説明

表示処理装置及び表示処理方法

【課題】視聴者の眼球を介した見え方に対応した画像を表示させる。
【解決手段】実施形態の表示処理装置は、視聴者を認証する認証手段と、視聴者ごとに、その視聴者の眼球における見え方を示す眼球特性を記録した眼球特性情報から認証された視聴者の眼球特性を取得する眼球特性取得手段と、認証された視聴者と、画像を表示する表示部との間の視聴距離を取得する視聴距離取得手段と、取得された視聴距離と、認証された視聴者の眼球特性とをもとに、表示部に表示する画像について、認証された視聴者が視聴距離で見た際に劣化する分を補償する画像を生成する画像生成手段と、生成された画像を表示させる表示制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示処理装置及び表示処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶テレビ等の表示装置おいては、視聴距離に基づいて表示する画像のピーキング周波数を切り替える表示処理を行うことで、視聴距離が変わることで生じる視覚特性の不整合をなくすものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−93699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、視聴者の眼球を介した見え方を示す眼球特性は、視聴者ごとに視力が異なるように個人差がある。しかしながら、上述した従来技術においては、視聴者ごとに異なる眼球特性が考慮されておらず、視聴者ごとの眼球特性の違いによる不整合をなくすことができなかった。例えば、標準的な視力の視聴者が適正な画像と感じる場合であっても、近視の視聴者にはボケて見える場合があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、視聴者の眼球を介した見え方に対応した画像を表示させることを可能とする表示処理装置及び表示処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の表示処理装置は、視聴者を認証する認証手段と、視聴者ごとに、当該視聴者の眼球における見え方を示す眼球特性を記録した眼球特性情報から前記認証された視聴者の眼球特性を取得する眼球特性取得手段と、前記認証された視聴者と、画像を表示する表示部との間の視聴距離を取得する視聴距離取得手段と、前記取得された視聴距離と、前記認証された視聴者の眼球特性とをもとに、前記表示部に表示する画像について、前記認証された視聴者が前記視聴距離で見た際に当該視聴者の眼球特性によって劣化する分を補償する画像を生成する画像生成手段と、前記生成さえれた画像を前記表示部に表示させる表示制御手段と、を備える。
【0007】
また、実施形態の表示処理方法は、表示処理装置の表示処理方法であって、視聴者を認証する認証ステップと、視聴者ごとに、当該視聴者の眼球における見え方を示す眼球特性を記録した眼球特性情報から前記認証された視聴者の眼球特性を取得する眼球特性取得ステップと、前記認証された視聴者と、画像を表示する表示部との間の視聴距離を取得する視聴距離取得ステップと、前記取得された視聴距離と、前記認証された視聴者の眼球特性とをもとに、前記表示部に表示する画像について、前記認証された視聴者が前記視聴距離で見た際に当該視聴者の眼球特性によって劣化する分を補償する画像を生成する画像生成ステップと、前記生成さえれた画像を前記表示部に表示させる表示制御ステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、実施形態にかかる表示処理装置の一例であるデジタルテレビジョン放送受信装置の正面図である。
【図2】図2は、デジタルテレビジョン放送受信装置のハードウエア構成を例示するブロック図である。
【図3】図3は、リモートコントローラの外観を示す平面図である。
【図4】図4は、視聴者の眼球特性の検査にかかるデジタルテレビジョン放送受信装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、視聴者の眼球特性の検査を例示する概念図である。
【図6】図6は、表示部への表示にかかるデジタルテレビジョン放送受信装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【図7】図7は、視聴者の見え方を例示する概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態の表示処理装置及び表示処理方法を詳細に説明する。なお、本実施形態では表示処理装置として一般的なデジタルテレビジョン放送受信装置を例示するが、液晶ディスプレイ等の表示部に画像を表示させる機器であれば、表示処理装置はハードディスクレコーダーやセットトップボックス等の機器であってもよいことは言うまでもないことである。
【0010】
図1は、実施形態にかかる表示処理装置の一例であるデジタルテレビジョン放送受信装置11の正面図である。なお、このデジタルテレビジョン放送受信装置11(デジタルテレビジョン11と称する)は、通常の平面視(2次元)表示用の映像信号に基づく映像表示を行なうだけでなく、立体視(3次元)表示用の映像信号に基づく映像表示を行うものであってもよい。
【0011】
図1に示すように、デジタルテレビジョン11の正面には、表示用の映像信号に基づく映像(画像)を表示する表示部21と、表示部21を視聴する視聴者を撮像するカメラ60を備える。
【0012】
図2は、デジタルテレビジョン11のハードウエア構成を例示するブロック図である。 図2に示すように、デジタルテレビジョン11は、アンテナ12で受信したデジタルテレビジョン放送信号を、入力端子13を介してチューナ部14に供給することにより、所望のチャンネルの放送信号を選局することが可能になっている。
【0013】
デジタルテレビジョン11は、チューナ部14で選局された放送信号を、復調復号部15に供給してデジタルの映像信号及び音声信号等に復元した後、信号処理部16に出力する。信号処理部16は、復調復号部15から供給されたデジタルの映像信号及び音声信号に対してそれぞれ所定のデジタル信号処理を施す。
【0014】
なお、信号処理部16が行なう所定のデジタル信号処理には、通常の平面視(2次元)表示用の映像信号を立体視(3次元)表示用の映像信号に変換する処理や、立体視表示用の映像信号を平面視表示用の映像信号に変換する処理等も含まれている。
【0015】
また、信号処理部16は、デジタルの映像信号を合成処理部17に出力し、デジタルの音声信号を音声処理部18に出力している。このうち、合成処理部17は、信号処理部16から供給されるデジタルの映像信号に、OSD(on screen display)信号生成部19で生成される字幕、GUI(Graphical User Interface)、OSDなどの重畳用映像信号であるOSD信号を重畳して出力している。
【0016】
デジタルテレビジョン11は、合成処理部17から出力したデジタルの映像信号を、画像処理部20に供給する。画像処理部20は、制御部23の制御のもと、入力されたデジタルの映像信号を、後段の、例えば液晶表示パネル等を有する平面型の表示部21で表示可能なフォーマットのアナログ映像信号に変換している。デジタルテレビジョン11は、画像処理部20から出力されたアナログ映像信号を、表示部21に供給して映像表示に供する。
【0017】
音声処理部18は、入力されたデジタルの音声信号を、後段のスピーカ22で再生可能なフォーマットのアナログ音声信号に変換している。そして、この音声処理部18から出力されたアナログ音声信号が、スピーカ22に供給されることにより音声再生に供される。
【0018】
ここで、デジタルテレビジョン11は、上記した各種の受信動作を含むその全ての動作を制御部23によって統括的に制御している。この制御部23は、CPU(central processing unit)23aを内蔵しており、デジタルテレビジョン11の本体に設置された操作部24からの操作情報を受けて、または、リモートコントローラ25から送出され受信部26で受信した操作情報を受けて、その操作内容が反映されるように各部をそれぞれ制御している。
【0019】
制御部23は、メモリ部23bを利用している。メモリ部23bは、主として、CPU23aが実行するプログラム111を格納したROM(Read Only Memory)と、該CPU23aに作業エリアを提供するためのRAM(Random Access Memory)と、視聴者情報112、眼球特性情報113等の各種の設定情報及び制御情報等が格納される不揮発性メモリとを有している。CPU23aは、プログラム111をRAMの作業エリアに展開して順次実行することで、視聴者認証部101、眼球特性取得部102、視聴距離取得部103、補償画像生成部104としての機能を提供する(詳細は後述する)。
【0020】
視聴者情報112は、デジタルテレビジョン11を利用する視聴者を予め登録した情報である。より具体的には、視聴者情報112は、視聴者を識別する視聴者IDごとに、カメラ60で撮像した視聴者の顔画像、視聴者の設定情報などを記録するデータファイルである。
【0021】
眼球特性情報113は、視聴者情報112に登録された視聴者ごとに、その視聴者の眼球における見え方を示す眼球特性を記録する。より具体的には、眼球特性情報113は、視聴者情報112における視聴者IDごとに、その視聴者IDが設定された視聴者の眼球特性を記録するデータファイルである。
【0022】
ここで、眼球特性情報113が記録する視聴者の眼球特性は、視聴者の眼球を介した画像の見え方、すなわち視聴者が視覚するボケ具合を数値化したものである。より具体的には、視聴者の視距離(視覚対象物との距離であり、視聴距離に相当)ごとの、視聴者の眼球による空間周波数特性であり、眼球における光学伝達関数に相当する。例えば、標準の視力の視聴者の眼球特性と、近視の視聴者との眼球特性を比較した場合、近距離では略同じボケ具合を示すのに対し、遠距離では近視の視聴者の眼球特性は強いボケ具合を示すこととなる。
【0023】
また、制御部23には、ディスクドライブ部27が接続されている。ディスクドライブ部27は、例えばDVD(Digital Versatile Disk)等の光ディスク28を着脱自在とするもので、装着された光ディスク28に対してデジタルデータの記録再生を行なう機能を有している。
【0024】
制御部23は、視聴者による操作部24やリモートコントローラ25の操作に基づいて、復調復号部15から得られるデジタルの映像信号及び音声信号を、記録再生処理部29によって暗号化し所定の記録フォーマットに変換した後、ディスクドライブ部27に供給して光ディスク28に記録させるように制御することができる。
【0025】
また、制御部23は、視聴者による操作部24やリモートコントローラ25の操作に基づいて、ディスクドライブ部27により光ディスク28からデジタルの映像信号及び音声信号を読み出させ、上記記録再生処理部29によって復号化した後、信号処理部16に供給することによって、以後、上記した映像表示及び音声再生に供させるように制御することができる。
【0026】
制御部23には、HDD(Hard Disk Drive)30が接続されている。制御部23は、視聴者による操作部24やリモートコントローラ25の操作に基づいて、復調復号部15から得られるデジタルの映像信号及び音声信号を、記録再生処理部29によって暗号化し所定の記録フォーマットに変換した後、HDD30に供給してハードディスク30aに記録させるように制御することができる。
【0027】
また、制御部23は、視聴者による操作部24やリモートコントローラ25の操作に基づいて、HDD30によりハードディスク30aからデジタルの映像信号及び音声信号を読み出させ、記録再生処理部29によって復号化した後、信号処理部16に供給することによって、以後、上記した映像表示及び音声再生に供させるように制御することができる。
【0028】
さらに、デジタルテレビジョン11には、入力端子31が接続されている。入力端子31は、デジタルテレビジョン11の外部からデジタルの映像信号及び音声信号を直接入力するためのものである。この入力端子31を介して入力されたデジタルの映像信号及び音声信号は、制御部23の制御に基づいて、記録再生処理部29を介した後、信号処理部16に供給されて、以後、上記した映像表示及び音声再生に供される。
【0029】
また、入力端子31を介して入力されたデジタルの映像信号及び音声信号は、制御部23の制御に基づいて、記録再生処理部29を介した後、ディスクドライブ部27による光ディスク28に対しての記録再生や、HDD30によるハードディスク30aに対しての記録再生に供される。
【0030】
なお、制御部23は、視聴者による操作部24やリモートコントローラ25の操作に基づいて、ディスクドライブ部27とHDD30との間で、光ディスク28に記録されているデジタルの映像信号及び音声信号をハードディスク30aに記録したり、ハードディスク30aに記録されているデジタルの映像信号及び音声信号を光ディスク28に記録したりすることも制御している。
【0031】
また、制御部23には、ネットワークインターフェース32が接続されている。このネットワークインターフェース32は、入出力端子33を介して外部のネットワーク34に接続されている。そして、このネットワーク34には、当該ネットワーク34を介した通信機能を利用して各種のサービスを提供するための複数(図示の場合は2つ)のネットワークサーバ35、36が接続されている。このため、制御部23は、ネットワークインターフェース32、入出力端子33及びネットワーク34を介して、所望のネットワークサーバ35、36にアクセスして情報通信を行なうことにより、そこで提供しているサービスを利用することができるようになっている。
【0032】
ここで、リモートコントローラ25の詳細について説明する。図3は、リモートコントローラ25の外観を示す平面図である。図3に示すように、リモートコントローラ25には、主として、電源キー25a、2次元/3次元変換キー25b、数字キー25c、チャンネルアップダウンキー25d、音量調整キー25e、カーソル上キー25f、カーソル下キー25g、カーソル左キー25h、カーソル右キー25i、決定キー25j、メニューキー25k、戻るキー25l、終了キー25m、4色(青,赤,緑,黄)のカラーキー25n等が設けられている。
【0033】
また、リモートコントローラ25には、再生停止キー25o、再生/一時停止キー25p、逆方向スキップキー25q、順方向スキップキー25r、早戻しキー25s、早送りキー25t等が設けられている。
【0034】
すなわち、デジタルテレビジョン11は、ディスクドライブ部27やHDD30から取得した映像や音声等の情報に対しては、リモートコントローラ25の再生停止キー25oや再生/一時停止キー25pを操作することにより、再生、停止、一時停止を行なうことが可能となる。また、デジタルテレビジョン11は、リモートコントローラ25の逆方向スキップキー25qや順方向スキップキー25rを操作することにより、ディスクドライブ部27やHDD30で再生している映像や音声等の情報を、その再生方向に対して逆方向や順方向に一定量ずつスキップさせる、いわゆる、逆方向スキップや順方向スキップを行なうことができる。また、デジタルテレビジョン11は、リモートコントローラ25の早戻しキー25sや早送りキー25t等を操作することにより、ディスクドライブ部27やHDD30で再生している映像や音声等の情報を、その再生方向に対して逆方向や順方向に連続的に高速で再生させる、いわゆる、早戻し再生や早送り再生を行なうことができる。また、デジタルテレビジョン11は、リモートコントローラ25のカーソル上キー25f、カーソル下キー25g、カーソル左キー25h、カーソル右キー25i、決定キー25j等を操作することで、例えば視聴者が眼球特性を検査する際の視聴者からの指示を受け付ける。
【0035】
図2に戻り、CPU23aが実現する視聴者認証部101、眼球特性取得部102、視聴距離取得部103、補償画像生成部104の詳細を説明する。
【0036】
視聴者認証部101は、デジタルテレビジョン11を利用する視聴者を認証する。具体的には、視聴者認証部101は、操作部24やリモートコントローラ25等の操作によって入力された視聴者IDや、カメラ60で撮像された視聴者の顔画像をもとに、視聴者情報112に記録されている情報とマッチする視聴者を、デジタルテレビジョン11を利用する視聴者として認証する。このように、カメラ60で撮像された視聴者の顔画像と視聴者情報112に記録された顔画像との比較による顔認証を行うことで、視聴者IDの入力を行う場合と比較して、視聴者の認証を簡易に行なうことができる。
【0037】
眼球特性取得部102は、視聴者認証部101により認証された視聴者の眼球特性を、視聴者ごとに、その視聴者の眼球における見え方を示す眼球特性を記録した眼球特性情報113から取得する。また、眼球特性取得部102は、視聴距離ごとに、その視聴距離における視聴者の眼球による空間周波数特性を計測するための画像を表示部21に表示させ、その画像の表示に応じて視聴者からリモートコントローラ25を介して受け付けられた操作をもとに、視聴者の眼球特性を取得してもよい。
【0038】
図4は、視聴者の眼球特性の検査にかかるデジタルテレビジョン11の動作の一例を示すフローチャートである。図4に示すように、眼球特性取得部102は、視聴者認証部101により視聴者の認証が行われた後(S1)、視聴者を検査に必要な視聴距離に向かわせるため、検査を行う視聴距離を表示部21に表示させて、検査のための視聴距離を案内する(S2)。
【0039】
次いで、眼球特性取得部102は、眼球特性を検査するためのチャート画像を表示部21に表示させ(S3)、リモートコントローラ25による視聴者からの操作を受け付ける(S4)。より具体的には、S3において一定間隔で所定の輝度値の縦縞及び横縞のチャート画像を表示部21に表示させ、S4においてそのチャート画像が見えるか否かの操作をリモートコントローラ25より受け付ける。
【0040】
図5は、視聴者の眼球特性の検査を例示する概念図である。図5に示すように、表示部21にチャート画像G1(図示例では縦縞)を表示させ、表示部21より視聴距離d離れた視聴者Hより「見える」又は「見えない」の操作を受け付ける。
【0041】
眼球特性取得部102は、この縦縞及び横縞のチャート画像の間隔及び輝度値を順次変更してS3、S4を繰り返して行い、視聴者が見えなくなる間隔及び輝度値の縦縞及び横縞のチャート画像を特定する。すなわち、眼球特性取得部102は、視聴者の眼球による2次元の空間周波数特性である、視聴者の眼球特性を取得する(S5)。
【0042】
眼球特性取得部102は、上述したS2〜S5の処理を、検査を行う視聴距離ごと(例えば1.5m、2m、3m、5m)に行い、視聴距離ごとに取得した眼球特性を、認証された視聴者の視聴者IDを付して眼球特性情報113に記録する(S6)。
【0043】
図2に戻り、視聴距離取得部103は、視聴者認証部101により認証された視聴者と、表示部21との間の視聴距離を取得する。より具体的には、視聴距離取得部103は、リモートコントローラ25を介した視聴者による視聴距離の入力操作や、カメラ60で撮像された視聴者の像をもとに視聴距離を算出して、視聴距離を取得する。ここで、カメラ60で撮像された視聴者の像による視聴距離の算出は、撮像された画像に占める視聴者の像の割合や、予め長さが定められたリモートコントローラ25などの像と、視聴者の像との比較を元に行う。このように、視聴距離取得部103は、カメラ60で撮像された視聴者の像をもとに視聴距離を取得することで、視聴距離の入力操作などの煩雑な操作を視聴者が行うことなく、簡易に視聴距離を取得できる。
【0044】
補償画像生成部104は、視聴距離取得部103により取得された視聴距離と、視聴者認証部101により認証された視聴者の眼球特性とをもとに、表示部21に表示する画像について、認証された視聴者の視聴距離で見た際に、その視聴者の眼球特性によって劣化する分を補償する画像を生成する。具体的には、補償画像生成部104は、画像処理部20において行われる画像処理のフィルタ係数などを制御して、視聴者の眼球特性によって劣化する分を補償する画像を画像処理部20の画像処理で生成させ、生成させた画像を表示部21に表示させる。
【0045】
ここで、視聴者の眼球特性によって劣化する分を補償する画像とは、視聴者の眼球による空間周波数特性をもとに、表示部21に表示された画像を視聴者が視聴距離で見た際に、その視聴者が視覚する画像を逆算し、実際に表示される画像から視聴者が視覚する画像の劣化分を補償するように、空間周波数特性を補った画像である。例えば、認証された視聴者が近視である場合は、標準の視力の視聴者でボケが生じない視聴距離であったとしてもボケて見えることがある。このボケて見える視聴距離にいる場合は、視聴者の眼球による空間周波数特性に従って、近視の視聴者向けに高周波帯域を強く強調した画像を生成する。ただし、視聴距離が短い場合は、近視の視聴者でもボケは生じないことから、視聴者の眼球による空間周波数特性に従って、高周波帯域を強調することを弱める、又は強調しない画像を生成する。
【0046】
ここで、具体的な逆算方法について説明する。次の式(1)は、視聴者の網膜に結像されるボケた画像(iblurre)と、表示部21に表示された画像(idisplay)との関係を示す。
【0047】
【数1】

【0048】
視聴者の眼球特性が視聴者の眼球による空間周波数特性であり、眼球における光学伝達関数に相当することから、式(1)に示すように、視聴者が視覚する画像であり、視聴者の網膜に結像される画像(iblurre)は、表示部21に表示された画像(idisplay)とインパルス応答(空間周波数特性(a))の重ね合わせで表現できる。
【0049】
このことは、次の式(2)に示すとおり、フーリエ空間では積の関係となる。
【0050】
【数2】

【0051】
したがって、次の式(3)に示すように逆算することで、実際に表示される画像から視聴者が視覚する画像の劣化分を補償する画像(icompensation)を算出できる。
【0052】
【数3】

【0053】
図6は、表示部21への表示にかかるデジタルテレビジョン11の動作の一例を示すフローチャートである。図6に示すように、眼球特性取得部102は、視聴者認証部101により視聴者の認証が行われた後(S11)、認証された視聴者の眼球特性を眼球特性情報113より読み出して取得する(S12)。
【0054】
次いで、視聴距離取得部103は、表示部21のディスプレイから視聴者までの視聴距離を取得する(S13)。次いで、補償画像生成部104は、取得した視聴距離に対応した眼球特性を算出する(S14)。具体的には、補償画像生成部104は、認証された視聴者における視聴距離ごと(例えば1.5m、2m、3m、5m等)の眼球特性について、取得した視聴距離に該当する眼球特性の値を線形近似などで算出する。
【0055】
次いで、補償画像生成部104は、算出された眼球特性をもとに上述した逆算式に当て嵌めることで、ボケを補償する画像を画像処理部20に生成させる(S15)。次いで、デジタルテレビジョン11は、画像処理部20で生成した画像の表示部21への表示を行わせる(S16)。
【0056】
図7は、視聴者Hの見え方を例示する概念図である。図7に示す元画像G10は、画像処理部20に入力される画像であり、チューナ部14で受信した画像、光ディスク28より読み出した画像、ネットワークサーバ35、36より提供された画像などである。デジタルテレビジョン11では、この元画像G10に対して、上述したボケを補償する画像処理が画像処理部20で行われる。したがって、表示部21には、視聴者Hが視聴距離dで見た際に視聴者Hの眼球特性によって劣化する補償した表示画像G20が表示されることから、視聴者Hは、元画像G10に近い視覚画像G30を認識できる。すなわち、デジタルテレビジョン11では、視聴者Hにより眼球特性が異なる場合であっても、元画像G10と視覚画像G30との整合性を保つことができる。
【0057】
なお、上述した実施形態では、一人の視聴者を認証し、その認証された視聴者の眼球特性に応じて、ボケを補償する画像処理を行う場合を例示した。しかしながら、認証する視聴者は一人に限定するものではない。例えば、視聴者認証部101は複数の視聴者を認証してよい。
【0058】
視聴者認証部101により複数の視聴者を認証した場合、補償画像生成部104は、各視聴者について、上述した逆算式により得られるボケを補償する画像の効果係数を計算し、すべての視聴者にわたる効果係数が最大となる、全体最適化する画像を視聴者全員のボケを補償する画像として画像処理部20に生成させる。具体的には、一人の視聴者について、上述した逆算式により得られるボケを補償する画像でのプラス効果を示す数値と、その画像を表示した場合の他の視聴者のマイナス効果を示す数値とを演算して、その視聴者についての効果係数を計算する。次いで、すべての視聴者についての効果係数を演算したところで、もっとも効果係数の大きい画像を全体最適化する画像とする。
【0059】
なお、本実施形態のデジタルテレビジョン11で実行されるプログラム111は、ROM等に予め組み込まれて提供される。本実施形態のデジタルテレビジョン11で実行されるプログラム111は、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0060】
さらに、本実施形態のデジタルテレビジョン11で実行されるプログラム111を、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施形態のデジタルテレビジョン11で実行されるプログラム111をインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0061】
本実施形態のデジタルテレビジョン11で実行されるプログラム111は、上述した各部(視聴者認証部101、眼球特性取得部102、視聴距離取得部103、補償画像生成部104)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)23aが上記ROMからプログラム111を読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0062】
なお、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【符号の説明】
【0063】
11…デジタルテレビジョン、12…アンテナ、13…入力端子、14…チューナ部、15…復調復号部、16…信号処理部、17…合成処理部、18…音声処理部、19…OSD信号生成部、20…画像処理部、21…表示部、22…スピーカ、23…制御部、23a…CPU、23b…メモリ部、24…操作部、25…リモートコントローラ、26…受信部、27…ディスクドライブ部、28…光ディスク、29…記録再生処理部、30…HDD、30a…ハードディスク、31…入力端子、32…ネットワークインターフェース、33…入出力端子、34…ネットワーク、35、36…ネットワークサーバ、60…カメラ、101…視聴者認証部、102…眼球特性取得部、103…視聴距離取得部、104…補償画像生成部、111…プログラム、112…視聴者情報、113…眼球特性情報、d…視聴距離、G1…チャート画像、G10…元画像、G20…表示画像、G30…視覚画像、H…視聴者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視聴者を認証する認証手段と、
視聴者ごとに、当該視聴者の眼球における見え方を示す眼球特性を記録した眼球特性情報から前記認証された視聴者の眼球特性を取得する眼球特性取得手段と、
前記認証された視聴者と、画像を表示する表示部との間の視聴距離を取得する視聴距離取得手段と、
前記取得された視聴距離と、前記認証された視聴者の眼球特性とをもとに、前記表示部に表示する画像について、前記認証された視聴者が前記視聴距離で見た際に当該視聴者の眼球特性によって劣化する分を補償する画像を生成する画像生成手段と、
前記生成された画像を前記表示部に表示させる表示制御手段と、
を備える表示処理装置。
【請求項2】
前記眼球特性は、前記視聴者の眼球による空間周波数特性であり、
前記眼球特性情報は、前記視聴者の眼球による空間周波数特性を視聴距離ごとに記録し、
前記画像生成手段は、前記取得された視聴距離に対応した前記視聴者の眼球による空間周波数特性をもとに、前記表示部に表示する画像から前記視聴者が視覚する画像を逆算して、前記視聴者の眼球特性によって劣化する分を補償する画像を生成する、
請求項1に記載の表示処理装置。
【請求項3】
前記視聴者からの操作を受け付ける操作手段を更に備え、
前記眼球特性取得手段は、視聴距離ごとに当該視聴距離における前記視聴者の眼球による空間周波数特性を計測するための画像を前記表示部に表示させ、当該画像の表示に応じて前記視聴者から受け付けられた操作をもとに、前記視聴者の眼球特性を取得する、
請求項2に記載の表示処理装置。
【請求項4】
前記表示部から前記視聴者を撮像するカメラを更に備え、
前記視聴距離取得手段は、前記カメラで撮像された前記視聴者の像をもとに前記視聴距離を取得する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表示処理装置。
【請求項5】
前記表示部から前記視聴者を撮像するカメラを更に備え、
前記認証手段は、前記カメラで撮像された前記視聴者の顔画像をもとに、視聴者ごとに、当該視聴者の顔画像を記録した視聴者情報を参照して前記認証を行う、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の表示処理装置。
【請求項6】
前記画像生成手段は、前記認証手段により複数の視聴者が認証された場合、眼球特性によって劣化する分を補償する効果係数を、認証されたすべての視聴者にわたって演算した際に最大とする画像を生成する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の表示処理装置。
【請求項7】
表示処理装置の表示処理方法であって、
視聴者を認証する認証ステップと、
視聴者ごとに、当該視聴者の眼球における見え方を示す眼球特性を記録した眼球特性情報から前記認証された視聴者の眼球特性を取得する眼球特性取得ステップと、
前記認証された視聴者と、画像を表示する表示部との間の視聴距離を取得する視聴距離取得ステップと、
前記取得された視聴距離と、前記認証された視聴者の眼球特性とをもとに、前記表示部に表示する画像について、前記認証された視聴者が前記視聴距離で見た際に当該視聴者の眼球特性によって劣化する分を補償する画像を生成する画像生成ステップと、
前記生成された画像を前記表示部に表示させる表示制御ステップと、
を含む表示処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104937(P2013−104937A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247107(P2011−247107)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】