説明

表示媒体用粒子および情報表示装置

【課題】簡便に調製することができ、且つ、繰り返し移動させた際の流動性の低下等を十分に抑制することができる表示媒体用粒子、および、繰り返し使用した際の表示性能の低下を抑制し得る情報表示装置を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示媒体を封入し、当該表示媒体を移動させて情報を表示する情報表示装置の表示媒体として使用される表示媒体用粒子であって、粒子本体の表面に対し、一般式:RSiX[式中、Rは、疎水基であり、Xは、互いに同一のまたは異なる加水分解性基である]で表されるシラン化合物同士を加水分解重縮合させて得た重縮合物からなる外添剤を付着させてなる表示媒体用粒子である。また、その表示媒体用粒子を用いた情報表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体用粒子およびその表示媒体用粒子を用いた情報表示装置に関するものである。より詳細には、本発明は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示媒体を封入し、この表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示装置の表示媒体として好適に使用し得る表示媒体用粒子に関するものである。また、本発明は、その表示媒体用粒子を用いた情報表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置(LCD)に代わる情報表示装置として、少なくとも一方が透明な2枚の基板(例えば、ガラス基板)間に隔壁により区画された複数のセルを形成すると共に該セル内に粒子群からなる表示媒体を封入して構成した情報表示用パネルを備える装置が提案されている。
【0003】
そして、上記粒子群からなる表示媒体を用いた情報表示装置では、基板間に電圧を印加し、粒子群(表示媒体)を構成する表示媒体用粒子を電気的に移動させることにより所望の画像等を表示する。即ち、この情報表示装置では、情報の表示要求に応じて基板間に電圧が印加される度に、表示媒体用粒子が基板間の空間(セル内)を繰り返し移動する。
【0004】
ここで、従来、表示媒体用粒子としては、帯電性を有する粒子本体の表面に対し、流動性や帯電特性などを改善するための外添剤を付着させたものが用いられている。また、外添剤としては、ヘキサメチルジシラザン等のシランカップリング剤で表面を疎水化処理したシリカ微粒子が用いられている。なお、粒子本体は、単独の粒子(母粒子)からなるものであってもよいし、母粒子の表面に他の粒子(子粒子)を配置した複合型粒子からなるものであってもよい。
【0005】
そのため、粒子群からなる表示媒体を用いた上記従来の情報表示装置では、情報の表示要求に応じて表示媒体用粒子を繰り返し移動させると、粒子本体の表面に付着させた外添剤が表示媒体用粒子同士の衝突時などに力学的ダメージを受けて損壊する。そして、情報表示装置の繰り返し使用、即ち表示媒体用粒子の移動の繰り返しにより外添剤が損壊すると、表示媒体用粒子の流動性等が低下し、該表示媒体用粒子を用いた情報表示装置の表示性能が低下する。
【0006】
そこで、繰り返し移動させた場合でも外添剤の損壊を抑制し得る表示媒体用粒子として、小粒径の第1シリカ微粒子と大粒径の第2シリカ微粒子との混合物を外添剤として用いた表示媒体用粒子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。そして、粒径の異なる2種類のシリカ微粒子を外添剤として用いた上記従来の表示媒体用粒子によれば、小粒径の第1シリカ微粒子を用いることで表示媒体用粒子の流動性および帯電特性を確保しつつ、大粒径の第2シリカ微粒子を用いることで、繰り返し移動による第1のシリカ微粒子の損壊を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2010/137346号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、粒径の異なる2種類のシリカ微粒子を外添剤として用いた上記従来の表示媒体用粒子は、2種類のシリカ微粒子を調製して混合する必要があるという点において製造工程が複雑化するという問題があった。また、上記従来の表示媒体用粒子には、繰り返し移動させた際の流動性の低下等を更に抑制するという点において改善の余地があった。
【0009】
そこで、本発明は、簡便に調製することができ、且つ、繰り返し移動させた際の流動性の低下等を十分に抑制することができる表示媒体用粒子、および、繰り返し使用した際の表示性能の低下を抑制し得る情報表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、表面のみを疎水化処理したシリカ微粒子からなる外添剤を用いた従来の表示媒体用粒子では、表示媒体用粒子の繰り返し移動により外添剤が力学的ダメージを受けて損壊すると、外添剤(シリカ微粒子)の疎水化処理されていない部分が露出し、表示媒体用粒子の流動性等が低下することを見出した。より具体的には、本発明者らは、従来の表示媒体用粒子を用いた情報表示装置では、外添剤が力学的ダメージを受けて損壊し、疎水化処理されていない部分が露出すると、表示媒体用粒子同士が凝集して流動性が低下すると共に表示媒体用粒子の基板に対する付着力が増加するため、表示性能が低下することを見出した。また、本発明者らは、力学的ダメージによる損壊は、多数の一次粒子が融着した枝分かれ構造を有しているヒュームドシリカを外添剤として使用している場合に特に起こりやすいことも見出した。
そこで、本発明者らは、従来の表示媒体用粒子では外添剤の疎水化処理されていない部分が露出することにより流動性の低下および基板に対する付着力の増加が起きることに着目した。そして、外添剤の素材自体を変更することで、損壊し難く、且つ、損壊しても表示媒体用粒子の流動性の低下および付着力の増加の発生を抑制し得る外添剤を提供することに着想して、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の表示媒体用粒子は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示媒体を封入し、当該表示媒体を移動させて情報を表示する情報表示装置の表示媒体として使用される表示媒体用粒子であって、粒子本体の表面に対し、一般式:RSiX[式中、Rは、疎水基であり、Xは、互いに同一のまたは異なる加水分解性基である]で表されるシラン化合物同士を加水分解重縮合させて得た重縮合物からなる外添剤を付着させてなることを特徴とする。このように、シラン化合物同士を加水分解重縮合させて得た重縮合物を外添剤として用いれば、表示媒体用粒子を容易に調製することができる。また、3つの加水分解性基と、1つの疎水基とを有するシラン化合物同士を加水分解重縮合させた場合、得られる重縮合物の構造は、分子内部に疎水基を有する三次元網目構造となる。そして、該重縮合物は、三次元網目構造を有しているので、外部から力学的エネルギーを受けても損壊し難く、また、分子内部に疎水基を有しているので、外部から受けた力学的エネルギーにより損壊しても、損壊により露出する部分が疎水性を有することとなる。従って、一般式:RSiXで表されるシラン化合物を加水分解重縮合させて得た重縮合物を外添剤として用いれば、表示媒体用粒子を繰り返し移動させた際の表示媒体用粒子の流動性の低下等を十分に抑制することができる。
なお、本発明の表示媒体用粒子の外添剤は、同一のシラン化合物同士を加水分解重縮合させて得た重縮合物からなるものでもよいし、互いに異なるシラン化合物同士を加水分解重縮合させて得た重縮合物からなるものでもよい。
【0012】
ここで、本発明の表示媒体用粒子は、前記Rが、炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であることが好ましい。一般式:RSiX中のRが、炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であれば、シラン化合物同士を加水分解重縮合反応させた際に、重縮合物の分子内部に疎水基として良好に残存するからである。
【0013】
また、本発明の表示媒体用粒子は、前記Xが、塩素原子、フッ素原子、臭素原子およびヨウ素原子、並びに、メトキシ基およびエトキシ基からなる群より選択される少なくとも一種であることが好ましい。一般式:RSiX中のXが、塩素原子、フッ素原子、臭素原子およびヨウ素原子、並びに、メトキシ基およびエトキシ基からなる群より選択される少なくとも一種であれば、シラン化合物同士の加水分解重縮合反応が良好に進むからである。
【0014】
更に、本発明の表示媒体用粒子は、前記Rが、アルキル基、アルケニル基またはアリール基、或いは、これらの炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部を有機基で置換した置換炭化水素基であることが好ましい。アルキル基、アルケニル基、アリール基および置換炭化水素基は、疎水基として適しているからである。
【0015】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の情報表示装置は、上記表示媒体用粒子の何れかを用いたことを特徴とする。このように、情報表示装置の表示媒体用粒子として上述した表示媒体用粒子を用いれば、情報表示装置を繰り返し使用した際の表示性能の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の表示媒体用粒子によれば、簡便に調製し得る外添剤を用いて、繰り返し移動させた際の表示媒体用粒子の流動性の低下等を十分に抑制することができる。また、本発明の情報表示装置によれば、繰り返し使用した際の表示性能の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に従う代表的な情報表示装置の概略構成および表示原理を説明する説明図である。
【図2】本発明に従う表示媒体用粒子の外添剤を構成する重縮合物の三次元網目構造の一部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明の情報表示装置は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示媒体を封入し、この表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する装置である。また、本発明の表示媒体用粒子は、本発明に係る情報表示装置用の表示媒体として特に適している。
【0019】
<情報表示装置>
ここで、図1に、本発明の情報表示装置の一例の概略構成を示す。図1に示す情報表示装置10は、薄膜トランジスタ(TFT)付きの電極(画素電極)5が設けられた基板1と、電極(共通透明電極)6が設けられた基板(透明基板)2と、互いに対向させて配置した2枚の基板1,2間に配設された隔壁4とを備えている。そして、隔壁4により基板1,2間に区画形成された複数のセル内には、本発明に係る表示媒体用粒子を用いて構成した表示媒体が封入されている。なお、図1では、手前側にある隔壁は図示を省略している。
【0020】
情報表示装置10で用いる表示媒体は、光学的反射率および帯電特性が異なる2種類以上の表示媒体用粒子(例えば、負帯電性白色粒子3Wおよび正帯電性黒色粒子3B)を混合した粒子群からなる。ここで、この表示媒体用粒子は、粒子本体の表面に対して所定の外添剤を付着させて構成したことを特徴とする。
【0021】
そして、この情報表示装置10では、基板1に配設した画素電極5と、透明基板2に配設した共通透明電極6とで形成する電極対の間に所定の電圧を印加し、電界を発生させることにより、セル内の表示媒体用粒子を移動させて情報を表示する。具体的には、情報の表示要求に応じて、例えば白色を表示したい場合には共通透明電極6に正電圧を印加して透明基板2側(観察側)に負帯電性白色粒子3Wを移動させる(図1の上側に示す図を参照)。また、黒色を表示したい場合には共通透明電極6に負電圧を印加して透明基板2側(観察側)に正帯電性黒色粒子3Bを移動させる(図1の下側に示す図を参照)。即ち、この情報表示装置10では、情報の表示要求に応じて電極対の間に所定の大きさおよび極性(正または負)の電圧を印加することにより、表示媒体用粒子(負帯電性白色粒子3Wおよび正帯電性黒色粒子3B)を移動させて文字や画像等の情報を表示する。従って、情報表示装置10の表示媒体用粒子3W,3Bは、表示する情報の書き換えに応じてセル内を繰り返し移動する。なお、本発明の情報表示装置は、図1に示す構成に限定されることはなく、例えば、本発明の情報表示装置では、TFT付きの電極に代えてライン電極を用いてもよい。
【0022】
<表示媒体用粒子>
本発明の表示媒体用粒子は、例えば図1に示す情報表示装置10の負帯電性白色粒子3Wおよび正帯電性黒色粒子3Bとして用いられるものである。そして、本発明の表示媒体用粒子は、帯電性を有する粒子本体の表面に対して所定の外添剤を付着させて構成されている。
【0023】
ここで、粒子本体としては、単独の粒子(母粒子)、或いは、母粒子の表面に他の粒子(子粒子)を配置した複合型粒子を用いることができる。
なお、母粒子としては、特に限定されることなく、ベース樹脂に対して荷電制御剤、着色剤、無機添加剤などを配合してなる、平均粒径が1〜100μmの樹脂製の粒子を用いることができる。
また、母粒子の表面に配置(固着または埋め込み)する子粒子としては、特に限定されることなく、平均粒径が0.1〜1μmの樹脂製の粒子を用いることができる。
【0024】
因みに、母粒子の平均粒径は、例えばレーザー回折/散乱法を用いて測定することができる。具体的には、母粒子の平均粒径は、例えばシスメックス株式会社製のMastersizer 2000を用いて窒素気流中で測定することができる。また、子粒子の平均粒径は、例えばシスメックス株式会社製のZサイザーを用いて、メタノール等の溶液中に子粒子を分散させた状態で測定することができる。
【0025】
なお、母粒子のベース樹脂としては、特に限定されることなく、シクロオレフィンポリマー等を用いることができる。
また、子粒子としては、スチレンモノマーとエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)モノマーとの共重合体や、架橋メラミン樹脂からなる粒子を用いることができる。
【0026】
<外添剤>
本発明の表示媒体用粒子に用いる外添剤は、表面のみを疎水化処理したシリカ微粒子からなる外添剤を用いた従来の表示媒体用粒子では、外添剤が力学的ダメージを受けて損壊し、外添剤の疎水化処理されていない部分が露出すると、表示媒体用粒子の諸性能が低下するという本発明者らの知見に基づいて設計されたものである。より具体的には、本発明の表示媒体用粒子に用いる外添剤は、従来の表示媒体用粒子では、外添剤が損壊して外添剤の疎水化処理されていない部分が露出すると、表示媒体用粒子同士が凝集して流動性が低下すると共に、情報表示装置を構成する基板に対する表示媒体用粒子の付着力が増加するという知見に基づいて創作されたものである。
【0027】
そして、本発明の表示媒体用粒子に用いる外添剤は、従来の外添剤の表面処理剤(疎水化処理剤)として用いていたシランカップリング剤のうち、所定の構造を有するシランカップリング剤同士を加水分解重縮合させて得た重縮合物からなる粒子が、外添剤として特に好適に用い得ることを本発明者らが見出して完成させたものである。
【0028】
即ち、本発明の表示媒体用粒子に用いる外添剤は、下記一般式(I):
【化1】

[式中、Rは、疎水基であり、Xは、互いに同一のまたは異なる加水分解性基である]で表されるシラン化合物同士を加水分解重縮合させて得た重縮合物からなることを特徴とする。なお、上記重縮合物からなる外添剤の平均一次粒径は、特に限定されることなく、10〜300nmとすることができる。因みに、平均一次粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて外添剤の一次粒径が確認できる解像度で画像撮影を行い、撮影した画像中の複数の一次粒子の粒径を計測して計測値の平均を算出することにより求めることができる。
【0029】
ここで、加水分解性基Xとは、水、アルカリ性水溶液または酸性水溶液などの反応溶液中で加水分解する基である。そのため、上記一般式(I)で表されるシラン化合物は、反応溶液中では、下記一般式(II):
【化2】

[式中、Rは疎水基である]で表される、一分子中にシラノール基を3つ有するシラン化合物(トリシラノール化合物)まで加水分解される。
【0030】
従って、一般式(I)で表される、一分子中に3つの加水分解性基を有するシラン化合物同士を反応溶液中で加水分解重縮合させると、加水分解により生じたシラノール基を有するシラン化合物間で脱水縮合反応が起こる。そして、図2に示すような、Si−O結合を介して架橋された、三次元網目構造を有する重縮合物(以下「架橋シリコーン」と称することがある。)が得られる。なお、疎水基Rは、非加水分解性の基であり、Si原子に結合した状態で重縮合物の三次元網目構造中に残る。
【0031】
ここで、架橋シリコーンからなる粒子(外添剤)は、特に限定されることなく、反応溶液に対し、一般式(I)で表されるシラン化合物と、アンモニア水溶液等のアルカリ性水溶液とを同時に添加することにより簡便に調製することができる。なお、本発明の表示媒体用粒子に用いる外添剤は、同一のシラン化合物同士を加水分解重縮合させて調製してもよいし、互いに異なるシラン化合物同士を加水分解重縮合させて調製してもよい。因みに、互いに異なるシラン化合物同士を加水分解重縮合させて重縮合物からなる粒子を調製する場合には、複数種のシラン化合物とアルカリ性水溶液とを反応溶液中に同時に添加すればよい。
【0032】
そして、上述のようにして調製した架橋シリコーンは、三次元網目構造を有するので、該架橋シリコーンからなる粒子は、高い硬度を有し、表示媒体用粒子の流動性や帯電特性などを改善するための外添剤として好適に機能し得る。また、この外添剤は、図2に示すような三次元網目構造を有する重縮合物よりなるので、シリカ微粒子などと比較して、外部から力学的エネルギーを受けても損壊し難い。更に、この外添剤は、分子内部(即ち、三次元網目構造中)に均等に疎水基を有する重縮合物よりなるので、外部から受けた力学的エネルギーにより重縮合物の共有結合が切断され、外添剤自身が損壊した場合、分子内部に分散して位置する疎水基Rが外部に露出する。従って、この外添剤では、損壊により露出する部分も疎水性を有することとなる。
【0033】
そのため、この外添剤を用いた表示媒体用粒子は、表示媒体用粒子を繰り返し移動させても、外添剤の損壊や、外添剤の損壊に起因する表示媒体用粒子の流動性の低下および基板に対する表示媒体用粒子の付着性の増加が起こり難い。従って、この外添剤を用いた表示媒体用粒子を表示媒体として適用した情報表示装置は、繰り返し使用した際の表示性能の低下を抑制することができる。即ち、小さい駆動電圧で表示媒体用粒子を長期に亘って良好に移動させることができる。なお、この外添剤は、疎水基Rが粒子の表面にも位置しているので、粒子の表面を疎水化処理しなくても良い。即ち、この外添剤を用いた表示媒体用粒子は、疎水化処理を必要とする従来の外添剤を用いた表示媒体用粒子と比較し、より容易に調製することができる。
【0034】
なお、上記からも明らかなように、本発明の表示媒体用粒子に用いる外添剤を構成する重縮合物は、三次元網目構造を有し、且つ、分子内部に疎水基を有する必要がある。そのため、本発明では、3つの加水分解性基Xと、1つの疎水基Rとを有するシラン化合物を加水分解重縮合させる。重縮合物の分子内部に疎水基Rを分散させるためにはシラン化合物が1つ以上の疎水基を有する必要がある一方、シラン化合物中の加水分解性基Xの数が1〜2つの場合には生成する重縮合物が二量体または直鎖状のシロキサンとなり、三次元網目構造にならないからである。
【0035】
ここで、上記一般式(I)で表されるシラン化合物の疎水基Rとしては、特に限定されることなく、炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基を挙げることができる。具体的には、疎水基Rとしては、アルキル基、アルケニル基またはアリール基、或いは、これらの炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部を有機基で置換した置換炭化水素基を挙げることができる。疎水基Rが、炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であれば、シラン化合物同士を加水分解重縮合反応させた際に、重縮合物の分子内部に疎水基として良好に残存するからである。また、アルキル基、アルケニル基、アリール基および置換炭化水素基は、疎水基として適しているからである。
【0036】
なお、シラン化合物同士の加水分解重縮合反応時に副反応が起きるのを抑制する観点からは、疎水基Rは、ビニル結合などの化学反応性に富んだ部分を有さないことが好ましい。そのため、疎水基Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、アミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基、フェニルアミノプロピル基、トリフルオロプロピル基、ヘプタデカフルオロデシル基またはトリデカフルオロオクチル基であることが好ましい。
【0037】
更に、疎水基Rは、生成する重縮合物の三次元網目構造中に残存させる必要があるので、疎水基Rは立体障害の小さな基であることが特に好ましい。そのため、疎水基Rは、炭素数が8以下であることが好ましい。具体的には、疎水基Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基などの炭素数1〜8のアルキル基、或いは、フェニル基などのアリール基であることが特に好ましい。
【0038】
また、上記一般式(I)で表されるシラン化合物の加水分解性基Xとしては、特に限定されることなく、塩素原子、フッ素原子、臭素原子およびヨウ素原子、並びに、メトキシ基およびエトキシ基からなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。加水分解性基Xがこれらの基の場合、シラン化合物同士の加水分解重縮合反応が良好に進むからである。なお、加水分解重縮合反応の安定性の観点からは、加水分解性基Xはメトキシ基であることが特に好ましい。
【0039】
そして、上記一般式(I)で表される具体的なシラン化合物としては、特に限定されることなく、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(Nフェニル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、トリメトキシ(メチル)シラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリメトキシ(プロピル)シラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ[3−(フェニルアミノ)プロピル]シラン、トリメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シラン、トリエトキシ−1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチルシラン、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル)シラン、トリクロロ(1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチル)シラン、エチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリクロロシラン、n−オクチルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、ドデシルトリクロロシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、トリクロロヘキシルシラン、トリクロロ(メチル)シラン、トリクロロオクタデシルシラン、トリクロロ(プロピル)シランおよびトリクロロテトラデシルシランからなる群より選択される少なくとも一種を挙げることができる。これらのシラン化合物は、重縮合物の製造に適しており、且つ、容易に入手することができるからである。
【0040】
なお、シラン化合物としては、疎水基Rの炭素数が8以下で、且つ、加水分解性基Xがメトキシ基であるシラン化合物が好ましい。具体的には、シラン化合物としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、トリメトキシ(メチル)シラン、トリメトキシ(プロピル)シラン、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(3,3,3−トリフルオロプロピル)シランが特に好ましい。これらの化合物は、疎水基Rの立体障害が小さく、且つ、加水分解重縮合反応が安定して進むからである。
【0041】
以上、図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、本発明の表示媒体用粒子および情報表示装置は上述した一例に限定されることは無く、本発明の表示媒体用粒子および情報表示装置には適宜変更を加えることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
まず、容積20000mLの反応容器に撹拌機、温度計を取り付けた。そして、反応容器内に反応溶液としての水1000mLを入れ、200rpmで撹拌しつつ、反応容器内を温度90℃の恒温にした。その後、反応容器内に、定量ポンプにてトリクロロ(メチル)シラン10gを0.5g/minの供給速度で添加すると同時に、25体積%アンモニア水溶液を0.5g/minの速度で添加し、トリクロロ(メチル)シラン同士を加水分解重縮合させた。そして、トリクロロ(メチル)シランの供給終了と同時にアンモニア水溶液の供給も停止した。トリクロロ(メチル)シランとアンモニア水溶液との添加比(mol比)は、アンモニア/トリクロロ(メチル)シラン中の塩素=1.0であり、反応終了後の反応溶液の液性はアルカリ性であった。その後、室温にて1時間熟成した後、ろ過・水洗・乾燥を実施し、外添剤粒子Aを得た。得られた外添剤粒子Aを透過型電子顕微鏡で観察した結果、平均一次粒径は300nmであった。また、得られた外添剤粒子Aの分子構造をSi−29 NMRで解析したところ、Si−OH結合やSi−X(加水分解性基X=Cl)結合の数が初期(反応溶液中に添加した全トリクロロ(メチル)シラン中のSi−OH結合やSi−Cl結合の数)の10%以下となり、三次元網目構造を有していることが分かった。
そして、粒子本体としての母粒子(シクロオレフィン樹脂製、平均粒径10μm、正帯電性黒色粒子と負帯電性白色粒子の混合物)に対して調製した外添剤粒子Aを付着させ、表示媒体用粒子Aとした。なお、母粒子の平均粒径は、シスメックス株式会社製のMastersizer 2000を用いて窒素気流中で測定した。
その後、調製した表示媒体用粒子を用いた情報表示装置を作製し、以下の方法で性能を評価した。結果を表1に示す。
【0044】
(実施例2)
まず、容積20000mLの反応容器に撹拌機、温度計を取り付けた。そして、反応容器内に反応溶液としての水1000mLを入れ、400rpmで撹拌しつつ、反応容器内を温度95℃の恒温にした。その後、反応容器内に、定量ポンプにてトリクロロ(メチル)シラン10gを0.5g/minの供給速度で添加すると同時に、25体積%アンモニア水溶液を0.5g/minの速度で添加し、トリクロロ(メチル)シラン同士を加水分解重縮合させた。そして、トリクロロ(メチル)シランの供給終了と同時にアンモニア水溶液の供給も停止した。トリクロロ(メチル)シランとアンモニア水溶液との添加比(mol比)は、アンモニア/トリクロロ(メチル)シラン中の塩素=1.0であり、反応終了後の反応溶液の液性はアルカリ性であった。その後、室温にて1時間熟成した後、ろ過・水洗・乾燥を実施し、外添剤粒子Bを得た。得られた外添剤粒子Bを透過型電子顕微鏡で観察した結果、平均一次粒径は10nmであった。また、得られた外添剤粒子Bの分子構造をSi−29 NMRで解析したところ、Si−OH結合やSi−X(加水分解性基X=Cl)結合の数が初期(反応溶液中に添加した全トリクロロ(メチル)シラン中のSi−OH結合やSi−Cl結合の数)の10%以下となり、三次元網目構造を有していることが分かった。
そして、実施例1と同様に、粒子本体としての母粒子(シクロオレフィン樹脂製、平均粒径10μm、正帯電性黒色粒子と負帯電性白色粒子の混合物)に対して調製した外添剤粒子Bを付着させ、表示媒体用粒子Bとした。
その後、調製した表示媒体用粒子を用いた情報表示装置を作製し、実施例1と同様の方法で性能を評価した。結果を表1に示す。
【0045】
(比較例1〜3)
表1に示す、ヒュームドシリカ微粒子の表面をヘキサメチルジシラザン(HMDS)で疎水化処理した従来の外添剤粒子C〜Eを既知の方法で調製した。
そして、実施例1と同様に、粒子本体としての母粒子(シクロオレフィン樹脂製、平均粒径10μm、正帯電性黒色粒子と負帯電性白色粒子の混合物)に対して調製した外添剤粒子C〜Eをそれぞれ付着させ、表示媒体用粒子C〜Eとした。
その後、調製した表示媒体用粒子を用いた情報表示装置を作製し、実施例1と同様の方法で性能を評価した。結果を表1に示す。
【0046】
<情報表示装置の性能評価>
図1に示す構成を有し、電極間距離が40μmである情報表示装置のセル内に、調整した表示媒体用粒子を封入した。そして、電極に対し、70Vの駆動電圧を繰り返し印加して、表示性能を評価した。具体的には、100回電圧を印加した際(100回情報を書き換えた際)のコントラストと、100万回電圧を印加した際(100万回情報を書き換えた際)のコントラストとを光学濃度計(GretagMacbes社製、RD19)を用いて測定し、表示性能を評価した。また、100回情報を書き換えた際のコントラストと、100万回情報を書き換えた際のコントラストとの差(コントラスト差=100回書き換え時のコントラスト−100万回書き換え時のコントラスト)を算出した。
なお、コントラストは、光学濃度計で測定した黒色濃度と白色濃度を用いて、下記式より算出した。
コントラスト=10^(黒色濃度−白色濃度)
表中、コントラストの値が大きいほど黒色表示と白色表示との差が明確であり、表示性能が良好であることを示している。また、コントラスト差が小さいほど、情報表示装置の表示性能が低下し難いことを示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1より、所定の構造を有するシラン化合物同士を加水分解重縮合させて得た重縮合物からなる外添剤を用いた実施例1および2は、表面を疎水化処理したシリカ微粒子からなる従来の外添剤を用いた比較例1〜3と比較して、100万回情報を書き換えた際のコントラストが良好であり、また、情報表示装置の表示性能が低下し難いことが分かる。
【0049】
なお、シラン化合物としてトリメトキシ(メチル)シランを用いた以外は実施例1と同様にして外添剤粒子Fを調製したところ、外添剤粒子Aと同様の平均一次粒径および分子構造を有する外添剤粒子が得られた。また、シラン化合物としてトリエトキシメチルシランを用いた以外は実施例1と同様にして外添剤粒子Gを調製したところ、同様に、外添剤粒子Aと同様の平均一次粒径および分子構造を有する外添剤粒子が得られた。そして、外添剤粒子F,Gを用いた以外は実施例1と同様にして表示媒体用粒子および情報表示装置を作製したところ、実施例1の情報表示装置と同等の性能を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、簡便に調製することができ、且つ、繰り返し移動させた際の流動性の低下等を十分に抑制することができる表示媒体用粒子を提供することができる。また、繰り返し使用した際の表示性能の低下を抑制し得る情報表示装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 基板
2 基板(透明基板)
3W 白色粒子
3B 黒色粒子
4 隔壁
5 電極(画素電極)
6 電極(共通透明電極)
10 情報表示装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間に表示媒体を封入し、当該表示媒体を移動させて情報を表示する情報表示装置の表示媒体として使用される表示媒体用粒子であって、
粒子本体の表面に対し、
一般式:RSiX
[式中、Rは、疎水基であり、Xは、互いに同一のまたは異なる加水分解性基である]で表されるシラン化合物同士を加水分解重縮合させて得た重縮合物からなる外添剤を付着させてなることを特徴とする、表示媒体用粒子。
【請求項2】
前記Rが、炭素原子がケイ素原子に直接結合する有機基であることを特徴とする、請求項1に記載の表示媒体用粒子。
【請求項3】
前記Xが、塩素原子、フッ素原子、臭素原子およびヨウ素原子、並びに、メトキシ基およびエトキシ基からなる群より選択される少なくとも一種であることを特徴とする、請求項1または2に記載の表示媒体用粒子。
【請求項4】
前記Rが、アルキル基、アルケニル基またはアリール基、或いは、これらの炭化水素基の炭素原子に結合している水素原子の一部または全部を有機基で置換した置換炭化水素基であることを特徴とする、請求項1〜3の何れかに記載の表示媒体用粒子。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の表示媒体用粒子を用いたことを特徴とする、情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−68805(P2013−68805A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207468(P2011−207468)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】