表示体及びその製造方法
【課題】より高い偽造防止効果を実現する。
【解決手段】表示体100は、均一に配置された複数の凹部RCからなるレリーフ構造を一方の主面に含み、複数の凹部RCは白色光で照明したときに上記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている基礎構造層10と、上記主面のうち複数の凹部RCが設けられた領域の少なくとも一部を被覆した光透過層30とを備えている。光透過層30は、例えば、上記領域の第1及び第2部分領域で凹部RCが異なる深さを有するように若しくは上記第1及び第2部分領域の一方においてのみ凹部RCが完全に埋め込まれるように上記第1及び第2部分領域の少なくとも一方を被覆しており、上記白色光で照明したときに、上記レリーフ構造のうち、上記第1部分領域に対応した第1部分DP1と、上記第2部分領域に対応した第2部分DP2とに異なる構造色を表示させる。
【解決手段】表示体100は、均一に配置された複数の凹部RCからなるレリーフ構造を一方の主面に含み、複数の凹部RCは白色光で照明したときに上記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている基礎構造層10と、上記主面のうち複数の凹部RCが設けられた領域の少なくとも一部を被覆した光透過層30とを備えている。光透過層30は、例えば、上記領域の第1及び第2部分領域で凹部RCが異なる深さを有するように若しくは上記第1及び第2部分領域の一方においてのみ凹部RCが完全に埋め込まれるように上記第1及び第2部分領域の少なくとも一方を被覆しており、上記白色光で照明したときに、上記レリーフ構造のうち、上記第1部分領域に対応した第1部分DP1と、上記第2部分領域に対応した第2部分DP2とに異なる構造色を表示させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、偽造防止効果、装飾効果及び/又は美的効果を提供する光学技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券、証明書、ブランド品、電子機器及び個人認証媒体などの物品には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、このような物品には、偽造防止効果に優れた表示体を支持させることがある。
【0003】
このような表示体の多くは、回折格子、ホログラム及びレンズアレイ等の微細構造を含んでいる。これら微細構造は、例えば観察角度の変化に応じて、色の変化を生じる。また、これら微細構造は、解析及び偽造することが困難である。それゆえ、このような表示体は、優れた偽造防止効果を発揮し得る。
【0004】
しかしながら、近年のエンボス技術の発達により、微細構造の作製の難易度が低下してきている。また、多層薄膜フィルムが一般的な包装用フィルムとして販売され始めたことにより、上記の微細構造と類似した光学効果を得ることが比較的容易となりつつある。それゆえ、通常の微細構造を含んだ表示体では、偽造防止効果が不十分な場合がある。
【0005】
そこで、近年では、更に高い偽造防止効果を達成すべく、種々の工夫が為されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、ナノインプリントによる凹凸パターンが設けられたコーティング膜を金属基板上に備えた金属製ケースが記載されている。また、特許文献2には、深さ方向に沿って溝の幅が変調している凹凸形状を有した凹凸パターンが表面に形成された基体が記載されている。そして、この特許文献2には、凹凸パターンの損傷を抑制又は回避するために、凹凸パターンの全体の上に保護膜を形成することが記載されている。
【0007】
しかしながら、これら文献に記載の方法では、多色の構造色をオンデマンドで且つ高効率で表示させることは、不可能であるか又は極めて困難である。例えば、個人情報などの固有情報を多色の構造色により表示させることは、不可能であるか又は極めて困難である。
【0008】
また、特許文献3には、インクジェット方式で形成された情報印字層上に、パール印刷又は透明蛍光印刷のいずれかの印刷層が形成されてなる記録媒体が記載されている。この文献には、このような構成を採用することにより、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せずに、高いセキュリティ性を備えた記録媒体を提供できる旨が記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載されている光学効果は、市販の蛍光インキなどを用いてパターンを形成することにより、比較的容易に模倣することができる。それゆえ、特許文献3に記載されている構成を採用したとしても、偽造防止効果は十分であるとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−122773号公報
【特許文献2】特開2009−101671号公報
【特許文献3】特開2009−143192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、より高い偽造防止効果を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1側面によると、均一に配置された複数の凹部からなるレリーフ構造を一方の主面に含み、前記複数の凹部は白色光で照明したときに前記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている基礎構造層と、前記主面のうち前記複数の凹部が設けられた領域の少なくとも一部を被覆した光透過層とを具備し、前記光透過層は、前記領域の第1及び第2部分領域で前記凹部が異なる深さを有するように若しくは前記第1及び第2部分領域の一方においてのみ前記凹部が完全に埋め込まれるように前記第1及び第2部分領域の少なくとも一方を被覆しており、前記白色光で照明したときに、前記レリーフ構造のうち、前記第1部分領域に対応した第1部分と、前記第2部分領域に対応した第2部分とに異なる構造色を表示させるか、又は、前記領域の第1部分領域を被覆した第1光透過層と、前記第1光透過層とは屈折率が異なり、前記領域の第2部分領域を被覆した第2光透過層とを含み、前記白色光で照明したときに、前記レリーフ構造のうち、前記第1部分領域に対応した第1部分と、前記第2部分領域に対応した第2部分とに異なる構造色を表示させる表示体が提供される。
【0013】
本発明の第2側面によると、均一に配置された複数の凹部からなるレリーフ構造を一方の主面に含み、前記複数の凹部は白色光で照明したときに前記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている基礎構造層を準備することと、前記主面のうち前記複数の凹部が設けられた第1及び第2部分領域で前記凹部が異なる深さを有するように若しくは前記第1及び第2部分領域の一方においてのみ前記凹部が完全に埋め込まれるように、前記第1及び第2部分領域の少なくとも一方を光透過材料で被覆するか、又は、前記第1及び第2部分領域を、それぞれ、屈折率が互いに異なる第1及び第2光透過材料で被覆して、前記白色光で照明したときに、前記レリーフ構造のうち、前記第1部分領域に対応した第1部分と、前記第2部分領域に対応した第2部分とに異なる構造色を表示させる光透過層を形成することとを含んだ表示体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、より高い偽造防止効果を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1及び図2に示す表示体における複数の凹部の配置を概略的に示す平面図。
【図4】図1及び図2に示す表示体の一変形例を示す断面図。
【図5】図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図。
【図6】図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図。
【図7】図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図。
【図8】図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図。
【図9】基礎構造層の一変形例を示す断面図。
【図10】基礎構造層の他の変形例を示す断面図。
【図11】本発明の他の態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図12】本発明の一態様に係る粘着ステッカを概略的に示す断面図。
【図13】本発明の一態様に係る転写箔を概略的に示す断面図。
【図14】表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、ここで「可視域の光」とは、波長が400nm乃至800nmの範囲内にある光を意味していることとする。
【0017】
図1は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図である。図1及び図2では、表示体100の主面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、表示体100の主面に垂直な方向をZ方向としている。
【0018】
図1及び図2に示す表示体100は、基礎構造層10と反射層20と光透過層30とを含んでいる。以下では、基礎構造層10に対して光透過層30側の面を「前面」と呼び、光透過層30に対して基礎構造層10側の面を「背面」と呼ぶこととする。
【0019】
図1及び図2に示す表示体100は、第1表示部DP1と第2表示部DP2と第3表示部DP3とを含んでいる。第1表示部DP1は、後述する複数の凹部RCと光透過層30との双方を含んでいる。第2表示部DP2は、複数の凹部RCを含み且つ光透過層30を含んでいない。第3表示部DP3は、複数の凹部RC及び光透過層30の何れも含んでいない。なお、表示部DP3は、省略してもよい。
【0020】
(基礎構造層)
基礎構造層10は、一方の主面の少なくとも一部に、複数の凹部RCからなるレリーフ構造を含んでいる。図1及び図2には、一例として、上記主面の一部のみに複数の凹部RCが形成されている場合を描いている。
【0021】
複数の凹部RCは、白色光で照明したときに、上記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている。この構造色の表示は、例えば、光の吸収、回折及び/又は散乱に起因している。その機構などについては、後で詳しく説明する。
【0022】
複数の凹部RCは、上記主面の少なくとも一部に、均一に配置されている。即ち、これら複数の凹部RCからなる領域では、凹部RCの形状、深さ、平均中心間距離及び配置パターンが、領域全体に亘って一定である。なお、後述するように、基礎構造層10は、複数の凹部RCとは形状、深さ、平均中心間距離及び配置パターンの少なくとも1つが異なった他の凹部を備えた領域を更に含んでいてもよい。
【0023】
これら複数の凹部RCは、後述するように、規則的に配置されていてもよく、不規則に配置されていてもよい。図1及び図2には、一例として、複数の凹部RCが規則的に配置されている場合を描いている。
【0024】
図3は、図1及び図2に示す表示体における複数の凹部の配置を概略的に示す平面図である。
図3に示すように、図1及び図2に示す表示体100では、複数の凹部RCは、二次元的に配列している。より具体的には、これら複数の凹部RCの配列は、正方格子を形成している。
【0025】
複数の凹部RCの断面形状は、例えば、V字形状及びU字形状等の先細り形状とするか又は矩形状とする。図2には、一例として、上記の断面形状がV字形状である場合を描いている。
【0026】
複数の凹部RCの平均中心間距離は、例えば180nm乃至5000nmの範囲内とし、典型的には180nm乃至415nmの範囲内とする。また、複数の凹部RCの深さは、例えば180nm乃至5000nmの範囲内とし、典型的には180nm乃至415nmの範囲内とする。また、複数の凹部RCの開口の幅に対する深さの比の平均値(以下、アスペクト比ともいう)は、例えば、0.01乃至1.0の範囲内とする。このアスペクト比が過度に小さいと、熱及び圧力などの外的要因による変形によって、上記レリーフ構造が表示する構造色が変化又は消失してしまう可能性が高くなる。このアスペクト比が過度に大きいと、後述する光透過層30の形成による構造色の変化を生じさせることが困難となることがある。また、このアスペクト比が過度に大きいと、基礎構造層10の生産性が低下する場合がある。
【0027】
基礎構造層10は、典型的には、基材と、その上に形成された樹脂層とを含んでいる。この基材としては、典型的には、フィルム基材を使用する。このフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム及びポリプロピレン(PP)フィルム等のプラスチックフィルムを使用する。或いは、基材として、紙、合成紙、プラスチック複層紙又は樹脂含浸紙を使用してもよい。なお、基材は、省略してもよい。
【0028】
樹脂層は、一方の主面の少なくとも一部に、複数の凹部RCからなるレリーフ構造を含んでいる。この樹脂層は、例えば、後述する方法により形成される。
【0029】
樹脂層の厚みは、例えば0.1μm乃至10μmの範囲内とする。この厚みが過度に大きいと、加工時の加圧等による樹脂のはみ出し及び/又は皺の形成が生じ易くなる。この厚みが過度に小さいと、所望の凹部RCの形成が困難となる場合がある。また、樹脂層の厚みは、その主面に設けるべき凹部RCの深さと等しくするか又はそれより大きくする。この厚みは、例えば、凹部RCの深さの1乃至10倍の範囲内とし、典型的には、その3乃至5倍の範囲内とする。
【0030】
基礎構造層10は、例えば、微細な凸部を設けた原版を熱硬化性又は放射線硬化型樹脂に押し当て、この状態で樹脂を硬化させることにより製造することができる。或いは、基礎構造層10は、加熱した熱可塑性樹脂に原版を押し当て、この状態で樹脂を冷却することにより製造することができる。この際、これら凸部の形状は、基礎構造層10の一方の主面に設ける複数の凹部RCの形状に対応した形状とする。なお、ロール状の原版を用いると、基礎構造層10の連続成形が容易となる。
【0031】
基礎構造層10の製造に用いる上記の原版は、例えば、電子線描画装置を用いて製造する。こうすると、上述した複数の凹部RCを高い精度で製造することができる。なお、通常は、原版の凹凸構造を転写して反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を製造する。そして、必要に応じ、複製版を原版として用いて反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を更に製造する。実際の製造では、通常、このようにして得られる複製版を使用する。
【0032】
基礎構造層10は、例えば、特許第4194073号公報などの文献に開示されている「プレス法」を用いて製造することができる。即ち、基礎構造層10は、例えば、熱可塑性樹脂を塗布した基材上に、上記の原版を、熱を印加しながら押し当てる方法により製造することができる。この場合、上記の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、これらの混合物、又は、これらの各々に対応した単量体の共重合物を使用する。
【0033】
或いは、基礎構造層10は、実用新案登録第2524092号公報などの文献に開示されている「キャスティング法」を用いて製造してもよい。即ち、基礎構造層10は、例えば、基材上に熱硬化性樹脂を塗布し、これに上記の原版を押し当てながら熱を印加し、その後、原版を取り除く方法により製造してもよい。この場合、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、これらの混合物、又は、これらの各々に対応した単量体の共重合物を使用する。なお、このウレタン樹脂は、例えば、反応性水酸基を有したアクリルポリオール及びポリエステルポリオール等に、架橋剤としてポリイソシアネートを添加して、これらを架橋させることにより得られる。
【0034】
或いは、基礎構造層10は、特開2007−118563号公報などの文献に開示されている「フォトポリマー法」を用いて製造してもよい。フォトポリマー法は、平坦な基材と上記の原版との間に放射線硬化樹脂の材料を流し込み、紫外線等の放射線を照射して上記材料を硬化させ、その後、原版を取り除く方法である。この方法は、プレス法又はキャスティング法と比較して、凹部RCの成形精度がより高い。また、この方法によると、耐熱性及び耐薬品性により優れた基礎構造層10が得られる。
【0035】
なお、基礎構造層10は、基材上に放射線硬化樹脂の材料を塗布し、これに原版を押し当てながら放射線を照射して上記材料を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により製造してもよい。
【0036】
放射線硬化樹脂の材料は、典型的には、重合性化合物と開始剤とを含んでいる。
重合性化合物としては、例えば、光ラジカル重合が可能な化合物を使用する。光ラジカル重合が可能な化合物としては、例えば、エチレン性不飽和結合又はエチレン性不飽和基を有したモノマー、オリゴマー又はポリマーを使用する。或いは、光ラジカル重合が可能な化合物として、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレート等のオリゴマー、又は、ウレタン変性アクリル樹脂及びエポキシ変性アクリル樹脂等のポリマーを使用してもよい。
【0037】
重合性化合物として光ラジカル重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤としては、光ラジカル重合開始剤を使用する。この光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系化合物、アントラキノン及びメチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−アミノアセトフェノン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン等のフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、又は、ミヒラーズケトンを使用する。
【0038】
或いは、重合性化合物として、光カチオン重合が可能な化合物を使用してもよい。光カチオン重合が可能な化合物としては、例えば、エポキシ基を備えたモノマー、オリゴマー若しくはポリマー、オキセタン骨格含有化合物、又は、ビニルエーテル類を使用する。
【0039】
重合性化合物として光カチオン重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤としては、光カチオン重合開始剤を使用する。この光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩又は混合配位子金属塩を使用する。
【0040】
或いは、重合性化合物として、光ラジカル重合が可能な化合物と光カチオン重合が可能な化合物との混合物を使用してもよい。この場合、開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤との混合物を使用する。或いは、この場合、光ラジカル重合及び光カチオン重合の双方の開始剤として機能し得る重合開始剤を使用してもよい。このような開始剤としては、例えば、芳香族ヨードニウム塩又は芳香族スルホニウム塩を使用する。
【0041】
なお、放射線硬化樹脂に占める開始剤の割合は、例えば、0.1乃至15質量%の範囲内とする。
【0042】
放射線硬化樹脂は、離型剤、増感色素、染料、顔料、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、タレ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、含窒素化合物、エポキシ樹脂等の架橋剤、又はこれらの組み合わせを更に含んでいてもよい。また、放射線硬化樹脂には、その成形性を向上させるべく、非反応性の樹脂を更に含有させてもよい。この非反応性の樹脂としては、例えば、後述する熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を使用することができる。
【0043】
基礎構造層10は、基材上に、微粒子を二次元的に配列させてなる単層粒子膜を形成することにより製造してもよい。基材上に単層粒子膜を形成することにより基礎構造層10を製造すると、他の場合と比較して、複数の凹部RCをより安定的に且つより高い生産性で形成することが可能となる。
【0044】
この単層粒子膜は、例えば、微粒子を含んだ溶液中に基材を浸し、その後、この基材を一定の速度で徐々に引き上げることにより形成する。或いは、この単層粒子膜は、微粒子とバインダ樹脂とを含んだインキを、塗布量を厳密に制御しながら基材上に塗布することにより形成してもよい。
【0045】
上記の微粒子としては、典型的には、球状の微粒子を使用する。こうすると、基材上に、微粒子を規則的に配列させることが容易となる。或いは、上記の微粒子として、粒径のバラつきが小さい不定形粒子を用いてもよい。こうすると、単層粒子膜が粒子の配列に依存した周期構造を有するため、複数の凹部RCに、構造色に対応した光と共に、不定形な粒子形状に起因した散乱光を射出させることができる。
【0046】
なお、複数の凹部RCは、これら凹部RCの前駆構造としての凹部を形成した後に、これら凹部を熱及び/又は圧力で変形させることにより形成してもよい。例えば、これら凹部RCは、まず、より深い凹部を形成し、その後、これら凹部を押しつぶすことにより形成してもよい。このような方法を採用すると、例えば、複数の凹部RCのアスペクト比のオンデマンドでの調節を比較的容易に行うことが可能となる。
【0047】
(反射層)
反射層20は、基礎構造層10の主面のうち複数の凹部RCが設けられた領域の少なくとも一部を被覆している。反射層20は、後述する光透過層30とは屈折率が異なっている。
【0048】
典型的には、反射層20の材料(以下、反射材料ともいう)として、光透過層30の材料(以下、光透過材料ともいう)との屈折率の差が0.2以上であるものを使用する。この差が過度に小さいと、反射層20と光透過層30との界面における反射が生じ難くなる場合がある。
【0049】
反射材料としては、典型的には、金属材料を使用する。この金属材料としては、例えば、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Ag、及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられる。
【0050】
透明性が比較的高い反射材料(以下、透明反射材料ともいう)として、以下に列挙するセラミック材料又は有機ポリマー材料を使用してもよい。なお、以下に示す化学式又は化合物名の後に記載した括弧内の数値は、各材料の屈折率を意味している。
【0051】
即ち、セラミック材料としては、例えば、Sb2O3(3.0)、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb2O3(5)、WO3(5)、SiO(5)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(5)、MgO(1)、SiO2(1.45)、Si2O2(10)、MgF2(4)、CeF3(1)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1)、Al2O3(1)又はGaO(2)を使用することができる。有機ポリマー材料としては、例えば、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)又はポリスチレン(1.60)を使用することができる。
【0052】
透明反射材料を用いる場合、反射層20の可視域の光に対する全光線透過率は、典型的には、50%以上とする。こうすると、反射層20の背面側に、顔写真、文字及びパターンなどの印刷情報を記録し且つこれら情報を視認可能とすることができる。なお、この「全光線透過率」は、日本工業規格JIS K7361−1に準拠した測定値である。
【0053】
反射材料としては、以上に挙げたものの中から、実用に適した耐久性を有するものを適宜選択して用いることができる。或いは、以上に挙げた材料を混合して用いてもよく、それぞれの材料からなる層を積層して用いてもよい。
【0054】
反射層20は、例えば、ドライコーティング法により形成する。このドライコーティング法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びCVD(Chemical Vapor Deposition)法が挙げられる。ドライコーティング法を採用すると、厚みの均一性が高い薄膜を、比較的容易に形成することが可能である。
【0055】
反射層20は、ウェットコーティング法により形成してもよい。この場合、まず、上記の反射材料の微粒子と溶剤とバインダとを含んだインキを準備する。そして、このインキを、基礎構造層10上に、インクジェット法、グラビア法、マイクログラビア法、ロールコート法、及びディップコート法などの印刷方法により塗布する。このようにして、反射層20を形成する。なお、反射材料の微粒子を含んだ上記インキは、バインダを含んでいなくてもよい。
【0056】
反射層20を反射材料の微粒子を含んだインキを用いて形成する場合、この微粒子の平均粒径は、典型的には、複数の凹部RCの平均中心間距離及び深さの5分の1以下とする。この平均粒径が過度に大きいと、所望する反射率が得られないか、又は、複数の凹部RCが反射層20により消失して構造色の表示が困難となる可能性がある。なお、ここで「平均粒径」とは、動的散乱法により測定した平均粒子径である。
【0057】
反射層20は、多層構成を有していてもよい。例えば、反射層20は、互いに屈折率が異なった複数の層からなる多層干渉膜であってもよい。
【0058】
反射層20の厚みは、上記複数の凹部RCの深さと比較してより小さくし、典型的には、この深さの2分の1以下とする。この厚みが過度に大きいと、後述する光透過層30の形成に起因した光学効果が不十分となる可能性がある。
【0059】
反射層20は、省略してもよい。但し、反射層20を設けると、表示体100に、視認性がより優れた像を表示させることが可能となる。また、反射層20を設けると、複数の凹部RCの損傷を生じ難くすることも可能となる。なお、反射層20を省略する場合、基礎構造層10と後述する光透過層30とで、屈折率を互いに異ならしめる。
【0060】
なお、反射層20を省略するか又は透明反射材料を用いて反射層20を形成した場合、後述する光透過層30の背面側に、印刷情報を記録した層を設けることが可能となる。それゆえ、この場合、表示体100を、ID(Identification)カード及びパスポートなどに使用可能な偽造防止用オーバーシートに応用することが可能となる。
【0061】
(光透過層)
光透過層30は、反射層20を間に挟んで、基礎構造層10の主面のうち複数の凹部RCが設けられた領域の少なくとも一部と向き合っている。或いは、光透過層30は、上記領域の少なくとも一部を被覆している。図1及び図2には、一例として、光透過層30が、反射層20を間に挟んで、上記領域の一部のみと向き合っている場合を描いている。図1及び図2に示す表示体100では、上記領域のうち光透過層30と向き合った部分を第1部分領域PR1と呼び、上記領域のうち第1部分領域PR1以外の部分を第2部分領域PR2と呼ぶ。部分領域PR1及びPR2は、それぞれ、表示部DP1及びDP2に対応している。
【0062】
図1及び図2に示す表示体100では、複数の凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30の厚みは、光透過層30が存在しない場合の複数の凹部RCの深さと比較してより小さい。また、複数の凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30の厚みは、互いに隣り合った複数の凹部RCの間の位置における光透過層30の厚みと比較してより大きい。
【0063】
光透過層30は、可視域の光に対する透過性を有している。光透過層30の可視域の光に対する全光線透過率は、例えば30%以上とし、典型的には50%以上とし、特に好ましくは80%以上とする。この透過率が過度に小さいと、光透過層30に起因した後述する光学効果が視認し難くなる可能性がある。なお、この「全光線透過率」は、日本工業規格JIS K7361−1に準拠した測定値である。
【0064】
光透過層30は、反射層20とは異なった屈折率を有しており、また、光透過層を間に挟んで反射層20と隣接した外部領域とも異なる屈折率を有している。光透過層30は、光透過材料からなり、例えば、有機材料、無機材料、有機無機複合材料、又はこれらの混合物を含んでいる。
【0065】
有機材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、これらの混合物、及びこれらの各々に対応した単量体の共重合物若しくは二液硬化物が挙げられる。
【0066】
無機材料としては、例えば、エチルシリケート、プロピルシリケート及びブチルシリケートなどの金属アルコキシドが挙げられる。
【0067】
有機無機複合材料としては、例えば、上記有機材料に対応した単量体と上記無機材料に対応した単量体との共重合物が挙げられる。
【0068】
光透過層30中には、微粒子を分散させてもよい。こうすると、例えば、光透過層30の屈折率を、所望の値に調節することが可能となる。
この微粒子としては、例えば、有機材料からなる微粒子を用いる。この有機材料としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂及び酢酸ビニル樹脂が挙げられる。
【0069】
また、この微粒子として、無機材料からなる微粒子を用いてもよい。この無機材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化錫、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ホルミウム、酸化ビスマス、酸化コバルト及びITO(Indium Tin Oxide)などの酸化物、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、チタン、鉄、アルミ、マグネシウム、クロム、及び錫などの金属及びこれらの合金、並びに、ランタノイド及びその化合物が挙げられる。
【0070】
或いは、この微粒子として、有機無機複合材料からなる微粒子を用いてもよい。このような微粒子としては、有機材料と無機材料とを含んだ混合物からなる微粒子、及び、有機材料と無機材料とを含み且つコアシェル構造を有した微粒子が挙げられる。
【0071】
更には、この微粒子として、内部に空気又はその他のガスを含んだ中空粒子を用いても良い。この中空粒子は、光透過層30中に空気又はガスを気泡として分散させることにより得られるものであってもよい。
【0072】
光透過層30中に微粒子を分散させる場合、これら微粒子の平均粒径は、例えば400nm以下とし、典型的には100nm以下とする。この平均粒径が過度に大きいと、これら微粒子に起因した過度の光散乱により、光透過層30に起因した後述する光学効果が視認し難くなる可能性がある。なお、ここで「平均粒径」とは、動的散乱法により測定した平均粒子径である。
【0073】
光透過層30は、典型的には無色である。このような構成を採用すると、光透過層30に起因した後述する光学効果が特に顕著となる。また、こうすると、光透過層30の存在が比較的悟られ難くなり、表示体100の偽造防止効果を更に向上させることができる。
【0074】
光透過層30は、有色であってもよい。このような構成を採用すると、光透過層30の色と構造色との組み合わせによって、更に複雑な色調の像を表現することが可能となる。例えば、光透過層30は、色材を更に含んでいてもよい。この色材としては、例えば、顔料又は染料が挙げられる。この色材は、体質顔料であってもよい。
【0075】
図1及び図2から明らかなように、光透過層30は、表示体100の最表層となり得る。そのため、光透過層30は、表面硬度が高く且つ磨耗性及び擦傷性に優れていることが好ましい。このような特性を有した光透過層30の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、電離線硬化樹脂、二液硬化樹脂、熱硬化樹脂、並びに、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂などを含んだハードコート材料が挙げられる。また、これら材料は、ワックス及び/又は滑剤を更に含んでいてもよい。
【0076】
光透過層30は、例えば、光透過材料の印刷により形成する。この印刷法としては、例えば、インクジェット印刷、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、ロールコート印刷、及びフレキソ印刷法が挙げられる。これら印刷は、例えば、光透過層30の材料を含んだインキ又は分散液を基礎構造層10又は反射層20上に塗布した後、これらを乾燥させることにより行う。
【0077】
光透過層30は、印刷法以外の方法により形成してもよい。例えば、光透過層30は、転写法又はラミネート法により形成してもよい。なお、光透過層30の形成により個人情報などを表示させる場合には、この光透過層30は、当該情報の痕跡が残り得るインクリボンなどを用いない方法、例えばインクジェット印刷法で形成することが望ましい。
【0078】
(光学効果)
以下、表示体100が発揮し得る光学効果について説明する。
まず、その前提として、基礎構造層10又は基礎構造層10と反射層20との積層構造のみに起因した光学効果について説明する。以下では、簡単のため、反射層20を省略した場合について説明する。
【0079】
基礎構造層10の一方の主面には、上述した通り、均一に配置された複数の凹部RCからなるレリーフ構造が設けられている。そして、これら複数の凹部RCは、白色光で照明したときに上記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている。
【0080】
レリーフ構造が表示する構造色は、例えば、光の吸収に基づいた構造色である。このような構造色は、例えば光の選択吸収により、即ち、複数の凹部RCに、可視域の光のうち特定の波長領域の光を他の波長領域の光と比較してより高い効率で吸収させることにより表示可能となる。即ち、レリーフ構造を白色光で照明したときに、特定の波長領域の光が複数の凹部RCにおいて吸収され、それ以外の波長領域の光の全部又は一部が複数の凹部RCから反射、回折又は散乱して射出されるようにする。これにより、レリーフ構造に、特定の構造色を表示させることができる。
【0081】
レリーフ構造に光の吸収に基づいた構造色を表示させるためには、例えば、以下のような構成を採用する。即ち、複数の凹部RCの各々を、その底部に向けて先細りした形状とする。このような構成を採用すると、これら凹部RCに入射した光は、各凹部RC内で他数回の反射を生じ得る。そして、反射光の一部又は全部は、凹部RCの外側へと射出されることなしに、反射を繰り返して次第に減衰する。
【0082】
例えば、複数の凹部RCを、レリーフ構造を白色光で照明したときにこの照明光の全て又は極めて多くがこれら複数の凹部RCの前方に戻らないように設計すると、基礎構造層10の主面のうち凹部RCが設けられた領域に、黒色の構造色を表示させることができる。或いは、複数の凹部RCを、レリーフ構造を白色光で照明したときに、可視域の光のうち一部の波長領域の光のみがこれら凹部RCの前方に戻るように設計すると、基礎構造層10の主面のうち凹部RCが設けられた領域に、上記波長領域に対応した構造色を表示させることができる。
【0083】
レリーフ構造に光の吸収に基づいた構造色を表示させる場合、この構造色は、例えば、複数の凹部RCの平均中心間距離及び/又はアスペクト比を調節することにより適宜変更することができる。例えば、凹部RCのアスペクト比を大きくすることにより、より黒色に近い構造色を表示させることができる。また、複数の凹部RCのアスペクト比を小さくすることにより、黒色以外の所望の構造色を表示させることができる。例えば、複数の凹部RCの平均中心間距離を400nm以下とし且つアスペクト比を0.5より大きくすると、上記レリーフ構造に、黒色に近い構造色を表示させることができる。
【0084】
レリーフ構造が表示する構造色は、複数の凹部RCによる回折に基づいた構造色であってもよい。この構造色は、例えば、これら凹部RCが回折格子を形成するように、これらを規則的に配置することにより表示させることができる。特には、複数の凹部RCの平均中心間距離を180nm乃至830nmの範囲内とすると、一次回折光などの低次の回折光に起因した構造色が、高い視認性で且つ幅広い観察角度で視認できる。
【0085】
レリーフ構造が表示する構造色は、複数の凹部RCによる散乱に基づいた構造色であってもよい。この構造色は、例えば、これら凹部RCを不規則に配置することにより表示させることができる。この散乱機構としては、例えば、レイリー散乱、ミー散乱及び回折散乱が挙げられる。
【0086】
次に、光透過層30の形成に起因した光学効果について説明する。以下では、簡単のため、表示体100が基礎構造層10及び光透過層30のみからなる場合について説明する。
【0087】
図1乃至図3を参照しながら説明した表示体100では、光透過層30は、基礎構造層10の主面のうち複数の凹部RCが設けられた領域を部分的に被覆している。即ち、光透過層30は、先の領域のうち第1部分領域PR1のみを被覆している。また、この光透過層30は、これと隣接した外部領域とは異なった屈折率を有している。
【0088】
それゆえ、光透過層30を設けることにより、第1部分領域PR1において、凹部RC内における光学距離(屈折率と実際の距離との積)を変化させることができる。即ち、光透過層30を設けることにより、例えば、複数の凹部RCの実効的な形状、深さ及び開口の幅などを変化させることができる。
【0089】
また、基礎構造層10に設けられたレリーフ構造が繰り返し反射に基づく光の吸収に起因した構造色を表示する場合、光透過層30を設けることにより、複数の凹部RCに入射する光を、光透過層30と上記の外部領域との界面において屈折させることができる。それゆえ、こうすると、この入射光に対応した繰り返し反射光の凹部RC内における光路を変化させることが可能となる。
【0090】
したがって、光透過層30を設けると、第1部分領域PR1に対応した第1表示部DP1に、基礎構造層10のみが表示する構造色とは異なった構造色を表示させることが可能となる。
【0091】
他方、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体100では、光透過層30は、第2部分領域PR2を被覆していない。したがって、この第2部分領域PR2に対応した第2表示部DP2は、基礎構造層10が表示する構造色と同一の構造色を表示する。
【0092】
以上より、光透過層30は、第1表示部DP1と第2表示部DP2とに、異なる構造色を表示させることができる。
【0093】
第1表示部DP1に表示させる構造色は、第1部分領域PR1上に形成する光透過層30の厚み及び屈折率などを変化させることにより、自在に調節することができる。また、第1表示部DP1の形状も、光透過層30を形成する位置を制御することにより、自在に調節することができる。即ち、光透過層30の形成により、所望のパターンを、オンデマンドで記録することができる。
【0094】
この光透過層30の形成は、上述したように、印刷法などによって、簡易に且つ高効率で行うことができる。即ち、以上のような構成を採用すると、簡易に且つ高効率で、所望のパターンを記録することが可能となる。
【0095】
図1乃至図3を参照しながら説明した表示体100では、凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30の厚みは、光透過層30が存在しない場合の凹部RCの深さと比較してより小さい。即ち、光透過層30は、第1部分領域PR1に含まれる複数の凹部RCの各々を、部分的に埋めている。この場合、光透過層30がこれら凹部RCの各々を完全に埋めている場合と比較して、光透過層30の材料の使用量が少なくて済む。加えて、この場合、表示体100の厚みを抑制することができる。
【0096】
また、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体100では、複数の凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30の厚みは、互いに隣接した凹部RCの間の位置における光透過層30の厚みと比較してより大きい。このように光透過層30を形成すると、第1表示部DP1と第2表示部DP2とで、複数の凹部RCの実効的な深さを互いに異ならせることができる。即ち、こうすると、表示部DP1及びDP2の各々が表示する構造色の差を、より顕著とすることが可能となる。
【0097】
なお、以上において、レリーフ構造が表示する構造色は、照明光の照明角度及び観察者の観察角度などによって変化してもよい。即ち、このレリーフ構造は、観察条件に応じた色及び/又は明るさの変化を生じてもよい。このような色変化は、観察者が検証機器を用いることなしに視認できるため、表示体100の偽造防止効果を更に向上させ得る。
【0098】
(変形例)
以上において説明した表示体100には、種々の変形が可能である。
図4は、図1及び図2に示す表示体の一変形例を示す断面図である。
図4に示す表示体100は、光透過層30が、第1部分領域PR1に含まれる複数の凹部RCの各々を完全に埋めていることを除いては、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
【0099】
このような構成を採用した場合であっても、光透過層30を設けることにより、第1部分領域PR1において、凹部RC内における光路に沿った光学距離を変化させることができる。これにより、複数の凹部RCの実効的な深さを変化させることができる。
【0100】
よって、図4に示す表示体100においても、光透過層30は、第1表示部DP1と第2表示部DP2とに、異なる構造色を表示させることができる。加えて、光透過層30が、第1部分領域PR1に含まれる複数の凹部RCを完全に埋めている場合、表示部DP1における凹部RCの損傷が比較的生じ難い。また、この場合、凹部RCの存在が比較的悟られ難い。
【0101】
図5は、図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図である。
図5に示す表示体100は、光透過層30が、凹部RCが異なる深さを有するように形成された第1光透過層30A及び第2光透過層30Bを含んでいることを除いては、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
【0102】
図5に示す表示体100では、基礎構造層10の主面のうち複数の凹部RCが設けられた領域は、第1光透過層30Aに対応した第1部分領域PR1と、第2光透過層30Bに対応した第2部分領域PR2と、光透過層30が設けられていない位置に対応した第3部分領域PR3とを含んでいる。これらのうち、第3部分領域PR3は、省略してもよい。
【0103】
そして、図5に示す表示体100は、部分領域PR1乃至PR3に各々が対応した第1表示部DP1、第2表示部DP2及び第3表示部DP3を含んでいる。また、この表示体100は、凹部RCを備えていない第4表示部DP4を更に含んでいる。これらのうち、表示部DP3及びDP4は、省略してもよい。
【0104】
図5に示す表示体100では、光透過層30は、第1部分領域PR1と第2部分領域PR2とで凹部RCが異なる深さを有するように、部分領域PR1及びPR2の両方を被覆している。即ち、光透過層30は、第1部分領域PR1を被覆した第1光透過層30Aと、第2部分領域PR2を被覆した第2光透過層30Bとを含んでいる。
【0105】
光透過層30A及び30Bの材料は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。但し、これら光透過層30A及び30B間で光学距離を異ならせるために、各々における屈折率と厚みの最大値との積は、互いに異なっていることが好ましい。なお、光透過層30A及び30Bの材料としては、例えば、図1乃至図3を参照しながら説明した光透過材料と同様のものを使用することができる。
【0106】
図5に示すような構成を採用すると、表示部DP1及びDP2に、互いに異なった構造色を表示させることができる。これら構造色の双方は、典型的には、基礎構造層10のみに起因した構造色とは異なっている。したがって、このような構成を採用すると、更に複雑な光学効果を達成することができる。
【0107】
図5に示す表示体100では、凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30A及び30Bの厚みは、それぞれ、光透過層30A及び30Bが存在しない場合の複数の凹部RCの深さと比較してより小さい。この場合、光透過層30A及び30Bの一方又は両方が複数の凹部RCの各々を完全に埋めている場合と比較して、光透過層30A又は30Bの材料の使用量が少なくて済む。また、この場合、表示体100の厚みを抑制することができる。
【0108】
また、図5に示す表示体100では、複数の凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30A及び30Bの厚みは、それぞれ、互いに隣接した複数の凹部RCの間の位置における光透過層30A及び30Bの厚みと比較してより大きい。このように光透過層30A及び30Bを形成すると、表示部DP1及びDP2と表示部DP3とで、複数の凹部RCの実効的な深さを互いに異ならせることができる。即ち、こうすると、表示部DP1及びDP2が表示する構造色と、表示部DP3が表示する構造色との差を、より顕著とすることが可能となる。
【0109】
なお、これら光透過層30A及び30Bの形成は、図1乃至図3を参照しながら説明した光透過層30について述べたのと同様の方法により行うことができる。したがって、図5に示す表示体100においても、所望のパターンを、簡易に、高効率に、且つオンデマンドで記録することが可能である。
【0110】
図6は、図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図である。
図6に示す表示体100は、第1光透過層30Aが第1部分領域PR1が含んだ複数の凹部RCの各々を完全に埋めていることを除いては、図5を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
【0111】
このような構成を採用した場合であっても、表示部DP1及びDP2に、互いに異なった構造色を表示させることができる。また、これら構造色の双方は、典型的には、基礎構造層10のみに起因した構造色とは異なっている。したがって、このような構成を採用すると、更に複雑な光学効果を達成することができる。
【0112】
図6に示す表示体100では、第1光透過層30Aは、第1部分領域PR1が含んだ複数の凹部RCの各々を、完全に埋めている。したがって、表示部DP1における凹部RCの損傷が比較的生じ難い。また、この場合、第1部分領域PR1が含んだ複数の凹部RCの存在が比較的悟られ難い。
【0113】
他方、図6に示す表示体100では、第2光透過層30Bは、第2部分領域PR2が含んだ複数の凹部RCの各々を、部分的に埋めている。したがって、第2光透過層30Bが複数の凹部RCの各々を完全に埋めている場合と比較して、第2光透過層30Bの材料の使用量が少なくて済む。また、この場合、表示体100の厚みを抑制することができる。
【0114】
図7は、図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図である。
図7に示す表示体100は、光透過層30A及び30Bが、各々に対応した領域に含まれる凹部RCが同一の深さを有するように形成されており且つこれら層の屈折率が互いに異なっていることを除いては、図5を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
【0115】
図7に示す表示体100では、光透過層30は、第1部分領域PR1と第2部分領域PR2とで凹部RCが同一の深さを有するように、部分領域PR1及びPR2の両方を被覆している。即ち、光透過層30は、第1部分領域PR1を被覆した第1光透過層30Aと、第2部分領域PR2を被覆し且つ第1光透過層30Aと同一の厚みを有した第2光透過層30Bとを含んでいる。
【0116】
これら光透過層30A及び30Bは、屈折率が互いに異なっている。したがって、これら光透過層30A及び30Bを設けることにより、部分領域PR1及びPR2の各々において、凹部RC内における光路に沿った光学距離を変化させることができる。これにより、部分領域PR1及びPR2の各々における複数の凹部RCの実効的な深さを変化させることができる。
【0117】
したがって、図7に示すような構成を採用した場合であっても、表示部DP1及びDP2に、互いに異なった構造色を表示させることができる。これら構造色の双方は、典型的には、基礎構造層10のみに起因した構造色とは異なっている。したがって、このような構成を採用すると、更に複雑な光学効果を達成することができる。
【0118】
また、図7に示す表示体100では、光透過層30A及び30Bは、互いに同一の厚みを有している。したがって、この表示体100は、主面に平行な方向における厚みのムラが少ない。よって、このような構成を採用すると、特に高品位な表示体100を製造することが可能となる。
【0119】
図8は、図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図である。
図8に示す表示体100は、光透過層30A及び30Bの双方が凹部RCの各々を完全に埋めていることを除いては、図7を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
【0120】
図8に示す表示体100では、光透過層30は、第1部分領域PR1を被覆した第1光透過層30Aと、第2部分領域PR2を被覆した第2光透過層30Bとを含んでいる。これら光透過層30A及び30Bは、部分領域PR1及びPR2の双方において、凹部RCの各々を完全に埋めている。
【0121】
これら光透過層30A及び30Bは、屈折率が互いに異なっている。したがって、これら光透過層30A及び30Bを設けることにより、部分領域PR1及びPR2の各々において、凹部RC内における光路に沿った光学距離を変化させることができる。これにより、部分領域PR1及びPR2の各々における複数の凹部RCの実効的な深さを変化させることができる。
【0122】
したがって、図8に示すような構成を採用した場合であっても、表示部DP1及びDP2に、互いに異なった構造色を表示させることができる。これら構造色の双方は、典型的には、基礎構造層10のみに起因した構造色とは異なっている。したがって、このような構成を採用すると、更に複雑な光学効果を達成することができる。
【0123】
また、図8に示す表示体100では、光透過層30A及び30Bは、凹部RCの各々を完全に埋めている。この場合、光透過層30A及び30Bの厚みの僅かな差異又は変化によって、表示部DP1及びDP2が表示する像が著しく変化することが起こり難い。したがって、この表示体100には、比較的安定的な像を表示させることができる。
【0124】
上では、凹部RCの断面形状がV字形状である場合について説明したが、凹部RCの形状は、これには限られない。例えば、この断面形状は、U字形状などの他の先細り形状であってもよい。或いは、この断面形状は、矩形状であってもよい。
【0125】
図9は、基礎構造層の一変形例を示す断面図である。
図9に示す基礎構造層10の一方の主面には、半球型の凸部の間に位置した複数の凹部RCが設けられている。これら凹部RCの各々は、図1乃至図8を参照しながら説明した凹部と同様に、その底部に向けて先細りした形状を有している。
【0126】
このような先細り形状を有した凹部RCを採用すると、上述した通り、レリーフ構造に、光の吸収に基づいた構造色を表示させることができる。光の吸収に基づいた構造色は、光の回折又は散乱に基づいた構造色と比較して、インク色に近い自然な発色である為に色調が判り易く、幅広い観察条件で一定の構造色を表示することが可能である。
【0127】
また、先細り形状を有した凹部RCは、矩形状の凹部RCと比較して、原版などを用いた製造がより容易である。したがって、この場合、基礎構造層10及び表示体100の生産性を更に向上させることができる。
【0128】
図10は、基礎構造層の他の変形例を示す断面図である。
図10に示す基礎構造層10は、凹部RCの断面形状が矩形状であることを除いては、図9を参照しながら説明した基礎構造層と同様の構成を有している。
【0129】
凹部RCの断面形状が矩形状である場合、凹部RCの表面の損傷が比較的生じ難い。即ち、このような構成を採用すると、基礎構造層10及び表示体100の耐久性を更に向上させることができる。
【0130】
図1乃至図8では、複数の凹部RCの配列が正方格子を形成している場合について説明したが、凹部RCの配列は、これには限られない。
【0131】
例えば、凹部RCの配列は、矩形格子又は三角格子を形成していてもよい。このような構成を採用すると、例えば、観察方向によって互いに異なった構造色を表示させることができる。こうすると、より複雑な偽造防止効果を達成できる。
【0132】
なお、凹部RCの配列が正方格子を形成している場合、この配列が矩形格子又は三角格子を形成している場合と比較して、より幅広い観察条件で、一定の構造色を表示させることが可能となる。
【0133】
凹部RCは、不規則に配列していてもよい。例えば、複数の凹部RCの配列は、中心間距離のばらつきを有していてもよい。複数の凹部RCを不規則に配列させると、更に幅広い観察条件で、一定の構造色を表示させることが可能となる。
【0134】
凹部RCが不規則に配列している場合、中心間距離の標準偏差は、平均中心間距離を基準として、例えば5%乃至30%の範囲内とする。この標準偏差が過度に小さいと、不規則な配列を採用したことによる効果が不十分となる可能性がある。この標準偏差が過度に大きいと、凹部RCの形成が比較的困難となる可能性がある。
【0135】
なお、上では、凹部RCが二次元的に配列している場合について説明したが、これら凹部RCは、一次元的に配列していてもよい。即ち、凹部RCの各々は、直線状又は曲線状の溝であってもよい。
【0136】
基礎構造層10は、上述した通り、凹部RCとは形状、深さ、平均中心間距離及び配置パターンの少なくとも1つが異なった他の凹部を備えた1つ以上の領域を更に含んでいてもよい。この領域の少なくとも一部は、上述した反射層20及び光透過層30により被覆されていてもよい。このような構成を採用すると、表示体100に、更に複雑な像を表示させることが可能となる。
【0137】
上記の他の凹部を備えた領域は、例えば、凹部RCを備えた領域とは別個に形成してもよい。即ち、上記の他の凹部を備えた領域は、凹部RCを備えた領域とは異なった原版を用いて形成してもよい。
【0138】
或いは、これら領域は、単一の原版を用いて複数の凹部を形成した後に、これら凹部を形成した面の一部に熱及び/又は圧力を加えて凹部を変形させるか、又は、先の面の一部と他の一部とに熱及び/又は圧力を異なる大きさで加えて凹部を変形させることにより形成してもよい。このような方法を採用すると、上記の複数の領域をより簡易に形成することが可能である。
【0139】
基礎構造層10に設けられた凹部RCの深さは、凹部RCの配列に沿って、次第に変化させてもよい。即ち、上記の配列に沿って、凹部RCの深さが次第に増大又は減少するようにして、これら凹部RCを形成してもよい。また、光透過層30の厚みについても、上記の配列に沿って、次第に変化させてもよい。即ち、上記の配列に沿って、各凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30の厚みが次第に増大又は減少するようにして、光透過層30を形成してもよい。これらの少なくとも一方の構成を採用すると、表示体100に、グラデーション表示などのより複雑な視覚効果を付与することが可能となる。
【0140】
図1乃至図8を参照しながら説明した表示体100は、基礎構造層10、反射層20及び光透過層30以外の層を更に含んでいてもよい。
例えば、表示体100は、前面の少なくとも一部に、保護層を更に含んでいてもよい。こうすると、表示体100の表示面の損傷を更に抑制することが可能となる。或いは、表示体100は、前面の少なくとも一部に、反射防止層を更に含んでいてもよい。こうすると、表示体100の光学特性を更に向上させることができる。これら保護層及び/又は反射防止層は、例えば、公知のコーティング法により形成することができる。
【0141】
また、上記の層間の密着性を向上させるために、コロナ処理、フレーム処理及びプラズマ処理などを施してもよい。或いは、これら層間に、接着アンカー層を介在させてもよい。
【0142】
或いは、上記の層の少なくとも1つを着色してもよい。例えば、基礎構造層10を、有色の層としてもよい。こうすると、より複雑な光学効果を達成することができる。また、表示体100の意匠性が向上する。
【0143】
なお、表示体100は、以上に例示した種々の変形例の2以上を組み合わせた構成を有していてもよい。こうすると、例えば、表示体100に、更に複雑な像を表示させることが可能となり、その偽造防止効果を更に向上させることができる。
【0144】
(画素群による表示)
表示体100に表示させる像は、二次元的に配列した複数の画素で構成してもよい。
図11は、本発明の他の態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。
【0145】
図11に示す表示体100は、複数の画素PEを含んでいることを除いては、図1乃至図10を参照しながら説明したのと同様の構成を有している。
【0146】
これら画素PEは、互いに交差するX及びY方向に配列している。即ち、これら画素PEは、X及びY方向に沿って互いに隣り合っている。これら画素PEは、互いに隣接していてもよく、互いから離間していてもよい。図11には、一例として、これら画素PEが、X及びY方向に沿って互いに隣接している場合を描いている。また、ここでは、一例として、X及びY方向は直交していることとする。
【0147】
画素PEは、典型的には、形状及び寸法が互いに等しい。画素PEは小さな寸法を有しており、典型的には、肉眼で観察した場合にそれら画素PEを互いから区別することはできない。例えば、画素PEの各々のX方向についての寸法は、約50μmである。
【0148】
これら画素PEのうち少なくとも2つでは、例えば、光透過層30の厚み、屈折率、可視域の光に対する全光線透過率、及び、画素PEの面積に対する光透過層30を形成した部分の面積を互いに異ならせる。こうすると、これら画素PEに、白色光で照明した場合に互いに異なった構造色を表示させることができる。また、このような構成を採用すると、表示体100に、所望のパターンを、より精細に記録することが可能となる。また、こうすると、表示体100に多色画像を表示させることがより容易となる。
【0149】
(表示体の使用態様)
以上において説明した表示体100は、例えば、粘着ステッカ、転写箔、又はスレッドの一部として使用してもよい。或いは、この表示体100は、ティアテープの一部として使用してもよい。
【0150】
図12は、本発明の一態様に係る粘着ステッカを概略的に示す断面図である。図12に示す粘着ステッカ200は、図1及び図2に示す表示体100と、表示体100の背面上に設けられた粘着層40とを備えている。
【0151】
粘着層40は、基礎構造層10の背面上に設けられている。粘着層40は、基礎構造層10を間に挟んで光透過層30と向き合っている。
【0152】
粘着層40の材料としては、典型的には、感圧接着剤を使用する。粘着層40の材料としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、及び、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系又はポリイソブチル系のものが挙げられる。粘着層は、必要に応じて、凝集成分、改質成分及び添加剤を更に含んでいてもよい。凝集成分としては、例えば、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリロニトリル、スチレン及びビニルモノマーが挙げられる。改質成分としては、例えば、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有ポリマー、及びアクリロニトリルが挙げられる。添加剤としては、例えば、重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤及び酸化防止剤が挙げられる。或いは、粘着層40として、両面がフィルムセパレータで構成された接着剤を用いてもよい。
【0153】
粘着層40は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法及びスクリーン印刷法などの印刷法、又は、バーコート法、グラビア法及びロールコート法などの塗布法により形成する。粘着層40の厚みは、例えば1μm乃至10μmの範囲内とする。
【0154】
この粘着ステッカ200は、例えば、真正さが確認されるべき物品に貼り付けるか、又は、そのような物品に取り付けられるべきタグの基材などの他の物品に貼り付ける。これにより、当該物品に偽造防止効果を付与することができる。なお、粘着ステッカ200の貼り付けは、例えば、ロールラミネート法により行う。
【0155】
図12に示す粘着ステッカ200は、表示体100の背面に粘着層40を設けることにより製造してもよく、表示体100のうち光透過層30以外の部分に対応したブランク媒体の背面に粘着層40を設けた後に、光透過層30を形成することにより製造してもよい。
【0156】
図13は、本発明の一態様に係る転写箔を概略的に示す断面図である。図13に示す転写箔300は、図1及び図2に示す表示体100と、表示体100を剥離可能に支持した支持体層50とを備えている。図13には、一例として、表示体100の前面と支持体層50との間に剥離層52が設けられており、表示体100の背面上に接着層54が設けられている場合を描いている。
【0157】
支持体層50は、例えば、樹脂からなるフィルム又はシートである。支持体層50の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又は塩化ビニル樹脂を使用する。
【0158】
剥離層52は、転写箔300を被転写体に転写する際の支持体層50の剥離を容易にする役割を担っている。剥離層52の材料としては、例えば、樹脂を使用する。剥離層92は、パラフィンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス及びシリコーンなどの添加剤を更に含んでいてもよい。なお、剥離層52の厚みは、例えば0.5μm乃至5μmの範囲内とする。
【0159】
接着層54の材料としては、例えば、反応硬化型接着剤、溶剤揮散型接着剤、ホットメルト型接着剤、電子線硬化型接着剤及び感熱接着剤などの接着剤を使用する。
【0160】
反応硬化性接着剤としては、例えば、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン及びアクリルウレタンなどのポリウレタン系樹脂、又は、エポキシ樹脂を使用する。
【0161】
溶剤揮散型接着剤としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマー樹脂及びウレタン樹脂などを含んだ水性エマルジョン型接着剤、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合樹脂及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂などを含んだラテックス型接着剤を使用する。
【0162】
ホットメルト型接着剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルエーテル樹脂及びポリウレタン樹脂などをベース樹脂として含んだものを使用する。
【0163】
電子線硬化型接着剤としては、例えば、アクリロイル基、アリル基及びビニル基などのビニル系官能基を1個又は複数個有したオリゴマーを主成分として含んだものを使用する。例えば、電子線硬化型接着剤として、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエーテルアクリレート又はポリエーテルメタクリレートと、接着付与剤との混合物を使用することができる。この接着付与剤としては、例えば、リンを含んだアクリレート若しくはその誘導体、又は、カルボキシ基を含んだアクリレート若しくはその誘導体を使用する。
【0164】
感熱接着剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ゴム系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を使用する。
【0165】
接着層54は、例えば、上述した樹脂を、グラビアコータ、マイクログラビアコータ及びロールコータなどのコータを用いて表示体100の背面上に塗布することにより得られる。
【0166】
この転写箔300は、例えば、ロール転写機又はホットスタンプによって、被転写体に転写される。この際、剥離層52において剥離を生じると共に、表示体100が、被転写体に、接着層54を介して貼付される。
【0167】
なお、図13に示す転写箔300は、例えば、以下のようにして製造する。即ち、まず、第1の支持体上に、表示体100を形成する。なお、この構成は、基礎構造層10及び反射層20からなるブランク媒体を第1の支持体上に形成した後に、光透過層30を設けることにより製造してもよい。次に、第1の支持体と表示体100との積層体を、脆性層52を介して支持体層50としての第2の支持体上に転写すると同時に、第1の支持体を剥離する。続いて、得られた構成の背面側に、接着層54を形成する。以上のようにして、転写箔300を得る。
【0168】
上述したように、表示体100は、優れた偽造防止効果を有している。したがって、表示体100を物品に支持させた場合、真正品であるこの表示体付き物品の偽造も困難である。また、この表示体100は上述した視覚効果を有しているため、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。
【0169】
図14は、表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図である。図14には、表示体付き物品の一例として、カード400を描いている。このカード400は、IDカードであって、カード本体401を含んでいる。
【0170】
カード本体401は、基材402を含んでいる。基材402は、例えば、プラスチックからなる。基材402上には、印刷層403が形成されている。基材402の印刷層403が形成された面には、上述した表示体100が固定されている。表示体100は、例えば、粘着層又は接着層を介して貼り付けることにより、基材402に固定する。
【0171】
印刷物400は、表示体100を含んでいるため、その偽造は困難である。また、この印刷物400は、表示体100を含んでいるため、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。
【0172】
表示体100は、紙に漉き込むか又は紙からなる基材に支持させてもよい。こうすると、例えば、高い偽造防止効果を有した有価証券、用紙及びパスポートなどを製造することができる。
【0173】
表示体付き物品は、印刷物でなくてもよい。即ち、印刷層を含んでいない物品に表示体100を支持させてもよい。
【0174】
以上において、表示体100そのものを物品に支持させる代わりに、基礎構造層10を含んでおり且つ光透過層30を含んでいない中間品を物品に支持させてもよい。そして、この中間品上に光透過層30を形成することにより、表示体100を作製可能としてもよい。このような態様は、例えば、パスポートなどのオンデマンドでの画像記録が必要な物品において、特に有用である。
【0175】
表示体100は、偽造防止用のインクの顔料成分として用いてもよい。この場合、表示体100は、適宜粉砕して用いる。
【0176】
表示体100は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体100は、玩具、学習教材又は装飾品としても使用することができる。
【実施例】
【0177】
(例1)
表示体100を、以下のようにして製造した。
まず、以下の組成を有するインキ組成物(紫外線硬化型樹脂)を準備した。
【0178】
・ウレタン(メタ)アクリレート: 50.0質量部
・メチルエチルケトン: 30.0質量部
・酢酸エチル: 20.0質量部
・光開始剤: 1.5質量部
なお、上記のウレタン(メタ)アクリレートとしては、根上工業株式会社製のUN−952を用いた。なお、このウレタン(メタ)アクリレートは、多官能性であり、その重量平均分子量は6500であった。また、光開始剤としては、チバスペシャリティー製のイルガキュア184を用いた。
【0179】
次に、厚みが23μmである透明PETフィルムからなる基材上に、上記の組成物を、乾燥後の膜厚が1μmとなるように、グラビア印刷法によって塗布した。
【0180】
その後、塗布面に対して、後述する複数の凹部RCの形状に対応した微細凹凸構造を備えた円筒状の原版を押し当てて、エンボス加工を行った。このエンボス加工は、プレス圧力を2kgf/cm2とし、プレス温度を80℃とし、プレススピードを10m/minとして行った。そして、この加工と同時に、透明PETフィルムからなる基材の側から、高圧水銀灯を用いて、300mJ/cm2の露光量で紫外線露光を行った。これにより、上記の組成物を硬化させて、基礎構造層10を得た。
【0181】
この基礎構造層10は、一方の主面に、直径が400nmである半球を三角格子状に最密充填された凸部を備えていた。即ち、この基礎構造層10は、一方の主面に、これら凸部の間の空間に対応した複数の凹部RCを備えていた。これら複数の凹部RCの平均中心間距離は400nmであり、その深さは200nmであった。
【0182】
次いで、平滑面上での厚みが50nmとなるように、基礎構造層10の凹部RCが設けられた主面の全体に亘って、Alを真空蒸着させた。このようにして、Alからなる反射層20を形成した。以上のようにして、基礎構造層10と反射層20とからなる中間品を得た。
【0183】
その後、反射層20の一部の上に、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合樹脂(塩酢ビ樹脂)を、インクジェット法によって塗布し、これを乾燥させた。このようにして、光透過層30を得た。なお、この光透過層30は、無色且つ透明であった。また、光透過層30は、複数の凹部RCの底部に対応した位置における厚みが100nmとなるように形成した。以上のようにして、表示体100を得た。
【0184】
(例2)
複数の凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30の厚みを100nmとする代わりに240nmとしたことを除いては、例1と同様にして、中間品及び表示体100を得た。
【0185】
(例3)
動的散乱法により測定した平均粒子径が400nmである単分散シリカナノ粒子を用いて、基材上に、単層粒子膜を形成した。このようにして、複数の凹部RCを備えた基礎構造層10を得た。その後、この基礎構造層10を用いたことを除いては、例1と同様にして、中間品及び表示体100を得た。
【0186】
(例4)
光透過層30をイソインドリノン系の黄色顔料を用いて着色したことを除いては、例1と同様にして、表示体100を得た。この表示体100では、光透過層30の可視域の光に対する全光線透過率は80%であった。
【0187】
(例5)
光透過層30中のイソインドリノン系の黄色顔料の含有量をより多くしたことを除いては、例4と同様にして、表示体100を得た。この表示体100では、光透過層30の可視域の光に対する全光線透過率は30%であった。
【0188】
(評価)
例1乃至例5に係る表示体100を、多色光源の下で、複数の観察角度から観察した。より具体的には、これら表示体100を、室内の複数の蛍光灯の下で、その表示面の法線方向を基準として0゜及び60゜の2つの方向から観察した。そして、第1表示部DP1と第2表示部DP2との各々が表示する構造色を、肉眼により評価した。その結果を、下記表1に示す。
【表1】
【0189】
表1から明らかなように、例1乃至例5に係る表示体100は、何れの観察角度においても、表示部DP1及びDP2で互いに異なった構造色を表示した。また、例1乃至例4に係る表示体100では、表示部DP1においても、観察角度に応じた構造色の色変化が生じた。
【符号の説明】
【0190】
10…基礎構造層、20…反射層、30…光透過層、30A…第1光透過層、30B…第2光透過層、40…粘着層、50…支持体層、52…剥離層、54…接着層、100…表示体、200…粘着ステッカ、300…転写箔、400…カード、401…カード本体、402…基材、403…印刷層、DP1…表示部、DP2…表示部、DP3…表示部、DP4…表示部、PE…画素、PR1…部分領域、PR2…部分領域、RC…凹部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、偽造防止効果、装飾効果及び/又は美的効果を提供する光学技術に関する。
【背景技術】
【0002】
有価証券、証明書、ブランド品、電子機器及び個人認証媒体などの物品には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、このような物品には、偽造防止効果に優れた表示体を支持させることがある。
【0003】
このような表示体の多くは、回折格子、ホログラム及びレンズアレイ等の微細構造を含んでいる。これら微細構造は、例えば観察角度の変化に応じて、色の変化を生じる。また、これら微細構造は、解析及び偽造することが困難である。それゆえ、このような表示体は、優れた偽造防止効果を発揮し得る。
【0004】
しかしながら、近年のエンボス技術の発達により、微細構造の作製の難易度が低下してきている。また、多層薄膜フィルムが一般的な包装用フィルムとして販売され始めたことにより、上記の微細構造と類似した光学効果を得ることが比較的容易となりつつある。それゆえ、通常の微細構造を含んだ表示体では、偽造防止効果が不十分な場合がある。
【0005】
そこで、近年では、更に高い偽造防止効果を達成すべく、種々の工夫が為されている。
【0006】
例えば、特許文献1には、ナノインプリントによる凹凸パターンが設けられたコーティング膜を金属基板上に備えた金属製ケースが記載されている。また、特許文献2には、深さ方向に沿って溝の幅が変調している凹凸形状を有した凹凸パターンが表面に形成された基体が記載されている。そして、この特許文献2には、凹凸パターンの損傷を抑制又は回避するために、凹凸パターンの全体の上に保護膜を形成することが記載されている。
【0007】
しかしながら、これら文献に記載の方法では、多色の構造色をオンデマンドで且つ高効率で表示させることは、不可能であるか又は極めて困難である。例えば、個人情報などの固有情報を多色の構造色により表示させることは、不可能であるか又は極めて困難である。
【0008】
また、特許文献3には、インクジェット方式で形成された情報印字層上に、パール印刷又は透明蛍光印刷のいずれかの印刷層が形成されてなる記録媒体が記載されている。この文献には、このような構成を採用することにより、個人情報などの痕跡が残るインクリボンを使用せずに、高いセキュリティ性を備えた記録媒体を提供できる旨が記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載されている光学効果は、市販の蛍光インキなどを用いてパターンを形成することにより、比較的容易に模倣することができる。それゆえ、特許文献3に記載されている構成を採用したとしても、偽造防止効果は十分であるとは言い難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−122773号公報
【特許文献2】特開2009−101671号公報
【特許文献3】特開2009−143192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、より高い偽造防止効果を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1側面によると、均一に配置された複数の凹部からなるレリーフ構造を一方の主面に含み、前記複数の凹部は白色光で照明したときに前記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている基礎構造層と、前記主面のうち前記複数の凹部が設けられた領域の少なくとも一部を被覆した光透過層とを具備し、前記光透過層は、前記領域の第1及び第2部分領域で前記凹部が異なる深さを有するように若しくは前記第1及び第2部分領域の一方においてのみ前記凹部が完全に埋め込まれるように前記第1及び第2部分領域の少なくとも一方を被覆しており、前記白色光で照明したときに、前記レリーフ構造のうち、前記第1部分領域に対応した第1部分と、前記第2部分領域に対応した第2部分とに異なる構造色を表示させるか、又は、前記領域の第1部分領域を被覆した第1光透過層と、前記第1光透過層とは屈折率が異なり、前記領域の第2部分領域を被覆した第2光透過層とを含み、前記白色光で照明したときに、前記レリーフ構造のうち、前記第1部分領域に対応した第1部分と、前記第2部分領域に対応した第2部分とに異なる構造色を表示させる表示体が提供される。
【0013】
本発明の第2側面によると、均一に配置された複数の凹部からなるレリーフ構造を一方の主面に含み、前記複数の凹部は白色光で照明したときに前記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている基礎構造層を準備することと、前記主面のうち前記複数の凹部が設けられた第1及び第2部分領域で前記凹部が異なる深さを有するように若しくは前記第1及び第2部分領域の一方においてのみ前記凹部が完全に埋め込まれるように、前記第1及び第2部分領域の少なくとも一方を光透過材料で被覆するか、又は、前記第1及び第2部分領域を、それぞれ、屈折率が互いに異なる第1及び第2光透過材料で被覆して、前記白色光で照明したときに、前記レリーフ構造のうち、前記第1部分領域に対応した第1部分と、前記第2部分領域に対応した第2部分とに異なる構造色を表示させる光透過層を形成することとを含んだ表示体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、より高い偽造防止効果を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1及び図2に示す表示体における複数の凹部の配置を概略的に示す平面図。
【図4】図1及び図2に示す表示体の一変形例を示す断面図。
【図5】図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図。
【図6】図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図。
【図7】図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図。
【図8】図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図。
【図9】基礎構造層の一変形例を示す断面図。
【図10】基礎構造層の他の変形例を示す断面図。
【図11】本発明の他の態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図12】本発明の一態様に係る粘着ステッカを概略的に示す断面図。
【図13】本発明の一態様に係る転写箔を概略的に示す断面図。
【図14】表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。また、ここで「可視域の光」とは、波長が400nm乃至800nmの範囲内にある光を意味していることとする。
【0017】
図1は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図である。図1及び図2では、表示体100の主面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、表示体100の主面に垂直な方向をZ方向としている。
【0018】
図1及び図2に示す表示体100は、基礎構造層10と反射層20と光透過層30とを含んでいる。以下では、基礎構造層10に対して光透過層30側の面を「前面」と呼び、光透過層30に対して基礎構造層10側の面を「背面」と呼ぶこととする。
【0019】
図1及び図2に示す表示体100は、第1表示部DP1と第2表示部DP2と第3表示部DP3とを含んでいる。第1表示部DP1は、後述する複数の凹部RCと光透過層30との双方を含んでいる。第2表示部DP2は、複数の凹部RCを含み且つ光透過層30を含んでいない。第3表示部DP3は、複数の凹部RC及び光透過層30の何れも含んでいない。なお、表示部DP3は、省略してもよい。
【0020】
(基礎構造層)
基礎構造層10は、一方の主面の少なくとも一部に、複数の凹部RCからなるレリーフ構造を含んでいる。図1及び図2には、一例として、上記主面の一部のみに複数の凹部RCが形成されている場合を描いている。
【0021】
複数の凹部RCは、白色光で照明したときに、上記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている。この構造色の表示は、例えば、光の吸収、回折及び/又は散乱に起因している。その機構などについては、後で詳しく説明する。
【0022】
複数の凹部RCは、上記主面の少なくとも一部に、均一に配置されている。即ち、これら複数の凹部RCからなる領域では、凹部RCの形状、深さ、平均中心間距離及び配置パターンが、領域全体に亘って一定である。なお、後述するように、基礎構造層10は、複数の凹部RCとは形状、深さ、平均中心間距離及び配置パターンの少なくとも1つが異なった他の凹部を備えた領域を更に含んでいてもよい。
【0023】
これら複数の凹部RCは、後述するように、規則的に配置されていてもよく、不規則に配置されていてもよい。図1及び図2には、一例として、複数の凹部RCが規則的に配置されている場合を描いている。
【0024】
図3は、図1及び図2に示す表示体における複数の凹部の配置を概略的に示す平面図である。
図3に示すように、図1及び図2に示す表示体100では、複数の凹部RCは、二次元的に配列している。より具体的には、これら複数の凹部RCの配列は、正方格子を形成している。
【0025】
複数の凹部RCの断面形状は、例えば、V字形状及びU字形状等の先細り形状とするか又は矩形状とする。図2には、一例として、上記の断面形状がV字形状である場合を描いている。
【0026】
複数の凹部RCの平均中心間距離は、例えば180nm乃至5000nmの範囲内とし、典型的には180nm乃至415nmの範囲内とする。また、複数の凹部RCの深さは、例えば180nm乃至5000nmの範囲内とし、典型的には180nm乃至415nmの範囲内とする。また、複数の凹部RCの開口の幅に対する深さの比の平均値(以下、アスペクト比ともいう)は、例えば、0.01乃至1.0の範囲内とする。このアスペクト比が過度に小さいと、熱及び圧力などの外的要因による変形によって、上記レリーフ構造が表示する構造色が変化又は消失してしまう可能性が高くなる。このアスペクト比が過度に大きいと、後述する光透過層30の形成による構造色の変化を生じさせることが困難となることがある。また、このアスペクト比が過度に大きいと、基礎構造層10の生産性が低下する場合がある。
【0027】
基礎構造層10は、典型的には、基材と、その上に形成された樹脂層とを含んでいる。この基材としては、典型的には、フィルム基材を使用する。このフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム及びポリプロピレン(PP)フィルム等のプラスチックフィルムを使用する。或いは、基材として、紙、合成紙、プラスチック複層紙又は樹脂含浸紙を使用してもよい。なお、基材は、省略してもよい。
【0028】
樹脂層は、一方の主面の少なくとも一部に、複数の凹部RCからなるレリーフ構造を含んでいる。この樹脂層は、例えば、後述する方法により形成される。
【0029】
樹脂層の厚みは、例えば0.1μm乃至10μmの範囲内とする。この厚みが過度に大きいと、加工時の加圧等による樹脂のはみ出し及び/又は皺の形成が生じ易くなる。この厚みが過度に小さいと、所望の凹部RCの形成が困難となる場合がある。また、樹脂層の厚みは、その主面に設けるべき凹部RCの深さと等しくするか又はそれより大きくする。この厚みは、例えば、凹部RCの深さの1乃至10倍の範囲内とし、典型的には、その3乃至5倍の範囲内とする。
【0030】
基礎構造層10は、例えば、微細な凸部を設けた原版を熱硬化性又は放射線硬化型樹脂に押し当て、この状態で樹脂を硬化させることにより製造することができる。或いは、基礎構造層10は、加熱した熱可塑性樹脂に原版を押し当て、この状態で樹脂を冷却することにより製造することができる。この際、これら凸部の形状は、基礎構造層10の一方の主面に設ける複数の凹部RCの形状に対応した形状とする。なお、ロール状の原版を用いると、基礎構造層10の連続成形が容易となる。
【0031】
基礎構造層10の製造に用いる上記の原版は、例えば、電子線描画装置を用いて製造する。こうすると、上述した複数の凹部RCを高い精度で製造することができる。なお、通常は、原版の凹凸構造を転写して反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を製造する。そして、必要に応じ、複製版を原版として用いて反転版を製造し、この反転版の凹凸構造を転写して複製版を更に製造する。実際の製造では、通常、このようにして得られる複製版を使用する。
【0032】
基礎構造層10は、例えば、特許第4194073号公報などの文献に開示されている「プレス法」を用いて製造することができる。即ち、基礎構造層10は、例えば、熱可塑性樹脂を塗布した基材上に、上記の原版を、熱を印加しながら押し当てる方法により製造することができる。この場合、上記の熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、セルロース系樹脂、ビニル系樹脂、これらの混合物、又は、これらの各々に対応した単量体の共重合物を使用する。
【0033】
或いは、基礎構造層10は、実用新案登録第2524092号公報などの文献に開示されている「キャスティング法」を用いて製造してもよい。即ち、基礎構造層10は、例えば、基材上に熱硬化性樹脂を塗布し、これに上記の原版を押し当てながら熱を印加し、その後、原版を取り除く方法により製造してもよい。この場合、熱硬化性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール系樹脂、これらの混合物、又は、これらの各々に対応した単量体の共重合物を使用する。なお、このウレタン樹脂は、例えば、反応性水酸基を有したアクリルポリオール及びポリエステルポリオール等に、架橋剤としてポリイソシアネートを添加して、これらを架橋させることにより得られる。
【0034】
或いは、基礎構造層10は、特開2007−118563号公報などの文献に開示されている「フォトポリマー法」を用いて製造してもよい。フォトポリマー法は、平坦な基材と上記の原版との間に放射線硬化樹脂の材料を流し込み、紫外線等の放射線を照射して上記材料を硬化させ、その後、原版を取り除く方法である。この方法は、プレス法又はキャスティング法と比較して、凹部RCの成形精度がより高い。また、この方法によると、耐熱性及び耐薬品性により優れた基礎構造層10が得られる。
【0035】
なお、基礎構造層10は、基材上に放射線硬化樹脂の材料を塗布し、これに原版を押し当てながら放射線を照射して上記材料を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により製造してもよい。
【0036】
放射線硬化樹脂の材料は、典型的には、重合性化合物と開始剤とを含んでいる。
重合性化合物としては、例えば、光ラジカル重合が可能な化合物を使用する。光ラジカル重合が可能な化合物としては、例えば、エチレン性不飽和結合又はエチレン性不飽和基を有したモノマー、オリゴマー又はポリマーを使用する。或いは、光ラジカル重合が可能な化合物として、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート及びポリエステルアクリレート等のオリゴマー、又は、ウレタン変性アクリル樹脂及びエポキシ変性アクリル樹脂等のポリマーを使用してもよい。
【0037】
重合性化合物として光ラジカル重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤としては、光ラジカル重合開始剤を使用する。この光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインエチルエーテル等のベンゾイン系化合物、アントラキノン及びメチルアントラキノン等のアントラキノン系化合物、アセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、ベンゾフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−アミノアセトフェノン及び2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノプロパン−1−オン等のフェニルケトン系化合物、ベンジルジメチルケタール、チオキサントン、アシルホスフィンオキサイド、又は、ミヒラーズケトンを使用する。
【0038】
或いは、重合性化合物として、光カチオン重合が可能な化合物を使用してもよい。光カチオン重合が可能な化合物としては、例えば、エポキシ基を備えたモノマー、オリゴマー若しくはポリマー、オキセタン骨格含有化合物、又は、ビニルエーテル類を使用する。
【0039】
重合性化合物として光カチオン重合が可能な化合物を使用する場合、開始剤としては、光カチオン重合開始剤を使用する。この光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩又は混合配位子金属塩を使用する。
【0040】
或いは、重合性化合物として、光ラジカル重合が可能な化合物と光カチオン重合が可能な化合物との混合物を使用してもよい。この場合、開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤と光カチオン重合開始剤との混合物を使用する。或いは、この場合、光ラジカル重合及び光カチオン重合の双方の開始剤として機能し得る重合開始剤を使用してもよい。このような開始剤としては、例えば、芳香族ヨードニウム塩又は芳香族スルホニウム塩を使用する。
【0041】
なお、放射線硬化樹脂に占める開始剤の割合は、例えば、0.1乃至15質量%の範囲内とする。
【0042】
放射線硬化樹脂は、離型剤、増感色素、染料、顔料、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、タレ止め剤、付着向上剤、塗面改質剤、可塑剤、含窒素化合物、エポキシ樹脂等の架橋剤、又はこれらの組み合わせを更に含んでいてもよい。また、放射線硬化樹脂には、その成形性を向上させるべく、非反応性の樹脂を更に含有させてもよい。この非反応性の樹脂としては、例えば、後述する熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を使用することができる。
【0043】
基礎構造層10は、基材上に、微粒子を二次元的に配列させてなる単層粒子膜を形成することにより製造してもよい。基材上に単層粒子膜を形成することにより基礎構造層10を製造すると、他の場合と比較して、複数の凹部RCをより安定的に且つより高い生産性で形成することが可能となる。
【0044】
この単層粒子膜は、例えば、微粒子を含んだ溶液中に基材を浸し、その後、この基材を一定の速度で徐々に引き上げることにより形成する。或いは、この単層粒子膜は、微粒子とバインダ樹脂とを含んだインキを、塗布量を厳密に制御しながら基材上に塗布することにより形成してもよい。
【0045】
上記の微粒子としては、典型的には、球状の微粒子を使用する。こうすると、基材上に、微粒子を規則的に配列させることが容易となる。或いは、上記の微粒子として、粒径のバラつきが小さい不定形粒子を用いてもよい。こうすると、単層粒子膜が粒子の配列に依存した周期構造を有するため、複数の凹部RCに、構造色に対応した光と共に、不定形な粒子形状に起因した散乱光を射出させることができる。
【0046】
なお、複数の凹部RCは、これら凹部RCの前駆構造としての凹部を形成した後に、これら凹部を熱及び/又は圧力で変形させることにより形成してもよい。例えば、これら凹部RCは、まず、より深い凹部を形成し、その後、これら凹部を押しつぶすことにより形成してもよい。このような方法を採用すると、例えば、複数の凹部RCのアスペクト比のオンデマンドでの調節を比較的容易に行うことが可能となる。
【0047】
(反射層)
反射層20は、基礎構造層10の主面のうち複数の凹部RCが設けられた領域の少なくとも一部を被覆している。反射層20は、後述する光透過層30とは屈折率が異なっている。
【0048】
典型的には、反射層20の材料(以下、反射材料ともいう)として、光透過層30の材料(以下、光透過材料ともいう)との屈折率の差が0.2以上であるものを使用する。この差が過度に小さいと、反射層20と光透過層30との界面における反射が生じ難くなる場合がある。
【0049】
反射材料としては、典型的には、金属材料を使用する。この金属材料としては、例えば、Al、Sn、Cr、Ni、Cu、Au、Ag、及びこれらの合金からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられる。
【0050】
透明性が比較的高い反射材料(以下、透明反射材料ともいう)として、以下に列挙するセラミック材料又は有機ポリマー材料を使用してもよい。なお、以下に示す化学式又は化合物名の後に記載した括弧内の数値は、各材料の屈折率を意味している。
【0051】
即ち、セラミック材料としては、例えば、Sb2O3(3.0)、Fe2O3(2.7)、TiO2(2.6)、CdS(2.6)、CeO2(2.3)、ZnS(2.3)、PbCl2(2.3)、CdO(2.2)、Sb2O3(5)、WO3(5)、SiO(5)、Si2O3(2.5)、In2O3(2.0)、PbO(2.6)、Ta2O3(2.4)、ZnO(2.1)、ZrO2(5)、MgO(1)、SiO2(1.45)、Si2O2(10)、MgF2(4)、CeF3(1)、CaF2(1.3〜1.4)、AlF3(1)、Al2O3(1)又はGaO(2)を使用することができる。有機ポリマー材料としては、例えば、ポリエチレン(1.51)、ポリプロピレン(1.49)、ポリテトラフルオロエチレン(1.35)、ポリメチルメタクリレート(1.49)又はポリスチレン(1.60)を使用することができる。
【0052】
透明反射材料を用いる場合、反射層20の可視域の光に対する全光線透過率は、典型的には、50%以上とする。こうすると、反射層20の背面側に、顔写真、文字及びパターンなどの印刷情報を記録し且つこれら情報を視認可能とすることができる。なお、この「全光線透過率」は、日本工業規格JIS K7361−1に準拠した測定値である。
【0053】
反射材料としては、以上に挙げたものの中から、実用に適した耐久性を有するものを適宜選択して用いることができる。或いは、以上に挙げた材料を混合して用いてもよく、それぞれの材料からなる層を積層して用いてもよい。
【0054】
反射層20は、例えば、ドライコーティング法により形成する。このドライコーティング法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びCVD(Chemical Vapor Deposition)法が挙げられる。ドライコーティング法を採用すると、厚みの均一性が高い薄膜を、比較的容易に形成することが可能である。
【0055】
反射層20は、ウェットコーティング法により形成してもよい。この場合、まず、上記の反射材料の微粒子と溶剤とバインダとを含んだインキを準備する。そして、このインキを、基礎構造層10上に、インクジェット法、グラビア法、マイクログラビア法、ロールコート法、及びディップコート法などの印刷方法により塗布する。このようにして、反射層20を形成する。なお、反射材料の微粒子を含んだ上記インキは、バインダを含んでいなくてもよい。
【0056】
反射層20を反射材料の微粒子を含んだインキを用いて形成する場合、この微粒子の平均粒径は、典型的には、複数の凹部RCの平均中心間距離及び深さの5分の1以下とする。この平均粒径が過度に大きいと、所望する反射率が得られないか、又は、複数の凹部RCが反射層20により消失して構造色の表示が困難となる可能性がある。なお、ここで「平均粒径」とは、動的散乱法により測定した平均粒子径である。
【0057】
反射層20は、多層構成を有していてもよい。例えば、反射層20は、互いに屈折率が異なった複数の層からなる多層干渉膜であってもよい。
【0058】
反射層20の厚みは、上記複数の凹部RCの深さと比較してより小さくし、典型的には、この深さの2分の1以下とする。この厚みが過度に大きいと、後述する光透過層30の形成に起因した光学効果が不十分となる可能性がある。
【0059】
反射層20は、省略してもよい。但し、反射層20を設けると、表示体100に、視認性がより優れた像を表示させることが可能となる。また、反射層20を設けると、複数の凹部RCの損傷を生じ難くすることも可能となる。なお、反射層20を省略する場合、基礎構造層10と後述する光透過層30とで、屈折率を互いに異ならしめる。
【0060】
なお、反射層20を省略するか又は透明反射材料を用いて反射層20を形成した場合、後述する光透過層30の背面側に、印刷情報を記録した層を設けることが可能となる。それゆえ、この場合、表示体100を、ID(Identification)カード及びパスポートなどに使用可能な偽造防止用オーバーシートに応用することが可能となる。
【0061】
(光透過層)
光透過層30は、反射層20を間に挟んで、基礎構造層10の主面のうち複数の凹部RCが設けられた領域の少なくとも一部と向き合っている。或いは、光透過層30は、上記領域の少なくとも一部を被覆している。図1及び図2には、一例として、光透過層30が、反射層20を間に挟んで、上記領域の一部のみと向き合っている場合を描いている。図1及び図2に示す表示体100では、上記領域のうち光透過層30と向き合った部分を第1部分領域PR1と呼び、上記領域のうち第1部分領域PR1以外の部分を第2部分領域PR2と呼ぶ。部分領域PR1及びPR2は、それぞれ、表示部DP1及びDP2に対応している。
【0062】
図1及び図2に示す表示体100では、複数の凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30の厚みは、光透過層30が存在しない場合の複数の凹部RCの深さと比較してより小さい。また、複数の凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30の厚みは、互いに隣り合った複数の凹部RCの間の位置における光透過層30の厚みと比較してより大きい。
【0063】
光透過層30は、可視域の光に対する透過性を有している。光透過層30の可視域の光に対する全光線透過率は、例えば30%以上とし、典型的には50%以上とし、特に好ましくは80%以上とする。この透過率が過度に小さいと、光透過層30に起因した後述する光学効果が視認し難くなる可能性がある。なお、この「全光線透過率」は、日本工業規格JIS K7361−1に準拠した測定値である。
【0064】
光透過層30は、反射層20とは異なった屈折率を有しており、また、光透過層を間に挟んで反射層20と隣接した外部領域とも異なる屈折率を有している。光透過層30は、光透過材料からなり、例えば、有機材料、無機材料、有機無機複合材料、又はこれらの混合物を含んでいる。
【0065】
有機材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、これらの混合物、及びこれらの各々に対応した単量体の共重合物若しくは二液硬化物が挙げられる。
【0066】
無機材料としては、例えば、エチルシリケート、プロピルシリケート及びブチルシリケートなどの金属アルコキシドが挙げられる。
【0067】
有機無機複合材料としては、例えば、上記有機材料に対応した単量体と上記無機材料に対応した単量体との共重合物が挙げられる。
【0068】
光透過層30中には、微粒子を分散させてもよい。こうすると、例えば、光透過層30の屈折率を、所望の値に調節することが可能となる。
この微粒子としては、例えば、有機材料からなる微粒子を用いる。この有機材料としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂及び酢酸ビニル樹脂が挙げられる。
【0069】
また、この微粒子として、無機材料からなる微粒子を用いてもよい。この無機材料としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化亜鉛、酸化ケイ素、酸化錫、酸化銅、酸化鉄、酸化マンガン、酸化ホルミウム、酸化ビスマス、酸化コバルト及びITO(Indium Tin Oxide)などの酸化物、金、銀、銅、ニッケル、コバルト、チタン、鉄、アルミ、マグネシウム、クロム、及び錫などの金属及びこれらの合金、並びに、ランタノイド及びその化合物が挙げられる。
【0070】
或いは、この微粒子として、有機無機複合材料からなる微粒子を用いてもよい。このような微粒子としては、有機材料と無機材料とを含んだ混合物からなる微粒子、及び、有機材料と無機材料とを含み且つコアシェル構造を有した微粒子が挙げられる。
【0071】
更には、この微粒子として、内部に空気又はその他のガスを含んだ中空粒子を用いても良い。この中空粒子は、光透過層30中に空気又はガスを気泡として分散させることにより得られるものであってもよい。
【0072】
光透過層30中に微粒子を分散させる場合、これら微粒子の平均粒径は、例えば400nm以下とし、典型的には100nm以下とする。この平均粒径が過度に大きいと、これら微粒子に起因した過度の光散乱により、光透過層30に起因した後述する光学効果が視認し難くなる可能性がある。なお、ここで「平均粒径」とは、動的散乱法により測定した平均粒子径である。
【0073】
光透過層30は、典型的には無色である。このような構成を採用すると、光透過層30に起因した後述する光学効果が特に顕著となる。また、こうすると、光透過層30の存在が比較的悟られ難くなり、表示体100の偽造防止効果を更に向上させることができる。
【0074】
光透過層30は、有色であってもよい。このような構成を採用すると、光透過層30の色と構造色との組み合わせによって、更に複雑な色調の像を表現することが可能となる。例えば、光透過層30は、色材を更に含んでいてもよい。この色材としては、例えば、顔料又は染料が挙げられる。この色材は、体質顔料であってもよい。
【0075】
図1及び図2から明らかなように、光透過層30は、表示体100の最表層となり得る。そのため、光透過層30は、表面硬度が高く且つ磨耗性及び擦傷性に優れていることが好ましい。このような特性を有した光透過層30の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂、電離線硬化樹脂、二液硬化樹脂、熱硬化樹脂、並びに、シリコーン樹脂及びフッ素樹脂などを含んだハードコート材料が挙げられる。また、これら材料は、ワックス及び/又は滑剤を更に含んでいてもよい。
【0076】
光透過層30は、例えば、光透過材料の印刷により形成する。この印刷法としては、例えば、インクジェット印刷、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、ロールコート印刷、及びフレキソ印刷法が挙げられる。これら印刷は、例えば、光透過層30の材料を含んだインキ又は分散液を基礎構造層10又は反射層20上に塗布した後、これらを乾燥させることにより行う。
【0077】
光透過層30は、印刷法以外の方法により形成してもよい。例えば、光透過層30は、転写法又はラミネート法により形成してもよい。なお、光透過層30の形成により個人情報などを表示させる場合には、この光透過層30は、当該情報の痕跡が残り得るインクリボンなどを用いない方法、例えばインクジェット印刷法で形成することが望ましい。
【0078】
(光学効果)
以下、表示体100が発揮し得る光学効果について説明する。
まず、その前提として、基礎構造層10又は基礎構造層10と反射層20との積層構造のみに起因した光学効果について説明する。以下では、簡単のため、反射層20を省略した場合について説明する。
【0079】
基礎構造層10の一方の主面には、上述した通り、均一に配置された複数の凹部RCからなるレリーフ構造が設けられている。そして、これら複数の凹部RCは、白色光で照明したときに上記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている。
【0080】
レリーフ構造が表示する構造色は、例えば、光の吸収に基づいた構造色である。このような構造色は、例えば光の選択吸収により、即ち、複数の凹部RCに、可視域の光のうち特定の波長領域の光を他の波長領域の光と比較してより高い効率で吸収させることにより表示可能となる。即ち、レリーフ構造を白色光で照明したときに、特定の波長領域の光が複数の凹部RCにおいて吸収され、それ以外の波長領域の光の全部又は一部が複数の凹部RCから反射、回折又は散乱して射出されるようにする。これにより、レリーフ構造に、特定の構造色を表示させることができる。
【0081】
レリーフ構造に光の吸収に基づいた構造色を表示させるためには、例えば、以下のような構成を採用する。即ち、複数の凹部RCの各々を、その底部に向けて先細りした形状とする。このような構成を採用すると、これら凹部RCに入射した光は、各凹部RC内で他数回の反射を生じ得る。そして、反射光の一部又は全部は、凹部RCの外側へと射出されることなしに、反射を繰り返して次第に減衰する。
【0082】
例えば、複数の凹部RCを、レリーフ構造を白色光で照明したときにこの照明光の全て又は極めて多くがこれら複数の凹部RCの前方に戻らないように設計すると、基礎構造層10の主面のうち凹部RCが設けられた領域に、黒色の構造色を表示させることができる。或いは、複数の凹部RCを、レリーフ構造を白色光で照明したときに、可視域の光のうち一部の波長領域の光のみがこれら凹部RCの前方に戻るように設計すると、基礎構造層10の主面のうち凹部RCが設けられた領域に、上記波長領域に対応した構造色を表示させることができる。
【0083】
レリーフ構造に光の吸収に基づいた構造色を表示させる場合、この構造色は、例えば、複数の凹部RCの平均中心間距離及び/又はアスペクト比を調節することにより適宜変更することができる。例えば、凹部RCのアスペクト比を大きくすることにより、より黒色に近い構造色を表示させることができる。また、複数の凹部RCのアスペクト比を小さくすることにより、黒色以外の所望の構造色を表示させることができる。例えば、複数の凹部RCの平均中心間距離を400nm以下とし且つアスペクト比を0.5より大きくすると、上記レリーフ構造に、黒色に近い構造色を表示させることができる。
【0084】
レリーフ構造が表示する構造色は、複数の凹部RCによる回折に基づいた構造色であってもよい。この構造色は、例えば、これら凹部RCが回折格子を形成するように、これらを規則的に配置することにより表示させることができる。特には、複数の凹部RCの平均中心間距離を180nm乃至830nmの範囲内とすると、一次回折光などの低次の回折光に起因した構造色が、高い視認性で且つ幅広い観察角度で視認できる。
【0085】
レリーフ構造が表示する構造色は、複数の凹部RCによる散乱に基づいた構造色であってもよい。この構造色は、例えば、これら凹部RCを不規則に配置することにより表示させることができる。この散乱機構としては、例えば、レイリー散乱、ミー散乱及び回折散乱が挙げられる。
【0086】
次に、光透過層30の形成に起因した光学効果について説明する。以下では、簡単のため、表示体100が基礎構造層10及び光透過層30のみからなる場合について説明する。
【0087】
図1乃至図3を参照しながら説明した表示体100では、光透過層30は、基礎構造層10の主面のうち複数の凹部RCが設けられた領域を部分的に被覆している。即ち、光透過層30は、先の領域のうち第1部分領域PR1のみを被覆している。また、この光透過層30は、これと隣接した外部領域とは異なった屈折率を有している。
【0088】
それゆえ、光透過層30を設けることにより、第1部分領域PR1において、凹部RC内における光学距離(屈折率と実際の距離との積)を変化させることができる。即ち、光透過層30を設けることにより、例えば、複数の凹部RCの実効的な形状、深さ及び開口の幅などを変化させることができる。
【0089】
また、基礎構造層10に設けられたレリーフ構造が繰り返し反射に基づく光の吸収に起因した構造色を表示する場合、光透過層30を設けることにより、複数の凹部RCに入射する光を、光透過層30と上記の外部領域との界面において屈折させることができる。それゆえ、こうすると、この入射光に対応した繰り返し反射光の凹部RC内における光路を変化させることが可能となる。
【0090】
したがって、光透過層30を設けると、第1部分領域PR1に対応した第1表示部DP1に、基礎構造層10のみが表示する構造色とは異なった構造色を表示させることが可能となる。
【0091】
他方、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体100では、光透過層30は、第2部分領域PR2を被覆していない。したがって、この第2部分領域PR2に対応した第2表示部DP2は、基礎構造層10が表示する構造色と同一の構造色を表示する。
【0092】
以上より、光透過層30は、第1表示部DP1と第2表示部DP2とに、異なる構造色を表示させることができる。
【0093】
第1表示部DP1に表示させる構造色は、第1部分領域PR1上に形成する光透過層30の厚み及び屈折率などを変化させることにより、自在に調節することができる。また、第1表示部DP1の形状も、光透過層30を形成する位置を制御することにより、自在に調節することができる。即ち、光透過層30の形成により、所望のパターンを、オンデマンドで記録することができる。
【0094】
この光透過層30の形成は、上述したように、印刷法などによって、簡易に且つ高効率で行うことができる。即ち、以上のような構成を採用すると、簡易に且つ高効率で、所望のパターンを記録することが可能となる。
【0095】
図1乃至図3を参照しながら説明した表示体100では、凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30の厚みは、光透過層30が存在しない場合の凹部RCの深さと比較してより小さい。即ち、光透過層30は、第1部分領域PR1に含まれる複数の凹部RCの各々を、部分的に埋めている。この場合、光透過層30がこれら凹部RCの各々を完全に埋めている場合と比較して、光透過層30の材料の使用量が少なくて済む。加えて、この場合、表示体100の厚みを抑制することができる。
【0096】
また、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体100では、複数の凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30の厚みは、互いに隣接した凹部RCの間の位置における光透過層30の厚みと比較してより大きい。このように光透過層30を形成すると、第1表示部DP1と第2表示部DP2とで、複数の凹部RCの実効的な深さを互いに異ならせることができる。即ち、こうすると、表示部DP1及びDP2の各々が表示する構造色の差を、より顕著とすることが可能となる。
【0097】
なお、以上において、レリーフ構造が表示する構造色は、照明光の照明角度及び観察者の観察角度などによって変化してもよい。即ち、このレリーフ構造は、観察条件に応じた色及び/又は明るさの変化を生じてもよい。このような色変化は、観察者が検証機器を用いることなしに視認できるため、表示体100の偽造防止効果を更に向上させ得る。
【0098】
(変形例)
以上において説明した表示体100には、種々の変形が可能である。
図4は、図1及び図2に示す表示体の一変形例を示す断面図である。
図4に示す表示体100は、光透過層30が、第1部分領域PR1に含まれる複数の凹部RCの各々を完全に埋めていることを除いては、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
【0099】
このような構成を採用した場合であっても、光透過層30を設けることにより、第1部分領域PR1において、凹部RC内における光路に沿った光学距離を変化させることができる。これにより、複数の凹部RCの実効的な深さを変化させることができる。
【0100】
よって、図4に示す表示体100においても、光透過層30は、第1表示部DP1と第2表示部DP2とに、異なる構造色を表示させることができる。加えて、光透過層30が、第1部分領域PR1に含まれる複数の凹部RCを完全に埋めている場合、表示部DP1における凹部RCの損傷が比較的生じ難い。また、この場合、凹部RCの存在が比較的悟られ難い。
【0101】
図5は、図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図である。
図5に示す表示体100は、光透過層30が、凹部RCが異なる深さを有するように形成された第1光透過層30A及び第2光透過層30Bを含んでいることを除いては、図1乃至図3を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
【0102】
図5に示す表示体100では、基礎構造層10の主面のうち複数の凹部RCが設けられた領域は、第1光透過層30Aに対応した第1部分領域PR1と、第2光透過層30Bに対応した第2部分領域PR2と、光透過層30が設けられていない位置に対応した第3部分領域PR3とを含んでいる。これらのうち、第3部分領域PR3は、省略してもよい。
【0103】
そして、図5に示す表示体100は、部分領域PR1乃至PR3に各々が対応した第1表示部DP1、第2表示部DP2及び第3表示部DP3を含んでいる。また、この表示体100は、凹部RCを備えていない第4表示部DP4を更に含んでいる。これらのうち、表示部DP3及びDP4は、省略してもよい。
【0104】
図5に示す表示体100では、光透過層30は、第1部分領域PR1と第2部分領域PR2とで凹部RCが異なる深さを有するように、部分領域PR1及びPR2の両方を被覆している。即ち、光透過層30は、第1部分領域PR1を被覆した第1光透過層30Aと、第2部分領域PR2を被覆した第2光透過層30Bとを含んでいる。
【0105】
光透過層30A及び30Bの材料は、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。但し、これら光透過層30A及び30B間で光学距離を異ならせるために、各々における屈折率と厚みの最大値との積は、互いに異なっていることが好ましい。なお、光透過層30A及び30Bの材料としては、例えば、図1乃至図3を参照しながら説明した光透過材料と同様のものを使用することができる。
【0106】
図5に示すような構成を採用すると、表示部DP1及びDP2に、互いに異なった構造色を表示させることができる。これら構造色の双方は、典型的には、基礎構造層10のみに起因した構造色とは異なっている。したがって、このような構成を採用すると、更に複雑な光学効果を達成することができる。
【0107】
図5に示す表示体100では、凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30A及び30Bの厚みは、それぞれ、光透過層30A及び30Bが存在しない場合の複数の凹部RCの深さと比較してより小さい。この場合、光透過層30A及び30Bの一方又は両方が複数の凹部RCの各々を完全に埋めている場合と比較して、光透過層30A又は30Bの材料の使用量が少なくて済む。また、この場合、表示体100の厚みを抑制することができる。
【0108】
また、図5に示す表示体100では、複数の凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30A及び30Bの厚みは、それぞれ、互いに隣接した複数の凹部RCの間の位置における光透過層30A及び30Bの厚みと比較してより大きい。このように光透過層30A及び30Bを形成すると、表示部DP1及びDP2と表示部DP3とで、複数の凹部RCの実効的な深さを互いに異ならせることができる。即ち、こうすると、表示部DP1及びDP2が表示する構造色と、表示部DP3が表示する構造色との差を、より顕著とすることが可能となる。
【0109】
なお、これら光透過層30A及び30Bの形成は、図1乃至図3を参照しながら説明した光透過層30について述べたのと同様の方法により行うことができる。したがって、図5に示す表示体100においても、所望のパターンを、簡易に、高効率に、且つオンデマンドで記録することが可能である。
【0110】
図6は、図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図である。
図6に示す表示体100は、第1光透過層30Aが第1部分領域PR1が含んだ複数の凹部RCの各々を完全に埋めていることを除いては、図5を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
【0111】
このような構成を採用した場合であっても、表示部DP1及びDP2に、互いに異なった構造色を表示させることができる。また、これら構造色の双方は、典型的には、基礎構造層10のみに起因した構造色とは異なっている。したがって、このような構成を採用すると、更に複雑な光学効果を達成することができる。
【0112】
図6に示す表示体100では、第1光透過層30Aは、第1部分領域PR1が含んだ複数の凹部RCの各々を、完全に埋めている。したがって、表示部DP1における凹部RCの損傷が比較的生じ難い。また、この場合、第1部分領域PR1が含んだ複数の凹部RCの存在が比較的悟られ難い。
【0113】
他方、図6に示す表示体100では、第2光透過層30Bは、第2部分領域PR2が含んだ複数の凹部RCの各々を、部分的に埋めている。したがって、第2光透過層30Bが複数の凹部RCの各々を完全に埋めている場合と比較して、第2光透過層30Bの材料の使用量が少なくて済む。また、この場合、表示体100の厚みを抑制することができる。
【0114】
図7は、図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図である。
図7に示す表示体100は、光透過層30A及び30Bが、各々に対応した領域に含まれる凹部RCが同一の深さを有するように形成されており且つこれら層の屈折率が互いに異なっていることを除いては、図5を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
【0115】
図7に示す表示体100では、光透過層30は、第1部分領域PR1と第2部分領域PR2とで凹部RCが同一の深さを有するように、部分領域PR1及びPR2の両方を被覆している。即ち、光透過層30は、第1部分領域PR1を被覆した第1光透過層30Aと、第2部分領域PR2を被覆し且つ第1光透過層30Aと同一の厚みを有した第2光透過層30Bとを含んでいる。
【0116】
これら光透過層30A及び30Bは、屈折率が互いに異なっている。したがって、これら光透過層30A及び30Bを設けることにより、部分領域PR1及びPR2の各々において、凹部RC内における光路に沿った光学距離を変化させることができる。これにより、部分領域PR1及びPR2の各々における複数の凹部RCの実効的な深さを変化させることができる。
【0117】
したがって、図7に示すような構成を採用した場合であっても、表示部DP1及びDP2に、互いに異なった構造色を表示させることができる。これら構造色の双方は、典型的には、基礎構造層10のみに起因した構造色とは異なっている。したがって、このような構成を採用すると、更に複雑な光学効果を達成することができる。
【0118】
また、図7に示す表示体100では、光透過層30A及び30Bは、互いに同一の厚みを有している。したがって、この表示体100は、主面に平行な方向における厚みのムラが少ない。よって、このような構成を採用すると、特に高品位な表示体100を製造することが可能となる。
【0119】
図8は、図1及び図2に示す表示体の他の変形例を示す断面図である。
図8に示す表示体100は、光透過層30A及び30Bの双方が凹部RCの各々を完全に埋めていることを除いては、図7を参照しながら説明した表示体と同様の構成を有している。
【0120】
図8に示す表示体100では、光透過層30は、第1部分領域PR1を被覆した第1光透過層30Aと、第2部分領域PR2を被覆した第2光透過層30Bとを含んでいる。これら光透過層30A及び30Bは、部分領域PR1及びPR2の双方において、凹部RCの各々を完全に埋めている。
【0121】
これら光透過層30A及び30Bは、屈折率が互いに異なっている。したがって、これら光透過層30A及び30Bを設けることにより、部分領域PR1及びPR2の各々において、凹部RC内における光路に沿った光学距離を変化させることができる。これにより、部分領域PR1及びPR2の各々における複数の凹部RCの実効的な深さを変化させることができる。
【0122】
したがって、図8に示すような構成を採用した場合であっても、表示部DP1及びDP2に、互いに異なった構造色を表示させることができる。これら構造色の双方は、典型的には、基礎構造層10のみに起因した構造色とは異なっている。したがって、このような構成を採用すると、更に複雑な光学効果を達成することができる。
【0123】
また、図8に示す表示体100では、光透過層30A及び30Bは、凹部RCの各々を完全に埋めている。この場合、光透過層30A及び30Bの厚みの僅かな差異又は変化によって、表示部DP1及びDP2が表示する像が著しく変化することが起こり難い。したがって、この表示体100には、比較的安定的な像を表示させることができる。
【0124】
上では、凹部RCの断面形状がV字形状である場合について説明したが、凹部RCの形状は、これには限られない。例えば、この断面形状は、U字形状などの他の先細り形状であってもよい。或いは、この断面形状は、矩形状であってもよい。
【0125】
図9は、基礎構造層の一変形例を示す断面図である。
図9に示す基礎構造層10の一方の主面には、半球型の凸部の間に位置した複数の凹部RCが設けられている。これら凹部RCの各々は、図1乃至図8を参照しながら説明した凹部と同様に、その底部に向けて先細りした形状を有している。
【0126】
このような先細り形状を有した凹部RCを採用すると、上述した通り、レリーフ構造に、光の吸収に基づいた構造色を表示させることができる。光の吸収に基づいた構造色は、光の回折又は散乱に基づいた構造色と比較して、インク色に近い自然な発色である為に色調が判り易く、幅広い観察条件で一定の構造色を表示することが可能である。
【0127】
また、先細り形状を有した凹部RCは、矩形状の凹部RCと比較して、原版などを用いた製造がより容易である。したがって、この場合、基礎構造層10及び表示体100の生産性を更に向上させることができる。
【0128】
図10は、基礎構造層の他の変形例を示す断面図である。
図10に示す基礎構造層10は、凹部RCの断面形状が矩形状であることを除いては、図9を参照しながら説明した基礎構造層と同様の構成を有している。
【0129】
凹部RCの断面形状が矩形状である場合、凹部RCの表面の損傷が比較的生じ難い。即ち、このような構成を採用すると、基礎構造層10及び表示体100の耐久性を更に向上させることができる。
【0130】
図1乃至図8では、複数の凹部RCの配列が正方格子を形成している場合について説明したが、凹部RCの配列は、これには限られない。
【0131】
例えば、凹部RCの配列は、矩形格子又は三角格子を形成していてもよい。このような構成を採用すると、例えば、観察方向によって互いに異なった構造色を表示させることができる。こうすると、より複雑な偽造防止効果を達成できる。
【0132】
なお、凹部RCの配列が正方格子を形成している場合、この配列が矩形格子又は三角格子を形成している場合と比較して、より幅広い観察条件で、一定の構造色を表示させることが可能となる。
【0133】
凹部RCは、不規則に配列していてもよい。例えば、複数の凹部RCの配列は、中心間距離のばらつきを有していてもよい。複数の凹部RCを不規則に配列させると、更に幅広い観察条件で、一定の構造色を表示させることが可能となる。
【0134】
凹部RCが不規則に配列している場合、中心間距離の標準偏差は、平均中心間距離を基準として、例えば5%乃至30%の範囲内とする。この標準偏差が過度に小さいと、不規則な配列を採用したことによる効果が不十分となる可能性がある。この標準偏差が過度に大きいと、凹部RCの形成が比較的困難となる可能性がある。
【0135】
なお、上では、凹部RCが二次元的に配列している場合について説明したが、これら凹部RCは、一次元的に配列していてもよい。即ち、凹部RCの各々は、直線状又は曲線状の溝であってもよい。
【0136】
基礎構造層10は、上述した通り、凹部RCとは形状、深さ、平均中心間距離及び配置パターンの少なくとも1つが異なった他の凹部を備えた1つ以上の領域を更に含んでいてもよい。この領域の少なくとも一部は、上述した反射層20及び光透過層30により被覆されていてもよい。このような構成を採用すると、表示体100に、更に複雑な像を表示させることが可能となる。
【0137】
上記の他の凹部を備えた領域は、例えば、凹部RCを備えた領域とは別個に形成してもよい。即ち、上記の他の凹部を備えた領域は、凹部RCを備えた領域とは異なった原版を用いて形成してもよい。
【0138】
或いは、これら領域は、単一の原版を用いて複数の凹部を形成した後に、これら凹部を形成した面の一部に熱及び/又は圧力を加えて凹部を変形させるか、又は、先の面の一部と他の一部とに熱及び/又は圧力を異なる大きさで加えて凹部を変形させることにより形成してもよい。このような方法を採用すると、上記の複数の領域をより簡易に形成することが可能である。
【0139】
基礎構造層10に設けられた凹部RCの深さは、凹部RCの配列に沿って、次第に変化させてもよい。即ち、上記の配列に沿って、凹部RCの深さが次第に増大又は減少するようにして、これら凹部RCを形成してもよい。また、光透過層30の厚みについても、上記の配列に沿って、次第に変化させてもよい。即ち、上記の配列に沿って、各凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30の厚みが次第に増大又は減少するようにして、光透過層30を形成してもよい。これらの少なくとも一方の構成を採用すると、表示体100に、グラデーション表示などのより複雑な視覚効果を付与することが可能となる。
【0140】
図1乃至図8を参照しながら説明した表示体100は、基礎構造層10、反射層20及び光透過層30以外の層を更に含んでいてもよい。
例えば、表示体100は、前面の少なくとも一部に、保護層を更に含んでいてもよい。こうすると、表示体100の表示面の損傷を更に抑制することが可能となる。或いは、表示体100は、前面の少なくとも一部に、反射防止層を更に含んでいてもよい。こうすると、表示体100の光学特性を更に向上させることができる。これら保護層及び/又は反射防止層は、例えば、公知のコーティング法により形成することができる。
【0141】
また、上記の層間の密着性を向上させるために、コロナ処理、フレーム処理及びプラズマ処理などを施してもよい。或いは、これら層間に、接着アンカー層を介在させてもよい。
【0142】
或いは、上記の層の少なくとも1つを着色してもよい。例えば、基礎構造層10を、有色の層としてもよい。こうすると、より複雑な光学効果を達成することができる。また、表示体100の意匠性が向上する。
【0143】
なお、表示体100は、以上に例示した種々の変形例の2以上を組み合わせた構成を有していてもよい。こうすると、例えば、表示体100に、更に複雑な像を表示させることが可能となり、その偽造防止効果を更に向上させることができる。
【0144】
(画素群による表示)
表示体100に表示させる像は、二次元的に配列した複数の画素で構成してもよい。
図11は、本発明の他の態様に係る表示体を概略的に示す平面図である。
【0145】
図11に示す表示体100は、複数の画素PEを含んでいることを除いては、図1乃至図10を参照しながら説明したのと同様の構成を有している。
【0146】
これら画素PEは、互いに交差するX及びY方向に配列している。即ち、これら画素PEは、X及びY方向に沿って互いに隣り合っている。これら画素PEは、互いに隣接していてもよく、互いから離間していてもよい。図11には、一例として、これら画素PEが、X及びY方向に沿って互いに隣接している場合を描いている。また、ここでは、一例として、X及びY方向は直交していることとする。
【0147】
画素PEは、典型的には、形状及び寸法が互いに等しい。画素PEは小さな寸法を有しており、典型的には、肉眼で観察した場合にそれら画素PEを互いから区別することはできない。例えば、画素PEの各々のX方向についての寸法は、約50μmである。
【0148】
これら画素PEのうち少なくとも2つでは、例えば、光透過層30の厚み、屈折率、可視域の光に対する全光線透過率、及び、画素PEの面積に対する光透過層30を形成した部分の面積を互いに異ならせる。こうすると、これら画素PEに、白色光で照明した場合に互いに異なった構造色を表示させることができる。また、このような構成を採用すると、表示体100に、所望のパターンを、より精細に記録することが可能となる。また、こうすると、表示体100に多色画像を表示させることがより容易となる。
【0149】
(表示体の使用態様)
以上において説明した表示体100は、例えば、粘着ステッカ、転写箔、又はスレッドの一部として使用してもよい。或いは、この表示体100は、ティアテープの一部として使用してもよい。
【0150】
図12は、本発明の一態様に係る粘着ステッカを概略的に示す断面図である。図12に示す粘着ステッカ200は、図1及び図2に示す表示体100と、表示体100の背面上に設けられた粘着層40とを備えている。
【0151】
粘着層40は、基礎構造層10の背面上に設けられている。粘着層40は、基礎構造層10を間に挟んで光透過層30と向き合っている。
【0152】
粘着層40の材料としては、典型的には、感圧接着剤を使用する。粘着層40の材料としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル系ポリアミド、及び、アクリル系、ブチルゴム系、天然ゴム系、シリコン系又はポリイソブチル系のものが挙げられる。粘着層は、必要に応じて、凝集成分、改質成分及び添加剤を更に含んでいてもよい。凝集成分としては、例えば、アルキルメタクリレート、ビニルエステル、アクリロニトリル、スチレン及びビニルモノマーが挙げられる。改質成分としては、例えば、不飽和カルボン酸、ヒドロキシ基含有ポリマー、及びアクリロニトリルが挙げられる。添加剤としては、例えば、重合開始剤、可塑剤、硬化剤、硬化促進剤及び酸化防止剤が挙げられる。或いは、粘着層40として、両面がフィルムセパレータで構成された接着剤を用いてもよい。
【0153】
粘着層40は、例えば、グラビア印刷法、オフセット印刷法及びスクリーン印刷法などの印刷法、又は、バーコート法、グラビア法及びロールコート法などの塗布法により形成する。粘着層40の厚みは、例えば1μm乃至10μmの範囲内とする。
【0154】
この粘着ステッカ200は、例えば、真正さが確認されるべき物品に貼り付けるか、又は、そのような物品に取り付けられるべきタグの基材などの他の物品に貼り付ける。これにより、当該物品に偽造防止効果を付与することができる。なお、粘着ステッカ200の貼り付けは、例えば、ロールラミネート法により行う。
【0155】
図12に示す粘着ステッカ200は、表示体100の背面に粘着層40を設けることにより製造してもよく、表示体100のうち光透過層30以外の部分に対応したブランク媒体の背面に粘着層40を設けた後に、光透過層30を形成することにより製造してもよい。
【0156】
図13は、本発明の一態様に係る転写箔を概略的に示す断面図である。図13に示す転写箔300は、図1及び図2に示す表示体100と、表示体100を剥離可能に支持した支持体層50とを備えている。図13には、一例として、表示体100の前面と支持体層50との間に剥離層52が設けられており、表示体100の背面上に接着層54が設けられている場合を描いている。
【0157】
支持体層50は、例えば、樹脂からなるフィルム又はシートである。支持体層50の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又は塩化ビニル樹脂を使用する。
【0158】
剥離層52は、転写箔300を被転写体に転写する際の支持体層50の剥離を容易にする役割を担っている。剥離層52の材料としては、例えば、樹脂を使用する。剥離層92は、パラフィンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス及びシリコーンなどの添加剤を更に含んでいてもよい。なお、剥離層52の厚みは、例えば0.5μm乃至5μmの範囲内とする。
【0159】
接着層54の材料としては、例えば、反応硬化型接着剤、溶剤揮散型接着剤、ホットメルト型接着剤、電子線硬化型接着剤及び感熱接着剤などの接着剤を使用する。
【0160】
反応硬化性接着剤としては、例えば、ポリエステルウレタン、ポリエーテルウレタン及びアクリルウレタンなどのポリウレタン系樹脂、又は、エポキシ樹脂を使用する。
【0161】
溶剤揮散型接着剤としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、アイオノマー樹脂及びウレタン樹脂などを含んだ水性エマルジョン型接着剤、天然ゴム、スチレン−ブタジエン共重合樹脂及びアクリロニトリル−ブタジエン共重合樹脂などを含んだラテックス型接着剤を使用する。
【0162】
ホットメルト型接着剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルエーテル樹脂及びポリウレタン樹脂などをベース樹脂として含んだものを使用する。
【0163】
電子線硬化型接着剤としては、例えば、アクリロイル基、アリル基及びビニル基などのビニル系官能基を1個又は複数個有したオリゴマーを主成分として含んだものを使用する。例えば、電子線硬化型接着剤として、ポリエステルアクリレート、ポリエステルメタクリレート、エポキシアクリレート、エポキシメタクリレート、ウレタンアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエーテルアクリレート又はポリエーテルメタクリレートと、接着付与剤との混合物を使用することができる。この接着付与剤としては、例えば、リンを含んだアクリレート若しくはその誘導体、又は、カルボキシ基を含んだアクリレート若しくはその誘導体を使用する。
【0164】
感熱接着剤としては、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ゴム系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂又は塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂を使用する。
【0165】
接着層54は、例えば、上述した樹脂を、グラビアコータ、マイクログラビアコータ及びロールコータなどのコータを用いて表示体100の背面上に塗布することにより得られる。
【0166】
この転写箔300は、例えば、ロール転写機又はホットスタンプによって、被転写体に転写される。この際、剥離層52において剥離を生じると共に、表示体100が、被転写体に、接着層54を介して貼付される。
【0167】
なお、図13に示す転写箔300は、例えば、以下のようにして製造する。即ち、まず、第1の支持体上に、表示体100を形成する。なお、この構成は、基礎構造層10及び反射層20からなるブランク媒体を第1の支持体上に形成した後に、光透過層30を設けることにより製造してもよい。次に、第1の支持体と表示体100との積層体を、脆性層52を介して支持体層50としての第2の支持体上に転写すると同時に、第1の支持体を剥離する。続いて、得られた構成の背面側に、接着層54を形成する。以上のようにして、転写箔300を得る。
【0168】
上述したように、表示体100は、優れた偽造防止効果を有している。したがって、表示体100を物品に支持させた場合、真正品であるこの表示体付き物品の偽造も困難である。また、この表示体100は上述した視覚効果を有しているため、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。
【0169】
図14は、表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図である。図14には、表示体付き物品の一例として、カード400を描いている。このカード400は、IDカードであって、カード本体401を含んでいる。
【0170】
カード本体401は、基材402を含んでいる。基材402は、例えば、プラスチックからなる。基材402上には、印刷層403が形成されている。基材402の印刷層403が形成された面には、上述した表示体100が固定されている。表示体100は、例えば、粘着層又は接着層を介して貼り付けることにより、基材402に固定する。
【0171】
印刷物400は、表示体100を含んでいるため、その偽造は困難である。また、この印刷物400は、表示体100を含んでいるため、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。
【0172】
表示体100は、紙に漉き込むか又は紙からなる基材に支持させてもよい。こうすると、例えば、高い偽造防止効果を有した有価証券、用紙及びパスポートなどを製造することができる。
【0173】
表示体付き物品は、印刷物でなくてもよい。即ち、印刷層を含んでいない物品に表示体100を支持させてもよい。
【0174】
以上において、表示体100そのものを物品に支持させる代わりに、基礎構造層10を含んでおり且つ光透過層30を含んでいない中間品を物品に支持させてもよい。そして、この中間品上に光透過層30を形成することにより、表示体100を作製可能としてもよい。このような態様は、例えば、パスポートなどのオンデマンドでの画像記録が必要な物品において、特に有用である。
【0175】
表示体100は、偽造防止用のインクの顔料成分として用いてもよい。この場合、表示体100は、適宜粉砕して用いる。
【0176】
表示体100は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体100は、玩具、学習教材又は装飾品としても使用することができる。
【実施例】
【0177】
(例1)
表示体100を、以下のようにして製造した。
まず、以下の組成を有するインキ組成物(紫外線硬化型樹脂)を準備した。
【0178】
・ウレタン(メタ)アクリレート: 50.0質量部
・メチルエチルケトン: 30.0質量部
・酢酸エチル: 20.0質量部
・光開始剤: 1.5質量部
なお、上記のウレタン(メタ)アクリレートとしては、根上工業株式会社製のUN−952を用いた。なお、このウレタン(メタ)アクリレートは、多官能性であり、その重量平均分子量は6500であった。また、光開始剤としては、チバスペシャリティー製のイルガキュア184を用いた。
【0179】
次に、厚みが23μmである透明PETフィルムからなる基材上に、上記の組成物を、乾燥後の膜厚が1μmとなるように、グラビア印刷法によって塗布した。
【0180】
その後、塗布面に対して、後述する複数の凹部RCの形状に対応した微細凹凸構造を備えた円筒状の原版を押し当てて、エンボス加工を行った。このエンボス加工は、プレス圧力を2kgf/cm2とし、プレス温度を80℃とし、プレススピードを10m/minとして行った。そして、この加工と同時に、透明PETフィルムからなる基材の側から、高圧水銀灯を用いて、300mJ/cm2の露光量で紫外線露光を行った。これにより、上記の組成物を硬化させて、基礎構造層10を得た。
【0181】
この基礎構造層10は、一方の主面に、直径が400nmである半球を三角格子状に最密充填された凸部を備えていた。即ち、この基礎構造層10は、一方の主面に、これら凸部の間の空間に対応した複数の凹部RCを備えていた。これら複数の凹部RCの平均中心間距離は400nmであり、その深さは200nmであった。
【0182】
次いで、平滑面上での厚みが50nmとなるように、基礎構造層10の凹部RCが設けられた主面の全体に亘って、Alを真空蒸着させた。このようにして、Alからなる反射層20を形成した。以上のようにして、基礎構造層10と反射層20とからなる中間品を得た。
【0183】
その後、反射層20の一部の上に、塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合樹脂(塩酢ビ樹脂)を、インクジェット法によって塗布し、これを乾燥させた。このようにして、光透過層30を得た。なお、この光透過層30は、無色且つ透明であった。また、光透過層30は、複数の凹部RCの底部に対応した位置における厚みが100nmとなるように形成した。以上のようにして、表示体100を得た。
【0184】
(例2)
複数の凹部RCの底部に対応した位置における光透過層30の厚みを100nmとする代わりに240nmとしたことを除いては、例1と同様にして、中間品及び表示体100を得た。
【0185】
(例3)
動的散乱法により測定した平均粒子径が400nmである単分散シリカナノ粒子を用いて、基材上に、単層粒子膜を形成した。このようにして、複数の凹部RCを備えた基礎構造層10を得た。その後、この基礎構造層10を用いたことを除いては、例1と同様にして、中間品及び表示体100を得た。
【0186】
(例4)
光透過層30をイソインドリノン系の黄色顔料を用いて着色したことを除いては、例1と同様にして、表示体100を得た。この表示体100では、光透過層30の可視域の光に対する全光線透過率は80%であった。
【0187】
(例5)
光透過層30中のイソインドリノン系の黄色顔料の含有量をより多くしたことを除いては、例4と同様にして、表示体100を得た。この表示体100では、光透過層30の可視域の光に対する全光線透過率は30%であった。
【0188】
(評価)
例1乃至例5に係る表示体100を、多色光源の下で、複数の観察角度から観察した。より具体的には、これら表示体100を、室内の複数の蛍光灯の下で、その表示面の法線方向を基準として0゜及び60゜の2つの方向から観察した。そして、第1表示部DP1と第2表示部DP2との各々が表示する構造色を、肉眼により評価した。その結果を、下記表1に示す。
【表1】
【0189】
表1から明らかなように、例1乃至例5に係る表示体100は、何れの観察角度においても、表示部DP1及びDP2で互いに異なった構造色を表示した。また、例1乃至例4に係る表示体100では、表示部DP1においても、観察角度に応じた構造色の色変化が生じた。
【符号の説明】
【0190】
10…基礎構造層、20…反射層、30…光透過層、30A…第1光透過層、30B…第2光透過層、40…粘着層、50…支持体層、52…剥離層、54…接着層、100…表示体、200…粘着ステッカ、300…転写箔、400…カード、401…カード本体、402…基材、403…印刷層、DP1…表示部、DP2…表示部、DP3…表示部、DP4…表示部、PE…画素、PR1…部分領域、PR2…部分領域、RC…凹部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一に配置された複数の凹部からなるレリーフ構造を一方の主面に含み、前記複数の凹部は白色光で照明したときに前記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている基礎構造層と、
前記主面のうち前記複数の凹部が設けられた領域の少なくとも一部を被覆した光透過層と
を具備し、前記光透過層は、
前記領域の第1及び第2部分領域で前記凹部が異なる深さを有するように若しくは前記第1及び第2部分領域の一方においてのみ前記凹部が完全に埋め込まれるように前記第1及び第2部分領域の少なくとも一方を被覆しており、前記白色光で照明したときに、前記レリーフ構造のうち、前記第1部分領域に対応した第1部分と、前記第2部分領域に対応した第2部分とに異なる構造色を表示させるか、又は、
前記領域の第1部分領域を被覆した第1光透過層と、前記第1光透過層とは屈折率が異なり、前記領域の第2部分領域を被覆した第2光透過層とを含み、前記白色光で照明したときに、前記レリーフ構造のうち、前記第1部分領域に対応した第1部分と、前記第2部分領域に対応した第2部分とに異なる構造色を表示させる
表示体。
【請求項2】
前記基礎構造層と前記光透過層との間に介在した反射層を更に具備した請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記第1及び第2部分領域の少なくとも一方において、前記複数の凹部の底部に対応した位置における前記光透過層の厚みは、前記光透過層が存在しない場合の前記複数の凹部の深さと比較してより小さい請求項1又は2に記載の表示体。
【請求項4】
前記第1及び第2部分領域の少なくとも一方において、前記複数の凹部の底部に対応した位置における前記光透過層の厚みは、互いに隣り合った前記複数の凹部の間の位置における前記光透過層の厚みと比較してより大きい請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示体。
【請求項5】
前記光透過層は可視域の光に対する全光線透過率が50%以上である請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
【請求項6】
前記光透過層は無色である請求項1乃至5の何れか1項に記載の表示体。
【請求項7】
前記複数の凹部の平均中心間距離は180nm乃至830nmの範囲内である請求項1乃至6の何れか1項に記載の表示体。
【請求項8】
前記複数の凹部は規則的に配置されている請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【請求項9】
前記複数の凹部は不規則に配置されている請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【請求項10】
前記複数の凹部の各々は、その底部に向けて先細りしている請求項1乃至9の何れか1項に記載の表示体。
【請求項11】
均一に配置された複数の凹部からなるレリーフ構造を一方の主面に含み、前記複数の凹部は白色光で照明したときに前記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている基礎構造層を準備することと、
前記主面のうち前記複数の凹部が設けられた第1及び第2部分領域で前記凹部が異なる深さを有するように若しくは前記第1及び第2部分領域の一方においてのみ前記凹部が完全に埋め込まれるように、前記第1及び第2部分領域の少なくとも一方を光透過材料で被覆するか、又は、前記第1及び第2部分領域を、それぞれ、屈折率が互いに異なる第1及び第2光透過材料で被覆して、前記白色光で照明したときに、前記レリーフ構造のうち、前記第1部分領域に対応した第1部分と、前記第2部分領域に対応した第2部分とに異なる構造色を表示させる光透過層を形成することと
を含んだ表示体の製造方法。
【請求項1】
均一に配置された複数の凹部からなるレリーフ構造を一方の主面に含み、前記複数の凹部は白色光で照明したときに前記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている基礎構造層と、
前記主面のうち前記複数の凹部が設けられた領域の少なくとも一部を被覆した光透過層と
を具備し、前記光透過層は、
前記領域の第1及び第2部分領域で前記凹部が異なる深さを有するように若しくは前記第1及び第2部分領域の一方においてのみ前記凹部が完全に埋め込まれるように前記第1及び第2部分領域の少なくとも一方を被覆しており、前記白色光で照明したときに、前記レリーフ構造のうち、前記第1部分領域に対応した第1部分と、前記第2部分領域に対応した第2部分とに異なる構造色を表示させるか、又は、
前記領域の第1部分領域を被覆した第1光透過層と、前記第1光透過層とは屈折率が異なり、前記領域の第2部分領域を被覆した第2光透過層とを含み、前記白色光で照明したときに、前記レリーフ構造のうち、前記第1部分領域に対応した第1部分と、前記第2部分領域に対応した第2部分とに異なる構造色を表示させる
表示体。
【請求項2】
前記基礎構造層と前記光透過層との間に介在した反射層を更に具備した請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記第1及び第2部分領域の少なくとも一方において、前記複数の凹部の底部に対応した位置における前記光透過層の厚みは、前記光透過層が存在しない場合の前記複数の凹部の深さと比較してより小さい請求項1又は2に記載の表示体。
【請求項4】
前記第1及び第2部分領域の少なくとも一方において、前記複数の凹部の底部に対応した位置における前記光透過層の厚みは、互いに隣り合った前記複数の凹部の間の位置における前記光透過層の厚みと比較してより大きい請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示体。
【請求項5】
前記光透過層は可視域の光に対する全光線透過率が50%以上である請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
【請求項6】
前記光透過層は無色である請求項1乃至5の何れか1項に記載の表示体。
【請求項7】
前記複数の凹部の平均中心間距離は180nm乃至830nmの範囲内である請求項1乃至6の何れか1項に記載の表示体。
【請求項8】
前記複数の凹部は規則的に配置されている請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【請求項9】
前記複数の凹部は不規則に配置されている請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【請求項10】
前記複数の凹部の各々は、その底部に向けて先細りしている請求項1乃至9の何れか1項に記載の表示体。
【請求項11】
均一に配置された複数の凹部からなるレリーフ構造を一方の主面に含み、前記複数の凹部は白色光で照明したときに前記レリーフ構造が構造色を表示するように設けられている基礎構造層を準備することと、
前記主面のうち前記複数の凹部が設けられた第1及び第2部分領域で前記凹部が異なる深さを有するように若しくは前記第1及び第2部分領域の一方においてのみ前記凹部が完全に埋め込まれるように、前記第1及び第2部分領域の少なくとも一方を光透過材料で被覆するか、又は、前記第1及び第2部分領域を、それぞれ、屈折率が互いに異なる第1及び第2光透過材料で被覆して、前記白色光で照明したときに、前記レリーフ構造のうち、前記第1部分領域に対応した第1部分と、前記第2部分領域に対応した第2部分とに異なる構造色を表示させる光透過層を形成することと
を含んだ表示体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−173379(P2011−173379A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40452(P2010−40452)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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