説明

表示体及び表示体付き物品

【課題】認証物品並びに商品券及び株券などに対してより高い偽造防止効果を実現し得る表示体を提供する。
【解決手段】画像表示層11と、前記画像表示層11の表面の少なくとも一部に、屈折部14aが、互いに交差する第1及び第2方向に複数配列した屈折領域を複数備えた屈折層12とを具備し、前記屈折領域の少なくとも一つの屈折領域における複数の屈折部14aが、他の屈折領域における複数の屈折部14aと比較して、屈折部14aの頂角又は曲率が異なる表示体10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止性能を付与した表示体及び表体付き物品の技術に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証物品並びに商品券及び株券などの有価証券には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、従来から、そのような物品には、その偽造を抑止すべく、偽造又は模造が困難であると共に偽造品や模造品との区別が容易なラベルが貼り付けられている。そのようなラベルは、例えば、特許文献1に記載されている。
【0003】
また、近年では、認証物品及び有価証券以外の物品についても、偽造品の流通が問題視されている。そのため、このような物品に、認証物品及び有価証券に関して上述した偽造防止技術を適用する機会が増えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−91699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、偽造防止用のラベルとして使用する光学素子の多くには、偽造防止技術が適用されていることが観察者によって比較的悟られ易いという問題がある。偽造防止技術の適用が悟られると、光学素子が不正に複製又は変造される可能性が高くなる。即ち、優れた偽造防止効果を達成できない。
【0006】
そこで、本発明は、より優れた偽造防止効果を実現する表示体、及び表示体付き物品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における第1の発明は、
画像表示層と、
前記画像表示層の表面の少なくとも一部に、屈折部が、互いに交差する第1及び第2方向に複数配列した屈折領域を複数備えた屈折層と
を具備し、
前記屈折領域の少なくとも一つの屈折領域における複数の屈折部が、他の屈折領域における複数の屈折部と比較して、屈折部の頂角又は曲率が異なることを特徴とする表示体である。
また、第2の発明は、
前記表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合、前記屈折領域単位で射出された光の方向が異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体である。
また、第3の発明は、
前記回折光屈折部が、三角プリズム構造又は四角錐構造又はレンチキュラーレンズ構造のうち少なくとも一つから選ばれた構造を有することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の表示体である。
また、第4の発明は、
前記回折光屈折層の少なくとも一部に、平坦領域を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表示体である。
また、第5の発明は、
前記平坦領域が、前記回折光屈折領域の回折光屈折部をエネルギービーム照射によって少なくとも部分的に破壊して形成されることを特徴とする請求項4に記載の表示体である。
また、第6の発明は、
前記画像表示層は、少なくとも基材を有し、前記基材の一方の面に画像層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示体である。
また、第7の発明は、
請求項1乃至6のいずれかに記載の表示体を物品に支持したことを特徴とする表示体付き物品である。
【発明の効果】
【0008】
本願の第1の発明によると、本発明の表示体は、表示体に光が入射し、屈折層の屈折部を経て画像表示層に入射する。そして、画像表示層にて反射した光が屈折層の屈折部を経て観察光が射出される。その観察光を観察者は確認することができる。
本発明では、画像表示層と屈折層を組み合わせることによって、表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合に、観察光が確認できる方向を屈折領域単位で制御することが可能であるし、またある方向からは観察光が射出されない方向を作成することも可能である。
観察光が確認できる方向から確認する場合、表示体に直交する法線方向から、表示体を傾けて観察する角度を変化させると、角度によって観察者が確認できる屈折光の射出量が変化する。さらに観察する角度によっては、屈折層にて光が反射する。例えば表示体の画像表示層及び光屈折層が積層された箇所を観察すると画像表示層に形成された画像のみが表示されるが、観察角度を変えていくと、画像表示層に形成された画像が表示されていた箇所のうち、屈折領域にあたる箇所が突然光って見えるような特殊な視覚効果をもたせることができる。さらに各屈折領域にて屈折部の頂角又は曲率を調整すると、観察する角度によっては、屈折領域にあたる箇所のみが白色に視認されるようになり、画像表示層に形成された画像は視認できなくなるような特殊な視認効果を持たせることができる。
第2の発明によると
さらに屈折領域が持つ屈折部の頂角又は曲率や、屈折部の配列又は配向などを屈折領域単位で調整することによって、屈折光の屈折方向を屈折領域単位で制御することが可能となる。
これにより、結果的には観察光の方向を制御することとなるため、表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合に、観察光が確認できる方向を屈折領域単位で制御することが可能であるし、またある方向からは観察光が射出されない方向を作成することも可能である。
このように、構造を複雑にできるだけでなく、セキュリティ性を向上させることができるため、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
また、第3の発明によると、
屈折領域を積層して組み合わせると、屈折領域単位で観察光の方向を制御することが可能となる。例えば、表示体に直交する法線を回転軸として表示体を回転させ、特定の方向から表示体を観察した場合にのみ、屈折領域から斜出された回折光を観察することができるため、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
本発明の第4の発明によると、
光が直接観察者に確認される箇所と、光が屈折層を介して直接観察者に確認される箇所とを組み合わせることによって、表示体に直交する法線を回転軸として、回折光が射出される方向や角度を凹凸構造領域毎に変化させることが可能となるため、セキュリティ性を向上させることができるだけでなく、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
本発明の第5の発明によると、
任意のデザインを表示体に表現することができるため、セキュリティ性を向上させることができるだけでなく、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
本発明の第6の発明によると、画像層に様々なデザインを付与することによって、セキュリティ性を向上させることができるだけでなく、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体とすることが可能となる。
本発明の第7の発明によると、
物品自体にセキュリティ性を向上させることができるだけでなく、より高い偽造防止効果と意匠性を付与した表示体付き物品とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す表示体のI−I線に沿った断面図。
【図3】本発明の一態様に関わる表示体の他の例を示す断面図。
【図4】本発明の表示体の屈折領域の一例を拡大して示す斜視図。
【図5】本発明の表示体の屈折領域の他の一例を拡大して示す斜視図。
【図6】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す図。
【図7】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す図。
【図8】本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す図。
【図9】表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、本発明の一態様に関わる表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のI−I線に沿った断面図である。なお、図1に記載の表示体10では回折光屈折層側から観察した様子を示している。
【0012】
この表示体10は、画像表示層11の表面に屈折層12が積層された構造となっており、画像表示層11は、基材11aと画像層11bから形成されている。
【0013】
図1では、画像層11bはインク樹脂によって形成されており、屈折層12は、三角プリズム構造の屈折部14aがI−I線に対して直交した方向に複数配列された屈折領域14の1種類で形成された構造となっている。本図では、1種類の屈折領域で屈折層が形成されているがこれに限定するものではなく、複数の屈折領域の組み合わせによって屈折層を形成しても良い。
【0014】
図2において屈折領域14は、表示体10に照明光が照射されると、屈折領域14によって屈折されて入射した光が基材11aや画像層11bで反射され、再び屈折領域14によって屈折されて射出する。
【0015】
画像表示層11の材料としては、基材11aは紙やプラスチックなど一般的に使用される材料を用いれば良い。また、画像層11bとしては、顔料インクや染料インク等の公知の材料を用いれば良く、基材にインクジェットや昇華リボンなどの公知の方法で色や絵柄をつけたものが挙げられる。
【0016】
また、屈折層12は、画像表示層11に積層されるが、画像層12bが積層された面の反対側に積層しても良い。好ましくは、画像層12b面側に屈折層12を積層すると屈折層が、画像層を保護する役目も担うことができる。
【0017】
また、図3のように屈折層12と画像表示層の間に接着層21を設けても良い。また、ここでは図示しないが、屈折層14の凹凸表面に屈折層と屈折率の異なる保護層を設けることで、屈折層の表面が露出しないようにできる。接着層21に用いる材料は、公知の接着材料を用いればよく、さらに屈折層12を保護して破損や汚れを防ぐことが可能となる。
【0018】
次に、屈折領域14に採用可能な構造について説明する。屈折領域14は、画像表示層11の一方の面に配置されており、画像表示層11の一方の面の全体又は一部を被覆している。
【0019】
図4は、本発明の表示体の屈折領域に採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図である。図4に示す例では、屈折部15aが三角プリズム構造を有しており、1次元的に規則的に配列されて屈折領域15を形成している。そのため、後に詳しく説明するとおり、観察する角度によって屈折領域にあたる箇所のみが白色に視認されるような観察光が射出される。
【0020】
図5は、本発明の表示体の屈折領域に採用可能な構造の他の例を拡大して示す斜視図である。図5に示す例では、屈折部16aが四角錐構造を有しており、2次元的に規則的に配列されて屈折領域16を形成している。この場合も、図4の場合と同様に、表示体10に照明光を照射した際に、観察する角度によって屈折領域にあたる箇所のみが白色に視認されるような観察光が射出される。
【0021】
屈折領域は、例えば、屈折構造を設けた金型を樹脂に押し付けることにより屈折部を複数形成することによって作成することができる。例えば、三角プリズム構造や四角錐構造は、基材上に設けられた熱可塑性樹脂層に、三角プリズム構造や逆四角錐構造が設けられた原版を、熱を印加しながら押し当てる方法、すなわち、熱エンボス加工法により得られる。或いは、基材上に紫外線硬化樹脂を塗布し、これに原版を押し当てながら基材側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、その後、原版を取り除く方法により形成することも可能である。
【0022】
この原版は、例えば、金型切削装置を用いて製造する。必要に応じ、原版のレンズ構造を転写して反転版を製造し、この反転版のレンズ構造を転写して複製版を製造してもよい。
【0023】
屈折層12の材料としては、例えば透明材料を使用することができる。例えば、先の熱可塑性樹脂又は紫外線硬化樹脂として、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル/スチレン共重合体系樹脂を使用することができる。或いは、珪酸塩を含んだ無機材料を使用してもよい
【0024】
なお、屈折領域14を画像表示層11の一部のみに被覆させることにより、全体に被覆させた場合とは異なる意匠性を付与することができる。
【0025】
また、屈折層12の一部を平坦領域とすることによって、屈折領域と平坦領域を組み合わせて意匠性を付与することも可能である。図4(b)や図5(b)は屈折領域と平坦領域を組み合わせた1例を示した斜視図であり、屈折領域15、16と平坦領域17が組み合わされて屈折層を形成している。
【0026】
平坦領域は、上記の金型に屈折領域に加え平坦領域を形成して作成しても良いし、上記の金型を用いて形成された屈折領域の屈折部をエネルギービーム照射によって少なくとも部分的に破壊して形成しても良い。
【0027】
なお、エネルギービームに用いられるビームの種類としては、レーザビームを用いても良い。例えば、CO2レーザ、LD励起YAGレーザ又はLD励起YVO4レーザを使用する。レーザは、パルスレーザ及び連続発振レーザの何れであってもよい。レーザビームとしては、例えば、波長が1062nmの赤外光線又は波長が532nmの可視光線を使用する。波長が1062nmのレーザビームを使用する場合には、この波長の光を吸収する赤外線吸収剤を屈折層に添加しておくと、レーザビームの照射による情報の書き込みを、効率的に且つ高速に行うことが可能となる。
【0028】
レーザビーム照射によって形成する代わりに、電子ビームなどの荷電粒子ビームを照射することによって形成してもよい。電子ビーム描画装置によると、レーザと比較して、より小さなビーム径を達成できる。従って、例えばセルの寸法が小さい場合、電子ビーム照射を利用すると、レーザビームを利用した場合と比較して、より高い画質を達成できる。
【0029】
また、屈折部は、三角プリズム構造や四角錐構造、レンチキュラーレンズ構造に限ったものではなく、表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合にのみ、構造表面での反射による白色の観察光を観察することができる構造であれば足りる。例えば三角錐や五角錐などの多角錐でも良いし、半紡錘構造や断面が台形形状の直方体を屈折部として上辺側が最表面になるように複数配列しても良い。前記直方体形状を用いると、本発明の屈折領域に平坦領域の特徴を付与することが可能となる。
【0030】
図6は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図であり、図6(a)は表示体を概略的に示す平面図である。また、図6(b)は、図6(a)のII−II線に沿った断面図を示している。表示体20は、屈折層12が、画像表示層11の前面に積層された構造となっている。また、画像表示層11の画像層11bには、インク樹脂によって絵柄が表示されている。
【0031】
また、本例の屈折層12は、屈折部24aが三角プリズム構造を有し、屈折部24aを複数配列して「ZOPPAN」の文字列にした屈折領域24と、平坦領域34が配された状態になっている。
また、本図において屈折部24aの三角プリズム構造は、「ZOPPAN」の文字列に対して垂直になるように複数配列されている。
【0032】
なお、本図では、屈折層14が表示体20の文字列に対して直交した方向にシフトしているが、本図を理解しやすくするためであり、実際は直交方向にシフトさせて全面を覆う構造となっている。
【0033】
表示体20を直交した法線方向から観察した場合、図6(c)に示すように、背面の画像表示層の色や絵柄が観察されるだけである。
【0034】
図6(d)は、図6(a)の表示体20を法線方向からB方向を手前にして傾けて観察した場合の模式図である。三角プリズム構造に照明光L1が入射すると、三角プリズム表面からの反射光が観察方向A側に射出され、「ZOPPAN」の文字が白色に着色されて観察者に知覚される。つまり、背面の画像表示層の色や絵柄が観察されるだけでなく、屈折領域で表現された図柄やデザインを一緒に視認することができる。なお、B方向を奥にして傾けた場合でも、文字が逆さに見える以外は同様の視覚効果を得ることができる。
【0035】
また、図6(a)の表示体20を法線方向からA方向を手前にして傾けて観察した場合、表示体20を法線方向からA方向を手前にして傾けていっても、観察される画像は背面の基材の色や画像層の色や絵柄のみである。
【0036】
図7は、本発明の一態様に関わる他の表示体を概略的に示す概要図であり、図7(a)は表示体20を概略的に示す平面図である。また、図7(b)は、図7(a)のIII−III線に沿った断面図を示している。表示体20は、屈折領域24を「ZOPPAN」の文字列に並べ、その他を屈折領域44で配列した回折光屈折層14が、表示体10の画像表示層11の前面に積層されており、屈折領域24と44はその屈折部の頂角又は曲率が異なり、観察を変えて観察者に白色を知覚させるように設定されている。また、画像表示層11は、インク樹脂によって絵柄が表示された画像層11bを有している。
【0037】
また、本図において回折光屈折領域24及び44は三角プリズム構造を有し、共に「ZOPPAN」の文字列に対して垂直になるように複数配列されている。
【0038】
なお、本図では、屈折層12が表示体20の文字列に対して直交した方向にシフトしているが、本図を理解しやすくするためであり、実際は直交方向にシフトさせて全面を覆う構造となっている。
【0039】
図7(a)の表示体20に直交する法線方向から見た場合、今回図示しないが、全面で画像表示層の色や絵柄が観察され、「ZOPPAN」の文字を認識するのは困難である。
【0040】
図7(c)は、図7(a)の表示体20に直交する法線方向から表示体20を傾けてB方向から観察した場合の模式図である。この場合、回折光屈折領域24が具備されている部分のみ白色が知覚され、結果として「ZOPPAN」の文字が白く浮き上がって観察される。屈折領域44の具備されている部分は、背面の画像表示層11の色や絵柄が観察される。
【0041】
一方、図7(d)は、図7(a)の表示体20を、図7(c)で観察した角度よりも更に観察角度を深くして、B方向から観察した場合の模式図である。この場合、上記とは逆に、屈折領域44の具備されている部分のみ白色が知覚される。このとき、屈折領域24の具備されている部分では、背面の画像表示層11の色や絵柄が観察される。
【0042】
また、A方向から表示体20を観察した場合、法線に対して表示体20をどの角度に傾けていっても、観察される画像は背面の画像表示層の色や絵柄のみである。
【0043】
上記のように、複数の回折光屈折領域を被覆させることで、一種類の回折光屈折領域のみを被覆させた構造に比べ、表示体に直交した法線を回転軸としたときの、観察者が観察する方向の違いによって、表示体の視認性が変化する。
【0044】
さらに、回折光屈折層の一部が削られた平坦領域を具備させることで、表示体の傾け角度の違いによっても像の表示状態を変化させることができ、回折光屈折層を全体に被覆させた場合よりもさらに高い意匠性を付与することができる。
【0045】
図8は、本発明の一態様に係る表示体を概略的に示す概要図であり、図8(a)は表示体を概略的に示す平面図である。また、図8(b)は、図8(a)のIV−IV線に沿った断面図を示している。表示体20は、屈折領域24を「 OP AN」の文字列に並べ、屈折領域54を「Z」及び左から4番目の「P」の文字列に並べ、その他を屈折領域34で配列した屈折層14が、表示体10の画像表示層11に積層されている。
屈折領域24の屈折部24aは三角プリズム構造である。屈折部24aが備える面は、「ZOPPAN」の文字列に対して直交している。また、屈折領域54に配列された屈折部54aは、屈折部24aの頂角が同じである四角錘構造となっている。四角錐構造のそれぞれの側面は、「ZOPPAN」の文字列に対して垂直及び平行な位置になるように配列されている。また屈折領域44の屈折部44aは、三角プリズム構造である。屈折部44aが備える側面は、「ZOPPAN」の文字列に対して直交している。さらにその屈折部の頂角又は曲率が屈折部24a及び54aとは異なり、観察角度を変えて観察者に白色を知覚させるように設定されている。また、画像表示層11は、インク樹脂によって絵柄が表示された画像層11bを有している。
【0046】
なお、本図では、屈折層12が表示体20の文字列に対して直交した方向にシフトしているが、本図を理解しやすくするためにシフトさせたためであり、実際は直交方向にシフトさせて全面を覆う構造となっている。
【0047】
表示体20を直交した法線方向から観察した場合、今回図示しないが、全面で画像表示層の色や絵柄が観察され、「ZOPPAN」の文字を認識するのは困難である。
【0048】
図8(c)は、図8(a)の表示体20を法線方向からB方向を手前にして傾けて観察した場合の模式図である。この場合、回折光屈折領域24及び54が具備されている部分で白色が知覚され、結果として「ZOPPAN」の文字が白く浮き上がって観察される。さらに屈折領域44の具備されている部分は、背面の画像表示層11の色や絵柄が観察される。
【0049】
一方、図8(d)は、図8(a)の表示体20を図8(c)で観察した角度よりも更に観察角度を深くして、B方向から観察した場合の模式図である。この場合、上記とは逆に、屈折領域44の具備されている部分のみ白色が知覚される。このとき、屈折領域24及び54の具備されている部分では、背面の画像表示層の色や絵柄が観察される。
【0050】
また、図8(e)は、図8(a)の表示体20を法線方向からA方向を手前にして傾けて観察した場合の模式図を示したものである。この場合、屈折領域54の具備されている部分のみ白色が知覚され、屈折領域24及び44の具備されている部分では、背面の画像表示層11の色や絵柄が観察される。
なお、A方向を奥にして傾けた場合でも、文字が逆さに見える以外は同様の視覚効果を得ることができる。
【0051】
上記のように、複数の形状の屈折領域を被覆させることで、一種類の屈折領域のみを被覆させたものに比べ、表示体に直交した法線を回転軸としたときの、観察者が観察する方向の違いによって、表示体の視認性が変化する。そのため通常の表示体よりも高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
【0052】
また、上述の態様を複数見合わせて表示体を形成しても良く、複数の回折光屈折領域及び平坦領域を組み合わせても、さらに高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。
【0053】
また、屈折領域の形状については、文字列を例に挙げたが、文字列に限定するものではなく、屈折領域に数字や記号、デザイン、図柄等を付与しても良い。又はそれらを組み合わせて用いても良い。構造が複雑になるだけでなく、屈折領域に意匠性を持たせることによって、様々な視覚効果を得ることができる。さらに高い偽造防止効果と意匠性を付与することができる。なお、屈折領域のレイアウトについては、目的や構成によって定義変更すれば良い。
【0054】
また、上述の表示体は、例えば申請者が確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグの素材などの他の物品に貼り付ける。これにより、当該物品に偽造防止効果を付与することができる。
【0055】
図9は、表示体付き物品の一例として印刷物30の平面図を描いている。この印刷物30は、ID(identification)カードであって、基材31を含んでいる。基材31は、例えば、プラスチックからなる。基材31上には、印刷層33が形成されている。基材31の印刷層33が形成された面には、例えば上述した表示体10が例えば粘着層を介して固定されている、表示体10は、例えば、粘着ステッカとして準備しておき、これを印刷層33に貼り付けることにより、基材31に固定する。
【0056】
なお、図9には、表示体10を含んだ印刷物としてIDカードを零時しているが、表示体10を含んだ印刷物は、これに限られない。例えば、表示体10を含んだ印刷物は、磁気記録層35を備えた磁気カード、無線カード及びIC(integrated circuit)カードなどの他のカードであっても良い。或いは、本やパンフレットなどの冊子であってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、商品券及び株券などの有価証券であってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるタグであってもよい。或いは、表示体10を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。
【0057】
また、図9に示す印刷物30では、表示体10を基材31に貼り付けているが、表示体10は、他の方法で基材に支持させることができる。例えば、基材として紙を使用した場合、表示体10を紙に漉き込み、表示体10に対応した位置で紙を開口させてもよい。ある胃は、基材として光透過性の材料を使用する場合、その内部に表示体10を埋め込んでもよく、基材の裏面、すなわち表示面とは反対側の面に表示体10を固定してもよい。
【0058】
表示体10は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体10は、玩具、学習教材又は装飾品等としても利用することができる。
【実施例】
【0059】
<実施例1>
以下のようにして、表示体10を製造した。
まず、厚さが150μmであるポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にインクジェットによるカラー画像の印刷を行なった。
次に、厚さが150μmであるPETフィルム上に、紫外線硬化樹脂を塗布し、この塗膜に頂角90度の三角プリズム構造が規則的に配列して切削されている金属金型を押し当てながら、PETフィルム側から紫外線を照射して紫外線硬化樹脂を硬化させ、回折光屈折領域を作製した。
その後、原版を取り除くことにより、三角プリズム構造の回折光屈折領域が配列している回折光屈折層を得た。
【0060】
そして、上記で製造したレンズシートを部分的に切り取り、前記カラー印刷画像の上面に接着層を介して貼着し、表示体を得た。
以下、この表示体を「表示体D1」とする。
【0061】
<実施例2>
頂角90度の三角プリズム構造が切削されている金属金型の代わりに、頂角90度の四角錘構造が規則的に配列して切削されている金属金型を使用したこと以外は表示体D1について述べたのと同様にして、頂角90度の四角錘構造を有する回折光屈折部が複数配列された回折光屈折層を備えた表示体を製造した。
そして、表示体D1について述べたのと同様に、製造したレンズシートを部分的に切り取り、カラー印刷画像層の上面に接着層を介して貼着し、表示体10を得た。
以下、この表示体を「表示体D2」と呼ぶ。
【0062】
<実施例3>
表示体D1と表示体D2について述べたのと同様にして製造した頂角90度の三角プリズム構造および頂角90度の四角錘構造を有するレンズシートを、それぞれ部分的に切り取り、カラー印刷画像層の上面に接着層を介して貼着し、表示体10を得た。
以下、この表示体を「表示体D3」と呼ぶ。
【0063】
以上のようにして製造した表示体D1乃至D3について、表示体10を照明する白色光源と表示体10を観察するカメラの位置との角度を20度に固定し、表示体に直交した法線方向を示す法線Nに対する白色光源の入射角度を変化させて観察した。
【0064】
この結果、表示体D1に関しては回折光屈折層の三角プリズム構造の側面方向から観察した場合に、白色光源の入射角度を表示体D1の法線Nに対して−55度及び55度(±2度)付近とした時には、三角プリズム構造の側面による照明光の反射が起こり、結果として白色が知覚された。
また、上記以外の角度においては、背面のカラー印刷画像の絵柄が知覚された。
【0065】
表示体D2に関しては、表示体10の法線Nを回転軸として、表示体を回転させて観察し、四角錘構造の各辺に直交した0、90、180、270度の方向から観察した場合に、白色光源の入射角度を表示体D2の法線Nに対して−55度及び55度(±2度)付近とした時には、四角錘構造の側面による照明光の反射が起こり、結果として白色が知覚された。
また、上記以外の角度においては、背面のカラー印刷画像の絵柄が知覚された。
【0066】
表示体D3に関しては、三角プリズム構造を有する回折光屈折部が複数配列された回折光屈折層の側面方向から観察した場合、白色光源の入射角度を表示体D3の法線Nに対して−55度及び55度(±2度)付近とした時に、頂角90度の三角プリズム構造および頂角120度の四角錘構造領域のみで、回折光屈折層の側面による照明光の反射が起こり、結果として白色が知覚された。このとき、非回折光屈折領域においては背面のカラー印刷画像の絵柄が知覚された。
また、表示体10の法線Nを回転軸として、表示体を回転させて観察し、三角プリズム構造を有する回折光屈折部が複数配列された回折光屈折層の側面と直交する角度から観察した場合に、白色光源の入射角度を表示体D3の法線Nに対して-55度及び55度(±2度)付近とした時には、四角錘構造を有する回折光屈折領域のみで、四角錘構造の側面による照明光の反射が起こり、結果として白色が知覚された。このとき、三角プリズム構造の回折光屈折領域および、非回折光屈折領域においては背面のカラー印刷画像の絵柄が知覚された。
また、上記以外の角度においては、背面のカラー印刷画像の絵柄が知覚された。
【符号の説明】
【0067】
10…表示体、11…画像表示層、11a…基材、11b…画像層、12…屈折層、14…屈折領域、14a…屈折部、15…屈折領域、15a…屈折部、16…屈折領域、16a…屈折部、17…平坦領域、20…表示体、21…接着層、24…屈折領域、24a…屈折部、30…印刷物、31…基材、32a…凹凸構造領域、33…印刷層、34…平坦領域、35…磁気記録層、44…屈折領域、44a…屈折部、54…屈折領域、54a…屈折部、D1…表示体、D2…表示体、D3…表示体、L1…照明光、N…法線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示層と、
前記画像表示層の表面の少なくとも一部に、屈折部が、互いに交差する第1及び第2方向に複数配列した屈折領域を複数備えた屈折層と
を具備し、
前記屈折領域の少なくとも一つの屈折領域における複数の屈折部が、他の屈折領域における複数の屈折部と比較して、屈折部の頂角又は曲率が異なることを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記表示体に直交する法線を回転軸として、特定の方向から表示体を観察した場合、前記屈折領域単位で射出された光の方向が異なることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記回折光屈折部が、三角プリズム構造又は四角錐構造又はレンチキュラーレンズ構造のうち少なくとも一つから選ばれた構造を有することを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の表示体。
【請求項4】
前記回折光屈折層の少なくとも一部に、平坦領域を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表示体。
【請求項5】
前記平坦領域が、前記回折光屈折領域の回折光屈折部をエネルギービーム照射によって少なくとも部分的に破壊して形成されることを特徴とする請求項4に記載の表示体。
【請求項6】
前記画像表示層は、少なくとも基材を有し、前記基材の一方の面に画像層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の表示体を物品に支持したことを特徴とする表示体付き物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−118138(P2011−118138A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275201(P2009−275201)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】