説明

表示媒体、表示装置及び表示方法

【課題】より鮮明な表示が可能な表示媒体、この表示媒体を用いた大型化を回避することのできる表示装置及び表示方法を提供する。
【解決手段】少なくとも基板1、該基板の一方の面に設けた共通電極2及び該共通電極上に電界の作用により光学特性が可逆的に変化する表示体6を、マス目状の壁材、又はハニカム構造の壁材により、不連続に分散して形成した可視性記録を行うことのできる表示層9からなる表示媒体であって、該マス目状の壁材、又はハニカム構造の壁材が、シロキサン成分を含有するものである表示媒体。表示媒体及び該表示媒体に視認することのできる情報を表示する書き込み装置からなり、該表示媒体と該書き込み装置とは少なくとも書き込み時には近接するように着脱可能とした表示装置であって、該書き込み装置は、画像信号に応じて該表示媒体に電界を作用させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体、表示装置及び表示方法に関し、さらに詳しくは、電界により光学特性が可逆的に変化する表示媒体、この表示媒体を用いた表示装置及び表示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示装置、特に可逆性の表示装置として、電気泳動表示装置が知られている。電気泳動表示装置は、電界を印加、制御することにより所望の画像表示と消去が可能となるものである。この表示装置に形成される画像はメモリー性を有するため、画像表示を保持する電力を必要としない低消費電力装置として、また、通常の印刷物に相当した広い画像視野角を有する広視野角表示装置として注目されている。
【0003】
従来、このような表示装置として、図1に示すような断面構造を有する装置が知られている(特許文献1参照)。この装置では、透明基板1の一方の面上に、所要のパターン状に形成された透明電極2を形成し、スペーサー3を介して、これら一組の透明電極基板を対向配置して形成される空間に、着色した分散媒中にその分散媒とは色調の異なる複数の泳動粒子を分散させた電気泳動表示液4を封入する。泳動粒子は分散媒中で表面に電荷を帯びており、透明電極間に電圧を印加すると、電荷を帯びた泳動粒子はその極性と異なる透明電極面方向に泳動し、粒子自身の色調が表示される。次に、上記とは逆方向の電圧を電極間に印加すると、泳動粒子は前回とは逆方向に移動し、粒子自身の色調が表示されていた部分は分散媒の色調が表示される。ところが、このような装置構造と原理によって可逆的な表示が繰り返されると、泳動粒子の凝集や付着現象によって表示ムラが発生するという問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、図2に示すように、対向電極2間に多孔質状の又はメッシュ状のスペーサー5を配置することにより、分散液4を不連続に分割し、表示動作の安定化を図る方法が提案されている(特許文献2及び特許文献3参照)。しかし、このような構造の場合、分散液の一様な封入処理が困難であるため又は封入時に分散液の特性が変化するため、再現性が低い等の問題があった。
【0005】
また、特許文献4では、図3に示すように、電気泳動表示液6を内包した多数のマイクロカプセル7を形成し、これらを対向電極2間に配備した表示装置が提案され、上記問題を解決している。この表示装置では、マトリックス状の2次元駆動が容易であるため、特に、その駆動方式として、アクティブマトリックス駆動方式を採用することにより、高速かつ高解像度の書き込みが可能となる。しかし、その駆動方式では、表示媒体を駆動部から切り離すことは実質上不可能であるため、表示媒体が大型化し、かつ高価なものとなる。また、透明基板としてガラス板等を使用するため、紙のように重ねたりすると傷が発生し、紙と同様の携帯性を有していないものであった。さらに、電気泳動表示液による視認性を有する表示以外に、この表示装置に非視認性の情報記録機能を付与させる場合、その駆動方式による制限から、より表示媒体が大型化し、より高価な装置となったり、新たな機能の付与そのものが不可能となるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消し、より鮮明な表示が可能な表示媒体、この表示媒体を用いた大型化を回避することのできる表示装置及び表示方法を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために、特にマトリックス材料に着目して鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに到った。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 少なくとも基板、該基板の一方の面に設けた共通電極及び該共通電極上に電界の作用により光学特性が可逆的に変化する表示体を、マス目状の壁材、又はハニカム構造の壁材により、不連続に分散して形成した可視性記録を行うことのできる表示層からなる表示媒体であって、該マス目状の壁材、又はハニカム構造の壁材が、シロキサン成分を含有するものであることを特徴とする表示媒体である。
<2> シロキサン成分が、ポリジメチルシロキサンジクロリド及びポリジメチルシロキサンジアミンのいずれかからなる前記<1>に記載の表示媒体である。
<3> 該表示層上に、オーバーコート層を設けたものである前記<1>又は<2>に記載の表示媒体である。
<4> 該マス目状の壁材、又はハニカム構造の壁材が、熱硬化性樹脂及び/又は活性エネルギー硬化性樹脂からなるものである前記<1>〜<3>のいずれかに記載の表示媒体である。
<5> 該オーバーコート層が、熱硬化性樹脂及び/又は活性エネルギー硬化性樹脂からなるものである前記<3>又は<4>に記載の表示媒体である。
<6> 該表示層の少なくとも一部分に、印刷層を設けたものである前記<1>〜<5>のいずれかに記載の表示媒体である。
<7> 該オーバーコート層の少なくとも一部分に、印刷層を設けたものである前記<3>〜<6>のいずれかに記載の表示媒体である。
<8> 該印刷層上に、印刷保護層を設けたものである前記<6>又は<7>に記載の表示媒体である。
<9> 該表示層と共に、情報記録部を有するものである前記<1>〜<8>のいずれかに記載の表示媒体である。
<10> 該情報記録部が、磁気の作用により情報記録の書き込み及び読み出しを行うものである前記<9>に記載の表示媒体である。
<11> 該情報記録部が、光の作用により情報記録の書き込み及び読み出しを行うものである前記<9>に記載の表示媒体である。
<12> 該情報記録部が、集積回路メモリー又は光メモリーである前記<9>に記載の表示媒体である。
<13> 該情報記録部に記録される情報が、表示媒体の表裏を示す情報及び/又は表示媒体の位置を示すものである前記<9>〜<12>のいずれかに記載の表示媒体である。
<14> 該表示体が、分散媒、白色粒子及び該白色粒子と色調を異にする粒子からなる表示液である前記<1>〜<13>のいずれかに記載の表示媒体である。
<15> 該白色粒子が、有機高分子物質からなる中空粒子である前記<14>に記載の表示媒体である。
<16> 該白色粒子と色調を異にする粒子が、チタンブラックである前記<14>に記載の表示媒体である。
<17> 前記<1>〜<16>のいずれかに記載の表示媒体及び該表示媒体に視認することのできる情報を表示する書き込み装置からなり、該表示媒体と該書き込み装置とは少なくとも書き込み時には近接するように着脱可能とした表示装置であって、該書き込み装置は、画像信号に応じて該表示媒体に電界を作用させることができ、かつ該表示媒体との平面位置関係を相対的に変化させ得る機構を有する電極アレイを装備したことを特徴とする表示装置である。
<18> 前記<1>〜<16>のいずれかに記載の表示媒体及び該表示媒体に視認することのできる情報を表示する書き込み装置からなり、該表示媒体と該書き込み装置とは少なくとも書き込み時には近接するように着脱可能とした表示装置であって、該書き込み装置は、画像信号に応じて該表示媒体表面に電荷を付与させることができ、かつ該表示媒体との平面位置関係を相対的に変化させ得る機構を有するイオン銃アレイを装備したことを特徴とする表示装置である。
<19> 前記<1>〜<16>のいずれかに記載の表示媒体及び該表示媒体に視認することのできる情報を表示する書き込み装置からなり、該表示媒体と該書き込み装置とは少なくとも書き込み時には近接するように着脱可能とした表示装置であって、該書き込み装置は、複数の信号電極とを装備し、その交差部に画像信号に応じて該表示媒体に電界を印加することのできるスイッチング素子を有し、該スイッチング素子によって該表示媒体に画像を表示することを特徴とする表示装置である。
<20> 該スイッチング素子が、薄膜トランジスタである前記<19>に記載の表示装置である。
<21> 少なくとも基板、該基板の一方の面に設けた共通電極及び該共通電極上に電界の作用により光学特性が可逆的に変化する表示体を設けた表示層からなる表示媒体により可視性記録を行う表示方法において、前記<1>〜<16>のいずれかに記載の表示媒体を用いることを特徴とする表示方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より鮮明な表示が可能な表示媒体、この表示媒体を用いた大型化を回避することのできる表示装置及び表示方法が提供され、光学特性が可逆的に変化する表示分野に寄与するところはきわめて大きいものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来の表示媒体の一例を示す断面図である。
【図2】従来の表示媒体の別の一例を示す断面図である。
【図3】従来の表示媒体の別の一例を示す断面図である。
【図4】本発明による表示媒体の一例を示す断面図である。
【図5】本発明による表示媒体の別の一例を示す断面図である。
【図6】本発明による表示媒体のさらに別の一例を示す断面図である。
【図7】(a)は本発明による表示媒体の他の一例を示す断面図、(b)は(a)の上面透視図である。
【図8】書き込み装置の一例を示す断面図である。
【図9】書き込み装置の別の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の特徴は、電界の作用により可逆的な可視性記録が可能な表示媒体であって、基板、該基板の一方の表面に設けた共通電極及びその共通電極上に設けた、電界の作用により光学特性が可逆的に変化する表示体を、マス目状の壁材、又はハニカム構造の壁材(マトリックス材料)により、不連続に分散して形成した可視性記録を行うことができる表示層から構成され、このマトリックス材料がシロキサン成分を含有することにある。
【0011】
本発明の表示媒体は、表示体を分散したマトリックス材料からなる表示層から構成され、特に、表示体は不連続に表示層中に存在することを特徴とする。ここで、表示体の不連続な存在とは、表示体(A)とマトリックス材料(B)から構成されるA球構造、B球構造、A棒構造、B棒構造、又はABラメラ構造等の相分離構造を意味する。この不連続な表示体の存在により、各表示体の独立した表示制御が可能となり、鮮明な画像が形成されるのである。
【0012】
本発明の表示媒体の表示には、例えば、表示媒体に画像信号に応じて電界を作用させることができ、かつ表示媒体との平面的位置関係を相対的に変えられる機構を有する電極アレイ又はイオン銃アレイを装備した表示装置を用いて、表示媒体の共通電極をアース電位とし、表示層の表面に電極アレイ又はイオン銃アレイを密着又は近接させて、表示媒体との平面的位置関係を相対的に変えながら、画像信号に応じた電位を表示媒体の所定部に与える表示制御方式が適用でき、可視性表示が可能となる。
【0013】
本発明の電界の作用により光学特性が可逆的に変化する表示体として、双安定性コレステリック液晶、ゲスト−ホスト型液晶、着色した分散媒中に分散媒とは色調の異なる泳動粒子を分散させた又は無色の分散媒に着色した泳動粒子を分散させた電気泳動表示体等が挙げられる。
【0014】
このような種々の表示体を不連続に分散したマトリックス材料からなる表示層は、場合によっては、表示体とマトリックス材料との組み合わせにより、様々な相分離構造が存在し、表示体を構成する材料は、その構成材料同士と動力学的に相互作用すると共に、マトリックス材料との界面でマトリックス材料と相互作用する。特に、表示体の構成材料とマトリックス材料との相互作用は、表示媒体の表示特性に影響を及ぼし、表示に関わる表示体の構成材料の動きが妨げられる。場合によっては、表示体の構成材料がマトリックス材料と物理的に付着又は固着して、コントラストが低下し、鮮明な画像が得られないことがある。しかし、シロキサン成分を含有するマトリックス材料を用いることにより、表示体の構成材料の物理的な付着や固着が防止され、高コントラストの画像が得られるものとなる。すなわち、本発明の表示媒体は、シロキサン成分を含有するマトリックス材料に表示体を分散することにより、表示体とマトリックス材料との組み合わせに依存することなく、また、その相分離構造に依存することなく、鮮明な画像を可逆的に繰り返し形成することができる。
【0015】
シロキサン成分としては、下記一般式(1)で表される構造単位を有するものを挙げることができる。
−(Si(R1)(R2)−O)− (1)
式(1)中、R1とR2は、アルキル基、アルコキシアルキル基、メルカプトアルキル基、アミノアルキル基、アルキルアミノアルキル基、カルボキシアルキル基、グリシジルオキシアルキル基、アラルキル基、アリールオキシアルキル基、アルケニル基、アリール基又はアルコキシ基等であるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
また、表示層には様々な相分離構造が存在するため、表示体の構成材料の体積抵抗や誘電率等の電気的な特性が所定領域(すなわち、表示を行おうとする領域)内で不均一になる場合がある。この場合、各表示体の独立制御は可能なものの、その表示層内の電気的な不均一性により、所定の表示制御が不可能となり、画像の鮮明性が低下する。これを防止するために、表示層表面が1×1012Ω以上の表面抵抗率を有していることが好ましい。
【0017】
本発明においては、上記表示層内で不連続に分散した表示体がマイクロカプセルに内包され、このマイクロカプセルがシロキサン成分を含有するものであることが好ましい。表示体をマイクロカプセル化することにより、表示体のマトリックス材料への不連続な分散が容易になるからである。また、マイクロカプセルは粉末状の固体として扱うことができるため、ブレードコート、スクリーン印刷、ロールコート等の従来の手法を用いて基板上に設層することができるので、製造が容易である。さらに、シロキサン成分を含有するマイクロカプセルを用いことにより、表示体の構成材料とマイクロカプセルとの物理的な相互作用が軽減され、鮮明な画像が繰り返し得られるものとなる。
【0018】
マイクロカプセル粒子は、in−situ法、界面重合法又はコアセルベーション法等により調製することが可能である。マイクロカプセルの壁材としては、シロキサン成分とポリウレタン、ポリ尿素、ポリ尿素−ポリウレタン、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリエステル、アラミド、ポリアリレート、ポリスルホンアミド、ポリカーボネート、ポリスルフィネート、エポキシリ、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル及びゼラチン等から選択された一種類以上のポリマー成分との混合物又はシロキサン成分が主鎖、側鎖及び/又は末端に化学結合したポリウレタン、ポリ尿素、ポリ尿素−ポリウレタン、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリエステル、アラミド、ポリアリレート、ポリスルホンアミド、ポリカーボネート、ポリスルフィネート、エポキシリ、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、酢酸ビニル又はゼラチン等又はこれらの混合物等が挙げられる。
【0019】
本発明においては、電界により可逆的な可視性表示が可能な表示媒体において、この表示媒体が、基板、該基板の一方の表面に設けた共通電極、その共通電極上に設けた電界により光学特性が可逆的に変化する表示体を不連続に分散しシロキサン成分を含有したマトリックス材料からなる表示層の少なくとも一部分の表面上に、オーバーコート層を設けることが好ましい。望ましくは、1×1012Ω以上、さらに望ましくは1×1014〜1016Ωの表面抵抗率を有するオーバーコート層を設ける。
【0020】
表示層上に設けた1×1012Ω以上の表面抵抗率を有するオーバーコート層は、上記の1×1012Ω以上の表面抵抗率を有する表示層と同様の機能を有すると共に、表示媒体の作製を容易にするものである。すなわち、オーバーコートを有さない表示層は、表示体とマトリックス材料の二種類の成分から構成され、その構成上、表示層の表面は不均一になりやすく、1×1012Ω以上の表面抵抗率を得るために設層条件等を適宜限定する必要がある。しかし、オーバーコート層を表示層上に設けた場合、そのような設層条件等を限定する必要性が少なく、容易に目的の表示媒体を作製することができる。表面抵抗値は、調整剤の種類や量により調整することができる。本発明における表面抵抗値は、JISK6911に準じて測定し、実際の値としては3〜5回測定した平均値である。
【0021】
また、本発明の表示媒体は、上記の表示層又は上記オーバーコート層が、熱硬化性樹脂及び/又は活性エネルギー線硬化性樹脂からなるものであることが好ましい。一般に、記録操作により、及び/又は表示媒体相互や他の物体との接触により、視認性低下の一因となる擦傷が発生し易くなるが、熱硬化性樹脂及び/又は活性エネルギー線硬化性樹脂からなる表示層又はオーバーコート層は、その擦傷を防止する効果を奏するのである。
【0022】
熱硬化性樹脂は、自己架橋性又は架橋剤と反応して共有結合を形成することが可能な官能基を有したポリマー及び/又はポリマー性化合物からなり、任意の架橋促進剤と触媒を用いて形成される。自己架橋性又は架橋剤と反応して共有結合を形成することが可能な官能基を有したポリマー及びポリマー性化合物としては、ポリビニルアルキルカルバメート、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリウレア、ポリウレタン、ウレタンプレポリマー、カルボキシ変性ポリウレタン、アミノ変性ポリウレタン、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、不飽和ポリエステル、ポリエーテルアクリレート、N−メチロールアクリルアミド、メラミン、メチロール化メラミン、アルキド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フラン樹脂、レゾシノール樹脂、エポキシ樹脂又はこれらの変性体等が挙げられる。架橋促進剤と触媒は、自己架橋性又は架橋剤と反応して共有結合を形成することが可能な官能基を有したポリマー及び/又はポリマー性化合物と架橋剤の組合せに応じて適宜選択すればよい。活性エネルギー線硬化性樹脂は、光重合性モノマー(反応性希釈剤)、光重合性オリゴマー、不飽和プレポリマー又は不飽和オリゴマー及び任意の光開始剤から形成される。
【0023】
光重合性モノマーとしては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート又は2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェート等の単官能モノマー、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート又はヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等の二官能性モノマー、又はジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトールトリアクリレート又はトリメチロールプロパントリアクリレート等の三官能以上のモノマーが挙げられる。
【0024】
光重合性オリゴマーとしては、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコンアクリレート、アルキッドアクリレート又はメラミンアクリレート等が挙げられる。光開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸メチル、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル−2−)モルホリノプロパン−1、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジル、ベンジルジメチルケタール、2−クロロチオキサントン又は2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0025】
不飽和プレポリマー及びオリゴマーとしては、不飽和ポリエステル、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、不飽和アクリル樹脂、不飽和シリコーン又は不飽和フッ素樹脂等が挙げられる。
【0026】
また、本発明においては、上記の表示層の少なくとも一部分及び/又はオーバーコート層上の少なくとも一部分に、印刷層を設けること、上記の印刷層上に印刷保護層を設けること、電界により光学特性が可逆的に変化する表示粒子と該粒子を分散したマトリックス材料からなる表示層以外に、情報記録部を設けること、上記の情報記録部が、磁気の作用により情報記録の書き込みと読み出しが可能な記録部であること、上記の情報記録部が、集積回路メモリー又は光メモリーであること、上記の情報記録部が、光の作用により情報記録の読み出しが可能な透明な記録部であること、上記の情報記録部の情報が、表示媒体の表裏を示す情報及び/又は表示媒体の位置を示す情報であることが好ましい。
【0027】
本発明の表示媒体に用いる印刷層は、表示媒体の使用目的に応じて、オーバーコート層上の少なくとも一部分に公知のオフセット印刷、グラビア印刷及びスクリーン印刷により形成することができる。また、本発明の表示媒体に用いる印刷保護層は、印刷層と同様に、公知の方法により形成することができ、また、印刷保護層は、オーバーコート層上に設けることも可能である。
【0028】
本発明の表示媒体に用いる磁気の作用により情報記録の書き込みと読み出しが可能な記録部、集積回路メモリー又は光メモリー情報記録部は、従来の記録技術を用いて作製することができる。また、本発明の表示媒体に用いる光の作用により情報記録の読み出しが可能な透明な記録部は、上記の記録部と異なり書き込みが不可能な読み取り専用の記録部であり、近赤外蛍光体や紫外蛍光体から形成する。この記録部は、電気泳動性の書き込み、消去時の電界に影響されないため、電気泳動により表示された画像の表示内容とその透明な記録部の情報とを組み合わせて、可逆非可逆情報記録媒体として利用することができる。
【0029】
さらに、本発明においては、上記の電界により光学特性が可逆的に変化する表示粒子が、分散媒、白色粒子及びこの白色粒子と色調の異なる着色粒子からなる表示液を内包したカプセル粒子からなること、上記の白色粒子が、有機ポリマーからなる中空粒子であること、上記の着色粒子が、チタンブラックであることが好ましい。分散媒、白色粒子及びこの白色粒子と色調の異なる着色粒子からなる表示液を内包したカプセル粒子からなる表示粒子は、白色粒子及び/又は着色粒子が電界の作用によりカプセル粒子内を泳動し、白色粒子が白色色調を呈示し、着色粒子がある波長領域の光を吸収して有色の色調を呈示する。着色粒子の色調は、表示媒体の使用目的に応じて適宜選択される。
【0030】
白色粒子としては、有機材料、無機材料及び有機−無機複合材料によって構成され、具体的には、有機ポリマーからなる中空粒子、有機ポリマーからなる多孔質粒子、無機物質からなる中空粒子、無機物質からなる多孔質粒子及びこれらの空隙を有する白色粒子の表面を樹脂等で被覆された粒子等を挙げることができる。特に、光の反射効率の観点から有機ポリマーからなる中空粒子が好ましく用いられる。
【0031】
有機ポリマーからなる中空粒子及び有機ポリマーからなる多孔質粒子としては、従来公知の方法で製造することが可能であり、微粒子ポリマー(東レリサーチセンター)、微孔性ポリマー(東レリサーチセンター)、高分子微粒子(シーエムシー)等をはじめとする各種文献に掲載されている方法によって作製することが可能である。例えば、乳化重合を利用した方法、シード乳化重合法、ソープフリー重合法、分散重合法、懸濁重合法と発泡を利用した方法、シード重合法と発泡を利用した方法、シード重合と重合収縮を利用した方法、W/O/Wエマルジョンの懸濁重合による方法、スプレードライの液滴の表面乾燥を利用した方法、ポリマーエマルジョンを電解質固体粒子の添加により凝集させるシード凝集法等が挙げられるが、これらの方法に限定されるものではない。
【0032】
また、有機ポリマーからなる中空粒子及び有機ポリマーからなる多孔質粒子を構成する材料は、使用する透明な分散媒に応じてその分散媒に溶解しない材料を適宜選択して使用することができる。例えば、スチレン系(コ)ポリマー、スチレン−アクリル系(コ)ポリマー、スチレン−イソプレン系(コ)ポリマー、ジビニルベンゼン系(コ)ポリマー、メチルメタクリレート系(コ)ポリマー、メタクリレート系(コ)ポリマー、エチルメタクリレート系(コ)ポリマー、エチルアクリレート系(コ)ポリマー、n−ブチルアクリレート系(コ)ポリマー、アクリル酸系(コ)ポリマー、アクリロニトリル系(コ)ポリマー、アクリルゴム−メタクリレート系(コ)ポリマー、エチレン系(コ)ポリマー、エチレン−アクリル酸系(コ)ポリマー、ナイロン系(コ)ポリマー、シリコーン系(コ)ポリマー、ウレタン系(コ)ポリマー、メラミン系(コ)ポリマー、ベンゾグアナミン系(コ)ポリマー、フェノール系(コ)ポリマー、フッソ(テトラクロロエチレン)系(コ)ポリマー、塩化ビニリデン系(コ)ポリマー、4級ピリジニウム塩系(コ)ポリマー、合成ゴム(コ)ポリマー、セルロース、酢酸セルロース、キトサン、アルギン酸カルシウム等のポリマー材料及びこれらのポリマー材料に対して架橋をして耐溶剤性機能を向上させたポリマー材料等が挙げられるが、これらのポリマー材料に限定されるものではない。より具体的には、ローム・アンド・ハース社のローペイク、JSR製中空粒子、松本油脂の熱膨張マイクロカプセル、大日本インキのGrnngoll等が挙げられる。
【0033】
また、無機材料からなる中空粒子及び無機物質からなる多孔質粒子としては、従来公知の方法で作製される各種の無機材料からなる中空粒子及び無機物質からなる多孔質粒子を用いることができる。これらの製法の例としては、粉床法、トポケミカル法、メカノケミカル反応等の付着を利用した方法、表面沈積法、含浸法、界面反応法等の沈殿反応を利用する方法、界面ゲル化反応法及び焼成発泡法等が挙げられる。これらの具体例として、界面反応法(新しい材料設計法への挑戦/1998年5月29日:セミナー資料)を用いることによって作製されたシリカ、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸ストロンチウム、ケイ酸バリウム、炭酸コバルト、酸化コバルト、コバルト、酸化鉄、コバルト−鉄炭酸塩、塩基性炭酸銅、金属銅、炭酸ニッケル等の無機球形中空粒子及び無機球形多孔質粒子、及び界面ゲル化反応法(色材、70(2)84−91,1997)によって作製された酸化アルミ、二酸化チタン等の無機球形中空粒子及び無機球形多孔質粒子、焼成発泡法による発泡性シリカ等が挙げられる。さらに、上記の有機ポリマーからなる中空粒子及び有機ポリマーからなる多孔質粒子の表面に対して、各種の無機顔料の微粒子を付着させた複合粒子も使用可能であり、例えば、有機ポリマーからなる中空粒子と二酸化チタンとのオーダードミクスチャーによる複合粒子が挙げられる。
【0034】
また、これらの無機材料からなる中空粒子及び無機物質からなる多孔質粒子は、各種の有機ポリマー材料をその表面に被覆して使用することも可能である。その方法としては、コートマイザー法が好ましい。白色粒子と色調の異なる着色粒子として、無機着色粒子及び有機着色粒子を用いることができる。
【0035】
無機着色粒子としては、カドミウムイエロー、カドミウムリポトンイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、チタンバリウムイエロー、カドミウムオレンジ、カドミウムリポトンオレンジ、モリブデートオレンジ、ベンガラ、鉛丹、銀朱、カドミウムレッド、カドミウムリポトンレッド、アンバー、褐色酸化鉄、亜鉛鉄クロムブラウン、クロムグリーン、酸化クロム、ビリジアン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、チタンコバルトグリーン、紺青、コバルトブルー、群青、セルリアンブルー、コバルトアルミニウムクロムブルー、コバルトバイオレット、ミネラルバイオレット、カーボンブラック、鉄黒、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅クロムブラック、銅クロムマンガンブラック、チタンブラック、アルミニウム粉、銅粉、鉛粉、鈴粉、亜鉛粉等が挙げられる。
【0036】
有機着色粒子としては、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、縮合アゾイエロー、アントラピリミジンイエロー、イソインドリンイエロー、銅アゾメチンイエロー、キノフタロインイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、ニッケルジオキシムイエロー、モノアゾイエローレーキ、ジニトロアニリンオレンジ、ピラゾロンオレンジ、ペリノンオレンジ、ナフトールレッド、トルイジンレッド、パーマネントカーミン、ブリリアントファストスカーレット、ピラゾロンレッド、ローダミン6Gレーキ、パーマネントレッド、リソールレッド、ボンレーキレッド、レーキレッド、ブリリアントカーミン、ボルドー10B、ナフトールレッド、キナクリドンマゼンタ、縮合アゾレッド、ナフトールカーミン、ペリレンスカーレッド、縮合アゾスカーレッド、ベンズイミダゾロンカーミン、アントラキノニルレッド、ペリレンレッド、ペリレンマルーン、キナクリドンマルーン、キナクリドンスカーレッド、キナクリドンレッド、ジケトピロロピロールレッド、ベンズイミダゾロンブラウン、フタロシアニングリーン、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、アルカリブルートーナー、インダントロンブルー、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットレーキ、ジオキサジンバイオレット、ナフトールバイオレット等が挙げられる。
【0037】
上記着色粒子としては、優れた視認性と白色粒子との電気泳動的な相互作用の点から、チタンブラック(黒色低次酸化チタン、一般式Tin2n-1)が好ましい。また、これらの着色粒子は、各種表面改質した形態でも用いることが可能である。この場合の表面改質の方法としては、ポリマーをはじめとする各種化合物を粒子表面にコーティングする方法、チタネート系・シラン系等の各種カップリング剤によるカップリング処理する方法、グラフト重合処理する方法等が挙げられる。これらの着色粒子は、メカノケミカル的な処理した形態でも用いることが可能であり、異種又は同種の粒子同士又はポリマー粒子又は中空ポリマー粒子と複合された複合粒子として用いることも可能である。
【0038】
分散媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、フェニルキシリルエタン、ジイソプロピルナフタレン、ナフテン系炭化水素等の芳香族炭化水素類、ヘキサン、ドデシルベンゼン、シクロヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ジクロロメタン、臭化エチルなどのハロゲン化炭化水素類、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリシクロヘキシル等のリン酸エステル類、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジラウリル、フタル酸ジシクロヘキシル等のフタル酸エステル類、オレイン酸ブチル、ジエチレングリコールジベンゾエート、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリエチル、マレイン酸オクチル、マレイン酸ジブチル、酢酸エチル等のカルボン酸エステル類、イソプロピルビフェニル、イソアミルビフェニル、塩素化パラフィン、ジイソプロピルナフタレン、1,1−ジトリルエタン、1,2−ジトリルエタン、2,4−ジターシャリアミノフェノール、N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−t−オクチルアニリン等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。また、これらの分散媒はそれぞれ単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。
【0039】
次に、本発明の特徴は、上記の表示媒体と、この表示媒体に視認可能な情報を表示させることができる書き込み装置とからなり、上記表示媒体と前記書き込み装置は少なくとも書き込み時には近接させられるように着脱が可能である表示装置であって、上記書き込み装置は画像信号に応じて上記表示媒体に電界を作用させることができ、かつ上記表示媒体との平面位置関係を相対的に変えうる機構を有する電極アレイを装備している表示装置にある。
【0040】
このような表示装置においては、表示媒体の共通電極をアース電位とし、表示層の表面に電極アレイを密着させて、表示媒体との平面的位置関係を相対的に変えながら、画像信号に応じた電位を表示媒体の所定部に与えることができ、可視性表示が可能となるのである。
【0041】
また、本発明の特徴は、上記の表示媒体と、当この表示媒体に視認可能な情報を表示させることができる書き込み装置とからなり、上記表示媒体と上記書き込み装置は少なくとも書き込み時には近接させられるように着脱が可能である表示装置であって、上記書き込み装置は画像信号に応じて前記表示媒体表面に電荷を付与させることができ、かつ上記表示媒体との平面位置関係を相対的に変えうる機構を有するイオン銃アレイを装備している表示装置にある。このような表示装置においては、表示媒体の共通電極をアース電位とし、表示層の表面にイオン銃アレイを近接させて、表示媒体との平面的位置関係を相対的に変えながら、画像信号に応じた電位を表示媒体の所定部に与えることができ、可視性表示が可能となる。イオン銃により表示媒体の表面に与えられた電荷は表示媒体を構成する材料の時定数で放電するため、それが粒子の移動時間(応答時間)より長い場合には、イオン銃の作用時間を応答時間より短くすることが可能となり、その結果、書き込み速度が速くなるのである。
【0042】
さらに、本発明の特徴は、上記の表示媒体と、この表示媒体に視認可能な情報を表示させることができる書き込み装置とからなり、上記表示媒体と上記書き込み装置は少なくとも書き込み時には近接させられるように着脱が可能である表示装置であって、上記書き込み装置は複数の信号電極と走査電極を装備し、その交差部に画像信号に応じて表示媒体に電界を印加することのできるスイッチング素子を有し、それによって上記表示媒体に画像を表示するように構成された表示装置にある。
【0043】
このような構成では、2次元配列された電界印加手段がスイッチング素子を有するため、その作用により選択時にある部位に与えられた電荷は非選択時には表示媒体を構成する材料の時定数で放電するため、それが粒子の移動時間(応答時間)より長い場合には、選択時間を応答時間より短くすることが可能となり、その結果、書き込み速度が速くなるのである。
【0044】
本発明においては、上記の画像信号に応じて表示媒体に電界を印加することのできるスイッチング素子が、薄膜トランジスタであることが好ましい。スイッチング素子としては、大面積の薄膜デバイスの作製が容易な薄膜トランジスタが好ましい。薄膜トランジスタは、3端子素子であるためスイッチング性能が高く、中間調を伴うような場合にも鮮明な表示を得ることができる。なお、より書き込み速度を速くするために、蓄積コンデンサを等価回路的に表示媒体と並列になるように設けることも可能である。
【0045】
また、本発明の特徴は、少なくとも基板、該基板の一方の面に設けた共通電極及び該共通電極上に電界の作用により光学特性が可逆的に変化する表示体を設けた表示層からなる表示媒体により可視性記録を行う表示方法において、上記の表示媒体を用いることを特徴とする表示方法にある。
【0046】
次に、本発明の表示媒体の好ましい実施形態を図4により説明する。基板1はガラス板又はプラスチックフィルムからなる。基板の厚さは約10μm〜1mm、好ましくは25〜200μmである。共通電極2はマトリックス状にパターン化された又はパターン化されていない電極である。基板1のない表示層側を表示面とする場合、基板1は不透明であっても着色していてもよく、その着色色調を表示色の一部として利用することも可能である。また、基板1に白色色調の材料を用いることにより、コントラスト比を高めることも可能となる。共通電極2は透明であっても着色していてもよく、金属、ITO、SnO2、ZnO:Al等の導電体薄膜からなり、スッパタリング法、真空蒸着法、CVD法、塗布法等により形成する。また、基板側を表示面とする場合は、透明な基板1と透明な共通電極を使用する。透明な電極は、ITO、SnO2、ZnO:Al等の透明な材料から形成される。
【0047】
表示層9はマイクロカプセル粒子7とバインダー材料8からなる。表示層9の形成は、バインダー材料を溶解、分散、懸濁又は乳化する溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョンにマイクロカプセル粒子7を分散し、得られる分散塗工液をワイヤーバーコート、ロールコート、ブレードコート、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、又はグラビアコート等の方法により共通電極2上に塗工、乾燥することからなされる。
【0048】
バインダー材料8は、マイクロカプセル粒子7の壁材と同様な材料又はポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニルデン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、アクリル樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、フェノール樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ジエン樹脂、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリアリレート、アラミド、ポリイミド、ポリ−p−フェニレン、ポリ−p−キシレン、ポリ−p−フェニレンビニレン、ポリヒダントイン、ポリパラバン酸、ポリベンゾイミダゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾオキサジアゾール、ポリキノキサリン、上記した熱硬化性樹脂又は活性エネルギー線硬化性樹脂又は、それらの混合物から選択された一種以上の材料とシロキサン成分との混合物、又はシロキサン成分が主鎖、側鎖及び/又は末端に化学的に結合した上記のバインダー材料からなる。
【0049】
表示層9の表面抵抗率が1×1012Ωm以上となるように用いられる表面抵抗率の調整剤として、アルコール系化合物、グリセリン系化合物、ポリエチレン系化合物、四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、ホスホン酸塩、アミノ酸系化合物、アミノ硫酸エステル系化合物等をバインダー材料3に添加することも可能である。
【0050】
本発明による表示媒体の別の好ましい実施形態を図5により説明する。基板1、共通電極2、バインダー材料8、マイクロカプセル粒子7は、図1と同様である。オーバーコート層20は、オーバーコート層材料と場合によってはその材料を溶解、分散、懸濁又は乳化する媒体、硬化剤、触媒及び/又は助触媒を加えた保護層材料組成物を、表示層上にワイヤーバーコート、ロールコート、ブレードコート、ディップコート、スプレーコート、スピンコート、又はグラビアコート等の塗布方法又はスパッタリング及び化学的気相法等の気相方法により形成する。
【0051】
オーバーコート層の厚さは、マイクロカプセル粒子7を保護する機能を有する範囲内で可能な限り薄いことが望ましく、約0.1〜100μm、より好ましくは0.3〜30μmである。オーバーコート層20材料はバインダー材料8と同様な材料で、表面抵抗率が1×1012Ωm以上となるように用いられる表面抵抗率の調整剤として、アルコール系化合物、グリセリン系化合物、ポリエチレン系化合物、四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩、ホスホン酸塩、アミノ酸系化合物、アミノ硫酸エステル系化合物等を添加することも可能である。
【0052】
本発明による表示媒体のさらに別の好ましい実施形態を図6により説明する。基板1、共通電極2、バインダー材料3、マイクロカプセル粒子7及びオーバーコート層20は、図5と同様である。印刷層10は、オーバーコート層面を表示面30とする場合、オーバーコート層上の表示部分を除く少なくとも一部分に公知の方法により設けることができる。印刷保護層11はオーバーコート層20と同様な材料からなり、印刷層上及びオーバーコート層上にオーバーコート層や印刷層と同様な方法により設けることができる。非表示面40には、磁気記録部13と集積回路メモリー14を少なくとも一部分の基板上に設け、その磁気記録部13、集積回路メモリー14及び基板上に第二保護層12を設ける。第二保護層12は、上記のオーバーコート層や印刷保護層を構成する材料と同様な材料から形成される。
【0053】
本発明による表示媒体の他の好ましい実施形態を図7により説明する。基板1、共通電極2、バインダー材料8、マイクロカプセル粒子7及びオーバーコート層20は、図5と同様である。図7(a)に示すように、基板1上に透明な記録部15を設け、その透明な記録部15と基板上に第二保護層12を設ける。図7(b)に示すように、透明な記録部は格子状に設けることができる。形成される行xと列yの交差点(x、y)を読み出し専用の情報として固有化して、デジタル情報として利用することができる。このような表示媒体の場合、透明な基板1と透明な共通電極2を用いることにより、オーバーコート層側(表示面30)を表示面とすることも、透明記録部側(第二表示面35)を表示面とすることも可能である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これら実施例によって本発明はなんら限定されるものではない。
【0055】
実施例1
100mLの分散媒SAS−296(日本石油化学社製)に2.0gのオレイン酸を溶解し、この溶液に1.0gのチタンブラック(TilackD、赤穂化成社製、Ti表面処理品)を加え、約15分間超音波分散した。得られた分散液に10.0gの架橋化ススチレン−アクリル系共重合体の中空粒子(JSR社製、SX−866A)とジルコニアビーズを加え、約48時間ビーズ分散して、表示液を調製した。500mLのセパラブルフラスコに25gのイオン交換水を加え、2.04gの塩化マグネシウム六水和物を溶解した。この溶液を撹拌しながら、0.89gの水酸化ナトリウムを5gのイオン交換水に溶解した溶液を少しずつ加えて、塩化マグネシウムのコロイド溶液を得た。次に、1.01g(5mmol)のイソフタル酸クロリド(東京化成社製)と11.65g(5mmol)のポリジメチルシロキサンジクロリドを2gのSAS−296に50mLのガラス容器中で溶解した。得られた溶液を8gの上記表示液に加え、約5分間混合した。この分散体を上記のコロイド溶液に加え、ヒモジナイザーを用いて、室温、3,500rpmで約12分間乳化分散した。得られた乳化分散体に、2.23g(10mmol)の乾燥トルエンから再結晶したビスフェノールAと60mgのベンジルトリエチルアンモニウムクロリドを20.1mLの1Mの水酸化ナトリウム溶液に溶解した溶液を加えた。室温でさらに3分間乳化分散した後、撹拌しながら室温で約3.5時間カプセル化反応を行った。得られた反応混合物に希塩酸を加えて、pHを7以下に調整し、ろ過した。ろ物を約2Lの水で洗浄し、乾燥して、約100μmの体積中位径を有するマイクロカプセルを得た。80gのフルオロアルキルアクリレート共重合体エマルジョン(固形分20wt%)に、上記で調製した20gのマイクロカプセル粒子を加えてカプセル分散液を調製した。このカプセル分散液を、共通電極としてITO膜を設けた約100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上に、約2mmのギャップを有するアプリケーターを用いて、塗布、乾燥して、約200μm厚の表示層を有する表示媒体を作製した。
【0056】
実施例2
8gの実施例1と同様の表示液に、7.0gのシリコーン共重合体SP−21050(大日精化社製)、2.5gのポリイソシアネートD−70(大日精化社製)及び0.5gのポリジメチルシロキサンジアミンX−22−161AC(信越シリコーン社製)からなる混合物を0℃で加え、約15分間0℃で撹拌して、表示液混合物を調製した。500mLのセパラブルフラスコに30gの3wt%のゼラチン水溶液と0.05gのn−オクチル−β−D−グルコピラノシドを加えた後、上記の表示液混合物を加え、ホモジナイザーを用いて0℃、3,000rpmで約15分間乳化分散した。撹拌しながら約40℃まで加熱し、約3.5時間反応した。得られたマイクロカプセルスラリーを約500mLの水で希釈し、ろ過した。ろ物を約2Lの水で洗浄し、乾燥して、約90μmの体積中位径を有するマイクロカプセルを得た。得られたマイクロカプセルを用いて、実施例1と同様に表示媒体を作製した。
【0057】
比較例1
実施例1で使用した1.01g(5mmol)のイソフタル酸ジクロリド(東京化成社製)と11.65g(5mmol)のポリジメチルシロキサンジクロリドの代わりに、2.02g(10mmol)のイソフタル酸ジクロリドを用いた以外は、実施例1と同様にしてマイクロカプセルを調製した後、表示媒体を作製した。
【0058】
実施例3
図8に示す電極アレイを装備した書き込み装置を用いて、実施例1、2及び比較例1の表示媒体に書き込みを行った。図8において、50は表示媒体、51は電極アレイ、52は書き込み基板、53は電極棒、54はスイッチング回路、55は電源回路、56は送り機構である。電極アレイ51は125μmピッチで1600個の電極棒を配列したものを用いた。画像信号に応じた電圧パルスをスイッチング回路54を介して、電極棒53に供給した。表示媒体表面が黒表示となる電圧を+300V、白表示となる電圧を−300Vとし、パルス幅を20msとした。ローラー送り機構56によって表示媒体を移動させることによりパターン画像の形成を試みた。送り速度は6.25mm/secとした。記録操作中には表示媒体の搬送安定性を観察した。また、記録操作後、画像の鮮明性と傷の有無を観察した。実施例1、2の表示媒体の画像は鮮明であったのに対し、比較例1の表示媒体では鮮明な画像は得られなかった。
【0059】
実施例4
図9に示すイオン銃アレイを装備した書き込み装置を用いて、実施例1、2及び比較例1の表示媒体に書き込みを行った。なお、図中60は表示媒体、61はイオン銃アレイ、62はコロナワイヤ、63は放電フレーム、64a、64bは制御電極、65はアパーチャー、66はコロナイオン発生用高圧電源、67はイオン流制御用電源、68は送り機構である。イオン銃アレイ61は125μmピッチで1600個のイオン銃を配列したものを用いた。まず、コロナワイヤ62に−5kVの電圧を印加して、表示媒体表面全面を白表示とした。次に、コロナワイヤ62に+5kVの電圧を印加し、画像信号に応じて制御電極64aに+300V(黒表示)又は300V(白表示)の電圧を印加した。印加のパルス幅は10msとした。ローラー送り機構68によって表示媒体60を移動させることによりパターン画像の形成を試みた。送り速度は12.5mm/secとした。記録操作中には放電状態を観察した。また、記録操作後、画像の鮮明性を観察した。実施例1、2の表示媒体の画像は鮮明であったのに対し、比較例1の表示媒体では鮮明な画像は得られなかった。
【0060】
このように、シロキサン成分を含有するマトリックス材料を用いることにより、鮮明な画像が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0061】
1 透明基板
2 透明電極
3 スペーサー
4 電気泳動表示液
5 スペーサー
6 電気泳動表示液
7 マイクロカプセル粒子
8 バインダー材料
9 表示層
10 印刷層
11 印刷保護層
12 第二保護層
13 磁気記録部
14 集積回路メモリー
15 透明な記録部
30 表示面
35 第二表示面
40 非表示面
50 表示媒体
51 電極アレイ
52 書き込み基板
53 電極棒
54 スイッチング回路
55 電源回路
56 送り機構
60 表示媒体
61 イオン銃アレイ
62 コロナワイヤ
63 放電フレーム
64a 制御電極
64b 制御電極
65 アパーチャー
66 コロナイオン発生用高圧電源
67 イオン流制御用電源
68 送り機構
【先行技術文献】
【特許文献】
【0062】
【特許文献1】特開昭62−269124号公報
【特許文献2】特開平2−284127号公報
【特許文献3】特開平4−212990号公報
【特許文献4】特開平64−86116号公報(特許第2551783号公報)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基板、該基板の一方の面に設けた共通電極及び該共通電極上に電界の作用により光学特性が可逆的に変化する表示体を、マス目状の壁材、又はハニカム構造の壁材により、不連続に分散して形成した可視性記録を行うことのできる表示層からなる表示媒体であって、該マス目状の壁材、又はハニカム構造の壁材が、シロキサン成分を含有するものであることを特徴とする表示媒体。
【請求項2】
シロキサン成分が、ポリジメチルシロキサンジクロリド及びポリジメチルシロキサンジアミンのいずれかからなる請求項1に記載の表示媒体。
【請求項3】
該表示層上に、オーバーコート層を設けたものである請求項1又は2に記載の表示媒体。
【請求項4】
該マス目状の壁材、又はハニカム構造の壁材が、熱硬化性樹脂及び/又は活性エネルギー硬化性樹脂からなるものである請求項1〜3のいずれかに記載の表示媒体。
【請求項5】
該オーバーコート層が、熱硬化性樹脂及び/又は活性エネルギー硬化性樹脂からなるものである請求項3又は4に記載の表示媒体。
【請求項6】
該表示層の少なくとも一部分に、印刷層を設けたものである請求項1〜5のいずれかに記載の表示媒体。
【請求項7】
該オーバーコート層の少なくとも一部分に、印刷層を設けたものである請求項3〜6のいずれかに記載の表示媒体。
【請求項8】
該印刷層上に、印刷保護層を設けたものである請求項6又は7に記載の表示媒体。
【請求項9】
該表示層と共に、情報記録部を有するものである請求項1〜8のいずれかに記載の表示媒体。
【請求項10】
該情報記録部が、磁気の作用により情報記録の書き込み及び読み出しを行うものである請求項9に記載の表示媒体。
【請求項11】
該情報記録部が、光の作用により情報記録の書き込み及び読み出しを行うものである請求項9に記載の表示媒体。
【請求項12】
該情報記録部が、集積回路メモリー又は光メモリーである請求項9に記載の表示媒体。
【請求項13】
該情報記録部に記録される情報が、表示媒体の表裏を示す情報及び/又は表示媒体の位置を示すものである請求項9〜12のいずれかに記載の表示媒体。
【請求項14】
該表示体が、分散媒、白色粒子及び該白色粒子と色調を異にする粒子からなる表示液である請求項1〜13のいずれかに記載の表示媒体。
【請求項15】
該白色粒子が、有機高分子物質からなる中空粒子である請求項14に記載の表示媒体。
【請求項16】
該白色粒子と色調を異にする粒子が、チタンブラックである請求項14に記載の表示媒体。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の表示媒体及び該表示媒体に視認することのできる情報を表示する書き込み装置からなり、該表示媒体と該書き込み装置とは少なくとも書き込み時には近接するように着脱可能とした表示装置であって、該書き込み装置は、画像信号に応じて該表示媒体に電界を作用させることができ、かつ該表示媒体との平面位置関係を相対的に変化させ得る機構を有する電極アレイを装備したことを特徴とする表示装置。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれかに記載の表示媒体及び該表示媒体に視認することのできる情報を表示する書き込み装置からなり、該表示媒体と該書き込み装置とは少なくとも書き込み時には近接するように着脱可能とした表示装置であって、該書き込み装置は、画像信号に応じて該表示媒体表面に電荷を付与させることができ、かつ該表示媒体との平面位置関係を相対的に変化させ得る機構を有するイオン銃アレイを装備したことを特徴とする表示装置。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれかに記載の表示媒体及び該表示媒体に視認することのできる情報を表示する書き込み装置からなり、該表示媒体と該書き込み装置とは少なくとも書き込み時には近接するように着脱可能とした表示装置であって、該書き込み装置は、複数の信号電極とを装備し、その交差部に画像信号に応じて該表示媒体に電界を印加することのできるスイッチング素子を有し、該スイッチング素子によって該表示媒体に画像を表示することを特徴とする表示装置。
【請求項20】
該スイッチング素子が、薄膜トランジスタである請求項19に記載の表示装置。
【請求項21】
少なくとも基板、該基板の一方の面に設けた共通電極及び該共通電極上に電界の作用により光学特性が可逆的に変化する表示体を設けた表示層からなる表示媒体により可視性記録を行う表示方法において、請求項1〜16のいずれかに記載の表示媒体を用いることを特徴とする表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−18052(P2011−18052A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−171928(P2010−171928)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【分割の表示】特願2001−6769(P2001−6769)の分割
【原出願日】平成13年1月15日(2001.1.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】