説明

表示体

【課題】部品点数の削減や省スペース化、薄型化、小型化を図ることができる表示体を提供する。
【解決手段】紫外光用の光源1に対向する基材層2の表面に記号5を必要な下地膜3を介して積層形成するとともに、この記号5を、太陽光である自然光、人工光、あるいは紫外光の照射に応じて顔料の彩色が変化する塗料組成物により形成し、記号5の表面に、耐汚染性を有する光透過性の保護層6を積層する。記号5の彩色が太陽光、人工光、あるいは紫外光の照射に応じて3色に変化するので、彩色に応じた複数の光源、例えば3種の光源を設置する必要がない。したがって、部品点数の削減や省スペース化、薄型化、小型化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車機器、各種の操作スイッチ、表示機器等に使用される表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の装置や機器には、所定の意味合いを示す様々な模様の形成されることがあるが、この模様の彩色を時間帯や状況等に応じて変化させたい場合がある。例えば、四輪自動車のメーターには、燃料やオイルの残量、シートベルト着用の有無等を表示する各種の記号が形成されるが、この記号の彩色を、昼間の運転時には青色、夜間の運転時には緑色、緊急時には赤色に変化させれば、ドライバーの視認の容易化に資することができる(特許文献1参照)。
【0003】
また、各種の施設、例えば工場や病院に設置される表示灯にも、所定の文字や記号が形成されるが、この文字や記号の彩色を通常時には白色あるいは緑色、緊急時には赤色に変化させれば、施設の利用者の注意を迅速に喚起することができる(特許文献2、3参照)。このような場合、自動車のメーターや表示灯には、文字や記号の彩色に応じた複数の光源が設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006‐264373号公報
【特許文献2】特開2008‐235904号公報
【特許文献3】特開2009‐47945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来における表示体は、以上のように構成され、文字や記号の彩色に応じた複数の光源を設置して発光させなければならないので、部品点数の削減や省スペース化、薄型化、小型化を図ることができないという問題がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、部品点数の削減や省スペース化、薄型化、小型化を図ることができる表示体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、基材層に模様を形成し、この模様を、自然光、人工光、あるいは紫外光の照射に応じて顔料の彩色が変化する塗料組成物により形成したことを特徴としている。
【0008】
なお、基材層に模様を下地膜を介して形成し、模様の表面に、耐汚染性を有する光透過性の保護層を形成することができる。
また、模様の一部に自然光あるいは人工光を照射し、模様の残部に紫外光を照射することができる。
また、塗料組成物を、溶剤に、皮膜形成樹脂、スペクトルの異なる光線で変色する顔料、必要な干渉顔料と添加剤とを添加して混合攪拌することにより調製することが可能である。
【0009】
また、塗料組成物を、溶剤に、皮膜形成樹脂、スペクトルの異なる光線で変色する顔料、着色顔料、反応性モノマー、必要な干渉顔料と添加剤とを添加して混合攪拌することで調製することも可能である。
また、塗料組成物の顔料を、少なくとも酸化物単結晶に蛍光体をドープした単結晶粉末により調製することも可能である。
【0010】
ここで、特許請求の範囲における基材層は、可撓性、屈曲性、弾性を有していても良いし、そうでなくても良い。また、模様は、必要に応じて単数複数が基材層に形成される。この模様には、少なくとも各種の文字、数字、図形、記号、あるいはこれらと色彩との組み合わせが含まれる。模様には、自然光、人工光、及び紫外光を順次照射しても良いし、自然光、人工光、又は紫外光を選択的に照射しても良い。例えば、模様に紫外光のみを照射しても良い。模様に対する自然光、人工光、あるいは紫外光の照射方向は、上下左右斜めのいずれの方向でも良い。
【0011】
人工光とは、人工的な光源、例えば電球、蛍光灯、フラッシュ、ハロゲンランプ、LED等が発する光をいう。紫外光の照射に際しては、紫外線用の光源(ブラックライトを含む)を好適に使用することができる。自然光の照射で変化する顔料の彩色と人工光の照射で変化する顔料の彩色とは、同一色でも良いし、そうでなくても良く、又視覚的に把握し難い彩色でも良い。さらに、本発明に係る表示体は、少なくとも家電機器、ゲーム機器、自動車機器、情報機器、各種の操作スイッチ、表示機器等に使用することが可能である。
【0012】
本発明によれば、表示体を使用する場合、基材層の模様に自然光が照射されるときには、模様の彩色が所定の彩色となり、模様に人工光が照射されるときには、模様の彩色が自然光照射のときと同じ彩色又は異なる彩色に変化する。また、基材層の模様に紫外光が照射されるときには、模様の彩色が自然光や人工光の照射のときと同じ彩色又は異なる彩色に変化する。
このように本発明によれば、簡易な構成で模様の彩色を昼夜、時間帯、状況等に応じて変化させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、部品点数の削減や省スペース化、薄型化、小型化を図ることができるという効果がある。
【0014】
また、基材層に模様を下地膜を介して形成し、模様の表面に、耐汚染性を有する光透過性の保護層を形成すれば、塗料組成物の発色性を向上させることができ、しかも、模様の長期使用に伴う汚染や損傷等を有効に防ぐことができる。
さらに、模様の一部に自然光あるいは人工光を照射し、模様の残部に紫外光を照射すれば、模様全体にメリハリを付けたり、模様に重量感や立体感等を醸し出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る表示体の実施形態における四輪自動車のメーターを模式的に示す正面説明図である。
【図2】本発明に係る表示体の実施形態を模式的に示す断面説明図である。
【図3】本発明に係る表示体の実施形態における記号に自然光あるいは人工光を照射した状態を模式的に示す正面説明図である。
【図4】本発明に係る表示体の実施形態における記号に紫外光を照射した状態を模式的に示す正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明すると、本実施形態における表示体は、図1ないし図4に示すように、紫外光用の光源1に対向する基材層2に模様4である記号5を下地膜3を介して形成するとともに、この記号5を、太陽光である自然光、人工光、あるいは紫外光の照射に応じて顔料の彩色が変化する塗料組成物により形成し、記号5に保護層6を積層しており、例えば四輪自動車のメーター10に使用される。
【0017】
光源1は、例えば小型高出力のLEDからなり、メーター10に内蔵されて基材層2の裏面に僅かな隙間を介して対向しており、昼夜にかかわりなく、自動車運転の緊急時に基材層2に向けて紫外光を照射する。
【0018】
基材層2は、紫外光を透過する光透過性を有する所定の材料を使用して薄いシートやフィルムに成形され、表面に白色の下地膜3が選択的に形成されており、メーター10の一部を形成する。この基材層2の材料としては、特に限定されるものではなく、例えばアクリル樹脂、ポリカーボネート、シリコーンゴム等があげられる。
【0019】
下地膜3は、塗料組成物の隠蔽力を考慮し、専用の塗料の塗布乾燥により積層形成され、塗料組成物の発色に資するよう機能するが、基材層2が淡彩色(白に近い薄い色彩)の場合には、省略することができる。
【0020】
記号5は、特に限定されるものではないが、本実施形態においては、例えば注意の意味合いを示す「!」の図柄に描かれる。この記号5は、塗料組成物を用いた形成により、例えば自動車の昼間の運転時(太陽光の照射時)にはピンク色、オレンジ色、緑色、青色、灰色に変化するとともに、夜間の運転時(人工光の照射時)にはピンク色、アイボリー、黄色、緑色に変化し、緊急時の紫外光用光源1の照射により緑色、赤色、青色に変化する。
【0021】
塗料組成物は、溶剤に、皮膜形成樹脂、スペクトルの異なる光線で変色する顔料、必要な干渉顔料と添加剤とを添加して混合攪拌することにより調製され、基材層2あるいは下地膜3の表面に塗布して常温乾燥、強制乾燥、焼付け乾燥されることで記号5を形成する。
【0022】
塗料組成物の溶剤としては、皮膜形成樹脂の種類や塗膜の形成方法により異なるが、溶解力等を考慮し、トルエン、キシレンを代表とする芳香族系炭化水素系溶剤、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、ブチルセルソルブ等のグリコールエーテル系溶剤、水等と単体及び混合溶剤として使用される。
【0023】
皮膜形成樹脂は、塗料の用途や基材層2の材質により異なるが、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂とに大別される。熱硬化性樹脂としては、アクリリ樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂等の溶剤型、又は水系樹脂が用いられる。架橋剤樹脂として、メラミン樹脂やベンソグアナミン樹脂等の尿素系樹脂、フロックイソシアネート樹脂を用いることができる。塗装設備により塗料の要求する加熱が不可能な場合等には、上記熱硬化性樹脂に対し、ポリイソシアネート樹脂、ソルビトール骨格のエポキシ化合物やアルコキシシリル化合物等の反応性化合物により個別に調合して多成型塗料とされる。
【0024】
熱可塑性樹脂としては、塗装の分野で常用されている塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化オレフイン樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル、塩化ビニデン及びこれらを重合したビニル樹脂、セルロース系樹脂、アセタール樹脂、アクリル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ゴム系樹脂があげられる。
【0025】
スペクトルの異なる光線で変色する顔料は、酸化物単結晶(例えば、NdAlO3等)に蛍光体(例えば、Eu23等)をドープした単結晶粉末からなる。また、必要な干渉顔料は、天然マイカパール、合成マイカパール等の真珠光沢顔料と、金属箔、金属粉、金属フレーク、ガラスフレーク、及びガラスビーズ等の光輝性粉体と、酸化チタンパール、無機顔料・金属酸化物による着色パール粉体、構造発色繊維等の虹彩顔料よりなる群から選択される1種又は2種以上を、塗料の組成物に対して0.1〜20質量部含有し、選択的に使用されて光線を偏光するよう機能する。
【0026】
添加剤は、表面調整剤、硬化促進剤、タレ防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、沈降防止剤等からなり、必要に応じて使用される。
【0027】
保護層6は、例えば耐候性、耐汚染性、耐摩擦性、光透過性を有する塗料、薄いシートやフィルムからなり、記号5の表面に塗布乾燥又は貼着されることで形成されてメーター10の表面側に位置し、記号5を被覆してこれを保護する。この保護層6用の塗料は、例えばアミノ基含有アクリル樹脂を用いたクリヤー塗料100質量部に対し、10〜60μmの酸化チタン被覆雲母粉を1質量部、溶剤混合物(キシレン40質量部、トルエン20質量部、酢酸ブチル40質量部の混合物)を5質量部、その他、塗膜形成副要素として添加剤(沈降防止剤)を10質量部配合することにより調製される。
【0028】
上記において、自動車を昼間運転する場合には、メーター10の記号5に外から太陽光が照射されるので、記号5の彩色がリラックス効果の青色となり、夜間運転する場合には、メーター10の記号5に車内の人工光、例えばイルミネーションパーツやメーター10の人工光が照射されるので、記号5の彩色が癒し効果の緑色に変化する。これらの彩色の変化により、ドライバーは、運転状況を容易に視認・認識し、一応の注意をしながら運転することができる。
【0029】
これに対し、自動車の運転中に緊急事態が生じた場合には、紫外光用光源1が発光して記号5に紫外光を照射するので、自律神経を活発化したり、行動を能動的にする赤色に記号5が変化し、ドライバーは状況が変化して緊急事態が生じたのを迅速に把握し、的確に対処することができる。
【0030】
上記構成によれば、記号5の彩色が太陽光、人工光、あるいは紫外光の照射に応じて3色に変化するので、彩色に応じた複数の光源、例えば3種の光源を設置する必要が全くない。したがって、意匠性やデザイン性の向上が期待できる他、部品点数の大幅な削減や著しい省スペース化、薄型化、小型化を図ることができる。
【0031】
なお、上記実施形態では記号5に太陽光、人工光、紫外光を単に照射して3色に変化させたが、何らこれに限定されるものではない。例えば、記号5の輪郭線を除く大部分の領域に太陽光あるいは人工光を照射して彩色を有彩色に変化させ、記号5の輪郭線に紫外光を照射して彩色を無彩色に変化させれば、記号5全体にメリハリを付けたり、記号5に重量感や立体感を醸し出すことができる。
【0032】
また、記号5を複数とし、この複数の記号5の一部に太陽光あるいは人工光を照射して彩色を有彩色に変化させ、複数の記号5の残部に紫外光を照射して彩色を他の有彩色に変化させれば、複数の記号5の彩色を効率的に変化させ、記号5に対する注意力や認識力を向上させることができる。
【0033】
また、模様4として文字を複数形成し、この複数の文字の一部に太陽光あるいは人工光を照射して視覚的に把握し難い目立たない彩色に変化させ、複数の文字の残部に紫外光を照射して彩色を視覚的に把握し易い彩色に変化させれば、複数の文字の残部を隠し文字として文字の顕現性を向上させることができる。
【0034】
また、模様4を複数としてその一部を通常塗料の塗布により形成するとともに、複数の模様4の残部を本発明に係る塗料組成物により形成し、これら通常塗料と塗料組成物との色調を略同一とし、複数の模様4の残部に所定の場合(例えば、災害の発生時)に紫外光のみを照射するようにすれば、所定の場合に複数の模様4の残部の彩色を変化させて見やすくし、複数の模様4の残部に関する顕現性を向上させることが可能となる。さらに、紫外光用の光源1の他に人工光用の光源を用意し、この人工光用の光源と基材層2とを対向させても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 光源
2 基材層
3 下地膜
4 模様
5 記号
6 保護層
10 メーター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層に模様を形成し、この模様を、自然光、人工光、あるいは紫外光の照射に応じて顔料の彩色が変化する塗料組成物により形成したことを特徴とする表示体。
【請求項2】
基材層に模様を下地膜を介して形成し、模様の表面に、耐汚染性を有する光透過性の保護層を形成した請求項1記載の表示体。
【請求項3】
模様の一部に自然光あるいは人工光を照射し、模様の残部に紫外光を照射するようにした請求項1又は2記載の表示体。
【請求項4】
塗料組成物の顔料を、少なくとも酸化物単結晶に蛍光体をドープした単結晶粉末により調製した請求項1、2、又は3記載の表示体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−53254(P2011−53254A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199400(P2009−199400)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】