説明

表示媒体用粒子

【課題】表示反転を繰返す長期の使用に際しても優れた電荷保持特性を有する表示媒体用粒子を提供する。
【解決手段】複合型粒子の子粒子33を、温度:24℃,湿度:99RH%における飽和水分率が1質量%以下のシリカと、その表面に吸着させたアルキルトリアルコキシシラン化合物との縮合物で構成し、かつシリカ:100質量部に対するアルキルトリアルコキシシラン化合物の配合割合を1.0〜2.5質量部とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも一方が透明な2枚の基板間に帯電性を有する表示媒体を封入し、この表示媒体に電界を付与することによって、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルに用いる表示媒体用粒子に関し、特にその電荷保持特性の向上を図ろうとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液晶表示装置(LCD;Liquid Crystal Display)に代わる情報表示装置として、電気泳動方式、エレクトロクロミック方式、サーマル方式および2色粒子回転方式等を用いた情報表示装置が提案されている。
【0003】
これらの従来技術は、LCDと比較すると、通常の印刷物に近い広い視野角が得られるだけでなく、消費電力が小さいおよびメモリー機能を有している等のメリットがあることから、次世代の安価な情報表示装置に使用可能な技術と考えられており、携帯端末用情報表示や電子ペーパー等への展開が期待されている。
特に最近では、分散粒子と着色溶液から成る分散液をマイクロカプセル化し、これを対向する基板間に配置してなる電気泳動方式が提案され、期待が寄せられている。
【0004】
しかしながら、電気泳動方式では、液中を粒子が泳動するために、液の粘性抵抗により応答速度が遅くなるという問題がある。また、低比重の溶液中に酸化チタン等の高比重の粒子を分散させているため沈降し易いことから、分散状態の安定性維持が難しいだけでなく、情報表示の繰り返し安定性に欠けるという問題を抱えている。さらに、マイクロカプセル化にしても、セルサイズをマイクロカプセルレベルにして、見かけ上、上述した欠点を現れ難くしているものの、本質的な問題は何ら解決されていない。
【0005】
一方、溶液中での挙動を利用する電気泳動方式に対し、溶液を使わず、導電性粒子と電荷輸送層とを基板の一部に組み入れる方式が提案され始めている(例えば、非特許文献1参照)。
しかしながら、この方式には、電荷輸送層、さらには電荷発生層を配置する必要上、構造が複雑化することに加え、導電性粒子に電荷を一様に注入することが難しいため、安定性に欠けるという問題がある。
【0006】
上述した種々の問題を解決するものとして、少なくとも一方が透明な2枚の対向する基板間に、表示媒体を封入し、この表示媒体に電界を付与することにより、表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネル等の情報表示装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2003/050606号パンフレット
【特許文献2】特開2009−139736号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】「趙 国来、外3名、“新しいトナーディスプレイデバイス(I)”、1999年7月21日、日本画像学会年次大会(通算83回)“Japan Hardcopy’99”論文集、p.249-252」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述した情報表示装置に用いる表示媒体としては、流動性に優れると共に、帯電量の制御性に優れることが必要とされる。
そこで、かような表示媒体用の粒子として、流動性を高めて表示媒体用粒子間の凝集力を低減したり、帯電性を向上させてパネル間の移動を容易にし、さらには電極や隔壁などの情報表示用パネル部材への付着力を低減させるために、熱可塑性樹脂ベースの母粒子の表面に、微小粒子(子粒子)を機械的な剪断力により埋め込んだ複合型粒子が提案されている(例えば特許文献2)。
【0010】
しかしながら、かような複合型粒子であっても、流動性や帯電特性などの初期性能を長期にわたって維持できないという問題があった。
すなわち、例えばシリカ微粒子は、負帯電性を有する粒子であるが、発明者らの検討によれば、表示媒体用粒子を構成するための負帯電微粒子としてシリカ微粒子を用いた場合、電荷保持特性が十分ではないことが判明した。
【0011】
そこで、本発明は、情報表示用パネルに用いる表示媒体用粒子を構成するための帯電性微粒子において、十分な電荷保持特性を発揮し得る手段を提供することを目的とする。
ここに、電荷保持特性とは、帯電後の電荷減衰を抑制し、一定量以上の電荷保持量を長時間維持することができる特性のことである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
さて、発明者らは、上記課題に鑑み、それを解決すべく鋭意検討を行った。その過程において、表示媒体用粒子を構成する複合型粒子の子粒子として、飽和水分率が低いシリカの最表面にアルキルトリアルコキシシラン化合物を縮合させ、シリカにアルキル部を固定化したものを用いることにより、電荷保持特性に優れる帯電微粒子が得られるとの知見を得た。
本発明は、上記の知見に立脚するものである。
【0013】
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、帯電性を有する表示媒体を封入し、該表示媒体に電界を付与することによって、該表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルに用いられる表示媒体用粒子であって、
上記表示媒体用粒子は、母粒子とその表面に固着された子粒子からなる複合型粒子として構成され、
上記子粒子が、温度:24℃,湿度:99RH%における飽和水分率が1質量%以下のシリカと、その表面に吸着させたアルキルトリアルコキシシラン化合物との縮合物からなり、該シリカ:100質量部に対する該アルキルトリアルコキシシラン化合物の配合割合が1.0〜2.5質量部であることを特徴とする表示媒体用粒子。
【0014】
2.前記アルキルトリアルコキシシラン化合物のアルキル鎖が6から18の範囲にあることを特徴とする前記1に記載の表示媒体用粒子。
【0015】
3.下記式(1)で示される粒子の変形率で評価したとき、300 kg/cm2(2.94×107Pa)加重後における前記子粒子の変形率が40%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示媒体用粒子。

変形率(%)={最密充填高さ(mm)−加重後の高さ(mm)}/最密充填高さ(mm)×100
--- (1)
【0016】
4.前記表示媒体用粒子の表面に、さらに外添剤を付着させたことを特徴とする前記1乃至3のいずれかに記載の表示媒体用粒子。
【0017】
5.前記外添剤の表面被覆率が100〜1000%であることを特徴とする前記4に記載の表示媒体用粒子。
【発明の効果】
【0018】
本発明に従い、複合型粒子の子粒子として、温度:24℃,湿度:99RH%における飽和水分率が1質量%以下のシリカの表面に、アルキルトリアルコキシシラン化合物を縮合させた子粒子を用い、かつシリカ:100質量部に対するアルキルトリアルコキシシラン化合物の配合割合を 1.0〜2.5質量部とすることにより、表示媒体用粒子としての電荷保持特性を格段に向上させることができる。
ここに、アルキルトリアルコキシシラン化合物のアルキル鎖を6から18の範囲とすることにより、電荷保持特性が一層向上する。
また、子粒子の硬度は、次式(1)で示される粒子の変形率で評価したとき、300 kg/cm2(2.94×107Pa)加重後における子粒子の変形率が40%以下となる硬度とすることが、母粒子に子粒子を変形させることなく埋め込んで複合化粒子とする上で好ましい。
変形率(%)={最密充填高さ(mm)−加重後の高さ(mm)}/最密充填高さ(mm)×100
--- (1)
さらに、本発明では、表示媒体用粒子の表面に、さらに外添剤を付着させることもでき、かかる構成とすることにより、流動性の向上のみならず、電荷保持特性の一層の向上を図ることができる。
そして、本発明の表示媒体用粒子を情報表示用パネルの表示媒体として用いることにより、良好な表示安定性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)、(b)は本発明の表示媒体用粒子を用いた一例となる帯電粒子移動方式の情報表示用パネルの原理的構成を説明するために示した図である。
【図2】(a)、(b)は本発明の表示媒体用粒子を用いた一例となる帯電粒子移動方式の情報表示用パネルの他の原理的構成を説明するために示した図である。
【図3】母粒子の表面に子粒子を固着した複合型の表示媒体用粒子の様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明では、複合型粒子における子粒子を、温度:24℃,湿度:99RH%における飽和水分率が1質量%以下のシリカと、その最表面に吸着したアルキルトリアルコキシシラン化合物の縮合物からなる子粒子とし、シリカに硬度を、アルキル基に帯電特性を担わせることによって、耐久性および電荷保持特性を兼備させる。
すなわち、本発明の子粒子は、温度:24℃,湿度:99RH%における飽和水分率が1質量%以下のシリカと、アルキルトリアルコキシシラン化合物を出発原料とし、シリカに存在するシラノール基とアルキルアルコキシシラン化合物のアルコキシ部が脱アルコール化反応を起こすことにより、シリカ表面にアルキル基が修飾される。通常のシリカは、高次網目構造をとるが、シリカ表面にシラノール基が存在しているため、このシラノール基の存在により、電荷保持特性が劣化し、帯電後、急激に電荷が放出する現象が生じていた。
本発明は、子粒子表層に疎水性のアルキル基の脱アルコール反応を適用することにより、シラノール基に起因した電荷減衰を効果的に抑制して、電荷保持特性の向上を図ると共に、シリカの持つ硬度を活用するものである。
【0021】
電荷保持特性とは、帯電後の電荷減衰を抑制し、長時間にわたって一定量以上の電荷保持量を維持することができる特性のことであるが、本発明では、この電荷保持特性に関し、表示媒体用粒子の表面電位が、初期表面電位の90%になるまでの時間が30000秒以上であることが好ましい。
【0022】
本発明において、子粒子のコア部にはシリカを適用する。かかるシリカとしては、温度:24℃,湿度:99RH%における飽和水分率が1質量%以下のシリカを用いる必要がある。飽和水分率が1質量%を超えると、シリカに残存するシラノール基の影響を無視できなくなり、電荷保持特性の著しい劣化を招く。
また、シリカの形状については、球状とすることが望ましい。
【0023】
本発明では、上記したシリカの表層を、疎水性の高いアルキル基を有するアルキルトリアルコキシシラン化合物で覆い、シリカと化学反応させて縮合物を形成することにより、シリカ表面をアルキル鎖で固定化する。
【0024】
ここに、アルキルトリアルコキシシラン化合物としては、アルキル基のアルキル鎖数が6から18の範囲にあるものが好ましい。アルキル鎖数が6に満たないとシリカ表面を被覆するのに十分な有機部分が存在せず、電荷保持特性が向上しない。一方、アルキル鎖数が18を超えるとアルキル鎖の立体障害等により、電荷保持特性の向上が望めない。具体的なアルキルトリアルコキシシラン化合物としては、n−ヘキシルトリメトキシシラン、iso−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、iso−オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシランおよびオクタデシルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0025】
シリカの表層にアルキルトリアルコキシシラン化合物を被覆するための表面被覆処理としては、サンドグラインダーミルを用いて湿式粉砕または湿式解砕する工程を利用するのが好適である。具体的には、まず、シリカ粒子、アルキルトリアルコキシシラン化合物および溶媒などを予備混合したのち、サンドグラインダーミルに供給して表面被覆処理を行ったのち、溶媒を除去して粉体化すればよい。
【0026】
ここに、サンドグラインダーミルとは、容器内にメディアとしてビーズを充填し、さらに回転軸と垂直に取り付けられた撹拌ディスクを高速回転させることにより、基材粉体の凝集粒子を砕いて粉砕・分散する仕組みになる装置であり、その構造としては、縦型・横型、連続式・回分式など、種々の様式が存在するが、シリカ粒子を湿式粉砕または湿式解砕しながらアルキルトリアルコキシシラン化合物を表面被覆処理できるものであればよい。
【0027】
また、かかるサンドグラインダーミルに用いるビーズとしては、ガラス、アルミナ、ジルコン、ジルコニア、スチールおよびフリント石などを原材料としたボールが使用可能であるが、コンタミ発生回避のためには硬度、真比重の高いものがよく、特にジルコニア製やジルコン製のビーズが好ましい。また、ビーズの大きさとしては、通常、直径:1〜2mm程度のものを使用するが、本発明で使用する基材粉体が微粒子であるため、0.3〜1.0mm程度のものを用いることが好ましい。
【0028】
さらに、サンドグラインダーミルに使用する撹拌ディスクとしては、ステンレス製、ナイロン製およびセラミックス製など、種々の素材のものが使用できるが、本発明で使用する基材粉体が無機粉体であるため、耐摩耗性のあるセラミックス製が好適であり、特に上記したようなジルコニア製やジルコン製のビーズを用いる場合には、ジルコニア製のディスクとすることが好ましい。
【0029】
なお、湿式粉砕または湿式解砕する際の溶媒については、特に制限はなく、水やメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの各種アルコール類、アセトン、テトラヒドロフラン、ベンゼン、ヘキサン、トルエン、パラフィンなどの各種有機溶剤などを、シリカ粒子の分散程度や使用するアルキルトリアルコキシシラン化合物の特性に応じて、単独あるいは二種以上混合して、使い分けて用いればよい。
【0030】
また、湿式粉砕または湿式解砕時の、シリカ粒子、アルキルトリアルコキシシラン化合物、溶媒など各成分の混合割合は、実際には、最終製品の目標品質や、効率的な湿式工程条件選定のために、使用する媒体の種類や組み合わせにより、適宜比率を選択する必要があるが、シリカ:100質量部に対し、アルキルトリアルコキシシラン化合物:1.0〜2.5質量部とすることが必要である。というのは、アルキルトリアルコキシシラン化合物の配合割合が1.0質量部に満たないと、シリカ表面を被覆するのに十分な有機部分が存在せず、電荷保持特性が向上しない。一方、2.5質量部を超えると、アルコキシル基がシリカ表面のシラノール基に対して過剰となり、アルコキシル基が未反応のまま存在するため、電荷保持特性が低下する。より好ましいアルキルトリアルコキシシラン化合物の配合割合は1.2〜2.0質量部の範囲である。
【0031】
かくして得られた子粒子の硬度は、次式(1) で示される粒子の変形率で評価したとき、300 kg/cm2(2.94×107Pa)加重後における子粒子の変形率が40%以下となる硬度とすることが好ましい。というのは、かような硬度とすることにより、母粒子に子粒子を変形させることなく埋め込んで複合化粒子とすることができるからである。
変形率(%)={最密充填高さ(mm)−加重後の高さ(mm)}/最密充填高さ(mm)×100
--- (1)
なお、上記の変形率については、具体的には、以下のようにして測定した。
フローテスター(島津製作所:CFT-500D)の試料充填室の底を封じて、試料:1.0gを投入し、その試料に300 kg/cm2(2.94×107Pa)の加重を加えて、変形率を算出した。
ここに、最密充填高さとは、前記試料を投入した場合に子粒子が変形せずに球状を保ったまま、最密充填された時の高さであり、次式(2)で算出される。
最密充填高さ(cm)=投入した子粒子重量(g)/子粒子の比重(g/cm3)/フローテスターの 底面積(cm2) --- (2)
【0032】
また、本発明では、流動性の向上および電荷保持特性の一層の向上を目的として、表示媒体用粒子の表面に、さらに外添剤を付着させることもできる。
外添剤は凝集力が強いため、複合粒子表面に均一に被覆することができる。かかる、外添剤の表面被覆率は100〜1500%とすることが望ましい。より好ましい被覆率は300〜1000%である。ここで、表面被覆率とは、表示媒体用粒子の表面に均一に一層、外添剤が付着した状態を100%として、2層,3層となったときに200%,300%と判定されるものである。
【0033】
次に、本発明の理解を容易とするため、表示媒体用粒子として帯電型の粒子を採用し、この表示媒体用粒子を移動して画像等を表示する移動方式の情報表示用パネルを一例として、その概略構成を先ず説明する。
【0034】
前記帯電粒子移動方式の情報表示用パネルは、対向する2枚の基板間の空間に封入した帯電性を有する母粒子およびその表面に子粒子を有する複合型の表示媒体用粒子で構成した粒子群に電界が付与される。付与された電界方向に沿って、表示媒体用粒子が電界による力やクーロン力などによって引き寄せられ、表示媒体用粒子が電界方向の変化によって移動することにより、画像等の情報表示がなされる。従って、表示媒体用粒子が、均一に移動し、かつ、繰り返し表示情報を書き換える時、或いは表示情報を継続して表示する時の安定性を維持できるように、情報表示用パネルを設計する必要がある。ここで、表示媒体を構成する表示媒体用粒子にかかる力は、電界による力、粒子同士のクーロン力により引き付けあう力、電極や基板との電気鏡像力、分子間力、液架橋力、重力などが考えられる。
【0035】
本発明の表示媒体用粒子を表示媒体として用いる前記情報表示用パネルの例を、図1(a)、(b)および図2(a)、(b)を参照して説明する。
図1(a)、(b)に示す例は、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する表示媒体用粒子を含んだ粒子群として構成される互いに光学的反射率および帯電特性が異なる少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(TFT付き画素電極)と基板2に設けた電極6(共通電極)とで形成する電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図1(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色表示、あるいは、図1(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色表示をするなど、白黒ドットマトリックス表示をすることができる。
なお、図1(a)、(b)においては、手前にある隔壁は省略している。各電極5、6は、基板1、2の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。画素(ドット)とセルとを1対1に対応させた例を示しているが、画素とセルとは対応させなくてもよい。
【0036】
また、図2(a)、(b)に示す例では、少なくとも光学的反射率および帯電性を有する粒子を含んだ粒子群として構成される互いに光学的反射率および帯電特性が異なる少なくとも2種類の表示媒体(ここでは負帯電性白色粒子3Waを含んだ粒子群として構成した白色表示媒体3Wと正帯電性黒色粒子3Baを含んだ粒子群として構成した黒色表示媒体3Bを示す)を、隔壁4で形成された各セルにおいて、基板1に設けた電極5(ライン電極)と基板2に設けた電極6(ライン電極)とが対向直交交差に形成する画素電極対の間に電圧を印加することにより発生する電界に応じて、基板1、2と垂直に移動させる。そして、図2(a)に示すように白色表示媒体3Wを観察者に視認させて白色表示、あるいは、図2(b)に示すように黒色表示媒体3Bを観察者に視認させて黒色ドット表示をするなど、白黒のドットマトリックス表示をすることができる。
なお、図2(a)、(b)において、手前にある隔壁は省略している。各電極5、6は、基板1、2の外側に設けても、基板の内側に設けても、基板内部に埋め込むように設けてもよい。画素(ドット)とセルとを1対1に対応させた例を示しているが、画素とセルとは対応させなくてもよい。
【0037】
なお、上記基板1、2としては、ガラス基板、樹脂シート基板、樹脂フィルム基板等の基板を用いることができる。表示面側(観察側)とする基板2は、透明基板とする。この基板2の情報表示画面領域に、所定の電圧および極性(正・負)を有する電圧を印加するための電極(図1などで説明した、共通電極またはライン電極5)を配設する場合には透明電極とする。図1及び図2に示した情報表示用パネルを構成する基板1の表面には、マトリックス状電極対を構成するように薄膜トランジスタ(TFT)付き画素電極もしくはライン電極が形成されている。この対向電極対に電圧を印加したときに、表示媒体(粒子群)に電界が印加されることによって移動して所望の表示を行う前述の構造が実現できる。
【0038】
さらに、本発明の対象の一形態となる表示媒体表示媒体用粒子について詳細に説明する。表示媒体用粒子は、図1(a)、(b)及び図2(a)、(b)の情報表示用パネルなどに適用することができ少なくとも一方が透明な2枚の基板の間に表示媒体を構成して封入されるものである。
そして、本発明は、図3で示すように、母粒子32の表面に子粒子33が固着されている、いわゆる複合型の表示媒体用粒子31に係るもので、特に帯電性及び耐久性に優れた子粒子33、そして、かかる子粒子を用いる複合型表示媒体用粒子31に関するものである。以下順に説明する。
【0039】
複合型の表示媒体用粒子での母粒子について、先ず説明する。母粒子の主成分となるベース樹脂に、必要に応じて、荷電制御剤、着色剤、無機添加剤等を含めることができる。以下で樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0040】
表示媒体用粒子の母粒子は、その主成分となるベース樹脂に着色剤として顔料を含み、更に必要に応じて、荷電制御剤、無機添加剤等を含ませることができる。以下に、樹脂、荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を例示する。
【0041】
表示媒体用粒子の母粒子のベース樹脂の例としては、ウレタン樹脂、ウレア樹脂、チオウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アクリルウレタン樹脂、アクリルチオウレタン樹脂、アクリルウレタンシリコーン樹脂、アクリルウレタンフッ素樹脂、アクリルフッ素樹脂、シリコーン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、スチレンブタジエンアクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、メチルペンチル樹脂、ブチラール樹脂、塩化ビニリデン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリアミド樹脂等を挙げることができる。これらを2種類以上混合して使用してもよい。また、予め重合した樹脂を粉砕処理したものを使用してもよいし、懸濁重合で形成したものを使用してもよい。荷電制御剤、着色剤、その他添加剤を混練りした後、粉砕することにより作製される場合には、母粒子の主成分は熱可塑性を有すると共に、粉砕しやすいことも必要である。この観点から、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等のアクリル樹脂、アクリルフッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリシクロオレフィン樹脂、ノルボルネン樹脂、メチルペンチル樹脂、ポリスチレン系樹脂の各水素添加物等が挙げられる。なお、懸濁重合の場合、その容易さからアクリル樹脂、アクリルフッ素樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレンアクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂の各水素添加物等が好適である。
【0042】
荷電制御剤としては、特に制限はないが、負荷電制御剤としては例えば、サリチル酸金属錯体、含金属アゾ染料、含金属(金属イオンや金属原子を含む)の油溶性染料、4級アンモニウム塩系化合物、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物(ベンジル酸ホウ素錯体)、ニトロイミダゾール誘導体等が挙げられる。正荷電制御剤としては例えば、ニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物、ポリアミン樹脂、イミダゾール誘導体等が挙げられる。その他、超微粒子シリカ、超微粒子酸化チタン、超微粒子アルミナ等の金属酸化物、ピリジン等の含窒素環状化合物及びその誘導体や塩、各種有機顔料、フッ素、塩素、窒素等を含んだ樹脂等も荷電制御剤として用いることもできる。
【0043】
着色剤としては、以下に例示するような、有機または無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黒色着色剤としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等がある。青色着色剤としては、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダンスレンブルーBC等がある。赤色着色剤としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウォッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、C.I.ピグメントレッド2等がある。
【0044】
また、黄色着色剤としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファーストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ、C.I.ピグメントイエロー12等がある。緑色着色剤としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、C.I.ピグメントグリーン7、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等がある。橙色着色剤としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダンスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダンスレンブリリアントオレンジGK、C.I.ピグメントオレンジ31等がある。紫色着色剤としては、マンガン紫、ファーストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等がある。白色着色剤としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等がある。
【0045】
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等がある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料として、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルー等がある。
【0046】
無機系添加剤の例としては、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、酸化アンチモン、炭酸カルシウム、鉛白、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナホワイト、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、カドミウムオレンジ、チタンイエロー、紺青、群青、コバルトブルー、コバルトグリーン、コバルトバイオレット、酸化鉄、カーボンブラック、マンガンフェライトブラック、コバルトフェライトブラック、銅粉、アルミニウム粉などが挙げられる。
これらの顔料および無機系添加剤は、単独であるいは複数組み合わせて用いることができる。このうち特に黒色顔料としてカーボンブラックが、白色顔料として酸化チタンが好ましい。上記着色剤を配合して所望の色の表示媒体用粒子前駆体である母粒子を作製できる。
【実施例】
【0047】
以下、本発明に係る表示媒体用粒子の実施例について説明する。
粒子径は日本電子製透過型電子顕微鏡写真(FE−SEM7500)を用いて、粒子総個数が200個前後となるように写真を撮影し、その写真より無作為に選んだ100個の粒子の直径(撮影された粒子の最大径)をノギスにて計測し、その算術平均を平均粒子径として測定することにより求めた。
摩擦帯電量は、下記の装置を用い、下記の条件にて一般的なフローオフ法に基づいて測定した。
測定装置:ブローオフ方式帯電量測定機(京セラケミカル社製、TB-203)
メッシュアパーチャ:32 [μm]
ブロー圧/サクション圧:4.5[kPa]/9.5[kPa]
キャリア:F96-80(パウダーテック社製)
振とう回数:1000回
子粒子の表面処理量(率)は以下のようにして求めた。
示差熱重量分析装置(ティー・エイ・シンスツルメント社製:Q600型)を用いて、窒素雰囲気中にて、粒子を10℃/分の昇温速度で室温から600℃まで加熱し、200℃から600℃までの重量減少量を測定した。得られた粒子の重量減少量を初期重量で除し、その100分率を表面処理(アルキル部)率とした。
【0048】
表示媒体用粒子の電荷保持量は、以下のようにして測定した。
(1) 銅セルに粒子を層厚:300(μm)で充填する。
(2) スコロトロン帯電器(ニードル印加電圧:±20(kV)、グリッド電圧:±1(kV))により粒子表面電位が±1(kV)になるように電荷を付与する。
(3) グラウンド(GND)結線し、室温(22℃)で24時間静置後の表面電位を電荷保持量とする。
(4) 電荷保持能力の判断は子粒子に関しては、電荷保持量が700V(電荷保持能70%)となる時間(以下、電荷保持時間という)で、複合粒子に関しては、電荷保持量が900V(電荷保持能90%)となる電荷保持時間で表わす。電荷保持時間が長いほど、電荷保持能力が高いと判断する。
【0049】
表示媒体装置に封入するための表示媒体用粒子として、複合型の表示媒体用粒子を製造した。複合粒子の作製は、黒色表示媒体用母粒子としてシクロオレフィンポリマー(ポリプラスチック(株)製):100質量部と、カーボンブラック(SPECIAL BLACK4:エボニック−デグッサ(株)製):5質量部とを2軸混練し、ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマテック(株)製)で粉砕分級することにより、平均粒子径:10μm を得た。
また、白色表示媒体用粒子は、シクロオレフィンポリマー(ポリプラスチック(株)製):100質量部と二酸化チタン(タイペークCR−50:石原産業(株)製):100質量部とを2軸混練し、ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマテック(株)製)で粉砕分級することにより、平均粒子径:10μm を得た。
複合粒子の作製は、複合化装置(ノビルタミル(NOB−130):ホソカワミクロン(株)製)を用い、投入エネルギーが2400 kJとなるようにして行った。
外添剤の付与は、複合型粒子を所定の被覆率となる量の外添剤と予め混合した後、カーボンミキサー処理機(SMT(株)製:HFM−001C)を4000 rpmで撹拌して、複合粒子表面に外添剤が均一に付着するように処理を行った。
【0050】
パネルの作製は、上述のようにして作製した、黒色表示媒体用粒子と白色表示媒体用粒子とを組合せて、透明電極(ITO)が製膜されているパネル間に粒子充填量:5g/m2で充填して、評価パネルを作製した。今回用いたパネルは、電極間距離が40μm となるもので、80Vの電圧印加において2×106(V/m)の電界を表示媒体用粒子に作用させるものとなる。
パネルの評価は:評価パネルの電極間に80Vの電圧を電圧の向きを変えて印加することで、評価パネルにおいて白表示および黒表示を行った。そして、白表示および黒表示のそれぞれにおいて、光学濃度計(サカタインクスエンジニアリング(株):Macbeth RD19I)を用いて、OD値(光学濃度)の測定を行った。白表示のOD:WODと黒表示のOD:BODをもとにコントラストCR=10(BOD-WOD)を算出し、これをパネル性能の指標とした。耐久試験は蛍光灯(パラライトフラットFML27EX-N:(株)日立製作所)を用いて600Lxとなるようにした状態で、80V駆動時のCRがCR>5となる場合を合格(○)とし、CR≦5となる場合を不合格 (×)とした。また、10分間隔で電圧を印加し、CRがCR>5となる場合を合格(○)とし、CR≦5となる場合を不合格(×)とした。
【0051】
実施例1(表面処理シリカ粒子の作製)
シリカ粒子「日本触媒製シーホスターKE−S30(粒子径:270nm,CV値:4.1%,飽和水分率:0.1質量%):1000gに、デシルトリメトキシシラン(東京化成製):10gおよびトルエン:5000gを配合し、撹拌機で混合してスラリー調整したのち、さらに横型連続式サンドグラインダーミルを用いて湿式解砕処理を施した。スラリーのミル内の滞留時間は5分間とした。処理後のスラリーは、ニーダーに投入して減圧加熱により溶媒を除去し、表面被覆処理粒子を得た。
シリカの表面に被覆されたアルキル部(被覆量)は0.7%であり、子粒子1000回振とう後の帯電量は−19.7μC/gであり、700V時の電荷保持時間は7500sであった。
【0052】
実施例2(表面処理シリカ粒子の作製)
表面処理剤にデシルトリメトキシシラン(東京化成製):15gを使用した以外は、実施例1と同様にして表面被覆処理粒子を作製した。
シリカの表面に被覆されたアルキル部は0.8%であり、子粒子1000回振とう後の帯電量は−32.9μC/gであり、700V時の電荷保持時間は23000sであった。
【0053】
実施例3(表面処理シリカ粒子の作製)
表面処理剤にデシルトリメトキシシラン(東京化成製):17.5gを使用した以外は、実施例1と同様にして表面被覆処理粒子を作製した。
シリカの表面に被覆されたアルキル部は0.85%であり、子粒子1000回振とう後の帯電量は−37.0μC/gであり、700V時の電荷保持時間は7300sであった。
【0054】
実施例4(表面処理シリカ粒子の作製)
表面処理剤にデシルトリメトキシシラン(東京化成製):20gを使用した以外は、実施例1と同様にして表面被覆処理粒子を作製した。
シリカの表面に被覆されたアルキル部は1.1%であり、子粒子1000回振とう後の帯電量は−18.2μC/gであり、700V時の電荷保持時間は10000sであった。
【0055】
実施例5(表面処理シリカ粒子の作製)
表面処理剤にn−ヘキシルトリメトキシシラン(東京化成製):15gを使用した以外は、実施例1と同様にして表面被覆処理粒子を作製した。
シリカの表面に被覆されたアルキル部は0.5%であり、子粒子1000回振とう後の帯電量は−24.8μC/gであり、700V時の電荷保持時間は3400sであった。
【0056】
実施例6(表面処理シリカ粒子の作製)
表面処理剤にn−オクチルトリメトキシシラン(東京化成製):10gを使用した以外は、実施例1と同様にして表面被覆処理粒子を作製した。
シリカの表面に被覆されたアルキル部は0.4%であり、子粒子1000回振とう後の帯電量は−167.0μC/gであり、700V時の電荷保持時間は7000sであった。
【0057】
実施例7(表面処理シリカ粒子の作製)
表面処理剤にn−オクチルトリメトキシシラン(東京化成製):15gを使用した以外は、実施例1と同様にして表面被覆処理粒子を作製した。
シリカの表面に被覆されたアルキル部は0.5%であり、子粒子1000回振とう後の帯電量は−93.9μC/gであり、700V時の電荷保持時間は3300sであった。
【0058】
比較例1(シリカ粒子単体)
シリカ粒子「日本触媒製シーホスターKE−S30(粒子径:270nm,CV値:4.1%,飽和水分率:0.1%)の1000回振とう後の帯電量は−82.3μC/gであり、700V時の電荷保持時間は10sであった。
【0059】
比較例2(表面処理シリカ粒子の作製)
表面処理剤にn−オクチルトリメトキシシラン(東京化成製):5gを使用した以外は、実施例1と同様にして表面被覆処理粒子を作製した。
シリカの表面に被覆されたアルキル部は0.3%であり、子粒子1000回振とう後の帯電量は−19.9μC/gであり、700V時の電荷保持時間は1200sであった。
【0060】
比較例3(表面処理シリカ粒子の作製)
表面処理剤にデシルトリメトキシシラン(東京化成製):30gを使用した以外は、実施例1と同様にして表面被覆処理粒子を作製した。
シリカの表面に被覆されたアルキル部は1.4%であり、子粒子1000回振とう後の帯電量は−17.5μC/gであり、700V時の電荷保持時間は1000sであった。
【0061】
比較例4(表面処理シリカ粒子の作製)
表面処理剤にイソブチルトリメトキシシラン:15gを使用した以外は、実施例1と同様にして表面被覆処理粒子を作製した。
シリカの表面に被覆されたアルキル部は0.2%であり、子粒子1000回振とう後の帯電量は−25.0μC/gであり、700V時の電荷保持時間は1200sであった。
【0062】
比較例5(表面処理シリカ粒子の作製)
表面処理剤にオクタデシルトリメトキシシラン:30gを使用した以外は、実施例1と同様にして表面被覆処理粒子を作製した。
シリカの表面に被覆されたアルキル部は1.2%であり、子粒子1000回振とう後の帯電量は−13.0μC/gであり、700V時の電荷保持時間は260sであった。
【0063】
比較例6(表面処理シリカ粒子の作製)
シリカ粒子として「日本触媒製シーホスターKE−P30(粒子径:270nm,CV値:4.1%,飽和水分率:9.9質量%)を用い、表面処理剤としてオクタデシルトリメトキシシラン:30gを使用した以外は、実施例1と同様にして表面被覆処理粒子を作製した。
シリカの表面に被覆されたアルキル部は1.2%であり、子粒子1000回振とう後の帯電量は−9.0μC/gであり、700V時の電荷保持時間は2sであった。
【0064】
実施例8(複合型粒子の作製)
シクロオレフィンポリマー(ポリプラスチック(株)製):100質量部と二酸化チタン(タイペークCR−50:石原産業(株)製):100質量部とを2軸混練し、ジェットミル(ラボジェットミルIDS−LJ型:日本ニューマテック(株)製)で粉砕分級することにより得た、平均粒子径:10μm の白色表示媒体用粒子と、実施例1により得た子粒子とを、複合化装置(ノビルタミル(NOB−130):ホソカワミクロン(株)製)を用い、投入エネルギーが2400 kJとなるようにして、複合型粒子(1)を作製した。
かくして得られた複合型粒子(1)の1000回振とう後の帯電量は−6.5μC/gであり、900V時の電荷保持時間は35000sであった。
さらに、複合型粒子(1):100gと外添剤として負帯電性シリカ(HDK H3004 WACKER社製):1.7g(被覆率:350%)とを予め混合した後、カーボンミキサー処理機(SMT(株)製:HFM−001C)を4000 rpmで撹拌して、複合型粒子の表面に外添剤が均一に付着するように処理を行い、白色表示媒体用粒子(1)を作製した。
【0065】
実施例9(複合型粒子の作製)
実施例2の子粒子を用いる以外は、実施例8と同様にして、複合型粒子(2)および白色表示媒体用粒子(2)を作製した。
複合型粒子(2)の1000回振とう後の帯電量は−7.8μC/gであり、900V時の電荷保持時間は69000sであった。
【0066】
実施例10(複合型粒子の作製)
実施例3の子粒子を用いる以外は、実施例8と同様にして、複合型粒子(3)および白色表示媒体用粒子(3)を作製した。
複合型粒子(3)の1000回振とう後の帯電量は−10.5μC/gであり、900V時の電荷保持時間は21000sであった。
【0067】
実施例11(複合型粒子の作製)
実施例4の子粒子を用いる以外は、実施例8と同様にして、複合型粒子(4)および白色表示媒体用粒子(4)を作製した。
複合型粒子(4)の1000回振とう後の帯電量は−11.7μC/gであり、900V時の電荷保持時間は32000sであった。
【0068】
実施例12(複合型粒子の作製)
実施例5の子粒子を用いる以外は、実施例8と同様にして、複合型粒子(5)および白色表示媒体用粒子(5)を作製した。
複合型粒子(5)の1000回振とう後の帯電量は−8.7μC/gであり、900V時の電荷保持時間は38000sであった。
【0069】
実施例13(複合型粒子の作製)
実施例6の子粒子を用いる以外は、実施例8と同様にして、複合型粒子(6)および白色表示媒体用粒子(6)を作製した。
複合型粒子(6)の1000回振とう後の帯電量は−9.2μC/gであり、900V時の電荷保持時間は33000sであった。
【0070】
実施例14(複合型粒子の作製)
実施例7の子粒子を用いる以外は、実施例8と同様にして、複合型粒子(7)および白色表示媒体用粒子(7)を作製した。
複合型粒子(7)の1000回振とう後の帯電量は−9.1μC/gであり、900V時の電荷保持時間は34000sであった。
【0071】
比較例7(複合型粒子の作製)
比較例1の子粒子を用いる以外は、実施例8と同様にして、複合型粒子(8)および白色表示媒体用粒子(8)を作製した。
複合型粒子(8)の1000回振とう後の帯電量は−0.2μC/gであり、900V時の電荷保持時間は1300sであり、パネル表示性能に必要な電荷保持能を満たしていなかった。
【0072】
比較例8(複合型粒子の作製)
比較例2の子粒子を用いる以外は、実施例8と同様にして、複合型粒子(9)および白色表示媒体用粒子(9)を作製した。
複合型粒子(9)の1000回振とう後の帯電量は−5.8μC/gであり、900V時の電荷保持時間は15000sであり、パネル表示性能に必要な電荷保持能を満たしていなかった。
【0073】
比較例9(複合型粒子の作製)
比較例3の子粒子を用いる以外は、実施例8と同様にして、複合型粒子(10)および白色表示媒体用粒子(10)を作製した。
複合型粒子(10)の1000回振とう後の帯電量は−13.0μC/gであり、900V時の電荷保持時間は10000sであり、パネル表示性能に必要な電荷保持能を満たしていなかった。
【0074】
比較例10(複合型粒子の作製)
比較例4の子粒子を用いる以外は、実施例8と同様にして、複合型粒子(11)および白色表示媒体用粒子(11)を作製した。
複合型粒子(11)の1000回振とう後の帯電量は−10.7μC/gであり、900V時の電荷保持時間は17000sであり、パネル表示性能に必要な電荷保持能を満たしていなかった。
【0075】
比較例11(複合型粒子の作製)
比較例5の子粒子を用いる以外は、実施例8と同様にして、複合型粒子(12)および白色表示媒体用粒子(12)を作製した。
複合型粒子(12)の1000回振とう後の帯電量は−10.2μC/gであり、900V時の電荷保持時間は12000sであり、パネル表示性能に必要な電荷保持能を満たしていなかった。
【0076】
比較例12(複合型粒子の作製)
比較例6の子粒子を用いる以外は、実施例8と同様にして、複合型粒子(13)および白色表示媒体用粒子(13)を作製した。
複合型粒子(13)の1000回振とう後の帯電量は−10.2μC/gであり、900V時の電荷保持時間は12000sであり、パネル表示性能に必要な電荷保持能を満たしていなかった。
【0077】
前記黒色表示媒体用母粒子に対し、メラミンホルムアルデヒド縮合樹脂の微粒子G(日本触媒(株)製、エポスターS)を、複合化装置(ノビルタミル(NOB−130):ホソカワミクロン(株)製)を用い、黒色表示媒体用母粒子:100質量部に対して子粒子Gを
15質量部の割合で混合し、投入エネルギーが2400 kJとなるようにして、黒色複合化粒子(α)を作製した。
さらに、黒色複合化粒子(α):100gと、外添剤として正帯電性シリカ(HDK H3050VP WACKER社製):4.9g(被覆率:1000%)とを予め混合した後、カーボンミキサー処理機(SMT(株)製:HFM−001C)を4000 rpmで撹拌して、複合型粒子の表面に外添剤が均一に付着するように処理を行い、黒色表示媒体用粒子(α)を作製した。
【0078】
黒色表示媒体用粒子(α)と白色表示媒体用粒子(1)〜(13)とを組み合わせたパネルについて、80V駆動および10分間隔駆動時における表示安定性について調べた結果を表1に示す。
いずれの評価も、○:良好、×:不良で示す。
【0079】
【表1】

【0080】
同表から明らかなように、情報表示用パネルの表示媒体として、本発明に従う表示媒体用粒子を用いた場合はいずれも、パネルとしての特性にも優れている。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明に従い、表示媒体用粒子を構成する複合型粒子の子粒子として、飽和水分率が低いシリカの最表面にアルキルトリアルコキシシラン化合物を縮合させた構造のものを用いることにより、電荷保持特性を格段に向上させることができ、ひいては、かかる子粒子をそなえる複合型粒子とすることにより、表示媒体用粒子としての電荷保持特性も大幅に向上させることができる。
【符号の説明】
【0082】
1、2 基板
3Wa、3Ba 表示媒体用粒子
3W、3B 表示媒体(粒子群)
4 隔壁
5、6 電極
31 複合型の表示媒体用粒子
32 母粒子
33 子粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一方が透明な2枚の基板間に、帯電性を有する表示媒体を封入し、該表示媒体に電界を付与することによって、該表示媒体を移動させて画像等の情報を表示する情報表示用パネルに用いられる表示媒体用粒子であって、
上記表示媒体用粒子は、母粒子とその表面に固着された子粒子からなる複合型粒子として構成され、
上記子粒子が、温度:24℃,湿度:99RH%における飽和水分率が1質量%以下のシリカと、その表面に吸着させたアルキルトリアルコキシシラン化合物との縮合物からなり、該シリカ:100質量部に対する該アルキルトリアルコキシシラン化合物の配合割合が1.0〜2.5質量部であることを特徴とする表示媒体用粒子。
【請求項2】
前記アルキルトリアルコキシシラン化合物のアルキル鎖が6から18の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の表示媒体用粒子。
【請求項3】
下記式(1)で示される粒子の変形率で評価したとき、300 kg/cm2(2.94×107Pa)加重後における前記子粒子の変形率が40%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の表示媒体用粒子。

変形率(%)={最密充填高さ(mm)−加重後の高さ(mm)}/最密充填高さ(mm)×100
--- (1)
【請求項4】
前記表示媒体用粒子の表面に、さらに外添剤を付着させたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の表示媒体用粒子。
【請求項5】
前記外添剤の表面被覆率が100〜1500%であることを特徴とする請求項4に記載の表示媒体用粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−137640(P2012−137640A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290365(P2010−290365)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】