説明

表示体および表示体使用方法

【課題】物理的かつ不可逆に図柄が変化する不正利用が困難な表示体を提供する。
【解決手段】熱源、封止層、熱溶融インキ14層、多孔質隠蔽層13、透明基材11及び印刷印字層12で構成された表示体1であって、発熱することにより、多孔質材料から構成される多孔質隠蔽層13に接して配置された熱溶融インキ14層が前記多孔質隠蔽層13に液状となって染み込み、多孔質隠蔽層13の表面上に熱溶融インキ14による印刷画像が出現する。このため、発熱動作を施した後、一定時間後、表示体の表層に熱溶融インキ14による図柄が表出する。よって、物理的かつ不可逆に図柄が変化することから、不正利用が困難な表示体1を提供することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経過時間により図柄の変化する表示体および該表示体の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時間経過または利用履歴を明示する表示体が広範な分野で使われている。例えば、イベントなどの入場券、スキー場におけるリフト券など、が挙げられる。
【0003】
例えば、一般的に、チケットなどに日付を印字し、入場にあたりチケットの一部をもぎとり、再入場の無効化を行うことが行われている。
【0004】
また、磁気券、RFID、携帯端末などを用いて、履歴を管理する入場システムが提案されている。
【0005】
例えば、携帯端末にチケット情報を送信し、該携帯端末で入場認証を行う入場システムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−132382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、もぎ取るタイプの入場券において、一度もぎった半券での再入場を行うことは利用履歴を正確に把握するのは困難であることから、運用が難しい。また、再入場を可能とするシステムを作ると煩雑になってしまう。また、スキー場のリフト券等では日付の一部分を改ざんし利用する等の不正利用がある。
【0008】
また、自動化された入場システムは、磁気券、RFID、携帯端末などのシステムのロジックがわかれば書き換えが可能である。このため、当該分野の知識がある人ならば改ざんが可能である。
【0009】
そこで、本発明は上述の課題を解決するためになされたものであり、物理的かつ不可逆に図柄が変化する不正利用が困難な表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態は、熱源と、前記熱源上に形成された封止層と、前記封止層上に形成された熱溶融インキ層と、前記熱溶融インキ層上に形成された多孔質隠蔽層と、前記多孔質隠蔽層上に形成された透明基材と、前記透明基材上に形成された印刷印字層と、を備えたことを特徴とする表示体である。
【0011】
また、前記熱源は、前記封止層と接する生石灰層と、前記生石灰層を保持する多孔質層と、前記多孔質に接し、水分を含むマイクロカプセル層と、前記マイクロカプセル層を保持する保持フィルムと、を備えた構成であってもよい。
【0012】
また、前記熱源は、前記封止層と接し、酸化により発熱する発熱組成物質層と、前記発熱組成物質層を保持する空気透過層と、前記空気透過層を覆う酸素バリアフィルムと、を備えた構成であってもよい。
【0013】
また、前記空気透過層と酸素バリアフィルムとの間に粘着層を設けてもよい。
【0014】
また、前記粘着層は、空気の抜け穴を有する粘着層であってもよい。
【0015】
本発明の一実施形態は、上述の表示体の使用方法であって、
前記保持フィルムを剥離することによりマイクロカプセル層の水分を放出するマイクロカプセル破壊ステップと、マイクロカプセルから放出された水分が前記生石灰層と接し、前記生石灰層が発熱する生石灰発熱ステップと、前記生石灰層からの発熱により前記熱溶融インキ層が溶融する熱溶融インキ溶融ステップと、溶融した熱溶融インキが多孔質隠蔽層を通過し、前記透明基材と接する図柄表示ステップと、を備えたことを特徴とする表示体使用方法である。
【0016】
本発明の一実施形態は、上述の表示体の使用方法であって、
前記表示体に外部から衝撃を加え、マイクロカプセル層の水分を放出するマイクロカプセル破壊ステップと、マイクロカプセルから放出された水分が前記生石灰層と接し、前記生石灰層が発熱する生石灰発熱ステップと、前記生石灰層からの発熱により前記熱溶融インキ層が溶融する熱溶融インキ溶融ステップと、溶融した熱溶融インキが多孔質隠蔽層を通過し、前記透明基材と接する図柄表示ステップと、を備えたことを特徴とする表示体使用方法である。
【0017】
本発明の一実施形態は、上述の表示体の使用方法であって、
前記酸素バリアフィルムを剥離する酸素バリアフィルム剥離ステップと、前記空気透過層を通過した酸素により発熱組成物質層が酸化し、発熱組成物質層が発熱する発熱組成物質層発熱ステップと、前記発熱組成物質層からの発熱により前記熱溶融インキ層が溶融する熱溶融インキ溶融ステップと、溶融した熱溶融インキが多孔質隠蔽層を通過し、前記透明基材と接する図柄表示ステップと、を備えたことを特徴とする表示体使用方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の表示体は、発熱することにより、多孔質材料から構成される多孔質隠蔽層に接して配置された熱溶融インキ層が前記多孔質隠蔽層に液状となって染み込み、多孔質隠蔽層の表面上に熱溶融インキによる印刷画像が出現する。このため、発熱動作を施したのち、一定時間後、表示体の表層に熱溶融インキによる図柄が表出する。よって、物理的かつ不可逆に図柄が変化することから、不正利用が困難な表示体を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の表示体の一実施形態を示した平面概略図である。
【図2】本発明の表示体の使用後の一実施形態を示した平面概略図である。
【図3】本発明の表示体の一実施形態を示した断面概略図である。
【図4】本発明の表示体の使用後の一実施形態を示した平面概略図である。
【図5】本発明の表示体の使用後の一実施形態を示した平面概略図である。
【図6】本発明の表示体の一実施形態を示した平面概略図である。
【図7】本発明の表示体の使用後の一実施形態を示した平面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の表示体について、説明を行う。
本発明の表示体は、熱源と、前記熱源上に形成された封止層と、前記封止層上に形成された熱溶融インキ層と、前記熱溶融インキ層上に形成された多孔質隠蔽層と、前記多孔質隠蔽層上に形成された透明基材と、前記透明基材上に形成された印刷印字層と、を備える。
【0021】
本発明の表示体は、発熱することにより、多孔質材料から構成される多孔質隠蔽層に接して配置された熱溶融インキ層が前記多孔質隠蔽層に液状となって染み込み、隠蔽された面上に熱溶融インキによる印刷画像が出現する。このため、発熱動作を施した後、一定時間後、表示体の表層に熱溶融インキによる図柄が表出する。よって、物理的かつ不可逆に図柄が変化することから、不正利用が困難な表示体を提供することが出来る。
【0022】
図1に、本発明の表示体の一実施形態を示した平面概略図を示す。図1では、透明基材11上に印刷印字層12が形成され、観察面側である印刷印字層12側から、表示体1を示す。
【0023】
図2に、本発明の表示体の使用後の一実施形態を示した平面概略図を示す。図2では、観察面側である印刷印字層12側から、使用後の表示体1を示す。透明基材11の下層に溶融したインキ14’が配置され、観察面側から見たとき図柄が変化している。
【0024】
印刷印字層は、透明基材上に設けられ、観察面となる最外面に配置される。印刷印字層は適宜公知の印刷方法により形成してよい。また、印刷印字層はエンボス加工などにより透明基材の表面に凹凸を設け印字した部位であってもよい。
【0025】
透明基材は、観察面である印刷印字層から見て、より下層に配置された多孔質隠蔽層が目視観察できる程度の透明度を備えた材料を、用途などに応じて適宜公知の材料から選択して用いてよい。例えば、透明基材として、プラスチック、ガラス、樹脂などの材料を用いてもよい。
【0026】
多孔質隠蔽層は、多孔質の材料からなり透明基材の下層に設けられる。多孔質隠蔽層により、より下層に配置された熱溶融インキの印刷画像を観察面側から見えないように隠蔽することが出来る。また、熱溶融インキが流動した場合、熱溶融インキが毛細管現象により多孔質隠蔽層に染み込むことから、熱溶融インキが流動してから一定時間後に透明基材側に熱溶融インキを移動させることが出来る。多孔質隠蔽層は、熱溶融インキが移動する程度の細孔を備えることから、多孔質顔料を含む材料を用いて形成することが好ましい。例えば、多孔質顔料として、多孔質シリカ、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、アパタイト、多孔質ガラス、多孔質カーボンなど、が挙げられる。また、多孔質隠蔽層を形成するにあたっては、多孔質顔料とバインダー樹脂と混合し、塗布し、層形成を行ってもよい。このとき、多孔質顔料とバインダー樹脂とのP/B比(顔料/樹脂比)は、重量比にて50%程度であることが好ましい。
【0027】
熱溶融インキ層は、通常状態では固体であり、自身もしくは周囲の温度が溶融温度以上になったときに液状になる性質を有する熱溶融インキから形成される。熱溶融インキには、ワックスに染料を混合し着色した材料を用いてもよい。ワックスは溶融温度を40℃から120℃の間で比較的自由に設定出来る材料であるから、本発明に用いる熱溶融インキの材料として好ましい。例えば、ワックスとして、石油系天然ワックス、植物系天然ワックス、動物系天然ワックス、合成ワックスなどを用いてもよい。
【0028】
封止層は、印刷印字層、透明基材、多孔質隠蔽層、熱溶融インキ層が積層された表示体上層部と、熱源である表示体下層部と、隔てる部位である。封止層は熱源からの熱を熱溶融インキ層へ伝播させることから、熱伝導率のよい材料を用いることが好ましい。例えば、プラスチックフィルム、金属フィルム、ガラス、各種樹脂などの材料から、用途に応じて適宜選択してよい。
【0029】
熱源は、特定のスイッチで発熱を開始する部位である。熱源が発熱を始めることにより、熱溶融インキが多孔質隠蔽層を通過し、観察面側からみた図柄を変化させることが出来る。また、本発明の表示体は発熱することから、特に、1)冬季のイベントにおける入場券、2)スキーのリフト券、など寒冷地で好適に用いることが出来る。
【0030】
熱源は、封止層と接する生石灰層と、生石灰層を保持する多孔質層と、多孔質に接し、水分を含むマイクロカプセル層と、マイクロカプセル層を保持する保持フィルムと、を備えた構成としてもよい。本構成によれば、生石灰層が水分と反応すると発熱し始めることから、マイクロカプセルの破壊を特定のスイッチとして、発熱の開始を制御することが出来る。このとき、マイクロカプセルの破壊は、1)保持フィルムの剥離、2)外部からの衝撃、などを行うことにより開始してよい。
【0031】
生石灰層は、生石灰が充填された部位である。生石灰は水と反応し発熱する。通常時は水と接触しないよう、封止層と多孔質層とで封止されている。
【0032】
多孔質層は、多孔質の材料からなりマイクロカプセル層と生石灰層との間に配置される。多孔質層中の細孔により、水の媒体外流出や蒸発を防止することが出来る。また、多孔質層中の細孔により、効率的に上層にある生石灰層に毛細管現象を用いて水を供給させることが出来る。多孔質層は、水分が移動する程度の細孔を備えることから、多孔質顔料を含む材料を用いて形成することが好ましい。例えば、多孔質顔料として、多孔質シリカ、ゼオライト、アルミナ、酸化チタン、アパタイト、多孔質ガラス、多孔質カーボンなど、が挙げられる。また、多孔質層を形成するにあたっては、多孔質顔料とバインダー樹脂と混合し、塗布し、層形成を行ってもよい。このとき、多孔質顔料とバインダー樹脂とのP/B比(顔料/樹脂比)は、重量比にて50%程度であることが好ましい。
【0033】
マイクロカプセル層は、水を内包したマイクロカプセルを保持した層であり、マイクロカプセルの破壊により水分を放出する。マイクロカプセルは適宜公知の方法により調整してよい。例えば、アミノアルデヒド樹脂、ポリウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、など等の合成高分子壁膜を有するマイクロカプセルを用いてよい。
【0034】
マイクロカプセル層の形成あたり、マイクロカプセルをスクリーンインキワニス中に分散し、塗工してよい。ここで、スクリーンインキワニスは、1)水分散製樹脂、2)水溶性樹脂および水溶性有機溶剤、を主たる材料とする。
【0035】
水分散製樹脂は、1)被印刷物(例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂などからなる被印刷物)に対する接着性、2)印刷皮膜としての耐摩擦性、3)印刷皮膜としての耐ブロッキング性、4)印刷皮膜としての耐水性、5)印刷皮膜としての耐薬品性を備える樹脂を適宜選択し、用いてよい。
【0036】
水溶性樹脂および水溶性有機溶剤は、水に分散可能な溶媒である。例えば、1)メチルセルロース、カルボキシセルロース、ヒドロキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、2)リグニンスルボン酸塩、セラック等の天然高分子、3)ポリアクリル酸の塩、4)スチレン・アクリル酸共重体の塩、5)ビニルナフタレン・アクリル酸共重合体の塩等のアクリル系樹脂、6)スチレン・マイレン酸共重合体の塩、7)ビニルナフタレン酸重合体の塩、8)βナフタレンスルボン酸のホルマリン縮合物の塩等の陰イオン性高分子、9)ポリビニルアルコ−ル、10)ポリビニルピロリドン、などが挙げられる。
【0037】
保持フィルムは、マイクロカプセル層を保持するために配置される。保持フィルムが剥離されるとマイクロカプセル層に応力がかかり、マイクロカプセル層中のマイクロカプセルは破壊される。保持フィルムは、求められる機械強度などの物性を鑑みて、適宜公知の材料から選択してよい。
【0038】
図3に、熱源に生石灰層を用いた本発明の表示体の一実施形態を示す。
図3では、透明基材11上に印刷印字層12が形成され、透明基材11の下層に多孔質隠蔽層13が形成され、多孔質隠蔽層13の下部に熱溶融インキ層14が形成され、表示体上層部が形成されている。また、表示体上層部から、封止層15を挟んで、熱源として、生石灰層16、生石灰層16を保持する多孔質層17、多孔質層17の下層に配置されたマイクロカプセル層18、マイクロカプセル層18を保持する保持フィルム19が配置されている。
【0039】
図4に、図3に示した表示体の使用後の一実施形態を示す。
図4では、保持フィルム19が剥離されることにより、マイクロカプセルより水分が放出され、水を含んだ多孔質層17’、発熱した生石灰16’となり、発熱により溶融したインキ14’は多孔質隠蔽層13を透過し、透過基材11の下部にまで到達している様子を示す。
【0040】
図5に、図3に示した表示体の使用後の一実施形態を示す。
図5では、保持フィルム19に外部から衝撃を与えることでマイクロカプセルより水分が放出され、水を含んだ多孔質層17’、発熱した生石灰16’となり、発熱により溶融したインキ14’は多孔質隠蔽層13を透過し、透過基材11の下部にまで到達している様子を示す。
【0041】
また、熱源は、封止層と接し、酸化により発熱する発熱組成物質層と、発熱組成物質層を保持する空気透過層と、空気透過層を覆う酸素バリアフィルムと、を備えた構成としてもよい。本構成によれば、発熱組成物質層が酸素と反応し酸化が始まると発熱し始めることから、発熱組成物質層の気密の破壊を特定のスイッチとして、発熱の開始を制御することが出来る。このとき、発熱組成物質層の気密の破壊は、空気透過層を覆う酸素バリアフィルムの剥離を行うことにより開始してよい。
【0042】
発熱組成物質層は、金属を含む発熱組成物質が充填された層である。発熱組成物質は、酸素を含む空気に触れることで、発熱組成物質内の金属が酸化され、発熱する。発熱組成物質に含まれる金属としては、鉄粉などが挙げられる。また、発熱組成物質には、酸化を促進させるために、水、活性炭、塩化ナトリウム、保水剤、増粘剤、などを混合してもよい。
【0043】
空気透過層は、発熱組成物質層の粉末が表示体の中央部位に封止されるように、発熱組成物質層を覆うようにして封止層と接着されて設けられる。空気透過層は、発熱時に発熱組成物質層へ酸素を接触させるために空気を透過させることが望まれる。例えば、空気透過層とて、紙、不織布、などを用いてもよい。
【0044】
酸素バリアフィルムは、空気透過層を覆うように設けられる。酸素バリアフィルムは空気中の酸素が透過できない材料により形成される。このため、酸素バリアフィルム存在時では、発熱組成物質層に酸素が供給されず発熱せず、酸素バリアフィルム剥離時では、発熱組成物質層に酸素が供給され発熱が開始される。
【0045】
また、空気透過層と酸素バリアフィルムとの間に粘着層を設けてもよい。粘着層を設けることにより、酸素バリアフィルムと空気透過層との密着性を向上させることが出来、好適に気密を保つことが出来る。また、酸素バリアフィルム剥離時には、粘着層が最外面に配置されることになり、表示体を外部に保持するのに活用することが出来る。よって、ステッカーとしての機能を併せ持つことが出来る。
【0046】
粘着層には、一般的な接着材料を用いてよい。例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系、ポリイソブチル系の粘着剤を単独、もしくはアルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリルニトリル、スチレン、ビニルモノマー等の凝集成分、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有モノマー、アクリルニトリル等に代表される改質成分や重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤、酸化防止剤等の添加剤を必要に応じて添加したものを用いることが出来る。
【0047】
また、粘着層は、空気の抜け穴を有する粘着層であることが好ましい。空気の抜け穴を持たせることで好適に発熱組成物質層へ酸素を接触させることが出来る。空気の抜け穴を有するには、粘着層が、網点状、万線状、格子状のような隙間を有するパターン状に形成すればよい。空気の抜け穴の密度で、酸素の流入速度を制御することが出来ることから、粘着層のパターンにより、発熱組成物質層の発熱時間や発熱温度を調整することが出来る。
【0048】
図6に、熱源に発熱組成物質層を用いた本発明の表示体の一実施形態を示す。
図6では、印刷印字層22、透明基材21、多孔質隠蔽層23、熱溶融インキ層24がこの順で積層された表示体上層部と、発熱組成物質層26、空気透過層27、粘着層28、がこの順で積層され、酸素バリアフィルム29に覆われた表示体下層部と、が、封止層25を挟んで配置された表示体2を示す。
【0049】
図7に、図6に示す本発明の表示体の使用後の一実施形態を示す。
図7では、酸素バリアフィルムが剥離され、酸素により発熱した発熱組成物26’の熱により、熱溶融インキは溶融したインキ24’となり、透明基材11が下部にまで到達している。このため、印刷印字層22から観察したとき、酸素バリアフィルム剥離前とは異なる図柄を示す。また、酸素バリアフィルムを剥離することで、粘着層28が最外面に表出している。
【実施例】
【0050】
<実施例1>
まず、透明基材上に、多孔質層インキを全面に塗布し、多孔質隠蔽層を設けた。
このとき、透明基材には、100μm厚の透明PETを用いた。
また、多孔質層インキの塗工方法には、スクリーン印刷法を用いた。
また、多孔質隠蔽層の乾燥膜厚は20μmとした。
用いた多孔質インキの組成を以下に示す。
【0051】
[多孔質インキの組成]
多孔質シリカ(サイロページ#720:富士シリシア化学株式会社製):50重量部
水性ウレタン樹脂(ハイドランAP−60LM:DIC株式会社製):50重量部
【0052】
次に、形成した多孔質隠蔽層上に、熱溶融インキをパターン印刷することにより熱溶融インキ層を形成し、表示体上層部を得た。
このとき、50℃で溶融する熱溶融インキを用いた。
また、熱溶融インキ層の乾燥膜厚は5μmとした。
また、熱溶融インキの塗工方法にはフレキソ印刷法を用いた。
用いたフレキソ印刷方法について、以下説明を行う。
【0053】
フレキソ印刷法において、インキパン中に熱溶融インキを入れ、インキパンを60℃以上に熱し、熱溶融インキが溶融した状態で、あらかじめ60℃に設定されたファウンテンロールを浸し、さらにあらかじめ50℃に設定されたアニロックスロールに転移させ、余分なインキをドクターで掻き取り、樹脂凸版に転移させ、多孔質隠蔽層上印刷し、その後直ちに0℃に保たれたチルロールに通すことで熱溶融インキを固化し、多孔質隠蔽層に染み込むのを防いだ。
【0054】
次に、保持フィルム上に、マイクロカプセルインキを全面に塗布し、マイクロカプセル層を形成した。
このとき、保持フィルムには50μm厚の白PETを用いた。
また、マイクロカプセル層の乾燥膜厚は20μmとした。
また、マイクロカプセルインキの塗工方法にはスクリーン印刷法を用いた。
用いたマイクロカプセルインキの組成を以下に示す。
【0055】
[マイクロカプセルインキの組成]
電解質溶液内包マイクロカプセル(平均粒子径10μm):50重量部
PVA樹脂(ポバールPVA−117:クラレ株式会社製):5重量部
水:45重量部
【0056】
次に、形成したマイクロカプセル層上に、多孔質インキを全面に塗布することにより多孔質層を形成し、多孔質層の上部に生石灰充填し、表示体下層部を得た。
このとき、多孔質インキの塗工方法にはスクリーン印刷法を用いた。
また、多孔質層の乾燥膜厚は10μmとした。
また、生石灰の充填厚みは10μmとした。
用いた多孔質インキの組成を以下に示す。
【0057】
[多孔質インキの組成]
多孔質シリカ(サイロページ#720:富士シリシア化学株式会社製):50重量部
水性ウレタン樹脂(ハイドランAP−60LM:DIC株式会社製):50重量部
【0058】
次に、封止層の両面に粘着剤を塗布し、片面に上述した表示体上層部、他方の片面に上述した表示体下層部を接着した。
このとき、封止層には20μm厚のアルミホイルを用いた。
また、粘着剤の塗工方法にはバーコーター法を用いた。
また、粘着剤の塗工部位の乾燥膜厚は10μmとした。
用いた粘着剤の組成を以下に示す
【0059】
[粘着剤の組成]
アクリル系粘着剤(オリバインBPS−5127:東洋インキ製造株式会社製):80重量部
MEK溶剤:10重量部
トルエン溶剤:10重量部
【0060】
次に、所望する大きさにカットし、透明基材上に日付等を印刷することにより印刷印字層を形成し、本発明の表示体を得た。
【0061】
(実施例1の表示体使用方法)
まず、実施例1にて製造した表示体の保持フィルムを剥離した。これにより、マイクロカプセル層のマイクロカプセルが破壊され、内包している水が上層の多孔質層に染み込んだ。一定時間後、生石灰と水の発熱反応により熱溶融インキが溶融し、上層の多孔質隠蔽層に染み込み、表層に熱溶融インキ層の印刷パターンが出現した。
よって、使い始めは表層には印刷層と印字のみが表示され、一定時間後、熱溶融インキのパターンが表層に表出し、図柄が変化したことを目視で確認できた。
【0062】
<実施例2>
実施例1と同様に本発明の表示体を製造した。ただし、表示体下層部は以下のように製造された構成のものを用いた。
【0063】
酸素バリアフィルム上に粘着剤を塗布し、空気透過層を接着し、空気透過層の上部に発熱組成物質を充填し、表示体下層部を得た。
このとき、酸素バリアフィルムにはポリプロピレン製の離型紙を用いた。
また、粘着剤の塗工方法にはスクリーン印刷法を用いた。
また、粘着剤の塗布パターンは、75メッシュ20%網点パターン状とした。
また、粘着剤の塗工部位の乾燥膜厚は20μmとした。
また、空気透過層には、不織布を用いた。
用いた粘着剤の組成を以下に示す。
【0064】
[粘着剤の組成]
アクリル系粘着剤(オリバインBPS−5127:東洋インキ製造株式会社製):80重量部
MEK溶剤:10重量部
トルエン溶剤:10重量部
【0065】
(実施例2の表示体使用方法)
まず、実施例2にて製造した表示体の酸素バリアフィルムを剥離した。これにより、発熱組成物質層に酸素が行き渡り、発熱組成物質層が発熱を始めた。一定時間後、発熱組成物質層の発熱により熱溶融インキが溶融し、上層の多孔質隠蔽層に染み込み、表層に熱溶融インキ層の印刷パターンが出現した。
よって、使い始めは表層には印刷層と印字のみが表示され、一定時間後、熱溶融インキのパターンが表層に表出し、図柄が変化したことを目視で確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の表示体は、一定時間経過後、不可逆的に図柄が変化することが求められる分野について、広範に利用が出来る。例えば、イベントなどの入場券、スキー場のリフト券、広告媒体、期限通知連絡媒体などに利用できる。
【符号の説明】
【0067】
1、2……表示体
11、21……透明基材
12、22……印刷印字層
13、23……多孔質隠蔽層
14、24……熱溶融インキ
14’、24’……溶融したインキ
15、25……封止層
16……生石灰層
16’……発熱した生石灰
17……多孔質層
17’……水を含んだ多孔質層
18……マイクロカプセル層
18’……破壊されたマイクロカプセル
19……保持フィルム
26……発熱組成物質層
26’……酸素により発熱した発熱組成物
27……空気透過層
28……粘着層
29……酸素バリアフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源と、
前記熱源上に形成された封止層と、
前記封止層上に形成された熱溶融インキ層と、
前記熱溶融インキ層上に形成された多孔質隠蔽層と、
前記多孔質隠蔽層上に形成された透明基材と、
前記透明基材上に形成された印刷印字層と、
を備えたことを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記熱源は、
前記封止層と接する生石灰層と、
前記生石灰層を保持する多孔質層と、
前記多孔質に接し、水分を含むマイクロカプセル層と、
前記マイクロカプセル層を保持する保持フィルムと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記熱源は、
前記封止層と接し、酸化により発熱する発熱組成物質層と、
前記発熱組成物質層を保持する空気透過層と、
前記空気透過層を覆う酸素バリアフィルムと、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項4】
前記空気透過層と酸素バリアフィルムとの間に粘着層を設けたこと
を特徴とする請求項3に記載の表示体。
【請求項5】
前記粘着層は、空気の抜け穴を有する粘着層であること
を特徴とする請求項4に記載の表示体。
【請求項6】
請求項2に記載の表示体を使用する表示体使用方法であって、
前記保持フィルムを剥離することによりマイクロカプセル層の水分を放出するマイクロカプセル破壊ステップと、
マイクロカプセルから放出された水分が前記生石灰層と接し、前記生石灰層が発熱する生石灰発熱ステップと、
前記生石灰層からの発熱により前記熱溶融インキ層が溶融する熱溶融インキ溶融ステップと、
溶融した熱溶融インキが多孔質隠蔽層を通過し、前記透明基材と接する図柄表示ステップと、
を備えたことを特徴とする表示体使用方法。
【請求項7】
請求項2に記載の表示体を使用する表示体使用方法であって、
前記表示体に外部から衝撃を加え、マイクロカプセル層の水分を放出するマイクロカプセル破壊ステップと、
マイクロカプセルから放出された水分が前記生石灰層と接し、前記生石灰層が発熱する生石灰発熱ステップと、
前記生石灰層からの発熱により前記熱溶融インキ層が溶融する熱溶融インキ溶融ステップと、
溶融した熱溶融インキが多孔質隠蔽層を通過し、前記透明基材と接する図柄表示ステップと、
を備えたことを特徴とする表示体使用方法。
【請求項8】
請求項3に記載の表示体を使用する表示体使用方法であって、
前記酸素バリアフィルムを剥離する酸素バリアフィルム剥離ステップと、
前記空気透過層を通過した酸素により発熱組成物質層が酸化し、発熱組成物質層が発熱する発熱組成物質層発熱ステップと、
前記発熱組成物質層からの発熱により前記熱溶融インキ層が溶融する熱溶融インキ溶融ステップと、
溶融した熱溶融インキが多孔質隠蔽層を通過し、前記透明基材と接する図柄表示ステップと、
を備えたことを特徴とする表示体使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−223993(P2012−223993A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93954(P2011−93954)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】