説明

表示体

【課題】偏光フィルターでの真偽判定が可能である表示体を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の表示体10は、空間周波数2000本/mm乃至5000本/mmの周期構造を有する凹凸構造から構成される第1領域及び第2領域を具備し、かつ前記第1領域と前記第2領域との凹凸構造の成す角度がおおよそ90度である凹凸形成層4と、高分子材料の複屈折性の位相差層1とが向かい合う間に、少なくとも一部に脆性層2があることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止構造を備えた表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回折格子又はホログラムによって構成されるパターンは、通常の印刷技術では表現することのできない指向性のある光沢を有することから、装飾用途や偽造防止を目的としたセキュリティ商品に広く用いられている。
【0003】
回折格子技術は、他の偽造防止技術に比べ、
・判別用の機器類を使わずに真偽判定が容易にできる機能を有する目視判別(いわゆるオバート機能)。
【0004】
・製造には、高価で高度な技術(EB描画装置やナノインプリント技術等)が必要。
【0005】
・媒体の総厚が薄い。
【0006】
・回折光による独特の輝きがあり、意匠性に優れる。
【0007】
等の利点を有している。
【0008】
しかし、最近、各国の紙幣を偽造しようとする偽造団においては、従来の回折格子技術で製造されたものと近いものが作製できるようになってきた。
【0009】
そこで、回折格子の中でも高精細化したものが最近提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この特許文献1では、2次元の回折格子で、かつ通常の回折格子の2倍以上の細かさを有するものを提案している。この高精細な回折格子は通常のホログラム製造工程よりもはるかに難しく、ナノインプリントの技法を取り入れなければ達成できないものである。この高精細な回折格子の視認性特徴は、従来の回折格子とは全く異なり、正面方向(大部分の視域)では黒色を示し、対象物の水平方向に近い角度(法線方向に対し深い角度)で回折光が射出される。
【0010】
一方、一次元の波長以下の周期性の凹凸構造物は、偏光特性や位相差特性を有することが予想される。この凹凸構造物の偽造防止商品としての展開は、従来の回折格子のような肉眼での意匠性や真偽判定はできないが、偏光板及び位相差板を利用することで真偽判定の検証ができ、新しい商材となり得る可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−107470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、偏光フィルターでの真偽判定が可能な表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係る発明は、空間周波数2000本/mm乃至5000本/mmの周期構造を有する凹凸構造から構成される第1領域及び第2領域を具備し、かつ前記第1領域と第2領域との凹凸構造の成す角度はおおよそ90度である凹凸形成層と、高分子材料の複屈折性の位相差層とが向かい合う間に、少なくとも一部に脆性層が設けられていることを特徴とする表示体である。
【0014】
本発明の請求項2に係る発明は、前記位相差層が、可視光の少なくとも一部の範囲で約1/4波長の位相差値を持つことを特徴とする請求項1に記載の表示体である。
【0015】
本発明の請求項3に係る発明は、前記位相差層の光軸に対し、第1、第2の領域にそれぞれ+45度、−45度の方向で回折構造を形成したことを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の表示体である。
【0016】
本発明の請求項4に係る発明は、前記位相差層が液晶からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の表示体である。
【0017】
本発明の請求項5に係る発明は、前記位相差層が1軸延伸の樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の表示体である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、より高い偽造防止効果を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る表示体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1に示す表示体のIII−III線に沿った断面図。
【図4】図1に示す表示体の第1界面部及び第2界面部が回折光を射出する様子を概略的に示す図。
【図5】図1に示す表示体の第1界面部、第2界面部に採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図。
【図6】図1に示す表示体の第1界面部、第2界面部に採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る表示体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す表示体10のII−II線に沿った断面図であり、図3は、図1に示す表示体10のIII−III線に沿った断面図である。
【0022】
表示体10は、図2及び図3に示すように透明位相差層1及び脆性層2、金属反射層3、凹凸形成層4、基材5、粘着層6の積層体を含んでいる。金属反射層3と凹凸形成層4との界面は、第1領域DP1に対応する第1界面部12aと、第2領域DP2に対応する第2界面部12bとを含んでいる。後述するように、第1界面部12a及び第2界面部12bには、凹凸構造が設けられている。
【0023】
透明位相差層1の材料としては、ネマチック液晶があげられる。例えば、透明位相差層1を1/4波長板とした際、進相軸と、この進相軸に垂直な遅相軸とを有している。1/4波長板は、波長がλであり且つ偏光面(電場ベクトルの振動面)が進相軸に足して斜めの直線偏光を入射させると、偏光面が遅相軸に平行な第1直線偏光と、偏光面が進相軸に平行であり且つ第1直線偏光からλ/4だけ位相が進んだ第2直線偏光とを射出する。つまり、直線偏光の光が入射すると円偏光に変化し、円偏光の光が入射すると直線偏光に変化する。
【0024】
なお、1/4波長板とは、入射光線に1/4波長の位相差(波長板の射出面において速い方の成分に比べて遅いほうの成分が遅延する)を生じさせる機能を持った波長板であって、1/4波長板に、直線偏光化された入射光線がその振動方向が1/4波長板の光軸方向に対して、+45度の角度で入射したとき、射出光線は右回りの円偏光となり、入射光線の振動方向と1/4波長板の光軸方向とが−45度の角度をなすときは左回りの円偏光となる。
【0025】
入射する直線偏光の振動方向と、1/4波長板の光軸方向との角度が+45度または−45度以外の場合、射出する光線は楕円偏光となり、0度、90度の場合には、入射した直線偏光は、そのまま直線偏光として射出する。
【0026】
一方、位相差層は、ネマチック液晶のように透明で複屈折を有するものであれば良く、ポリマーフィルムでは1軸延伸された樹脂フィルムがよい。例えば、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、シクロオレフィンフィルム、ナイロンフィルム、セロファンフィルム、などが透明位相差層として使用可能である。
【0027】
脆性層2の材料としては、透明位相差層1又は金属反射層3との密着が、全面若しくは一部分で悪いことが求められる。しかし、故意にこの偽造防止媒体を剥がそうした際に剥がれるのが好ましく、製造工程では剥がれてはならない。つまり、脆性の調整は重要である。ここで、適当な材料としては、密着成分と非密着成分を複数混合して使用される。例えば、密着成分としては、 酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エポキシウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、ブチラール樹脂のいずれか又は複数の混合物である。一方、非密着成分としては、例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、シリカフィラー、シリコーンフィラー、ポリテトラフルオロエチレンフィラー、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、シリコーンオイルのいずれか又は複数の混合物が挙げられる。一般的に脆性層の材料は、密着成分10重量部に対し、非密着成分を1〜100重量部の割合で混ぜて使用する。
【0028】
金属反射層3としては、例えば、アルミニウム、銀、錫、クロム、ニッケル、銅、金及びそれらの合金などの金属材料からなる金属層を使用することができる。そして、真空製膜法を利用してこの金属薄膜を形成することができる。真空製膜法としては、真空蒸着法、スパッタリング法等が適用でき、厚みは、1〜100nm程度に制御できればよい。
【0029】
凹凸形成層4の材料としては、例えば、光透過性を有する樹脂を使用することができる。光透過性を有する樹脂として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネイト、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、ニトロセルロース、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリルスチレン共重合体、塩化ビニル、ポリメタクリル酸メチルなどの熱可塑性樹脂やポリイミド、ポリアミド、ポリエステルウレタン、アクリルウレタン、エポキシウレタン、シリコーン、エポキシ、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂、及び紫外線又は電子線硬化樹脂として、各種アクリルモノマー、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレートなどのオリゴマー、アクリル基やメタクリル基等を有するアクリルやエポキシ及びセルロース系樹脂などの反応性ポリマーが使用可能である。また、例えば、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を使用すると、原版を用いた転写により、一方の主面に凹凸構造が設けられた凹凸形成層4を容易に形成することができる。
【0030】
基材5の材料としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネイト、トリアセチルセルロース、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、アクリルスチレン共重合体、塩化ビニル等の樹脂シート及びフィルムがあげられる。
【0031】
粘着層6としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコン系粘着剤、ウレタン系粘着剤などがあげられる。
【0032】
図5、図6は、図1に示す表示体10の第1界面部12a、第2界面部12bに採用可能な構造の一例を拡大して示す斜視図である。
【0033】
第1界面部12a、第2界面部12bには、複数の溝14a、14b、…を配置してなるレリーフ型回折格子が設けられている。溝14a、14b、…の空間周波数は、2000本/mm乃至5000本/mmの範囲内にあり、より最適な範囲としては2500本/mm乃至3500本/mmの範囲内にある。
【0034】
なお、用語「回折格子」は、自然光などの照明光を照射することにより回折波を生じる構造を意味し、複数の溝14a、14b、…を平行且つ等間隔に配置する通常の回折格子に加え、ホログラムに記録された干渉縞も包含することとする。また、溝14a、14b、…又は溝14a、14b、…に挟まれた部分を「格子線」と呼ぶこととする。
【0035】
第1界面部12a及び第2界面部12bには前記の範囲内の空間周波数である回折格子が配置され、第1界面部12aと第2界面部12bの格子線の方向は異なって配置される。最適な格子線のなす角度はおおよそ90度である。
【0036】
また、この表示体10は、極めて特殊な視覚効果(偽造防止効果)を有している。それは、右円偏光又は左円偏光フィルターを通して表示体10を観察すると、第1界面部12a又は第2界面部12bではネガとポジの関係にあるが、故意に表示体10を剥がそうとした際には、剥がれやすい脆性層2から剥がれ、円偏光フィルターでの検証ができなくなるため、一度剥がした表示体かどうかが判断できる。一方、表層の位相差層が剥がされた表示体10は、直線偏光フィルターで検証可能である。この場合、凹凸形成層4には偏光分離能があるため、遠隔真贋(フィルターを表示体に接触させて観察でなく、表示体から離れた位置でフィルター越しに覗いて真贋判定すること)が可能である。
【0037】
一方、表示体10では、凹凸形成層4の構造による位相差及び位相差層による位相差の複合的光学効果が観測できる。例えば、凹凸形成層4が反射型1/2波長板として設計され、位相差層が1/4波長板であるならば、表示体10は、円偏光フィルターを接触させて観察することで真贋検証可能であり、仮に表示体10を剥がそうとした際は、脆性層から剥がれ、直線偏光フィルターを接触させ観察することで真贋検証可能である。
【0038】
したがって、この表示体10を偽造防止媒体として使用すると、高い偽造防止効果を実現することができる。
【0039】
この表示体10の視覚効果について、更に詳細に説明する。
まず、第1界面部12a及び第2界面部12bの凹凸構造に起因した視覚効果について説明する。
【0040】
回折格子を照明すると、回折格子は、入射光である照明光の進行方向に対して特定の方向に強い回折光を射出する。
【0041】
最も代表的な回折光は、1次回折光である。1次回折光の射出角βは、回折格子の格子線に垂直な面内で光が進行する場合、下記等式(1)から算出することができる。
【0042】
d=λ/(sinα−sinβ) ・・・(1)
この等式(1)において、dは回折格子の格子定数を表し、λは入射光及び回折光の波長を表している。また、αは、0次回折光,すなわち、透過光又は正反射光,の射出角を表している。換言すれば、αの絶対値は、照明光の入射角と等しく、入射角とはZ軸に対して対称な関係である(反射型回折格子の場合)。なお、α、βは、Z軸から時計回りの方向を正方向とする。
【0043】
上記等式(1)から明らかなように、1次回折光の射出角βは、波長λに応じて変化する。すなわち、回折格子は、分光器としての機能を有している。したがって、照明光が白色光である場合、回折格子の格子線に垂直な面内で観察角度を変化させると、観察者が知覚する色が変化する。
【0044】
また、或る観察条件のもとで観察者が知覚する色は、格子定数dに応じて変化する。
【0045】
一例として、回折格子は、その法線方向に1次回折光を射出するとする。すなわち、1次回折光の射出角βは、0度であるとする。そして、観察者は、この1次回折光を知覚するとする。このときの0次回折光の射出角をαとすると、等式(1)は、下記等式(2)へと簡略化することができる。
【0046】
d=λ/sinα ・・・(2)
上記等式(2)から明らかなように、観察者に特定の色を知覚させるには、その色に対応した波長λと照明光の入射角|α|と格子定数dとを、それらが等式(2)に示す関係を満足するように設定すればよい。例えば、波長が400nm乃至700nmの範囲内にある全ての光成分を含んだ白色光を照明光として使用し、照明光の入射角|α|を45度とする。そして、空間周波数(格子定数の逆数)が1000本/mm乃至1800本/mmの範囲内で分布している回折格子を使用するとする。この場合、回折格子をその法線方向から観察すると、空間周波数が約1600本/mmの部分は青く見え、空間周波数が約1100本/mmの部分は赤く見える。
【0047】
なお、回折格子は、空間周波数が小さい方が形成し易い。そのため、通常の表示体では、回折格子の大多数は、空間周波数が500本/mm乃至1600本/mmの回折格子である。
【0048】
このように、或る観察条件のもとで観察者が知覚する色は、回折格子の格子定数d(又は空間周波数)で制御することができる。そして、先の観察条件から観察角度を変化させると、観察者が知覚する色は変化する。
【0049】
上記の説明では、光が格子線に垂直な面内で進行することを仮定している。この状態から回折格子をその法線の周りで回転させると、一定の観察方向に対して、この回転角度に応じて格子定数dの実効値が変化する。その結果、観察者が知覚する色が変化する。逆に言えば、格子線の方位のみが異なる複数の回折格子を配置した場合、それら回折格子に異なる色を表示させることができる。また、回転角度が十分に大きくなると、一定の観察方向からは回折光が認識できなくなり、回折格子が無い場合と同様に見える。
【0050】
一方、本発明の場合、空間周波数が2000本/mm乃至5000本/mmの回折格子であり、特異的な性質があるので、図4に説明図を示した。
【0051】
図4は表示体10の第1界面部12a及び第2界面部12bが回折光を射出する様子を概略的に示したもので、21は凹凸構造体、22は凹凸構造体21に設けられたアルミ(アルミニウム)蒸着膜、23は表示体10への入射光、24は入射光23のTM偏光特性、25は正反射光(0次光)、26は正反射光25のTE偏光特性、27は回折光、28は法線である。
【0052】
上記表示体10について鋭意研究を重ねた結果、以下のようなことが分かってきた。
【0053】
まず、第1に凹凸形成層4が反射型直線偏光板としての作用する場合である。
【0054】
入射光23が、表示体10に入射した場合、射出する正反射光(0次光)25は、TE偏光特性を示す。これは、回折格子の周期が光の波長と同じかより小さい領域であるため、偏光特性が現れているのではないかと考えている。この偏光特性の性能は、回折格子の周期が光の波長が小さい方がより効果的に現れ、また、アスペクト比が0.5以上のときにより効果的である。
【0055】
また、第1界面部12a及び第2界面部12bを構成する回折格子の断面形状は、図5に示すようなサイン形状、さらに好ましくは図6に示すような三角形状が最適である。これは、反射しにくいTM偏光の光を凹凸構造体21の中に閉じ込める働きをするためであると推測している。断面形状が三角形状若しくはアスペクト比が大きくなるにしたがい、アルミニウム光沢が徐々に薄れて、黒色になっているのが実験で確認できている。表示体10が黒色になるにしたがい、正反射光25の偏光特性は強くなる。
【0056】
次に、この凹凸形成層4が反射型波長板としての作用する場合である。この位相差特性の性能は、やはり回折格子の周期が光の波長より小さい方がより効果的に現れ、また、アスペクト比が0.5未満のときにより顕著である。また、回折格子の断面形状は矩形でアルミ光沢がある方が好ましい。
【0057】
つまり、波長以下の周期性のある構造物の場合、構造深さが浅いうちは、反射型波長板として光学的作用が大きく、一定の深さ以上から反射型波長板と反射型直線偏光板の作用が混在し、さらに構造が深くなると反射型直線偏光板としての特性が大きく、反射型波長板としての効果が小さい傾向であることが分かってきた。
【0058】
ここで反射型直線偏光板とは、光が入射した際に、特定の振動方向の光のみを反射する偏光板のことを示している。このとき、吸収軸は格子の溝と垂直な方向である。光学効果は、鏡面上に直線偏光板を重ねたときと同じである。
【0059】
ここで、反射型波長板とは、入射光に対し、反射光が位相差を生じる反射板をさす。このときの遅相軸は格子の溝と平行な方向である。光学効果は、反射型1/2波長板は、鏡面上に1/4波長板を重ねたときと同じである。
【0060】
上述した表示体10は、例えば、偽造防止媒体としてシールラベル、スレッド、ストライプ転写箔、スポット転写箔などに使用することができる。表示体10は、構造が非常に細かく、偽造又は模造が困難であるため、この表示体10を物品に支持させた場合、偽造又は模造も困難である。また、この表示体10は上述した視覚効果を有しているため、真正品であるかが不明の物品を真正品と非真正品との間で判別することも容易である。
【0061】
以下、本発明を実施例により、更に詳しく説明する。
【実施例1】
【0062】
厚み25μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東レ(株)製 25T60)上に、
ネマチック液晶(BASF製パリオカラーLC242)30重量部、
重合開始剤(BASF製イルガキュア184)1.5重量部、
溶剤(メチルエチルケトン)68.5重量部、
からなるインキをグラビア印刷法でドライ膜厚1.0μmとなるように印刷し、100℃で1分間乾燥後、高圧水銀灯にて500mJ/cmで硬化させて1/4波長の位相差層1を形成した。
【0063】
次に脆性層2として、
ニトロセルロース(太平化学製品製 H1/8)20重量部、
アクリルウレタン樹脂(大成ファインケミカル8UA347)50重量部、
溶剤(メチルエチルケトン)30重量部、
からなるインキをグラビア法にて、ドライ1μm厚の脆性層を形成した。
【0064】
続いて、新中村化学(株)製アクリル系反応性ポリマーTP100をグラビア法で微細凹凸形成層をドライ3μm厚で形成した。
【0065】
続いて、空間周波数3000本/mmの回折格子構造を表示体10のように2箇所以上有し、アスペクト比(深さ/ピッチ)が1である光制御パターンが形成されているニッケル製スタンパーが装着されたシリンダーロールで熱圧エンボスすると同時に紫外線照射し硬化し、スタンパーから剥離して光制御フィルムを連続して得た。このときの版の格子方向は、1/4波長の位相差層1の遅相軸に対して+45度又は−45度を成す角度で設置させている。
【0066】
次いで、前記光制御パターン形成面へ真空蒸着法によって光反射層として厚さ500Åのアルミニウム蒸着層を形成させた。
【0067】
大成ファインケミカル製アクリルウレタン樹脂8UA347にビックケミー製ワックスBYK950を固形重量比5%、東洋インキ製造製イソシアネートUR100B、固形重量比5%をグラビア法にて、ドライ1μm厚の表面透明層を形成した。
【0068】
次いで、東洋モートン製感熱接着剤をグラビアコーターにて、厚さ約3μmで塗布した。
【0069】
このようにして得られた光制御転写箔フィルムをOCR用紙に重ね合わせ、加熱ローラで貼り合わせ後、二軸延伸ポリエステルフィルムを剥離して、偽造防止媒体を得た。
【0070】
この偽造防止媒体は、右円偏光板で観察した場合と左円偏光板で観察した場合とでは、ネガ画像とポジ画像が反転して確認できた。また、セロテープ(登録商標)で剥がそうと試みると、脆性層が剥がれたが外観上は変化ないように見えた。しかし、右円偏光板又は左円偏光板での観察では、画像の認識が困難になっていた。一方、直線偏光板での観察では、画像が確認でき、また、偏光板の角度を変化させるとネガ画像とポジ画像が反転した。
【実施例2】
【0071】
厚み12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製 E5202)上に、
アクリルポリオール(東洋インキ製造製 K448ワニス)100重量部、
イソシアネート(東洋インキ製造製 UR100B)6重量部、
からなるインキをグラビア印刷法でドライ膜厚1.0μmとなるように印刷し、凹凸形成層4を形成した。
【0072】
続いて、空間周波数3000本/mmの回折格子構造を表示体10のように2箇所以上有し、アスペクト比(深さ/ピッチ)が1である光制御パターンが形成されているニッケル製スタンパーが装着されたシリンダーロールで熱圧エンボスすることで光制御フィルムを連続して得た。このときの版の格子方向は、流れ方向に対し+45度又は−45度を成す角度で設置させている。
【0073】
次いで、前記光制御パターン形成面へ真空蒸着法によって光反射層として厚さ500Åのアルミニウム蒸着層を形成させた。
【0074】
次に脆性層2として
ニトロセルロース(太平化学製品製 H1/8)20重量部、
アクリルウレタン樹脂(大成ファインケミカル8UA347)50重量部、
溶剤(メチルエチルケトン)30重量部、
からなるインキをグラビア法にて、ドライ1μm厚の脆性層を形成した。
【0075】
次に下記のドライラミ接着剤をドライ膜厚3μm厚で塗布し、インラインで1/4波長位相差相当のセロファンフィルム(フタムラ化学PL)と貼り合わせした。
【0076】
ポリエステルウレタン(東洋モートン製 TM595)85重量部、
イソシアネート(東洋モートン製 AD-52)15重量部、
50℃6日、エージング後にポリエステルフィルム側に東洋モートン製粘着剤を10μm厚塗布し、離型フィルムと貼り合わせし、所定抜き型にて、抜き取り、偽造防止シールを得た。
【0077】
この偽造防止シールは、右円偏光板で観察した場合と左円偏光板で観察した場合とでは、ネガ画像とポジ画像が反転して確認できた。また、セロテープで剥がそうと試みると、脆性層2及び位相差層1が剥がれたが外観上は変化ないように見えた。しかし、右円偏光板又は左円偏光板での観察では、画像の認識が困難になっていた。一方、直線偏光板での観察では、画像が確認でき、また、偏光板の角度を変化させるとネガ画像とポジ画像が反転した。
【符号の説明】
【0078】
1…透明位相差層、2…脆性層、3…金属反射層、4…凹凸形成層、5…基材、6…粘着層、10…表示体、12a…第1界面部、12b…第2界面部、14a、14b…第1界面部及び第2界面部の溝、21…凹凸構造体、22…アルミ蒸着膜、23…入射光、24…TM偏光特性、25…正反射光(0次光)、26…TE偏光特性、27…回折光、28…法線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間周波数2000本/mm乃至5000本/mmの周期構造を有する凹凸構造から構成される第1領域及び第2領域を具備し、かつ前記第1領域と第2領域との凹凸構造の成す角度はおおよそ90度である凹凸形成層と、高分子材料の複屈折性の位相差層とが向かい合う間に、少なくとも一部に脆性層が設けられていることを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記位相差層が、可視光の少なくとも一部の範囲で約1/4波長の位相差値を持つことを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記位相差層の光軸に対し、第1、第2の領域にそれぞれ+45度、−45度の方向で回折構造を形成したことを特徴とする請求項1もしくは請求項2に記載の表示体。
【請求項4】
前記位相差層が液晶からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の表示体。
【請求項5】
前記位相差層が1軸延伸の樹脂フィルムからなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の表示体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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