説明

表示回路の故障診断装置

【課題】様々な種類の故障について故障の種類を特定することが可能な表示回路の故障診断装置を提供する。
【解決手段】表示素子22の実際の印加電圧を検出する印加電圧検出部11と、前記表示素子の点灯/消灯状態のそれぞれについて電圧の正常範囲の上限および下限の閾値を保持すると共に、複数の故障モードの各範囲の上限および下限の閾値を保持する閾値情報保持部40と、前記表示素子の点灯/消灯を決定するドライバ駆動状態と、検出した電圧値と、前記閾値情報保持部の閾値とに基づいて正常か否かを識別すると共に、正常でない場合は、ドライバ駆動状態と、検出した電圧値と、前記閾値情報保持部の閾値とに基づき故障モードの種別を識別する診断制御部10とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示素子と所定の表示指示信号に従って前記表示素子への電圧印加のオンオフを切り替えるドライバとを有する表示回路の故障診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用の計器板ユニットには、各種のインジケータやウォーニングの表示を行うために、1つ又は複数の表示素子を有する表示回路が組み込まれている。表示素子の代表例としては、発光ダイオード(LED)が用いられる場合が多い。例えば、ウォーニングの表示が必要な時に該当する表示素子に所定の電圧を印加し、この表示素子を点灯状態に切り替える。また、ウォーニングの表示が不要な時には該当する表示素子への電圧印加を解除し、この表示素子を消灯状態に切り替える。また、このような表示回路には、表示素子への電圧印加のオンオフを切り替えるためにトランジスタ等で構成されるドライバが備わっている場合が多い。
【0003】
ところで、上記のような表示回路には故障が発生する場合がある。例えば、表示素子自体が断線したり回路に短絡が生じると、ドライバに印加する制御信号を切り替えても、表示素子に所定の電圧が印加されない状態になる。つまり、ドライバに印加する制御信号をオン(点灯)状態に切り替えても、表示素子が消灯のまま変化しなくなったり、ドライバに印加する制御信号をオフ(消灯)状態に切り替えても、表示素子が点灯のまま変化しなくなる場合がある。また、ドライバが故障する場合もある。
【0004】
上記のような表示回路の故障については、人間が目視で確認するのは非常に面倒である。従って、従来より表示回路等における故障の有無を自己診断するための技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、LED表示灯の故障診断回路の技術が開示されている。特許文献1においては、LED表示灯に電圧を印加する時(点灯する時)に、実際に印加される電圧を検出し、この電圧を2つのアナログ比較器で2つの閾値と比較している。すなわち、検出した電圧が下限閾値と上限閾値との間にあれば正常とみなし、下限閾値よりも電圧が低い場合は断線の故障とみなし、上限閾値よりも電圧が高い場合は短絡の故障とみなすように制御している。
【0006】
また、特許文献2には電気モータを駆動する回路における故障診断の技術が開示されている。特許文献2においては、モータに電力を供給する経路を切り替え、モータに十分な電力が供給されていない状態であっても回路の故障の有無を判別できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−249383号公報
【特許文献2】特表2001−513875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、LED表示灯を点灯状態に制御する時だけ診断を行っているので、診断対象の表示素子を消灯状態に制御した時以外では検出不可能な故障については診断できない。例えば、表示素子への電圧印加をオンオフするドライバのトランジスタが短絡している場合、表示素子を消灯状態に制御した状態で電圧を検出しなければ異常を把握できない。また、特許文献2のように負荷に電力を供給する経路を切り替える場合であっても、通常の電力を印加する際に使用するドライバが故障した場合にはそれを検出できない。
【0009】
また、実際の表示回路においては様々な種類の故障が発生する可能性があるので、特許文献1のように正常な範囲の上限および下限の閾値と実際の電圧とを比較するだけでは正しい診断を行うのは困難である。すなわち、診断対象の表示素子以外に、電流を調整する抵抗器やドライバが故障する場合もあり、表示素子が正常な状態よりも暗い状態で点灯したり、明るすぎる状態で点灯する場合もあるので、従来技術では故障モードの特定ができない。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、様々な種類の故障について故障の種類を特定することが可能な表示回路の故障診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係る表示回路の故障診断装置は、下記(1)〜(3)を特徴としている。
(1) 少なくとも1つの表示素子と、所定の表示指示信号に従って前記表示素子への電圧印加のオンオフを切り替えるドライバとを有する表示回路の故障診断装置であって、
前記表示素子の実際の印加電圧の値を検出する印加電圧検出部と、
前記表示素子の点灯状態および消灯状態のそれぞれについて、電圧の正常な範囲の上限および下限の閾値を保持すると共に、前記正常な範囲を外れる故障状態範囲について、複数の故障モードのそれぞれの範囲の上限および下限の閾値を保持する閾値情報保持部と、
前記表示素子の点灯/消灯を決定する前記ドライバの駆動状態と、前記印加電圧検出部が検出した電圧値と、前記閾値情報保持部が保持している閾値とに基づいて正常か否かを識別すると共に、正常でない場合には、前記ドライバの駆動状態と、前記印加電圧検出部が検出した電圧値と、前記閾値情報保持部が保持している閾値とに基づき故障モードの種別を識別する診断制御部と
を備えること。
(2) 上記(1)に記載の表示回路の故障診断装置であって、
前記診断制御部は、アナログ電圧をデジタル情報に変換するアナログ/デジタル変換部を含み、前記印加電圧検出部が検出した電圧のデジタル情報と、前記閾値情報保持部が保持する閾値のデジタル情報とを比較すること。
(3) 上記(1)に記載の表示回路の故障診断装置であって、
前記診断制御部は、前記ドライバに印加する制御信号のオンオフを所定時間以内に1回以上切り替えて、前記表示素子の点灯状態の診断と消灯状態の診断との両方を連続的に実施する自動診断モードを有すること。
【0012】
上記(1)の構成の表示回路の故障診断装置によれば、前記診断制御部は、表示回路の機能が正常か否かを識別すると共に、正常でない場合にはどのような故障状態なのかを自動的に識別することができる。
上記(2)の構成の表示回路の故障診断装置によれば、デジタル処理により比較を行うので、識別すべき故障モードの数や閾値の種類が多くなっても回路構成をほとんど変更する必要がなく、装置のコスト上昇を抑制できる。
上記(3)の構成の表示回路の故障診断装置によれば、外部から表示指示信号が入力されない状態であっても、前記表示素子の点灯状態でのみ検出可能な故障と、消灯状態でのみ検出可能な故障との両方を所定時間以内に自動的に検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、様々な種類の故障について故障の種類を特定することが可能になる。また、前記表示素子の点灯状態でのみ検出可能な故障と、消灯状態でのみ検出可能な故障との両方を検出できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態の表示回路の故障診断装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1に示した装置の主要な動作を示すフローチャートである。
【図3】点灯要求時の各種状態と検出される電圧の範囲との具体例を示す模式図である。
【図4】消灯要求時の各種状態と検出される電圧の範囲との具体例を示す模式図である。
【図5】図1に示した装置における代表的な状態の一覧を表す模式図である。
【図6】自動診断モードの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の表示回路の故障診断装置に関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0017】
<装置の構成>
本実施形態における表示回路の故障診断装置の電気回路の構成例が図1に示されている。図1に示す故障診断装置100は、例えば自動車に搭載される計器板ユニットの内部に組み込まれるものであり、ウォーニング等の表示を行う表示回路の点灯/消灯の切替に関する診断を行うための機能を有している。
【0018】
図1に示す構成例においては、表示素子である発光ダイオード(LED)22が、点灯することによりウォーニングを表示し、発光ダイオード22を消灯することによりウォーニングの表示を解除することができる。勿論、発光ダイオード22以外の表示素子、例えば有機EL表示素子を利用しても良い。
【0019】
発光ダイオード22は、所定の電圧を印加してアノード電極側からカソード電極側に順方向に通電することにより発光し点灯状態になる。また、発光ダイオード22への電圧印加を解除することにより発光が停止し消灯状態になる。
【0020】
図1に示す構成例においては、発光ダイオード22のアノード電極は、輝度調整用抵抗器23を経由して電源ライン24と接続されており、発光ダイオード22のカソード電極はドライバ21と接続されている。輝度調整用抵抗器23は、発光ダイオード22に印加する電圧および電流を調整し発光ダイオード22の発光輝度を適正に維持する。
【0021】
ドライバ21は、トランジスタ等のスイッチング素子で構成されており、表示制御信号として入力される二値信号に従ってオンオフする。ドライバ21がオンの状態では発光ダイオード22のカソード電極が接地され、ドライバ21がオフの状態では発光ダイオード22のカソード電極は開放される。
【0022】
つまり、ドライバ21がオンの時には電源ライン24から輝度調整用抵抗器23、発光ダイオード22、ドライバ21内部のスイッチング素子を経由してアースラインに電流が流れ、発光ダイオード22が発光する。ドライバ21がオフの時には、発光ダイオード22のカソード電極が開放されるため電流は流れなくなり発光は停止する。
【0023】
図1に示す故障診断装置100には、上述の構成要素の他に、診断制御部10、LEDコントローラ20、分圧回路30、不揮発性メモリ40、CANインタフェース(I/F)50、および入力インタフェース60が備わっている。
【0024】
診断制御部10は、マイクロコンピュータで構成されており、アナログ/デジタル(A/D)変換部11を内蔵している。このマイクロコンピュータは予め用意されているプログラムを実行することにより故障診断装置100に必要とされる各種の制御機能を実現する。診断制御部10の動作については後で説明する。
【0025】
LEDコントローラ20は、発光ダイオード22等の表示素子を制御する機能を有する集積回路であり、診断制御部10が出力する表示制御信号をドライバ21の駆動に適した信号に変換する。
【0026】
分圧回路30は、2つの抵抗器31、32により構成されており、一端が発光ダイオード22のアノード電極と接続され、他端がアースラインと接続されている。また、分圧回路30の出力端子である抵抗器31、32の接続点は、アナログ/デジタル変換部11のアナログ入力端子と接続されている。この分圧回路30は、発光ダイオード22に印加される電圧の検出値をアナログ/デジタル変換部11への入力に適したレベルに変換する。
【0027】
不揮発性メモリ40は、表示回路の診断に必要な各種の閾値のデータを予め保持している。不揮発性メモリ40が保持しているデータは、診断制御部10のアクセスにより必要に応じて読み出され、診断制御に利用される。
【0028】
CANインタフェース50は、CAN(Controller Area Network)規格に適合する通信インタフェースの機能を有し、車両上の図示しない各種電子制御ユニット(ECU)と故障診断装置100との間のデータ通信を可能にする。例えば、発光ダイオード22の点灯/消灯制御と関係のある情報を他の電子制御ユニットから取得したり、故障診断装置100における診断の結果を他の電子制御ユニットに通知するためにCANインタフェース50が利用される。
【0029】
入力インタフェース60は、車両側に備わっている各種センサから出力される車両信号を入力し診断制御部10の処理に適した信号に変換するために利用される。
【0030】
<診断の際に利用する閾値>
図1に示す故障診断装置100の不揮発性メモリ40上には、次に示す表1および表2のような閾値のデータが予め登録されている。
【表1】

【表2】

【0031】
表1のデータは、診断制御部10がドライバ21に対して発光ダイオード22の点灯を要求するための制御信号を出力する時に参照する閾値群である。また、表2のデータは、診断制御部10がドライバ21に対して発光ダイオード22の消灯を要求するための制御信号を出力する時に参照する閾値群である。
【0032】
表1に示すように、このデータの中には、正常な範囲を表すデータとそれ以外の各種故障モードの範囲を表すデータとが含まれている。正常な範囲を表すデータについては、この範囲の上限値を表すV0maxと、下限値を表すV0minとが含まれている。また、各種故障モードとして「故障01」、「故障02」、「故障03」、「故障04」、「故障05」、「故障06」が定めてあり、それぞれの故障モードについてそれらの上限値(Vth0nmax)および下限値(Vth0nmin)のデータが登録されている。
【0033】
同様に、表2に示すデータの中には、正常な範囲を表すデータとそれ以外の各種故障モードの範囲を表すデータとが含まれている。正常な範囲を表すデータについては、この範囲の上限値を表すV1maxと、下限値を表すV1minとが含まれている。また、各種故障モードとして「故障11」、「故障12」、「故障13」、「故障14」、「故障15」、「故障16」が定めてあり、それぞれの故障モードについてそれらの上限値(Vth1nmax)および下限値(Vth1nmin)のデータが登録されている。
【0034】
<各種閾値の具体例>
点灯要求時の表示回路の各種状態と検出される電圧の範囲との具体例が図3に示されている。また、消灯要求時の各種状態と検出される電圧の範囲との具体例が図4に示されている。
【0035】
すなわち、図1に示すような表示回路において、分圧回路30の出力からアナログ/デジタル変換部11に入力される検出電圧Vxは、様々な状態において図3、図4のように変化する。
【0036】
例えば、発光ダイオード22を点灯する時には、図3に示すように、検出電圧Vxが1V〜2Vの範囲Ron内であれば、正常であるとみなすことができる。但し、ドライバ21内部のトランジスタが短絡(ショート)している場合にも検出電圧Vxがこの範囲Ron内になる。また、輝度調整用抵抗器23が断線(OPEN)している時には、検出電圧Vxが0V〜0.25Vの範囲R01内になり、発光ダイオード22が短絡している時には、検出電圧Vxが0.25V〜0.75Vの範囲R02内になる。また、発光ダイオード22が通常よりも薄く点灯する時には、検出電圧Vxが0.75V〜1Vの範囲R03内になり、発光ダイオード22が断線している時には、検出電圧Vxが3.25V〜4Vの範囲R05内になる。また、輝度調整用抵抗器23が短絡している時には検出電圧Vxが4.5V〜5.25Vの範囲R06内になる。また、上記以外の異常な状態の場合には、検出電圧Vxが2.2V〜3.25Vの範囲R04内になる。
【0037】
同様に、発光ダイオード22を消灯する時には、図4に示すように、検出電圧Vxが3.25V〜4Vの範囲Roff内であれば、正常であるとみなすことができる。但し、発光ダイオード22自体が断線又は短絡している場合にも検出電圧Vxがこの範囲Roff内になる。また、輝度調整用抵抗器23が断線(OPEN)している時には、検出電圧Vxが0V〜0.25Vの範囲R11内になり、ドライバ21内のトランジスタが短絡している場合には、検出電圧Vxが1V〜2Vの範囲R12内になる。また、発光ダイオード22の輝度が明るすぎる時には、検出電圧Vxが2V〜3Vの範囲R13内になり、発光ダイオード22の輝度が薄い時には、検出電圧Vxが4V〜4.5Vの範囲R14内になる。また、輝度調整用抵抗器23が短絡している時には検出電圧Vxが4.5V〜5.25Vの範囲R15内になる。
【0038】
つまり、図3に示した電圧の範囲Ronを前述の表1における正常な範囲の上限値および下限値として登録しておくことにより、これらの閾値を用いて正常な点灯状態か否かを識別できる。また、図3に示した電圧の範囲R01〜R06を表1における各故障モードの「故障01」〜「故障06」に対応付けて閾値として登録しておくことにより、これらの閾値を用いて故障モードの種類を識別することが可能になる。
【0039】
また、図4に示した電圧の範囲Roffを前述の表2における正常な範囲の上限値および下限値として登録しておくことにより、これらの閾値を用いて正常な消灯状態か否かを識別できる。また、図4に示した電圧の範囲R11〜R15を表2における各故障モードの「故障11」〜「故障15」に対応付けて閾値として登録しておくことにより、これらの閾値を用いて故障モードの種類を識別することが可能になる。
【0040】
図1に示した装置における代表的な状態の一覧が図5に示されている。つまり、図1の診断制御部10は、不揮発性メモリ40に登録されている表1、表2のような閾値を参照して診断を行うことにより、図5に示すような診断を行うことができる。
【0041】
<装置の動作>
図1に示した故障診断装置100の主要な動作が図2に示されている。この動作は診断制御部10の処理により実現される。図2に示す動作について以下に説明する。
【0042】
診断制御部10は、故障診断装置100を含む計器板(メータ)ユニットの電源がオンになると、図2のステップS11からS12の処理に進む。
【0043】
ステップS12では、診断制御部10は電源投入直後の初期状態として、発光ダイオード22を消灯するために必要な制御信号を、LEDコントローラ20を介してドライバ21の入力に与える。
これにより、表示回路が正常な状態であれば、ドライバ21内部のトランジスタがオフ状態になり、発光ダイオード22に対する電圧印加は解除される。つまり、発光ダイオード22のカソード電極側が開放されるので、発光ダイオード22には電流が流れず、発光ダイオード22は消灯状態になる。
【0044】
ステップS13では、診断制御部10は表示回路の診断のために、アナログ/デジタル変換部11に入力される検出電圧Vxをサンプリングしてデジタル信号に変換し、この検出電圧Vxのレベルが正常か否かを識別する。
【0045】
具体的には、前述の表2に示した消灯要求時の閾値を不揮発性メモリ40から取得し、正常な範囲の上限値V1maxおよび下限値V1minと検出電圧Vxとを比較する。検出電圧Vxが上限値V1max、下限値V1minの範囲内であれば「正常」とみなしてステップS17に進み、この範囲外であればステップS14に進む。
【0046】
ステップS14では、診断制御部10はこの表示回路が消灯状態において異常であると認識し、異常時の処理として故障モードの識別を実行する。具体的には、前述の表2に示した消灯要求時の閾値を不揮発性メモリ40から取得し、検出電圧Vxと各故障モードの閾値とを比較する。例えば、検出電圧Vxが表2の上限値Vth12maxと下限値Vth12minとの範囲内であれば、故障の種類が「故障11」、すなわち図4に示す範囲R12のトランジスタショートの故障として認識する。
【0047】
ステップS15では、診断制御部10はステップS14の診断結果を表す情報、すなわち表示回路で異常が生じていることを表す情報と、故障の種類を表す情報とをCANインタフェース50を介して外部の装置に通知する。
【0048】
ステップS16では、表示回路が故障している状態なので、診断制御部10は、これ以降、発光ダイオード22を点灯しないように情報を記憶すると共に、発光ダイオード22を消灯するために必要な制御信号を、LEDコントローラ20を介してドライバ21の入力に与える。
【0049】
ステップS17では、診断制御部10はこの表示回路が消灯状態において正常であると認識し、この状態を記憶する。また、次のステップS18で、ステップS17の診断結果を表す情報、すなわち消灯状態では表示回路が正常であることを表す情報をCANインタフェース50を介して外部の装置に通知する。
【0050】
ステップS19では、診断制御部10は発光ダイオード22の点灯を指示する信号を受信するまで待機する。例えば、発光ダイオード22が所定のウォーニングの表示用である場合に、ウォーニング表示の指示が外部の電子制御ユニットからCANインタフェース50を介して診断制御部10に入力されると、この信号を受信して次のステップS20に進む。
【0051】
ステップS20では、診断制御部10は、発光ダイオード22を点灯するために必要な制御信号を、LEDコントローラ20を介してドライバ21の入力に与える。
これにより、表示回路が正常な状態であれば、ドライバ21内部のトランジスタがオン状態になり、発光ダイオード22に対して所定の電圧が印加される。つまり、電源ライン24から輝度調整用抵抗器23、発光ダイオード22、ドライバ21内のトランジスタを介してアース側に電流が流れ、発光ダイオード22が点灯する。
【0052】
ステップS21では、診断制御部10は表示回路の診断のために、アナログ/デジタル変換部11に入力される検出電圧Vxをサンプリングしてデジタル信号に変換し、この検出電圧Vxのレベルが正常か否かを識別する。
【0053】
具体的には、前述の表1に示した点灯要求時の閾値を不揮発性メモリ40から取得し、正常な範囲の上限値V0maxおよび下限値V0minと検出電圧Vxとを比較する。検出電圧Vxが上限値V0max、下限値V0minの範囲内であれば「正常」とみなしてステップS25に進み、この範囲外であればステップS22に進む。
【0054】
ステップS22では、診断制御部10はこの表示回路が点灯状態において異常であると認識し、異常時の処理として故障モードの識別を実行する。具体的には、前述の表1に示した点灯要求時の閾値を不揮発性メモリ40から取得し、検出電圧Vxと各故障モードの閾値とを比較する。例えば、検出電圧Vxが表1の上限値Vth05maxと下限値Vth05minとの範囲内であれば、故障の種類が「故障05」、すなわち図3に示す範囲R05のLEDオープンの故障として認識する。
【0055】
ステップS23では、診断制御部10はステップS22の診断結果を表す情報、すなわち表示回路で異常が生じていることを表す情報と、故障の種類を表す情報とをCANインタフェース50を介して外部の装置に通知する。
【0056】
ステップS24では、表示回路が故障している状態なので、診断制御部10は、これ以降、発光ダイオード22を点灯しないように情報を記憶すると共に、発光ダイオード22を消灯するために必要な制御信号を、LEDコントローラ20を介してドライバ21の入力に与える。
【0057】
ステップS25では、診断制御部10はこの表示回路が点灯状態において正常であると認識し、この状態を記憶する。また、次のステップS26で、ステップS25の診断結果を表す情報、すなわち点灯状態では表示回路が正常であることを表す情報をCANインタフェース50を介して外部の装置に通知する。
【0058】
<自動診断モードの追加>
図2に示した動作においては、発光ダイオード22を消灯要求する状態と、点灯要求する状態とのいずれについても診断を行うことができるが、点灯/消灯を切り替える指示が外部の装置から入力されない限り、両方の状態で診断を行うことはできない。
【0059】
しかし、例えば図3に示す範囲R02のLEDショートのように点灯状態でなければ検出できない故障や、図4に示す範囲R12のトランジスタショートのように消灯状態でなければ検出できない故障も存在する。そこで、所定時間内に両方の状態で診断を行うための機能を実現するために、以下に説明する自動診断モードを設ける。
【0060】
自動診断モードの動作が図6に示されている。この動作は診断制御部10の処理により実現する。図6に示す動作について以下に説明する。
【0061】
ステップS31では、診断制御部10は、発光ダイオード22を消灯するために必要な制御信号を、LEDコントローラ20を介してドライバ21の入力に与える。
これにより、表示回路が正常な状態であれば、ドライバ21内部のトランジスタがオフ状態になり、発光ダイオード22に対する電圧印加は解除される。つまり、発光ダイオード22のカソード電極側が開放されるので、発光ダイオード22には電流が流れず、発光ダイオード22は消灯状態になる。
【0062】
ステップS32では、消灯時の診断処理を実行する。すなわち、図2に示したステップS13、S14、S15と同様に処理する。つまり、診断制御部10は表示回路の診断のために、アナログ/デジタル変換部11に入力される検出電圧Vxをサンプリングしてデジタル信号に変換し、この検出電圧Vxのレベルが正常か否かを識別する。また、ステップS32の処理を開始してから所定時間(例えば500msec)を経過してなければ、ステップS32の処理を繰り返す。
【0063】
ステップS32で異常を検出した場合には、診断制御部10はこの表示回路が消灯状態において異常であると認識し、異常時の処理として故障モードの識別を実行する。具体的には、前述の表2に示した消灯要求時の閾値を不揮発性メモリ40から取得し、検出電圧Vxと各故障モードの閾値とを比較する。例えば、検出電圧Vxが表2の上限値Vth12maxと下限値Vth12minとの範囲内であれば、故障の種類が「故障11」、すなわち図4に示す範囲R12のトランジスタショートの故障として認識する。また、ステップS15と同様に診断の結果を通信により送信する。
【0064】
所定時間(例えば500msec)を経過すると、次のステップS34に進む。ステップS34では、診断制御部10は、発光ダイオード22を点灯するために必要な制御信号を、LEDコントローラ20を介してドライバ21の入力に与える。
【0065】
これにより、表示回路が正常な状態であれば、ドライバ21内部のトランジスタがオン状態になり、発光ダイオード22に対して所定の電圧が印加される。つまり、電源ライン24から輝度調整用抵抗器23、発光ダイオード22、ドライバ21内のトランジスタを介してアース側に電流が流れ、発光ダイオード22が点灯する。
【0066】
ステップS35では、点灯時の診断処理を実行する。すなわち、図2に示したステップS21、S22、S23と同様に処理する。つまり、診断制御部10は表示回路の診断のために、アナログ/デジタル変換部11に入力される検出電圧Vxをサンプリングしてデジタル信号に変換し、この検出電圧Vxのレベルが正常か否かを識別する。また、ステップS35の処理を開始してから所定時間(例えば500msec)を経過してなければ、ステップS35の処理を繰り返す。
【0067】
ステップS35で異常を検出した場合には、診断制御部10はこの表示回路が点灯状態において異常であると認識し、異常時の処理として故障モードの識別を実行する。具体的には、前述の表1に示した点灯要求時の閾値を不揮発性メモリ40から取得し、検出電圧Vxと各故障モードの閾値とを比較する。また、ステップS23と同様に診断の結果を通信により送信する。
【0068】
所定時間(例えば500msec)を経過すると、次のステップS37に進む。ステップS37では、診断制御部10は表示回路を初期化するために、発光ダイオード22の消灯に必要な制御信号を、LEDコントローラ20を介してドライバ21の入力に与える。
【0069】
これにより、表示回路が正常な状態であれば、ドライバ21内部のトランジスタがオフ状態になり、発光ダイオード22に対する電圧印加は解除される。つまり、発光ダイオード22のカソード電極側が開放されるので、発光ダイオード22には電流が流れず、発光ダイオード22は消灯状態になる。
【0070】
ステップS38では、診断制御部10は発光ダイオード22の点灯を指示する信号を受信するまで待機する。例えば、発光ダイオード22が所定のウォーニングの表示用である場合に、ウォーニング表示の指示が外部の電子制御ユニットからCANインタフェース50を介して診断制御部10に入力されると、この信号を受信して次のステップS39に進む。
【0071】
ステップS39では、診断制御部10は受信した信号に従って、発光ダイオード22が点灯又は消灯するように、所定の制御信号をLEDコントローラ20を介してドライバ21に与える。
【0072】
なお、図1に示した不揮発性メモリ40の代わりに読み出し専用メモリ(ROM)を用いても良いし、これを診断制御部10のマイクロコンピュータに内蔵しても良い。
【符号の説明】
【0073】
10 診断制御部
11 アナログ/デジタル変換部
20 LEDコントローラ
21 ドライバ
22 発光ダイオード(LED)
23 輝度調整用抵抗器
24 電源ライン
30 分圧回路
31,32 抵抗器
40 不揮発性メモリ
50 CANインタフェース
60 入力インタフェース
100 故障診断装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの表示素子と、所定の表示指示信号に従って前記表示素子への電圧印加のオンオフを切り替えるドライバとを有する表示回路の故障診断装置であって、
前記表示素子の実際の印加電圧の値を検出する印加電圧検出部と、
前記表示素子の点灯状態および消灯状態のそれぞれについて、電圧の正常な範囲の上限および下限の閾値を保持すると共に、前記正常な範囲を外れる故障状態範囲について、複数の故障モードのそれぞれの範囲の上限および下限の閾値を保持する閾値情報保持部と、
前記表示素子の点灯/消灯を決定する前記ドライバの駆動状態と、前記印加電圧検出部が検出した電圧値と、前記閾値情報保持部が保持している閾値とに基づいて正常か否かを識別すると共に、正常でない場合には、前記ドライバの駆動状態と、前記印加電圧検出部が検出した電圧値と、前記閾値情報保持部が保持している閾値とに基づき故障モードの種別を識別する診断制御部と
を備えることを特徴とする表示回路の故障診断装置。
【請求項2】
前記診断制御部は、アナログ電圧をデジタル情報に変換するアナログ/デジタル変換部を含み、前記印加電圧検出部が検出した電圧のデジタル情報と、前記閾値情報保持部が保持する閾値のデジタル情報とを比較する
ことを特徴とする請求項1に記載の表示回路の故障診断装置。
【請求項3】
前記診断制御部は、前記ドライバに印加する制御信号のオンオフを所定時間以内に1回以上切り替えて、前記表示素子の点灯状態の診断と消灯状態の診断との両方を連続的に実施する自動診断モードを有する
ことを特徴とする請求項1に記載の表示回路の故障診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−41678(P2013−41678A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176085(P2011−176085)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】