説明

表示板の取付け構造並びに雲台装置及びカメラ装置

【課題】 簡素な構成で、さまざまな面形状を有する雲台装置等の機器の設置姿勢に応じた表示部の取付けを可能にした表示板の取付け構造を提供する。
【解決手段】 表示板を少なくとも2つ以上の姿勢で機器の筐体外装面に取付けることができる表示板の取付け構造であって、 該表示板は、弾性体で形成され、表示面に対して裏側の面に突設された軸であってその先端に係止爪を備える軸と、少なくとも2つの係合片であってそれぞれが鍵状の突起を有する係合片とを備え、該筐体外装面は、該軸が挿通される支持孔と、該係合片と係合する係合孔を備え、軸が該支持孔に挿通されると、該係止爪は該表示板の該軸が延在する方向への動きを規制し、該係合片が該係合孔に挿通されると該鍵状突起と該係合孔が係合し、該表示板が該筐体外装面に装着される、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示板の取付け構造に関し、特に2つ以上の姿勢で設置する雲台装置等の機器への表示板の取付け構造並びに雲台装置及びカメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、雲台装置において、筐体外装面にメーカーロゴを表示したものが知られている。このような雲台装置は、正立姿勢以外にも、天吊り姿勢で設置されることがあるので、これに伴い、表示も設置姿勢に応じた向きで視認されることが望ましい。
例えば、特許文献1では、表示板の裏面に引っ掛け部が設けられた軸を突設させ、板状の部分に設けられた孔に軸を挿通し、軸の引っ掛け部にバネ部材を取付け、表示板を軸方向に付勢し、板状の部分の孔に対し回転調整可能に取り付ける構造が開示されている。
【0003】
また、特許文献2では、表示板の取付け面に凹部を設け、表示板を外すときに表示板を押し込むと凹部に表示板が沈み込んで反対側の面を起き上がらせ、表示板を取り外すことが出来、表示姿勢を変更して取付けすることが出来る構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許登録第4419949号公報
【特許文献2】特許登録第4254439号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された従来技術では、表示板を回転調整可能に取り付けるためにバネ部材が必要で部品点数が増えてしまう。また特許文献2に開示された従来技術では、製品毎に表示板の取付け面は変化するので、表示板は製品毎に形状を変える必要があり、かつ、180度毎の姿勢にしか対応することが出来ない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、簡素な構成で、さまざまな面形状の機器の設置姿勢に応じた表示板の取付けを可能にした表示板の取り付け構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、表示板を少なくとも2つ以上の姿勢で機器の筐体外装面に取付けることができる表示板の取付け構造であって、
該表示板は、弾性体で形成され、表示面に対して裏側の面に突設された軸であってその先端に係止爪を備える軸と、少なくとも2つの係合片であってそれぞれが鍵状突起を有する係合片とを備え、
該筐体外装面は、該軸が挿通される支持孔と、該係合片と係合する係合孔を備え、
該軸が該支持孔に挿通されると、該係止爪は該表示板の該軸の延在する方向への動きを規制し、
該係合片が該係合孔に挿通されると該鍵状突起と該係合孔が係合し、該表示板が該筐体外装面に装着される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡素な構成で、さまざまな面形状の機器の設置姿勢に応じた表示板の取付けをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施例に係る、表示板の取付け構造を備えた雲台装置の斜視図。
【図2】図1をY視方向から見た表示部zの分解斜視図。
【図3】図2の構成を雲台装置内部から見た、表示部zの分解斜視図。
【図4】表示板4が収容部5に装着された状態を表す、図1のX−X断面図。
【図5】図4に対して、表示板4の係合片4Cが、係合孔5Bより抜けた状態を表す図。
【図6】本発明の第1の実施例に係る、表示板の取付け構造を備えた雲台装置の天吊時の斜視図。
【図7】表示板4の係合片4Cが、係合孔5Bより抜け、表示板4が回転可能となった状態を表す斜視図。
【図8】表示板4の係合片4Cの形状を別の係合片4C1に変更した図。
【図9】表示板4の係合片4Cの鍵状突起4Bが、係合孔5Bに付する付勢力を示す模式図。
【図10】本発明の第2の実施例に係る表示板の取付け構造の、表示板41と収容部51の分解斜視図。
【図11】図8の構成を雲台装置内部から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
以下、図1から図9を参照して、本発明の第1の実施例による、表示板の取付け構造について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る、表示板の取付け構造を備えた雲台装置の斜視図を示している。図示しない三脚等により支持された台座1には、ヘッド2が水平方向に回動自在に取り付けられ、このヘッド2には撮影装置が搭載されたハウジング3が垂直方向において回動自在に取り付けられている。台座1には、情報や絵、形などの方向性を有する表示部zが備わっている。台座1、ヘッド2、ハウジング3およびハウジング3に搭載された撮影装置によりカメラ装置が構成されている。
【0012】
図2は図1をY視方向から見た表示部zの分解斜視図、図3は図2の構成を台座1の内部から見た、表示部zの分解斜視図、図4は図1のX−X方向から見た断面図である。表示部zは、表示板4と、表示板4を回転自在に収容する収容部5により構成されている。図3で示されるように、表示板4には、表示がなされている面である表示面の裏側の面の、略中央に突設される軸であって、その先端に鍵状の係止爪4A1を備える軸4Aが形成され、軸4A回りに対称に、鍵状突起4Bが形成された係合片4Cを2箇所備え、ゴム、シリコンゴム、プラスチック等(以下、ゴム等と記す)の弾性体で形成されている。収容部5は、軸4Aが挿通して回転可能に支持する支持孔5Aと、係合片4Cが挿通する2箇所の係合孔5Bを備える。図4より、表示板4が、収容部5に装着されている時の状態を説明する。表示板4の軸4Aが、支持孔5Aに挿通されると、係止爪4A1により表示板4の軸が延在する方向(軸方向)への動きが規制される。さらに係合片4Cが係合孔5Bに挿通されると、表示板4の弾性力により、鍵状突起4Bが係合孔5Bの縁部に対して付勢された状態で鍵状突起4Bが係合孔5Bと係合する。このことにより、表示板4は、台座1の面に形状をならいながら、収容部5に装着される。
【0013】
図4から図7を参照して、表示板4の姿勢を変更する方法について説明する。図6は、雲台装置が天吊り設置状態の図である。この状態のときは、表示部zが雲台装置にならって天地逆転して視認しづらい向きになる。図4で示すように、表示板4の端部4D1に力F1と、端部4D2に力F2を加え、弾性変形させることで、鍵状突起4Bの係止が解除され、係合片4Cが係合孔5Bより抜ける。図5は、係合片4Cが係合孔5Bより抜けた状態を表す図である。この状態のとき表示板4は、図7で示されるように、軸4Aを中心に回転可能となり、表示が視認しやすい向きへ回転させ、再度収容部5へ装着することが可能となる。上記の動作を行うことで、雲台装置の設置姿勢に合わせて、表示板4の姿勢を変えて装着することが可能となる。
【0014】
このように本実施例において、情報や絵、形などの方向性を有する表示板4を、弾性変形可能なゴム等の弾性体によって形成した。また収容部5において軸4Aを中心に回転可能に支持され、表示部zを備える台座1の面形状にならって取付けられるように、鍵状突起4Bが形成された係合片4Cを設けた。
【0015】
本実施形態の効果として、表示板4をゴム等の弾性体で形成し、係合片4Cを係合孔5Bより挿脱可能に構成したので、一旦表示の向きを決めて台座1に取り付けた後でも、雲台装置の設置姿勢に応じて、表示板の姿勢を変えることが可能となる。また表示板4が弾性変形することで、さまざまな面形状にならうことが出来る。よって異なる表面形状の機器に対しても、一つの表示板4で対応することが出来、表示板としての部品を共通化することが出来る。
【0016】
また、図3で示されるように、表示板4の係合片が設けられている側の、表示面の裏面の端部に切り欠き4Eを設けてもよい。切り欠き4Eを設けることで、端部4D1と4D2に力F1、F2を作用させることが容易となり、上述の効果に加えて、収容部5からの挿脱が迅速かつ簡単に行うことが可能となる。
【0017】
また図8で示されるように、表示板4の係合片4Cを、係合片4C1のように中央部を切り欠いた形状にしてもよい。すなわち、表示板4の長手方向における両端側に設けられた係合片4C1を、長手方向と直交する方向である横方向に分割された複数の係合片からなる(横方向に延在する構成部分を有さない)係合片4C1としてもよい。係合片をこのように構成することで、表示板4の長手方向における両端側に設けられた係合片4C1によって、長手方向と垂直な方向である横方向(すなわち、図8中に示す矢印方向)に曲率を付するような曲げに対して剛性を高めることなく、雲台装置等の筐体装着部の横方向の曲面にもならって表示板4を装着することが出来る。
【0018】
なお、表示板の筐体外装面側の面の曲率半径をR1、表示板を取り付ける筐体外装面の装着面の曲率半径をR2としたとき、以下の関係を満足するとなお好ましい。表示板の筐体外装面側の面が表示面(取り付け側とは反対側の面)側に凸となる場合のR1の符号を正、装着面が表示板側に凸となる場合のR2の符号を正としたとき、
R1×R2>0、かつ、R1>R2 (1)
R1<0、かつ、R2>0 (2)
取付ける装着面が平面、かつ、R1<0 (3)
のいずれかを満足するように設定すると好ましい。
【0019】
この条件を満足するように、表示板4の筐体外装面側の面の曲率半径R1と、表示板4を取付ける筐体外装面の装着面の曲率半径R2を設定することで、表示板を構成する材料の弾性による復元力により、表示板4を装着面に装着したときに、軸4Aの反対側(反対方向)を向くように構成されている係合片4Cの鍵状突起4Bが係合孔5Bに対し、軸4Aの反対側(反対方向)に働く付勢力(図9中の楕円で示した部分おける矢印で記載される力)を持って係合するため、表示板4が取付け部に遊びを有することなく安定して装着することができる。
【0020】
また、本実施例では、表示板4の係合片4Cの鍵状突起4Bは、軸4Aに対し反対側を向くように構成されている形態として例示したが、本発明はこれに限定されることはない。表示板4の係合片4Cの鍵状突起4Bが、軸4Aの側を向くように構成してもよい。この場合は、
R1×R2>0、かつ、R1<R2 (4)
R1>0、かつ、R2<0 (5)
取付ける装着面が平面、かつ、R1>0 (6)
のいずれかを満足するように設定すると好ましい。
【0021】
この条件を満足するように、表示板4の筐体外装面側の面の曲率半径R1と、表示板4を取付ける筐体外装面の装着面の曲率半径R2を設定することで、表示板を構成する材料の弾性による復元力により、表示板4を装着面に装着したときに、軸4Aの側(方向)を向くように構成されている係合片4Cの鍵状突起4Bが係合孔5Bに対し、軸4Aの側(方向)に働く付勢力をもって係合するため、表示板4が取付け部に遊びを有することなく安定して装着することができる。この場合は、表示板4を取付ける装着面の長手方向外側に寸法的に余裕がなく、係合孔5Bの長手方向外側に、鍵状突起4Bが係合する係合部を構成することが困難である場合に好適であり、表示板4を取付ける装着面を表示板4の鍵状突起4Bが外側から挟み込むような形態で、表示板4を固定することができる。
【実施例2】
【0022】
以下、図10及び図11を参照して、本発明の第2の実施例による、表示板の取付け構造について説明する。本実施例は、実施例1の形態の変形例であり、実施例1の形態と同様な箇所、部材には同一の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0023】
図10は、実施例1の図2と同様に見た表示板41と収容部51の分解斜視図、図11は、図10の構成を、台座1の内部から見た図である。図11で示されるように、表示板41の表示がなされている面の裏側に、鍵状突起41Bを備える係合片41Cが4箇所形成されており、軸41Aを中心に4か所が等間隔および、各々90度の角度関係にあるものとする。また収容部51にも係合片41Cに合わせて、係合孔51Bが4箇所形成されており、孔51Aを中心に各々90度の角度関係にあるものとする。
【0024】
次に、表示板41の姿勢を変更する方法について説明する。実施例1と同様に、前記表示板41の係合片41Cの端部を4か所ともに弾性変形させることで、鍵状突起41Bの係止が解除され、係合片41Cが係合孔51Bより抜ける。このとき表示板41は軸41Aを中心に回転可能となり、雲台装置の姿勢に合わせて、姿勢を変えることが可能となる。
【0025】
すなわち、本実施形態の効果として係合片41Cを軸41A中心に90度毎に配置したことにより、表示板41の姿勢を90度毎に変えることが可能となる。
【0026】
[その他の実施例]
本発明の第1、第2の実施例において表示板4,41の軸4A,41Aを樹脂材料にしてもよい。樹脂材料にすることで、軸4A,41Aと、収容部5,51の支持孔5A,51Aとの摩擦力が減少し、軸4A,41Aを支持孔5A,51Aに挿通することが容易になる。また支持孔5A,51Aを中心に表示板4,41を回転させることが容易となる。実施例2においては、角度調整は90度毎としたが、90度毎に限定はされず、係合孔51Bの数を増やすことで15度毎、30度毎に調整出来るようにしてもよい。
【0027】
また、実施例2においては、係合片41Cを軸41Aに対し回転対称な位置である4箇所に設置したが、軸に対し回転対称の関係で複数の係合片を構成することによって、同様の本発明の効果をそうすることができる。また、それによって、表示板の形状や、表示板を取付ける機器の筐体外装面の形状に起因する表示板に応じた、適切な表示板の取付けを実現することができる。
【0028】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0029】
4 表示板
4A 表示板に突設された軸
4A1 軸の先端に形成された鍵状の係止爪
4B 係合片に形成された鍵状突起
4C 表示板に突設された係合片
5A 収容部に設けた支持孔
5B 収容部に設けた係合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示板を少なくとも2つ以上の姿勢で機器の筐体外装面に取付けることができる表示板の取付け構造であって、
該表示板は、弾性体で形成され、表示面に対して裏側の面に突設された軸であってその先端に係止爪を備える軸と、少なくとも2つの係合片であってそれぞれが鍵状突起を有する係合片とを備え、
該筐体外装面は、該軸が挿通される支持孔と、該係合片と係合する係合孔とを備え、
該軸が該支持孔に挿通されると、該係止爪は該表示板の該軸の延在する方向への動きを規制し、
該係合片が該係合孔に挿通されると該鍵状突起と該係合孔が係合し、該表示板が該筐体外装面に装着される、
ことを特徴とする表示板の取付け構造。
【請求項2】
前記表示板を形成する弾性体は、ゴム、シリコンゴム、プラスチックのいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の表示板の取付け構造。
【請求項3】
前記係合片は、前記軸に対して回転対称な位置に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示板の取付け構造。
【請求項4】
前記係合片は、前記表示板の長手方向と直交する方向に分割して構成されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示板の取付け構造。
【請求項5】
前記軸は、樹脂材料により構成されていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の表示板の取付け構造。
【請求項6】
前記表示板の、前記係合片が設けられている側の、表示面の裏面の端部に切り欠きを備えることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の表示板の取付け構造。
【請求項7】
前記鍵状突起が前記係止爪を備える軸の反対側を向き、
前記表示板の前記筐体外装面側の面の曲率半径をR1、前記表示板を取り付ける前記筐体外装面の装着面の曲率半径をR2、前記表示板の前記筐体外装面側の面が前記表示面側に凸となる場合の前記R1の符号を正、前記装着面が前記表示板側に凸となる場合の前記R2の符号を正とするとき、
R1×R2>0、かつ、R1>R2、
R1<0、かつ、R2>0、
取付ける装着面が平面、かつ、R1<0、
のいずれかを満たすことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の表示板の取付け構造。
【請求項8】
前記鍵状突起が前記係止爪を備える軸の側を向き、
前記表示板の前記筐体外装面側の面の曲率半径をR1、前記表示板を取り付ける前記筐体外装面の装着面の曲率半径をR2、前記表示板の前記筐体外装面側の面が前記表示面側に凸となる場合の前記R1の符号を正、前記装着面が前記表示板側に凸となる場合の前記R2の符号を正とするとき、
R1×R2>0、かつ、R1<R2、
R1>0、かつ、R2<0、
取付ける装着面が平面、かつ、R1>0、
のいずれかを満たすことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の表示板の取付け構造。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の表示板の取付け構造を有することを特徴とする雲台装置。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の表示板の取付け構造を有することを特徴とするカメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−252086(P2012−252086A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123463(P2011−123463)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】