説明

表示体及びラベル付き物品

【課題】液晶を利用せずに偏光潜像を形成することが可能な表示技術を提供する。
【解決手段】本発明の表示体100は、光透過性の基材110と、前記基材110と向き合った第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有し、前記第2面は、一次元又は二次元的に且つ周期的に配列した複数の凸部及び/又は凹部31を各々が備えた1つ以上の凹凸構造領域TP1,TP2を含み、前記1つ以上の凹凸構造領域TP1,TP2の各々に対応した部分は、速軸と遅軸とを有している複屈折部材として機能し、前記1つ以上の凹凸構造領域TP1,TP2の各々は前記速軸に垂直な断面の形状と前記遅軸に垂直な断面の形状とが異なっているレリーフ構造形成層111と、前記第2面上に設けられた金属反射層113とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば偽造防止に利用可能な画像表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、真正品であることを証明する為の偽造防止技術を、商品券及びクレジットカード等の有価証券類又はブランド品及び高級品等の一般には高価な物品へ適用する要望が増えている。そのような偽造防止技術としては、大きく分けて2種類の技術がある。一方は、一般のユーザが、その外観を肉眼で観察しただけで、偽造防止技術が適用されていることを認知でき、真偽判定できるオバート技術である。他方は、特定のユーザのみが偽造防止技術の存在を知り、何等かの特殊な検証を行うことによって、偽造防止技術が適用されていることを確認でき、真偽判定できるコバート技術である。
【0003】
オバート技術としては、例えば、OVD[Optical(ly) Variable Device]が利用されている。OVDとしては、例えば、反射光の干渉又は分散を利用して立体画像及び特殊な色の変化を生じる装飾画像などを表現し得るホログラム及び回折格子、並びに、光学特性が異なる薄膜を多層に重ねた構造を有し、観察角度の変化に伴う表示色の変化(カラーシフト)を生じる多層薄膜がある。なお、OVDの同義語として、DOVID[Diffractive Optical(ly) Variable Imaging Device]がある。
【0004】
OVDは、高度な製造技術を要する、独特な視覚効果を提供する、一瞥するだけで真偽を判定できるなどの特徴を有しており、有効な偽造防止手段として、クレジットカード、有価証券及び証明書類等の全面又はその一部に形成されている。最近では、OVDは、有価証券以外の物品、例えば、スポーツ用品、コンピュータ部品などの電気製品、及び、ソフトウエアが記録された記録媒体又はそのパッケージに貼り付けられて、その製品の真正さを証明する認証ステッカ又は封印ステッカとしても広く使われるようになってきた。
【0005】
なお、OVDは、上記の通り、一般には精巧な偽造が難しく、真正品であることの確認が容易な偽造防止手段であるが、商品券、紙幣、パスポート及び株券等の紙媒体に貼り付ける場合には、OVDの貼り替えが粘着ラベルと比較してより困難な転写箔の形態で使用することが多い。転写箔の支持体から物品上へと熱転写したOVDは、これを物品から剥がそうとしたときに、このOVDが含んでいる光学薄膜が物理的に破壊され、本来の視覚効果が損なわれる。従って、貼り替え又は改竄によるOVDの不正使用を防止できる。
【0006】
コバート技術としては、例えば、蛍光印刷、万線潜像、偏光潜像、及び特定波長吸収印刷等が挙げられる。これらは、現在でも、偽造防止において重要な役割を担っている。
【0007】
蛍光印刷の代表的な例としては、紫外線で励起され可視蛍光を発する蛍光体を含んだ印刷インキを印刷する蛍光印刷が挙げられる。この印刷インキに含まれる蛍光体は、通常の可視光源下では視認し難く、紫外線照射により可視領域の蛍光を発する。この紫外線の波長は、使用する蛍光体の種類に応じて種々選択することが可能である。一般には、波長が365nmの紫外線を放射するブラックライトが使用されている。蛍光印刷に関する近年の技術としては、例えば、2種以上の蛍光体を混合して、不正を試みる者にとって発色の再現を困難にする技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
万線潜像の代表的な例としては、凹版印刷を利用した万線潜像印刷が挙げられる。万線潜像印刷では、長さ方向が等しい多数の細線から各々がなり、細線の長さ方向が互いに異なる複数のパターンを、各細線が数十ミクロンを有するように及び先のパターンが互いに隣接するように形成する。線幅を互いに等しい線幅及びピッチで形成した場合、パターンを形成した面に対して垂直な方向から観察したときには、それらパターンを互いから識別することは困難である。そして、或るパターンの細線に対して垂直であり且つパターンを形成した面に対して傾いた方向から観察すると、先のパターンでは、他のパターンと比較して、細線の見かけ上の密度が高くなる。このようにして、潜像を可視化する。また、万線潜像によれば、例えば、或るパターンにおける細線の幅や密度を複写機の解像度以上に設定し、他のパターンにおける細線の幅や密度を複写機の解像度未満に設定した場合、肉眼で観察した場合にそれらパターンを互いから識別できないとしても、電子写真装置などの複写機を用いて得られるそれらの複写物では、肉眼による観察で先のパターンを互いから識別できる。万線潜像に関する近年の技術としては、例えば、インキに蛍光顔料を混合させることによる機能付加、及び、更に精密且つ精細な印刷を行うことによるコピー牽制力の強化などがある(例えば、特許文献2参照)。
【0009】
偏光潜像の代表的な例としては、液晶を利用したものが挙げられる。液晶材料は、主に液晶ディスプレイにおいて使用されている。近年の液晶ディスプレイの需要拡大に伴い、高度な偏光技術が種々開発されており、これら偏光技術は、偽造防止用デバイスにおいてもコバート技術として様々な形態で応用され始めている。例えば、偏光子を介して観察することにより可視化する潜像を、ネマチック液晶の複屈折性を利用して又は複屈折性を有するプラスチックフィルムを利用して記録した表示体がある(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−250214号公報
【特許文献2】特開平11−291609号公報
【特許文献3】特開2005−091786号公報
【特許文献4】特表2002−530687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
液晶を利用して偏光潜像を形成する偽像防止技術においては、その偏光特性を向上させること、並びに、パターンの精密性及び精細性を向上させることによって、偽造防止効果を高めている。しかしながら、液晶を利用した場合、コスト高になってしまう。
【0012】
本発明の目的は、液晶を利用することなしに偏光潜像を形成することが可能な表示技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1側面は、光透過性の基材と、前記基材と向き合った第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有し、前記第2面は、一次元又は二次元的に且つ周期的に配列した複数の凸部及び/又は凹部を各々が備えた1つ以上の凹凸構造領域を含み、前記1つ以上の凹凸構造領域の各々に対応した部分は、速軸と遅軸とを有している複屈折部材として機能し、前記1つ以上の凹凸構造領域の各々は前記速軸に垂直な断面の形状と前記遅軸に垂直な断面の形状とが異なっているレリーフ構造形成層と、前記第2面上に設けられた金属反射層とを具備した表示体である。
【0014】
本発明の第2側面は、前記複屈折部材は、前記第2面に垂直な方向から可視光領域内の或る波長の光を入射させた場合、電界ベクトルの振動方向が前記速軸に対して平行な直線偏光成分と、電界ベクトルの振動方向が前記遅軸に対して平行な直線偏光成分との間に二分の一波長の位相差を与える第1側面に係る表示体である。
【0015】
本発明の第3側面は、前記複数の凸部及び/又は凹部の前記遅軸方向の周期は400nm以下である第1又は第2側面に係る表示体である。
【0016】
本発明の第4側面は、前記複数の凸部及び/又は凹部の各々は、前記速軸に垂直な断面がテーパ形状を有している第1乃至第3側面の何れか1つに係る表示体である。
【0017】
本発明の第5側面は、前記複数の凸部及び/又は凹部の各々は、40乃至300nmの範囲内の高さ又は深さを有している第1乃至第4側面の何れか1つに係る表示体である。
【0018】
本発明の第6側面は、前記第2面は前記凹凸構造領域を複数含み、複数の前記凹凸構造領域の2つ以上は、前記複数の凸部及び/又は凹部の形状、前記複数の凸部及び/又は凹部の周期、前記複数の凸部及び/又は凹部の高さ又は深さ、並びに前記速軸の向きの少なくとも1つが異なっている第1乃至第5側面の何れか1つに係る表示体である。
【0019】
本発明の第7側面は、第1乃至第6側面の何れか1つに係る表示体と、これを支持した物品とを具備したラベル付き物品である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、液晶を利用することなしに偏光潜像を形成することが可能な表示技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】凸部又は凹部が一次元的に配列し、凹凸構造領域の断面が矩形波状である透過型構造性複屈折部材の一例を概略的に示す斜視図。
【図2】凸部又は凹部が一次元的に配列し、凹凸構造領域の断面が矩形波状である反射型構造性複屈折部材の一例を概略的に示す斜視図。
【図3】図1及び図2の構造性複屈折部材が与える位相差の例を示すグラフ。
【図4】凸部又は凹部が一次元的に配列し、凹凸構造領域の断面が正弦波状である反射型構造性複屈折部材の一例を概略的に示す斜視図。
【図5】凸部又は凹部が二次元的に配列した反射型構造性複屈折部材の一例を概略的に示す斜視図。
【図6】凸部の高さ又は凹部の深さがTE波及びTM波に関する強度反射率に及ぼす影響の例を示すグラフ。
【図7】偏光子と図2の表示体とを重ねた配置した場合に、偏光子の透過軸が速軸に対してなす角度が強度反射率に及ぼす影響の一例を示すグラフ。
【図8】透過型構造性複屈折部材及び反射型構造性複屈折部材が与える位相差に、凸部の高さ又は凹部の深さが及ぼす影響の例を示すグラフ。
【図9】表示体の一例を概略的に示す平面図。
【図10】図9の表示体のX−X線に沿った断面図。
【図11】反射型構造性複屈折部材のTE波及びTM波に関する強度反射率に凸部の高さ又は凹部の深さが及ぼす影響の例を示すグラフ。
【図12】表示体の他の例を概略的に示す平面図。
【図13】ラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【図14】真偽判定方法の一例を概略的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0023】
上記の通り、第1側面に係る表示体は、光透過性の基材と、この基材と向き合った第1面及び第1面とは反対側の第2面を有しているレリーフ構造形成層と、第2面上に設けられた金属反射層とを備えている。第2面は、一次元又は二次元的に且つ周期的に配列した複数の凸部及び/又は凹部を各々が備えた1つ以上の凹凸構造領域を含んでいる。凹凸構造領域の各々に対応した部分は、速軸と遅軸とを有している複屈折部材として機能する。そして、凹凸構造領域の各々は、速軸に垂直な断面の形状と遅軸に垂直な断面の形状とが異なっている。
【0024】
まず、第1側面に係る表示体において利用する表示技術について説明する。
ここで利用する表示技術は、通常の照明条件下では肉眼で確認することができない潜像を、偏光子を用いることによって可視化する偏光潜像技術である。
【0025】
具体的には、この技術では、上述した表示体の反射面、即ちレリーフ構造形成層と反射層との界面に凹凸構造を設けて、後述する構造性複屈折を生じさせる。そして、この構造性複屈折を利用して、例えば、文字、絵、図柄等の情報を記録する。このようにして記録した潜像は、偏光子を用いて観察することにより、明るさの分布を有している可視像として知覚することができる。この可視像は、肉眼で読み取ってもよく、機械読み取りしてもよい。
【0026】
この技術では、例えば、直線偏光子を用いて表示体を観察した場合、表示体のうち潜像に対応した部分の明るさは、偏光子の透過軸が速軸又は遅軸に対してなす角度に応じて変化する。そして、この表示体における速軸又は遅軸は、構造性複屈折を生じさせる領域である凹凸構造領域を適宜設計することにより、任意の方向に設定することができる。
【0027】
それ故、例えば、或る凹凸構造領域について速軸の角度を0°とし、他の凹凸構造領域について速軸の角度を45°とした場合、直線偏光子を介して表示体を観察すると、この表示体のうち、一方の凹凸構造領域に対応した部分は明るく見え、他方の凹凸構造領域に対応した部分は暗く見え得る。そして、それらの明暗は、偏光子を回転させることにより反転する。
【0028】
また、或る凹凸構造領域について速軸の角度を0°とし、他の凹凸構造領域について速軸の角度を45°とし、更に他の1つ以上について凹凸構造領域の速軸を先の2つの速軸に対して斜めにした場合、直線偏光子を介して表示体を観察すると、この表示体は階調画像を表示する。
【0029】
凹凸構造領域について上述した機能は、レリーフ構造形成層の第2面に複数の凸部及び/又は凹部を設けることによって発現する。それ故、この技術は、レリーフ型の回折格子又はホログラムとの併用が容易である。
【0030】
ここで、「構造性複屈折」について説明する。
或る波長の光について異なる屈折率を有する2つの透明材料の界面に、先の波長以下の周期で畝状の凸部又は溝状の凹部を配置すると、この構造は、凸部又は凹部の長さ方向と幅方向とで異なる有効屈折率を有し得る。構造性複屈折とは、このようにして発現させた複屈折性に起因した複屈折である。
【0031】
例えば、図1に示すように、第1透明材料層21と第2透明材料層22とを積層し、第1透明材料層21の第2透明材料層22と接している面に複数の矩形溝が生じるように、それらの界面に、所定の周期で畝状の凸部又は溝状の凹部30を配置してなる透過型の光学素子に対し、或る波長の自然光40を照射する場合を考える。この場合、この構造が、電界ベクトルの振動方向が溝の長さ方向に平行な直線偏光(以下、TE波という)に対して示す屈折率nTE及び電界ベクトルの振動方向が溝の幅方向に平行な直線偏光(以下、TM波という)に対して示す屈折率nTMは、下記式(1)及び(2)によってそれぞれ表される(BORN AND WOLF “PRINCIPLES OF OPTICS Fourth edition” P705(PERGAMON PRESS))。
【数1】

【0032】
なお、上記式(1)及び(2)において、n1及びn2は、それぞれ、或る波長λにおける透明材料層21及び22の屈折率である。t1は隣り合った矩形溝間の距離であり、t2は矩形溝の幅であり、Hは凸部の高さ又は凹部の深さである。上記式(1)及び(2)に示す関係は、寸法t1及びt2が波長λと比較して十分に小さい場合に成立する。
【0033】
上記式(1)及び(2)から、屈折率n1及びn2は、不等式nTE>nTMに示す関係を満足していることが分かる。即ち、図1に示す構造は、溝の長さ方向41及び幅方向42をそれぞれ速軸及び遅軸として有しており、光学的に異方性の材料と同等に振る舞う。なお、図1には、凹部が単純な矩形溝である例を示したが、凹部が他の形状を有している場合であっても構造性複屈折を実現することができる。例えば、或る波長の光について異なる屈折率を有する2つの透明材料の界面に、各々が楕円柱形状を有している複数の凸部又は凹部を、楕円の長軸が互いに平行になるように先の波長以下の周期で配置した場合も、構造性複屈折を実現することができる。
【0034】
ところで、前述の矩形溝を含んだ構造において大きな屈折率差nTE−nTMを実現するうえでは、現在、2つの透明材料の一方として、屈折率n2が1.5程度の材料、例えば透明樹脂、ガラス又は石英を使用し、他方の透明材料として、屈折率n1が1.0である空気を用いることが多い。しかしながら、屈折率差がこれほど大きくても、先の構造を可視光用の1/2波長板として使用するためには、例えば、寸法t1及びt2を150nmとした場合、高さ又は深さを2700nm程度にしなければならない。即ち、アスペクト比が大きな凹部又は凸部を形成しなければならない。アスペクト比が大きな溝部又は凸部は、形成することが困難である。
【0035】
第1側面に係る表示体では、構造性複屈折を以下のように実現している。即ち、図2に示す構造10のように、透明材料層22の代わりに金属反射層20を使用する。
【0036】
透過型を反射型へ変更すると、TE波とTM波との位相差δ[rad]を大きくすることができる。即ち、アスペクト比が比較的小さな凹部又は凸部で、例えばアスペクト比が0.5乃至1.5の範囲内にある凹部又は凸部で、十分に大きな屈折率差nTE−nTMを実現することができる。
【0037】
図3は、図1の透過型構造性複屈折部材が与える位相差及び図2の反射型構造性複屈折部材が与える位相差の例を示すグラフである。図中、横軸は凸部の高さH(又は凹部の深さ)を表し、縦軸はシミュレーションによって得られた位相差δを表している。
【0038】
なお、このシミュレーションには、FDTD(Finite Difference Time Domain)法を用いた。ここでは、波長λは532nmとし、矩形溝の周期Pは300nmとし、その間隔t1及び幅t2は何れも150nmとした。透過型構造性複屈折部材については、透明材料層21は屈折率n2が1.5の透明樹脂からなり、透明材料層22は屈折率n1が1.0の空気からなることとした。また、反射型構造性複屈折部材については、透明材料層21は屈折率n2が1.5の透明樹脂からなり、金属反射層20は屈折率n3が0.887−6.26iのアルミニウムからなることとした。
【0039】
図3に示すように、反射型構造性複屈折部材では、透過型構造性複屈折部材と比較して、高さHに対する位相差δの増加が遥かに大きい。それ故、反射型構造性複屈折部材によると、凸部又は凹部のアスペクト比が比較的小さい場合であっても、例えば、1/2波長板に必要な位相遅延δ=π、又は、1/4波長板に必要な位相遅延δ=π/2を実現することができる。
【0040】
反射型構造性服屈折部材においては、透明材料として、波長λの光に対して透明であれば、どのようなものを使用してもよい。透明材料としては、例えば、空気、透明樹脂、又は石英を使用可能である。また、金属材料としては、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)及びニッケル(Ni)等の様々な材料を使用することができる。金属材料は、波長λの光に対して反射率の高い材料が望ましい。
【0041】
前記反射型構造性複屈折部材において、凸部又は凹部は様々な形状を有し得る。例えば、凸部又は凹部は、図4に示すように、幅方向に配列し、長さ方向に対して垂直な断面がテーパ形状を有している畝状の凸部又は溝状の凹部であってもよい。ここで、「テーパ形状」とは、凸部又は凹部の第2面に平行な断面積が第2面からの距離が長くなるのに従って減少する形状を意味している。
【0042】
或いは、図5に示すように、凸部又は凹部32は、高さ又は深さ方向から見たときに、一方向に延びた形状を有し、長さ方向が略平行となるように二次元的に配列していてもよい。
【0043】
これらの場合であっても、図2の構造について上述したのとほぼ同様の効果を得ることができる。
【0044】
なお、当然、透明材料の屈折率、金属材料の種類、凸部又は凹部の形状等が異なれば、或る位相差δを実現するのに必要な凸部の高さH又は凹部の深さも異なる。但し、何れの場合であっても、反射型構造性複屈折部材によると、所望の位相差δを、透過型構造性複屈折部材と比較して遥かに小さな高さH又は深さで達成することができる。
【0045】
以上から明らかなように、第1側面に係る表示体には、凸部又は凹部のアスペクト比を過剰に大きくすることなしに、レリーフ構造形成層と金属反射層との積層体のうち凹凸構造領域に対応した部分に、速軸41と遅軸42とを持つ複屈折部材としての機能を付与することができる。それ故、第1側面に係る表示体には、偏光子を介して観察することにより可視化する偏光潜像を比較的容易に保持させることができる。
【0046】
また、この表示体では、TE波に対する反射率とTE波に対する反射率とを異ならしめることができる。
【0047】
図6は、凸部の高さH(又は凹部の深さ)がTE波及びTM波に関する強度反射率に及ぼす影響の例を示すグラフである。図中、横軸は凸部の高さH(又は凹部の深さ)を表し、縦軸はシミュレーションによって得られた強度反射率を表している。なお、このシミュレーションは、図3について説明したシミュレーションと同様の方法及び条件で行った。
【0048】
図6に示すように、TE波に対する反射率は、高さHの増加に応じて徐々に減少する。他方、TM波に対する反射率は、高さHの増加に応じて、振動しながら減少する。従って、TE波に対する反射率とTM波に対する反射率との差が十分に大きくなるように凸部の高さH(又は凹部の深さ)を設定することにより、反射型構造性複屈折部材に直線偏光子としての機能を付与することができる。
【0049】
それ故、例えば、或る凹凸構造領域について速軸の角度を0°とし、他の凹凸構造領域について速軸の角度を90°とした場合、直線偏光子を介して表示体を観察すると、この表示体のうち、一方の凹凸構造領域に対応した部分は明るく見え、他方の凹凸構造領域に対応した部分は暗く見え得る。そして、それらの明暗は、偏光子を回転させることにより反転する。
【0050】
また、或る凹凸構造領域について速軸の角度を0°とし、他の凹凸構造領域について速軸の角度を90°とし、更に他の1つ以上について凹凸構造領域の速軸を先の2つの速軸に対して斜めにした場合、直線偏光子を介して表示体を観察すると、この表示体は階調画像を表示する。
【0051】
第2側面に係る表示体は、上記の通り、第1側面に係る表示体において、以下の構成を採用したものである。即ち、第2側面に係る表示体において、複屈折部材は、第2面に垂直な方向から可視光領域内の或る波長の光を入射させた場合に、電界ベクトルの振動方向が速軸に対して平行な直線偏光成分と、電界ベクトルの振動方向が遅軸に対して平行な直線偏光成分との間に二分の一波長の位相差を与える。
【0052】
この表示体と直線偏光子とを、例えば、直線偏光子の透過軸が速軸に対して45°の角度をなすように重ね、直線偏光子を介して表示体を観察した場合、この表示体のうち凹凸構造領域に対応した部分は暗く見える。例えば、この表示体のうち凹凸構造領域に対応した部分は黒く見える。
【0053】
このように、表示体のうち凹凸構造領域に対応した部分は、二分の一波長板として機能させることができる。また、上記の通り、表示体のうち凹凸構造領域に対応した部分は、凸部の高さH(又は凹部の深さ)を設定することにより、直線偏光子として機能させることができる。それ故、波長板としての機能と偏光子としての機能との双方を利用した表示が可能である。
【0054】
例えば、図2及び図3を参照しながら説明した構造を採用した場合、図3に示すように、凸部の高さH(又は凹部の深さ)を40nmとすると、位相差δをπとすること、即ち、凹凸構造領域に対応した部分に二分の一波長板の機能を付与することができる。そして、この場合、図6に示すように、TE波に対する反射率を86%とし、TM波に対する反射率を30%とすること、即ち、凹凸構造領域に対応した部分に直線偏光子としての機能を付与することができる。それ故、この場合、表示体は、それらに対応した光学特性を示し得る。
【0055】
図7は、偏光子と図2の表示体とを重ねた配置した場合に、偏光子の透過軸が速軸に対してなす角度が強度反射率に及ぼす影響の一例を示すグラフである。図中、横軸は、偏光子の透過軸が速軸に対してなす角度を表し、縦軸はシミュレーションによって得られた強度反射率を表している。なお、このシミュレーションは、図3について説明したシミュレーションと同様の方法及び条件で行った。
【0056】
凹凸構造領域に対応した部分に、二分の一波長板としての機能と直線偏光子としての機能とを付与すると、例えば、図7に示すように、偏光子の透過軸を速軸に対して平行とした場合に強度反射率は最大となり、偏光子の透過軸を速軸に対して垂直とした場合に強度反射率はより小さくなり、偏光子の透過軸が速軸に対してなす角度を45乃至60°の範囲内にした場合に強度反射率は最小となる。即ち、凹凸構造領域に対応した部分に二分の一波長板としての機能と直線偏光子としての機能とを付与すると、複雑な光学特性を達成することができる。
【0057】
第3側面に係る表示体は、上記の通り、第1又は第2側面に係る表示体において、以下の構成を採用したものである。即ち、第3側面に係る表示体において、凸部及び/又は凹部の遅軸に平行な方向の周期は400nm以下である。
【0058】
こうすると、表示体に約0°の入射角で可視光を入射させた場合、表示体は回折光を射出しない。即ち、この場合、表示体のうち凹凸構造領域に対応した部分が回折光を射出することに起因して、偏光子なしで凹凸構造領域の存在が知覚されるのを防止できる。
【0059】
なお、凸部及び/又は凹部の遅軸に平行な方向の周期は、例えば100nm以上である。小さな周期で配列した凸部及び/又は凹部は、高い精度で形成することが難しい。
【0060】
第4側面に係る表示体は、上記の通り、第1乃至第3側面の何れか1つに係る表示体において、以下の構成を採用したものである。即ち、第4側面に係る表示体において、凸部及び/又は凹部の各々は、図4に示すように、速軸に垂直な断面がテーパ形状を有している。
【0061】
この構造を採用すると、凸部の高さH又は凹部の深さと位相差δとの関係を線形に近づけることができる。それ故、凸部の高さH又は凹部の深さに誤差を生じた場合に、位相差δが設計値から大きくずれるのを防止できる。
【0062】
図8は、図4に示す反射型構造性複屈折部材が与える位相差に、凸部の高さ又は凹部の深さが及ぼす影響の例を示すグラフである。図中、横軸は凸部の高さH又は凹部の深さを表し、縦軸はシミュレーションによって得られた位相差δを表している。なお、このシミュレーションは、凸部又は凹部の形状を、それらの長さ方向に垂直な断面が正弦波状の配列を形成するように変更したこと以外は、図3について説明したシミュレーションと同様の方法及び条件で行った。
【0063】
図3と図8との比較から明らかなように、図4に示す構造を採用した場合、図2に示す構造を採用した場合と比較して、凸部の高さH又は凹部の深さと位相差δとの関係を線形に近づけることができる。
【0064】
また、凸部又は凹部の各々の速軸に垂直な断面がテーパ形状を有している場合、実質のアスペクト比を下げることができ、所望の位相差δをより小さなアスペクト比で、例えば0.3乃至1の範囲内にあるアスペクト比で実現することができる。従って、この場合、凹凸構造をスタンパから樹脂へと転写することによって形成するときに、高い離型性を実現できる。即ち、優れた量産性を達成できる。
【0065】
第5側面に係る表示体は、上記の通り、第1乃至第4側面の何れか1つに係る表示体において、以下の構成を採用したものである。即ち、第5側面に係る表示体において、凸部及び/又は凹部の各々は、40乃至300nmの範囲内の高さ又は深さを有している。この構造は、凸部又は凹部のアスペクト比を小さくするうえで有利である。
【0066】
第6側面に係る表示体は、上記の通り、第1乃至第5側面の何れか1つに係る表示体において、以下の構成を採用したものである。即ち、第6側面に係る表示体において、第2面は、凹凸構造領域を複数含んでいる。これら凹凸構造領域の2つ以上は、凸部及び/又は凹部の形状、凸部及び/又は凹部の周期、凸部及び/又は凹部の高さ又は深さ、並びに速軸の向きの少なくとも1つが異なっている。
【0067】
凸部及び/又は凹部の形状、凸部及び/又は凹部の周期、並びに凸部及び/又は凹部の高さ又は深さは、TE波とTM波との位相差δ並びにTE波に対する反射率及びTM波に対する反射率に影響を及ぼす。それ故、これらの1つ以上が凹凸構造領域間で異なっていれば、それら凹凸構造領域に対応した部分は、偏光子を介して観察した場合に異なる明るさに見える。そして、上記の通り、偏光子を介して表示体を観察する場合、凹凸構造領域に対応した部分の明るさは、偏光子の透過軸が速軸に対してなす角度に応じて変化する。
【0068】
また、偏光子を介して表示体を観察する場合、凹凸構造領域に対応した部分の明るさは、偏光子の透過軸が速軸に対してなす角度に応じて変化するので、速軸の向きが凹凸構造領域間で異なっていれば、それら凹凸構造領域に対応した部分は、偏光子を介して観察した場合に異なる明るさに見える。
従って、上記の構成を採用すると、複雑な視覚効果を達成することができる。
【0069】
第7側面に係るラベル付き物品は、上記の通り、第1乃至第6側面の何れか1つに係る表示体と、これを支持した物品とを備えている。このラベル付き物品は、上記の表示体を備えているので、高い偽造防止効果を発揮し得る。
【実施例】
【0070】
以下に、本発明の実施例を記載する。
【0071】
(例1)
図9は、表示体の一例を概略的に示す平面図である。図10は、図9の表示体のX−X線に沿った断面図である。
【0072】
図9及び図10に示す表示体100は、透明基材110と、レリーフ形成層111と、金属反射層113と、保護層23とを含んでいる。レリーフ構造形成層111と金属反射層113と保護層23とは、透明基材110上に順次形成されている。ここでは、金属反射層113は、アルミニウムを蒸着することにより形成した。なお、表示体100を物品に貼り付けることができるように、保護層23の代わりに接着層を形成してもよい。
【0073】
レリーフ構造形成層111と金属反射層113との界面には、領域TP1乃至TP3を設けた。領域TP1及びTP2は凹凸構造領域であり、領域TP3は平坦な領域である。
【0074】
領域TP1及びTP2には、以下の点を除き、図4を参照しながら説明したのと同様の構造を採用した。即ち、ここでは、領域TP1及びTP2の各々において、凸部又は凹部の周期Pを240nmとした。領域TP1においては、速軸をy方向に対して平行とし、凸部の高さH又は凹部の深さを110nmとして、波長λが532nmのTE波とTE波とに与える位相差δがπとなるようにした。他方、領域TP2においては、速軸をx方向に対して平行とし、凸部の高さH又は凹部の深さを220nmとして、波長λが532nmのTE波とTE波とに与える位相差δが2πとなるようにした。なお、x方向及びy方向は、レリーフ構造形成層111と金属反射層113との界面に対して平行であり且つ互いに垂直な方向である。
【0075】
図11は、反射型構造性複屈折部材のTE波及びTM波に関する強度反射率に凸部の高さ又は凹部の深さが及ぼす影響の例を示すグラフである。図中、横軸は凸部の高さH(又は凹部の深さ)を表し、縦軸はシミュレーションによって得られた強度反射率を表している。なお、このシミュレーションは、図9及び図10を参照しながら説明した条件を適用したこと以外は、図3について説明したシミュレーションと同様の方法で行った。
【0076】
図11によると、凸部の高さH又は凹部の深さが110nmである場合及び220nmである場合の何れにおいても、TE波に対する反射率は約90%であり、TM波に対する反射率は約62%である。
【0077】
それ故、図9及び図10を参照しながら説明した表示体100を肉眼で観察した場合、領域TP1及びTP2はほぼ同じ明るさに見え、それらを互いから区別することはできない。即ち、この場合、表示体100は矩形状の像を表示する。
【0078】
また、この表示体100の上に、直線偏光子を、その透過軸がx又はy方向に対して平行になるように重ねた場合も、領域TP1及びTP2はほぼ同じ明るさに見え、それらを互いから区別することはできない。即ち、この場合も、表示体100は矩形状の像を表示する。
【0079】
但し、この表示体100の上に、直線偏光子を、その透過軸がx又はy方向に対して45°の角度をなすように重ねた場合、領域TP1及びTP2に対応した部分が与える位相差δの相違に起因して、領域TP1に対応した部分は、領域TP2に対応した部分と比較して暗く見える。即ち、この場合、領域TP1に対応した部分は文字「T」を表示し、領域TP2に対応した部分は文字「T」の背景を表示する。
【0080】
(例2)
図12は、表示体の他の例を概略的に示す平面図である。
【0081】
図12に示す表示体100は、以下の構成を採用したこと以外は、図9及び図10を参照しながら説明した表示体100と同様である。
【0082】
即ち、図12に示す表示体では、レリーフ構造形成層111と金属反射層113との界面には、領域TP1乃至TP3を設ける代わりに、領域AR1乃至AR7を設けている。領域AR1乃至AR6は凹凸構造領域であり、領域AR7は平坦な領域である。
【0083】
領域AR1、AR2、AR3、AR4、AR5及びAR6は、それらの速軸が、それぞれ、x方向に対して0°、30°、60°、90°、120°及び150°の角度をなしていること以外は同様の構造を有している。領域AR1乃至AR6の各々が波長532nmのTE波とTE波とに与える位相差δはπである。
【0084】
この表示体100の上に、直線偏光子を、その透過軸がx方向に対して15°の角度をなすように重ねた場合、領域AR3及びAR6に対応した部分は黒く見え、領域AR1、AR2、AR4及びAR5に対応した部分はより明るく見える。また、この表示体100の上に、直線偏光子を、その透過軸がx方向に対して45°の角度をなすように重ねた場合、領域AR1及びAR4に対応した部分は黒く見え、領域AR2、AR3、AR5及びAR6に対応した部分はより明るく見える。そして、この表示体100の上に、直線偏光子を、その透過軸がx方向に対して75°の角度をなすように重ねた場合、領域AR2及びAR5に対応した部分は黒く見え、領域AR1、AR3、AR4及びAR6に対応した部分はより明るく見える。
【0085】
以上から明らかなように、この表示体100の上に直線偏光子を重ねた状態で直線偏光子を回転させると、黒く見える場所もそれに応じて変化する。即ち、アニメーションの如き表示が可能である。
【0086】
なお、例1及び例2では、表示体100の上に偏光子を重ねているが、偏光子は表示体100から離間させてもよい。
【0087】
(例3)
図13は、ラベル付き物品の一例を概略的に示す平面図である。
図13に示すラベル付き物品は印刷物である。この印刷物は、ラベルとしての表示体100と、これが貼り付けられた物品101とを含んでいる。表示体100は、例1又は例2を参照しながら説明した構造を有している。物品101は、ここでは、IDカード等の偽造防止技術が必要な情報印刷物である。
【0088】
図14は、真偽判定方法の一例を概略的に示す図である。図14において、参照符号130及びVW1は、それぞれ、直線偏光子及び観察者を表している。
【0089】
図13を参照しながら説明したラベル付き物品は、例1又は例2を参照しながら説明した表示体100を含んでいる。この表示体100は、観察者VW1が偏光子130を介して観察した場合に、例1又は例2を参照しながら説明した視覚効果を提供する。従って、この視覚効果を確認することにより、このラベル付き物品が真正品であると判断することができる。
【0090】
このように、例1又は例2の表示体100を物品101に支持させると、物品101に偽造防止効果を付与すること、又は、物品101の偽造防止効果を高めることができる。
【0091】
なお、図13には、ラベル付き物品としてIDカードを例示しているが、ラベル付き物品は、これに限られない。例えば、ラベル付き物品は、磁気カード、無線カード及びIC(integrated circuit)カード、パスポートなどの他のカードであってもよい。或いは、ラベル付き物品は、商品券及び株券などの有価証券であってもよい。或いは、ラベル付き物品は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグであってもよい。或いは、ラベル付き物品は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。
【0092】
また、図13に示すラベル付き物品では、表示体100を物品101に貼り付けているが、表示体100は、他の方法で物品101に支持させることができる。例えば、物品101として紙を使用した場合、表示体100を紙に漉き込み、表示体100に対応した位置で紙を開口させてもよい。或いは、物品101として光透過性の材料を使用する場合、その内部に表示体100を埋め込んでもよく、物品の裏面、即ち表示面とは反対側の面に表示体100を固定してもよい。
【0093】
また、ラベル付き物品は、印刷物でなくてもよい。即ち、印刷層を含んでいない物品に表示体100を支持させてもよい。例えば、表示体100は、美術品などの高級品に支持させてもよい。
【0094】
なお、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にすることなどを目的として与えられており、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0095】
10…構造性複屈折部材、20…金属反射層、21…透明材料層、22…透明材料層、23…保護層、30…凸部又は凹部、31…凸部又は凹部、32…凸部又は凹部、40…自然光、41…速軸、42…遅軸、100…表示体、101…物品、110…基材、111…レリーフ構造形成層、113…金属反射層、130…偏光子、AR1…凹凸構造領域、AR2…凹凸構造領域、AR3…凹凸構造領域、AR4…凹凸構造領域、AR5…凹凸構造領域、AR6…凹凸構造領域、AR7…平坦な領域、TP1…凹凸構造領域、TP2…凹凸構造領域、TP3…平坦な領域、VW1…観察者。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性の基材と、
前記基材と向き合った第1面及び前記第1面とは反対側の第2面を有し、前記第2面は、一次元又は二次元的に且つ周期的に配列した複数の凸部及び/又は凹部を各々が備えた1つ以上の凹凸構造領域を含み、前記1つ以上の凹凸構造領域の各々に対応した部分は、速軸と遅軸とを有している複屈折部材として機能し、前記1つ以上の凹凸構造領域の各々は前記速軸に垂直な断面の形状と前記遅軸に垂直な断面の形状とが異なっているレリーフ構造形成層と、
前記第2面上に設けられた金属反射層と
を具備した表示体。
【請求項2】
前記1つ以上の凹凸構造領域の各々は、前記第2面に垂直な方向から可視光領域内の或る波長の光を入射させた場合、電界ベクトルの振動方向が前記速軸に対して平行な直線偏光成分と、電界ベクトルの振動方向が前記遅軸に対して平行な直線偏光成分との間に二分の一波長の位相差を与える請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記複数の凸部及び/又は凹部の前記遅軸に平行な方向の周期は400nm以下である請求項1又は2に記載の表示体。
【請求項4】
前記複数の凸部及び/又は凹部の各々は、前記速軸に垂直な断面がテーパ形状を有している請求項1乃至3の何れか1項に記載の表示体。
【請求項5】
前記複数の凸部及び/又は凹部の各々は、40乃至300nmの範囲内の高さ又は深さを有している請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
【請求項6】
前記第2面は前記凹凸構造領域を複数含み、複数の前記凹凸構造領域の2つ以上は、前記複数の凸部及び/又は凹部の形状、前記複数の凸部及び/又は凹部の周期、前記複数の凸部及び/又は凹部の高さ又は深さ、並びに前記速軸の向きの少なくとも1つが異なっている請求項1乃至5の何れか1項に記載の表示体。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載の表示体と、これを支持した物品とを具備したラベル付き物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−203141(P2012−203141A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66657(P2011−66657)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】