説明

表示体及び表示体付き物品及び原版の製造方法及びスタンパの製造方法及び表示体の製造方法

【課題】高い偽造防止効果を発揮する表示体を提供する。
【解決手段】光透過性の基材と、前記基材の一方の面側に設けられた凹凸構造形成層と、前記凹凸構造形成層の少なくとも一部を被覆する反射層とを備えた積層構造から成る表示体であって、前記凹凸構造形成層の少なくとも一部は、整然配置された複数の第1の領域に分割されており、前記複数の第1の領域は、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部又は底面が前記基材面と略平行である複数の凹部と、前記基材面と略並行な平坦部が配置されて構成されたセルを有し、前記セルは、前記複数の第1の領域の少なくとも一部に各々設けられており、前記凸部の高さ又は凹部の深さは、前記セルの面積に対応して決定されていることを特徴とする表示体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果を提供する表示技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、商品券及び小切手などの有価証券類、クレジットカード、キャッシュカード及びIDカードなどのカード類、並びにパスポート及び免許証などの証明書類には、それらの偽造を防止するために、通常の印刷物とは異なる視覚効果を有する表示体が貼り付けられている。また、近年、これら以外の物品についても、偽造品の流通が社会問題化している。そのため、そのような物品に対しても、同様の偽造防止技術を適用する機会が増えてきている。
【0003】
通常の印刷物とは異なる視覚効果を有している表示体としては、複数の溝を並べてなる回折格子を含んだ表示体が知られている。この表示体には、例えば、観察条件に応じて変化する像を表示させることや、立体像を表示させることができる。また、回折格子が表現する虹色に輝く分光色は、通常の印刷技術では表現することができない。そのため、回折格子を含んだ表示体は、偽造防止対策が必要な物品に広く用いられている。
回折格子により入射光(白色光)が虹色に輝く分光色に変化する原理については、例えば、非特許文献1に記載されている。
【0004】
回折格子を利用した表示体では、複数の溝を形成してなるレリーフ型の回折格子を使用することが一般的である。レリーフ型回折格子は、通常、フォトリソグラフィを利用して製造した原版を母型として、そこから複製することにより得られる。例えば、特許文献1及び特許文献2には、回折格子が虹色に輝く分光色を表示することを利用して、回折格子の格子角度や格子間隔(格子ピッチ)を適宜変化させて絵柄を表示させることが記載されている。格子角度や格子間隔が異なる複数の回折格子構造によって形成される表示体は、観察者の位置や光源の位置が変化することで、観察者の目に到達する回折光の波長が徐々に変化し、それにより、虹色に変化する画像を表現することができる。
また、これらの文献には、レリーフ型回折格子の原版の作製方法として、一方の主面に感光性レジストを塗布した平板状の基板をXYステージ上に載置し、コンピュータ制御のもとでステージを移動させながら感光性レジストに電子ビームを照射することにより、感光性レジストをパターン露光する方法が記載されている。また、非特許文献2には、二光束干渉を利用して回折格子を形成する方法が記載されている。レリーフ型回折格子の製造では、通常、このようにして得られた原版を用い、そこから電鋳等の方法により金属製のスタンパを作製する。
【0005】
次いで、この金属製スタンパを母型として用いて、レリーフ型の回折格子を複製する。即ち、まず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)からなるフィルムやシート状の薄い透明基材上に、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布する。次に、塗膜に金属製スタンパを密着させ、この状態で樹脂層に熱又は光を与える。樹脂が硬化した後、硬化した樹脂から金属製スタンパを剥離することにより、レリーフ型回折格子の複製物を得る。
【0006】
一般に、このレリーフ型回折格子は透明である。従って、通常、レリーフ構造を設けた樹脂層上には、蒸着法を用いてアルミニウムなどの金属又は誘電体を単層又は多層に堆積させることにより反射層を形成する。
その後、このようにして得られた表示体を、例えば紙又はプラスチックフィルムからなる基材上に接着層又は粘着層を介して貼り付ける。以上のようにして、偽造防止対策を施した表示体を得る。
【0007】
レリーフ型回折格子を含んだ表示体の製造に使用する原版は、それ自体の製造が困難である。また、金属製スタンパから樹脂層へのレリーフ構造の転写は、高い精度で行わなければならない。即ち、レリーフ型回折格子を含んだ表示体の製造には高い技術が要求される。
【0008】
しかしながら、偽造防止対策が必要な物品の多くでレリーフ型回折格子を含んだ表示体
が用いられるようになった結果、この技術が広く認知され、これに伴い、偽造品の発生も
増加する傾向にある。そのため、回折光によって虹色の光を呈することのみを特徴とした
表示体を用いて十分な偽造防止効果を達成することが難しくなってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平2−72320号公報
【特許文献2】米国特許第5058992号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】辻内順平編著、「ホログラフィックディスプレイ」、産業図書株式会社
【非特許文献2】辻内順平著、「ホログラフィー」、丸善株式会社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述のような従来の問題を解決したものであり、その目的は、高い偽造防止効果を発揮する表示体及び表示体付き物品、さらに前記表示体の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するために本発明は、光透過性の基材と、前記基材の一方の面側に設けられた凹凸構造形成層と、前記凹凸構造形成層の少なくとも一部を被覆する反射層と
を備えた積層構造から成る表示体であって、前記凹凸構造形成層の少なくとも一部は、整然配置された複数の第1の領域に分割されており、前記複数の第1の領域は、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部又は底面が前記基材面と略平行である複数の凹部と、前記基材面と略並行な平坦部が配置されて構成されたセルを有し、前記セルは、前記複数の第1の領域の少なくとも一部に各々設けられており、各セル内に形成された複数の凸部または凹部は、長辺及び短辺の長さがそれぞれ2μm以上且つ50μm以下であり、隣接する凸部または凹部の中心間距離は2μm以上且つ50μm以下であり、前記セル内における凸部または凹部の占有面積が20%以上且つ80%以下であり、前記凸部の高さ又は凹部の深さは0.1μm以上且つ0.5μm以下であり、前記凸部の高さ又は凹部の深さは、前記セルの面積に対応して決定されていることを特徴とする表示体である。
また、第2の発明は、前記凸部の高さ又は凹部の深さは、前記セルの面積が広いと高く、前記セルの面積が狭いと低く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示体である。
また、第3の発明は、前記複数の第1の領域が、正方形又は矩形又は平行四辺形のいずれかから選ばれ、行列状に配置されることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の表示体である。
また、第4の発明は、前記複数の第1の領域が、や三角形又は六角形のいずれかから選ばれ、最密充填されて配置されることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の表示体である。
また、第5の発明は、前記第1の領域の一辺の長さが300μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表示体である。
また、第6の発明は、前記複数の第1の領域に形成された前記セルが互いに相似形であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示体である。
また、第7の発明は、前記セルの面積が、任意の方向に徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表示体である。
また、第8の発明は、前記第1の領域の近傍に、第2の領域を有し、前記第2の領域は、前記第1の領域とは光学特性が異なる構造を備えており、回折格子、凹凸構造から成る反射防止構造体、光散乱構造体、平坦部のうち少なくとも一つから選ばれることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の表示体である。
また、第9の発明は、請求項1乃至8のいずれかに記載の表示体とこれを支持した物品とを具備した表示体付き物品である。
また、第10の発明は、基板と、前記基板の一方の面に略均一に塗布された感光性レジストと、を有し、前記感光性レジストの少なくとも一部は、整然配置された複数の第1の領域に分割されており、前記複数の第1の領域は、上面が前記基板面と略平行である複数の凸部又は底面が前記基基板面と略平行である複数の凹部と、前記基板面と略並行な平坦部が配置されて構成されたセルを有し、前記セルは、前記複数の第1の領域の少なくとも一部に各々設けられている原版の製造方法であって、前記感光性レジストに荷電粒子ビームを照射し、照射後の前記感光性レジストを現像して凹凸形状を形成し、前記複数の第1の領域の各セル内に形成された前記複数の凸部または凹部を、略同一のエネルギー量でビーム照射し加工する工程、を備えることを特徴とする原版の製造方法である。
また、第11の発明は、前記凸部の高さ又は凹部の深さは、前記セルの面積が広いと高く、前記セルの面積が狭いと低く形成されていることを特徴とする請求項10に記載の原版の製造方法である。
また、第12の発明は、前記荷電粒子ビームを照射する装置が、電子線描画装置もしくはレーザー直接描画装置であることを特徴とする請求項10乃至11のいずれかに記載の原版の製造方法である。
また、第13の発明は、請求項10乃至12のいずれかに記載の原版の製造方法を経た原版を用いて、電鋳法によりスタンパを作成するスタンパの製造方法である。
また、第14の発明は、光透過性の基材と、前記基材の一方の面側に設けられた凹凸構造形成層と、前記凹凸構造形成層の少なくとも一部を被覆する反射層とを備えた積層構造から成る表示体であって、前記凹凸構造形成層の少なくとも一部は、整然配置された複数の第1の領域に分割されており、前記複数の第1の領域は、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部又は底面が前記基材面と略平行である複数の凹部と、前記基材面と略並行な平坦部が配置されて構成されたセルを有し、前記セルは、前記複数の第1の領域の少なくとも一部に各々設けられており、各セル内に形成された複数の凸部または凹部は、長辺及び短辺の長さがそれぞれ2μm以上且つ50μm以下であり、隣接する凸部または凹部の中心間距離は2μm以上且つ50μm以下であり、前記セル内における凸部または凹部の占有面積が20%以上且つ80%以下であり、前記凸部の高さ又は凹部の深さは0.1μm以上且つ0.5μm以下であり、前記凸部の高さ又は凹部の深さは、前記セルの面積に対応して決定されていることを特徴とする表示体の製造方法であって、前記スタンパを用いて、前記凹凸構造形成層に凹凸形状を形成する工程を少なくとも含むことを特徴とする表示体の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の構成とすることによって、第1の発明によると、照明光の正反射方向に近い方向に複数の波長の光から構成される色を表示する表示体が得られる。特に面積が各々異なるセルごとに、セルの内部に設けられた凸部の高さ(または凹部の深さ)が異なることで、異なる色度の色を表示することができる。この表示体はレリーフ型の回折格子パターンのように照明の位置や観察者の位置の変化に応じて虹色に色変化することがなく、従来の回折格子を利用した偽造防止媒体とは異なる視覚効果を実現できる。その結果、高い偽造防止効果を発揮する表示体を得ることができる。
また、第2の発明によると、面積が各々異なるセルごとに、セルの内部に設けられた凸部の高さ(または凹部の深さ)が異なることで、異なる色度の色を表示することができる。そして、セルの面積を制御することによって、凸部の高さ又は凹部の深さを制御することができる。
また、第3の発明によると、第1の領域が整然配置されていることによって、複数の小領域を画素として、絵柄や文字、記号等の画像情報を表現することが可能となる。
また、第4の発明によると、第1の領域が整然配置されていることによって、複数の小領域を画素として、絵柄や文字、記号等の画像情報を表現することが可能となる。
また、第5の発明によると、前記第1の領域の一辺の長さが300μm以下であることで、人間がその表示体を肉眼で観察した際に、個々の第1の領域内に設けられたセルが個別に認識されることがなく、解像度が高く高精細な画像を表示することが可能となる。
また、第6の発明によると、前記複数の第1の領域の各々に形成された前記セルが互いに相似形であることで、セルの面積とその内部に形成されている凸部の高さまたは凹部の深さとの関係を一意に決定することができ、製造が容易となる利点がある。
また、第7の発明によると、前記セルの面積が任意の方向に対して徐々に小さくなっていることで、表示される色が徐々に変化していく様子を表現することができる。表示される色が徐々に変化していく表現方法は、人目をひく効果が高い、意匠性が向上し高級感のある表現ができる、等デザイン面での利点がある。また、構造の詳細を把握していない第三者が表示される色が徐々に変化していく表現方法を正確に偽造するのは困難であり、高い偽造防止効果を発揮できる。
また、第8の発明によると、前記第2の領域に、回折格子、微細な凹凸構造から成る反射防止構造体、光散乱構造体のいずれかが形成されているか、何も形成されていないことで、異なる光学特性を発揮する複数の構造から成る表示体を実現することができ、表示体の意匠性が向上するとともに、偽造防止効果の向上が期待できる。従来の偽造防止を目的とした表示体に形成される回折格子による回折光は、第1の領域に形成された構造体の色が観察される観察範囲とは異なる方向に射出されるため、第1の領域による色表示は、第2の領域に形成された回折格子からの回折光が見えない条件下において観察される。また、微細な凹凸構造から成る反射防止構造体は通常目視観察した場合、黒もしくは暗灰色等の無彩色として知覚される。そのため、第1の領域によって表示される色相を有する色とは異なる色である。光散乱構造体による散乱光はいわゆる磨りガラスのような白色もしくは白濁色のような無彩色を表示する。そのため、第1の領域によって表示される色相を有する色とは異なる色である。また、第2の領域に構造が形成されていない場合、第2の領域は反射層の素材、及び、基材の素材、及び、凹凸構造形成層の素材によって決定される色であり、通常、基材及び凹凸構造形成層は透明もしくは半透明であるので、反射層による色が知覚される。反射層として金属薄膜を利用した場合、金色や銀色などの金属光沢が知覚される。それは、第1の領域による表示色とは異なる色みとして観察者に知覚される。
また、第9の発明によると、本発明の表示体を、印刷物やカード、その他の物品に貼りあわせる、または、組み合わせることによって、従来の物品に高い偽造防止効果を付与することが可能となる。
また、第10の発明によると、面積が異なる複数のセル内に形成される高さ(深さ)がそれぞれ異なる複数の凸部(凹部)を、略同一の照射エネルギー設定で加工することができるため、装置に対する加工の指示が容易で、且つ、加工時間の短縮が見込める。
また、第11の発明によると、面積が異なる複数のセル内に形成される高さ(深さ)がそれぞれ異なる複数の凸部(凹部)を、略同一の照射エネルギー設定で加工することができるため、装置に対する加工の指示が容易で、且つ、加工時間の短縮が見込める。
また、第12の発明によると、本発明の表示体の原版を作製する作製方法において、電子線描画装置もしくはレーザー直接描画装置を用いることにより、指定した位置に精度良く凹凸形状を加工することができる。また、これらの装置を用いると構造の高さ(深さ)の再現性も良く、同一の仕様で複数の原版を作製した場合でも、構造の高さ(深さ)の変動によって表示される色の色度が変わってしまうなどの問題を回避することができる。また、構造を精度良く作製できることから余計なノイズ光の発生を抑えることができる。
また、第13の発明によると、指定した位置に精度良く凹凸形状を加工することができるだけでなく、構造の高さ(深さ)の再現性も良く、同一の仕様で複数のスタンパを作製した場合でも、構造の高さ(深さ)の変動によって表示される色の色度が変わってしまうなどの問題を回避することができるスタンパを製造することが可能となる。
また、第14の発明によると、照明光の正反射方向に近い方向に複数の波長の光から構成される色を表示する表示体を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示した平面図。
【図2】図1のII−II線に沿う表示体の拡大断面図。
【図3】回折格子が+1次回折光を射出する様子を概略的に示した図。
【図4】本発明の表示体が+1次回折光を射出する様子を概略的に示した図。
【図5】本発明の表示体の第1の領域に採用可能な構造の一例を示す平面図。
【図6】図5のIII−III線に沿う表示体の拡大断面図。
【図7】第1の領域に採用可能な構造の別の例を示す平面図。
【図8】第1の領域に採用可能な構造の別の例を示す平面図。
【図9】第1の領域に採用可能な構造の別の例を示す平面図。
【図10】第1の領域に採用可能な構造の別の例を示す平面図。
【図11】回折格子から射出される回折光の様子を示す概略図。
【図12】第1の領域から射出される回折光の様子を示す図。
【図13】セルの大きさが異なる複数の第1の領域と第2の領域に採用可能な構造と各領域の配置例を示す平面図。
【図14】セルの大きさが異なる複数の第1の領域の構造の一例を示す断面図。
【図15】複数の第1の領域の配置例を示す平面図。
【図16】複数の第1の領域の配置の別の例を示す平面図。
【図17】本発明の一態様に係る表示体の別の例を概略的に示した平面図。
【図18】図1及び図2に示す表示体の第2の領域に採用可能な構造である反射防止構造の一例を示す斜視図。
【図19】図1及び図2に示す表示体の第2の領域に採用可能な構造である光散乱構造の一例を示す斜視図。
【図20】偽造防止用ラベルを物品に支持させてなる表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【図21】図20に示す表示体付き物品のIV−IV線に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、全ての図面を通じて、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
図1は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図であり、本発明の正反射方向に近い方向に複数の波長の光から構成される色を表示する表示体の一例を示している。図2は、図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図である。表示体10は、光透過層11と反射層13との積層体を含んでいる。この例においては、光透過層11がレリーフ構造形成層である。図2に示す例では、光透過層11側を前面側(観察者側)とし、且つ、反射層13側を背面側としている。
【0017】
図1及び図2に示す表示体10は、凹凸構造形成層の表面には、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部、または底面が前記基材面と略平行である複数の凹部と、基材面と略並行な平坦部が配置されて構成された領域を少なくとも一つ備えている。本図において、第1の領域15は微小な凹凸が形成されたセルを有する領域であり、第2の領域25は第1の領域15とはその構造や光学的な性質が異なる領域であると定義する。第2の領域25は第1の領域15とは異なる凹凸構造が形成されている領域であってもよいし、構造が形成されていない平坦部から成る領域であってもよい。また、第1の領域15は表示体10に少なくとも1つ以上存在しているが、第2の領域25は表示体10に複数存在していてもよいし、1つも存在していなくてもよい。また、複数の領域を組み合わせて表示体としても良い。
【0018】
光透過層11の材料としては、例えば、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂などの光透過性を有する樹脂を使用することができる。熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を使用すると、例えば、表示体の凸構造または凹構造が形成された金属製のスタンパから、一方の主面に凸構造または凹構造が設けられた光透過層11を転写成形することができる。
【0019】
図2には、一例として、光透過性の基材111と光透過性樹脂層112との積層体で構成された光透過層11を描いている。光透過性の基材111は、それ自体を単独で取り扱うことが可能なフィルムまたはシートであり、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネート(PC)などを用いることができる。光透過性樹脂層112は、光透過性の基材111上に形成された層である。図2に示す光透過層11は、例えば、光透過性の基材111上に熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布し、この塗膜にスタンパを押し当てながら樹脂を硬化させることにより得られる。
【0020】
反射層13としては、例えば、アルミニウム、銀、金、及びそれらの合金などの金属材料からなる金属層を使用することができる。或いは、反射層13として、光透過層11とは屈折率が異なる誘電体層を使用してもよい。或いは、反射層13として、隣り合うもの同士の屈折率が異なる誘電体層の積層体、即ち、誘電体多層膜を使用してもよい。なお、誘電体多層膜が含む誘電体層のうち、光透過層11と接触しているものの屈折率は、光透過層11の屈折率とは異なっていることが望ましい。反射層13は、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により形成することができる。
【0021】
この表示体10は、接着剤層、樹脂層などの他の層を更に含むことができる。接着剤層は、例えば、反射層13を被覆するように設ける。表示体10が光透過層11及び反射層13の双方を含んでいる場合、通常、反射層13の表面の形状は、光透過層11と反射層13との界面の形状とほぼ等しい。接着剤層を設けると、反射層13の表面が露出するのを防止できるため、先の界面の凸構造または凹構造の、偽造を目的とした複製を困難とすることができる。また、樹脂層は、例えば、使用時に表示体の表面にキズが付いてしまうのを防ぐことを目的としたハードコート層や、表示体の一部に設ける、光や熱によって硬化する樹脂インキから成る印刷層である。
【0022】
光透過層11側を背面側とし、且つ、反射層13側を前面側とする場合は、接着層は、光透過層11上に形成する。
【0023】
樹脂層は、光透過層11及び反射層13の積層体に対して前面側に設ける。例えば、光透過層11側を背面側とし、且つ、反射層13側を前面側とする場合、反射層13を樹脂層によって被覆することで、反射層13の損傷を抑制できるのに加え、その表面の凸構造または凹構造の、偽造を目的とした複製を困難とすることができる。
【0024】
(第1の領域の説明)
本発明に係る第1の領域について説明するにあたり、まず、回折格子のピッチ及び照明光の波長と、照明光入射角及び回折光の射出角との関係について説明する。
【0025】
回折格子に照明光源を用いて照明光を照射すると、回折格子は、入射光である照明光の進行方向に対応して特定の方向に強い回折光を射出する。
【0026】
m次回折光(m=0、±1、±2、・・・)の射出角βは、回折格子の格子線に垂直な面内で光が進行する場合、下記の式1から算出することができる。

d=mλ/(sinα−sinβ) ・・・(式1)
【0027】
式(1)において、dは回折格子の格子定数(格子周期,ピッチ)を表し、mは回折次数を表し、λは入射光及び回折光の波長を表している。また、αは、0次回折光、即ち、正反射光RLの射出角を表している。換言すれば、αの絶対値は照明光の入射角と等しく、反射型回折格子の場合には、照明光の入射方向と正反射光の射出方向とは、回折格子が設けられた界面の法線NLに関して対称である。
【0028】
なお、回折格子が反射型である場合、角度αは、0°以上であり、且つ、90°未満である。また、回折格子が設けられた界面に対して斜め方向から照明光を照射し、法線方向の角度、即ち0°を境界値とする2つの角度範囲を考えると、角度βは、回折光の射出方向と正反射光の射出方向とが同じ角度範囲内にあるときには正の値であり、回折光の射出方向と照明光の入射方向とが同じ角度範囲内にあるときには負の値である。
【0029】
ピッチdの回折格子に対する照明光入射角及び+1次回折光の射出角の関係を図3に示す。照明光が複数の波長成分を含む白色光である場合、回折光の射出角は波長によって異なる。それによって太陽や蛍光灯などの白色照明光源下で回折格子を観察すると、白色光が分光し、単一波長の光が別々の角度に射出され、観察する角度によって虹色に見える。図3では点光源LSから白色光IL(ここでは、白色光を構成する波長成分はR、G、Bの3波長であると仮定する)が入射し、回折格子GRによって波長成分Rの回折光DL_r、波長成分Gの回折光DL_g、波長成分Bの回折光DL_bに分光する様子を示している。このとき、波長成分Rの回折光の射出角β_rと、波長成分Rの回折光の射出角β_gと、波長成分Rの回折光の射出角β_bは、波長毎に異なる値を取る(図3では、DL_rの射出角のみβ_rとして記載している)。他の次数の回折光についても式(1)によって導出される角度に射出されるが図3への記載は省略する。
【0030】
図4は本発明の表示体が+1次回折光を射出する様子を概略的に示した図であり、図3と比較してより広いピッチの回折格子が+1次回折光を射出する様子を概略的に示している。図3よりもピッチdが大きい回折格子に白色光が入射した様子を示している。ピッチdが大きい場合、式1から明らかなように、狭いピッチの回折格子と比較して回折光は正反射光RLに近い方向に射出され、また、分光した単一波長の光同士の射出角の差は小さくなる。
【0031】
次に、回折格子のピッチ及び照明光の波長と、回折光の射出角方向における回折光の強度(回折効率)との関係について説明する。
【0032】
ピッチdの回折格子に対してαの入射角で入射した照明光は、式1に基づいて角度βの方向に回折光を射出する。この際、波長λの光の射出強度、すなわち回折効率は、回折格子のピッチや高さ等によって変化し、式2(数1)によって導出される。
【数1】

【0033】
ここで、ηは回折効率(0〜1の値をとる)、rは回折格子の高さ、Lは回折格子の格子線幅、dは格子線のピッチ、θは照明光の入射角、λは入射光及び回折光の波長である。なお、この式は、凹凸構造から成る浅い矩形回折格子について成り立つものである。
【0034】
式2から明らかなように回折効率は回折格子の高さrや、格子線のピッチd、入射光の入射角θや波長λによって変化する。また、実際には回折効率は回折次数mが高次になるのに伴って徐々に減少していく傾向にある。
【0035】
次に、第1の領域の構造と光学的性質について説明する。
【0036】
第1の領域は、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部または底面が前記基材面と略平行である複数の凹部と、前記基材面と略並行な平坦部が配置されて構成されたセルを有し、前記複数の凸部または凹部は長辺及び短辺の長さがそれぞれ2μm以上且つ50μm以下であり、複数の凸部または凹部の隣接するもの同士の中心間距離は2μm以上且つ50μm以下である。第1の領域内における凸部または凹部の占有面積は20%以上且つ80%以下である。また、凸部の高さ、または凹部の深さは0.1μm以上且つ0.5μm以下となっている。
【0037】
図5は、本発明の表示体の第1の領域に採用可能な構造の一例を示す平面図であり、図1の表示体10上に設けられた第1の領域15を部分拡大した平面図である。図6は図5のIII−III線に沿った断面図である。図5において第1の領域がセル16を有し、その内部に形成されている凸部17は円形を呈している。
【0038】
なお、上述の整然配置とは、凸部または凸部が均等な間隔、または規則性を持った配列をなしていることを指し、例えば、正方格子、矩形格子又は三角格子をなしている。これら凹部又は凸部の配列を制御することにより、迷光の少ない回折光が得られるという利点がある。
【0039】
図7乃至図10は、第1の領域に採用可能な構造の別の例を示す平面図である。凸部または凹部の他の例としては、楕円形(図7)や八角形(図8)、星型(図9)、十字(図10)等の多角形を任意に採用することができる。また、第1の領域内に形状の異なる凸部または凹部が混在していてもよい。
【0040】
図5の第1の領域に採用可能な構造の一例では、円形の凸部17が、三角格子状にセル16内に配列されている。セル16の範囲は、第1の領域15のX方向及びY方向に平行な辺を有し、X方向又はY方向に隣接する凸部同時の中心間距離を測定し、中心間距離の1/2の距離だけ、最外周に配置された凸部の中心から外へ移動した位置を境界としている。図5の場合、凸部の中心間距離は、Y方向の距離が短いのでY方向の中心間距離の1/2の長さを採用する。
また、配置された凸部17を全て含む最小の面積でセル16を規定してもよい。図9や図10は凸部17の最外周に沿ってセル16の範囲を示した例である。このように、セルは形成される凸部または凹部の形状や配置規則、密度などに応じて任意に規定することができる。また、セルは第1の領域の相似形でなくてもよく、例えば、第1の領域が正方形であった場合に、セルの形状が長方形や円形など第1の領域とは異なる形状となってもよい。また、第1の領域とセルが同一の形状であってもよい。
【0041】
また、第1の領域に採用可能な凸部または凹部の構造は、長辺及び短辺の長さがそれぞれ2μm以上且つ50μm以下であり、長辺及び短辺はそれぞれ図7に示したように、凸部または凹部のもっとも長い部分を長辺28、もっとも短い部分を短辺29と定義する。すわなち、凸部または凹部は2μm以上且つ50μm以下の辺を有する矩形に内包される形状である。
【0042】
図11は、回折格子から射出される回折光の様子を示す概略図である。図11に示したようなy軸に平行な複数の格子線によって形成される回折格子GRでは、照明光ILが入射した際に、y軸(格子線の長手方向)と直交する方向(x軸方向)に回折光DL_r、DL_g、DL_bが射出される。
【0043】
一方、図12は、本発明を採用した表示体から射出される回折光の様子を示す概略図であり、図5及び図6で示されるような構造に照明光が入射すると、第1の領域15に形成された複数の凸部17とその周囲の平坦部18の周期性によって、回折光を射出する。本発明の構造とすることによって凸部17が第1の領域15のセル16内でお互いに離間して配置されている構造においては、x軸方向にとどまらずXY平面上の多くの方位角に対して回折光が射出される。ここで射出される回折光は、図11に示したような回折格子に垂直上方から光が入射した時と同様に、入射光に近い側に波長の長い回折光DL_rが射出され、入射光から遠ざかる方向にDL_g、さらに、DL_bが射出される。図12においては、光が第1の領域の1点に入射した状態を図示しているが、実際には、光は一点への入射ではなく、面状に第1の領域に入射する。
【0044】
複数の凸部17は互いに接触しないようにセル16内に整然配置されている。図5において凸部17の直径は約10μmとする。ここで、図5の一点鎖線Aや一点鎖線Bで示した方向について考えると、複数の凸部17によってピッチ約14μmの回折構造が形成されていると見なすことができる。表示体の表面に対して垂直に白色照明光が入射しているとすると、例えば波長630nmの光は式1によって角度β≒2.58°で+1次回折光として射出される。また、波長540nmの光は角度2.21°、波長460nmの光は角度1.88°となる。他の方向(例えば一点鎖線C)についても、複数の凸部17の周期性によって式1に基づいて回折光が射出される。このように、入射光の波長と比較して十分に大きいピッチの回折構造からは、入射光の正反射光の射出角(この例の場合0°)と近い値をとる。
【0045】
また、+2次回折光についても同様に式1を用いることで、各波長の回折角はそれぞれ波長630nmの時、回折光は5.16°、540nmの時は4.42°、460nmの時は3.77°となる。これらの値も入射光の正反射光の射出角(この例の場合0°)と近い値をとる。
【0046】
このように、ピッチが5〜50μm程度と大きく、回折光の射出角が入射光の正反射角と近い場合、回折光の次数毎の射出角の差もそれほど大きくなく、表示体を至近距離で目視観察する場合、複数の次数の回折光が一緒に目に入る。また、各次数の回折光は複数の波長の光より構成されるが、この複数の波長成分もそれぞれ射出角の差が小さいので、観察者は、複数の次数の、且つ、複数の波長の光を同時に知覚することができる。例えば、観察者の目に到達する回折光の波長成分が赤(波長630nm)及び緑(波長540nm)であったとすると、加法混色により観察される色は黄色となり、緑及び青(波長460nm)であったとすると、観察される色はシアン(うすい水色)となる。
【0047】
さらに、通常、我々が太陽や蛍光灯等の照明下で表示体を観察する場合、図3等に示したような理想的な点光源ではなく、光源自体がある程度の面積をもっているし、空気中の微粒子や地面、建造物などで反射した光が表示体に到達するため、表示体に入射する照明光は様々な方向成分から構成される。そのため、表示体の垂直上方に光源があった場合でも、定点において表示体を観察した際には、第1の領域から射出される回折光は単一の波長の光ではなく、複数の角度から入射した光によって観察者の目には複数の波長成分が混ざり合わさった光が到達する。
【0048】
ここで、式2で示すとおり、回折構造から射出される回折光は波長に応じて光量、すなわち回折効率が変化する。そのため、表示体(第1の領域)を定点から観察した場合においても、可視光の波長成分が均等には目に届かず、第1の領域に設けられた凸部の高さに応じて特定の波長の光の回折効率が低くなり、結果として観察者に届く光は、入射した白色照明光のうちの、特性の波長成分が弱くなった光となる。よって、観察者は第1の領域を観察した際に入射光の正反射方向に近い角度において、光量に差がある複数の波長の光を知覚することができる。
【0049】
また、ここでセルの面積が異なる場合、すなわち、凸部または凹部の数や形成されている面積が異なる場合、第1の領域から射出される光の光量が増減する。セルの面積が大きい場合、光量は多くなり、セルの面積が小さい場合、光量は少なくなる。
【0050】
従来の回折格子では、光源の位置や観察する向きに応じて、観察者の目に到達する回折光の波長が変わり見える色が変化するが、本発明の第1の領域に採用される構造は、図12で示したようにXY平面上の多くの方位角に対して回折光を射出するので、光源の位置や観察する向きが多少変化しても、複数の波長から構成される色を観察可能である。このため、従来の回折格子のように表示色が虹色に変化してしまう現象を回避または低減することができる。第1の領域に設けた凸部または凹部の長辺及び短辺の長さが同じ値に近いほうがより、光源の位置や観察する向きに依らず安定して同じ色を見ることができる。
【0051】
また、凸部の高さを変えることで回折効率が低くなる波長が変わることから、異なる色を表示させる場合には、第1の領域に設けられた凸部の高さ(または凹部の深さ)を変化させればよい。
【0052】
(第1の領域に採用可能な構造とその効果)
第1の領域は、表示体の凹凸構造形成層の少なくとも一部に、整然配置されている。図13は表示体表面での第1の領域及び第2の領域の配置例を示す図である。図13のように、表示体表面は微細な複数の領域に分割され、複数の第1の領域15と、第2の領域25とに区分されている。なお、表示体表面に配置される第1の領域及び第2の領域は概念上のものであり、実際の表示体には図13のような目視可能な境界線による区切りは存在しない。
【0053】
また、複数の第1の領域15は、それぞれセル16と呼称する小領域を有している。セルは、第1の領域にそれぞれ1つ存在し、その形状は第1の領域と同一か、それより小さいものとなる。セルの形状は第1の領域を逸脱しない範囲で任意である。例えば第1の領域15の中点とセル16の中点が重なるように配置すると、セル16が常に第1の領域15の中心に配置された構成とすることも可能である。また、第1の領域内にそれぞれのセルを不規則に配置した構成とすることもでき、その場合、より高い偽造防止効果を見込むことができる。各セルの内部には複数の凸部または凹部が形成される。セルについても概念上のものであり、実際の表示体には、図13のような目視可能な境界線による区切りは存在しない。
【0054】
セルの内部に設けられた複数の凸部の高さまたは凹部の深さはセルの面積に応じて一定である。図14は、複数の第1の領域及びその内部のセル及びセル内に形成された複数の凸部の様子を示す断面図である。図14に示すとおり、第1の領域151及び152はそれぞれ面積の異なるセル161とセル162を有し、セル161とセル162の内部には高さの異なる複数の凸部171、172がそれぞれ形成されている。このような構成にすることで、各セルは互いに異なる色相の色を表示することができる。
【0055】
表示体表面を、整然配置された複数の第1の領域に分割し、各々異なる色相の色を表示することで、画素構造から成る画像を表現することができる。第1の領域の形状及び配置方法としては、正方形や長方形等の矩形や平行四辺形などの四角形を行列(マトリクス)状に配置する方法や、六角形や三角形等を表示体表面に敷き詰めるように最密に配置する方法を採用することができる。図15は長方形から成る複数の第1の領域を行列状に配置した例である。また、図16は六角形の第1の領域を最密充填配置した例である。このような形状の第1の領域を規則的に配置することで、画素構造から成る画像を表現することができる。なお、1つの表示体内部で異なる配置規則による第1の領域が設けられていてもよい。
【0056】
第1の領域の一辺の長さは300μm以下とすると良い。一辺の長さが300μm以下の第1の領域を整然配置することで、表示体を肉眼で観察した際に、各々の第1の領域の形状が認識されるのを防ぐことができ、解像度が高く高精細な画像を表現することが可能になる。ここで、第1の領域の一辺とは、第1の領域の最大の長さの辺を示すものとする。
【0057】
第1の領域に形成されているセルが互いに相似形であることで、セルの面積とその内部に形成されている凸部の高さまたは凹部の深さとの関係を一意に決定することができ、製造が容易となる。
【0058】
複数の第1の領域に形成される各セルが任意の方向に対して徐々に小さくなっていくことで、色相が段階的に変化していく所謂グラデーションの様な色表示を行うことができる。図17は、x軸方向にセルの面積が徐々に小さくなっていく複数の第1の領域が形成された表示体の一実施例である。図17中の吹き出しで表示した部分が表示体上の各部分における第1の領域の様子であり、表示体上の位置に応じてセルの面積が変化している様子を示している。また、このような構成の複数の第1の領域によって表示体10は図のようにx軸方向に対して段階的な色変化を表現することが可能となる。このような段階的な色変化は、単色のみの色表現と比較して偽造がはるかに困難になる。
【0059】
また、各セルが徐々にその面積を変えていく様子としては、図17に示したように直線状の濃淡変化円の中心から外部に向かって面積が変わっていったり、任意の曲線状のラインに沿って面積が変わっていったりしてもよい。これらは所望する画像表現によって任意に選択することができる。
【0060】
第1の領域に採用可能な構造としては、複数の凸部または凹部の、長辺及び短辺の長さがそれぞれ2μm以上且つ50μm以下であり、隣接するもの同士の配置間隔(ピッチ)は、2μm以上且つ50μm以下である。このようなピッチを有する周期性を伴う凹凸構造からは白色照明光の入射に対して正反射光の約±19°の範囲内に回折光を射出する。このような狭範囲に照明光が分光すれば、分光による広がりが少なく、観察者は複数の波長の光による色を知覚しやすい。
【0061】
ここで、凸部または凹部のピッチが2μmより小さい値である場合、分光した各波長の光の射出角の差が大きくなるため、従来の回折格子と同様に虹色に見えてしまう可能性が高くなる。そのため、凸部または凹部のピッチは2μm以上とするのがよい。また、凸部または凹部のピッチが50μmより大きい値である場合、回折現象そのものが弱くなるため、複数の波長成分が混ざり合わさった光を表示することが難しくなる。
【0062】
凸部または凹部の長辺及び短辺の長さは2μm以上且つ50μm以下が好ましい。長辺及び短辺の長さが2μmを下回るような構造では、基材面と略平行である凸部の上面や、凹部の底面を精度良く平らに加工することが難しくなる。また、50μmを超える場合、凹凸構造に起因する散乱光などのノイズ光成分が発生しやすくなる。
【0063】
また、第1の領域内における凸部または凹部の占有面積は20%以上且つ80%以下であることが好ましい。式2から、凸部または凹部の幅(式2の格子線幅Lに相当)はピッチdの半分であるときに回折効率が最も高くなる。よって、凸部または凹部の占有面積は50%程度のときが最も明るい表示画像が得られもっとも望ましく、20%以上且つ80%以下程度であれば、50%から離れるにしたがって回折効率が低下し表示画像が暗くなっていくものの、十分に複数の波長の光から成る表示画像を視認することができる。なお、占有面積が20%及び80%のときの回折効率は、式2より、50%のものの約3割程度の明るさとなる。
【0064】
凸部または凹部の占有面積が20%より小さい、もしくは80%より大きい場合には、十分な明るさが得られず、十分なアイキャッチ効果を得ることが難しくなる。
【0065】
また、凸部の高さ、または凹部の深さの最適な値は0.1μm以上且つ0.5μm以下の範囲であることが好ましい。式2において、ピッチd、格子線幅Lを一定と仮定した場合、可視光の範囲の波長の光が入射角θ(0°より大きく90°未満の範囲)で入射すると、回折効率が最も高くなる凸部の高さ、または凹部の深さの値は前記0.1μm以上且つ0.5μm以下の範囲内にある。なお、式2から、回折効率が最も高くなる条件は、それよりも大きい値であっても繰り返し訪れるが、製造上、凸部の高さまたは凹部の深さは極力浅い方が、作製が容易であるのでより浅い値で高い回折効率が得られる0.1μm以上且つ0.5μm以下の条件が望ましい。
【0066】
なお、凸部の高さ、または凹部の深さが0.1μmより浅い場合は製造時の外的要因(機械や環境のコンディションの変動や材料組成のわずかな変化等)により安定して同じ品質のものを作製するのが難しくなり、0.5μmより深い場合は、細かく深い構造を精密に転写成形するのが難しくなる。
【0067】
(第2の領域の説明)
次に、第2の領域について説明する。
第2の領域25は第1の領域15とはその構造や光学的な性質が異なる領域である。第2の領域25は第1の領域15とは異なる凹凸構造が形成されていてもよいし、構造が形成されていない平坦面であってもよい。また、第2の領域25は表示体10に複数存在していてもよい。
【0068】
第2の領域25に採用可能な構造としては、回折格子が挙げられる。回折格子は、図1
1の斜視図に示したような線状の凹凸構造(格子線)が繰り返し形成されたものであり、ピッチ0.5〜1μm程度、構造の高さ0.1〜0.5μm程度が典型的な仕様である。回折格子は回折によって虹色に輝く分光色を射出し、光源の位置や観察者の観察角度など観察条件に応じて、色や絵柄が変化する像を表示させることや、立体像を表示させることができる。
【0069】
また、第2の領域25に採用可能な別の構造として、微細な凹凸構造から成る反射防止構造体が挙げられる。反射防止構造体は、図18の斜視図に示したような円錐状の構造27や、角錐状の構造が整然配置されたものが典型的であり、前記構造は、可視光の波長以下(例えば400nm以下)のピッチで配置され、構造の高さは300μm以上で高いほうがより反射防止機能が高い。前記のような仕様で形成されている反射防止構造体は入射する可視光の反射を防止もしくは低減する機能を有し、観察した際に黒色もしくは暗灰色等の無彩色に見える。
【0070】
また、第2の領域25に採用可能な構造として、光散乱構造体が挙げられる。光散乱構造体は、図19の斜視図に示したように大きさや形、構造の高さが異なる凹凸形状28が不規則に複数配置されたものが典型的である。光散乱構造体に入射した光は、四方八方に乱反射し、観察した際には白色または白濁色に見える。光散乱構造体は典型的には、幅3μm以上、高さが1μm以上のものが多く、回折格子や反射防止構造体と比較して大きい構造である。また、その大きさや配置間隔、形状は不揃いである。そのため、光の回折や吸収が起きにくく、光を散乱する効果が得られる。
【0071】
また、第2の領域25は凹凸構造が形成されていない平坦面であってもよい。第2の領域25を平坦面とすると、第2の領域25は光反射層13によって鏡面のように見える。
【0072】
第2の領域25と第1の領域15を組み合わせることによって表示体の意匠性を向上させることができる。第2の領域には、第1の領域とは異なる光学特性を発揮する前述の構造以外の構造を形成してもよい。
【0073】
(表示体の使用方法)

上述した表示体10は、例えば、偽造防止用ラベルとして粘着材等を介して印刷物やその外の物品に貼り付けて使用することができる。表示体10は微細な凹凸構造により表示体の正面方向に複数の波長による色を表示することができ、構造の高さを変えることでその色が変化することから偽造は困難である。このラベルを物品に支持させた場合、真正品であるこの表示体付き物品の偽造又は模造も困難である。
【0074】
図20は、偽造防止用ラベルを物品に支持させてなる表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図である。図21は、図20に示す表示体付き物品のIV−IV線に沿った断面図である。
【0075】
図20及び図21には、表示体付き物品の一例として、印刷物100を描いている。この印刷物100は、IC(integrated circuit)カードであって、基材20を含んでいる。基材20は、例えば、プラスチックからなる。基材20の一方の主面には凹部が設けられており、この凹部にICチップ30が嵌め込まれている。ICチップ30の表面には電極が設けられており、これら電極を介してICへの情報の書き込みやICに記録された情報の読出しが可能である。基材20上には、印刷層40が形成されている。基材20の印刷層40が形成された面には、上述した表示体10が例えば粘着層を介して固定されている。表示体10は、例えば、粘着ステッカとして又は転写箔として準備しておき、これを印刷層40に貼りつけることにより、基材20に固定する。
【0076】
この印刷物100は、微細な凹凸構造から成る表示体10を含んでいる。それゆえ、この印刷物100の同一品を偽造又は模造することは困難である。しかも、この印刷物100は、表示体10に加えて、ICチップ30及び印刷層40を更に含んでいるため、それらを利用した偽造防止対策を採用することができる。
【0077】
なお、図20及び図21には、表示体10を含んだ印刷物としてICカードを例示しているが、表示体10を含んだ印刷物は、これに限られない。例えば、表示体10を含んだ印刷物は、磁気カード、無線カード及びID(identification)カードなどの他のカードであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、商品券及び株券などの有価証券であってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。
【0078】
また、図20及び図21に示す印刷物100では、表示体10を基材20に貼り付けているが、表示体10は、他の方法で基材に支持させることができる。例えば、基材として紙を使用した場合、表示体10を紙に漉き込み、表示体10に対応した位置で紙を開口させてもよい。或いは、基材として光透過性の材料を使用する場合、その内部に表示体10を埋め込んでもよく、基材の裏面、即ち表示面とは反対側の面に表示体10を固定してもよい。
【0079】
また、表示体付き物品は、印刷物でなくてもよい。すなわち、印刷層を含んでいない物品に表示体10を支持させてもよい。例えば、表示体10は、美術品などの高級品に支持させてもよい。
【0080】
表示体10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体10は、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。
【0081】
(表示体の原版の作製方法)
次に、本発明の表示体の原版の作製方法を説明する。
【0082】
本発明の表示体の原版は、従来のレリーフ型回折格子の作製プロセスと同様に、フォトリソグラフィの工程を利用して作製することができる。電子線やレーザー等の荷電粒子ビームによって平面状の基板(ガラス基板が一般的に用いられる)に略均一に塗布された感光性レジストを露光し、現像することで所望の凹凸形状を得る。感光性レジストがポジ型レジストと呼ばれるものであれば、荷電粒子ビームが照射された部分が現像後溶解し、ネガ型レジストと呼ばれるもので有れば、荷電粒子ビームが照射された部分が現像後に残り、照射されていない部分が溶解する。基板は、高精度に位置調整が可能なXYステージ上に載置され、コンピュータ制御のもとでステージを移動させながら荷電粒子ビームが照射される位置が決定される。
【0083】
このようにして得られた基板は、感光性レジストによる凹凸構造は脆く、量産用のスタンパとしては適さないので、この基板を原版として、そこから電鋳等の方法により金属製のスタンパを作製する。電鋳とは、電鋳の対象物を所定の水溶液中に浸し、通電することで電子の還元力により、金属皮膜を形成する表面処理技術の一種であり、このような方法を用いることで、原版の表面に設けられた微細な凹凸構造を精度良く金属版として転写成形することができる。電鋳の対象物の表面は通電可能である必要があり、一般に感光性レジストは電気を通さないので、電鋳を行う前にスパッタリングや真空蒸着等の気相堆積法により、構造の表面に金属薄膜があらかじめ設けられる。
【0084】
次いで、この金属製スタンパを母型として用いて、凹凸構造を複製する。即ち、まず、例えば、ポリカーボネート又はポリエステルからなる透明基材上に、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を塗布する。次に、塗膜に金属製スタンパを密着させ、この状態で樹脂層に熱又は光を与える。樹脂が硬化した後、硬化した樹脂から金属製スタンパを剥離することにより、凹凸構造を複製することができる。
【0085】
一般に、基材や形成用の樹脂材料は透明である。従って、通常、凹凸構造を設けた樹脂層(凹凸構造形成層)上には、蒸着等によりアルミニウム等の金属又は誘電体を単層又は多層に堆積させることにより反射層を形成する。
その後、このようにして得られた表示体を、例えば紙又はプラスチックフィルムからなる基材上に接着層又は粘着層を介して貼り付ける。以上のようにして、偽造防止対策を施した表示体を得る。
【0086】
また、原版の作製方法としては、フォトリソグラフィの工程だけでなく、先端が微細なダイヤモンドバイト等の切削機器による加工や、エッチングによって金属等の表面を腐食させる工程等も採用することができる。このような方法を用いると、直接金属板の表面を加工することも可能であり、その場合、電鋳等の方法による金属製スタンパの作成を行うことなく、直接金属スタンパを得ることができる。
【0087】
荷電粒子ビームを基板上に塗布された感光性レジストに照射して凹凸形状を加工する方法では、近接効果と呼ばれる現象が発生する。近接効果とは、加工される凹凸形状の大きさや、単位面積当たりのビームが照射される面積の割合によって、形状の寸法や深さが狙いとする寸法や深さからわずかに変動してしまう現象のことである。例えば、あるエネルギー量で1mm角の面積で深さが0.1mmの凹構造が加工できる条件で、0.5mm角の面積を加工しても、0.1mmの深さは得られず、それよりやや浅い凹構造になってしまう。これは、荷電粒子ビームがレジスト内で散乱する現象が影響している。この現象には大きく分けて前方散乱と呼ばれる現象と、後方散乱と呼ばれる現象がある。前方散乱は、荷電粒子ビームがレジスト内に侵入する際に起こるもので、荷電粒子ビームが広がり、照射された面積より広い領域に荷電粒子ビームの影響を与えるものである。一方、後方散乱は、感光性レジストを通過し、感光性レジストの下面にある基板の表面もしくは裏面などで反射した荷電粒子ビームにより、感光性レジストに影響を与えるものである。これらの散乱したビームの影響はビームのエネルギー量や加工されるパターンの形状、深さによってその大小は様々である。また、この近接効果の影響は使用する感光性レジストの材料組成や塗工された膜厚によっても変化する。
【0088】
ここで、本特許の第1の領域に設けられる複数の凸部または凹部はそれぞれ面積の異なるセルの内部に形成されている。そのため、同一のエネルギー量で凸部または凹部を加工したとしても、近接効果の影響がセルの面積に応じて変化するため、同じ高さの凹凸構造を形成することはできない。換言すれば、セルの面積を変化させ、その内部に形成される凹凸構造の面積を変化させることで、同一のエネルギー量で各構造を加工していってもセルの面積に比例する深さの構造となり、同じ深さの構造にはならない。そのため、第1の領域はセルの面積の大小に応じて異なる色相の色を表示することが可能となる。
【0089】
一般に、荷電粒子ビームを用いた加工機では、荷電粒子ビームのエネルギー照射量やエネルギー密度の変更や照射時間の変更が複雑で手間のかかるものが多く、また、これらの要素を変更することが装置の安定性の低下にもつながり好ましくない。そのため、同一のエネルギー密度で加工ができる本特許の表示体の原版の作製方法は、簡便に色相が異なる複数の色から成る表示体の原版を得る方法として有効である。また、前述のように近接効果の影響は、使用する加工機や加工されるパターンの形状や深さ、さらに、使用する感光性レジストの材料組成や膜厚などによっても変化するため、本特許の表示体を偽造するには、それらの要素を全て同一のものにする必要があり、偽造は極めて困難であると言える。
【0090】
荷電粒子ビームを用いた加工機としては、電子線描画装置、またはレーザー直接描画装置が望ましい。これらの装置は、加工速度が速く、XYステージの位置精度等も高いため、高精度に所望の凹凸パターンを作成することが可能である。第1の領域に採用される凹凸構造は所望の表示色を得るためには深さの制御を厳密に行うことが必要であり、これらの装置はその要求を満たすことができる。近年の電子線描画装置やレーザー直接描画装置は装置の高性能化が進み、照射される荷電粒子ビームの安定性も高くエネルギー照射量やエネルギー密度は同一設定で略同一の値となるが、装置の使用環境(温度や湿度など)のわずかな変化や装置コンディション(長時間動作時など)の影響により変動する可能性はある。しかし、その変動量はわずかであり、同一のパターンを加工する場合、加工されるパターンの形状や深さにはほとんど変化を与えない。
一方、切削機器による加工やエッチングを用いる方法でも本特許の表示体の原版を作製することは可能であるが、その場合、高い加工精度が要求され、且つ、適切な材料の選定が重要となる。また、切削機器による加工やエッチングは、第1の領域の構造の作製に加え、第2の領域に形成可能な回折格子、微細凹凸構造による反射防止構造体、光散乱構造体などの作製も困難である。
【符号の説明】
【0091】
10…表示体、11…光透過層、13…反射層、15…第1の領域、16…セル、17…凸部、18…平坦部、25…第2の領域、26…回折格子、27…反射防止構造体、28…光散乱構造体、28…長辺、29…短辺、30…ICチップ、40…印刷層、50…基材、100…印刷物、111…光透過性の基材、112…光透過性樹脂層、151…第1の領域(面積大)、152…第1の領域(面積小)、161…セル(面積大)、162…セル(面積小)、171…凸部(深い構造)、172…凸部(浅い構造)、d…回折格子のピッチ、DL…+1次回折光、DL_r…+1次回折光(赤)、DL_g…+1次回折光(緑)、DL_b…+1次回折光(青)、GR…回折格子、IL…照明光、LS…光源、NL…法線、RL…0次回折光(正反射光)、α…入射角、β…射出角、β_r…波長成分Rの回折光の射出角、β_g…波長成分Gの回折光の射出角、β_b…波長成分Bの回折光の射出角

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性の基材と、
前記基材の一方の面側に設けられた凹凸構造形成層と、
前記凹凸構造形成層の少なくとも一部を被覆する反射層と
を備えた積層構造から成る表示体であって、
前記凹凸構造形成層の少なくとも一部は、整然配置された複数の第1の領域に分割されており、
前記複数の第1の領域は、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部又は底面が前記基材面と略平行である複数の凹部と、前記基材面と略並行な平坦部が配置されて構成されたセルを有し、
前記セルは、前記複数の第1の領域の少なくとも一部に各々設けられており、
各セル内に形成された複数の凸部または凹部は、長辺及び短辺の長さがそれぞれ2μm以上且つ50μm以下であり、
隣接する凸部または凹部の中心間距離は2μm以上且つ50μm以下であり、
前記セル内における凸部または凹部の占有面積が20%以上且つ80%以下であり、
前記凸部の高さ又は凹部の深さは0.1μm以上且つ0.5μm以下であり、
前記凸部の高さ又は凹部の深さは、前記セルの面積に対応して決定されていることを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記凸部の高さ又は凹部の深さは、前記セルの面積が広いと高く、前記セルの面積が狭いと低く形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記複数の第1の領域が、正方形又は矩形又は平行四辺形のいずれかから選ばれ、行列状に配置されることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の表示体。
【請求項4】
前記複数の第1の領域が、三角形又は六角形のいずれかから選ばれ、最密充填されて配置されることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の表示体。
【請求項5】
前記第1の領域の一辺の長さが300μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の表示体。
【請求項6】
前記複数の第1の領域に形成された前記セルが互いに相似形であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の表示体。
【請求項7】
前記セルの面積が、任意の方向に徐々に小さくなっていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の表示体。
【請求項8】
前記第1の領域の近傍に、第2の領域を有し、
前記第2の領域は、前記第1の領域とは光学特性が異なる構造を備えており、回折格子、凹凸構造から成る反射防止構造体、光散乱構造体、平坦部のうち少なくとも一つから選ばれることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の表示体。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の表示体とこれを支持した物品とを具備した表示体付き物品。
【請求項10】
基板と、
前記基板の一方の面に略均一に塗布された感光性レジストと、
を有し、
前記感光性レジストの少なくとも一部は、整然配置された複数の第1の領域に分割されており、
前記複数の第1の領域は、上面が前記基板面と略平行である複数の凸部又は底面が前記基板面と略平行である複数の凹部と、前記基板面と略並行な平坦部が配置されて構成されたセルを有し、
前記セルは、前記複数の第1の領域の少なくとも一部に各々設けられている原版の製造方法であって、
前記感光性レジストに荷電粒子ビームを照射し、照射後の前記感光性レジストを現像して凹凸形状を形成し、
前記複数の第1の領域の各セル内に形成された前記複数の凸部または凹部を、略同一のエネルギー量でビーム照射し加工する工程、
を備えることを特徴とする原版の製造方法。
【請求項11】
前記凸部の高さ又は凹部の深さは、前記セルの面積が広いと高く、前記セルの面積が狭いと低く形成されていることを特徴とする請求項10に記載の原版の製造方法。
【請求項12】
前記荷電粒子ビームを照射する装置が、電子線描画装置もしくはレーザー直接描画装置であることを特徴とする請求項10乃至11のいずれかに記載の原版の製造方法。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかに記載の原版の製造方法を経た原版を用いて、
電鋳法によりスタンパを作成するスタンパの製造方法。
【請求項14】
光透過性の基材と、
前記基材の一方の面側に設けられた凹凸構造形成層と、
前記凹凸構造形成層の少なくとも一部を被覆する反射層と
を備えた積層構造から成る表示体であって、
前記凹凸構造形成層の少なくとも一部は、整然配置された複数の第1の領域に分割されており、
前記複数の第1の領域は、上面が前記基材面と略平行である複数の凸部又は底面が前記基材面と略平行である複数の凹部と、前記基材面と略並行な平坦部が配置されて構成されたセルを有し、
前記セルは、前記複数の第1の領域の少なくとも一部に各々設けられており、
各セル内に形成された複数の凸部または凹部は、長辺及び短辺の長さがそれぞれ2μm以上且つ50μm以下であり、
隣接する凸部または凹部の中心間距離は2μm以上且つ50μm以下であり、
前記セル内における凸部または凹部の占有面積が20%以上且つ80%以下であり、
前記凸部の高さ又は凹部の深さは0.1μm以上且つ0.5μm以下であり、
前記凸部の高さ又は凹部の深さは、前記セルの面積に対応して決定されていることを特徴とする表示体の製造方法であって、
前記スタンパを用いて、前記凹凸構造形成層に凹凸形状を形成する工程を少なくとも含むことを特徴とする表示体の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図1】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−164180(P2011−164180A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23976(P2010−23976)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】