説明

表示機能付きスイッチ装置

【課題】 制御対象機器51への影響なしに、保守管理データを表示させる。
【手段】 モード切替用ディップスイッチ44が、多機能スイッチ制御対象機器51と液晶上部スイッチ41の間に直列接続されている。したがって、モード切替用ディップスイッチ44をメンテナンスモードに切り換えることにより、液晶上部スイッチ41と多機能スイッチ制御対象機器51とが切り離されるので、液晶上部スイッチ41を操作しても、多機能スイッチ制御対象機器51への影響がない。モード切替用ディップスイッチ44が、メンテナンスモードである場合には、液晶上部スイッチ41の入力パターンを判断して、保守管理データをLCD33に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、表示機能付きスイッチ装置に関し、特に、保守の容易化に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、CPUを内蔵したスイッチ装置が開示されている。かかるスイッチ装置では、一定の押下回数が経過したか否かをスイッチ装置が判断し、経過した場合には警告がなされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-298020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたスイッチ装置では、所定回数を超えた場合に警告表示するとともに、外部の制御機器に対してこの警告を出力することが可能である。しかし、保守点検者が任意のタイミングで、現在の押下回数を把握したい場合には、外部の制御機器より情報を読み出すことは可能であるが、スイッチ装置単体で情報を得ることができないという問題があった。
【0005】
かかる問題を解決するために、長押しがなされた場合には、押し下げ回数問い合わせモードであると判定することも考えられるが、スイッチを長押しする必要がある。これでは、このスイッチに接続されている制御対象機器の状態が変更されてしまうという問題がある。
【0006】
かかる問題は、スイッチの押下回数だけでなく、当該スイッチの使用頻度によって変更される保守管理データについても同様である。
【0007】
この発明は、上記の問題点を解決して、制御対象機器の状態を変更することなく、保守管理データを表示できる表示機能付きスイッチ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明にかかる表示機能付きスイッチ装置は、1)接続された制御対象機器を選択状態(オン)または非選択状態(オフ)に切り替えるための第1の入力スイッチ、2)前記選択状態を表す選択状態画像データおよび前記非選択状態を表す非選択状態画像データを記憶する記憶部、3)前記第1の入力スイッチが、前記選択状態である場合には前記選択状態画像データを表示部に表示し、前記第1の入力スイッチが前記非選択状態である場合には前記非選択状態画像データを表示部に表示する制御部、を備えた表示機能付きスイッチ装置において、4)前記第1の入力スイッチを前記制御対象機器と切り離した非制御モードに切り替える第2の入力スイッチを備え、5)前記制御部は、保守管理データを前記記憶部に記憶しており、前記第2の入力スイッチによって前記非制御モードに切り替えられている場合には、前記第1の入力スイッチに所定の入力パターンが与えられると、前記保守管理データを前記表示部に表示する。
【0009】
したがって、前記第2の入力スイッチにより前記第1の入力スイッチを前記非制御モードにすることにより、前記第1の入力スイッチに所定パターンの入力を行って保守管理データを表示することができる。その際、第1の入力スイッチは前記制御対象機器と切り離されているので、操作をしても、制御対象機器への影響がない。
【0010】
(2)本発明にかかる表示機能付きスイッチ装置においては、前記制御部は、所定の入力パターンとして複数のパターンを記憶しており、いずれかが選択された場合には、該当する保守管理データを前記表示部に表示する。したがって、複数の保守管理データを表示させることができる。
【0011】
特許請求の範囲に用いた用語の意義について説明する。「保守管理データ」とは、保守管理において必要なデータであり、これには、第1の入力スイッチの使用に伴って変化する保守管理のためのデータを含む。実施形態では、「押下回数」、「交換予定日」、「ID」、「スイッチの型番(製造番号)」、「ロットナンバー」、「問い合わせ先」等が該当する。また、「第1の入力スイッチ」とは、実施形態では「液晶上部スイッチ41」が該当する。「非制御モード」とは実施形態では「メンテナンスモード」が該当する。「第2の入力スイッチ」とは、実施形態では「モード切替用ディップスイッチ44」が該当する。「表示部」とは、実施形態ではLCD33が該当するが、LCDに限らず、たとえば、所定のパターンで複数のLEDを配置して構成することもできる。
【0012】
「制御対象機器」とは、多機能スイッチ制御対象機器が該当する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の一実施形態による多機能スイッチ1のハード構成を示す図である。
【図2】メモリ27に記憶されたフローチャートである。
【図3】通常モードの表示例である。
【図4】特殊モードの表示例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に、この発明の一実施形態による表示機能付きスイッチ装置である多機能スイッチ1のハード構成を示す。
【0015】
多機能スイッチ1は、マイコン30、LCD33、液晶上部スイッチ41、モード切替用ディップスイッチ44,RS485ドライバIC37、接続用コネクタ39を備えている。
【0016】
液晶上部スイッチ41は、接続された多機能スイッチ制御対象機器51の状態を切り替える。モード切替用ディップスイッチ44は、多機能スイッチ制御対象機器51と液晶上部スイッチ41の間に直列接続されている。
【0017】
マイコン30は、CPU23、メモリ27(フラッシュメモリ・RAM)、UART25、I/O29、LCDコントローラ31を備えている。
【0018】
I/O29には、液晶上部スイッチ41,およびモード切替用ディップスイッチ44が接続されている。I/O29には、接点41b,44bの状態が与えられる。
【0019】
CPU23は、メモリ27に記憶されたメインプログラムによる処理を実行する。具体的には、上記2つのスイッチ41,44の状態に基づき、LCDコントローラ31に表示制御命令を行う。LCDコントローラ31は、この表示制御命令を受けてLCD33に所定の画像を表示する。かかる処理については後述する。
【0020】
UART25はRS485規格のシリアルデータ/パラレルデータの変換を行う。RS485ドライバIC37は、RS485規格の信号レベルへの変換を行う。これにより、多機能スイッチ1は、接続用コネクタ39に接続されたケーブルを介して、外部機器であるパソコン140と、データ通信を行うことができる。なお、パソコン140との間でRS485変換器を設けてもよい。
【0021】
多機能スイッチ111,112,113は多機能スイッチ1と同様の構成をしており、それぞれ、多機能スイッチ制御対象機器121,122、123の制御を行う。また、多機能スイッチ1と同様に、ケーブルを介して、パソコン140とデータ通信を行う。また、多機能スイッチ間でデータ通信も可能である。
【0022】
つぎに、メモリ27に記憶されたプログラムによる処理について図2を用いて説明する。
【0023】
まず、モード切替用ディップスイッチ44を「通常モード(オン状態)」にした場合について説明する。
【0024】
CPU23は、I/O29を介して、モード切替用ディップスイッチ44における接点44bの状態を検出している(図2ステップS1)。
【0025】
この場合、モード切替用ディップスイッチ44は「通常モード(オン状態)」であるので、接点44aはオン状態である。これにより、液晶上部スイッチ41と多機能スイッチ制御対象機器51と接続され、液晶上部スイッチ41の操作により、多機能スイッチ制御対象機器51がオンオフ制御される。
【0026】
また、CPU23は、I/O29を介して液晶上部スイッチ41の接点41bの状態を検出している(図2ステップS3)。CPU23は、液晶上部スイッチ41がオン(選択状態)である場合には、予め記憶されているオン画像を表示するように、LCDコントローラ31に命令を与える(図2ステップS5)。一方、CPU23は、液晶上部スイッチ41がオフ(非選択状態)である場合には、予め記憶されているオフ画像を表示するように、LCDコントローラ31に命令を与える(図2ステップS7)。かかる通常モードは、従来と同様である。これにより、図3に示すように、オン画像およびオフ画像がLCD表示される。
【0027】
つぎに、モード切替用ディップスイッチ44を「メンテナンスモード」にした場合について説明する。
【0028】
CPU23は、I/O29を介して、モード切替用ディップスイッチ44における接点44bの状態を検出している(図2ステップS1)。
【0029】
この場合、モード切替用ディップスイッチ44は「メンテナンスモード(オフ状態)」であるので、接点44aはオフ状態である。よって、液晶上部スイッチ41と多機能スイッチ制御対象機器51とが切断される。これにより、多機能スイッチ制御対象機器51の状態を変更することなく、液晶上部スイッチ41を操作することが可能となる。
【0030】
CPU23は、I/O29を介して液晶上部スイッチ41の接点41bへの入力パターンを検出する(図2ステップS11)。CPU23は、液晶上部スイッチ41への入力パターンが第1パターンである場合には、押下回数表示処理を行うようLCDコントローラ31に命令を与える(図2ステップS13)。押下回数表示処理について、簡単に説明する。メモリ27は、累積カウント数記憶領域を有する。CPU23は、スイッチ41が1回押し下げられると、この累積カウント数記憶領域に記憶された値Rをインクリメントしている。この累積カウント数記憶領域に記憶された値Rを読み出して、これをLCDコントローラ31に与えることにより、図4Aに示すように、現在までの押下回数を表示させることができる。
【0031】
一方、CPU23は、液晶上部スイッチ41への入力パターンが第2パターンである場合には、交換予定日表示処理を行うようLCDコントローラ31に命令を与える(図2ステップS15)。
【0032】
交換予定日表示処理の詳細について説明する。メモリ27には、既に説明した累積カウント数記憶領域に加えて、上限カウント数記憶領域、および、使用開始から現在までの日数を記憶する総日数記憶領域を有する。上限カウント数記憶領域には、使用回数の上限値Tが予め記憶されている。総日数記憶領域には、CPU23により、使用開始から現在までの日数Dcが記憶されている。また、メモリ27には、既に説明したように、累積カウント数である値Rcが記憶されている。
【0033】
これらの値から、下記式により、現在から交換予定日までの日数Dxを予想することができる。
【0034】
Dx=Dc*T/Rc
このDxを現在の日付に加算することにより、交換予定日が演算できる。この交換予定日をLCDコントローラ31に与えることにより、図4Bに示すように、交換予定日を表示させることができる。
【0035】
なお、本実施形態においては、第1パターンとして、トン(例えば1秒間押す)・トン・ツー(例えば2秒間押す)という入力データを、第2パターンとして、トン・トン・トン・ツーという入力パターンを採用したが、これに限定されるわけではない。
【0036】
以上説明したように、本実施形態においては、モード切替用ディップスイッチ44を設け、このスイッチ44が、メンテナンスモードである場合には、液晶上部スイッチ41の入力パターンを判断して、第1パターンである場合には、総押下回数を読み出してきてこれを表示、第2パターンである場合には、総押下回数の履歴に基づき交換予定日を予想して、これを表示する。このようにして、多機能スイッチ1の保守管理をすることができる。
【0037】
また、モード切替用ディップスイッチ44は、多機能スイッチ制御対象機器51と液晶上部スイッチ41の間に直列接続されている。したがって、モード切替用ディップスイッチ44をメンテナンスモードに切り換えることにより、液晶上部スイッチ41と多機能スイッチ制御対象機器51とが切り離されるので、液晶上部スイッチ41を操作しても、多機能スイッチ制御対象機器51への影響がない。
【0038】
なお、本実施形態においては、液晶上部スイッチ41へ入力される入力パターンを2つ記憶しておくことにより、2種類の表示が可能である。しかしこれに限定されず、1つのみでもよく、さらに、3種類以上のパターンを記憶しておき、これらを表示可能に構成してもよい。例えば、第3パターンとして、トン・ツーであれば、当該スイッチのID表示をする等である。ID表示とは、通信を行う場合のスイッチ固有のデータが該当する。このIDをメモリ27に予め記憶しておき、読み出すようにすればよい。なお、その他、スイッチの型番(製造番号)、ロットナンバー、問い合わせ先等についても、第4のパターン・・・として表示するようにしてもよい。
【0039】
また、本実施形態においては、非制御モードについて、液晶上部スイッチと多機能スイッチ制御対象機器の間に、ディップスイッチを接続する構成によって、ハード的に制御対象機器を切り離したが、これに代えて、液晶上部スイッチと多機能スイッチ制御対象機器との間にディップスイッチを接続せずに、マイコン30に全ての情報を集中させ、いずれの状態かを判断させて、状況に応じて、多機能スイッチ制御対象機器への出力を制御する構成にすることによってソフト的に制御対象機器を切り離してもよい。
【0040】
本実施形態においては、表示部として液晶部を用いた場合について説明したが、表示部として、たとえば、LEDなどを用いてもよい。
【0041】
また、表示部である液晶の上に、液晶上部スイッチ41を設けた場合について説明したが、これに限定されない。
【0042】
本多機能スイッチは、機器制御、自動販売機、券売機など種々の機器に使用することができる。
【0043】
また、本実施形態においては、液晶上部スイッチおよび多機能スイッチ制御対象機器は、いずれも、メカ的な系統と、マイコン入力系統の2系統で構成している。これにより、マイコンが壊れても、表示部への表示ができないだけで、スイッチとしての機能は損なわないというメリットがある。
【0044】
上記実施形態においては、各機能を実現する為に、CPUを用い、ソフトウェアによってこれを実現している。しかし、その一部若しくは全てを、ロジック回路等のハードウェアによって実現してもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続された制御対象機器を選択状態(オン)または非選択状態(オフ)に切り替えるための第1の入力スイッチ、
前記選択状態を表す選択状態画像データおよび前記非選択状態を表す非選択状態画像データを記憶する記憶部、
前記第1の入力スイッチが、前記選択状態である場合には前記選択状態画像データを表示部に表示し、前記第1の入力スイッチが前記非選択状態である場合には前記非選択状態画像データを表示部に表示する制御部、
を備えた表示機能付きスイッチ装置において、
前記第1の入力スイッチを前記制御対象機器と切り離した非制御モードに切り替える第2の入力スイッチを備え、
前記制御部は、保守管理データを前記記憶部に記憶しており、前記第2の入力スイッチによって前記非制御モードに切り替えられている場合には、前記第1の入力スイッチに所定の入力パターンが与えられると、前記保守管理データを前記表示部に表示すること、
を特徴とする表示機能付きスイッチ装置。
【請求項2】
請求項1の表示機能付きスイッチ装置において、
前記制御部は、所定の入力パターンとして複数のパターンを記憶しており、いずれかが選択された場合には、該当する保守管理データを前記表示部に表示すること、
を特徴とする表示機能付きスイッチ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−232128(P2010−232128A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81075(P2009−81075)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】