122が表示シート11と向き合うようにレンズシート12を表示シート11に貼り合わせていること以外は、図10に示す表示体10と同様の構造を有している。この構造では、レンズ122の損傷を生じ難い。また、この表示体10から接着剤層13を省略した構造は、レンズシート12との摩擦によって凹凸パターンDPまたは反射層14が損傷を受けることがない。
【0070】
図13に示す表示体10は、基材121及び接着剤層13を省略したこと以外は、図3に示す表示体10と同様の構造を有している。すなわち、この表示体10では、反射層14の上にレンズ122が形成されている。この表示体10は、図3に示す表示体10と比較して部品点数が少ないため、より少ない工程数で製造することができる。また、この表示体10は、図3に示す表示体10と比較して、より薄く形成できる。
【0071】
図14に示す表示体10は、基材121及び接着剤層13を省略したこと以外は、図10に示す表示体10と同様の構造を有している。すなわち、この表示体10では、基材111上にレンズ122が形成されている。この表示体10は、図10に示す表示体10と比較して部品点数が少ないため、より少ない工程数で製造することができる。また、この表示体10は、図10に示す表示体10と比較してより薄く形成できる。
【0072】
上述した表示体10は、レンズ122の形状を工夫したりすることで視覚効果を変化させることができる。
【0073】
表示体10は、例えば、偽造または不正使用等が制御されるべき物品に使用される。例えば、この表示体10とこれを支持した物品とを含んだラベル付き物品を真正品とした場合、真正であるか否かが未知の物品が、上述した絵柄、文字、色等のチェインジング効果を示さないときには、その物品は非真正品であると判断することができる。特に、回折光による色チェンジは、非真正品との差別化に有効である。したがって、例えば、有価証券、銀行オ権、身分証明書などの証明書、及びクレジットカードなどの印刷物や美術品及び工芸品などの高級品の偽造を防止または抑制することができる。
【0074】
なお、表示体10をラベルとして利用する場合、表示体10は物品に様々な方法で支持させることができる。例えば、表示体10に粘着剤層を設け、この粘着剤層を介して表示体10を物品に貼り付けてもよい。あるいは、表示体10と熱可塑性樹脂からなる接着層とを含んだ転写箔を製造し、熱及び圧力を利用した転写により、表示体10を物品に貼り付けてもよい。あるいは、表示体10を含んだタグを製造し、これを紐及び鎖などの取付具を介して物品に支持させてもよい。あるいは、表示体10を含んだ包装材料を製造し、この包装材料で物品を包装してもよい。
【0075】
この表示体10は、偽造防止以外の目的で使用することも可能である。例えば玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。すなわち、これら表示体10は、偽造防止効果、装飾効果及び/又は美的効果を提供する。
【実施例】
【0076】
本例では、接着剤層13を省略したこと以外は図1〜図3を参照した説明と同様の構造
を有する表示体10を製造した。
【0077】
具体的には、表示シート11は、以下の方法により作製した。まず、電子描画装置を用いて樹脂からなる原版を製造し、電鋳によりこの原版から金型を製造した。次に、この金型に紫外線硬化樹脂としてアクリル系樹脂を注入し、この樹脂層と厚さが50μmのPETフィルム111とをラミネートした。PETフィルム111側から紫外線を照射して樹脂を効果させ、その後、PETフィルムからなる基材111を硬化させた樹脂層と共に金型から剥離した。これにより、PETフィルムからなる基材111と凹凸構造層112とを含んだ表示シート11を得た。
【0078】
なお、金型は、凹凸構造層112の表面のうち、一辺が4mmの正方形の領域を2つ隣り合わせたものを設計した。隣り合った4mm四方の正方形のうち一方では、凹凸パターンDP1が50μm角の正方形状を有し、100μmピッチで正方格子状に配列するように設計した。凹凸パターンDP1の凹凸部の深さは400nmとし、凸部の中心間距離は150nmとした。この片方の4mm四方の正方形からなる領域内で、凹凸パターンDP1以外の部分はすべて凹凸パターンDP2を配置した。凹凸パターンDP2は光散乱パターンであり、この光散乱パターンは、基材表面に形成する微細な凹部又は凸部を設けて光散乱体を構成する最小単位となる光散乱要素とし、この光散乱要素を複数配置して構成されたものである。
【0079】
また、隣り合った4mm四方の正方形のうち、上記とは別のもう片方では、凹凸パターンDP2が50μm角の正方形状を有し、100μmピッチで正方格子状に配列するように設計した。凹凸パターンDP2は上記と同様に構成された光散乱パターンである。この正方形の領域内で、凹凸パターンDP2以外の部分はすべて凹凸パターンDP1を配置した。凹凸パターンDP1は上記と同様で凹凸部の深さは400nmとし、凸部の中心間距離は150nmである。
【0080】
ここでは金型に剥離処理は施さなかった。そして、ラミネート圧は、凹凸構造層112の厚さが約15μmとなるように軽めに設定した。この金型と凹凸構造層112とを調べたところ、成形時の剥離ムラはなく、凹凸構造層112を金型から綺麗に剥離することができる。
【0081】
凹凸構造層112上には、蒸着法によりアルミニウムからなる反射層14を形成した。このとき、反射層14は40から60nmの厚みとした。
【0082】
レンズシート12は、以下の方法により作製した。まず、金型に紫外線硬化樹脂としてアクリル系/スチレン系共重合樹脂を注入し、この樹脂層と厚さが75μmのPETフィルム121とをラミネートした。PETフィルムからなる基材121側から紫外線を照射して樹脂を硬化させ、その後、PETフィルム121を硬化形成した樹脂と共に金型から剥離した。これにより、PETフィルムからなる基材121上に、ピッチが100μmであり、高さが約26μmであり、焦点距離が約90μmであるレンズ122を正方格子状に配列させてなるレンズシート12を得る。
【0083】
このようにして得られた表示シート11とレンズシート12とを、それらの間に反射層14が介在するように重ね合わせた。以上のようにして、表示体10を完成する。
【0084】
表示シート11とレンズシート12とを、その配列ピッチが正確に重なるようにして重ね合わせたところ、表示体10は、片方の領域内(4mm四方の正方形内)すべてで凹凸パターンDP1の構造の色である黒色が知覚でき、もう片方の領域内(4mm四方の正方形内)すべてで凹凸パターンDP2の構造の色である白色に見える。
【0085】
上記表示体10を、法線方向に対してX軸あるいはY軸方向に大きく傾けて観察したところ、垂直方向からの観察においては黒色に知覚できた片方の4mm四方の正方形側では凹凸パターンDP2の構造の色である白色が知覚できた。また、垂直方向からの観察において白色に見える。
【0086】
さらに、上記表示体10を、法線方向に対してX軸あるいはY軸方向にゆるやかに傾けて観察したところ、凹凸パターンDP1から射出される回折光をも知覚でき、2段階の色変化が可能である。
【0087】
作成した表示体10の、観察の行われれるレンズシート面と反対の表示シート面に、粘着剤を塗布し、粘着面に剥離紙をラミネートして積層体を作製し、さらに打ち抜きによりラベルを作製した。作製した表示体ラベルは粘着剤等により物品への接着が可能である。
【符号の説明】
【0088】
10・・・表示体
11・・・表示シート
12・・・レンズシート
13・・・接着剤層
14・・・反射層
111・・・基材
112・・・凹凸構造層
121・・・基材
122・・・レンズ
DP1・・・凹凸パターン
DP2・・・凹凸パターン
DP3・・・凹凸パターン
PX・・・単位画素
PX1・・・第1画素
PX2・・・第2画素
PX3・・・第3画素
PX4・・・第4画素
G1・・・合成像1
G2・・・合成像2
G3・・・合成像3
G4・・・合成像4
S1・・・凹凸パターンDP1よりなる第1領域
S2・・・凹凸パターンDP2よりなる第2領域
S3・・・凹凸パターンDP3よりなる第3領域
BL・・・単位画素の境界
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示シートの上に多数の単位レンズを配列して構成される表示体であって、
表示シートの表面は前記単位レンズに対応して多数の単位画素に区分されており、これら多数の単位画素は、そのそれぞれの表面に凹凸パターンが設けられており、
これら多数の単位画素は、その表面に設けられた凹凸パターンの種類によって少なくとも2種類の単位画素に分類することができ、
少なくとも2種類のこれら単位画素から射出する可視光を、多数の前記単位レンズを通して射出することにより画像を表示することを特徴とする表示体。
【請求項2】
多数の前記単位画素のうち少なくとも1種類の単位画素が、その表面を複数の領域に区分されており、これら複数の領域は凹凸パターンの種類によって区分されていることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
多数の前記単位画素のうち少なくとも2種類の単位画素が、その表面を複数領域に区分され、かつ、これら複数領域のうち少なくとも1つの領域に凹凸パターンが設けられており、
これら少なくとも2種類の単位画素の間では前記複数領域の各領域の面積が同一であり、しかも、これら少なくとも2種類の単位画素の間で互いに対応する領域に、互いに異なる凹凸パターンが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の表示体。
【請求項4】
前記凹凸パターンが、この凹凸パターンに入射した可視光を回折もしくは散乱させて射出するか、又は入射した可視光を吸収するパターンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示体。
【請求項5】
前記凹凸パターンのピッチが50nm以上2μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表示体。
【請求項6】
多数の前記単位レンズが、表示シートの凹凸パターンを有する表面上に配列していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表示体。
【請求項7】
多数の前記単位レンズが、表示シートの凹凸パターンを有する表面とは反対側に配列していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表示体。
【請求項8】
多数の前記単位レンズが透明基材上に設けられており、この透明基材が前記表示シートの上に配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表示体。
【請求項9】
前記透明基材を前記表示シートに向けて配置していることを特徴とする請求項8記載の表示体。
【請求項10】
前記単位レンズを前記表示シートに向けて配置していることを特徴とする請求項8記載の表示体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の表示体の表示シート側に粘着層が設けられ、さらに粘着層面に剥離紙が積層されていることを特徴とする表示体付きラベル。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の表示体と、これを支持した物品とを含んだことを特徴とするラベル付き物品。
【請求項1】
表示シートの上に多数の単位レンズを配列して構成される表示体であって、
表示シートの表面は前記単位レンズに対応して多数の単位画素に区分されており、これら多数の単位画素は、そのそれぞれの表面に凹凸パターンが設けられており、
これら多数の単位画素は、その表面に設けられた凹凸パターンの種類によって少なくとも2種類の単位画素に分類することができ、
少なくとも2種類のこれら単位画素から射出する可視光を、多数の前記単位レンズを通して射出することにより画像を表示することを特徴とする表示体。
【請求項2】
多数の前記単位画素のうち少なくとも1種類の単位画素が、その表面を複数の領域に区分されており、これら複数の領域は凹凸パターンの種類によって区分されていることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
多数の前記単位画素のうち少なくとも2種類の単位画素が、その表面を複数領域に区分され、かつ、これら複数領域のうち少なくとも1つの領域に凹凸パターンが設けられており、
これら少なくとも2種類の単位画素の間では前記複数領域の各領域の面積が同一であり、しかも、これら少なくとも2種類の単位画素の間で互いに対応する領域に、互いに異なる凹凸パターンが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の表示体。
【請求項4】
前記凹凸パターンが、この凹凸パターンに入射した可視光を回折もしくは散乱させて射出するか、又は入射した可視光を吸収するパターンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表示体。
【請求項5】
前記凹凸パターンのピッチが50nm以上2μm以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表示体。
【請求項6】
多数の前記単位レンズが、表示シートの凹凸パターンを有する表面上に配列していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表示体。
【請求項7】
多数の前記単位レンズが、表示シートの凹凸パターンを有する表面とは反対側に配列していることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表示体。
【請求項8】
多数の前記単位レンズが透明基材上に設けられており、この透明基材が前記表示シートの上に配置されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表示体。
【請求項9】
前記透明基材を前記表示シートに向けて配置していることを特徴とする請求項8記載の表示体。
【請求項10】
前記単位レンズを前記表示シートに向けて配置していることを特徴とする請求項8記載の表示体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の表示体の表示シート側に粘着層が設けられ、さらに粘着層面に剥離紙が積層されていることを特徴とする表示体付きラベル。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載の表示体と、これを支持した物品とを含んだことを特徴とするラベル付き物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−108226(P2012−108226A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−255659(P2010−255659)
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月16日(2010.11.16)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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