説明

表示器付き磁気カード

【目的】 磁気記録内容に応じた文字,数字等をより鮮明に表示できる表示器付きの磁気カードを提供する。
【構成】 磁性体層における磁性粉末20を、書込み用の磁気ヘッド21の摺動方向に対し傾けて磁気配向する。これにより、書込み後の微小磁石のN極とN極の隣接部22と、S極とS極の隣接部23が四角形を形成、すなわちドットを形成し、磁性体層の記録内容に応じた文字,数字等がより鮮明に表示される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、磁性体層に記録されているデータを目視できる表示器を備えた磁気カード(以下“表示器付き磁気カード”という)に関するものである。
【0002】
【関連技術】前述のような表示器付き磁気カードは、使用者がカードリーダを用いることなく、磁気記録内容を目視確認できるので、ポイントカード,プリペイドカードに好適であり、既に実用化されている。
【0003】図3は、本出願人の出願にかかる特願平6−286670号に開示の表示器付き磁気カードの構成を示す図であり、(a)は平面図、(b)は(a)の矢印Aの向きから見た断面図である。
【0004】図3において、5はポリ塩化ビニール製のカードの基材であり、その開口部に後述の構成の表示媒体(請求項の表示器に対応する)2が嵌め込まれている。3は表示媒体2で表示される可視像である。この表示媒体2が嵌め込まれた基材5の両面には透明塩化ビニール製の保護材4,6が接着されている。なお、基材5の表面には予め所要の印刷が行われており、表示媒体2部分は外部から透明窓部9のように見える。7は不図示の記録トラックを有する磁気ストライプであり、不図示のカードライタにより所要のデータが書き込まれる。
【0005】前記表示媒体2は、マイクロカプセルを多数、合成樹脂内に分散させたものを、磁性体層8上に配置し、これらを板状に形成したものである。マイクロカプセル内には、液体と、この液体中に浮遊しかつ磁場に感応する磁性粒子とが封入されている。このマイクロカプセルを有する表示器は、たとえば特開平5−16578号公報等に詳しく説明されている。
【0006】この表示媒体2の動作原理を図4〜図7の模式図により説明する。磁性体層8は、多数の微小磁石の集まりと考えることができる。不図示のカードリーダライタの磁気ヘッドを磁気カード1の保護材6側に接触させ、磁気ストライプ7の磁気トラックからデータを読み取り、演算を行い、その結果を磁気トラックに書き込む。この際に、残高等の所要のデータを磁性体層8に書き込む。この書込みは、図4に示すように予め磁気ヘッドの摺動方向に一様に磁化した磁性体層8を図5に示すように、磁気ヘッドにより部分的に反転磁化することにより行われる。これにより所要のデータに応じたパターンに微小磁石10の磁化方向が変わる。このとき図6に示すように、微小磁石10のN極とN極の隣接部12からS極とS極の隣接部11にかけて漏れ磁束13が出ており、マイクロカプセル内の磁性粒子14は隣接部11,12に引き付けられる。
【0007】透明窓部9から入射した光は、前述の磁性粒子14の配置に応じて反射し、前記パターンが透明窓部9から目視確認できる。磁性粒子14の配置は、磁性体層8の抗磁力により維持されているので、カードのユーザは何時でも透明窓部9から残高等の所要のデータ(通常は数字)を目視確認できる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前述の書込みでは、磁気ヘッドによる1回の反転磁化によって、図5に示すように、S極とS極の隣接部11、N極とN極の隣接部12ができ、2本の線が表示される。
【0009】よって、たとえば7トラックの磁性体層8で数字を表示すると、図7のように表示される。図7は数字の零を表示した例である。
【0010】このように、現行の方式では線の集合で文字,数字を表示しているので、必ずしも鮮明とはいえないという問題がある。
【0011】本発明は、このような状況のもとでなされたもので、磁気記録内容に応じた文字,数字等をより鮮明に表示できる表示器付きの磁気カードを提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため、本発明では、磁性体層における磁性粉末の磁気配向方向を、磁気ヘッドの摺動方向に対し傾けている。
【0013】すなわち、表示器付き磁気カードを次の(1)のとおりに構成するものである。
【0014】(1)磁性体層上に磁性粒子を移動自在に配置し、前記磁性体層の磁気による前記磁性粒子の配置状態を視るようにした表示器を備えた表示器付き磁気カードであって、前記磁性体層における磁性粉末の磁気配向方向を、前記磁性体層にデータを書き込む磁気ヘッドの摺動方向に対し傾けた表示器付き磁気カード。
【0015】
【実施例】以下本発明を実施例により詳しく説明する。
【0016】実施例の“表示器付き磁気カード”の全体構成は、図3に示す関連技術例の構成と同様であり、説明は省略する。関連技術例と本実施例との相違点は、磁性体層8における磁性粉末の磁気配向方向にある。
【0017】すなわち、関連技術例では、図5に示すように、磁気ヘッド14の摺動方向Bに対し磁性粉末10は同一方向に配向されているに対し、本実施例では、図1R>1に示すように、磁気ヘッド21の摺動方向Bに対し磁性粉末20は45°傾けて配向されている。
【0018】このため、本実施例では磁気ヘッド21による1回の反転磁化により、図1に示すように、微小磁石のN極とN極の隣接部22と、S極とS極の隣接部23が上下左右に形成され、四角形すなわちドットが表示される。
【0019】本実施例により、たとえば7トラックの磁性体層8で数字の零を表示すると、図2のように表示される。このように、本実施例によれば、文字,数字等がドット24の集合で表示されるので、文字,数字等をより鮮明に表示することができる。
【0020】磁性体層8は、表示媒体2の基体に、磁気粉末をバインダで溶いた磁性塗料を塗布して形成する。その際、磁性塗料が固まる前に、静磁界をかけて磁性粉末の磁化容易軸を磁界の方向に整列させ、所望の磁気配向を得る。なおこの種の磁性体層に用いる磁気粉末の形状は針状で、その長軸方向が磁化容易軸であり、短軸方向が磁化困難軸である。
【0021】(変形)実施例では、表示媒体の基体の一面に磁性体層を設けているが、本発明はこれに限らず、表示媒体の基体の一面およびこの面に対向する磁気カードの表面に磁性体層を設ける形、あるいは表示媒体の基体の一面に設けることなく、磁気カードの表面のみに設ける形で実施することができる。
【0022】また、実施例では、磁性粒子を封入したマイクロカプセルを用いているが、本発明はこれに限らず、たとえば適当に区切られた空間に磁性粒子を移動自在に封入する形で実施することができる。
【0023】請求項の「磁性体層上に磁性粒子を移動自在に配置し」という表現は、これらの変形の構成をも含む意味で用いている。
【0024】また、実施例では、磁気配向を磁気ヘッドの摺動方向に対し45°傾けているが、これに限らず適宜の角度傾ける形で実施することができる。磁気ヘッドのギャップの方向は、摺動方向に直交する方向に限らず、たとえば、磁気配向方向に直交する方向とする形で実施することができる。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、表示器において、文字,数字等がドットで表示でき、文字,数字等をより鮮明に表示することができる表示器付きの磁気カードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の表示原理を示す模式図
【図2】 実施例の説明図
【図3】 関連技術例の構成を示す図
【図4】 関連技術例における磁性体層の書込み前の状態を示す模式図
【図5】 関連技術例における磁性体層の書込み後の状態を示す模式図
【図6】 関連技術例における表示媒体の動作原理を示す模式図
【図7】 関連技術例の説明図
【符号の説明】
20 磁性粒子
22 N極とN極の隣接部
23 S極とS極の隣接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁性体層上に磁性粒子を移動自在に配置し、前記磁性体層の磁気による前記磁性粒子の配置状態を視るようにした表示器を備えた表示器付き磁気カードであって、前記磁性体層における磁性粉末の磁気配向方向を、前記磁性体層にデータを書き込む磁気ヘッドの摺動方向に対し傾けたことを特徴とする表示器付き磁気カード。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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