説明

表示媒体、及び表示装置

【課題】基板に付着した泳動粒子の泳動開始電圧を制御し得る表示媒体を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透光性を有すると共に間隙をもって配置された一対の基板と、前記一対の基板間に封入された分散媒と、前記分散媒中に分散され、前記一対の基板間に形成された電界に応じて該分散媒中を泳動する泳動粒子群と、表示媒体の一対の基板の対向面の少なくとも一方に、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を含んで構成された表面層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体、及び表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、繰り返し書き換えが行える表示媒体として、泳動粒子を用いた表示媒体が知られている(特許文献1〜7)。
これら表示媒体は、例えば一対の基板と、一対の基板間に形成された電界に応じて基板間を移動するように該基板間に封入された泳動粒子群と、を含んで構成されている。また、基板間には、粒子が基板内の特定の領域に偏るのを防ぐため等の理由により、基板間を複数のセルに仕切るための間隙部材が設けられる場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−258805号公報
【特許文献2】特開2001−133815号公報
【特許文献3】特開2004−279647号公報
【特許文献4】特開2005−227729号公報
【特許文献5】特開2008−122447号公報
【特許文献6】特開2008−310003号公報
【特許文献7】特開2009−086135号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、下記構成単位(A)と下記構成単位(B)とを含む共重合体である高分子化合物を含んで構成された表面層を有さない場合に比べ、基板に付着した泳動粒子の泳動開始電圧を制御し得る表示媒体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の手段により解決される。
請求項1に係る発明は、
少なくとも一方が透光性を有すると共に間隙をもって配置された一対の基板と、
前記一対の基板間に封入された分散媒と、
前記分散媒中に分散され、前記一対の基板間に形成された電界に応じて該分散媒中を泳動する泳動粒子群と、
前記一対の基板の対向面の少なくとも一方に設けられ、下記構成単位(A)と下記構成単位(B)とを含む共重合体である高分子化合物を含んで構成された表面層と、
を有することを特徴とする表示媒体。
【0006】
【化1】

【0007】
(前記構成単位(A)及び(B)中、Xは、シリコーン鎖を含む基を表す。Ra、及びRaは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表す。Rbは、置換若しくは未置換のフェニル基を有する有機基を表す。n1、及びn2は、共重合体全体に対するそれぞれの構成単位のモル%を示し、0<n1<50、0<n2<80を表す。nは、1以上3以下の自然数を表す。)
【0008】
請求項2に係る発明は、
前記構成単位(A)及び(B)中、Rbは、−Rb21−O−Ph(但し、Rb21は炭素数1以上11以下のアルキレン基、又は水酸基で置換された炭素数1以上11以下のアルキレン基を表す。Phは、置換若しくは未置換のフェニル基を表す。)を表す請求項1に記載の表示媒体。
【0009】
請求項3に係る発明は、
前記構成単位(A)及び(B)中、n1<n2を表す請求項1又は2に記載の表示媒体。
【0010】
請求項4に係る発明は、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示媒体と、
前記一対の基板間に電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えたことを特徴とする表示装置。
【発明の効果】
【0011】
請求項1、2に係る発明によれば、上記構成単位(A)と上記構成単位(B)とを含む共重合体である高分子化合物を含んで構成された表面層を有さない場合に比べ、基板に付着した泳動粒子の泳動開始電圧を制御し得る表示媒体が提供できる。
請求項3に係る発明によれば、上記構成単位(A)と上記構成単位(B)中、n1>n2を表す場合に比べ、基板に付着した泳動粒子の泳動開始電圧を高められる表示媒体を提供できる。
請求項4に係る発明によれば、上記構成単位(A)と上記構成単位(B)とを含む共重合体である高分子化合物を含んで構成された表面層を有さない表示媒体を適用した場合に比べ、基板に付着した泳動粒子の泳動開始電圧を制御し得る表示装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態に係る表示装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る表示装置の表示媒体の基板間に電圧を印加したときの泳動粒子群の泳動態様を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、作用・機能が同様の働きを担う部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明を省略する場合がある。
【0014】
図1は、本実施形態に係る表示装置の概略構成図である。図2は、本実施形態に係る表示装置の表示媒体の基板間に電圧を印加したときの泳動粒子群の泳動態様を模式的に示す説明図である。
【0015】
本実施形態に係る表示装置10は、図1に示すように、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18と、を含んで構成されている。
【0016】
表示媒体12は、画像表示面とされる表示基板20、表示基板20に間隙をもって対向する背面基板22、これらの基板間を特定間隔に保持すると共に、表示基板20と背面基板22との基板間を複数のセルに区画する間隙部材24、各セル内に封入された泳動粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する反射粒子群36を含んで構成されている。
【0017】
上記セルとは、表示基板20と、背面基板22と、間隙部材24と、によって囲まれた領域を示している。このセル中には、泳動粒子群34及び分散媒50が封入されている。泳動粒子群34は、複数の泳動粒子から構成されており、この分散媒50中に分散され、セル内に形成された電界強度に応じて表示基板20と背面基板22との基板間を反射粒子群36の間隙を通じて移動する。
そして、泳動粒子群34として、泳動粒子群34Aと、当該泳動粒子群34Aとは異なる色を呈し、且つ帯電極性が異なる泳動粒子群34Bと、を有している。
【0018】
なお、この表示媒体12に画像を表示したときの各画素に対応するように間隙部材24を設け、各画素に対応するようにセルを形成することで、表示媒体12を、画素毎の表示を行うように構成してもよい。
【0019】
また、本実施形態では、説明を簡易化するために、1つのセルに注目した図を用いて本実施形態を説明する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0020】
まず、一対の基板について説明する。
表示基板20は、支持基板38上に、表面電極40及び表面層42を順に積層した構成となっている。背面基板22は、支持基板44上に、背面電極46及び表面層48を積層した構成となっている。
【0021】
表示基板20、又は表示基板20と背面基板22との双方は、透光性を有している。ここで、本実施形態における透光性とは、可視光の透過率が60%以上であることを示している。
【0022】
支持基板について説明する。
支持基板38及び支持基板44の材料としては、ガラスや、プラスチック、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂等が挙げられる。
【0023】
電極について説明する。
表面電極40及び背面電極46の材料としては、インジウム、スズ、カドミウム、アンチモン等の酸化物、ITO等の複合酸化物、金、銀、銅、ニッケル等の金属、ポリピロールやポリチオフェン等の有機材料等が挙げられる。表面電極40及び背面電極46は、これらの単層膜、混合膜又は複合膜のいずれであってもよい。表面電極40及び背面電極46の厚さは、例えば、100Å以上2000Å以下であることがよい。背面電極46及び表面電極40は、例えば、マトリックス状、又はストライプ状に形成されていてもよい。
【0024】
また、表面電極40を支持基板38に埋め込んでもよい。また、背面電極46を支持基板44に埋め込んでもよい。この場合、支持基板38及び支持基板44の材料を泳動粒子群34の各泳動粒子の組成等に応じて選択する。
【0025】
なお、背面電極46及び表面電極40各々を表示基板20及び背面基板22と分離させ、表示媒体12の外部に配置してもよい。
【0026】
なお、上記では、表示基板20と背面基板22の双方に電極(表面電極40及び背面電極46)を備える場合を説明したが、何れか一方にだけ設けるようにして、アクティブマトリクス駆動させるようにしてもよい。
【0027】
また、アクティブマトリックス駆動を実施するために、支持基板38及び支持基板44は、画素毎にTFT(薄膜トランジスタ)を備えていてもよい。TFTは表示基板ではなく背面基板22に備えることがよい。
【0028】
表面層について説明する。
表示基板20と背面基板22の対向面には、各々、表面層42及び表面層48が設けられている。そして、間隙部材24の表面(セル内側表面)にも、表面層25が設けられている。
【0029】
なお、本実施形態では、表示基板20と背面基板22の対向面の双方に表面層(表面層42及び表面層48各々)が設けられている場合を説明するが、表示基板20と背面基板22の対向面の何れか一方にのみ設けられた構成であってもよい。但し、基板に付着した泳動粒子の泳動開始電圧を制御し得る観点からは、表示基板20と背面基板22の対向面の双方に表面層(表面層42及び表面層48各々)が設けられる構成がよい。
また、泳動粒子の固着に起因する画像欠陥が抑制される観点からも、少なくとも表示基板20側の対向面に表面層42が設けられた構成であることが望ましい。また、間隙部材24の表面(セル内側表面)にも表面層25を設けると、間隙部材24に表面層25が設けられていない場合に比べ、間隙部材24に対する泳動粒子の固着も抑制される。結果、表示に寄与しない泳動粒子の増加が抑制される。つまり、少なくとも表示基板20の対向面に表面層42を設けることがよいが、一対の基板及び間隙部材の全て(即ち、これらで囲まれるセル内壁)に表面層が配設されていることが最もよい。
【0030】
表面層42、表面層48及び表面層25の各々は、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を含んで構成されている。具体的には、例えば、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を表示基板20と背面基板22各々の対向面や間隙部材24同士の対向面に対して、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を化学的に結合させる処理、又はシリコーン鎖を持つ高分子化合物を被覆(塗布)させる処理(つまり高分子化合物を成膜する処理)によって、シリコーン鎖を持つ高分子化合物を当該面に形成して、表面層42、表面層48及び表面層25の各々を構成している。
【0031】
シリコーン鎖を持つ高分子化合物としては、下記構成単位(A)と下記構成単位(B)とを含む共重合体が適用される。
【0032】
【化2】

【0033】
構成単位(A)及び(B)中、
Xは、シリコーン鎖を含む基を表す。
Ra、及びRaは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表す。
Rbは、置換若しくは未置換のフェニル基を有する有機基を表す。
n1、及びn2は、共重合体全体に対するそれぞれの構成単位のモル%を示し、0<n1<50、0<n2<80を表す。
nは、1以上3以下の自然数を表す。
【0034】
構成単位(A)中、Xが表すシリコーン鎖を含む基は、例えば、直鎖状、又は分枝状のシリコーン鎖(Si−O結合が2つ以上連なったシロキサン鎖)を含む基であり、好適には、ジメチルシロキサン構造(−Si(CH−O−)が2以上連なった、置換基で一部(−CHの一部)が置換されていてもよいジメチルシロキサン鎖を含む基である。
Xが表すシリコーン鎖を含む基として具体的には、例えば、下記構造式(X1)、又は(X2)で示される基が挙げられる。
【0035】
【化3】

【0036】
構造式(X1)及び(X2)中、Rは、水酸基、水素原子又は炭素数1以上10以下のアルキル基を表す。
nは、1以上1000以下の整数を表す。
【0037】
構造式(X1)及び(X2)中、Rが表すアルキル基は、炭素数1以上10以下のアルキル基であるが、望ましくは炭素数1以上4以下のアルキル基、より望ましくは、メチル基である。
nは、1以上1000以下の整数であるが、望ましくは2以上200以下、より望ましくは5以上100以下である。
【0038】
構成単位(B)中、Rbが表す置換若しくは未置換のフェニル基を有する有機基としては、末端(構造式(B)中、Oと結合しない側の末端)に置換若しくは未置換のフェニル基を有する有機基が挙げられる。
Rbが表す置換若しくは未置換のフェニル基を有する有機基として具体的には、例えば、−Rb21−O−Ph(但し、Rb21は炭素数1以上11以下のアルキレン基、又は水酸基で置換された炭素数1以上11以下のアルキレン基を表す。Phは、置換若しくは未置換のフェニル基を表す。)が挙げられる。
【0039】
Rb21が表すアルキレン基としては、炭素数1以上11以下のアルキレン基であるが、望ましくは炭素数1以上4以下のアルキレン基である。
本アルキレン基に置換され得る水酸基は、アルキレン基に1つ置換されていてもよいし、2つ以上置換されていてもよい。
また、フェニル基に置換され得る置換基としては、例えば、炭素数1以上4以下のアルキル基、水酸基等が挙げられる。
【0040】
ここで、上記各符号が表すアルキル基は、直鎖状であっても、分枝状であってもよく、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、イソペンチル基、アミル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、エチルヘキシル基、イソノニル基、デシル基等が挙げられ、目的の炭素数のもの合せて選択される。
また、上記各符号が表すアルキレン基も、直鎖状であっても、分枝状であってもよく、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソペンチレン基、アミレン基、へキシレン基、シクロへキシレン基、オクチレン基、エチルへキシレン基、イソノニレン基、デシレン基等が挙げられ、目的の炭素数のもの合せて選択される。
【0041】
構成単位(A)及び(B)中、n1、及びn2は、0<n1<50、0<n2<80の関係を表すが、望ましくは0<n1<20、0<n2<60の関係、より望ましくは0<n1<10、0<n2<50の関係である。
ここで、n1、及びn2は、n1<n2とすることで、基板に付着した泳動粒子の泳動開始電圧を高められる。
一方で、n1、及びn2は、n1>n2とすることで、基板に付着した泳動粒子の泳動開始電圧を下げられる。
つまり、構成単位(A)と構造単位(B)との成分比(モル比)を調整することで、基板に付着した泳動粒子の泳動開始電圧の制御が実現される。
【0042】
構成単位(A)中、nは、1以上3以下の自然数を表す。
【0043】
シリコーン鎖を持つ高分子化合物において、構造単位(A)を構成する単量体として具体的には、例えば、片末端に(メタ)アクリレート基を持ったジメチルシリコーンモノマー(例えば、チッソ社製:サイラプレーン:FM−0711,FM−0721,FM−0725等、信越シリコーン(株):X−22−174DX, X−22−2426, X−22−2475等)等が挙げられる。これらの中でも、サイラプレーン:FM−0711、FM−0721、FM−0725等が望ましい。
【0044】
構造単位(B)を構成する単量体として具体的には、2−フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等が挙げられる。
【0045】
シリコーン鎖を持つ高分子化合物は、構造単位(A)及び(B)と共に、他の構造単位(C)を含む共重合体であることがよい。共重合体の構造単位として、他の構造単位(C)を含むことで、表面層の成膜性が確保される共に、分散媒による膜劣化が抑制される。
他の構造単位(C)を構成する単量体としては、ノニオン性単量体が好適に挙げられる。つまり、他の構造単位(C)は、ノニオン性単量体に由来する構造単位であることがよい。
ノニオン性単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、スチレン、ビニルカルバゾール、スチレン、スチレン誘導体、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
なお、これらの表記において、「(メタ)アクリレート」等の記述は、「アクリレート」および「メタクリレート」等のいずれをも含む表現である。
【0046】
シリコーン鎖を持つ高分子化合物が、構造単位(A)及び(B)と共に、他の構造単位(C)を含む共重合体である場合、共重合体全体に対する他の構造単位(C)のモル%(n3と標記)は、例えば、0<n3<99がよく、望ましくは、10<n3<97である。
【0047】
シリコーン鎖を持つ高分子化合物において、構造単位(A)と構造単位(B)との重合比(質量比:構造単位(A)/構造単位(B))は、例えば、1/99以上99/1以下であることがよく、望ましくは5/95以上95/5以下、より望ましくは10/90以上90/10以下である。
また、他の構造単位(C)を含む場合、構造単位(A)及び構造単位(B)の合計と
他の構造単位(C)との重合比(質量比:(構造単位(A)+構造単位(B))/他の構造単位(C))は、例えば、10/90以上90/10以下であることがよく、望ましくは15/85以上85/15以下、より望ましくは20/80以上80/20以下である。
【0048】
シリコーン鎖を持つ高分子化合物の具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
なお、以下の具体例では、他の構造単位(C)も含む高分子化合物の例を示している。
【0049】
【化4】

【0050】
【化5】

【0051】
【化6】

【0052】
シリコーン鎖を持つ高分子化合物の末端基としては、例えば、水酸基、メチル基、アルキル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0053】
シリコーン鎖を持つ高分子化合物の重量平均分子量としては、100以上100万以下が望ましく、より望ましくは400以上100万以下である。
なお、重量平均分子量は静的光散乱法又はサイズ排除カラムクロマトグラフィーにより測定され、本明細書に記載の数値は当該方法によって測定されたものである。
【0054】
シリコーン鎖を持つ高分子化合物で構成される表面層(表面層42、表面層48及び表面層25)の厚みは、例えば、0.001μm以上10μm以下がよく、望ましくは0.01μm以上1μm以下である。
【0055】
間隙部材について説明する。
表示基板20と背面基板22との基板間の隙を保持するための間隙部材24は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電子線硬化樹脂、光硬化樹脂、ゴム、金属等で構成される。
【0056】
間隙部材24は表示基板20及び背面基板22の何れか一方と一体化されてもよい。この場合には、支持基板38又は支持基板44をエッチングするエッチング処理、レーザー加工処理、予め作製した型を使用してプレス加工処理又は印刷処理等を行うことによって作製する。
この場合、間隙部材24は、表示基板20側、背面基板22側のいずれか、又は双方に作製する。
【0057】
間隙部材24は有色でも無色でもよいが、無色透明であることがよく、その場合には、例えば、ポリスチレンやポリエステルやアクリルなどの透明樹脂等で構成される。
【0058】
また、粒子状の間隙部材24もまた透明であることが望ましく、ポリスチレン、ポリエステル又はアクリル等の透明樹脂粒子の他、ガラス粒子も使用される。
なお、「透明」とは、可視光に対して、透過率60%以上有することを示している。
【0059】
分散媒について説明する。
泳動粒子群34が分散される分散媒50としては、絶縁性液体であることが望ましい。ここで、「絶縁性」とは、体積固有抵抗が1011Ωcm以上であることを示している。以下同様である。
【0060】
絶縁性液体として具体的には、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、デカン、ヘキサデカン、ケロセン、パラフィン、イソパラフィン、シリコーンオイル、高純度石油、エチレングリコール、アルコール類、エーテル類、エステル類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリドン、N−メチルホルムアミド、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ベンジン、ジイソプロピルナフタレン、オリーブ油、トリクロロトリフルオロエタン、テトラクロロエタン、ジブロモテトラフルオロエタンなどや、それらの混合物が好適に使用される。これらの中でも、シリコーンオイルを適用することがよい。シリコーンオイルを用いることで、表面層を構成する高分子化合物のシリコーン鎖が分散媒50側へ存在し易くなることから、基板に付着した泳動粒子の泳動開始電圧制御性と共に、粒子固着抑制効果が向上される。
【0061】
また、下記体積抵抗値となるよう不純物を除去することで、水(所謂、純水)も、分散媒50として好適に使用される。該体積抵抗値としては、10Ωcm以上であることが望ましく、10Ωcm以上1019Ωcm以下であることがより好適であり、さらに1010Ωcm以上1019Ωcm以下であることがより良い。この範囲の体積抵抗値とすることで、より効果的に、泳動粒子群34に電界を印加させ、かつ、電極反応に起因する液体の電気分解による気泡の発生が抑制され、通電毎に泳動粒子の泳動特性が損なわれることが少なく、優れた繰り返し安定性が付与される。
【0062】
なお、絶縁性液体には、必要に応じて、酸、アルカリ、塩、分散安定剤、酸化防止や紫外線吸収などを目的とした安定剤、抗菌剤、防腐剤などを添加してもよいが、上記で示した特定の体積抵抗値の範囲となるように添加することが望ましい。
【0063】
また、絶縁性液体には、帯電制御剤として、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、金属石鹸、アルキルリン酸エステル類、コハク酸イミド類等を添加して使用してもよい。
【0064】
イオン性及び非イオン性の界面活性剤としては、より具体的には以下があげられる。ノニオン活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタリンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸等がある。カチオン界面活性剤としては、第一級ないし第三級のアミン塩、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。これら帯電制御剤は、粒子固形分に対して0.01質量%以上、20質量%以下が望ましく、特に0.05質量%以上10質量%以下の範囲が望ましい。0.01質量%を下回ると、希望とする帯電制御効果が不充分であることがあり、また20質量%を越えると、現像液の過度な電導度の上昇を引き起こすことがあり、使い難くなるからである。
【0065】
なお、分散媒50は、前記絶縁性液体と共に高分子樹脂を併用してもよい。この高分子樹脂としては、高分子ゲル、高分子ポリマー等であることも望ましい。
【0066】
この高分子樹脂としては、アガロース、アガロペクチン、アミロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、イソリケナン、インスリン、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カードラン、カゼイン、カラギーナン、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、カロース、寒天、キチン、キトサン、絹フィブロイン、クアーガム、クインスシード、クラウンゴール多糖、グリコーゲン、グルコマンナン、ケラタン硫酸、ケラチン蛋白質、コラーゲン、酢酸セルロース、ジェランガム、シゾフィラン、ゼラチン、ゾウゲヤシマンナン、ツニシン、デキストラン、デルマタン硫酸、デンプン、トラガカントゴム、ニゲラン、ヒアルロン酸、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、プスツラン、フノラン、分解キシログルカン、ペクチン、ポルフィラン、メチルセルロース、メチルデンプン、ラミナラン、リケナン、レンチナン、ローカストビーンガム等の天然高分子由来の高分子ゲルが挙げられる他、合成高分子の場合にはほとんどすべての高分子ゲルが挙げられる。
【0067】
更に、アルコール、ケトン、エーテル、エステル、及びアミドの官能基を繰り返し単位中に含む高分子等が挙げられ、例えば、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミドやその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシドやこれら高分子を含む共重合体が挙げられる。
【0068】
これら中でも、製造安定性、電気泳動特性等の観点から、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリルアミド等が望ましく用いられる。
【0069】
また、この分散媒50に下記着色剤を混合することで、表示媒体12に泳動粒子群34の色とは異なる色を表示させる。例えば、着色剤として白色を示す着色剤を混合することにより、泳動粒子群34の色が黒色の場合には、表示媒体12にいて白色と黒色とを表示する。
【0070】
この分散媒50に混合する着色剤としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フタロシアニン銅系シアン色材、アゾ系イエロー色材、アゾ系マゼンタ色材、キナクリドン系マゼンタ色材、レッド色材、グリーン色材、ブルー色材等の公知の着色剤が挙げられる。具体的には、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3、等が代表的なものとして挙げられる。
【0071】
分散媒50はその中で泳動粒子群34が移動することから、分散媒50の粘度が高すぎると、背面基板22及び表示基板20への力のばらつきが大きく、電界に対する粒子移動(粒子泳動)の閾値がとれないことから、分散媒50の粘度についても、調整することがよい。
【0072】
分散媒50の粘度は、温度20℃の環境下において、0.1mPa・s以上100mPa・s以下であることが泳動粒子の移動速度(泳動速度)、すなわち、表示速度の観点から必須であり、0.1mPa・s以上50mPa・s以下であることが望ましく、0.1mPa・s以上20mPa・s以下であることが更に望ましい。
【0073】
分散媒50の粘度を0.1mPa・s以上100mPa・s以下の範囲とすることにより、分散媒50中に分散されている泳動粒子群34と、表示基板20又は背面基板22との付着力や流動抵抗や電気泳動時間のばらつきを抑制する。
【0074】
分散媒50の粘度の調整は、例えば、分散媒の分子量、構造、組成等を調整することによって行う。なお、この粘度の測定には、東京計器製B−8L型粘度計を用いる。
【0075】
次に、泳動粒子群について説明する。泳動粒子群34は、複数の泳動粒子から構成され、各泳動粒子は正又は負に帯電されており、表面電極40と背面電極46との電極間に(すなわち、表示基板20と背面基板22と基板間に)、予め定められた電圧が印加されて表示基板20と背面基板22との基板間に、予め定められた電界強度以上の電界が形成されることで分散媒50中を移動するものである。
表示媒体12における表示色の変化は、この泳動粒子群34を構成する各泳動粒子の分散媒50中の移動によって生じる。
【0076】
この泳動粒子群34の各泳動粒子としては、ガラスビーズ、アルミナ、酸化チタン等の絶縁性の金属酸化物粒子等、熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂粒子、これらの樹脂粒子の表面に着色剤を固定したもの、熱可塑性若しくは熱硬化性樹脂中に着色剤を含有する粒子、及びプラズモン発色機能を有する金属コロイド粒子等が挙げられる。
【0077】
泳動粒子の製造に使用される熱可塑性樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類、エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類の単独重合体あるいは共重合体が例示される。
【0078】
また、泳動粒子の製造に使用される熱硬化性樹脂としては、ジビニルベンゼンを主成分とする架橋共重合体や架橋ポリメチルメタクリレート等の架橋樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。特に代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0079】
着色剤としては、有機若しくは無機の顔料や、油溶性染料等を使用することができ、マグネタイト、フェライト等の磁性紛、カーボンブラック、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、フタロシアニン銅系シアン色材、アゾ系イエロー色材、アゾ系マゼンタ色材、キナクリドン系マゼンタ色材、レッド色材、グリーン色材、ブルー色材等の公知の着色剤が挙げられる。具体的には、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロリド、フタロシアニンブルー、マラカイトグリーンオキサレート、ランプブラック、ローズベンガル、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3、等が代表的なものとして例示される。
【0080】
泳動粒子の樹脂には、必要に応じて、帯電制御剤を混合してもよい。帯電制御剤としては、電子写真用トナー材料に使用される公知のものが使用でき、例えば、セチルピリジルクロライド、BONTRON P−51、BONTRON P−53、BONTRON E−84、BONTRON E−81(以上、オリエント化学工業社製)等の第4級アンモニウム塩、サリチル酸系金属錯体、フェノール系縮合物、テトラフェニル系化合物、酸化金属粒子、各種カップリング剤により表面処理された酸化金属粒子が挙げられる。
【0081】
泳動粒子の内部や表面には、必要に応じて、磁性材料を混合してもよい。磁性材料は必要に応じてカラーコートした無機磁性材料や有機磁性材料を使用する。また、透明な磁性材料、特に、透明有機磁性材料は着色顔料の発色を阻害せず、比重も無機磁性材料に比べて小さく、より望ましい。
着色した磁性粉として、例えば、特開2003−131420公報記載の小径着色磁性粉を用いてもよい。核となる磁性粒子と該磁性粒子表面上に積層された着色層とを備えたものが用いられる。そして、着色層としては、顔料等により磁性粉を不透過に着色する等選定して差し支えないが、例えば光干渉薄膜を用いるのが望ましい。この光干渉薄膜とは、SiOやTiO等の無彩色材料を光の波長と同等な厚みを有する薄膜にしたものであり、薄膜内の光干渉により光を波長選択的に反射するものである。
【0082】
泳動粒子の表面には、必要に応じて、外添剤を付着させてもよい。外添剤の色は、泳動粒子の色に影響を与えないように、透明であることが望ましい。
【0083】
外添剤としては、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン、アルミナ等の金属酸化物等の無機粒子が用いられる。粒子の帯電性、流動性、及び環境依存性等を調整するために、これらをカップリング剤やシリコーンオイルで表面処理してもよい。
【0084】
カップリング剤には、アミノシラン系カップリング剤、アミノチタン系カップリング剤、ニトリル系カップリング剤等の正帯電性のものと、窒素原子を含まない(窒素以外の原子で構成される)シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、エポキシシランカップリング剤、アクリルシランカップリング剤等の負帯電性のものがある。また、シリコーンオイルには、アミノ変性シリコーンオイル等の正帯電性のものと、ジメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、α−メチルスルホン変性シリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル等の負帯電性のものが挙げられる。これらは外添剤の所望の抵抗に応じて選択される。
【0085】
上記外添剤の中では、よく知られている疎水性シリカや疎水性酸化チタンが望ましく、特に特開平10−3177記載のTiO(OH)と、シランカップリング剤等のシラン化合物との反応で得られるチタン化合物が好適である。シラン化合物としては、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、特殊シリル化剤のいずれのタイプが挙げられる。このチタン化合物は、湿式工程の中で作製されるTiO(OH)にシラン化合物あるいはシリコーンオイルを反応、乾燥させて作製される。数百度という焼成工程を通らないため、Ti同士の強い結合が形成されず、凝集が全くなく、泳動粒子は一次粒子の状態である。さらに、TiO(OH)にシラン化合物あるいはシリコーンオイルを直接反応させるため、シラン化合物やシリコーンオイルの処理量を多くすることができて、シラン化合物の処理量等を調整することにより帯電特性を制御でき、且つ付与される帯電能も従来の酸化チタンのそれより顕著に改善される。
【0086】
外添剤の一次粒子は、一般的には1nm以上100nm以下であり、5nm以上50nm以下であることがより良いが、これに限定されない。
【0087】
外添剤と泳動粒子の配合比は泳動粒子の粒径と外添剤の粒径の兼ね合いから調整される。外添剤の添加量が多すぎると泳動粒子表面から該外添剤の少なくとも一部が遊離し、これが他方の泳動粒子の表面に付着して、所望の帯電特性が得られなくなる。一般的には、外添剤の量は、泳動粒子100質量部に対して、0.01質量部以上3質量部以下、また0.05質量部以上1質量部以下であることがより良い。
【0088】
外添剤は、複数種類の泳動粒子の何れか1種にだけ添加してもよいし、複数種又は全種類の泳動粒子へ添加してもよい。全泳動粒子の表面に外添剤を添加する場合は、泳動粒子表面に外添剤を衝撃力で打込んだり、泳動粒子表面を加熱して外添剤を泳動粒子表面に強固に固着したりすることが望ましい。これにより、外添剤が泳動粒子から遊離し、異極性の外添剤が強固に凝集して、電界で解離させることが困難な外添剤の凝集体を形成することが防止され、ひいては画質劣化が防止される。
【0089】
泳動粒子群34を作製する方法としては、従来公知のどの方法を用いてもよい。例えば、特開平7−325434公報記載のように、樹脂、顔料及び帯電制御剤を目的とする混合比になるように計量し、樹脂を加熱溶融させた後に顔料を添加して混合、分散させ、冷却した後、ジェットミル、ハンマーミル、ターボミル等の粉砕機を用いて粒子を調製し、得られた粒子をその後分散媒に分散する方法が使用される。また、懸濁重合、乳化重合、分散重合等の重合法やコアセルベーション、メルトディスパージョン、エマルジョン凝集法で帯電制御剤を粒子中に含有させた粒子を調製し、その後分散媒に分散して粒子分散媒を作製してもよい。さらにまた、樹脂が可塑性を有しており、分散媒が沸騰せず、かつ、樹脂、帯電制御剤及び着色剤の少なくとも一方の分解点よりも低温で、前記の樹脂、着色剤、帯電制御剤及び分散媒の原材料を分散及び混錬する適当な装置を用いる方法がある。具体的には、流星型ミキサー、ニーダー等で顔料と樹脂、帯電制御剤を分散媒中で加熱溶融し、樹脂の溶媒溶解度の温度依存性を利用して、溶融混合物を撹拌しながら冷却し、凝固/析出させて粒子を作製する。
【0090】
さらにまた、分散及び混練のための粒状メデイアを装備した適当な容器、例えばアトライター、加熱したボールミル等の加熱された振動ミル中に上記の原材料を投入し、この容器を望ましい温度範囲、例えば80℃以上160℃以下で分散及び混練する方法を使用してもよい。粒状メデイアとしては、ステンレス鋼、炭素鋼等の鋼、アルミナ、ジルコニア、シリカ等が望ましく用いられる。この方法によって泳動粒子を作製するには、あらかじめ流動状態にした原材料をさらに粒状メデイアによって容器内に分散させた後、分散媒を冷却して分散媒から着色剤を含む樹脂を沈殿させる。粒状メデイアは冷却中及び冷却後にも引き続き運動状態を保ちながら、剪断及び/又は、衝撃を発生させ粒子径を小さくする。
【0091】
泳動粒子群34の含有量(セル中の全質量に対する含有量(質量%))は、所望の色相が得られる濃度であれば特に限定されるものではなく、セルの厚さ(すなわち、表示基板20と背面基板との基板間の距離)により含有量を調整することが、表示媒体12としては有効である。即ち、所望の色相を得るために、セルが厚くなるほど含有量は少なくなり、セルが薄くなるほど含有量を多くなる。一般的には、0.01質量%以上50質量%以下である。
【0092】
反射粒子群について説明する。
反射粒子群36は、泳動粒子群34とは異なる光学的反射特性を有する反射粒子から構成され、泳動粒子群34とは異なる色を表示する反射部材として機能するものである。そして、表示基板20と背面基板22との基板間の移動を阻害することなく、移動させる空隙部材としての機能も有している。すなわち、反射粒子群36の間隙を通って、背面基板22側から表示基板20側、又は表示基板20側から背面基板22側へ泳動粒子群34の各粒子は泳動(移動)する。この反射粒子群子36の色としては、例えば、背景色となるように白色又は黒色を選択することがよいが、その他の色であってもよい。また、反射粒子群36は、帯電されていない粒子群(つまり電界に応じて移動しない粒子群)であってもよいし、帯電されている粒子群(電界に応じて移動する粒子群)であってもよい。なお、本実施形態では、反射粒子群36は、帯電されていない粒子群で、白色である場合を説明するが、これに限定されることはない。
【0093】
反射粒子群36の粒子は、例えば、白色顔料(例えば酸化チタン、酸化ケイ素、酸化亜鉛など)を、樹脂(例えばポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ホルムアルデヒド縮合物等)に分散した粒子や、ポリスチレン、ポリエチレン、ビニルナフタレン等の樹脂粒子等が挙げられる。また、反射粒子群36の粒子として、白色以外の粒子を適用する場合、例えば、所望の色の顔料、あるいは染料を内包した前記した樹脂粒子を使用してもよい。顔料や染料は、例えばRGBやYMC色であれば、印刷インキやカラートナーに使用されている一般的な顔料又は染料が挙げられる。
【0094】
反射粒子群36を基板間へ封入するには、例えば、インクジェット法などにより行う。また、反射粒子群36を固定化する場合、例えば、反射粒子群36を封入した後、加熱(及び必要があれば加圧)して、反射粒子群36の粒子群表層を溶かすことで、粒子間隙を維持させつつ行われる。
【0095】
表示媒体12における上記セルの大きさとしては、表示媒体12の解像度と密接な関係にあり、セルが小さいほど高解像度な画像を表示する表示媒体12を作製することができ、通常、表示媒体12の表示基板20の板面方向の長さが10μm以上1mm以下程度である。
【0096】
上記表示基板20及び背面基板22を、間隙部材24を介して互いに固定するには、ボルトとナットの組み合わせ、クランプ、クリップ、基板固定用の枠等の固定手段を使用する。また、接着剤、熱溶融、超音波接合等の固定手段も使用してもよい。
【0097】
このように構成される表示媒体12は、例えば、画像の保存及び書換えがなされる掲示板、回覧版、電子黒板、広告、看板、点滅標識、電子ペーパー、電子新聞、電子書籍、及び複写機・プリンタと共用するドキュメントシート等に使用する。
【0098】
上記に示したように、本実施形態に係る表示装置10は、表示媒体12と、表示媒体12に電圧を印加する電圧印加部16と、制御部18とを含んで構成されている(図1参照)。
【0099】
電圧印加部16は、表面電極40及び背面電極46に電気的に接続されている。なお、本実施形態では、表面電極40及び背面電極46の双方が、電圧印加部16に電気的に接続されている場合を説明するが、表面電極40及び背面電極46の一方が、接地されており、他方が電圧印加部16に接続された構成であってもよい。
【0100】
電圧印加部16は、制御部18に信号授受されるように接続されている。
【0101】
制御部18は、装置全体の動作を司るCPU(中央処理装置)と、各種データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、装置全体を制御する制御プログラム等の各種プログラムが予め記憶されたROM(Read Only Memory)と、を含むマイクロコンピュータとして構成されていてもよい。
【0102】
電圧印加部16は、表面電極40及び背面電極46に電圧を印加するための電圧印加装置であり、制御部18の制御に応じた電圧を表面電極40及び背面電極46間に印加する
【0103】
次に、表示装置10の作用を説明する。この作用は制御部18の動作に従って説明する。
【0104】
ここで、表示媒体12に封入されている泳動粒子群34のうち、泳動粒子群34Bが負極性に帯電されており、泳動粒子群34Bが正極性に帯電されている場合を説明する。また、分散媒50は透明であり、反射粒子群36が白色であるものとして説明する。すなわち、本実施形態では、表示媒体12は、泳動粒子群34A及び泳動粒子群34Bの移動によって、それぞれの呈する色を表示し、その背景色として白色を表示する場合を説明する。
【0105】
まず、電圧を、特定時間(T1)、表面電極40が負極となり背面電極46が正極となるように印加することを示す初期動作信号を、電圧印加部16へ出力する。基板間に負極で且つ濃度変動が終了する閾値電圧以上の電圧が印加されると、負極に帯電している泳動粒子群34Aを構成する泳動粒子が背面基板22側へと移動して、背面基板22に至る(図2(A)参照)。一方で、正極に帯電している泳動粒子群34Bを構成する泳動粒子が表示基板20側へと移動して、表示基板20に至る(図2(A)参照)。
このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、反射粒子群36の色としての白色を背景色とし、泳動粒子群34Bの呈する色が視認される。なお、泳動粒子群34Aは、反射粒子群36に隠蔽され、視認され難くなる。
【0106】
このT1時間は、初期動作における電圧印加における電圧印加時間を示す情報として、予め制御部18内の図示を省略するROM等のメモリ等に記憶しておけばよい。そして、処理実行のときに、この特定時間を示す情報を読み取るようにすればよい。
【0107】
次に、表面電極40と背面電極46との電極間に、基板間に印加した電圧とは極性を反転させて、表面電極40を正極とし背面電極46を負極として電圧を印加すると、負極に帯電している泳動粒子群34Aは表示基板20側へと移動し、表示基板20側に至る(図2(B)参照)。一方で、正極に帯電している泳動粒子群34Bを構成する泳動粒子が背面基板22側へと移動して、背面基板22に至る(図2(B)参照)。
このとき、表示基板20側から視認される表示媒体12の色は、反射粒子群36の色としての白色を背景色とし、泳動粒子群34Aの呈する色が視認される。なお、泳動粒子群34Bは、反射粒子群36に隠蔽され、視認され難くなる。
【0108】
このように、本実施形態に係る表示装置10(表示媒体12)では、泳動粒子群34(泳動粒子群34A、泳動粒子群34B)が表示基板20又は背面基板22に到達して、付着することで表示が行われる。
【0109】
以上説明した本実施形態に係る表示装置10(表示媒体12)では、表示基板20と背面基板22の対向面が、上記特定のシリコーン鎖を持つ高分子化合物(上記構成単位(A)と上記構成単位(B)とを含む共重合体である高分子化合物)を含んで構成された表面層42、表面層48を有している。これにより、基板に付着した泳動粒子群34(泳動粒子)の泳動開始電圧を制御し得る。
この理由は定かではないが、フェニル基を有する有機基を含有する表面層を用いることにより、負極帯電している泳動粒子の付着力が強くなったためと考えられるためである。
このため、基板に付着した泳動粒子(泳動粒子群34)の泳動開始電圧を制御し得ると考えられる。
なお、泳動開始電圧とは、泳動粒子群34(泳動粒子)が泳動(移動)を開始する電界強度を付与するための電圧(所謂、閾値電圧)のことである。
【0110】
また、表示基板20と背面基板22の対向面が、上記特定のシリコーン鎖を持つ高分子化合物(上記構成単位(A)と上記構成単位(B)とを含む共重合体である高分子化合物)を含んで構成された表面層42及び表面層48を有することで、泳動粒子群34が当該対向面に移動し付着しても当該シリコーン鎖により泳動粒子群34の各泳動粒子の固着も抑制される。結果、色再現性や、高いコントラストが実現される。
【0111】
なお、上記本実施形態に係る表示媒体12及び表示装置10では、表示基板20に表面電極40、背面基板22に背面電極46を設けて当該電極間(即ち基板間)に電圧を印加して、当該基板間を粒子群34を移動させて表示させる形態を説明したがこれに限られず、例えば、表示基板20に表面電極40を設ける一方で、間隙部材に電極を設けて、当該電極間に電圧を印加して、表示基板20と間隙部材との間を粒子群34を移動させて表示させる形態であってもよい。
【0112】
また、上記本実施形態に係る表示媒体12及び表示装置10では、粒子群34として2種類(2色)の粒子群(34A、34B)を適用した形態を説明したが、1種類(1色)の粒子群を適用した形態であってもよいし、3種類(3色)以上の粒子群を適用した形態であってもよい。
【実施例】
【0113】
以下に本発明を実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。
【0114】
[高分子化合物の合成]
−高分子化合物A−
サイラプレーンFM−0721(チッソ社製、重量平均分子量Mw=5000) 5質量部、フェノキシエチレングリコールアクリレート(新中村化学社製、NKエステルAMP−10G) 5質量部、及びヒドロキシエチルメタクリレート (和光純薬社製)90質量部を、イソプロピルアルコール(IPA) 300質量部に混合し、重合開始剤としてAIBN(2,2−アゾビスイソブチルニトリル) 1質量部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行なった。これによる生成物を、ヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥し高分子化合物Aを得た。
【0115】
−高分子化合物B−
サイラプレーンFM−0721(チッソ社製、重量平均分子量Mw=5000) 5質量部、フェノキシエチレングリコールアクリレート(新中村化学社製、NKエステルAMP−10G) 10質量部、及びヒドロキシエチルメタクリレート (和光純薬社製)85質量部を、イソプロピルアルコール(IPA) 300質量部に混合し、重合開始剤としてAIBN(2,2−アゾビスイソブチルニト リル) 1質量部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行なった。これによる生成物を、ヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥し高分子化合物Bを得た。
【0116】
−高分子化合物C−
サイラプレーンFM−0721(チッソ社製、重量平均分子量Mw=5000) 5質量部、フェノキシエチレングリコールアクリレート(新中村化学社製、NKエステルAMP−10G) 20質量部、及びヒドロキシエチルメタクリレート (和光純薬社製)75質量部を、イソプロピルアルコール(IPA) 300質量部に混合し、重合開始剤としてAIBN(2,2−アゾビスイソブチルニトリル) 1質量部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行なった。これによる生成物を、ヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥し高分子化合物Cを得た。
【0117】
−高分子化合物D−
サイラプレーンFM−0721(チッソ社製、重量平均分子量Mw=5000) 5質量部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(新中村化学社製、NKエステル702A) 5質量部、及びヒドロキシエチルメタクリレート (和光純薬社製)90質量部を、イソプロピルアルコール(IPA) 300質量部に混合し、重合開始剤としてAIBN(2,2−アゾビスイソブチルニトリル) 1質量部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行なった。これによる生成物を、ヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥し高分子化合物Dを得た。
【0118】
−高分子化合物E−
サイラプレーンFM−0721(チッソ社製、重量平均分子量Mw=5000) 5質量部、 2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(新中村化学社製、NKエステル702A) 10質量部、及びヒドロキシエチルメタクリレート (和光純薬社製)85質量部を、イソプロピルアルコール(IPA) 300質量部に混合し、重合開始剤としてAIBN(2,2−アゾビスイソブチルニトリル) 1質量部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行なった。これによる生成物を、ヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥し高分子化合物Eを得た。
【0119】
−高分子化合物F−
サイラプレーンFM−0721(チッソ社製、重量平均分子量Mw=5000) 5質量部、 2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(新中村化学社製、NKエステル702A) 20質量部、及びヒドロキシエチルメタクリレート (和光純薬社製)75質量部を、イソプロピルアルコール(IPA) 300質量部に混合し、重合開始剤としてAIBN(2,2−アゾビスイソブチルニトリル) 1質量部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行なった。これによる生成物を、ヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥し高分子化合物Fを得た。
【0120】
−高分子化合物G−
サイラプレーンFM−0711(チッソ社製、重量平均分子量Mw=1000) 12質量部、フェノキシエチレングリコールアクリレート(新中村化学社製、NKエステルAMP−10G) 28質量部、及びヒドロキシエチルメタクリレート (和光純薬社製)61質量部を、イソプロピルアルコール(IPA) 300質量部に混合し、重合開始剤としてAIBN(2,2−アゾビスイソブチルニトリル) 1質量部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行なった。これによる生成物を、ヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥し高分子化合物Gを得た。
【0121】
−高分子化合物H−
サイラプレーンFM−0711(チッソ社製、重量平均分子量Mw=1000) 15質量部、フェノキシエチレングリコールアクリレート(新中村化学社製、NKエステルAMP−10G) 28質量部、及びメチルメタクリレート (和光純薬社製)57質量部を、イソプロピルアルコール(IPA) 300質量部に混合し、重合開始剤としてAIBN(2,2−アゾビスイソブチルニトリル) 1質量部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行なった。これによる生成物を、ヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥し高分子化合物Hを得た。
【0122】
−高分子化合物I−
サイラプレーンFM−0711(チッソ社製、重量平均分子量Mw=1000) 14質量部、フェノキシエチレングリコールアクリレート(新中村化学社製、NKエステルAMP−10G) 26質量部、及び1−ビニル−2−ピロリドン (和光純薬社製)60質量部を、イソプロピルアルコール(IPA) 300質量部に混合し、重合開始剤としてAIBN(2,2−アゾビスイソブチルニトリル) 1質量部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行なった。これによる生成物を、ヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥し高分子化合物Iを得た。
【0123】
−高分子化合物J(比較例用高分子化合物)−
サイラプレーンFM−0721(チッソ社製、重量平均分子量Mw=5000) 5質量部、及びヒドロキシエチルメタクリレート (和光純薬社製)95質量部を、イソプロピルアルコール(IPA) 300質量部に混合し、重合開始剤としてAIBN(2,2−アゾビスイソブチルニトリル) 1質量部を溶解し、窒素下で70℃、6時間重合を行なった。これによる生成物 を、ヘキサンを再沈殿溶媒として精製、乾燥し高分子化合物Jを得た。
【0124】
[泳動粒子分散液の調製]
−マゼンタ粒子(負帯電粒子)分散液−
シリコーン変性ポリマーKP−545(信越化学社製)4質量部をジメチルシリコーンオイル(信越化学社製KF−96−2CS)96質量部に溶解して溶液Xを調製した。次に、スチレンアクリル系ポリマー(ジメチルエタノールアミン中和)10質量部、水分散顔料溶液(Ciba社製ユニスパース・マゼンタ色、顔料濃度20重量%)5質量部、純水85質量部を混合して溶液Yを調整した。得られた溶液Xと溶液Yを混合し、超音波破砕機(エスエムテー社製UH−600S)にて分散・乳化を行った。
次に、この懸濁液を減圧(2KPa)、加熱(70℃)して水分を除去し、濃度を調整することにより、シリコーンオイル中にマゼンタ顔料を含んだ泳動粒子が分散したシリコーンオイル分散液(粒子固形分5重量%)を得た。
【0125】
作製したマゼンタ粒子分散液中のマゼンタ粒子(泳動粒子)の体積平均粒子径を測定(ホリバLA−300:レーザー光散乱・回折式粒度測定装置)した結果、280nmであった。
本マゼンタ粒子分散液中のマゼンタ粒子(泳動粒子)子の帯電極性を、2枚の電極基板間に該分散液を封入し、直流電圧を印加して泳動方向を評価した結果、負帯電であった。
【0126】
−シアン粒子(正帯電粒子)分散液−
シリコーン系モノマであるサイラプレーンFM−0711:95質量部、メタクリル酸メチル:3質量部、グリシジルメタクリレート2質量部をシリコーンオイル50質量部と混合し、重合開始剤としてアゾビスバレロニトリルを 0.5質量部添加して、重合を実施し、エポキシ基をもった反応性シリコーン系高分子Z(反応性分散剤)を作製した。重量平均分子量は40万であった。そして、反応性シリコーン系高分子Bの3質量%シリコーンオイル溶液を準備した。なお、シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル(信越化学社製KF−96L−2CS)を使用した。
【0127】
次に、N−ビニルピロリドンとN,N−ジエチルアミノエチルアクリレートとの重量比で88/12の共重合体(重量平均分子量6万)を通常のラジカル溶液重合で合成して使用した。
次に、水分散顔料溶液(Ciba社製ユニスパース・シアン色:顔料濃度26重量%)1質量部に、上記共重合体の10%水溶液3質量部を混合し、この混合溶液を上記反応性シリコーン系高分子Zの3質量%シリコーン溶液10質量部に混合し、これを超音波破砕機で10分間攪拌し、高分子及び顔料を含む水溶液をシリコーンオイル中に分散・乳化した懸濁液を調製した。
次に、この懸濁液を減圧(2KPa)、加熱(70℃)して水分を除去し、シリコーンオイル中に高分子及び顔料を含んだ泳動粒子が分散したシリコーンオイル分散液を得た。さらに、この分散液を100℃で3時間加熱して上記反応性シリコーン系高分子に反応させて結合させた。
次に、分散液中に粒子固形分中のN,N−ジエチルアミノエチルアクリレートのモル量の50%に相当する臭化ブチルを添加し80℃で3時間加熱し、アミノ基の4級化処理を行なった後、遠心分離装置を用いて粒子を沈降、シリコーンオイルでの洗浄と沈降を繰り返し、精製を行なった。このようにして、粒子固形分が5重量%のシアン粒子分散液を作製した。
【0128】
作製したシアン粒子分散液中のシアン粒子(泳動粒子)の体積平均粒子径を測定(ホリバLA−300:レーザー光散乱・回折式粒度測定装置)した結果、670nmであった。
シアン粒子分散液中のシアン粒子(泳動粒子)の帯電極性を、2枚の電極基板間に該分散液を封入し、直流電圧を印加して泳動方向を評価した結果、正帯電であった。
【0129】
[反射粒子分散液の調整]
−白色粒子分散液−
還流冷却管を取り付けた100ml三口フラスコに、2−ビニルナフタレン(新日鐵化学社製)を5重量部、シリコーンマクロマFM−0721(チッソ社製)を5重量部、開始剤として過酸化ラウロイル(和光純薬社製)を0.3重量部、シリコーンオイルKF−96L−1CS(信越化学社製)20重量部を加え、窒素ガスによるバブリングを15分間行った後、窒素雰囲気下にて65℃、24時間の重合を行った。
得られた白色粒子をシリコーンオイルにて固形分濃度40wt%に調製し、白色粒子分散液とした。このとき、白色粒子の粒子径は、450nmであった。
【0130】
[実施例1〜9、比較例1]
−評価用表示媒体セルの作製−
厚さ0.7mmのガラスからなる基板上に電極としてITO(酸化スズインジウム)をスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、ITO基板を得た。その後、表1に従った高分子化合物の層をITO基板上に形成し、これを表面層とした。
なお、高分子化合物の層は、次のようにして成膜した。まず、高分子化合物を固形分濃度が4wt%になるようにIPA(イソプロピルアルコール)に溶解し、スピンコート法によりITO基板上に成膜し、その後、130℃で1時間乾燥させることにより、膜厚が100nmの高分子化合物の層を形成した。
【0131】
このようにして作製した表面層付きITO基板を2枚用意し、表示基板、及び背面基板とした。50μmのテフロン(登録商標)シートをスペーサーとして、互いの表面層を対向させて背面基板上に表示基板を重ね合わせて、クリップにて固定した。
その後、マゼンタ粒子分散液を2枚の表面層付きITO基板間の間隙に注入し、評価用表示媒体セルを作製した。
【0132】
−評価−
作製した評価用表示媒体セルを用いて、表示基板(そのITO電極)がプラス、背面基板がマイナスとなるように、基板間(そのITO電極間)に最初に直流電圧を印加して負帯電のマゼンタ粒子を表示基板上に泳動させた。このとき表示基板側面には泳動してきた泳動粒子の色が観察される。その後、基板間(そのITO電極間)に三角波(0.5V/sec)を印加しながら、表示基板面の光学強度を測定し、色変化が開始し始めた電圧を閾値電圧(泳動粒子の泳動開始電圧)とした。結果を表1に示す。
【0133】
【表1】

【0134】
なお、表1中の詳細は、以下の通りである。
・FM0721:サイラプレーンFM−0721(チッソ社製、重量平均分子量Mw=5000:構造式(X1)[n=68、R=ブチル基]を持ち、Ra=メチル基、n=3の構成単位(A)を構成する単量体)
・FM0711:サイラプレーンFM−0711(チッソ社製、重量平均分子量Mw=1000:構造式(X1)[n=11、R=ブチル基]を持ち、Ra=メチル基、n=3の構成単位(A)を構成する単量体)
・AMP10G:NKエステルAMP−10G(新中村化学社製:フェノキシエチレングリコールアクリレート)
・702A:NKエステル702A(新中村化学社製:2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート)
・HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
・MMA:メチルメタクリレート
・VP:1−ビニル−2−ピロリドン
【0135】
上記結果から、本実施例では、比較例に比べ、閾値電圧も高く、その組成比により、閾値電圧が制御されていることがわかる。
【0136】
[実施例10]
−評価用表示媒体セルの作製−
厚さ0.7mmのガラスからなる基板上に電極としてITO(酸化スズインジウム)をスパッタリング法により50nmの厚さで成膜し、ITO基板を得た。その後、高分子化合物Cの層をITO基板上に形成し、これを表面層とした。
なお、高分子化合物Cの層は、次のようにして成膜した。まず、高分子化合物を固形分濃度が4wt%になるようにIPA(イソプロピルアルコール)に溶解し、スピンコート法によりITO基板上に成膜し、その後、130℃で1時間乾燥させることにより、膜厚が100nmの高分子化合物Cの層を形成した。
【0137】
このようにして作製した表面層付きITO基板を2枚用意し、表示基板、及び背面基板とした。50μmのテフロン(登録商標)シートをスペーサーとして、互いの表面層を対向させて背面基板上に表示基板を重ね合わせて、クリップにて固定した。
その後、白色粒子分散液10質量部とシアン粒子分散液5質量部、及びマゼンタ粒子分散液5質量部を混合した混合液を、2枚の表面層付きITO基板間の間隙に注入し、評価用表示媒体セルを作製した。
【0138】
−評価−
作製した評価用表示媒体セルを用いて、表示基板(そのITO電極)がプラス、背面基板(そのITO電極)がマイナスとなるように、基板間(そのITO電極間)に20Vの電圧を5秒間印加した。分散された負帯電のマゼンタ粒子はプラス側電極、即ち表示基板側へ移動し、正帯電のシアン粒子はマイナス側電極、即ち背面基板側へ移動し、表示基板側から観察するとマゼンタ色が観察された。
その後、表示基板(そのITO電極)がマイナス、背面基板(そのITO電極)がプラスとなるように、基板間(そのITO電極間)に20Vの電圧を5秒間印加したところ、負帯電のマゼンタ粒子は、プラス側電極、即ち、背面基板側へ移動し、正帯電のシアン粒子はマイナス側電極、すなわち、表示基板側へ移動し、表示基板側から観察するとシアン色が観察された。
更に、その後、表示基板(そのITO電極)がプラス、背面基板(そのITO電極)がマイナスとなるように、基板間(そのITO電極間)に5Vの電圧を5秒間印加したところ、負帯電のマゼンタ粒子は、マイナス側電極、即ち背面基板側に保持されたまま、正帯電のシアン粒子は、マイナス側電極、即ち背面基板側へ移動し、表示基板側から観察すると、白色が観察された。
負帯電のマゼンタ粒子が表示基板側、正帯電のシアン粒子が背面基板側に移動した状態で、表示基板(そのITO電極)がマイナスとなるように、基板間(そのITO電極間)に5Vの電圧を5秒間印加したところ、負帯電のマゼンタ粒子は、表示基板側に保持されたまま、正帯電のシアン粒子は、マイナス側電極、即ち表示基板側へ移動し、表示基板側から観察すると、マゼンタ粒子とシアン粒子が混色した青色が観察された。
以上から、本実施例では、各泳動粒子の閾値電圧の差異により、多色表示が行えることがわかった。
【符号の説明】
【0139】
10 表示装置
12 表示媒体
16 電圧印加部
18 制御部
20 表示基板
22 背面基板
24 間隙部材
34、34A、34B 泳動粒子群
36 反射粒子群
38 支持基板
40 表面電極
42 表面層
44 支持基板
46 背面電極
48 表面層
50 分散媒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透光性を有すると共に間隙をもって配置された一対の基板と、
前記一対の基板間に封入された分散媒と、
前記分散媒中に分散され、前記一対の基板間に形成された電界に応じて該分散媒中を泳動する泳動粒子群と、
前記一対の基板の対向面の少なくとも一方に設けられ、下記構成単位(A)と下記構成単位(B)とを含む共重合体である高分子化合物を含んで構成された表面層と、
を有することを特徴とする表示媒体。
【化1】

(前記構成単位(A)及び(B)中、Xは、シリコーン鎖を含む基を表す。Ra、及びRaは、それぞれ独立に水素原子、又はメチル基を表す。Rbは、置換若しくは未置換のフェニル基を有する有機基を表す。n1、及びn2は、共重合体全体に対するそれぞれの構成単位のモル%を示し、0<n1<50、0<n2<80を表す。nは、1以上3以下の自然数を表す。)
【請求項2】
前記構成単位(A)及び(B)中、Rbは、−Rb21−O−Ph(但し、Rb21は炭素数1以上11以下のアルキレン基、又は水酸基で置換された炭素数1以上11以下のアルキレン基を表す。Phは、置換若しくは未置換のフェニル基を表す。)を表す請求項1に記載の表示媒体。
【請求項3】
前記構成単位(A)及び(B)中、n1<n2を表す請求項1又は2に記載の表示媒体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示媒体と、
前記一対の基板間に電圧を印加する電圧印加手段と、
を備えたことを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−68411(P2012−68411A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212751(P2010−212751)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】