説明

表示機能付きICカード、表示用基板、及びICカードにおけるデータ表示方法

【課題】 表示機能付きICカードの製造を容易とするとともに、当該表示機能付きICカードにおいて好適なデータ表示方法等を提供する。
【解決手段】 表示機能付き非接触ICカード1Aは、表示部5、表示制御用ICチップ2、非接触型ICチップ7(通信用ICチップ)、アンテナコイル6(伝送I/F部)等を備える。表示制御用ICチップ2の外部入出力端子は、非接触通信基板13の基板面に露出したアンテナコイル6に結線される。これにより表示制御用ICチップ2はアンテナコイル6から外部へ出力されるデータを取得でき、また、表示用基板11と非接触通信用基板13とがそれぞれ独立した部材として開発できる。特に、非接触通信用基板13は既存のアンテナシート等をそのまま利用することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示機能を備えたICカードの配線構造と、表示機能付きICカードに好適なデータ表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ICカード本体に表示機能を備えたものが開発されている。例えば、特許文献1では、非接触ICカードに強誘電性液晶を使用した表示装置を設けるという方法が提案されている。
また、特許文献2では、表示機能を備えた接触・非接触兼用型ICカードにおいて、非接触通信用のアンテナとは別に表示部への電力供給用アンテナを設け、非接触通信中に接触・非接触兼用型ICチップが外部のICカードリーダライタから表示データを取得し、非接触通信が遮断された状態で、接触・非接触兼用型ICチップから表示用CPUへ表示データを出力し、表示部へ表示させるICカードが提案されている。
【0003】
このような表示機能付きICカードでは、表示部に表示させる表示データを通信用ICチップから取得している。例えば特許文献1では、外部ICカードリーダライタとの通信中に通信用ICチップ(非接触型ICチップ)にて取得した表示データを、そのまま表示部へ渡し、通信用ICチップの制御により表示データを表示部に表示させている。また、例えば特許文献2のように、通信用のICチップとは別に表示制御用のICチップを備える表示機能付きICカードでは、接触・非接触兼用型ICチップのI/O端子と、表示制御用CPUとが接続される旨が記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−154215号公報
【特許文献2】特開2009−122877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献2のように、通信用ICチップと表示制御用CPUとを接続して表示データを得る場合には、表示データ出力用の端子(I/O端子)が通信用ICチップに設けられている必要がある。そのため、表示機能のないICカードに使用される通信用ICチップとは別に、表示機能付きICカード用の通信用ICチップを開発及び製造する必要がある。ところが、通信用ICチップの規格は既に標準化されており、規格変更は難しい。そのため既存の通信用ICチップをそのまま利用して表示機能付きICカードを容易に製造したいという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、表示機能付きICカードの製造を容易とするとともに、当該表示機能付きICカードにおいて好適なデータ表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するため第1の発明は、ICカードリーダライタとの間で通信を行い、格納されたプログラムに応じたデータ処理を実行する通信用ICチップと、前記通信用ICチップに電気的に接続され、前記ICカードリーダライタに対してデータを伝送する伝送I/F部と、ICカード本体に設けられた表示部と、前記表示部を駆動制御する表示制御用ICチップと、前記表示部に表示されるデータを格納するメモリと、を備えたICカードであって、前記表示制御用ICチップは、前記伝送I/F部に結線されることを特徴とする表示機能付きICカードである。
【0008】
第1の発明により、表示機能付きICカードの表示制御用ICチップが、伝送I/F部に結線されるので、伝送I/F部を介して通信用ICチップからICカードリーダライタに伝送されるデータを読み出すことが可能となる。
従って、通信用ICチップに表示データ出力用の端子を特に設けなくても、通信用ICチップ内のデータを取得して表示部に表示させることができるようになる。また、表示機能付きICカードの作成に、既存の通信用ICチップやアンテナシート等をそのまま利用することが可能となる。その結果、通信用ICチップの開発及び製造を新たに行う必要がなくなるため、製造コストを抑え、製造時間を短縮できるようになる。
【0009】
また、前記表示制御用ICチップは、前記伝送I/F部において伝送されるデータのうち、前記通信用ICチップから前記ICカードリーダライタへ送信されるレスポンスデータを読み取る読取手段と、前記レスポンスデータから所定データを抽出し、前記メモリに保持する保持手段と、前記保持手段により保持された所定データを前記表示部に表示させる表示制御手段と、を備えることが望ましい。
これにより、通信用ICチップからICカードリーダライタへ送信されるレスポンスデータから表示部に表示させるデータを抽出してメモリに保持するとともに、表示させることができるため、通信用ICチップから外部へ出力されるデータの一部または全部を表示データとすることが可能となる。
【0010】
また、ユーザの操作に応じた操作信号を前記表示制御用ICチップに送信する操作部を、ICカード本体に更に備え、前記表示制御手段は、前記操作部からの操作に応じて前記所定データを前記表示部に表示させることが望ましい。
これにより、ユーザの好みのタイミングでICカードの表示部にデータを表示させることが可能となる。
【0011】
また、前記ICカードリーダライタと前記通信用ICチップとの通信時間を検知する検知手段を備え、前記表示制御手段は、前記検知手段により所定時間以上の通信が検知された場合に、前記所定データを前記表示部に表示させることが望ましい。
これにより、所定時間以上ICカードリーダライタと通信した場合に、表示部にデータを表示させることが可能となるので、ICカードリーダライタとの通信のタイミングで表示内容を更新でき、実用的である。また、ICカードへの電源供給の観点からも好適である。
【0012】
また、表示部及び表示制御用ICチップに対して電源を供給する電池を更に備えることが望ましい。
これにより、ICカードリーダライタがない場所でICカードの表示部にデータを表示させる場合にも、ICカードが備える電池から電源を得ることが可能となる。
【0013】
第2の発明は、ICカードリーダライタとの間で通信を行い、格納されたプログラムに応じたデータ処理を実行する通信用ICチップと、前記通信用ICチップに電気的に接続され、前記ICカードリーダライタに対してデータを伝送する伝送I/F部とを備えた通信用基板に重ね合わされる表示用基板であって、表示部と、表示部を制御するための表示制御用ICチップと、表示制御用ICチップを前記伝送I/F部に接続するための接続部と、を備えることを特徴とする表示機能付きICカードの表示用基板である。
【0014】
第2の発明によれば、表示部と、表示部を制御するための表示制御用ICチップと、表示制御用ICチップを前記伝送I/F部に接続するための接続部を備えた表示用基板を、通信用基板に重ね合わせることにより、接続部を介して表示制御用ICチップと前記伝送I/F部とを導通させることが可能となる。その結果、従来用いられているICカードの通信用基板または通信用ICチップをそのまま使用して、簡単に表示機能付きICカードを製造することが可能となる。
【0015】
また、前記表示制御用ICチップは、前記伝送I/F部において伝送されるデータのうち、前記通信用ICチップから前記ICカードリーダライタへ送信されるレスポンスデータを読み取る読取手段と、前記レスポンスデータから所定データを抽出し、前記表示部に表示させる表示制御手段と、を備えることが望ましい。
これにより、通信用ICチップからICカードリーダライタへ送信されるレスポンスデータから表示部に表示させるデータを抽出して表示部に表示させることができるため、通信用ICチップから外部へ出力されるデータの一部または全部を表示データとすることが可能となる。
【0016】
第3の発明は、ICカードリーダライタとの間で通信を行い、格納されたプログラムに応じたデータ処理を実行する通信用ICチップと、前記通信用ICチップに電気的に接続され、前記ICカードリーダライタに対してデータを伝送する伝送I/F部と、ICカード本体に設けられた表示部と、前記表示部を駆動制御する表示制御用ICチップと、前記表示部に表示されるデータを格納するメモリと、を備え、前記表示制御用ICチップが前記伝送I/F部に結線されたICカードにおけるデータ表示方法であって、前記表示制御用ICチップは、前記伝送I/F部において伝送されるデータのうち、前記通信用ICチップから前記ICカードリーダライタへ送信されるレスポンスデータを読み取るステップと、前記レスポンスデータから所定データを抽出し、前記メモリに保持するステップと、保持された所定データを前記表示部に表示させるステップと、を含むことを特徴とするICカードにおけるデータ表示方法である。
【0017】
第3の発明によって、表示制御用ICチップは、伝送I/F部に結線され、伝送I/F部を介して通信用ICチップからICカードリーダライタに伝送されるデータのうち、レスポンスデータを読出し、表示部に表示させるデータを抽出してメモリに保持するとともに、表示させることができる。
これにより、表示機能付きICカードにおいて、通信用ICチップから外部へ出力されるデータの一部または全部を表示データとして表示させることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、表示機能付きICカードの製造を容易とすることができ、また、当該表示機能付きICカードにおいて好適なデータ表示方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】表示機能付き非接触ICカード1Aの外観構成図
【図2】表示機能付き非接触ICカード1Aの内部構成を示すブロック図
【図3】表示機能付き非接触ICカード1Aの断面構造図
【図4】表示制御用ICチップ2にて実行される表示処理の流れを示すフローチャート
【図5】ソーラーパネル8及び操作部9を備えた表示機能付き非接触ICカード10Aの外観構成図
【図6】表示機能付き接触型ICカード1Bの外観構成図
【図7】表示機能付き接触型ICカード1Bの内部構成を示すブロック図
【図8】表示機能付き接触型ICカード1Bの断面構造図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づいて本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態では、本発明に係る表示機能付きICカード1のうち、非接触型のもの(表示機能付き非接触ICカード1A)について説明する。
図1は、表示機能付き非接触ICカード1Aの外観構成を示す図、図2は、表示機能付き非接触ICカード1Aの内部構成を示すブロック図、図3は、表示機能付き非接触ICカード1Aの概略断面構造を示す図である。
【0021】
図1に示すように、表示機能付き非接触ICカード1Aは、カード基体10の表面に表示内容が露出するように表示部5が設けられている。表示部5には、例えば電子ペーパを採用でき、文字や画像等の表示データが表示される。
電子ペーパは、例えば、コレステリック液晶でマトリックス回路を形成したフィルム基板に塗工してパッシブ駆動するもの、または電子粉流体を用いたものがあるが、いずれを採用してもよい。電子粉流体の場合は、黒文字と白地の2色表示となり、コレステリック液晶の場合は、緑文字と黒字の2色表示またはカラー表示を行える。
【0022】
電子ペーパの電力消費は表示書き換え時のみ行われ、書き換えられた表示画面は電力消費なしで保持でき、また、ディスプレイの視認性も確保できる。表示画面は、通常の温度(0〜40℃)、湿度(40〜60%)の条件で30日間程度保持できる。電子ペーパの1画面の書き換えに要する時間は、実行開始から10秒以内である。また電子ペーパは10000回以上書き換え可能である。
【0023】
また、表示機能付き非接触ICカード1Aの内部には、図2に示すように、非接触型ICチップ7、非接触通信のためのアンテナコイル6(伝送I/F部)、表示制御用ICチップ2、ドライバ3、メモリ4、及び表示部5が備えられる。更に必要に応じて電池8を備えてもよい。
【0024】
また、表示機能付き非接触ICカード1Aは、図3に示すように、表示用基板11及び非接触通信用基板13を中心層として、その両側に外装フィルム15、17がそれぞれ積層されてカード基体10を構成する。
【0025】
表示用基板11には、上述のように電子ペーパ5(表示部5)、表示制御用ICチップ2、ドライバ3、及びメモリ4が実装される。
表示制御用ICチップ2は、CPU(Central Proccessing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、EEPROM(Electronically Erasable and Programmable ROM)、外部インターフェース(外部入出力端子)等を備え、外部インターフェースを介してメモリ4、ドライバ3、電池8、及びアンテナコイル6に接続される。ドライバ3には表示部5が接続される。これにより、表示制御用ICチップ2は、ドライバ3を駆動して、メモリ4内に保持されたデータを表示部5に表示させることができる。
【0026】
また、表示制御用ICチップ2の外部インタフェースのうち、アンテナコイル6と接続するための接続部は、後述する導線L1またはバンプにより形成される。表示制御用ICチップ2の導線L1またはバンプは、表示用基板11と非接触通信用基板13とを重ね合わせた際に、アンテナコイル6に接触する位置及び導線長さまたはバンプ高さに形成される。
なお、表示制御用ICチップ2の外形寸法は、7mm×7mm程度、市販品の厚みは1mm程度であるが、本発明の表示機能付きICカード1に使用する場合は、背面を研磨して300μm程度にして使用する必要がある。
【0027】
ドライバ3は、表示部5を駆動するための駆動回路である。通常は表示部5の縁辺部にマトリックス配線と一体にして設けられる。ドライバ3の外形寸法は、例えば1.5mm×10.0mmや2.0mm×22.5mm程度である。厚みがかなりあるので、表示制御用ICチップ2と同様に背面を研磨して300μm程度にする必要がある。
メモリ4は、不揮発性の半導体メモリであり、EPROM(Erasable Programable ROM)、フラッシュメモリ等により構成される。メモリ4の厚みは300μm程度以内のものが使用される。
【0028】
非接触通信用基板13は、アンテナコイル6が形成されたアンテナシート上に非接触型ICチップ7が配設されて構成される。アンテナシートには、既存の任意のタイプの非接触ICカードのアンテナシートを使用すればよい。アンテナコイル6は、アンテナシートの面上に露出し、面内を周回する形態等に形成される。アンテナコイル6の形成には、巻き線方式、シルクスクリーン印刷方式、エッチング方式、メッキ方式等のいずれを用いてもよい。アンテナコイル6の両端は非接触型ICチップ7に接続される。
非接触型ICチップ7は、CPU、ROM、RAM、EEPROMを備え、外部のICカードリーダライタ20との間で通信を行い、ROMに格納されたプログラムに応じたデータ処理を実行する。
【0029】
非接触型ICチップ7は、機能にもよるが通常は4.0mm角以内の平面サイズ、厚みは200μm程度以内とする。アンテナコイル6は、アンテナシート面に露出しているため、アンテナコイル6のどの部分でも後述する導線L1が接続可能となっている。
【0030】
次に、図2及び図3を参照して、表示機能付き非接触ICカード1Aの配線について説明する。
図2に示すように、本発明の表示機能付き非接触ICカード1Aでは、表示制御用ICチップ2がアンテナコイル6に結線される。
すなわち、表示制御用ICチップ2の外部インターフェイス(入出力端子)とアンテナコイル6の任意の部位とが導線L1またはバンプにより接続される。アンテナコイル6は、その両端が非接触型ICチップ7に接続されているため、外部のICカードリーダライタ20との通信中には、非接触型ICチップ7が送受信するデータが伝送される。
これにより、表示制御用ICチップ2は、非接触型ICチップ7が外部のICカードリーダライタ20と通信するデータを取得できるようになる。
【0031】
表示制御用ICチップ2とアンテナコイル6との導線L1による接続は、例えば図3に示す例のように実現される。
図3(a)の例では、表示用基板11の一部に導線L1を通す貫通孔H1を形成し、この貫通孔H1に導線L1を通すことによって、アンテナコイル6と表示制御用ICチップ2の外部入出力端子とを接続する。
【0032】
また、図3(b)に示すように、表示用基板11の表示制御用ICチップ2等を配設した面と、非接触通信用基板13のアンテナコイル6を配設した面とを向き合わせ、アンテナコイル6と表示制御用ICチップ2の外部入出力端子とを導線L1またはバンプにて接続するようにしてもよい。この場合、表示用基板11上の部材と非接触通信用基板13上の部材とが重ならないように、各部材が配置される。図3(b)の例では、表示用基板11に貫通孔H1を形成する必要がなく、より簡単に表示用基板11を生成できる。
【0033】
図3の外装フィルム15、17、表示用基板11、及び非接触通信用基板13の各層間は、配線後、エポキシ系またはウレタン系等の液状の樹脂が充填され、接着・硬化される。
【0034】
外装フィルム15、17の厚みは約100μmである。表示用基板11は、基板部分の厚みが約50μm、表示制御用ICチップ2、ドライバ3、及びメモリ4、表示部5の厚みが約300μmである。また、非接触ICカード基板13は、基板部分の厚みが50μm、非接触型ICチップ7の厚みが約200μmである。表示制御ICチップ2、ドライバ3、非接触型ICチップ7等の凸部は、その上部に重なる部分を穴あけして逃がす構成とし、表示機能付きICカード1の積層構造は、全体で0.68mmから0.84mmの厚みになるようにすることが望ましい。
【0035】
以上のように、本発明の表示機能つき非接触ICカード1Aは、表示制御用ICチップ2の外部入出力端子を非接触通信基板13の基板面に露出したアンテナコイル6(伝送I/F部)に結線することにより電気的に接続させるので、表示用基板11と非接触通信用基板13とがそれぞれ独立した部材として開発できる。特に、非接触通信用基板13は既存のアンテナシートをそのまま利用することが可能となるため、開発期間、製造期間を短縮させることが可能となるとともに、製造コストを抑えることが可能となる。
【0036】
このように構成される表示機能付き非接触ICカード1Aにおいて、表示制御用ICチップ2は、非接触型ICチップ7から出力されICカードリーダライタ20へ送信されるデータ(レスポンスデータ)を、アンテナコイル6に結線された導線L1にて読み出す。また表示制御用ICチップ2は、読み出したレスポンスデータから所定の表示用データを抽出し、メモリ4に保持する。そして表示制御用ICチップ2は、所定のタイミングでドライバ3を駆動し、メモリ4に保持されているデータを表示部5に表示させる。
【0037】
次に、図4のフローチャートを参照して、表示機能付き非接触ICカード1Aにおける表示に関する動作を説明する。
ユーザが表示機能付き非接触ICカード1AをICカードリーダライタ20にかざすことにより、表示機能付き非接触ICカード1AがICカードリーダライタ20と通信を開始すると(ステップS101;Yes)、表示制御用ICチップ2は、アンテナコイル6(伝送I/F)からレスポンスデータを取得する(ステップS102)。レスポンスデータとは、非接触型ICチップ7から外部のICカードリーダライタ20へ送信されるデータである。外部のICカードリーダライタ20から非接触型ICチップ7へ送信されるデータをコマンドと呼ぶ。
【0038】
非接触型ICチップ7は外部のICカードリーダライタ20からコマンドを受信すると、コマンドに応じたレスポンスデータをICカードリーダライタ20へ送信する。コマンド及びレスポンスとして送受信されるデータの内容は、金融、交通、決済、ポイント等、ICカードの使用態様に応じて取り決められている。本実施の形態では、例えば累計金額等、表示機能付きICカード1で表示させたい内容のデータをレスポンスデータに含むように、データフォーマットが生成されているものとする。
【0039】
レスポンスデータには、ICカードリーダライタ20から要求されるコマンドに応じた種々のデータが含まれるが、この例では、表示制御用ICチップ2はレスポンスデータから累計金額データを抽出し(ステップS103)、メモリ4に保持する(ステップS104)。
【0040】
通信開始後、すぐにユーザが表示機能付き非接触ICカード1AをICカードリーダライタ20にかざすことをやめると、通信を終了し(ステップS105;Yes)、そのまま次の通信開始を待機する。
【0041】
表示機能付き非接触ICカード1AとICカードリーダライタ20との通信が継続し(ステップS105;No)、例えば5秒以上等、所定の時間が経過すると(ステップS106;Yes)、表示制御用ICチップ2は、メモリ4内に保持されているデータ(累計金額等)を表示部5に表示させるようドライバ3を制御する(ステップS107)。表示部5の内容が書き換えられると、ステップS101へ戻り、表示制御用ICチップ2は、次の通信開始を待機する。
【0042】
上述の処理フローは、電池8の搭載されない表示機能付き非接触ICカード1Aに好適な例である。電池8の搭載されない表示機能付き非接触ICカード1Aでは、ICカードリーダライタ20との通信中に表示制御用ICチップ2及び表示部5への電源が供給されるものとする。従って、例えばユーザがICカードリーダライタ20に表示機能付き非接触ICカード1Aを所定時間以上かざした場合に、表示制御用ICチップ2は表示部5への表示を行なうよう制御することが好ましい。
【0043】
電池8の搭載された表示機能付き非接触ICカード1Aでは、任意のタイミングでメモリ4に保持されているデータを表示部5に表示させることが可能である。例えば、図5に示すICカード10Aのように、図1〜図3に示す表示機能付き非接触ICカード1Aに、更に電池8及び操作部9を設ける。電池8は、表示制御用ICチップ2及びドライバ3を駆動するもので、例えば、太陽電池等により構成される。また、操作部9は、例えばタッチセンサにより構成され、操作部9へのタッチ操作を感知し、表示制御用ICチップ2に対してON信号を出力する。表示制御用ICチップ2は、操作部9から入力されるON信号に応じて、メモリ4内のデータを表示部5に表示させる。
【0044】
図4のフローチャートに示すように、通信が開始されていない場合(ステップS101;No)にも、表示制御用ICチップ2は操作部9へのタッチ操作の有無を判断し、タッチ操作があった場合に(ステップS108;Yes)、メモリ4内に記憶されている累計金額を表示部5に表示させる(ステップS107)。
【0045】
以上説明したように、第1の実施の形態の表示機能付き非接触ICカード1Aは、ICカードリーダライタ20との間で通信を行い、格納されたプログラムに応じたデータ処理を実行する非接触型ICチップ7と、非接触型ICチップ7に接続され、ICカードリーダライタ20と非接触ICカード1Aとの間のデータ伝送路となるアンテナコイル6と、カード基体10に設けられた表示部5(電子ペーパ及びドライバ3)と、表示部5を駆動制御する表示制御用ICチップ2と、表示部5に表示されるデータを格納するメモリ4と、を備え、表示制御用ICチップ2の入出力端子は、アンテナコイル6に結線される。
そして、表示制御用ICチップ7は、アンテナコイル6に伝送されるデータを読み取り、読み取ったデータから累計金額等の所定データを抽出してメモリ4に保持し、所定のタイミングで保持されたデータを表示部5に表示させる。
【0046】
これにより、表示制御用ICチップ2は、アンテナコイル6を伝送するデータから表示データを取得できるため、非接触型ICチップ7に表示データ出力用の端子を設ける必要がない。そのため、既存の非接触型ICチップ7やアンテナシート等をそのまま利用して、表示機能付きICカード1を作成することができるようになる。
【0047】
また、表示制御用ICチップ2は、ICカードリーダライタ20と非接触型ICチップ7との通信時間を判定し、所定時間以上の通信が検知された場合に、メモリ4に保持されたデータを表示部5に表示させる。また、表示部5に電子ペーパを採用した場合には、一度書き換えられた表示内容は長期間表示状態が保たれる性質を持つため、ICカードリーダライタ20にかざしていないときにも、表示内容を確認できる。
【0048】
また、タッチセンサ等の操作部9を更に備えた場合には、表示制御用ICチップ2は、操作部9からの操作に応じてメモリ4に保持されているデータを表示部5に表示させることも可能である。この場合は、表示部4に電源を供給する電池8を更に備えることが好適である。
【0049】
なお、上述の例では、アンテナコイル6から読み出され、表示部5に表示されるデータは累計金額としたが、これに限定されない。例えば、交通機関で使用されるICカードでは、残額やチャージ履歴等、また、クレジットカードやキャッシュカードのように金融機関で使用されるICカードでは、取引履歴、決済予定日、口座残高等、ポイントカードであれば、ポイント合計、ポイント有効期限、、更新履歴等が考えられる。なお、いずれの場合も、非接触型ICチップ7がICカードリーダライタ20に対して出力するレスポンスデータとして、これらのデータを含めたデータフォーマットが形成されている必要がある。
【0050】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
第2の実施の形態では、本発明に係る表示機能付きICカード1のうち、接触型のもの(表示機能付き接触型ICカード1B)について説明する。
図6は、表示機能付き接触型ICカード1Bの外観構成を示す図、図7は、表示機能付き接触型ICカード1Bの内部構成を示すブロック図、図8は、表示機能付き接触型ICカード1Bの概略断面構造を示す図である。
【0051】
図6に示すように、表示機能付き接触型ICカード1Bは、第1の実施の形態の表示機能付き非接触ICカード1Aと同様に、カード基体10の表面に表示部5を備える。また表示機能付き接触型ICカード1Bは、表面に接触端子21を備える。接触端子21は、ISO規格に基づく8個の外部接続端子C1〜C8が形成されるものとする。C1は回路電圧端子、C2はリセット信号端子、C3はクロック信号端子、C5は接地端子、C6はプログラム供給電圧端子、C7はデータ入出力端子、C4及びC8は予備端子である。
【0052】
また、表示機能付き接触型ICカード1Bは、図7に示すように、接触型ICチップ23、接触端子21(伝送I/F部)、表示制御用ICチップ2、ドライバ3、メモリ4、及び表示部5を備えるものとする。
【0053】
また、表示機能付き接触型ICカード1Bは、図8の断面図に示すように、表示用基板29及び接触通信用基板25を中心層として、その両側に外装フィルム15、17がそれぞれ積層されてカード基体10を構成する。
【0054】
表示用基板29には、第1の実施の形態の表示用基板11と同様に、電子ペーパ5(表示部5)、表示制御用ICチップ2、ドライバ3、及びメモリ4が実装される。なお、図8では、メモリ4は異なる断面位置に配設され、図示が省略されているものとする。表示部5、ドライバ3、メモリ4、及び表示制御用ICチップ2の各部は、第1の実施の形態と同様であるので説明を省略する。
【0055】
接触端子21の背面には接触型ICチップ23が接続されている。接触端子21及び接触型ICチップ23の接続構造は従来と同様のものでよい。例えば、図8に示すように、接触端子21の各端子C1〜C8が導通孔H3,H4を通る導線L3,L4または導通性接着剤により接触型ICチップ23の各端子に電気的に接続される。
接触型ICチップ23は、ICカードリーダライタ20に挿入されると、接触端子21を介してICカードリーダライタ20との通信を行い、接触通信用ICチップ23に格納されたプログラムに応じたデータ処理を実行する。
【0056】
次に、図7及び図8を参照して、表示機能付き接触型ICカード1Bの配線について説明する。
図7に示すように、本発明の表示機能付き接触型ICカード1Bでは、表示制御用ICチップ2が接触端子21に結線される。
すなわち、表示制御用ICチップ2の入出力端子と、表示機能付き接触型ICカード1Bの接触端子21の例えばC7端子(データ入出力端子)とが、導線L2により接続される。または、接触端子21と接触型ICチップ23とを接続する導線L3、L4のうち、C7端子(データ入出力端子)に接続されるものに導線L2を接続してもよい。
接触型ICチップ23は、C7端子から入出力されるデータに表示用データが含まれるようにデータフォーマットを構成する。表示用データは、第1の実施の形態と同様に、例えば累計金額、残額、チャージ履歴、取引履歴、決済予定日、口座残高、ポイント合計、ポイント有効期限、更新履歴、その他、の表示部に表示させる所望のデータを含むものとする。
【0057】
以上のように、表示機能付き接触型ICカード1Bでは、表示制御用ICチップ2の外部入出力端子を、接触端子21に既に形成されている予備端子C4、C8に結線するので、表示制御用ICチップ2は接触型ICチップ23が出力したデータを表示用データとして取得できるようになる。
【0058】
表示制御用ICチップ2と接触端子21との接続は、例えば図8に示す例のように実現される。
すなわち、図8に示すように、表示用基板29の表示制御用ICチップ2等を配設した面を、接触通信用基板25の接触端子背面側に向き合わせ、表示制御用ICチップ2と接触端子21のC7端子を導線L2またはバンプにより接続する。またはC7端子に接続される導線L3またはL4に導線L2またはバンプを接続する。通信用基板25には導線L2を通す導通孔H3が形成される。
【0059】
以上のように、構成される表示機能つき接触型ICカード1Bは、導線L2を用いて、接触端子21に表示制御用ICチップ2を電気的に接続させるので、表示用基板29と接触通信用基板25とがそれぞれ独立した部材として開発できる。特に、接触通信用基板25は既存の任意のタイプのものをそのまま利用することが可能となり、開発期間、製造期間を短縮させ、製造コストを抑えることが可能となる。
【0060】
本第2の実施の形態の表示機能付き接触型ICカード1Bの動作は、第1の実施の形態の表示機能付き非接触ICカード1Aの動作と同様である。
すなわち、表示機能付き接触型ICカード1Bにおいて、表示制御用ICチップ2は、接触型ICチップ23から出力され、ICカードリーダライタ20へ送信されるデータ(レスポンスデータ)を、接触端子21に結線された導線L2にて読み出す。また表示制御用ICチップ2は、読み出したレスポンスデータから所定の表示用データを抽出し、メモリ4に保持する。そして表示制御用ICチップ2は、所定のタイミングでドライバ3を駆動し、メモリ4に保持されているデータを表示部5に表示させる。
【0061】
以上説明したように、第2の実施の形態の表示機能付き接触型ICカード1Bは、ICカードリーダライタ20との間で通信を行い、格納されたプログラムに応じたデータ処理を実行する接触型ICチップ23と、接触型ICチップ23に接続され、ICカードリーダライタ20と表示機能付き接触型ICカード1Bとの間のデータ伝送路となる接触端子21と、カード基体10に設けられた表示部5と、表示部5を駆動制御する表示制御用ICチップ2と、表示部5に表示されるデータを格納するメモリ4と、を備え、表示制御用ICチップ2は、接触端子21に結線される。
そして、表示制御用ICチップ7は、接触端子21を介して伝送されるデータを読み取り、読み取ったデータから累計金額等の所定データを抽出してメモリ4に保持し、所定のタイミングで保持されたデータを表示部5に表示させる。
【0062】
これにより、表示制御用ICチップ2は、接触端子21にて伝送されるデータから表示用のデータを取得できる。そのため、接触型ICチップ23に表示データ出力端子を設ける必要がない。そのため、既存の接触型ICチップ23や接触通信用基板25をそのまま利用して、表示機能付きICカード1を作成することができるようになる。
【0063】
なお、図3及び図8に示すICカード1の断面構造は一例であり、各部の配置、配線等はこれらの例に限定されるものではない。
【0064】
以上、添付図面を参照して、本発明に係る表示機能付きICカード等の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0065】
1・・・・・・表示機能付きICカード
1A・・・・・・表示機能付き非接触ICカード
1B・・・・・・表示機能付き接触型ICカード
2・・・・・・・表示制御用ICチップ
3・・・・・・・ドライバ
4・・・・・・・メモリ
5・・・・・・・表示部
6・・・・・・・アンテナコイル
7・・・・・・・非接触型ICチップ
L1,L2・・・・導線
10・・・・・・・カード基体
11・・・・・・・表示用基板
13・・・・・・・非接触通信用基板
15、17・・・・外装フィルム
21・・・・・・・接触端子
23・・・・・・・接触型ICチップ
25・・・・・・・接触通信用基板
29・・・・・・・表示用基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICカードリーダライタとの間で通信を行い、格納されたプログラムに応じたデータ処理を実行する通信用ICチップと、
前記通信用ICチップに電気的に接続され、前記ICカードリーダライタに対してデータを伝送する伝送I/F部と、
ICカード本体に設けられた表示部と、
前記表示部を駆動制御する表示制御用ICチップと、
前記表示部に表示されるデータを格納するメモリと、を備えたICカードであって、
前記表示制御用ICチップは、前記伝送I/F部に結線されることを特徴とする表示機能付きICカード。
【請求項2】
前記表示制御用ICチップは、
前記伝送I/F部において伝送されるデータのうち、前記通信用ICチップから前記ICカードリーダライタへ送信されるレスポンスデータを読み取る読取手段と、
前記レスポンスデータから所定データを抽出し、前記メモリに保持する保持手段と、
前記保持手段により保持された所定データを前記表示部に表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の表示機能付きICカード。
【請求項3】
ユーザの操作に応じた操作信号を前記表示制御用ICチップに送信する操作部を、ICカード本体に更に備え、
前記表示制御手段は、前記操作部からの操作に応じて前記所定データを前記表示部に表示させることを特徴とする請求項2に記載の表示機能付きICカード。
【請求項4】
前記ICカードリーダライタと前記通信用ICチップとの通信時間を検知する検知手段を備え、
前記表示制御手段は、前記検知手段により所定時間以上の通信が検知された場合に、前記所定データを前記表示部に表示させることを特徴とする請求項2に記載の表示機能付きICカード。
【請求項5】
前記表示部及び前記表示制御用ICチップに対して電源を供給する電池を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の表示機能付きICカード。
【請求項6】
ICカードリーダライタとの間で通信を行い、格納されたプログラムに応じたデータ処理を実行する通信用ICチップと、前記通信用ICチップに電気的に接続され、前記ICカードリーダライタに対してデータを伝送する伝送I/F部とを備えた通信用基板に重ね合わされる表示用基板であって、
表示部と、
表示部を制御するための表示制御用ICチップと、
表示制御用ICチップを前記伝送I/F部に接続するための接続部と、
を備えることを特徴とする表示機能付きICカードの表示用基板。
【請求項7】
前記表示制御用ICチップは、
前記伝送I/F部において伝送されるデータのうち、前記通信用ICチップから前記ICカードリーダライタへ送信されるレスポンスデータを読み取る読取手段と、
前記レスポンスデータから所定データを抽出し、前記表示部に表示させる表示制御手段と、
を備えることを特徴とする請求項6に記載の表示機能付きICカードの表示用基板。
【請求項8】
ICカードリーダライタとの間で通信を行い、格納されたプログラムに応じたデータ処理を実行する通信用ICチップと、前記通信用ICチップに電気的に接続され、前記ICカードリーダライタに対してデータを伝送する伝送I/F部と、ICカード本体に設けられた表示部と、前記表示部を駆動制御する表示制御用ICチップと、前記表示部に表示されるデータを格納するメモリと、を備え、前記表示制御用ICチップが前記伝送I/F部に結線されたICカードにおけるデータ表示方法であって、
前記表示制御用ICチップは、
前記伝送I/F部において伝送されるデータのうち、前記通信用ICチップから前記ICカードリーダライタへ送信されるレスポンスデータを読み取るステップと、
前記レスポンスデータから所定データを抽出し、前記メモリに保持するステップと、
保持された所定データを前記表示部に表示させるステップと、
を含むことを特徴とするデータ表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−170738(P2011−170738A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35740(P2010−35740)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】